説明

読取レンズ

【課題】投影倍率−1/9×程度のカラー対応・広画角対応で高MTFを確保できる読取レンズと画像読取装置を提供する。
【解決手段】原稿の画像情報を読み取るために原稿画像を1次元的撮像素子に結像させる読取レンズOPであって、拡大側から順に正・負・正・負のレンズ4枚から成る。第4レンズL4は、アナモフィック非球面レンズである。第1レンズL1は非球面レンズであり、条件式:νd>62,θgf>-0.0016×νd+0.6415(νd:アッベ数、θgf:部分分散比であり、部分分散比θgfは式:θgf=(Ng-NF)/(NF-NC)で表され、Ng:g線に対する屈折率、NF:F線に対する屈折率、NC:C線に対する屈折率である。)を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は読取レンズと画像読取装置に関するものであり、例えば、ラインCCD(Charge Coupled Device)等の1次元的撮像素子を備えた画像読取装置(特にスキャナ,デジタル複写機,ファクシミリ等に用いられるユニットスキャン方式の画像読取装置)と、それに好適な読取レンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、スキャナ,デジタル複写機等に搭載される画像読取装置用の原稿読取レンズとして、球面系をベースとしたタイプ(ガウスタイプ,オルソメタタイプ,クセノタータイプ等)が広く採用されている。しかし、近年の画像読取装置に対する高密度化,高速化,小型化等の要求に伴って、読取レンズにも、高性能化,広画角化の要求が高まってきている。特にA4領域で主流のユニットスキャン方式のカラー画像読取装置においては、高性能を維持したままユニット自体を小型化する必要があり、そのためには微小画素ピッチの小型センサを用い、光学系の縮率(投影倍率)を大きく設定し、かつ、物像間距離を短く設定する必要がある。それに伴って、カラー対応・広画角対応で高解像度の読取レンズが必要となっている。これを実現するため、例えば特許文献1,2では、1/9倍程度の縮率のレンズ系において、レンズ系の一部にアナモフィック非球面を採用し、広画角でも周辺の収差を効果的に補正する技術が提案されている。
【特許文献1】特開2001−100095号公報
【特許文献2】特開2002−214528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1,2記載の従来技術においては、アナモフィック非球面レンズを採用することで、確かに単色収差について良好に補正がなされているが、軸上色収差の補正は十分とは言いがたい。縮率の大きなレンズ系においては、原稿側での所望の空間周波数に対応するMTF(modulation transfer function)性能を確保するために、縮小側では、より高い空間周波数に対してMTF性能を確保する必要がある。しかし、一般に空間周波数が高くなると、光学系が実現可能な回折限界レベル自体が低下してくる。そのため、このようなレンズ系においては、単に単色の収差を補正するだけでは原稿側で所望のMTF性能を確保するのが困難になるので、色収差も限りなく補正しておく必要がある。
【0004】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、投影倍率−1/9×程度のカラー対応・広画角対応で高MTFを確保できる読取レンズと、それを用いた画像読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、第1の発明の読取レンズは、原稿の画像情報を読み取るために原稿画像を1次元的撮像素子に結像させる読取レンズであって、拡大側から順に、正の近軸パワーを有する第1群と、負の近軸パワーを有する第2群と、正の近軸パワーを有する第3群と、負の近軸パワーを有する第4群と、で構成され、アナモフィック非球面を少なくとも1面有するレンズを前記第4群中に有し、前記第1群中の正レンズが、少なくとも1面の非球面を有し、かつ、以下の条件式(1)及び(2)を満足することを特徴とする。
νd>62 …(1)
θgf>-0.0016×νd+0.6415 …(2)
ただし、
νd:アッベ数、
θgf:部分分散比であり、部分分散比θgfは式:θgf=(Ng-NF)/(NF-NC)で表され、
Ng:g線に対する屈折率、
NF:F線に対する屈折率、
NC:C線に対する屈折率、
である。
【0006】
