説明

調味液及び食品の調味方法

【課題】従来の、食品に対する調味液の含浸方法では、調味液がしっかりと浸透するのに長時間を要していた。場合によっては、含浸不可能であることもあった。そこで調味液に浸した食品に圧力を加えたり、食品の水分を脱水するなどの方法が考えられたが、食品に対して処理を行うため装置や設備が大きなものとなってしまい、コストがかかり量産に適しているとはいえない。また、調味液の短時間かつ均一な浸透がなされているとはいなかった。
【解決手段】本発明は、食品の味付けに用いる調味液を、マイクロ・ナノバブル発生装置による処理を行うことにより、短時間で食品に含浸させることが可能となり、特に塩分以外の旨味成分の含浸を促進させることが可能となり、また調味液に処理を行うため食品に処理を加えるのと異なり装置、設備が簡単なものですみコストが削減でき、省エネルギーを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の調味液及び食品の調味方法に関し、調味液中に微細なマイクロ乃至ナノ級の空気泡(バブル)を発生させることにより、短時間で確実に味、風味を添加する方法、及び該方法に使用する調味液、及び味、風味を添加した食品、並びにマイクロバブル発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、牛肉、豚肉、鶏肉等の肉類や鮪、鮭、鱈、帆立貝等の魚介類、殻なし茹卵、各種の茹でた野菜など多くの食品に調味液をしみこませ、予め味つけを行って販売、調理したり加工食品の原料にすることが行われている。また、調味液(特に食塩水)に生卵や茹卵を浸して味付けを行うこともなされている。野菜や果物、加工食品或いは茹でた大豆などもこのような含浸処理(下味付け処理)がなされているものがある。
【0003】
しかし、食品を単に調味液に浸しただけでは、調味液を食品に十分に染み込ませるのに長時間を要し、素材の種類や大きさによっては数日間を要することもあり、味付けコストが高くなってしまっている。また、味や色の付き方にむらができてしまう。また、調味液に漬け込んで煮込むと素材が固くなったり皺ができたりして食味を低下させる。
【0004】
この内、食塩は比較的浸透性がよく、殻つき茹卵の場合ほぼ一日で塩味が内部に浸透する。しかし、醤油など食塩以外にアミノ酸など大分子を含むものは浸透性が悪く、殻つき茹卵の場合、食塩以外の味を浸透させるのにほぼ10日を要する。また、蒟蒻や豆腐も味の浸透性が悪い食品の代表である。特に、薄味な旨味を浸透させには数日〜数十日を要する。
【0005】
そこで、調味液に浸した食品や調味液を塗布した食品に、超音波をあてて味をしみこませるという方法(特許文献1、2)、減圧下で食品を調味液に浸す方法(特許文献3)、食品の水分を脱水したうえで調味液に浸す方法等が提案されている(特許文献4)。また、殻付き茹卵を加圧して塩味を付ける方法(特許文献5)、真空中で殻付き茹卵に塩味を付ける方法(特許文献6)もある。
【0006】
しかし、これらの味付け方法では、食品に対して処理を行うため装置や設備が大きなものとなってしまい、コストがかかり量産に適しているとはいえない。また、調味液の短時間かつ均一な浸透がなされるとはいえず、依然問題が残されている。また、こんにゃくに対しては、微小孔を開けるもの(特許文献7)、水分を除いた後に調味液に漬ける方法(特許文献8)、こんにゃく粉に粉末の調味料を加えてから液体アルカリと混ぜて成形する方法(特許文献9)などで味付けが行われている。これは、蒟蒻が非常に味付けが難しいことによる。しかし、これらは手間がかかるし(特許文献7、8)、また少量生産には向かないなどの問題がある。特に、こんにゃく粉に粉末の調味料を加えてから液体アルカリと混ぜて成形したものは、味が悪い欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−252077号公報
【特許文献2】特開平05−103635号公報
【特許文献3】特開2003−174850号公報
【特許文献4】特開2002−354988号公報
【特許文献5】特許第2851997公報
【特許文献6】特開平10−136943号公報
【特許文献7】特開平05−0316966号公報
【特許文献8】特開平11−008952号公報
【特許文献9】特開2003−079328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこの問題を解決するためになされたもので、味付け、風味付けに要する時間を従来に比して短縮し、またコストを著しく低減するとともに、大きく省エネルギーを図ることができるとともに、食品自体の味を生かして薄味を簡単に付けることができる、食品の味付け方法とそれに用いる調味液、及び調味食品を提供すること、更にはマイクロ・ナノバブル処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その手段として、本発明においては、食品の味付けに用いる調味液中に微細なマイクロ乃至ナノ級の空気泡(バブル)を発生させること、或いは、微細なマイクロ乃至ナノ級の空気泡(バブル)を発生させた水を調味液に混ぜることにした。この微細な気泡を発生させることにより、調味液中の水或いは調味成分のクラスターや分子を小さくさせ、味の浸透性が良くなったものと推察される。
【0010】
