説明

調剤台および薬剤取り揃え支援システム

【課題】調剤台の表示部に表示される薬剤名が、作業者に対して反対向きに表示されると、薬剤名の読み間違いが増え、薬剤の取り揃え間違に通じる。
【解決手段】薬剤名を表示する表示部18と、人の個人識別情報を検出する個人識別情報検出部と、表示部18および個人識別情報検出部を上面に配置した調剤台本体20aと、個人識別情報検出部で検出された個人識別情報より被検出者の認証を行う人認識部と、個人識別情報検出部で検出された個人識別情報より表示部18に表示される薬剤名の表示方向を決定する表示方向決定部と、を備えた調剤台11であり、調剤台11の表示部18に表示される薬剤名の表示方向と作業者の視線方向と同じような方向にして、薬剤取り揃え間違いが生じにくい調剤台11を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤の取り揃えを行う調剤台および薬剤取り揃え支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、病院の入院患者に投与する薬剤は、医師が作成した調剤情報に応じて、患者ごとのトレイに作業者が取り揃えている。
【0003】
図9に示すように、従来の薬剤取り揃えにおいては、薬剤の取り揃えが行われる調剤台1の表示部2には、調剤情報に応じて薬剤名が表示される。そして、作業者は調剤台1と一体となった薬剤棚3(薬剤が保管された棚)から薬剤を取り出し、調剤台1で薬剤を取り揃えている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、薬剤棚と一体となった調剤台ではなく、上面に表示部を備えた車輪付きの調剤台を用いることが考えられている。車輪付きの調剤台は、様々な薬剤棚の前に移動して薬剤の取り揃えを行うことができるので、多種の薬剤の取り揃えが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−187958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような車輪付きの調剤台は、調剤台の四方のいずれに立っても表示部を覗くことができる反面、作業者の立ち位置によっては調剤台の表示部に表示される薬剤名が反対向きに見えたり、横向きに見えたりすることがある。
【0007】
調剤台の表示部に表示される薬剤名が、作業者に対して反対向きに表示されると、薬剤名の判読方向と作業者の視線方向とが逆になり、薬剤名を読み間違い易くなる。
【0008】
また、薬剤名の中には、読み間違い易いものがある。例えば、「タキソール」と「タキソテール」、「イソプロン」と「インプロヘン」、「ミオナール」と「ミナトール」等である。
【0009】
このような薬剤名は、ただでさえ読み間違い易いが、薬剤名の判読方向と作業者の視線方向が異なると、さらに読み間違い易くなる。薬剤名の読み間違いは、薬剤の取り揃え間違いを引き起こしてしまう可能性があり、充分に留意する必要がある問題である。
【0010】
そこで、本発明は、薬剤取り揃え間違いが生じにくい調剤台および薬剤取り揃え支援システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するたに、本発明の調剤台は、薬剤名を表示する表示部と、個人識別情報を検出する個人識別情報検出部とが配置された調剤台本体と、前記個人識別情報検出部で検出された個人識別情報より被検出者の認証を行う人認証部と、前記個人識別情報検出部で検出された個人識別情報に基づいて前記表示部に表示される薬剤名の表示方向を決定する表示方向決定部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、調剤台の表示部に表示される薬剤名の表示方向を変えることで、薬剤名の読み間違いの発生を抑え、薬剤取り揃え間違いが生じにくい調剤台および薬剤取り揃え支援システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態1における薬剤取り揃え支援システムの概略図
【図2】同実施の形態1における調剤台と作業者とを上から見た図
【図3】同実施の形態1における調剤台のブロック図
【図4】同実施の形態1における調剤台の動作を示すフローチャート
【図5】同実施の形態1における視線方向に対する表示パターンを示す図
