説明

調整されるコイル同軸サージ抑制器

【課題】サイズ、使用の容易性、製造効率及びコストの面で著しく改善されたサージ抑制器を提供する。
【解決手段】直列サージ抑制器挿入体及びサージ抑制器アセンブリはボディを有し、このボディは第1及び第2のコネクタ端部において同軸接続される。第1の端部と第2の端部との間のボディの中に、サージ抑制器挿入体取り付け部が形成される。この取り付け部はサージ抑制器挿入体を受容するようになっており、このサージ抑制器挿入体は、最上部及び開放端を有する中空キャップを有する。中空キャップの中に置かれる巻線インダクタは第1の端部を最上部に結合され、第2の端部にねじ付き接点を有する。第1の端部と第2の端部との間に延び、サージ抑制器挿入体取り付け部に隣接したねじ穴を有する中心導体は、サージ抑制器挿入体がその取り付け部と結合するとき、ねじ付き接点と結合するようになっており、巻線インダクタを介して内部導体を外部導体に結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
この出願は、2005年10月31日に提出されたF. Harwathによる「Tuned Coil Coaxial Surge Suppressor」と題する米国特許出願第11/163,780号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、一般的に、同軸ケーブル及び伝送線のサージ保護に関する。更に具体的には、本発明は、或る範囲の異なった周波数帯域用に構成可能であり、同軸ケーブル又は伝送線と直列に使用される交換可能サージ抑制器挿入体、及びこれに関連するコンパクトなサージ保護ハウジングに関する。
【背景技術】
【0003】
(関連技術の説明)
例えば、アンテナ塔の同軸伝送線のような電気ケーブルは、サージ抑制機器を備えてグラウンドへの電気通路を提供し、例えば、静電放電及び/又は雷撃から生じるサージ電流を迂回させる。
【0004】
従来技術の同軸抑制機器は、典型的には、内部導体と外部導体との間に周波数選択短絡要素を組み込んでいる。この短絡要素は、周波数帯域の中心周波数の約四分の一の長さであって、四分の一波長スタブとして知られる。したがって、動作帯域内の周波数は内部導体に沿って通過し、四分の一波長スタブから位相を反転して内部導体へ戻り、外部導体及び/又はグラウンド接続へは方向転換しない。動作帯域外の周波数、例えば、雷撃からの低周波数サージは、反射しないでグラウンドに結合され、下流側の部品及び/又は機器への電気的損傷を防止する。
【0005】
所望される周波数帯域に依存して、四分の一波長スタブの寸法で作られる短絡要素は、数インチの寸法であることが求められる場合があり、相当の大きさの支持用囲いが必要となる。従来技術の四分の一波長スタブのサージ抑制器、例えば、本願と同じくAndrew Corporationによって所有され、参照により全体を本明細書に組み込まれる1999年11月9日に発行されたTellasらによる「Surge Protector Connector」と題する特許文献1で説明される抑制器は、囲いの中でスタブを渦巻き状にすることによって囲いの必要サイズを縮小する。しかし、依然として大きな囲いが必要とされる。
【0006】
短絡要素の渦巻き状態が強まると、インダクタンスが生じる。インダクタ構造の高周波数磁界効果は、周波数選択短絡要素のインピーダンスに影響し、これにより、直線の、又は緩い渦巻きの四分の一波長スタブと比較して、短絡要素の全体的長さを縮小することができる。本願と同じくAndrew Corporationによって所有され、参照により全体を本明細書に組み込まれる2002年9月17日に発行されたAleksaらによる「Broadband Shorted Stub Surge Protector」と題する特許文献2は、らせん状に機械加工されてインダクタ部分を形成する部分を有する管状短絡要素を用いる。スタブ部分とインダクタ部分との組み合わせにより、装置の動作周波数帯域が広がるが、特定の周波数帯域を満足させるためには、異なった周波数帯域に特定された短絡要素構成が依然として必要である。或る範囲において、異なる周波数帯域のそれぞれ用にサージ抑制器を供給するために、或る範囲の異なる短絡要素構成を精密に機械加工すると、結果として得られる一群のサージ抑制器には著しい製造コスト及びリードタイムが付加されることとなる。
【特許文献1】米国特許第5,982,602号明細書
【特許文献2】米国特許第6,452,773号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気ケーブル、及び関連する付属品産業における競争は、製造効率を高めることによるコスト低減、設置要件の低減、及び単純化/別個部品の全体数の低減を中心に行われてきた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、本発明の目的は、従来技術における欠点を克服する装置を提供することである。
【0009】