マイクロ・ナノバブルとは、微細な気泡をいう。特に気泡の直径の大きさによって数百nmまでのものをナノバブル、数百nmから数十μmまでのものをマイクロナノバブル、数十μmから数百μmまでのものをマイクロバブル、とに分かれる。本発明において、マイクロ・ナノバブルとは、ナノバブル、マイクロナノバブル、マイクロバブルの全てを含むものとし、また特に定義しないかぎり、ナノバブル、マイクロナノバブル、マイクロバブルがそれぞれ単一に存在する状態だけでなく、混在している状態をも含むものとする。
【0011】
マイクロ・ナノバブルを発生させる装置としては、現在2つの形式のものが知られている。一つは、マイクロ・ナノバブル現象を解明した、徳山工業高等専門学校教授の大成博文氏が開発した超高速旋回方式(株式会社ナノプラネット研究所のM2−LM/SUS等)、もう一つが、加圧減圧方式(株式会社アスプのSMX115型やAS−K3型等、株式会社大日のD−1型、D−2型、D−3型等)である。
【0012】
前者は、ポンプで圧力をかけた液体を送り込むと、装置内で旋回運動をする。遠心力で液体が外側へ寄ることで中心部は圧力が下がり、吸気口から気体を吸い込む。液体は装置の外周を、気体は中心部を高速旋回(毎秒400〜600回転)する。この高速旋回する気体の空洞部が、噴出口前後で速度差を生じた結果、空気が回転切断される。その空気はまるできし麺のような平たい帯状となり、捩じられ、引きちぎられ、マイクロバブル(直径が10μm〜数百μm以下の微細な気泡)となって噴出する(特許第3397154号等参照)。
【0013】
このマイクロバブルは、周囲の圧力が内部の圧力よりも高いため、次第に収縮してマイクロナノバブル(数百〜10μm以下)、更にはナノバブル(数百nm以下)になると思われる。もっとも、現在ナノバブルは明確には観察されていない。
【0014】
もう一つの方式は、ポンプ等で液体を加圧し、そこに空気を入れ、加圧下で空気を強制的に溶け込ます。この液体を圧力開放装置まで移送し気泡を発生させる。小さい気泡核が成長して白く見える気泡となる。前者に比べて、気泡の大きさは大きい。その他の方式によってもマイクロ・ナノバブルを発生させることができれば、いかなる方式による装置でもかまわない。尚、これらの各方式で発生する気泡は、周囲がマイナスに帯電しているため、寄り集まって大きくなることはない。
【0015】
本発明の場合、上記何れの方式も利用できる。但し、以下の実施例ではその多くが前者の装置を用いた。これは、装置や操作が簡単で、且つ効果が大きいことによる。特に、前者で処理した水の場合、生理活性に優れていると言われる。また弱アルカリ性になる。尚、両者の方式とも、水中の溶存酸素を増やし、酸欠を防ぐし、微生物の働きを活性化させると言われている。また、前者の装置の場合、調味液を繰り返し処理すると、その度毎に浸透性が良くなるが、後者の場合、1回処理すれば、後は何回処理しても、効果は変わらないように思われる。
【0016】
尚、水は単一分子では存在できず、水素結合により多数の分子からなるクラスター(分子集団)を形成する。この水のクラスターは存在場所の諸条件によってその大きさが異なる。クラスターの小さい水(以下「小クラスター水」ということがある)は、人間に対して生理学的および医学的に有用であるとされるほか、余分な酸素を含まないため自然界にあっては微生物の繁殖を抑制して良好な環境を保全すると言われている。このような有用な小クラスター水は、超音波の照射、遠赤外線の照射、電場や磁場を与えることなどで生成される(特開2009−125067参照)と言われている。
【0017】
但し、クラスターの大きさを測定することは現在不可能とされている。本発明の場合、マイクロ・ナノバブルを調味液中に発生させることにより、調味液中の水のクラスターを小さくしているかどうかは不明である。しかし、味の浸透性が向上することから見て、水や調味成分分子(塊)の大きさが小さくなったものと推定はされる。しかし、本発明で、調味成分の浸透性が何故向上するかは、実際のところ不明である。
【0018】
もっとも、水のクラスターを小さくすることができると言われている超音波や磁石処理などを行っても、本発明者らが実験したところ、味の浸透性の程度は何ら変わらなかった。このことから、味の浸透性には、水のクラスターは無関係と思われる。結局、マイクロ・ナノバブル処理(ナノ処理)では、何が変化したのか、今のところ、全く不明である。
【0019】
従来、このようにマイクロ・ナノバブルで調味液を処理して味付けに用いる技術は本発明者らが知る限り、知られていない。
【0020】
マイクロ・ナノバブルは、これを発生させる装置に液体を取り込み、装置外部から吸入した空気を液体に混合させて微細気泡を生じさせ、これを装置から噴出させることによって発生するものである。そこで、調味液をマイクロ・ナノバブル発生装置に取り込み、空気と混合させて微細気泡を生じさせ、装置から噴出させる(超高速旋回方式、大成方式)、或いは、水をマイクロ・ナノバブル発生装置に取り込み空気と混合させて微細気泡を生じさせ、装置から噴出させる(加圧、減圧方式)という処理を行う。
【0021】
マイクロ・ナノバブル発生装置で水を処理した場合には、この処理水を調味液に加え、或いはこの処理水に調味成分(例えばカレー粉等)を混合して味付けに用いる。この場合の調味液と処理水の比率については、これは調味液の種類により異なるが、概ね1対1程度が好ましい。但し、処理水に調味液を加えた場合、浸透性は調味液自体をナノ処理した場合よりも劣る。上記処理を行った調味液或いは、処理水を混ぜた調味液を用い、食品を調味液に浸すことにより短時間での含浸処理が可能となる。
【0022】