【図6】同実施の形態1における調剤台と、視線方向が90度の作業者とを上から見た図
【図7】同実施の形態1における調剤台と、視線方向が45度の作業者とを上から見た図
【図8】同実施の形態1における視線方向に対する別の表示パターンを示す図
【図9】従来の調剤台と一体となった薬剤棚の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、同じ構成には同じ符号を付して、適宜説明を省略している。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における調剤台11を含む薬剤取り揃え支援システム12の概略図である。
【0016】
本実施の形態1の薬剤取り揃え支援システム12は、患者ごとの調剤情報に従ってトレイ10に一般薬剤を払い出す自動払出機14と、患者情報と紐付けられて薬剤の調剤情報が記録されている薬剤情報管理装置15と、特定の人でなければ取り扱うことのできない特殊薬剤を取り揃える調剤台11とからなる。そして、自動払出機14と薬剤情報管理装置15と調剤台11は、ネットワーク16で相互に繋がり情報交換を行う。ただし、調剤台11とネットワーク16の無線送受信部17との間は、無線により繋がっている。
【0017】
このような薬剤取り揃え支援システム12を利用した薬剤取り揃え方法について、以下に詳細を説明する。
【0018】
まず、薬剤情報管理装置15から自動払出機14へ調剤情報を送り、自動払出機14は調剤情報に従ってトレイ10の領域13a、13b、13cへ一般薬剤を払い出す。ただし、自動払出機14がトレイ10へ一般薬剤を払い出す直前に、自動払出機14はトレイ10に取り付けられたRFIDタグからトレイ識別番号を読み取り、このトレイ識別番号を薬剤情報管理装置15へ送信する。そして、薬剤情報管理装置15は、調剤情報とトレイ10のトレイ識別番号とを紐付けて記録する。
【0019】
なお、トレイ10を領域13a、13b、13cに分けている理由は、一人の患者へ投薬する薬剤を、朝用(領域13a)、昼用(領域13b)、夜用(領域13c)と分けているためである。よって、この場合は、調剤情報には、患者の朝用、昼用、夜用の投薬する薬剤情報が記録されている。なお、ここでは、トレイ10が3つの領域に分かれている場合について説明しているが、領域数は3つに限られるものではなく、必要に応じて領域数は適宜設定される。
【0020】
その後、一般薬剤が払い出されたトレイ10は調剤台11へ移され、作業者が表示部18に表示される調剤情報に従ってトレイ10に特殊薬剤を取り揃える。本実施の形態1では、特殊薬剤は薬剤棚19a、19b、19cに保存されており、この薬剤棚19a、19b、19cから取り出される。
【0021】
なお、調剤台11は、主に調剤台本体20aと、調剤台本体20aの上面に配置された表示部18と、調剤台本体20aの下部に設けられた複数の車輪20bからなる。調剤台11が車輪20bを備えることで、作業者が調剤台11の位置を容易に動かすことができる。よって、作業者は、取り揃える薬剤が保管されている所(例えば、薬剤棚19a、19b、19cの近傍)に、トレイ10を載置した状態で調剤台11を移動させることができる。
【0022】
図2は、本実施の形態1における調剤台と作業者とを上から見た図である。
【0023】
薬剤棚19a、19b、19cの近傍で薬剤を取り揃える時、図2に示されるように、RFIDタグ21が取り付けられたトレイ10は、表示部18と並ぶように調剤台11の上に置かれて、作業者22によって、取り揃え作業が行われる。
【0024】
ここで、調剤台11の詳細な構成を、図3の調剤台11のブロック図を用いて説明する。調剤台11は、トレイ10のRFIDタグ21からトレイ識別番号を読取るトレイ検出部31と、トレイ10に取り揃える調剤情報を保持する調剤情報管理部32と、トレイ10に取り揃える特殊薬剤の薬剤名を表示する表示部18とを有する。
【0025】
さらに、調剤台11は、作業者22の個人識別情報のひとつである指紋情報を検出する指紋検出部33(個人識別情報検出部)と、指紋情報より作業者22が薬剤の取り揃えを許可されているか否かの認証を行う人認証部34と、指紋情報より作業者22の視線方向を算出する視線方向算出部35と、を備える。
【0026】
さらに、調剤台11は、視線方向算出部35より算出された作業者22の視線方向より表示部18に表示する薬剤名などの表示形式を決定する表示方向決定部36と、調剤台11と薬剤情報管理装置15との間で情報交換を行う無線送受信部37とを備える。