本明細書に組み込まれて、その一部分を構成する添付の図面は、本発明の実施形態を例示し、これまでの本発明の概略的説明、及び後述する実施形態の詳細な説明と一緒になって、本発明の原理を明らかにするのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、図1〜図4で示される例示的な第1の実施形態を参照して説明される。
【0011】
サージ抑制器のボディ1は、所望される同軸ケーブル又は伝送線のために寸法づけられた直列アセンブリとして形成される。このアセンブリは、所望される専用の又は標準化された接続インタフェースを介して、いずれかの端部で同軸ケーブル又は他の機器と結合するように構成された第1の接続端部3及び第2の接続端部5を有する。ボディ1は、内部導体9がその中に位置する口径7を有し、又、ボディ1は、第1の接続端部3と第2の接続端部5との間に延び、同様にケーブルの内部導体又は他の機器と結合する。内部導体9は、口径7の中で同軸に配置され、1つ又は複数の絶縁体11によってボディ1から絶縁されることができる。サージ抑制器挿入体取り付け部は、第1の接続端部3と第2の接続端部5との間でボディ1の側面に形成される。サージ抑制器挿入体取り付け部13は、内部導体9と外部導体、即ち、ボディ1との間で、周波数選択短絡要素と結合するようになっている。
【0012】
周波数選択短絡要素は、巻線インダクタ15として形成される。巻線インダクタ15の第1の端部17は、中空キャップ19の最上部に接続される。その接続は、例えば、中空キャップ19の中に形成された穴21へ挿入し、例えば、ねじ23、導電性接着剤、締まりばめ、及び/又ははんだ付け等の保持手段を適用することによって行われる。巻線インダクタの第2の端部25は、中空キャップ19がサージ抑制器挿入体取り付け部13の中に置かれたとき、内部導体9と結合するよう寸法づけられる。例えば、巻線インダクタ15の第2の端部25に結合されるねじ付き接点27が、内部導体9の中のねじ穴29の中へねじ込まれるようになっていてもよい。
【0013】
巻線インダクタ15を形成するために使用されるワイヤは、好ましくは、サージ電流の予想された大きさを処理するため十分な電流搬送能力を有するように選択された断面積を有する。サージ抑制器は、サージ電流を外部導体及び/又はグラウンドに結合するように構成される。
【0014】
本発明の発明者らは、インダクタを機械加工又は打ち抜き加工するのではなく、巻線インダクタ15をワイヤから形成することが、幾つかの利点を有することを認識した。打ち抜き加工又は機械加工された、同じサイズのインダクタと対比して、より高いレベルのインダクタンスを達成することができる。なぜなら、隣接するコイルが相互に接触するようにインダクタを巻く前に、絶縁被覆をワイヤに施すとき、打ち抜き加工または切断加工のための工具に要求される最小間隔が省かれるからである。それによって、所与のインダクタンスを得るためのインダクタの全体的サイズ要件が低減される。更に、巻線機器は、インダクタ・コイルの直径及び長さを所望されるように構成することが比較的簡単にできる。これにより、特定の周波数帯域について巻線インダクタ・コイル15の直線部分と組み合わせてインダクタンスを選択すれば、広範囲の異なったインダクタを費用効果的に製造することができる。
【0015】
更に、インダクタ巻線の間の幅が最小化されるにつれて、インダクタの寄生容量が増加する。理想的なインダクタは、周波数が増加するにつれてインピーダンスが増加するが、寄生容量の存在は逆の効果を有する。したがって、誘導効果と容量効果との相互作用により、インダクタのインピーダンスが最大となるときに自己共振周波数を生じる。巻線インダクタ15の、直線部分の長さ、巻き数、直径、及びコイル間隔を調整することによって、自己共振周波数が所望される周波数帯域の中心となるように、巻線インダクタのインダクタンス及び寄生容量特性を適合させることができる。それによって、同軸ケーブルに沿ったサージ抑制器の存在によって表される挿入損失を所望される周波数帯域において最小にすることができる。例えば、Aleksaらによって開示されるように、巻線インダクタの自己共振周波数特性によって、ブロードバンド特性のサージ抑制器挿入体を利用するために必要な線形部分の長さが縮小でき、これにより、本発明に係るサージ抑制器の全体的サイズ要件を著しく低減することができる。所望される場合、中空キャップ19の高さを高くすることによって直線部分を収容することができる。
【0016】
巻線インダクタ15のインピーダンス特性は、インダクタが巻かれる物質、及び/又は隣接した個々のコイルの間に挿入される物質の誘電値を調整することによってさらに調整することができる。例えば図3に示されるように、特定の誘電値を有するコア材料を用い、及び/又は、巻線インダクタを誘電体の中へ完全にカプセル化してよい。例えば、図4に示されるように、カプセル化された巻線インダクタ15、中空キャップ19、及びねじ付き接点27を事前に組み立て、一体化されたサージ抑制器挿入体31を形成してもよい。サージ抑制器挿入体31は、即時に取り付け可能なアセンブリとなり、これにより、取り付ける前の、固定されていない部品の損傷又は喪失の可能性が抑えられる。当業者は、巻線インダクタ15が許容範囲外の、及び/又は、反復するサージ電流にさらされる場合に、巻線インダクタ15のカプセル化と、サージ抑制器挿入体31の中空キャップ19とが、ボディ1への損傷を封じ込めることを助けることを理解するであろう。