尚、本発明では微細空気泡を調味液中に発生させるので、調味液中での浮遊菌が増殖し、この処理をした調味液で味付けすると食品が腐敗し易くなる。従って、空気を導入する際に、殺菌フィルターを設置することが好ましい。また、空気の代わりに窒素ガスを吹き込んで酸素を増やさない方法もある。更に、マイクロバブル発生装置で処理した調味液(以下、ナノ処理調味液と言う)は、加熱や加圧・加熱、紫外線照射などの方法で殺菌することが好ましい。菌を死滅させる加熱殺菌温度と時間は75℃〜130℃で1分〜60分、加圧は5〜10気圧程度で行う。
【0023】
本発明では、特に限定することなく種々の食品の含浸処理が可能である。例えば、本発明で用いることができる食品としては、葉菜、根菜、きのこ等の野菜、果物、穀物、豆類、肉類、魚貝類、生卵、茹卵、練り製品、これらの加工食品があげられる。野菜類や穀物類は、加熱しておく必要がある。含浸処理は、通常、これらの食品とナノ処理した調味液をプラスチック製袋や容器に入れて放置しておくことにより行う。なかでも、殻付きの茹卵、こんにゃく、豆腐、茹でたじゃがいもなど、味がしみ込みにくいものに好適である。
【0024】
殻付き生卵、こんにゃく、ジャガイモ、竹の子、大根、里芋、玉葱、蓮根、蕗等の生の野菜類は、ナノ処理した調味液とともに袋に入れて数分〜数時間加熱してから数十分〜数日放置しておいても、味が浸透する。
【0025】
調味液の組成成分としては、目的や好みに応じて適宜選択使用されるが、例えば、塩味、醤油味、味噌味、カレー味、ガーリック味、生姜味、和風ダシ、かつお風味、おでん味、わさび味、とうがらし味、キムチ味、バター味、チーズ味、チキン味、ビーフ味、ロースト味、エビ味、カニ味、ホタテ味、エスニック風味・中華風味などのチリ添加風味などの呈味成分;抹茶味、コーヒー味、こぶ茶、バニラ・イチゴ・オレンジ・レモン・グレープ・シソ・マンゴー・スイカ・ミント・チョコレート・メロン・バター味などの香料味(フレイバー)などの嗜好成分;或いはDHAやEPA、カルシウムやヨードなどのミネラル、各種ビタミン類、アミノ酸類などの栄養成分;ブランディ、ワイン、日本酒などのアルコール類、着色料など、水に溶けているものであれば何でも使用できる。現在の大成式のマイクロバブル発生装置では、液体バターやマヨネーズなど粘度の高いものは処理出来ないが、油分も乳化したり少量であれば、処理可能である。また、少量の油脂も液体の温度を上げて溶解すれば、処理可能である。
【0026】
これらは、例えば醤油味やだし味のようにそれ単独で使用されるものもあるが、バニラやイチゴなど香料成分は、アルコールや砂糖、ステビアなどの植物由来の甘味料、塩などに加えて使用する。また、コブ茶は塩味ベースであり、コーヒーやチョコレート、紅茶などには砂糖を加えて使用する。但し、カレー味でパウダーを用いるとか、ガーリックでニンニクを潰したもののように、個体成分を含むものは、現在のところ超高速旋回方式では、処理しにくい。従って、カレー味やガーリック味の場合、エキスを水で溶いたものを使用する。或いは、カレー粉や磨り潰したにんにくなどを、ナノ処理した水に溶解して使用する。或いは、カレー粉やすりおろしたガーリックなどは、加圧減圧方式の装置で処理する。また、マヨネーズやバターのように粘度の高いものも超高速旋回方式では今のところ処理できない。これらの場合も、そのエキスで類似の味が出せれば、それを使用するとよい。着色料は、それぞれの素材たとえば蕗の色を鮮やかにするためにも用いられるが、白いもの、例えば剥き茹で卵や白いこんにゃく、豆腐などに様々な色を付けるためにも、用いられる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は以上説明した通り、調味液或いは調味液に使用する水をマイクロ・ナノバブルで処理する方法、処理した調味液、或いはこの調味液で味付けした食品である。
従って、
(1)簡単な操作で食品への浸透性に優れた調味液を作ることができる。また、その効果は半月〜1ケ月程度持続する。
(2)味付け速度を速めることができ、味付けコストやエネルギーを大幅に低減することができる。
(3)塩味は勿論のこと、旨味成分も十分に浸透させることができる。また、薄い味の調味液の浸透も十分に行える。
(4)味や色の付き方も偏りが小さくなる。
(5)処理した調味液を加熱殺菌しても、その浸透性の効果は変わらない。
(6)処理した調味液を殺菌することにより、長時間(1ケ月程度)冷蔵庫で保管することができる。
(7)殻付き茹卵や蒟蒻など、調味液が浸透しにくい食品への調味液の浸透が早く且つ確実に行える。
(8)調味液が浸透した食品は、加熱したりせず、自然な状態で旨味成分や塩分が浸透し、食品本来の味が保たれている。
(9)蒟蒻には焦げ目が付かないと言われているが、本発明方法で味付けした蒟蒻を鉄板で焼くと、焦げ目がついて、ステーキみたいになる。
(10)野菜類は調味液を加えてぐらぐら煮ないので、形はそのままで、大根などもそのものの味が保たれる。
(11)少量の油脂は乳化されるのか、水に簡単に溶解する形となる。
(12)短時間処理が可能で、味付けに加熱を不要とするので、省エネルギー効果が大きい。
などの効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】超高速旋回方式の説明図である。
【図2】マイクロ・ナノバブル処理装置(ナノ処理装置、テストマシン)の正面図である。
【図3】加圧減圧式方式の説明図である。
【図4】(a)は卵と調味液を袋に入れた状態の正面図、(b)は空気を抜いた状態の正面図である。(実施例2)
【図5】(a)は1日目、(b)は2日目、(c)は3日目の卵の状態をそれぞれ示す縦断面図である。(実施例2)