【0027】
次に、図4のフローチャートを用い、作業者22がトレイ10に特殊薬剤を取り揃える時、調剤台11の表示部18に表示される薬剤名の表示方向を変更し、その判読方向を作業者の視線方向と同じようにする調剤台11の動作について説明する。
【0028】
トレイ10を調剤台11に載せた後、まず、作業者22が実際に取り揃え作業を行なう時の作業位置(立ち位置)に立つ(ステップS00)。
【0029】
そして、作業者22は被検出者として例えば人差し指の指先を指紋入力部23の表面に密着させる。指紋入力部23は指紋検出部33の一部であり、指紋検出部33は作業者22の人差し指の指紋情報を検出する(ステップS01)。
【0030】
そして、検出された指紋情報より、作業者22が調剤台11で薬剤取り揃え許可された人物か否かの認証が行われる。まず、指紋検出部33で検出された作業者22の指紋情報は、人認証部34へ送られる。そして、人認証部34は、作業者22の指紋情報が調剤台11で薬剤取り揃えが許可された人物の指紋情報か否かを、無線送受信部37を介して薬剤情報管理装置15へ問い合わせる。
【0031】
一方、薬剤情報管理装置15は、調剤台11で薬剤取り揃えが許可された人物の指紋情報が基本指紋情報として登録されており、この基本指紋情報と調剤台11から送られてくる作業者22の指紋情報との照合が行われる。
【0032】
そこで、薬剤情報管理装置15は、人認証部34からの問合せに応じ、検出された指紋情報と基本指紋情報との照合が行われる。なお、指紋の照合は、指紋の各特徴点(分岐点、端点、三角州など)の位置と隆線の方向を指紋の特徴として利用する方法で行わる。そして、指紋情報とは指紋の各特徴点の位置と隆線の方向が含まれた情報を意味する。
【0033】
また、基本指紋情報の指紋方向と、検出された指紋情報の指紋方向とは必ずしも同じではない。よって、検出された指紋情報は、すこしずつ相対的に回転させながら角度を調整した後に、登録された指紋情報との照合が行われる(ステップS02)。
【0034】
また、この時、人認証部34は、検出された指紋情報と基本指紋情報とが一致した時の回転角度(角度差)を一時的に記録しておく。なお、基本指紋情報は、指の方向(指の長軸方向)が薬剤名の基本表示方向(0度)に等しくなるなるように登録されている。
【0035】
そして、照合の結果、検出された指紋情報が薬剤の取り揃えが許可された人物として登録されていた場合は、視線方向の算出へ進む(ステップS03)。
【0036】
ちなみに、視線方向とは、作業者22が調剤台11を見る向きのことであり、作業者22が薬剤名を読む時には薬剤名の判読方向(表示方向)と作業者22の視線方向が同じになるのが好ましい。
【0037】
視線方向算出部35は、人認証部34に一時的に記録されている指紋情報を読み出し、この指紋情報と薬剤名の基本表示方向との角度差に基づいて指の方向を決定する。そして、視線方向算出部35は指の方向から視線方向を算出する。なお、ここでは、表示部18の基本表示方向を0度とし、そこから表示部18の平面内で時計回りに回転させた場合の角度を、視線方向の角度としている。
【0038】
ここでは、簡易的な方法として、指の方向と視線方向とがほぼ平行であるとして、視線方向算出部35において、指の方向の値を視線方向の値として利用する。これは、人差し指の指先を指紋入力部23の表面に密着させる時の指の方向と被検出者の顔の向き(しいては視線方向)とが同じことが多いためである。図2の状態では、指の方向は0度であるから、視線方向も0度である。
【0039】
ただし、指の方向と視線方向とが常に必ず一致するわけではないので、指の方向以外の情報(人の位置等)を付加して、視線方向を補正してもよい。例えば、調剤台11の側面に赤外線等を利用した人感センサーを付けておき、実際の人の位置と指の方向とから、被検出者の姿勢と被検出者の顔の向きを算出して、視線方向を算出する(ステップS04)。
【0040】
なお、ステップS03での照合の結果、検出された指紋情報が薬剤の取り揃えが許可された人物として登録されていなかった場合は、表示部18に「あなたは、この調剤台での薬剤の取り揃えを許可されていません。」と未登録メッセージが表示される(ステップS09)。
【0041】
