説明

誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子及びそのポリプロピレン系樹脂発泡粒子により成形された誘電体レンズ部材

10〜80重量%の量のセラミックを含有するポリプロピレン系樹脂から成り、0.03〜1.7g/cmの見掛け密度を有し、示差走査熱量法によって得られるDSC曲線上に前記ポリプロピレン系樹脂に特有の固有吸熱曲線ピーク、及び前記固有吸熱曲線ピークの高温側に吸熱曲線ピークも有する誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子において、前記高温側の吸熱曲線ピークの熱量が、全体の吸熱曲線ピークの熱量の2〜35%を占めることを特徴とする前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年9月10日に出願された日本特許出願 特願2004−264102号で優先権を主張していて、その全開示内容は、本明細書に参照として取り込まれる。
【0002】
本発明は、誘電体レンズ部材のような誘電体を成形するためのポリプロピレン系樹脂発泡粒子、及び前記発泡粒子の型内成形によって得られる誘電体レンズ部材に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、情報通信技術の目覚しい発達及び情報量の増加に伴い、信号情報の送信に対して、より一層の正確さ及びより一層の迅速さが求められている。これに伴い、高周波帯域の利用が急速に増加している。とりわけ、1GHzを超える周波帯域、特に、10〜20GHzの周波帯域、の全面的利用が開始された。結果として、衛星放送及び衛星通信において、パラボラアンテナを使う従来の方法に代えて、ルーネベルグレンズアンテナを使う電波の送受信の方法の開発が期待されている。
【0004】
パラボラアンテナを使う衛星放送及び衛星通信の従来の方式では、静止衛星は、固定された方向に向けられたパラボラアンテナと組み合わせて使用され、電波を送受信する。この方式では、複数の衛星からの電波を送受信するために、目標の衛星の位置に応じて、アンテナの方向を変更すること、又は複数のパラボラアンテナを使用することが必要である。これに対して、複数のフィードが前記アンテナのカバーの上のルーネベルグレンズの焦点位置に配置されていると、ルーネベルグレンズアンテナ(ルーネベルグ誘電体レンズを備えた球状又は半球状アンテナ)は、複数の静止衛星と電波を送受信できる。また、低軌道周回衛星(LEO)の場合のように、通信の目標としての衛星又はアンテナが移動するとき、パラボラアンテナの場合はアンテナ全体が目標を追尾しなければならない、一方、ルーネベルグレンズアンテナの場合、受信機又は送信機のような、このレンズアンテナの小さい構成部品だけが目標を追尾しなければならない。従って、ルーネベルグレンズアンテナは、大きな駆動装置を必要とせず、移動体用アンテナとしても好適である。ルーネベルグレンズアンテナを使用する方法によって、各家庭では大量の情報が1個のアンテナで送受信できる。即ち、ルーネベルグレンズアンテナは、多チャンネル放送時代のTV放送の受信用アンテナとしても好適である。
【0005】
ルーネベルグレンズアンテナには、電波を収束し焦点を合わせる機能を有するルーネベルグ誘電体レンズが備えられている。このルーネベルグ誘電体レンズ用の材料は、情報の大容量化、即ち電波の高周波化、に対応するための優れた誘電特性(均一な比誘電率及び低誘電正接のような)を有しなければならない。また、このアンテナは、普通、各家庭の屋根の上に設置されるので、この材料は、設置作業の効率及び安全性を考慮して、小型で且つ軽量であるべきである。
【0006】
ルーネベルグ誘電体レンズは、球状又は半球状の形状を有し、比誘電率が理論上2から1へ変化して最も内部の中心層が約2の比誘電率を有し、最外層は約1の比誘電率を有するように異なる比誘電率を有する同心円状に積層された複数の層を含む。従って、理論的に、ルーネベルグ誘電体レンズは、下記の等式(1)により、比誘電率εが、中心(r=0)から表面(r=R)へ変化するように設計されている:
ε=2−(r/R) (1)
式中、ε、R及びrは、各々、レンズの比誘電率、半径、及び測定点での半径を表す。各層の比誘電率は、前記等式(1)によって定義される値を参考にして求められる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、実際、比誘電率が等式(1)によって表される理想曲線に従って連続的に変化する成形体を得るのは難しいので、ルーネベルグ誘電体レンズは、異なる比誘電率を有する複数の別々の層を組み合わせて製造される。ルーネベルグ型の或る誘電体レンズは、米国特許出願公開第20040029985号明細書に開示されている。前記誘電体レンズは、芯部、及び異なる比誘電率を有する多数の中空球状殻部を有する球体の形態をしていて、この球体殻部は芯部を取り囲み同心円的に互いに重ね合わされて同心球を形成する。芯部及び殻部は、各々、誘電性無機充填材を含有する合成樹脂の発泡体で作られる。誘電体レンズは軽量なので設置作業の作業性及び安全性を確保できる。しかしながら、米国特許出願公開第20040029985号明細書に開示されている誘電体レンズを使ったアンテナは、実用に当ってアンテナ利得のような性能を満たすのに充分ではない。
【0008】
本発明の目的は、ルーネベルグレンズ型の誘電体レンズの各層を構成し前記層の中で均一な比誘電率を有し実用上優れた性能を発現する誘電体レンズ部材、及び均一な比誘電率を有する誘電体を製造できるポリプロピレン系樹脂発泡粒子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、次に示すポリプロピレン系樹脂発泡粒子及び誘電体レンズ部材を提供する。
【0010】
[1]セラミック10〜80重量%を含有するポリプロピレン系樹脂から成り、見掛け密度0.03〜1.7g/cm、示差走査熱量法(DSC)により測定された曲線上でポリプロピレン系樹脂に特有の固有吸熱曲線ピーク及び前記固有吸熱曲線ピークの高温側に吸熱曲線ピークを有する誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子において、前記高温側の吸熱曲線ピークの熱量は全体の吸熱曲線ピークの熱量の2〜35%であることを特徴とする前記ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[2]セラミックが酸化チタンを主成分とし、0.01〜30μmの平均最大径及び0.1〜100μmの平均最大長さを有する繊維状形状、又は0.01〜100μmの最大長さの平均値を有する粒状形状であることを特徴とする[1]に記載の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[3]前記発泡粒子の断面が、20〜1000個/断面mmの平均気泡数、及び5〜200μmの平均気泡径を有することを特徴とする[1]に記載の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[4]前記発泡粒子の平均最大長さが、0.8〜5.0mmであることを特徴とする[1]に記載の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[5]前記発泡粒子を構成する基材樹脂が、カルボン酸変性ポリオレフィンを含有することを特徴とする[1]に記載の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[6]前記発泡粒子の見掛け密度が0.1g/cm以下の標準偏差(Sd)を有し、前記発泡粒子の重量が0.5mg以下の標準偏差(Sw)を有することを特徴する[1]に記載の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