【図6】(a)板蒟蒻と調味液を袋12に入れて密封した状態の正面図、(b)は1時間後、(c)は5時間後の状態を示す正面図である。(実施例5)
【図7】(a)白玉蒟蒻とイチゴシロップを袋に封入した状態の正面図、(b)は2時間後、(c)は6時間後の白玉蒟蒻の状態をそれぞれ示す正面図である。(実施例6)
【図8】板蒟蒻をスライスした状態の斜視図である。(実施例7)
【図9】蒟蒻ステーキの斜視図である。
【図10】(a)は蒟蒻ジャーキーの斜視図、(b)は蒟蒻グミの斜視図であ。(実施例8)
【図11】(a)は茹でた皮つきジャガイモを調味液とともにビニール袋に入れた状態の正面図、(9b)は、この味付けジャガイモと塩バターともにビニール袋に入れた状態の正面図である(実施例9)
【図12】生イカと調味液をプラスチック容器に入れた状態の正面図である。(実施例10)
【図13】マイクロ・ナノバブル処理装置(テストプラント)の一例を示す正面図である。(実施例13)
【発明を実施するための形態】
【0029】
殻つき茹卵に、マイクロ・ナノバブル発生装置による処理を加えた調味液を用い味付けを行う。味付け方法は食品に調味液を塗布する、或いは食品を調味液に浸すことである。以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
(調味液のマイクロ・ナノバブル処理)
図1は、超高速旋回方式(大成式)装置の説明図、図2は、図1のマイクロバブル発生装置を用いるマイクロ・ナノバブル処理装置(テストマシン)の一例、図3は、加圧減圧式装置の説明図((株)大日工業)、である。これらの装置で、調味液にマイクロ・ナノバブル処理を行う。本発明では、主として、図2の装置を用いて実験した。
【0031】
図1は、マイクロバブルを発生させる原理図で、まず、ポンプ1で圧力を掛けた液体(水や調味液)2をマイクロバブル発生装置3に送り込むと、装置3内で液体2が旋回運動をする。装置3内部では、遠心力で液体2が外側へ寄ることで中心部は圧力が下がり、吸気口4から気体5を吸い込む(自吸)。装置3内で液体と気体が旋回運動をする。その回転数は毎秒400〜600回転にもなる。液体2は装置の外周を、気体5は中心部が超高速で旋回する。この超高速旋回する気体の空洞部が、噴出前後で速度差を生じた結果、気体が回転切断され、マイクロバブルとなって装置3の出口6から噴出する。そして、マイクロバブルは周囲の圧力に押されてナノバブルにまで縮小すると思われている。
【0032】
図2は、図1のマイクロバブル発生装置3を用いた、5L程度の調味液を処理できる小型のマイクロ・ナノバブル処理装置(以下、ナノ処理装置、テストマシンと言う)10である。この処理装置10は、タンク2Aとポンプ1を吸水管1Aと送水管1Bでつなぎ、送水管1Bの先端はマイクロバブル発生装置3の先端部近くに連結され、マイクロバブル発生装置3の基部には送気管4Aが連結されている。ポンプ1で液体(調味液)をマイクロバブル発生装置3に送り込むと、空気5が吸気口4から吸い込まれ、調味液2と攪拌されて出口6からマイクロバブルMBが噴出される。図中、2Bは液面であり、調味液の種類によっては液面2Bが泡で盛り上がる。そして、以下の実施例(旋回方式)では、この図2に示す装置10を用いて調味液をナノ処理した。
【0033】
実験に用いたマイクロバブル発生装置3は、径が50mm、長さが100mm程度であり、これで、1〜10L程度の液体を処理できる。処理液体が100〜500Lもの量になると、この程度の装置が複数台(4〜6台程度)必要となる。
【0034】
図3は、加圧減圧式装置の一例を示すものである。これは、株式会社大日工業の特開2010−22955の第1図に示されたものである。この装置7は、第一の加圧槽8Aと第二の加圧槽8Bで加圧して気体(空気)を液体に溶解したのち、減圧部9で常圧に戻してマイクロバブルを発生させるものである。この種の装置は、様々な形式のものが提案されており、図3のものはその一例である。
【0035】
図2の装置を用いて、調味液のナノ処理を行う。この装置は、タンク容量が約8Lで5L程度の調味液を一度に処理できるテストマシンである。そして、上記マイクロバブル発生装置3の場合、1分間に5L程度の調味液を処理できる(5Lの調味液ならば、1分間に1回転処理できる)。そして、5Lの調味液を20〜30分間処理すると、約20回転〜30回転処理したことになる。これで、調味液にマイクロバブルやナノバブルが十分に発生したことになる。同じ条件で2時間処理しても、効果は余り変わらない。
【0036】
調味液の組成成分は、前述した通り、塩味の他、醤油味等の旨味成分や色素、アルコール等であり、本発明処理でこれらの食品への浸透性が極めて良くなる。本発明に用いた調味液の一例を、次に示す。
【0037】
(調味液A)
和風だし(希釈用)。これは、株式会社創味食品のものであり、しょうゆ(本醸造)、風味原料(鰹節)、砂糖、食塩、醗酵調味液、調味料(アミノ酸等)(割合不明)からなる。これに、必要に応じて少量の砂糖や味醂、調味液を加え、原液のまま、或いは3〜10倍に薄めて被処理液とする。この被処理液4〜5Lを20〜30分間ナノ処理(図2の装置でのナノ化)した。
(調味液B)
おでん下味調味液(メーカー不明)。この原材料は、砂糖、しょうゆ、かえしょしゆ、アミノ酸液、ビーフブイヨン、鰹節エキス、蛋白加水分解物、かつおだし、ポークエキス、こんぶエキス、調味料(アミノ酸等)、アルコール、酸味料、マンニトール(割合不明)からなる。これを、原液のまま、或いは4〜5倍に薄めて使用或いは10〜15倍程度に薄めて使用する。この被処理液4〜5Lを図2の装置で20〜30分間処理した。
(調味液C)