次に、ステップS04で算出された視線方向より、表示方向決定部36は、表示部18へ表示する薬剤名の表示方向を決定する。ちなみに、表示方向とは表示部18に表示される文字列(薬剤名等)が最も読み易い方向、つまり文字列の判読方向を意味する。
【0042】
作業者22の視線方向と薬剤名の表示方向が一致するのが最もよいが、視線方向と表示方向との角度差が30度程であれば、読み易さについては大きく変わらないと思われる。
【0043】
ここで、図5に示すように、表示方向決定部36には、8つの表示方向(8つの表示パターン)があり、視線方向が360度の中のどの角度であるかで表示方向を決定する。
【0044】
例えば、視線方向が335度〜0度(360度)〜25度であれば表示方向0度のパターンA、視線方向が25度〜65度であれば表示方向45度のパターンB、視線方向が65度〜115度であれば表示方向90度のパターンCである。なお、表示方向の変更によって、トレイ10の領域13a、13b、13cに対応する領域エリアは、領域13a、13b、13cの対応を維持しつつ、領域エリア内の文字列のみを回転するようにしている(図5では、パターンD〜Hの画面表示例は省略する)。
【0045】
なお、パターンAとパターンBは横書きで、パターンCは縦書きとなっているが、これおは、表示エリアによって縦書きと横書きを使い分けているためであり、表示エリアの状況によってはパターンCが縦書きであってもよい。
【0046】
ここで、作業者22の視線方向は0度であるから、表示方向決定部36は視線方向が335度〜0度(360度)〜25度の場合の表示パターンである、パターンAを選択する(ステップS05)。
【0047】
そして、表示パターンが決定すると、トレイ検出部31は、調剤台11に載せられたトレイ10のRFIDタグ21によりトレイ識別番号を検出する(ステップS06)。
【0048】
なお、RFIDタグ21の検出は、トレイ検出部31の一部であるアンテナ41、42より、RFIDタグ21の信号を受信して行われる。トレイ検出部31はアンテナ41,42のどちらが受信したかを判断することができる。トレイ10のRFIDタグ21は、トレイ10の側部の一方のみに存在するので、アンテナ41、42のどちらで信号を受信したことがわかれば、トレイ10を調剤台11に載せたトレイ10の方向(設置方向)の識別が可能である。
【0049】
図2では、アンテナ41がRFIDタグ21の信号を検出したので、トレイ10は正方向で調剤台11に載せられている。一方、アンテナ42がRFIDタグ21を検出したのであれば、トレイ10は反対方向で調剤台11に載せられることになる。
【0050】
そして、調剤情報管理部32は薬剤情報管理装置15へ、トレイ検出部31で検出されたトレイ識別番号より調剤情報を問い合わせ、その調剤情報を抽出する(ステップS07)。
【0051】
そして、調剤情報管理部32は、表示部18に調剤情報送り出す。さらに、調剤情報管理部32は、トレイ検出部31で検出されたトレイ10の方向も表示部18へ送信する。
【0052】
こうして、表示部18は、調剤台11で取り揃えが必要な調剤情報をパターンAの表示形式で表示する。この時、トレイ10には自動払出機14ですでに領域13a(朝用)、領域13b(昼用)へ一般薬剤が払い出されている。トレイ10は、調剤台11に正方向、逆方向のどちらでも載せることができるので、間違った方向でトレイ10に薬剤を取り揃えると、領域13a、13b、13cに取り揃えられる薬剤を間違えてしまう。
【0053】
そのようなことがないように、トレイ検出部31で認識したトレイ10の方向を基に(正方向)、表示部18の調剤情報は、正方向(上から朝、昼、夜の順番)で表示される。
【0054】
もしも、トレイ検出部31で反対方向と識別されていた場合は、表示部18の調剤情報の表示は反対方向(上から夜、昼、朝の順番)で行われる。もっとも、トレイ10がひとつの領域しかない場合は、トレイ10の方向を識別しなくてもよい。
【0055】
また、調剤情報には、自動払出機14の薬剤情報も含まれているが、表示部18は調剤台11で取り揃えが必要な調剤情報のみ表示する。
【0056】
このようにして、調剤情報を表示部18に表示する(ステップS08)。
【0057】
なお、図6は、作業者22の立ち位置はトレイ10の手前であり、作業者22の視線方向が90度の時を示す。この場合、表示部18は、図5における表示方向が90度であるパターンCで調剤情報を表示する。