[7]前記[1]に記載の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を、球状、中空球状、半球状、半球ドーム状、又はそれらの分割体形状に型内成形する誘電体レンズ部材。
【0011】
ポリプロピレン系樹脂及び規定量のセラミックにより形成され、0.03〜1.7g/cmの見掛け密度を有し、示差走査熱量法によって得られるDSC曲線上の高温側に吸熱曲線ピークも有し、そして全体の吸熱曲線ピークの熱量の2〜35%に相当する前記高温側の吸熱曲線ピークの熱量を有する[1]のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、型内成形工程で発泡粒子の2次発泡特性、融着性及び強度が調整されて、発泡粒子から形成される発泡成形体の見掛け密度の均一性に繋がり、従って型内成形工程によって均一な比誘電率を発現する誘電体を提供できる。
【0012】
規定されたセラミックを含有する[2]のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、適切な見掛け密度のもとで比誘電率を効率よく調整できる。
【0013】
[3]のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、型内成形時に適切な2次発泡性を発現し、発泡粒子間で優れた融着性も発現でき、良好な型内成形特性を持ち、それによって、発泡粒子から優れた寸法精度の誘電体が得られる。また、この誘電体は、使用対象の周波数の波長の1/10より遥かに小さい平均気泡径を有する。従って、そのような発泡粒子の型内成形工程によって、更に均一な比誘電率の誘電体が得られる。
【0014】
[4]のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、型内成形工程での充填性及び発泡性に優れていて、型内成形工程によって更に均一な比誘電率の誘電体が得られる。
【0015】
[5]のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、ポリプロピレン系樹脂とセラミックとの間で優れた親和性を発現し、これによって、型内成形工程で、より均一な比誘電率の誘電体が提供される。
【0016】
[6]のポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、発泡粒子の中のセラミック含有量の均一性で特に優れ、それによって、型内成形工程で、より均一な比誘電率の誘電体が提供される。
【0017】
[7]による球状、中空球状、半球状、半球ドーム状又はそれらの分割体形状の誘電体レンズ部材は、均一な比誘電率を有し、実用上優れた性能を発現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を、特に本発明の誘電体レンズ部材成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子、及び誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子の型内成形によって得られる誘電体レンズ部材を例にとり詳細に説明する。
【0019】
しかしながら、本発明の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、誘電体レンズ部材成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子に限定されない。
【0020】
誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子(以下、本明細書では単に発泡粒子とも呼ぶ)は、10〜80重量%の量のセラミックを含有するポリプロピレン系樹脂によって形成される。
【0021】
本明細書で使用される“ポリプロピレン系樹脂”と言う用語は、プロピレンホモポリマー、又はプロピレンと1種以上のコモノマーとのコポリマーであって、少なくとも70モル%、好ましくは少なくとも80モル%のプロピレンモノマー単位の含有量を有するコポリマーを指すことが意図される。プロピレンコポリマーの例には、プロピレン−エチレンランダムコポリマー、プロピレン−エチレンブロックコポリマー、プロピレン−ブテンランダムコポリマー及びプロピレン−エチレン−ブテンランダムターポリマーが挙げられる。
【0022】
本発明の例示の実施態様では、例示の実施態様の意図する効果を阻害しないような範囲内で、他のポリマーを前記ポリプロピレン系樹脂と混合してもよい。
【0023】
本発明の発泡粒子を構成するポリプロピレン系樹脂は、10〜80重量%の量のセラミックを含有する。セラミックの含有量が極端に少ないと、比誘電率を所望の範囲に調整することを妨げられることがある。一方、セラミックの含有量が極端に多いと、融着性又は発泡性のような型内成形特性が低下することがあり、それによって発泡粒子の良好な発泡成形体が得られないことがある。第1に、セラミック含有量が極端であると、良好な発泡粒子の形成が妨げられる。従って、セラミック含有量は、気泡膜を破損することなく良好な発泡粒子を得るために、そして発泡粒子の成形部材の収縮が小さく、優れた寸法精度、良好な外観及び優れた誘電特性を達成するために、好ましくは15〜70重量%、そして更に好ましくは20〜65重量%である。
【0024】
本明細書で使用されるように、発泡粒子の単位重量当りのセラミック含有量Mw(重量%)は、次のように測定される。Wmの重量を有する試料粒子を600℃の炉の中で燃焼させる。次に、燃焼残渣の重量Wrが測定される。この試料の単位重量当りのセラミック含有量(重量%)は、次から算出される:
Mw(重量%)=(Wr/Wm×100)
【0025】
発泡粒子の単位重量当りのセラミック含有量(重量%)は、発泡粒子が製造される発泡成形体の単位重量当りのセラミック含有量(重量%)に等しい。以後の本明細書で説明されているように、発泡粒子の単位体積当りのセラミック含有量Mv(g/cm)は、次のように表される:
Mv(g/cm)=D(g/cm)×Mw(重量%)/100
式中、Dは発泡粒子の見掛け密度であり、Mwは前記で定義されている通りである。
【0026】
本発明では、可能な限り高い比誘電率を有し、熱可塑性樹脂の中に均一に分散され得るいずれのセラミックも使用可能である。セラミックの主成分として、酸化チタンを含有するセラミックは、比誘電率が高く、比重が低くそして優れた誘電特性の故に好ましい。主成分として酸化チタンを含有するセラミックは、酸化チタン、又は式MO・nTiO(式中、Mは1種以上の二価金属を表し、nは1以上の整数である)によって表される組成物を有するセラミックであるのが好ましい。前記式の中でMで表される二価金属の例には、限定はされないが、バリウム、ストロンチウム、カルシウム及びマグネシウムのようなアルカリ土類金属、並びに鉛が挙げられる。
【0027】
前記式MO・nTiOによって表されるチタン酸アルカリ土類金属及びチタン酸鉛は、例えば、酸化チタンと、1種以上のアルカリ土類金属又は鉛の化合物、例えばアルカリ土類金属又は鉛の塩、酸化物、水酸化物、無機酸塩又は有機酸塩、との混合物を500〜1400℃の温度で反応させることにより製造できる。原料の一方である酸化チタンは、例えば、日本国特公平6−88786号公報、特開平5−221795号公報又は特開平10−95617号公報に記載されている周知の適当な方法により製造できる。