第2の発明の読取レンズは、上記第1の発明において、さらに前記第2群と前記第3群との間に開口絞りを有することを特徴とする。
【0007】
第3の発明の読取レンズは、上記第1の発明において、さらに前記第1群と前記第2群との間に開口絞りを有することを特徴とする。
【0008】
第4の発明の読取レンズは、上記第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記アナモフィック非球面を有するレンズがプラスチック材料から成り、それ以外のレンズがガラス材料から成り、以下の条件式(3)を満足することを特徴とする。
0.05<|φpla|/|φtotal|<0.3 …(3)
ただし、
φpla:アナモフィック非球面を有するプラスチックレンズのパワー、
φtotal:読取レンズ全系のパワー、
である。
【0009】
第5の発明の読取レンズは、上記第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記第3群中の正レンズが、以下の条件式(4)及び(5)を満足することを特徴とする。
νd>62 …(4)
θgf>-0.0016×νd+0.6415 …(5)
ただし、
νd:アッベ数、
θgf:部分分散比であり、部分分散比θgfは式:θgf=(Ng-NF)/(NF-NC)で表され、
Ng:g線に対する屈折率、
NF:F線に対する屈折率、
NC:C線に対する屈折率、
である。
【0010】
第6の発明の読取レンズは、上記第5の発明において、前記第3群中の正レンズが、少なくとも1面の非球面を有することを特徴とする。
【0011】
第7の発明の読取レンズは、上記第1〜第6のいずれか1つの発明において、全系を構成するレンズ枚数が4枚であることを特徴とする。
【0012】
第8の発明の画像読取装置は、原稿を照明する照明装置と、その照明装置で照明された原稿の画像を結像させる上記第1〜第7のいずれか1つの発明に係る読取レンズと、その読取レンズにより形成された光学像を電気的な信号に変換する前記1次元的撮像素子と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、少ないレンズ枚数で、広い波長域にわたり効果的に色消し(つまり軸上色収差の補正)を行うことが可能である。また、軸外収差を効果的に補正することができ、結果として、広画角において高MTFを確保できる。したがって、投影倍率−1/9×程度のカラー対応・広画角対応の読取レンズにおいて、高MTFを確保することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る読取レンズ,画像読取装置等を、図面を参照しつつ説明する。本発明に係る読取レンズは、原稿の画像情報を読み取るために原稿画像を1次元的撮像素子に結像させる読取レンズであって、拡大側から順に、正の近軸パワーを有する第1群と、負の近軸パワーを有する第2群と、正の近軸パワーを有する第3群と、負の近軸パワーを有する第4群と、で構成されており、アナモフィック非球面を少なくとも1面有するレンズを前記第4群中に有している。また、前記第1群中の正レンズが、少なくとも1面の非球面を有し、かつ、以下の条件式(1)及び(2)を満足することを特徴としている。
νd>62 …(1)
θgf>-0.0016×νd+0.6415 …(2)
ただし、
νd:アッベ数、
θgf:部分分散比であり、部分分散比θgfは式:θgf=(Ng-NF)/(NF-NC)で表され、
Ng:g線に対する屈折率、
NF:F線に対する屈折率、
NC:C線に対する屈折率、
である。
【0015】
上記のように、最終群にアナモフィック非球面を配置することが好ましい。アナモフィック非球面を最終群に配置すれば、各像高の光束が比較的分離している位置で、像高ごとのパワーを効果的にコントロールすることができる。したがって、広画角でも比較的弱いパワーで像面湾曲の補正を行うことが容易になる。弱いパワーで構成できるということには、配置誤差が発生しても性能劣化を起こしにくくなるというメリットもある。
【0016】
上記のように、第1群中の正レンズが所望の材料条件を満足すること、つまり条件式(1)及び(2)を満足することが好ましい。広域の軸上色収差補正を効果的に行うには、強いパワーを有する正レンズに前記条件式(1)及び(2)を満足する材料を用いるのが良い。本発明に係る読取レンズにおいては、第1群中の正レンズのパワーが比較的強くなるため、条件式(1)及び(2)を満足することにより、広域の軸上色収差補正が容易になる。条件式(1)及び(2)を外れると、広域の軸上色収差量が増大し、軸上色収差の影響でMTF性能が劣化してしまう。