【0058】
また、図7は、作業者22の立ち位置が調剤台11の角であり、作業者22の視線方向が45度の時を示す。この場合、表示部18は、図5における表示方向が45度のパターンBで調剤情報を表示する。
【0059】
このようにして、表示部18に表示される薬剤名を、作業者22が読み易い表示方向に変更することで、薬剤の取り揃え間違いを抑えることができる。
【0060】
なお、本実施の形態1の調剤台11に似た、上面に表示部を備えた会議用のディプレイ装置が、従来、考えられている(例えば、特開2000−163179号公報参照)。
【0061】
これは、この会議用のディスプレイ装置に人が近づくと、人感センサーによって人の位置を認識して、人の位置に判読方向を合わせてウィンドウを表示するものである。しかし、このディプレイ装置は、個人識別情報検出部を備えていないため、単にディスプレイ装置に近づいた人の影響を受けてウィンドウの表示方向を変更してしまう。
【0062】
よって、このディプレイ装置を調剤台11に用いると、作業者22以外の人がディスプレイ装置に近づくと、その人の影響を受けて、表示部の表示方向が変わってしまう。
【0063】
一方、本実施の形態1の調剤台11は、作業者22の指紋認証を利用して、作業者22が薬剤名を読み易い方向を決めるため、作業者22以外の人が近くにいたとしても、それらの人の影響受けた薬剤名の表示をすることはない。
【0064】
また、会議用のディスプレイ装置は、本実施の形態1のようにトレイ10の方向を識別した上で文字列の表示を変更することは考えられていない。よって、複数の領域13a、13b、13cを有するトレイ10の方向を反転させても、領域13a、13b、13cに追随して表示を変更することない。
【0065】
この後、作業者22は調剤台11で薬剤を取り揃えが終わり、取り揃え終了ボタン(図示せず)を押して薬剤取り揃えを終了する。すると、トレイ10に取り揃える調剤情報のすべての薬剤名(自動払出機14で払い出された一般薬剤の薬剤名と調剤台11で取り揃えた特殊薬剤の薬剤名)が表示される。
【0066】
そして、作業者22は、表示部18に表示された薬剤名の薬剤がトレイ10に取り揃えられているか、いないかの確認が行う。
【0067】
なお、調剤台11の表示方向は、指紋検出部33が指紋情報を照合する時に決められる。
【0068】
よって、指紋情報を照合する時に決まった表示方向で薬剤取り揃え作業、確認作業が行われるが、薬剤取り揃え作業を始めた後、作業途中で、表示方向を変更することも可能である。
【0069】
例えば、図2に示す位置で作業者22が薬剤取り揃え作業を行っており、この時、作業者22が、表示部18に表示される調剤情報の薬剤名の薬剤が薬剤棚19bを中心に保管されていることに気づく場合がある。
【0070】
この場合、作業者22は調剤台11と薬剤棚19bとの間に立ち、表示方向変更ボタン(図示せず)を押した後、指紋入力部23に人差し指を接触させると、指紋検出部33で指紋情報が検出され、その指紋情報を基に表示方向決定部36で表示部18の表示方向がパターンEに再設定される。
【0071】
このように、作業者22が途中で表示方向を再設定したい場合でも、調剤台11は簡単に表示方向を変更することができる。
【0072】
なお、上述した調剤台11の利用方法は、主に薬剤取り揃え作業に関することであるが、作業者22と異なる監査者によって、調剤情報どおりに薬剤がトレイ10に取り揃えられているかの監査作業に用いてもよい。
【0073】
つまり、薬剤の監査作業でも、まず、調剤台11が、監査者の指紋情報を検出し、認証した後、調剤台11の表示部18に表示される調剤情報の薬剤名は監査者が見易い方向で表示され、薬剤名の読み間違いを減らすことができる。
【0074】
なお、個人識別情報として指紋情報を用いた調剤台11について上述したが、個人識別情報として指紋情報以外を用いてもよい。
【0075】
たとえば、指の静脈情報を利用して視線方向を算出したり、網膜情報を検出し直接視線方向を測定したりして、表示部に表示される薬剤名の表示方向を決定してもよい。
【0076】
なお、指の静脈情報を利用する場合、作業者22の静脈情報を検出する静脈検出部を備え、指の静脈パターンを利用して本人確認を行う。指静脈検出部に指をかざすことで指の血管のパターンである静脈情報を抽出し、この静脈情報と、作業者22が事前に登録した基本静脈情報との角度差より算出した作業者22の指の方向より、視線方向算出部35は視線方向を算出する。