【0028】
酸化チタンとアルカリ土類金属塩又は鉛塩との反応は、当業界では周知であり、例えば、水熱法、か焼法、湿式沈着法又はフラックス法によって実施できる。チタン酸アルカリ土類金属及びチタン酸鉛の具体例には、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウムストロンチウム、チタン酸バリウムカルシウム、チタン酸カルシウムストロンチウム、及びチタン酸鉛が挙げられる。なかでも、高周波帯域での誘電損失が小さいので、チタン酸カルシウムが特に好ましく使用される。これらのチタン酸塩は単独でも、又はそれらの2種以上を組み合わせても使用することが可能であり、酸化チタンのように1種以上のその他のセラミック材料と組み合わせて使用することも可能である。
【0029】
セラミックは、樹脂との混練の効率及び樹脂母材の中の均一な分散性のために、繊維状(例えば、繊維、柱状又は針状の形態で)、粒状(例えば、球、略球、楕円球又は略楕円球の形態で)、又は板状(例えば、鱗片、マイカ又は薄片の形態で)が好ましいことがある。0.1〜10μmの範囲内の最大径の平均値を有する繊維状又は板状セラミックは特に好ましく使用される。必要に応じて、繊維状セラミックと板状セラミックとを組み合わせて使用することが可能である。セラミックの主成分としての繊維状酸化チタンを含むセラミックの寸法は特に制限されない。発泡樹脂粒子の気泡が破損しないこと及び比誘電率の調整効率が良好なことから、繊維状セラミックは、概ね好ましくは約0.01〜30μm、更に好ましくは約0.1〜10μm、最も好ましくは0.1〜1μmの最大径の平均値(以後、本明細書では平均最大径と呼ぶ)を、約0.1〜100μm、更に好ましくは約0.5〜50μm、最も好ましくは3〜50μmの平均繊維長さを、及び3〜30、更に好ましくは5〜20のアスペクト比(平均繊維長さ/平均最大径)を有する。
【0030】
また、主成分として板状酸化チタンを含むセラミックの寸法は特に制限されない。前記と同じ理由から、板状セラミックは、好ましくは約0.01〜100μm、更に好ましくは約0.01〜50μm、最も好ましくは約0.5〜20μmの最大長さの平均値(以下、本明細書では平均最大長さと呼ぶ)を、0.01〜10μm、更に好ましくは約0.05〜5μmの最大厚みの平均値(以後、本明細書では平均最大厚みと言う)を、及び約3〜100、更に好ましくは約5〜50のアスペクト比(平均最大長さ/平均最大厚み)を有する。
【0031】
主成分として粒状酸化チタンを含むセラミックの寸法は特に制限されない。前記と同じ理由から、粒状セラミックは、好ましくは約0.01〜100μm、更に好ましくは約0.01〜30μm、最も好ましくは約0.1〜1μmの最大長さの平均値(以後、本明細書では平均最大長さと言う)を有する。
【0032】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、繊維状、板状及び粒状の各セラミックの平均最大径、平均繊維長さ、平均最大長さ及び平均最大厚みは、電子顕微鏡を使って測定される。任意に選ばれた100個のセラミック粒子が、これらの粒子の最大径、長さ、最大長さ及び/又は最大厚みについて測定される。平均最大径、平均繊維長さ、平均最大長さ及び平均最大厚みは、100個の試料の各々の算術平均値である。
【0033】
本発明の例示の実施態様の発泡粒子は、本発明の誘電体レンズ部材又は誘電体が成形される基材樹脂の中に、極性基含有ポリマー、特にカルボン酸基含有コモノマーを含有するカルボン酸変性ポリオレフィン、を含有するのが好ましく、この理由は発泡粒子の見掛け密度の均一性が改良されるからである。カルボン酸基含有コモノマーは、例えば、無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸若しくは無水フタル酸のような酸無水物、又はメタクリル酸、マレイン酸若しくはアクリル酸のようなカルボン酸でもよい。更に、カルボン酸変性ポリオレフィンは、カルボン酸変性ポリプロピレンであるのが好ましい。例えば、無水マレイン酸変性プロピレン樹脂が好ましい。カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂は、基材樹脂とセラミックとの親和性が改良されているために、好ましくは0.5〜15重量%、更に好ましくは1〜8重量%のグラフトコモノマーの含有量を有するグラフトコポリマーであるのが好ましい。
【0034】
カルボン酸変性ポリオレフィンは、セラミック及びプロピレン樹脂とブレンドされるのが好ましい。
【0035】
カルボン酸変性ポリオレフィンの量は、ポリプロピレン、カルボン酸変性ポリオレフィン及びセラミックの全重量を基準として、好ましくは少なくとも0.15重量%、更に好ましくは0.15〜1.5重量%、最も好ましくは0.2〜1.0重量%である。そのような基材樹脂は、基材樹脂で形成される発泡粒子の見掛け密度が均一な見掛け密度を有するように、セラミックとの改良された親和性を有するからである。
【0036】
カルボン酸変性ポリオレフィンは、ポリプロピレン系樹脂、セラミック及びカルボン酸変性ポリオレフィンを混練することにより、或いは熱可塑性樹脂、セラミック、並びにカルボン酸変性ポリオレフィン及び熱可塑性樹脂を含有するマスターバッチを混練することにより基材樹脂の中に組み入れることが可能である。或いは、先ず、セラミックがカルボン酸変性ポリオレフィンで表面処理され、続いて、前記の表面処理済みセラミックはポリプロピレン系樹脂と混練される。こうして得られる混練混合物はペレット化される。次に、このペレット(樹脂粒子)を発泡及び膨張させると発泡粒子が得られるが、この発泡粒子はその後で金型内で融着され、カルボン酸変性ポリオレフィンを含有する基材樹脂の発泡体の中に分散されているセラミックを含有する発泡成形体となる。
【0037】
本発明の所望の効果にできる限り悪影響を及ぼすことなく、発泡粒子に1種以上の添加剤を加えることも可能である。この添加剤は、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤、金属不活性剤、顔料、染料、成核剤及び気泡調整剤が可能である。好適な気泡調整剤の例は、ホウ酸亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、水酸化アルミニウム及びその他の無機粉体である。これらの添加剤は、基材樹脂及びセラミックを添加剤と一緒に混練することにより発泡粒子の中に組み入れることが可能である。混練配合物がペレット化されると樹脂粒子(ペレット)が形成され、この樹脂粒子から発泡粒子が製造される。
【0038】
本発明の発泡粒子は、0.03〜1.7g/cmの見掛け密度を有する。前記の範囲に適合して仕様に合っている発泡粒子によって、比誘電率が、中心層では約2であり、順次、外層の方へ向かって徐々に低下して最外層では約1になる、図3(a)に示しているような多層構造の誘電体レンズの各層を構成する誘電体レンズ部材を得ることができる。比誘電率を調整するために、本発明の例示の実施態様の発泡粒子は、多量のセラミックを含有する樹脂によって形成されているので、発泡工程時に気泡膜が破れ易く、発泡粒子を形成するのが難しいことから、小さい見掛け密度を得ることは難しい。また、見掛け密度が極端に小さい発泡粒子を金型で型内成形を行なう場合、発泡粒子の圧縮強度は小さいので、型内成形工程で金型の内面付近の発泡粒子は金型に強く押しつけられると、それによって発泡粒子の発泡成形体は、内部の密度に比べて表面付近の密度が高くなり、均一な密度を発現できなくなることがある。従って、発泡粒子の密度が極端に小さいと比誘電率のばらつきに繋がる。一方、見掛け密度が極端に高いと軽量の発泡成形体を得ることができない。また、樹脂粒子の発泡によって得られ、見掛け密度が極端に高い発泡粒子は、見掛け密度の顕著なばらつきを発現するので、そのような発泡粒子から得られる発泡成形体の比誘電率にはばらつきが発生する。気泡膜が破損していない良好な発泡粒子を製造するために、そして殆ど収縮がない発泡粒子の発泡成形体、優れた寸法精度、良好な外観及び優れた誘電体レンズ特性を持つ発泡粒子の発泡成形体を得るために、見掛け密度は、好ましくは0.05〜1.2g/cm、更に好ましくは0.1〜1.0g/cm、そして特に好ましくは0.2〜0.8g/cmである。