醤油(ヤマキ印)と調味液Aの和風だしを1対1で混合したもの(原液)を、図2の装置で20〜30分間ナノ化処理した。
(調味液D)
島根ワイナリーのブドージュース750ccと赤ワイン300ccを混合し、同様に図2の装置でナノ処理したもの。
(調味液E)
市販の白ダシ1Lを図2の装置で20〜30分間ナノ化処理(2分間加熱)したもの。
(調味液F)
バニラ味。1Lの水を図2の装置で5分間ナノ処理したナノ処理水100cc(3分間加熱)、これに砂糖8gとバニラエッセンス7滴を加えたもの。
(調味液G)
カレー味。1Lの水を5分間ナノ処理したナノ処理水100cc、アルコール小さじ2杯、カレー粉小さじ3杯、ブイヨン1個を良く攪拌し、沸騰するまで2分間煮沸する。また、カレー粉の代わりにニンニクをすり下ろしたもの小さじ3杯を用いたガーリック味のものも試作した。尚、調味液Gに用いた水は、株式会社大日工業のSMX115型装置を用いて処理したものである。また、この装置で、カレー粉やすり下ろしたニンニクを溶かした液G′もナノ化できる。
(調味液H)
イチゴシロップ或いはオレンジシロップを原液のまま図2の装置で同様に15分間ナノ処理(非加熱)したもの。
【0038】
尚、上記各調味液の多くは、ナノ処理後に加熱処理した。加熱処理は、調味液の量にもよるが、沸騰してから2〜3分加熱を続けた。加熱をしても、ナノ処理の効果は1ヶ月以上持続した。尚、加圧加熱殺菌や紫外線殺菌も可能であるし、空気の代わりに窒素ガスを使用してもよい。
【実施例2】
【0039】
(茹卵への調味液の浸透1)
図4(a)に示すように、七部茹での殻付き茹卵11を、30分間ナノ処理した調味液Cを加熱消毒(75〜100℃、2〜3分)したもの5〜10ccとともにプラスチック袋12に入れてから、同図(b)のように空気を抜き、冷蔵庫で保管した。
【0040】
そうすると、図5(a)に示すように、1日目(24時間後)には気泡部分11aに調味液Cが含浸しているのが見られた。2日目(48時間後)には、図5(b)に示すように、調味液Cが白身11bの部分に薄く薄茶色に含浸しているのが見られた。3日目(72時間後)には、図5(c)に示すように、黄身11cを含む全体に調味液Cが含浸しているのが見られた。4日目には、完全に味が浸透していた。この味付け卵は非常に美味であった。
【0041】
茹卵は、生卵に熱を加えて、固茹卵、七部茹卵、半熟卵或いは温泉卵とする。これらは、温度及び時間を調整することで任意に作ることができる。また、大量に作る場合には、従来通り、容器に生卵を数百個単位で入れておき、釜で湯掻いて製造する。固茹卵の場合、92±2℃で6分間、七部茹卵の場合、92±2℃で4〜5分間、半熟卵は92±2℃で3分間、温泉卵は65〜68℃で20分間湯掻いて得られる。ここに、七部茹とは、黄身がドロッとした状態のものを言う。尚、本発明で湯掻くことには、蒸気での加熱その他の加熱手段を用いることも含むものである。このようにして得た殻つき茹卵を試料とした。但し、固茹でだと味が浸透しにくいので、固茹でと半熟の間程度即ち、七部茹で程度のものを用いることが好ましい。また、醤油味やカレー味の場合、卵の殻に色が付く可能性があるので、赤玉を用いることが望ましい。卵は、生まれて3〜5日たったものが、湯掻いてから殻が剥きやすい傾向がある。
【0042】
同様にして、市販の白ダシの原液を同様にしてナノ処理したもの(調味液E、加熱処理)も、3〜4日で完全に浸透した。また、調味液Fの3.5ccを用いて、実施例2と同様にして殻付き味付け茹卵を得た。得られた卵は、約3日でほんのりバニラの香りが付いた。
【実施例3】
【0043】
(茹卵への調味液の浸透2)
実施例2で用いた茹卵に、調味液GやG′のカレー味及びガーリック味の調味液を用いて、実施例2と同様に処理した。4〜5日目で、カレー味及びガーリック味が十分に中まで浸透した茹卵が得られた。尚、この調味液G′は、ナノ処理後に2〜3分加熱処理した。
【0044】
(比較例1)
実施例2で、ナノ処理していない調味液Cを用いて、同じく七部茹での卵を処理したところ、7日経っても、塩味のみが強く感じられ、醤油やアミノ酸などの旨味成分は余り感じられなかった。
【実施例4】
【0045】
(茹卵への調味液の浸透3)
次に、殻無し茹卵の味付けについて説明する。殻を剥いた固茹で〜七部茹での茹卵を、図4と同様にプラスチック袋に入れ、同様に調味液Cのつゆの原液をナノ処理してから加熱処理し、その5cc程度も袋に入れて冷蔵庫に保管した。1時間後には、表面から2mm程度調味液が含浸し、白身に若干着色がみられた。白身の味は調味液の味であった。1日でほぼ完全に味が浸透し、2〜3日後には、調味液が白身黄身とも全体に十分に含浸し、味は非常に美味であった。即ち、風味や味が、素直で、素材の味が正直に生きている。
【0046】
この味付け剥き卵の特徴は、柔らかい仕上がりで、一般的な煮卵と異なり、生地そのままで卵特有の香りを残しながら、黄身の中心部までしっかりと味付けができ、剥き卵とは全く異質の調味液の旨さを表現できた食品となった。尚、マンゴーの色と味をもつ調味液を作り、ナノ処理と加熱処理(2〜3分)してから、剥き卵(殻無し茹卵)とともにプラスチック袋に入れておいたところ、5時間程度でゴールド色でマンゴーの味が全体に含浸した剥き卵が得られた。
【0047】
(比較例2)
剥き卵に、実施例4に用いた調味液Cをナノ処理せずにそのまま用い、袋に入れて冷蔵庫に保管しておいたが、3日たっても、味は中まで浸透せず、表面のみに止まっていた。
【実施例5】
【0048】
(蒟蒻への調味液の浸透1)