【0017】
中空キャップ19は、保持カバー33によって定位置に保持される。保持カバー33はボディ1の中へねじ込まれ、中空キャップ19がボディ1と確実に接触するように中空キャップを移動させる。保持キャップ19は、ボディ1に湿気が浸入し、これにより、接続された同軸ケーブル及び/又は機器へ湿気が浸入するのを防止するために、更に、環境シール35、例えばOリングを含んでもよい。例えば、所望される箇所にサージ抑制器を取り付けたり、グラウンドリード線を取り付けるために有用な、例えばねじ穴のような取り付け点も、ボディ1の中に形成されてよい。サージ抑制器挿入体31は、専用のボディ1と一緒に使用されるように示されたが、サージ抑制器挿入体31は、四分の一波長スタブ又はらせん状に機械加工されたインダクタ/スタブの組み合わせのように他の形態で最初に供給された既存のサージ抑制要素と共に使用されるように、容易に適合させられることが更に理解されるべきである。
【0018】
サージ抑制器の組立を簡単にするため、及び/又はサージ電流によって損傷を受けたサージ抑制器の修復を可能にするため、ボディ1は、第1の接続端部3を含む保持要素37を受容するように形成されてよい。保持要素37によって、内部導体9及び関連する絶縁体11を最初に組み立て、及び/又は交換し、次に部品を定位置に確実に保持することが可能となる。保持要素37は、例えば、結合ねじ及び/又は締まりばめによってボディに結合されることができる。あるいは、保持要素37が省略され、内部導体9は、口径7の中で、プレスばめによるか、事前に配置された内部導体9の周りに絶縁体11を射出成形することによって、ボディの中に取り付けられてよい。
【0019】
当業者は、本発明が、サイズ要件、使用の容易性、製造効率及びコスト効率の面で著しく改善されることを理解するであろう。全体的な材料要求、機械加工の作業、及び別個部品の全数は低減される。本発明に係る、容易に交換可能なサージ抑制器挿入体31は、広範囲の異なった周波数帯域について費用効果的に製造されることができる。更に、本発明に係るサージ抑制器は、特定の周波数帯域について迅速に組み立てられ、オン・デマンドに対して最小のリードタイムで納入されることができる。これにより、周波数帯域を特定した事前組立のサージ抑制器の多くの在庫を貯蔵しておく必要性がなくなる。更に、サージ抑制器が損傷を受けるか、所望される動作周波数帯域が変更されるような場合、サージ抑制器挿入体31は、周囲の機器への接続を乱すことなく、ユーザによって容易に交換されることができる。
【0020】
これまでの説明において、公知の同等物を有する比率、整数、部品、又はモジュールが参照されたが、そのような同等物は、あたかも個別に記述されたかのように、本明細書へ組み込まれる。
【0021】
本発明は、その実施形態の説明によって例示され、実施形態は、かなりの詳細部分にわたって説明されたが、添付された特許請求の範囲を、そのような詳細部分へ制限又は限定することは、出願人の意図ではない。追加の利点及び修正は、当業者にとって容易に明らかであろう。したがって、本発明は、その広い態様において、特定の詳細部分、代表的装置、方法、及び図示及び説明された例へ限定されない。したがって、出願人の概略的発明概念の趣旨又は範囲から逸脱することなく、そのような詳細部分から逸脱することができる。更に、理解すべきこととして、下記の特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、改善及び/又は修正が詳細部分に対して行われることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は本発明の第1の実施形態の組立分解等角略図である。
【図2】図2は本発明の第1の実施形態の一部切り欠き側面略図である。
【図3】図3は第1の実施形態のカプセル化された巻線インダクタの外部側面略図である。
【図4】図4は第1の実施形態のサージ抑制器挿入体の一部切り欠き側面略図である。
【符号の説明】
【0023】
1 ボディ
3 第1の接続端部
5 第2の接続端部
7 口径
9 内部導体
11 絶縁体
13 サージ抑制器挿入体の取り付け部
15 巻線インダクタ
17 第1の端部
19 中空キャップ
21 穴
23 ねじ
25 第2の端部
27 ねじ付き接点
29 ねじ穴
31 サージ抑制器挿入体
33 保持カバー
35 環境シール
37 保持要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最上部を有し、開放端のある中空キャップと、
前記開放端の中に置かれた巻線インダクタとを備え、
前記巻線インダクタは第1の端部を前記最上部に結合され、第2の端部にねじ付き接点を有する