【0017】
上記のように、第1群中の正レンズが少なくとも1面の非球面を有することが好ましい。前記条件式(1)及び(2)を満足する材料は、一般に屈折率が低い領域にある。そのレンズを比較的パワーの強い群に配置した場合、レンズの曲率が強くなりすぎてしまう。その結果、球面収差をはじめとする諸収差の補正が困難になってくる。そこで、第1群中の正レンズに非球面を配置することにより自由度を増やせば、レンズ枚数を増やすことなく、効率良く収差を補正することが容易になる。
【0018】
以上説明した特徴的な構成により、少ないレンズ枚数で、広い波長域にわたり効果的に色消し(つまり軸上色収差の補正)を行うことが可能となる。また、軸外収差を効果的に補正することができ、結果として、広画角において高MTFを確保できる。したがって、投影倍率−1/9×程度のカラー対応・広画角対応の読取レンズにおいて、高MTFを確保することが可能となる。これらの効果をバランス良く得るとともに、更に高い光学性能等を達成するための条件等を以下に説明する。
【0019】
本発明に係る読取レンズにおいてレンズ枚数を削減しようとすると、第1群だけでなく、第3群の正レンズのパワーも強くなってくる。したがって、第3群中の正レンズに関しても、前記と同様の条件を満足する材料を用いることが好ましい。つまり、前記第3群中の正レンズが、以下の条件式(4)及び(5)を満足することが好ましい。さらに、第3群中の正レンズも、第1群中の正レンズと同様、少なくとも1面の非球面を有することが好ましい。
νd>62 …(4)
θgf>-0.0016×νd+0.6415 …(5)
ただし、
νd:アッベ数、
θgf:部分分散比であり、部分分散比θgfは式:θgf=(Ng-NF)/(NF-NC)で表され、
Ng:g線に対する屈折率、
NF:F線に対する屈折率、
NC:C線に対する屈折率、
である。
【0020】
第2群と第3群との間に開口絞りを有するか、あるいは、第1群と第2群との間に開口絞りを有することが望ましい。開口絞りを第1群と第2群との間又は第2群と第3群との間に配置することにより、レンズ系の小型化と収差補正とのバランスを良好にすることが可能となる。つまり、開口絞りをレンズ系の中央部に配置することにより、レンズ系自体をバランス良く小型化することが容易になり、歪曲収差,倍率色収差を効果的に補正することが容易になる。
【0021】
前記アナモフィック非球面を有するレンズがプラスチック材料から成り、それ以外のレンズがガラス材料から成り、以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
0.05<|φpla|/|φtotal|<0.3 …(3)
ただし、
φpla:アナモフィック非球面を有するプラスチックレンズのパワー、
φtotal:読取レンズ全系のパワー、
である。
【0022】
上記のように、アナモフィック非球面を有するレンズは、プラスチック材料(すなわち樹脂材料)で構成されることが製造上好ましい。つまり、アナモフィック非球面レンズは、プラスチックレンズ(すなわち樹脂レンズ)であることが望ましい。アナモフィック非球面レンズを実際に製造する場合には、回転対称非球面と同様、モールド成型が一般的に採用される。現時点においては、ガラス材料よりも樹脂材料の方が、安価で精度の良い製造が可能であるが、安易に樹脂材料を用いてしまうと、温度変化時の樹脂材料の特性変化が大きいため、結果として、温度変化時のピント位置の変動が大きくなってしまう。このピントズレを良好に抑えるための条件を規定しているのが、上記条件式(3)である。
【0023】
条件式(3)は、上記プラスチックレンズのパワーに関する好ましい条件範囲を規定している。条件式(3)の上限を越えると、温度上昇に対してレンズバックを短くする方向にピント移動量が増大してしまう。その結果、読取レンズが搭載される実機の伸びと逆方向に振れてしまい、極端に性能が劣化してしまう。逆に、条件式(3)の下限を越えると、アナモフィック非球面レンズのパワーが小さくなりすぎて、像面湾曲の補正が困難になる。
【0024】
拡大側から順に、正の近軸パワーを有する第1群と、負の近軸パワーを有する第2群と、正の近軸パワーを有する第3群と、負の近軸パワーを有する第4群と、で構成される読取レンズの具体的なレンズ構成として、各群をレンズ1枚構成とすることが好ましい。つまり、全系を構成するレンズ枚数は4枚であることが好ましい。第1群として前記材料条件を満たす非球面レンズ1枚を用い、最終群である第4群としてアナモフィック非球面レンズ1枚を用いることにより、レンズ枚数を4枚にまで抑えても、高性能化,広画角化等とのバランスをとることが可能である。