【0039】
本明細書の発泡粒子の見掛け密度は、23℃のエタノールを含有するメスシリンダーを準備し、任意に選ばれた1000個以上の発泡粒子(重量W1の発泡粒子群)を相対湿度50%のもとで23℃の雰囲気の中で48時間放置させ、例えば金属網を使ってメスシリンダーに入れ、発泡粒子群の前記重量W1(g)を、エタノールの液面上昇から読み取られる発泡粒子群の体積V1(cm)で割り算することにより求めることができる(W1/V1)。本明細書では、発泡粒子の見掛け密度の標準偏差を求める以外に、発泡粒子の見掛け密度を前記の方法で求める。
【0040】
本発明の発泡粒子から得られる発泡成形体が、高温ピークの低温側にある固有吸熱曲線ピーク(本明細書では以後、固有ピークと呼ぶ)に加えて、発泡粒子のDSC曲線の高温吸熱曲線ピーク(本明細書では以後、固有ピークと呼ぶ)を示すこと、及び発泡粒子の良好な2次発泡性、良好な融着性及び機械的強度、更に発泡粒子から得られる発泡成形体の良好な寸法安定性、見掛け密度のばらつきが小さいことから、高温ピークの熱量(ΔHJ/g)が全体の吸熱曲線ピークの熱量(ΔHJ/g)の2〜35%であることを示すことは好ましいことを本発明の発泡粒子は示している。全体の吸熱曲線ピークを基準として、高温ピークの熱量パーセンテージ(ΔH/ΔH×100)は、更に好ましくは5〜35%、最も好ましくは10〜30%である。全体の吸熱曲線ピークの熱量(ΔH)は、高温ピーク(類)の熱量と固有ピーク(類)の熱量との和である。
【0041】
発泡粒子の高温ピークの熱量は、発泡用樹脂粒子の加熱処理時間及び発泡温度により調整可能である。高温ピークを有するDSC曲線を示すポリプロピレン系樹脂発泡粒子は、例えばポリプロピレン系樹脂粒子(ペレット)を含有する分散体を、ポリプロピレン系樹脂の融点(Tm)を超えるが、その樹脂の融解終了温度(Te)を超えない温度まで高温ピークの熱量を増加させるのに充分に時間、加熱することにより製造可能である。発泡が、発泡温度の適切な範囲内の高い温度で行なわれるとき、発泡粒子の高温ピークの熱量を減らすことは可能である。発泡粒子の高温ピークの熱量及び全体の吸熱曲線ピークの熱量は、発泡粒子から得られる発泡成形体の両ピークの熱量に略等しい。
【0042】
序ながら、発泡成形体の高温ピークの熱量は、発泡成形体が製造される発泡粒子の熱量を操作することにより調整可能である。
【0043】
発泡粒子及び発泡成形体の高温ピークの熱量は、吸熱量であり、図3に示している第1回目のDSC曲線の中の吸熱曲線ピーク(固有ピーク)“a”の高温側にある吸熱曲線ピーク(高温ピーク)“b”の面積に相当する。これらのピークは、発泡粒子又は発泡成形体から得られる試料2〜4mgを、加熱速度10℃/分で室温(15〜40℃)から220℃まで加熱する示差走査熱量分析法により得られる。更に詳しくは、熱量は次のように求めることが可能である。図3に示すDSC曲線の中で、80℃における曲線の点αと発泡粒子の融解終了温度Tにおける曲線の点βとの間にわたる直線(α−β)を引く。融解終了温度Tは、高温ピーク“b”がベースラインBLと交わる交点βの温度である。次に、縦軸に平行であって、固有ピーク“a”と高温ピーク“b”との間の谷部において曲線の点γを通る線を引く。この線は点δにおいて線分(α−β)と交差する。高温ピーク“b”の面積は、高温ピーク“b”の曲線、線分“δ−β” 及び線分(γ−δ)によって定義される面積(図3の中の陰影付きの部分)であり、高温ピークの“b”の熱量(吸熱量)に対応する。高温ピークの熱量と固有ピークの熱量の合計は、線分(α−β)とDSC曲線によって定義される合計面積に対応する。
【0044】
発泡粒子の高温ピーク“b”は、一般に、(T1+5℃)〜(T1+30℃)の範囲、より一般に、(T1+8℃)〜(T1+25℃)(式中、T1は固有ピーク“a”の温度である)の範囲の温度で現われる。
【0045】
本明細書で使用しているように、“ポリプロピレン系樹脂の融点”と言う用語は、試料樹脂又は発泡粒子が10℃/分の速度で室温(10〜40℃)から220℃まで加熱されるDSC分析法によって測定される融点を指すものとする。次いで、試料は10℃/分の速度で直ちに約40℃(40〜50℃)まで冷却され、再度、DSC曲線のために10℃/分の速度で220℃まで加熱されることにより、図4に示されている第2回目のDSC曲線が得られる。図4に示している第2回目のDSC曲線の吸熱曲線ピークの温度Tmは融点を表す。複数の吸熱曲線ピークが第2回目のDSC曲線で観察されるとき、融点Tmは、これらのピークのうちで最大のピーク面積を有するピークのピーク温度である。しかしながら、複数のピークが存在して、2番目に大きいピークが最大ピークの60%以上の面積を有するとき、融点は、最大ピークの温度と2番目に大きいピークの温度との算術平均値である。ポリプロピレン系樹脂の融解終了温度は、第2回目のDSC曲線の中で高温ピークがベースラインBLと交わる交点βの温度Teである。発泡粒子から得られる発泡成形体の寸法安定性及び均一な比誘電率を考慮すると、本発明の各発泡粒子誘電体レンズは、前記レンズの断面積mm当り20〜1,000個の平均気泡数を、及び5〜200μmの平均気泡径を有することが好ましい。発泡成形体の平均気泡数及び平均気泡径は、発泡成形体が製造される発泡粒子の前記個数及び直径に略等しい。従って、発泡成形体の平均気泡数及び平均気泡径は、発泡粒子の平均気泡数及び平均気泡径を操作することにより調整される。前記で規定される平均気泡数及び平均気泡径を有する発泡粒子は、好適な2次発泡特性及び良好な融着特性を発現する。
【0046】
発泡粒子の平均気泡数及び平均気泡径は、セラミックの量、並びに樹脂粒子(ペレット)の発泡が行なわれる条件、例えば圧力及び温度、を操作することにより調整可能である。更に具体的には、密閉容器の中に入れられて、高温、高圧に保持されている分散媒体中の樹脂粒子が、分散体を密閉容器の放出管路から、より低圧雰囲気へ放出される分散方法(dispersion method)によって発泡粒子が製造されるとき、大きい圧力勾配を形成するために放出管路にオリフィスを取り付けると平均気泡径は小さくなる、そして平均気泡数を増やすことができる。放出管路を高温で加熱して高温で発泡を行なうと平均気泡径は大きくなり、平均気泡数は減る。
【0047】
本明細書では、発泡粒子の断面での平均気泡数は、発泡粒子を略2等分に切断し、顕微鏡で拡大した断面での全気泡を数えて、気泡の数を断面積で割り算することにより測定できる。また、平均気泡径は、発泡粒子を略2等分に切断し、顕微鏡で拡大した断面での全気泡の直径を測定し、直径の平均値を算出することにより測定できる。発泡粒子を略2等分に切断することにより形成される断面での気泡径の測定では、各気泡について前記断面での全ての平面方向の気泡径のうちの最大値をその気泡の直径と見なす。
【0048】
発泡成形体の製造用の発泡粒子は、形状的には球状、略球状、楕円状、柱状又は略柱状が好ましい、と言うのは、そのような粒子は、金型キャビティーの中に均一に充填でき、更に、得られる発泡成形体の見掛け密度が均一になるからである。