サージ抑制器挿入体。
【請求項2】
前記巻線インダクタが円筒形コイルである、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記円筒形コイルがプラスチック誘電体を取り囲む、請求項2に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記巻線インダクタがプラスチック誘電体の中にカプセル化される、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記巻線インダクタが、前記第1の端部を前記最上部の穴へ挿入することによって前記第1の端部で前記最上部に結合される、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記巻線インダクタが直線部分を有する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記巻線インダクタが、所望される周波数帯域で動作するように選択されたインダクタンスを有する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項8】
第1のコネクタ端部及び第2のコネクタ端部に同軸接続インタフェースを有するボディと、
前記第1の端部と前記第2の端部との間でボディの中に形成されたサージ抑制器挿入体取り付け部と、
前記サージ抑制器挿入体取り付け部に取り付けられたサージ抑制器挿入体と
を備え、
前記サージ抑制器挿入体が、
開放端部及び最上部を有する中空キャップと、
前記開放端部の中に置かれた巻線インダクタであって、前記第1の端部で最上部に結合され、前記第2の端部でねじ付き接点を有する巻線インダクタと、
前記第1のコネクタ端部と前記第2のコネクタ端部との間に延び、前記ねじ付き接点と結合するように構成され、前記サージ抑制器挿入体取り付け部に隣接したねじ穴を有する中心導体と、を備える
直列サージ抑制器。
【請求項9】
前記巻線インダクタが円筒形コイルである、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記円筒形コイルがプラスチック誘電体を取り囲む、請求項9に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記巻線インダクタがプラスチック誘電体の中にカプセル化される、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記巻線インダクタが、前記第1の端部を前記最上部の穴へ挿入することによって、前記第1の端部で前記最上部に結合される、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記巻線インダクタが直線部分を有する、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項14】
更に、前記サージ抑制器挿入体を前記サージ抑制器取り付け部の中に保持するように構成された保持カバーを含む、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項15】
更に、前記保持カバーと前記ボディとの間に環境シールを含む、請求項14に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記中心導体が絶縁体によって前記ボディの長手方向軸と同軸に保持される、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項17】
前記サージ抑制器挿入体が、所望される周波数帯域に適合化される、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項18】
前記ボディが、グラウンド接続のための取り付け点を有する、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項19】
巻線インダクタを有するサージ抑制器挿入体を受容するように構成されたボディを備え、前記巻線インダクタは前記サージ抑制器挿入体の中空キャップと内部導体との間に結合され、前記内部導体は絶縁体によって前記ボディの口径の中で同軸に配置されるサージ抑制器。
【請求項20】
更に、前記ボディに結合された保持部を含み、前記保持部が前記口径の中で前記内部導体を保持する、請求項19に記載のアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−135393(P2007−135393A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295222(P2006−295222)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(591032275)アンドリュー・コーポレーション (22)
【氏名又は名称原語表記】ANDREW CORPORATION
【Fターム(参考)】