【0025】
次に、読取レンズの第1〜第3の実施の形態を挙げて、その具体的な光学構成を更に詳しく説明する。図1〜図3に、読取レンズOPの第1〜第3の実施の形態の光学構成をそれぞれ光学断面で示す。これらの読取レンズOPは、原稿の画像情報を読み取るために原稿画像を1次元的撮像素子に結像させる読取レンズであって(IM:像面)、拡大側から順に、正の近軸パワーを有する第1レンズL1と、負の近軸パワーを有する第2レンズL2と、正の近軸パワーを有する第3レンズL3と、負の近軸パワーを有する第4レンズL4と、のレンズ4枚で構成されている。いずれの実施の形態においても、第1レンズL1,第2レンズL2及び第3レンズL3はガラスレンズであり、第4レンズL4はプラスチックレンズである(図1〜図3中、プラスチックレンズには符号pを付して示す。)。読取レンズOPの拡大側には原稿台ガラスP1が位置しており、読取レンズOPの縮小側には撮像素子(例えばラインCCD)のカバーガラスP2が位置している。
【0026】
第1の実施の形態(図1)において、第1レンズL1は拡大側面が非球面から成る拡大側に凸の正メニスカスレンズであり、第2レンズL2は両凹の負レンズであり、第3レンズL3は両凸の正レンズであり、第4レンズL4は両面がアナモフィック非球面から成る拡大側に凹の負メニスカスレンズであり、第2レンズL2と第3レンズL3との間には開口絞りSTが配置されている。第2の実施の形態(図2)において、第1レンズL1は拡大側面が非球面から成る両凸の正レンズであり、第2レンズL2は縮小側に凹の負メニスカスレンズであり、第3レンズL3は縮小側面が非球面から成る両凸の正レンズであり、第4レンズL4は両面がアナモフィック非球面から成る拡大側に凹の負メニスカスレンズであり、第2レンズL2と第3レンズL3との間には開口絞りSTが配置されている。第3の実施の形態(図3)において、第1レンズL1は拡大側面が非球面から成る両凸の正レンズであり、第2レンズL2は両凹の負レンズであり、第3レンズL3は縮小側面が非球面から成る両凸の正レンズであり、第4レンズL4は両面がアナモフィック非球面から成る拡大側に凹の負メニスカスレンズであり、第1レンズL1と第2レンズL2との間には開口絞りSTが配置されている。
【0027】
図16に、読取レンズOPを搭載した画像読取装置の概略構成例を模式的に示す。図16に示す画像読取装置は、スキャナ,デジタル複写機,ファクシミリ等の機器に用いられる画像読み取り用の光学装置であって、原稿(すなわち物体)を照明する照明ユニット11と、その照明ユニット11で照明された原稿の画像を結像させる読取レンズOPと、その読取レンズOPにより形成された光学像(図1〜図3中の像面IM)を電気的な信号に変換する1次元的撮像素子から成る3ラインCCD12(Q:CCD画素配列垂直方向)と、を備えている。
【0028】
1つのハウジング14の中に、照明ユニット11と、反射ミラー13a〜13eと、読取レンズOPと、3ラインCCD12とが配置されており、そのハウジング14を一定速度Vで走査させることで原稿画像を読み取る構成になっている。更に詳しく説明する。原稿カバー15と原稿台ガラスP1との間に原稿がセットされ、原稿台ガラスP1を通して原稿が照明ユニット11により主走査方向に長く照明される。原稿からの反射光が、反射ミラー13a〜13eによる光路の折り曲げと、ハウジング14の副走査方向への移動(一定速度V)により、原稿画像の全面について読取レンズOPに導かれる。照明ユニット11で照明された原稿の画像は、読取レンズOPにより3ラインCCD12上で結像する。そして、読取レンズOPにより形成された光学像IMは、3ラインCCD12により電気的な信号に変換される。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施した読取レンズの構成等を、コンストラクションデータ等を挙げて更に具体的に説明する。ここで挙げる実施例1〜3は、前述した第1〜第3の実施の形態にそれぞれ対応する数値実施例であり、第1〜第3の実施の形態を表す光学構成図(図1〜図3)は、対応する実施例1〜3のレンズ構成,光路等をそれぞれ示している。
【0030】