【0049】
発泡成形体の見掛け密度のばらつきを最小限に抑えるには、発泡粒子の平均最大長さは、一般に0.5〜10mm、好ましくは0.8〜5.0mm、更に好ましくは1.0〜3.0mmである。発泡粒子の平均最大長さは、任意に選ばれた50個の発泡粒子をノギスを使用して測定した最大長さの算術平均値である。球状発泡粒子の最大長さはこの粒子の直径である。円柱形状の発泡粒子の場合、最大長さは次のように決められる。円柱状発泡粒子の軸方向をZ−軸であるとして選ぶ。発泡粒子のZ−軸方向の寸法の最大値が求められる。また、発泡粒子のX−軸方向の寸法の最大値、及び発泡粒子のY−軸方向の寸法の最大値も求められる。最大長さは、X−、Y−及びZ−の各軸の3個の最大寸法のうちの最大値である。
【0050】
発泡粒子が球状の場合、この発泡粒子の平均最大長さは、好ましくは0.8〜5.0mm、更に好ましくは1.0〜3.0mmである。発泡粒子が円柱状の場合、Z−軸での最大長さの平均値(L)、及びこの発泡粒子のX−又はY−軸での最大径の平均値(D)は、各々、0.8〜5.0mm、好ましくは1.0〜3.0mmの範囲内である。この場合、アスペクト比L/Dは、好ましくは0.8〜1.2である。
【0051】
円柱状発泡粒子の最大長さ(L)の平均値及び最大径(D)の平均値は、ペレット化工程で調整可能であり、この工程では、基材樹脂とセラミックとの混練材料がストランドの形状で押出された後、このストランドが切断されると樹脂粒子(ペレット)が得られる。ストランドの直径及び切断長さを調整することによって、即ちペレットの形状を調整することによって、発泡粒子の長さL及びアスペクト比L/Dの調整が可能である。球状発泡粒子は、球状樹脂粒子を使って作製可能である。球状樹脂粒子は、例えば温水中でストランドを切断することによって作製可能である。機械的強度を高めるために及び見掛け密度のばらつきを小さくするために、本発明の誘電体レンズ部材を構成する発泡成形体は、40%以下、更に好ましくは30%以下、最も好ましは20%以下の連続気泡率(ASTM D2856−70、手順Cによる)を有することが好まれる。
【0052】
次に、本発明の誘電体レンズ部材の製造方法を説明する。誘電体レンズは、半球状中心層及び複数の半球ドーム形状層を含む。前記中心層及び半球ドーム形状層の各々は、金型に充填された発泡粒子をスチームで加熱することにより得られる発泡成形体である。発泡粒子は、樹脂粒子を発泡、膨張させることにより作製可能である。樹脂粒子、発泡粒子及び発泡成形体の製造は、下記で更に詳細に説明される。
【0053】
球状発泡粒子は、例えば多孔ダイから押出された溶融樹脂を温水中で切断することによって球状樹脂粒子を作製することにより製造される。
【0054】
本明細書では、発泡粒子の最大高さの平均値(L)及び最大径の平均値(D)は、発泡粒子の群から任意に取り出された50個の発泡粒子についてノギスを使って寸法を測定したのち、測定した寸法の算術平均値を求めることにより得られる。
【0055】
本発明の発泡粒子は、発泡粒子を製造する既知のいずれの方法によっても製造できるが、密閉容器の中で、発泡剤の存在で発泡用の樹脂粒子を水のような分散媒体の中に分散させながら加熱して発泡剤を樹脂粒子に含浸させ、次いで減圧によって発泡粒子が形成される温度で樹脂粒子及び分散媒体を低圧環境に放出する方法で製造されるのが好ましい(前記方法は本明細書で以後、“分散方法”と呼ぶ)。
【0056】
樹脂粒子は、ポリプロピレン系樹脂のような基材樹脂、セラミック及び、必要に応じて、極性基含有ポリマー(例えば、無水マレイン酸変性ポリプロピレン)のような1種以上の添加剤を押出機に供給することにより作製可能である。次いで、この供給材料を押出機の中で加熱、溶融そして混練したのち、ダイを通してストランドの形状に押出す。このストランドを冷却したのち、切断すると樹脂粒子(ペレット)が得られる。
【0057】
次いで、樹脂粒子は、任意の好適な方法、好ましくは分散方法、により発泡及び膨張されるが、この分散方法では、樹脂粒子は、密閉容器の中で水性媒体のような好適な分散媒体中に分散される。密閉容器の中の分散体は、発泡剤の存在で加熱されると樹脂粒子に発泡剤が含浸される。次いで、この分散体は、樹脂粒子が発泡及び膨張するのに充分な温度で密閉容器から低圧領域へ取り出される。
【0058】
樹脂粒子の融着を防ぐために、有機粉末でも無機粉末でもよい分散剤が分散媒体に加えられるのが好ましい。特に好適なのは、天然産又は合成粘土鉱物(カオリン、マイカ又はクレー)、酸化アルミニウム、酸化チタン、塩基性炭酸マグネシウム、塩基性炭酸亜鉛、炭酸カルシウム又は酸化鉄のような無機材料の微細な粒子の使用である。これらの無機材料は、樹脂粒子の100重量部当り0.001〜5重量部の量で、単独でも又はこれらの2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0059】
発泡剤の量は、発泡剤の種類、発泡温度、及び製造対象の発泡粒子の見掛け密度を考慮して適切に選択される。窒素ガスが発泡剤として使用され、水が分散媒体として使用される場合、窒素ガスは、分散体の排出開始直前の密閉容器の圧力、即ち密閉容器の上部空間部の圧力、が0.6〜6MPaGの範囲内になるような量で使用される。製造対象の発泡粒子の見掛け密度が低いほど、前記容器の上部空間部の圧力は高められるのが好ましい。製造対象の発泡粒子の見掛け密度が高いほど、前記容器の上部空間部の圧力は下げられるのが好ましい。
【0060】
前記分散方法で使用される発泡剤は、有機系物理発泡剤でも無機系物理発泡剤でもよい。有機系物理発泡剤の例には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン及びヘプタンのような脂肪族炭化水素、並びにシクロブタン及びシクロヘキサンのような脂環式炭化水素が挙げられる。無機系物理発泡剤の例には、空気、窒素、二酸化炭素、酸素、アルゴン及び水が挙げられる。これらの有機系発泡剤及び無機系発泡剤は、単独でも2種以上の混合物としても使用可能である。特に好適に使用されるのは、窒素、酸素、空気、二酸化炭素及び水から選ばれる1種以上の無機系物理発泡剤を本質的成分として含有する発泡剤である。発泡粒子の見掛け密度の安定性(均一性)、低コスト、及び環境問題がないことから、空気、二酸化炭素及び水の使用が好まれる。中に樹脂粒子を分散するための分散媒体として使用されるイオン交換水のような水は、そのまま発泡剤として使用可能である。
【0061】
本発明の例示の実施態様の誘電体レンズ部材は、型内成形方法と呼ばれるバッチ式成形方法によって製造でき、この方法では、必要ならば本発明の発泡粒子の内圧(ゲージ圧)を0〜0.3MPaに高めた後、この発泡粒子を周知の構造の金型内に充填し、スチームの供給により金型内を加熱し膨張させて、発泡粒子を互いに融着させ、そして冷却後に金型から取り出す。
【0062】
必要に応じて、成形を行なう前に発泡粒子の内圧を0.1〜0.6MPaGに高めるために、発泡粒子を加圧ガスで処理してもよい。次に、発泡粒子の見掛け密度が更に小さくなるように、前記の処理粒子をスチーム又は熱風で加熱する。発泡粒子の内圧を高めることが望ましい場合、加圧ガスが気泡の中に浸透するような適切な時間、加圧ガスが供給され続けられる密閉容器の中に発泡粒子を入れたままにしておく。発泡粒子が処理される条件下ではガスの形態である限り、加圧処理用にいずれのガスも使用可能である。このガスは、主成分として無機系ガスを含有するガスであれば好適である。無機系ガスの例には、窒素、酸素、空気、二酸化炭素及びアルゴンが挙げられる。コスト及び環境問題がないので、窒素又は空気が使用されるのが好適である。