図6(a)に示すように、通常の板蒟蒻(13cm、7cm、2.5cm)13を、2分間殺菌のため煮沸した後、調味液A(20分間ナノ処理、2〜3分加熱処理)の原液30ccとともにプラスチック袋12に入れ、空気を抜きながら密封して冷蔵庫に保管する。調味液に漬けてから1時間後には、図6(b)に示すように、調味液Aの色素Aaは表面から2mm程度浸透しており、全体にほどよい味がついていた。5時間後には、図6(c)に示すように、色素Aaは表面から1cm程度浸透しており、完全な味付け食品に仕上がっている。しかも、蒟蒻生地の食感が残り大変美味しく、蒟蒻特有の臭いも消えた。尚、1時間程度では中心部は全く生蒟蒻と同じであるが、含浸が進行しているため、水洗いしても、色素、味ともに落ちない。一晩漬けておくと、味は完全に中心部まで浸透していた。尚、豆腐の場合、同様に処理すると、1時間で味が浸透した。非常に美味であった。
【0049】
(比較例3)
同じく、調味液Aの原液をそのまま用いて蒟蒻を同様に処理したが、数日経っても、表面のみに味や色素の付着は見られたが内部へのい浸透はなく、水洗いしたら、付着していた味や色素は消失した。2ケ月程度で味特に塩分が中まで浸透していたが旨味成分はなかなか入らない。2週間では、芯まで入らない。調味液を10倍程度に希釈したものは、2ケ月でも浸透は殆ど見られなかった。蒟蒻は、一般に味付けが不可能ないし非常に困難といわれている通りであった。尚、本発明でも、濃い味は早く浸透し、薄味は浸透に時間がかかる。それでも、10時間もすれば、薄味(10倍希釈)でもほぼ完全に浸透する。
【実施例6】
【0050】
(蒟蒻への調味液の浸透2:白玉蒟蒻への甘味と色素の浸透)
図7(a)に示す通り、山形産の白玉蒟蒻(直径約2〜3cm)14の5個を、イチゴシロップ(加糖、15分間ナノ処理した調味液H、加熱処理)の20ccとともにプラスチック袋12に封入し、冷蔵庫に保存した。袋に入れてから、2時間後には、図7(b)に示すように、外側から3mm程度まで色素Haが浸透していた。6時間後には、図7(c)に示すように、80%赤い色が浸透していた。そして、甘くてイチゴ風味がした。オレンジシロップやグレープドリンク、抹茶シロップ、及び調味液D(ワイン)でも、同様の結果が得られた。尚、アロエやナタデココも、調味液Hで処理したものは1時間程度で色と味が含浸した。これを、ヨーグルトに混ぜると、赤い綺麗な色のアロエやナタデココの粒が映えて見える。
【0051】
(比較例3)
同じイチゴシロップを、ナノ処理をせずに同様に白玉蒟蒻を漬けたところ、6時間経っても、表面のみ薄く着色したのみで、しかも水洗いすると、色は脱落した。3日程度経っても、同様であった。
【実施例7】
【0052】
(蒟蒻への調味液の浸透3:蒟蒻ステーキ))
実施例5の板蒟蒻13を、2分間殺菌のため煮沸した後、調味液A(加熱殺菌せず)を水で4倍希釈してナノ処理した調味液の30ccとともにプラスチック袋12に入れ、空気を抜きながら密封して冷蔵庫に保管する。調味液に漬けてから5時間後に、袋12から味付け蒟蒻13′を取り出して、厚み7mm幅にスライスした。このスライスした蒟蒻15(図8)の5枚をフライパンで30秒程度焼いてみたところ、図9に示すように、表面の一部があたかもステーキのようにきつね色に焦げた状態のもの16が得られた。この焦げた色16aは、調味液が焦げたものである。この焼いたスライス蒟蒻16を食してみたところ、適度な塩分や調味成分と蒟蒻本来の食感が感じられ、美味であった。この焼いたスライス蒟蒻16にマヨネーズを付けてたべると非常に美味となる。
【0053】
(比較例4)
実施例7と同じスライスした未処理の蒟蒻を、フライパンで焼いてみたところ、水分が抜けでるだけで、表面にはまったく焦げ目はつかなかった。また、ステーキ蒟蒻として市販されているものもあるが、これには味は全く付いていない。
【実施例8】
【0054】
(蒟蒻への調味液の浸透3:蒟蒻ジャーキー、蒟蒻グミ)
実施例7で得られたスライスした蒟蒻15(図8)を、水分が20〜30%になるまで乾燥すると、あたかもジャーキー(干した乾燥肉)のような歯ごたえのある蒟蒻ジャーキー17(図10(a))が得られた。また、水分が4050%程度まで乾燥すると、図10(b)に示すようにグミのような食感のあ蒟蒻グミ18が得られた。
【実施例9】
【0055】
(野菜への調味液の浸透)
(1)茹で竹の子
上記(1)の調味液が、2つ割りの水煮竹の子350gを再加熱(5分)したものと、調味液A400ccと水1600ccに砂糖50gを混ぜたものをナノ処理した調味液30cc(非加熱処理)を、プラスチック袋に入れて冷蔵庫で保管する。6時間後に、薄味が含浸した。色は薄色で上品な味がした。12時間後には、全体に薄味が含浸し、美味であった。
(2)じゃがいも
皮付きじゃがいも20を高圧鍋で10分間ボイルし、冷却後、図11に示すように、茹で竹の子の場合と同じ調味液A30ccを同じく袋12に入れた。3時間後に30%程度含浸し、30時間後には中心部まで味が含浸した。この味付けじゃがいもは、一般的なふかしいもと異なり、食感、特にのどごしがよく、良質な味付けふかしいもとなった。この味を付けた皮つきのじゃがいも21を、袋12に塩バター22の5ccとともに封入し、電子レンジで加熱したところ、市販の塩バターじゃがいもと全く異なる風味、味のものが得られた。普通、おでん種のように、ことこと煮込まない限り、皮つきいもなどはまずそのままでは味付けできない。
(3)レンコン