各実施例のコンストラクションデータでは、左側の欄から順に、面番号,曲率半径r(mm),軸上での面間隔d(mm),d線に関する屈折率Nd,d線に関するアッベ数νd,光学要素の符号を示す。面番号に*が付された面は非球面(すなわち回転対称非球面)であり、その面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x,y,z)を用いた以下の式(AS)で定義される。また、面番号に#が付された面はアナモフィック非球面であり、その面頂点を原点とするローカルな直交座標系(x,y,z)を用いた以下の式(BS)で定義される。各実施例の非球面データ及びアナモフィック非球面データをあわせて示す。ただし、表記の無い項の係数は0であり、すべてのデータに関してE-n=×10-nである。
z=(c・h2)/[1+√{1−(1+k)・c2・h2}]+A・h4+B・h6+C・h8+D・h10+E・h12+F・h14+G・h16+H・h18+J・h20 …(AS)
【0031】
【数1】

…(BS)
【0032】
ただし、
h:z軸(光軸AX)に対して垂直な方向の高さ(h2=x2+y2)、
z:高さhの位置での光軸AX方向のサグ量(面頂点基準)、
c:面頂点での曲率(曲率半径rの逆数)、
k:円錐定数、
A,B,C,D,E,F,G,H,J:それぞれ4次,6次,8次,10次,12次,14次,16次,18次,20次の非球面係数、
Cj:xmynの係数[j={(m+n)2+m+3n}/2+1]、
である。
【0033】
各光学要素を構成している光学材料の屈折率として、C線(波長656.28nm)に対する屈折率NC,d線(波長587.56nm)に対する屈折率Nd,e線(波長546.07nm)に対する屈折率Ne,F線(波長486.13nm)に対する屈折率NF,g線(波長435.84nm)に対する屈折率Ngをそれぞれ示す。各種データとして、e線に関する焦点距離(mm),Fナンバー(有効Fナンバー),投影倍率,読取幅(mm),物像間距離(mm)を示す。また、表1に各実施例の条件式対応値及び関連データを示す。
【0034】
図4,図6,図8は、実施例1,2,3にそれぞれ対応する縦収差図であり、各図において左から順に、球面収差図(LONGITUDINAL SPHERICAL ABER.)、非点収差図(ASTIGMATIC FIELD CURVES)、歪曲収差図(DISTORTION)である。球面収差図は、実線で示すC線(波長656.2800nm)に対する球面収差量、破線で示すe線(波長546.0700nm)に対する球面収差量、一点鎖線で示すg線(波長435.8400nm)に対する球面収差量を、それぞれ近軸像面からの光軸AX方向のズレ量(単位:mm,横軸スケール:-0.200〜0.200mm)で表しており、縦軸は瞳への入射高さをその最大高さで規格化した値(すなわち相対瞳高さ)を表している。非点収差図において、二点鎖線Y1,Y2,Y3はC線,e線,g線に対するタンジェンシャル像面、実線X1,破線X2,一点鎖線X3はC線,e線,g線に対するサジタル像面を、近軸像面からの光軸AX方向のズレ量(単位:mm,横軸スケール:-0.200〜0.200mm)で表しており、縦軸は物高(OBJ HT,単位:mm,縦軸スケール:0〜-110.00mm)を表している。歪曲収差図において、横軸はC線(実線),e線(破線),g線(一点鎖線)に対する歪曲(単位:%,横軸スケール:-0.100〜0.100%)をそれぞれ表しており、縦軸は物高(OBJ HT,単位:mm,縦軸スケール:0〜-110.00mm)を表している。
【0035】
図5,図7,図9は、実施例1,2,3にそれぞれ対応する横収差図である。各横収差図において、左の列(Y-FAN)はタンジェンシャル光束での横収差図であり、右の列(X-FAN)はサジタル光束での横収差図である。実線はC線に対する横収差、破線はe線に対する横収差、一点鎖線はg線に対する横収差をそれぞれ表している。各横収差図は、各図中に(X,Y)でのRELATIVE FIELDで表されている像高比(半画角ω°)での横収差(mm)を示している。なお像高比は、像高y'を最大像高y'maxで規格化した相対的な像高である(y'maxはOBJ HT=-110.00mmに対応する。)。
【0036】
図10,図12,図14は、実施例1,2,3にそれぞれ対応する倍率色収差図であり、図11,図13,図15は、実施例1,2,3にそれぞれ対応する軸上色収差図である。倍率色収差図では、C線(実線),e線(破線),g線(一点鎖線)に対する倍率色収差(Lateral Color)を各像高y'についてそれぞれ示しており、軸上色収差図では、波長(nm)に対するバックフォーカスの差(LB)で軸上色収差を示している。