【0063】
本発明の発泡粒子では、均一な比誘電率を持つ発泡粒子の発泡成形体を得るために、見掛け密度は、好ましくは0.1g/cm以下、更に好ましくは0.05g/cm以下の標準偏差(Sd)を有し、そして発泡粒子の重量は、好ましくは0.5mg以下、更に好ましくは0.3mg以下の標準偏差(Sw)を有する(発泡用の樹脂粒子の単位重量当たりのセラミックが一定含有量の場合)。図3(b)に示しているような多層構造の誘電体レンズを成形するに当って、層の数を多くするとアンテナの性能の向上に繋がる。しかしながら、各層を構成する誘電体レンズ部材の比誘電率は、理論的に2から1へ外側へ向かって連続して小さくされなければならないので、層の数が増えると、各層を構成している発泡粒子の成形誘電体レンズ部材の比誘電率に対する許容範囲が狭くなり、比誘電率の僅かなばらつきでも比誘電率の連続的変化を混乱させることがあり、そして隣接する層の間で比誘電率の逆転の変化を誘発することがあるので、比誘電率の均一性が更に向上されなければ、充分なアンテナ性能を得ることは難しい。そのような状況の中で、発泡粒子の見掛け密度及び重量の前記の各標準偏差によって、3〜40層、更に5〜30層、そして特に8〜20層を持つ誘電体レンズ部材から成る高性能のルーネベルグレンズ型アンテナを確実に得ることができる。
【0064】
発泡粒子の見掛け密度に関して、0.1g/cm以下の標準偏差(Sd)は、分散方法では、密閉容器からの発泡性樹脂粒子の放出時にこの容器内の圧力を一定に保つように圧力を印加する方法、発泡性樹脂粒子を加圧雰囲気中に放出する方法、発泡性樹脂粒子の放出時に密閉容器内の攪拌羽根の回転を徐々に低下させる方法、発泡粒子を篩にかけることによって体積で分級する方法、発泡粒子を風力分級機(air classifier)若しくは重力分離機(gravity separator)によって比重で分級する方法、又はこれらの方法の組み合わせによって達成できる。発泡粒子を篩にかけることによって体積で分級する方法が最も簡単であり、篩による分級方法は、異なる粒径の発泡粒子を網目により分級するために振動篩を利用することが可能である。前記方法のなかでは、重力分離機による方法が最も好ましい。
【0065】
本発明の誘電体レンズ部材を構成する各発泡成形体の見掛け密度は、0.07g/cm以下の標準偏差(Sd)を有することが重要である。標準偏差(Sd)が0.07g/cmを超えると、見掛け密度のばらつきは非常に大きいので成形体の誘電特性のばらつきが発生することがあり、その結果、良好な誘電体レンズが得られないことになる。従って、見掛け密度の標準偏差(Sd)は、好ましくは0.05g/cm以下、更に好ましくは0.03g/cm以下、そして最も好ましくは0.02g/cm以下である。
【0066】
見掛け密度での0.07g/cm以下の小さい標準偏差(Sd)は、発泡成形体の作製のための発泡粒子が0.5mg以下の標準偏差を有し、その粒子の見掛け密度が0.1g/cm以下の標準偏差を有する特定の発泡粒子を使用することによって得ることが可能である。そのような発泡粒子は、例えば次に挙げる種々の方法によって得ることが可能である、即ち、重量のばらつきが小さい樹脂粒子の製造方法、特定の方法による樹脂粒子の膨張及び発泡方法、発泡粒子の分級方法、及び前記方法のうちの2種類以上を組み合わせた方法。
【0067】
例えば、ペレット化作業の過程で、ポリプロピレン系樹脂及びセラミックを含有する混練混合物をストランドの形状に押出し、次にそのストランドを冷却したのち、切断して粒子にする種々の方法を採用することにより、重量のばらつきが小さい樹脂粒子を製造可能である。1つの方法は、切断前にストランドの蛇行を防ぐためにガイドを取り付けることである。その他の方法には、カッターの回転速度の調整、ストランドに対するカッター角度の調整、アンダーウォーターカット方法の使用及び/又は回転式筒状篩(rotary tubular sieve)のような適切な篩の使用による樹脂粒子の分級が挙げられる。
【0068】
特定の手法で樹脂粒子を膨張させ発泡させる方法は、例えば次を挙げることが可能である、即ち密閉容器内の圧力を一定に保持するように密閉容器に圧力を印加しながら分散媒体の中の軟化樹脂粒子の分散体を密閉容器から排出する分散方法(以下の本明細書で詳細に説明される予定である)の採用;分散体が密閉容器から加圧雰囲気へ排出される分散方法の採用;密閉容器内部の分散体を攪拌している攪拌機の回転速度を徐々に低下させながら前記分散体を密閉容器から排出する分散方法の採用;及び前記方法のうちの2種類以上を組み合わせた方法の採用。
【0069】
発泡粒子の分級方法は、例えば、発泡粒子を所望の粒径に篩分けしてもよく又は発泡粒子を重力分離機若しくは風力分級機によって分級してもよい。2種類以上の分級又は未分級発泡粒子をブレンドすると、所望の見掛け密度を有する発泡粒子を得ることが可能である。
【0070】
0.07g/cm以下の小さい標準偏差(Sd)の見掛け密度を得るために、金型キャビティ内部で発泡粒子が高い圧縮力を受けないような方法で発泡粒子を成形することも有効である。このために、発泡粒子に高い2次発泡力を付与しないことが有利である。発泡粒子を金型キャビティに充填する時に発泡粒子に印加する圧力を減らすことも好ましい。発泡粒子が高い圧縮力を受けながら成形されると、発泡成形体の表面領域の見掛け密度は、内部領域の見掛け密度よりも高くなり、その結果、発泡成形体の比誘電率にばらつきが生じる。
【0071】
発泡粒子の見掛け密度の標準偏差は、任意に選ばれた1000個の発泡粒子の各々の見掛け密度を測定して求められる。測定の結果から標準偏差が算出される。見掛け密度は次のように測定される:
1.任意に選ばれた1000個の発泡粒子を、23℃の雰囲気の中に50%の相対湿度のもとで48時間放置させる。次に、1000個の発泡粒子の各々の重量(W1)を小数点第2位まで測定する。
2.比重計を使い、エタノール(純度:99%以上)の比重(ρ1)を小数点第3位まで測定する。
3.図5(a)及び5(b)に示しているような密度測定装置を用意する。この装置は、微量天秤11、及び前記エタノール12を含有する容器を含む。
4.エタノールの中に発泡粒子(13で示されている)の各々を浸漬し、浸漬された粒子の重量(W2)を小数点第2位まで測定する。重量(W2)は、重力と発泡粒子に作用する浮力との差である。
5.発泡粒子の比重(ρ0)を、次式を使って算出する:
ρ0=W1/{(W1−W2)/ρ1}
6.発泡粒子の見掛け密度(g/cm)を次式を使って算出する:
見掛け密度=ρ×ρ0
式中、ρは純水の密度(即ち、1g/cm)である。
【0072】
発泡粒子の重量の標準偏差は、23℃の大気中に50%の相対湿度のもとで48時間放置されたのち任意に選ばれた1000個の発泡粒子の各々の重量(mg)を小数点第3位まで測定することによって求められる。
【0073】
発泡成形体の見掛け密度の標準偏差(Sd)は次のように測定される。発泡成形体から、各々、長さ16mm、幅10mm及び厚み8mmの15個の直方体形状の試験片を、図5(a)に示している<1>〜<15>の各位置で切り出す。3個所<1>、<6>及び<11>の各々は、発泡成形体の頂点の近くにあり、発泡成形体の頂点から5cm以下しか離れていない。<2>〜<5>の各位置は、互いに角度的に等間隔で離れていて、各々は、発泡成形体の環状縁部を含む平面から約20度(図5(b)のθとして示している)の角度で離れている。<7>〜<10>の各位置及び<12>〜<15>の各位置も、<2>〜<5>の各位置と同じように配置されている。切り出された試料の厚み方向の軸は、半球状発泡成形体の半径方向と平行か又は平行に近い。厚み8mmの試料を切り出せないほど発泡成形体の厚みが極めて薄いとき、試料の厚みが可能な限り厚くなるように切り出しを行なう。15個の各試験片の見掛け密度を測定する。測定の結果から、見掛け密度の標準偏差(Sd)を算出する。試料の重量は小数点第2位まで測定し、一方、試料の寸法は電気(electric)ノギスを使って小数点第2位まで測定することによって見掛け密度を求める。測定寸法から、試料の体積を算出する。試料の重量を試料の体積で割り算することにより見掛け密度を求める。