市販のボイル蓮根(直径4cm:長さ6cm)を再ボイルして冷し、竹の子と同じ調味液でナノ処理したもの20ccとともにプラスチック袋に入れて封をし、冷蔵庫で保管した。1時間後には、表面に若干の含浸が見られ、6時間後には全体に含浸していた。調味液と蓮根の色が似ているため色での含浸の状態は確認し辛いが風味で確認できた。歯切れのよい食感も失われていなかった。
(4)大根
直径5cm:長さ6cmの大根の皮を剥き、圧力鍋で7分間ボイルして冷し、これと、調味液Bを17倍希釈し図2の装置で1分間ナノ処理と2分間の加熱処理をした調味液の10ccをプラスチック袋に入れて冷蔵庫に保管する。2時間後に表面より1mm前後浸透、5時間後に、80%浸透。その後、袋からだしても、含浸の程度は進行した。この味付け大根は、5時間処理時点でも非常に美味で、大根の甘さもしっかり保たれていた。市販のオデン大根との相違点は、全く煮崩れしておらず、素材に和風だしの美味が含浸していることである。尚、この大根は、袋に詰めたまま出荷し、おでん種として使用することもできる。
(5)その他
茹でた里芋も茹でた玉葱も6時間程度で完全に含浸していた。特に、玉葱は甘味を完全に残し、調味液とのバランスが非常によくできた。玉葱を煮込んだ場合、煮汁が外にでるが、本発明の場合、中に封じられた状態となっている。茹でた蕗は、3時間で完全に浸透していた。蕗の場合、処理後も原型のまま、色も形も風味も食感も素材そのものの感じが保持されていた。また、湯掻いた枝豆も6時間程度で鞘内部の豆にまで十分味が浸透していた。普通、枝豆は塩味であるがそれとは全く異なった美味しい味に仕上がっていた。味付け後、冷凍保存すればよい。
【実施例10】
【0056】
(生イカへの調味液の浸透)
鮮度のよい生イカ(刺し身用するめいか)大一匹(胴長20cm)23を洗浄して内臓をとり、上記野菜の場合と同じ調味液50ccとともに、図12に示すように丸ごとプラスチック容器(タッパーウエア)24に入れ、冷蔵庫に保管する。6時間後に、調味液は全身に含浸した。風味は良好であった。このイカは、生食或いは焼きイカ等に最適なものである。また、この調味液に6〜10時間漬けたものを一夜干しにして真空パックにすれば、遠方に搬送することもできる。
【実施例11】
【0057】
スライスした肉を同じ調味液を漬けておくと、1時間で味が浸透した。この肉は焼き肉などに最適である。また、肉加工品や魚加工品(ハムやソーセージなど)の下味付けに従来は時間を要しているが、これが数分の一の短時間で処理できる利点がある。また、茹でた赤貝などの貝類の味付けや下味付けも、従来数日掛かっていたが、茹でた赤貝などはほんの1時間で下味処理ができるなど、迅速性に富むものである。更に、魚の干物の場合も、乾燥前に下味付けすることが行われているが、本発明の調味液を用いれば、1〜数十分の浸漬で十分な下味が付く。
【実施例12】
【0058】
その他、浅漬けの元をナノ処理すると、浅漬けに1日程度かかるところを数時間で漬物が完成するし、業者が煮豆の下味付けする場合に、1〜2日で味付けできるなど、処理時間の大幅な短縮が可能となる。また、大根や蒟蒻、ゆで卵などのおでん種を前もって本発明の調味液で処理しておけば、冷しおでんとしてそのまま食することができるなど、食文化の多様性にも資するものである。
【実施例13】
【0059】
図13は、図2のマイクロ・ナノバブル処理装置10を移動可能に仕上げたマイクロ・ナノバブル処理装置(テストプラント)である。この処理装置40は、台車41にポンプ42とタンク43を設置し、ポンプ42とタンク43は吸水管44及び排水管45で連結する。排水管45の先端はマイクロバブル発生装置3の前寄りに連結され、また、マイクロバブル発生装置3の基部にはエアホース46が連結されている。エアホース46の基部はエアフィルター47に連結されている。符号48は操作盤、49はキャスターである。また、符号50は、処理した調味液を取り出すための取り出し口である。この装置40は、約20Lの調味液を処理することができる。但し、20Lの調味液を十分に処理するのには1時間も1時間半も時間がかかる。そこで、このようにな場合、マイクロバブル発生装置3の数を2〜4個程度まで増やして処理をおこなえば、処理時間は1/2〜1/4まで短縮できる。その場合、ポンプの数も増やす必要がある。同様の理論で数トンの調味液のナノ処理も可能である。尚、ナノ処理中、かなりの熱量が発生する。そこで、タンク43を二重構造などにしたり、或いはタンク43内外に冷却配管を設けて冷却水を流すなどして、調味液の温度の上昇を防ぐ事が、品質保持上も好ましい。また、エアフィルター47として殺菌フィルターを用いると、空気中の浮遊菌が調味液中に混入するのを防ぐことが出来る。
【0060】
尚、工業的に大量の調味液が必要になる場合、数百L或いはそれ以上の容量のタンクを使用すれば、よい。その場合、マイクロバブル発生装置3は10個〜20個或いはそれ以上など、処理する調味液の容量に合わせた数のマイクロバブル発生装置3及びポンプが必要となる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
調味液を、マイクロ・ナノバブル処理(ナノ処理)することにより、各種食品への浸透性を大きくでき、各種食品の下味付けは勿論、従来困難とされていた蒟蒻への味の浸透や、殻付き茹卵への塩味以外の呈味成分、旨味成分の迅速で確実な含浸を可能にするなど、食品業界での影響は大なるものがある。
【符号の説明】
【0062】
1 ポンプ
1A 吸水管
1B 送水管
2 液体(調味液)
2A タンク
2B 液面
3 マイクロバブル発生装置(旋回方式)
3A マイクロバブル
4 吸気口
4A 送気管
5 気体(空気)
6 出口
7 マイクロバブル発生装置(加圧減圧方式)
8A 第一の加圧槽