【0037】
各実施例の読取レンズOPを搭載した画像読取装置のスペックの一例を以下に挙げる。
レンズ構成 :L1…正のガラスレンズ,L2…負のガラスレンズ,
L3…正のガラスレンズ,L4…負のプラスチックレンズ
CCD画素ピッチ:4.7μmの3ラインCCD
読取倍率 :−0.1110236(600dpi対応)
読取原稿幅 :A4短辺幅相当(220mm)
有効Fナンバー :5.1〜5.4
【0038】
実施例1
単位:mm
面データ
面番号 r d Nd νd 光学要素
1 ∞ 3.000 1.516330 64.1 P1
2 ∞ 任意
3* 11.772 6.16 1.487490 70.2 L1
4 82.262 0.37
5 -205.709 1.20 1.672700 32.1 L2
6 11.641 0.25
7(ST) ∞ 0.42
8 16.423 3.77 1.620411 60.3 L3
9 -13.001 10.50
10# -8.981 1.89 1.530481 55.7 L4
11# -11.858 4.24
12 ∞ 0.70 1.516330 64.1 P2
13 ∞ 0.20
像面 ∞
【0039】
非球面データ
第3面
k= 1.06872E-01,
A=-1.24788E-04,B=-1.79013E-06,C=-1.66988E-08,D=-1.42092E-10,E〜J= 0
【0040】
アナモフィック非球面データ
第10面
k= 0,
C11= 1.28086E-03,C13= 1.70744E-03,C15=-1.19089E-04,
C24= 3.67969E-05,C26=-9.48176E-06,C28= 6.32189E-06,
C45=-1.34463E-08
第11面
k= 0,
C11= 2.25202E-03,C13= 2.53146E-03,C15=-1.05488E-04,
C24= 2.11777E-05,C26=-1.80646E-05,C28= 4.34998E-06,
C45=-1.82761E-08
【0041】
光学材料の屈折率
光学要素 NC Nd Ne NF Ng
656.28nm 587.56nm 546.07nm 486.13nm 435.84nm
P1,P2 1.513855 1.516330 1.518251 1.521905 1.526213
L1 1.485344 1.487490 1.489147 1.492285 1.495963
L2 1.666606 1.672700 1.677651 1.687564 1.700113
L3 1.617275 1.620411 1.622865 1.627566 1.633149
L4 1.527670 1.530481 1.532747 1.537194 1.542587
【0042】
各種データ
焦点距離 :20.25mm(e線)
Fナンバー(有効Fナンバー):4.4(5.0)
投影倍率 :-0.1110236
読取幅 :220mm
物像間距離 :230mm
【0043】
実施例2
単位:mm
面データ
面番号 r d Nd νd 光学要素
1 ∞ 3.000 1.516330 64.1 P1
2 ∞ 任意
3* 10.168 1.89 1.496999 81.5 L1
4 -70.728 1.28
5 137.513 1.28 1.613397 44.3 L2
6 7.682 0.31
7(ST) ∞ 0.79
8 26.140 3.73 1.496999 81.5 L3
9* -9.135 11.75
10# -9.381 1.20 1.530481 55.7 L4
11# -12.563 4.50
12 ∞ 0.70 1.516330 64.1 P2
13 ∞ 0.20
像面 ∞
【0044】
非球面データ
第3面
k= 2.89484E-01,
A=-2.93660E-04,B=-6.77606E-06,C= 5.87705E-08,D=-1.15787E-09,E〜J= 0
第9面
k= 0,
A=-1.69524E-04,B=-7.63377E-06,C= 2.77286E-08,D=-1.01430E-08,E〜J= 0
【0045】
アナモフィック非球面データ
第10面
k= 0,
C11= 1.31506E-03,C13= 7.48593E-04,C15=-1.83721E-04,
C24= 2.74108E-04,C26= 1.22878E-05,C28=-3.17911E-07,