【0074】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されているように、“標準偏差”と言う用語は、ばらつきの平方根として定義される。
【0075】
発泡粒子の重量については、発泡用樹脂粒子を形成するためのペレット化工程において、冷却して切断した粒子を使用し、ストランドのゆがみを抑えるためのガイドを設けること、又は回転及び回転羽根の角度を調整すること、又はアンダーウォーターカットを実施することによりペレット化の重量精度を高める方法により、或いは、回転式円筒篩により樹脂粒子を分級する方法により、及び前記方法を適切に組み合わせることにより、0.5mg以下の標準偏差(Sw)を達成できる。密度が殆ど一定の場合、樹脂粒子又は発泡粒子を篩分けによって分級する方法が最も簡単であり、篩による分級方法では振動篩の利用が可能である。また、風力分級機又は重力分離機を使い比重による分級の方法も使用できる。
【0076】
発泡粒子の重量の標準偏差(Sw)は、23℃の温度、50%の相対湿度の条件下で48時間予め放置された発泡粒子の群から任意に選ばれた1000個の発泡粒子の各々の重量(mg)を0.001mgまで測定し、標準偏差(Sw)を算出することにより求める。
【0077】
本発明の誘電体レンズ部材は、本発明の発泡粒子の型内成形によって得られ、球状、中空球状、半球状、半球ドーム状又はそれらの分割体形状を有する。例えば図3(b)に示している誘電体レンズのように、半球状レンズ部材1に、順次、半径の異なる半球ドーム状レンズ部材 2a、2b、2c、2dを積み重ねて表面をカバー3で覆い、底部に電波反射材(示されていない)を取り付けることによりルーネベルグレンズアンテナが構成される。半球状レンズ部材1は約2の比誘電率を有し、最外層の半球ドーム状レンズ部材2dは約1の比誘電率を有する。また、アンテナ利得の低下を防ぐために、積み重ねられて隣り合うレンズ部材の隙間は可能な限り小さいのが好ましい。
【0078】
図3(a)及び3(b)は、1個の半球状レンズ部材1に重ねて4個の半球ドーム状レンズ部材2a−2dを採用する5層構造を示しているが、本発明はこのような5層構造に限定されない。例示の実施態様は、好ましくは5層以上、更に好ましくは5〜30層そして特に好ましくは8〜20層である。また、誘電体レンズ部材を組み合わせて形成される球状又は半球状ルーネベルグレンズでは、誘電体レンズは50〜4000mmの直径を有するのが好ましい。
【0079】
比誘電率を約1〜約2の範囲内に調整して軽量化を実現するめに、球状、中空球状、半球状、半球ドーム状又はそれらの分割体形状の誘電体レンズ部材は、好ましくは0.03〜1.2g/cm、更に好ましくは0.03〜0.8g/cmの見掛け密度を有する。
【0080】
誘電体レンズ部材の前記見掛け密度は、JIS K7222(1999)で定義されている見掛け全体密度(overall apparent density)を意味する。見掛け全体密度を算出するための発泡粒子の発泡成形体(誘電体レンズ部材)部材の体積は、外寸から算出される体積であるが、複雑な形状のために外寸からの算出が難しい場合、発泡粒子の発泡成形体を水に浸漬させた時の排除体積が採用される。
【0081】
本発明の例示の実施態様の発泡粒子は、前述したように、誘電体レンズ部材用材料として使用するのに優れているが、コンデンサ、積層回路基板、コネクタ又はメモリのような情報通信関連の電気(electric)デバイスにおいて種々の誘電体材料用の型内成形材料として有利に採用可能である。
【実施例】
【0082】
以下で、本発明は、実施例及び比較例により更に明瞭になるであろう。
【0083】
実施例1−8及び比較例1−3
表1に示すポリプロピレン系樹脂及び表2に示すセラミックを、表3に示す配合で予め混合したのち、二軸式押出混練機により更に混練し押出してペレットを形成することにより円柱状樹脂粒子を得る。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
得られた樹脂粒子100重量部を、密閉可能な容器(オートクレーブ)に充填し、水300重量部に分散させる。また、融着防止剤として酸化アルミニウム1.0重量部、及び分散助剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.01重量部を添加する。
【0088】
次いで、オートクレーブを密閉した後、攪拌しながら、表4に示している発泡温度よりも5℃低い温度まで加熱する。その後、前記オートクレーブの中に、表4に示している発泡剤を導入し、その温度を15分間保持する。次いで、オートクレーブを、表4に示している発泡温度まで加熱し、その温度で15分間保持する。この状態のオートクレーブ内の圧力を、表4に発泡圧力として示している。その次に、オートクレーブの内容物を発泡温度に維持しながらオートクレーブに発泡剤と同じガスを圧入し、オートクレーブ内の圧力を表4に示している発泡圧力に維持しながらオートクレーブの内容物を大気に放出し、それによって発泡粒子を得る。
【0089】
得られた発泡粒子のセラミック含有量(重量%)、高温ピークの熱量(ΔH)、全体の吸熱曲線ピークの熱量(ΔH)、全体の吸熱曲線ピークの熱量に対する高温ピークの熱量の比(ΔH/ΔH×100)、平均気泡数、平均気泡径、見掛け密度、発泡粒子の形状、最大径の平均値(D)、最大高さの平均値(L)、及び比(L/D)を表5及び6に示している。
【0090】
【表4】

【0091】
【表5】

【0092】
【表6】

【0093】
実施例1−8及び比較例1−3の各々で得られた発泡粒子を加圧タンク内に保持することにより、表6に示している発泡粒子の内部圧力を付与したのち、成形金型に充填して、表6に示している圧力のスチームを金型に導入することにより加熱して発泡粒子を融着させ、その次に、冷却し発泡粒子の半球ドーム状発泡成形体の型内成形を行なう。得られた発泡粒子の発泡成形体を、60℃、大気圧のもとで24時間養生させたのち、更に、23℃、大気圧のもとで48時間養生させて、内径175mm、外径200mmの半球ドーム状の誘電体レンズ部材を得る。得られた誘電体レンズ部材(発泡成形体)の見掛け密度、前記発泡成形体の見掛け密度の標準偏差及び電気的特性も表6に示している。連続気泡率は、実施例1−8で得られた誘電体レンズ材料では20%より低く、一方、比較例1で得られた誘電体レンズ材料では40%を超えている。
【0094】
実施例9−16及び比較例4−6
実施例1−8及び比較例1−3で得られた発泡粒子を、重力分離機により分級して表7に示している発泡粒子を得る。実施例9−16及び比較例4−6は、各々、実施例1−8及び比較例1−3の発泡粒子の分級により得られる発泡粒子を使用し、分級後の発泡粒子の高温ピークの熱量(ΔH)、全体の吸熱曲線ピークの熱量(ΔH)、全体の吸熱曲線ピークの熱量に対する高温ピークの熱量の比(ΔH/ΔH×100)、平均気泡数、平均気泡径、セラミック含有量、無水マレイン酸含有量、及び形状の各値は、表5及び6に示している分級前の各値と同じである。
【0095】
分級後の発泡粒子の見掛け密度、見掛け密度の標準偏差(Sd)及び重量の標準偏差(Sw)を表7に示している。
【0096】