【0077】
この視線方向を利用して表示部に表示される薬剤名の表示方向を決定してもよい。
【0078】
また、本実施の形態1における視線方向に対する別の表示パターンを示す図を、図8に示す。図8と図5との違いは、表示方向45度(パターンB´)の場合に、文字だけでなく表示エリアも回転させている点である。例えば、人が認識し易い角度として30〜60度を設定し、この角度(パターンB´、D´、F´、H´)の場合にのみ、表示エリアも回転させることで、状況によっては、薬剤名が認識し易くなることもあると考えられる。
【0079】
また、本発明を応用して、トレイ10の外枠に対して斜めの仕切り板によってトレイ10の領域が分けられている場合は、トレイ10のRFIDにその情報を保存しておき、それに基づいて表示部18での表示エリアの方向を変更することで、表示エリアが見易くなる。なお、この場合は、トレイ10の仕切り板の角度に基づいて表示部18での表示エリアの角度を補正し、視線方向に基づいて表示部18での薬剤名の角度を補正することが望ましい。このように、前述の本実施の形態1と適宜組み合わせることで、薬剤名の読み間違いの発生を、より抑えることができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明にかかる調剤台は、薬剤名の読み間違いの発生を抑えることができるので、薬剤の取り揃え作業、監査作業に有用である。
【符号の説明】
【0081】
10 トレイ
11 調剤台
12 薬剤取り揃え支援システム
13a、13b、13c 領域
14 自動払出機
15 薬剤情報管理装置
16 ネットワーク
17、37 無線送受信部
18 表示部
19a、19b、19c 薬剤棚
20a 調剤台本体
20b 車輪
21 RFIDタグ
22 作業者
23 指紋入力部
31 トレイ検出部
32 調剤情報管理部
33 指紋検出部
34 人認証部
35 視線方向算出部
36 表示方向決定部
41、42 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤名を表示する表示部と、個人識別情報を検出する個人識別情報検出部と、が配置された調剤台本体と、
前記個人識別情報より被検出者の認証を行う人認証部と、
前記個人識別情報に基づいて前記表示部に表示される薬剤名の表示方向を決定する表示方向決定部と、を備えた
調剤台。
【請求項2】
前記個人識別情報検出部は前記被検出者の指紋情報を検出する指紋検出部であり、
前記人認証部は、前記指紋検出部で検出された指紋情報より前記被検出者の認証を行う
請求項1記載の調剤台。
【請求項3】
前記個人識別情報検出部は静脈情報を検出する静脈検出部であり、
前記人認証部は、前記静脈検出部で検出された静脈情報より前記被検出者の認証を行う
請求項1記載の調剤台。
【請求項4】
前記個人識別情報検出部で検出された個人識別情報より前記被検出者の視線方向を算出する視線方向算出部をさらに備え、
前記表示方向決定部は、前記視線方向算出部で算出された視線方向より前記表示部に表示される薬剤名の表示方向を決定する
請求項1〜3いずれか1項に記載の調剤台。
【請求項5】
前記個人識別情報検出部で検出された個人識別情報より前記被検出者の指の方向を算出し、前記被検出者の指の方向に平行な方向を前記被検出者の視線方向として算出する
請求項4記載の調剤台。
【請求項6】
前記調剤台本体は、設置面に移動用の機構を有する
請求項1〜5いずれか1項に記載の調剤台。
【請求項7】
請求項1〜6いずれか1項に記載の調剤台と、
患者情報と紐付けられて薬剤の調剤情報が記録されている薬剤情報管理装置と、
前記調剤情報に基づいて薬剤が取り揃えられるトレイと、
前記調剤情報に基づいて前記トレイに一般薬剤を払い出す自動払い出し機と、
前記調剤台において前記トレイに取り揃える特殊薬剤が保管された薬剤棚と、で構成された
薬剤取り揃え支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−4778(P2011−4778A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148312(P2009−148312)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】