C41=-4.52046E-06,C43=-1.66336E-07,C45= 3.07368E-08
第11面
k= 0,
C11= 2.00034E-03,C13= 1.48719E-03,C15=-1.88745E-04,
C24= 2.59406E-04,C26= 2.14924E-06,C28= 9.33438E-07,
C41=-3.54122E-06,C43=-1.21526E-07,C45= 6.07494E-09
【0046】
光学材料の屈折率
光学要素 NC Nd Ne NF Ng
656.28nm 587.56nm 546.07nm 486.13nm 435.84nm
P1,P2 1.513855 1.516330 1.518251 1.521905 1.526213
L1 1.495136 1.496999 1.498455 1.501231 1.504506
L2 1.609248 1.613397 1.616690 1.623105 1.630910
L3 1.495136 1.496999 1.498455 1.501231 1.504506
L4 1.527670 1.530481 1.532747 1.537194 1.542587
【0047】
各種データ
焦点距離 :20.27mm(e線)
Fナンバー(有効Fナンバー):4.8(5.4)
投影倍率 :-0.1110236
読取幅 :220mm
物像間距離 :230mm
【0048】
実施例3
単位:mm
面データ
面番号 r d Nd νd 光学要素
1 ∞ 3.000 1.516330 64.1 P1
2 ∞ 任意
3* 9.845 3.07 1.496999 81.5 L1
4 -94.337 1.28
5(ST) ∞ 0.20
6 -25.104 1.88 1.672700 32.1 L2
7 65.229 0.80
8 178.392 4.82 1.496999 81.5 L3
9* -12.751 8.78
10# -10.644 1.96 1.530481 55.7 L4
11# -13.781 4.50
12 ∞ 0.70 1.516330 64.1 P2
13 ∞ 0.20
像面 ∞
【0049】
非球面データ
第3面
k=-6.92516E-02,
A=-4.19061E-05,B= 1.51518E-06,C=-8.16996E-08,D= 1.38360E-09,E〜J= 0
第9面
k= 2.21936E+00,
A= 3.64424E-04,B= 3.65646E-06,C= 2.11184E-07,D=-2.16160E-09,E〜J= 0
【0050】
アナモフィック非球面データ
第10面
k= 0,
C11=-5.40557E-03,C13= 1.72839E-03,C15= 4.76815E-05,
C24= 3.56013E-04,C26=-9.25594E-06,C28=-5.95264E-07,
C41=-3.83571E-06,C43= 1.39549E-07,C45= 2.34604E-08
第11面
k= 0,
C11=-8.81589E-03,C13= 2.43696E-03,C15=-2.98954E-05,
C24= 4.44867E-04,C26=-1.36693E-05,C28=-3.14143E-07,
C41=-3.67858E-06,C43= 7.84118E-08,C45= 3.31286E-09
【0051】
光学材料の屈折率
光学要素 NC Nd Ne NF Ng
656.28nm 587.56nm 546.07nm 486.13nm 435.84nm
P1,P2 1.513855 1.516330 1.518251 1.521905 1.526213
L1 1.495136 1.496999 1.498455 1.501231 1.504506
L2 1.666606 1.672700 1.677651 1.687564 1.700113
L3 1.495136 1.496999 1.498455 1.501231 1.504506
L4 1.527670 1.530481 1.532747 1.537194 1.542587
【0052】
各種データ
焦点距離 :20.35mm(e線)
Fナンバー(有効Fナンバー):4.8(5.4)
投影倍率 :-0.1110236
読取幅 :220mm
物像間距離 :230mm
【0053】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】第1の実施の形態(実施例1)の光路図。