発泡粒子を加圧タンク内に保持することにより表7に示している発泡粒子の内部圧力を付与したのち、成形金型に充填して、表7に示している圧力のスチームを金型に導入することにより加熱して発泡粒子を融着させ、その次に、冷却し発泡粒子の半球ドーム状発泡成形体の型内成形を行なう。得られた発泡粒子の発泡成形体を、60℃、大気圧のもとで24時間養生させたのち、更に、23℃、大気圧のもとで48時間養生させて、内径175mm、外径200mmの半球ドーム状の誘電体レンズ部材を得る。得られた誘電体レンズ部材(発泡成形体)の見掛け密度、前記発泡成形体の見掛け密度の標準偏差及び電気的特性も表7に示している。連続気泡率は、実施例9−16で得られた誘電体レンズ部材では20%より低く、一方、比較例4で得られた誘電体レンズ部材では40%を超えている。
【0097】
【表7】

【0098】
表6及び7の発泡成形体の電気的特性の評価に当って次のように測定する。発泡成形体から、図5(a)に示している<1>〜<15>の各位置で、各々長さ16mm、幅10mm及び厚み8mmを有する15個の直方体形状の試験片を切り出す。3個所<1>、<6>及び<11>の各々は発泡成形体の頂点である。<2>〜<5>の各位置は、互いに角度的に等間隔で離れていて、各々は発泡成形体の環状縁部を含む平面から約20度の角度離れている(図5(b)でθとして示されている)。<7>〜<10>の各位置、及び<12>〜<15>の各位置も、<2>〜<5>の各位置と同じ様に配置されている。切り出した各試料の厚み方向の軸は、半球状発泡成形体の半径方向と平行又は略平行にある。15個の各試験片の比誘電率について測定する。測定結果から比誘電率の標準偏差を算出する。なお、評価基準は下記の通りである。
【0099】
標準偏差を不変分散の平方根から求める:
S:比誘電率の標準偏差は、0.02未満であること;
A:比誘電率の標準偏差は、0.02以上であるが0.03未満であること;
B:比誘電率の標準偏差は、0.03以上であるが0.04未満であること;
C:比誘電率の標準偏差は、0.04以上であるが0.05未満であること;
D:比誘電率の標準偏差は、0.05以上であること。
【0100】
表6及び7に示している発泡成形体の見掛け密度の標準偏差は、発泡成形体の電気的特性の評価の際と同じ様に、15個の試験片を切り出し、各試験片の見掛け密度を測定したのち、測定値について標準偏差を算出することにより得る。試験片の見掛け密度は、重量を0.01mgまで測定し、三辺の寸法を電子(electronic)ノギスを使って0.01mmまで測定して体積を得たのち、その重量をその体積で割り算して単位換算することにより求める。標準偏差を不変分散の平方根から求める。
【0101】
例示の実施態様を参考にしながら、本発明を説明してきたけれども、本発明の技術範囲は、この例示の実施態様の説明に限定されない。いろいろな変更又は改良ができることは当業者には明白である。変更又は改良された形態も本発明の技術範囲内に包含され得ることは特許請求の範囲の説明から明白である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】高温ピークを有するポリプロピレン系樹脂発泡粒子の第1回目のDSC曲線のチャートの一例である。
【図2】ポリプロピレン系樹脂粒子の第2回目のDSC曲線チャートの一例である。
【図3】誘電体レンズ部材の一例を示す図である。
【図4】(a)は発泡粒子の比重測定装置の概略を示す正面図である。(b)は(a)の側面図である。
【図5】(a)は比誘電率の測定用に、試料がドーム状層から切り出される試料採取位置を示すドーム状層の平面図である。(b)は(a)の側面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックスを10〜80重量%含有するポリプロピレン系樹脂からなり、見かけ密度が0.03〜1.7g/cmであり、示差走査熱量測定によるDSC曲線上に該ポリプロピレン系樹脂固有の吸熱曲線ピークが存在すると共に該吸熱曲線ピークよりも高温側に吸熱曲線ピークが存在し、該高温側の吸熱曲線ピークの熱量が全体の吸熱曲線ピークの熱量の2〜35%であることを特徴とする誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項2】
セラミックスが酸化チタンを主成分とし、その最大径の平均値が0.01〜30μm、かつ平均長さが0.1〜100μmの繊維状であるか、又は最大長さの平均値が0.01〜100μmの粒状であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項3】
発泡粒子断面の平均気泡数が20〜1000個/mmであると共に、その平均気泡径が5〜200μmであることを特徴とする請求項1に記載の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項4】
発泡粒子の最大長さの平均値が0.8〜5.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項5】
発泡粒子を構成する基材樹脂中に、カルボン酸変性オレフィン系重合体が配合されてなることを特徴とする請求項1に記載の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項6】
発泡粒子の見かけ密度の標準偏差(Sd)が0.1g/cm以下であり、発泡粒子の重量の標準偏差(Sw)が0.5mg以下であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項7】
請求項1に記載の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を球状、中空球状、半球状または半球ドーム状、或いは、それらの分割体形状に型内成形してなることを特徴とする誘電体レンズ部材。
【請求項8】
発泡粒子を構成する基材樹脂中に、カルボン酸変性オレフィン系重合体が配合されてなることを特徴とする請求項3に記載の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項9】
発泡粒子の見かけ密度の標準偏差(Sd)が0.1g/cm以下であり、発泡粒子の重量の標準偏差(Sw)が0.5mg以下であることを特徴とする請求項3に記載の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子。
【請求項10】
請求項8に記載の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を球状、中空球状、半球状または半球ドーム状、或いは、それらの分割体形状に型内成形してなることを特徴とする誘電体レンズ部材。
【請求項11】
請求項9に記載の誘電体成形用ポリプロピレン系樹脂発泡粒子を球状、中空球状、半球状または半球ドーム状、或いは、それらの分割体形状に型内成形してなることを特徴とする誘電体レンズ部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−512502(P2008−512502A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511560(P2007−511560)
【出願日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【国際出願番号】PCT/JP2005/017103
【国際公開番号】WO2006/028300
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】