8B 第二の加圧槽
9 減圧部
10 マイクロ・ナノバブル処理装置
MB マイクロバブル
11 殻付き茹卵
11a 気泡部分
11b 白身
11c 黄身
12 プラスチック袋
13 板蒟蒻
13′ 味を付けた板蒟蒻
14 白玉蒟蒻
Aa 色素
Ha 色素
15 スライスした蒟蒻
16 焼いたスライス蒟蒻(蒟蒻ステーキ)
16a 焦げた色
17 蒟蒻ジャーキー
18 蒟蒻グミ
20 茹でたジャガイモ
21 味を付けた皮付きジャガイモ
22 塩バター
23 生イカ
24 プラスチック容器(タッパーウエア)
40 マイクロ・ナノバブル処理装置(テストプラント)
41 台車
42 ポンプ
43 タンク
44 吸水管
45 排水管
46 エアホース
47 エアフィルター
48 操作盤
49 キャスター
50 取り出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ・ナノバブル発生装置により微細気泡を発生させた水を混ぜたことを特徴とする調味液、或いは、マイクロ・ナノバブル発生装置により微細気泡を発生させたことを特徴とする調味液。
【請求項2】
マイクロ・ナノバブル処理をした後、加熱や紫外線照射等により殺菌したことを特徴とする請求項1記載の調味液。
【請求項3】
空気の代わりに窒素ガスを用いて微細気泡を発生させた請求項1記載の調味液。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の調味液を用いることを特徴とする食品の調味方法。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の調味液に浸し或いは塗布してから、数時間乃至数日間放置しておくことを特徴とする食品の調味方法。
【請求項6】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の調味液に浸し或いは塗布してから、数時間乃至数日間放置しておくことを特徴とする、殻付き或いは殻無し茹卵、こんにゃく、ジャガイモや、竹の子、大根、里芋、玉葱、蓮根、蕗等の加熱した野菜類、生の魚介類、肉類、豆腐、アロエ、ナタデココの調味方法。
【請求項7】
殻付き生卵、こんにゃく、ジャガイモ、竹の子、大根、里芋、玉葱、蓮根、蕗等の生の野菜類を、請求項1乃至3の何れか1項記載の調味液とともに袋に入れて数分〜数時間加熱してから数十分〜数日放置しておくことを特徴とする、食品の調味方法。
【請求項8】
容器或いは袋中に、茹卵或いは生卵と調味液を入れた後に容器中の空気を抜くか、或いは調味液を加圧して入れるものである、請求項6又は請求項7記載の殻付き味付け茹卵の製造方法。
【請求項9】
調味液は、塩味、醤油味、味噌味、カレー味、ガーリック味、生姜味、和風ダシ、かつお風味、おでん味、わさび味、とうがらし味、キムチ味、バター味、チーズ味、チキン味、ビーフ味、ロースト味、エビ味、カニ味、ホタテ味、エスニック風味・中華風味などのチリ添加風味などの呈味成分;抹茶味、コーヒー味、こぶ茶、バニラ・イチゴ・オレンジ・マンゴー・レモン・グレープ・シソ・ミント・チョコレート・メロンなどの香料味などの嗜好成分;或いはDHAやEPA、カルシウムやヨードなどのミネラル、各種ビタミン類、アミノ酸類などの栄養成分;ブランディ、ワイン、日本酒などのアルコール類:着色料、少量の油分、油脂などを含んでなるものである、請求項2、請求項3又は請求項4記載の食品の調味方法。
【請求項10】
白く小型の丸いこんにゃくを、種々な着色料を加えた甘味調味液に2〜10時間漬け込み、全体に甘味と色素を含浸させた、色付き白玉こんにゃく。
【請求項11】
ブロック状こんにゃくを、醤油や和風ダシを主体とする調味液に1〜10時間漬け込んだものを短冊状に裁断し、鉄板で焼いてこコゲ目を付けたことを特徴とする蒟蒻ステーキ。
【請求項12】
ブロック状こんにゃくを、醤油や和風ダシを主体とする調味液に1〜10時間漬け込んだものを短冊状に裁断し、これを乾燥したことを特徴とする蒟蒻ジャーキー或いは蒟蒻グミ。
【請求項13】
大根、剥き茹で卵、こんにゃく、油揚、などのおでん種を、醤油や和風ダシ、かつお風味を混合した薄味の調味液に漬け込んだ形で流通させ、そのまま温めて食するものであるおでん。
【請求項14】
肉の下味付け、さかなの干物の味付け、茹でた貝類の下味付けや味付けなど、味付け或いは下味付けした食品。
【請求項15】
台車にポンプとタンクを設置し、ポンプとタンクは吸水管及び排水管で連結する。排水管の先端はマイクロバブル発生装置の前寄りに連結され、また、マイクロバブル発生装置の基部にはエアホースが連結され、エアホースの基部はエアフィルターに連結されたことを特徴とするマイクロ・ナノバブル処理装置。
【請求項16】
エアフィルターは、殺菌フィルターを用いるものである、請求項15記載のマイクロ・ナノバブル処理装置。
【請求項17】
タンクを二重構造とし外部に冷却水を循環させたり、タンク内外に冷却配管を設けたものである、請求項15或いは請求項16記載のマイクロ・ナノバブル処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−244807(P2011−244807A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−162674(P2010−162674)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【出願人】(505138303)株式会社プロジェクトジャパン (4)
【Fターム(参考)】