【図2】第2の実施の形態(実施例2)の光路図。
【図3】第3の実施の形態(実施例3)の光路図。
【図4】実施例1の縦収差図。
【図5】実施例1の横収差図。
【図6】実施例2の縦収差図。
【図7】実施例2の横収差図。
【図8】実施例3の縦収差図。
【図9】実施例3の横収差図。
【図10】実施例1の倍率色収差図。
【図11】実施例1の軸上色収差図。
【図12】実施例2の倍率色収差図。
【図13】実施例2の軸上色収差図。
【図14】実施例3の倍率色収差図。
【図15】実施例3の軸上色収差図。
【図16】画像読取装置の概略構成例を模式的に示す概略図。
【符号の説明】
【0055】
P1 原稿台ガラス
P2 カバーガラス
OP 読取レンズ
L1 第1レンズ(第1群,正レンズ)
L2 第2レンズ(第2群)
L3 第3レンズ(第3群,正レンズ)
L4 第4レンズ(第4群)
ST 開口絞り
IM 像面(光学像)
11 照明ユニット(照明装置)
12 3ラインCCD(1次元的撮像素子)
13a,13b,13c,13d,13e 反射ミラー
14 ハウジング
15 原稿カバー
AX 光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿の画像情報を読み取るために原稿画像を1次元的撮像素子に結像させる読取レンズであって、拡大側から順に、正の近軸パワーを有する第1群と、負の近軸パワーを有する第2群と、正の近軸パワーを有する第3群と、負の近軸パワーを有する第4群と、で構成され、アナモフィック非球面を少なくとも1面有するレンズを前記第4群中に有し、前記第1群中の正レンズが、少なくとも1面の非球面を有し、かつ、以下の条件式(1)及び(2)を満足することを特徴とする読取レンズ;
νd>62 …(1)
θgf>-0.0016×νd+0.6415 …(2)
ただし、
νd:アッベ数、
θgf:部分分散比であり、部分分散比θgfは式:θgf=(Ng-NF)/(NF-NC)で表され、
Ng:g線に対する屈折率、
NF:F線に対する屈折率、
NC:C線に対する屈折率、
である。
【請求項2】
さらに前記第2群と前記第3群との間に開口絞りを有することを特徴とする請求項1記載の読取レンズ。
【請求項3】
さらに前記第1群と前記第2群との間に開口絞りを有することを特徴とする請求項1記載の読取レンズ。
【請求項4】
前記アナモフィック非球面を有するレンズがプラスチック材料から成り、それ以外のレンズがガラス材料から成り、以下の条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の読取レンズ;
0.05<|φpla|/|φtotal|<0.3 …(3)
ただし、
φpla:アナモフィック非球面を有するプラスチックレンズのパワー、
φtotal:読取レンズ全系のパワー、
である。
【請求項5】
前記第3群中の正レンズが、以下の条件式(4)及び(5)を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の読取レンズ;
νd>62 …(4)
θgf>-0.0016×νd+0.6415 …(5)
ただし、
νd:アッベ数、
θgf:部分分散比であり、部分分散比θgfは式:θgf=(Ng-NF)/(NF-NC)で表され、
Ng:g線に対する屈折率、
NF:F線に対する屈折率、
NC:C線に対する屈折率、
である。
【請求項6】
前記第3群中の正レンズが、少なくとも1面の非球面を有することを特徴とする請求項5記載の読取レンズ。
【請求項7】
全系を構成するレンズ枚数が4枚であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の読取レンズ。
【請求項8】
原稿を照明する照明装置と、その照明装置で照明された原稿の画像を結像させる請求項1〜7のいずれか1項に記載の読取レンズと、その読取レンズにより形成された光学像を電気的な信号に変換する前記1次元的撮像素子と、を備えたことを特徴とする画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−8995(P2009−8995A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171847(P2007−171847)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】