説明

調整装置及び調整方法

【課題】本発明は、被搬送物が搬送されているとき、その姿勢を整えるための判定が行え、不揃いを回避できる調整装置及び調整方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の調整装置は、被搬送物に貼付された第1のタグからIDコードを含む信号を電磁誘導によって受信する第1のICタグリーダ1と、被搬送物に貼付された第2のタグから電磁誘導と比較して通信距離の長い電波によってIDコードを含む信号を受信する第2のICタグリーダ2と、を備え、ICタグリーダ1,2が被搬送物の第1及び第2のタグのIDコードの受信動作を行い、第1のICタグリーダ1がIDコードを受信できなかったとき、第2のICタグリーダ2が第2のICタグのIDコードを受信した場合に、被搬送物が上下又は左右に反転している旨の判断を行う制御部3が設けられたことを主要な特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被搬送物が不揃いの方向を向いて搬送されているとき、その姿勢を整えることができる調整装置及び調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生産物を出荷先ごとに仕分けたり、物品の製造時に或る工程で加工したものを次工程に送ったりするとき、これらの物品の向き(左右や表裏)が揃っていることが要求される場合も多い。この場合、左右不揃いであればその向きを変えたり、上下を裏返したりすることが行われる。そして、長尺状、板状等の物品はこうした傾向が強い上に、その反転作業自体が難しい。
【0003】
ところで、こうした物品の向きを変え、姿勢を整えるためには、従来人手によるか、カメラを備えた調整装置を使うしかなかった。搬送される物品の左右または上下の向きを判断するのは、人間の目で見て人間の頭で判断するか、カメラで撮影した画像を画像処理することにより物品の全体像を認識した上でパターン認識するしかなかったからである。従って、人手によらずに自動化を考える場合は、カメラと画像処理装置を設置するほかなく、これが困難であれば自動化を諦めるしかなかった。
【0004】
このようなカメラと画像処理装置によるパターン認識は、搬送路で搬送される物品が1種類に限られていれば、まだ処理も容易に行える。しかし、複数種類の物が混在して搬送されるような場合は、まず、どの種類の物品かを判断し、次いでその種類ごとに向きを判断する必要がある。このような装置として次のような選別供給装置が提案された(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
(特許文献1)の選別供給装置は、スプーン、ナイフ、フォークの3種が混在する食器具をベルトコンベヤで長手方向に搬送しつつ、CCDカメラで撮像して画像処理装置で種類とその向きを判別し、次いでベルトコンベヤで搬送し、振分けチャンネルで種類毎に異なる移送ラインに分配して、更に反転チャンネルに導き、正規の向きのスプーンはそのまま通過させ、逆向きのスプーンは反転チャンネルを180度反転させることによってすべての食器具の向きを整えるものである。
【特許文献1】特開平7−299422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上説明したように、従来、物品が搬送されているとき、その姿勢を整える調整装置は、人手によるか、カメラと画像処理装置をもつ調整装置を使うしかなかった。そして、(特許文献1)の選別供給装置は、カメラと画像処理装置で種類と向きを判別し、正規の向きの物品は反転チャンネルをそのまま通過させ、逆向きの物品は反転チャンネルを反転させることによって向きを正規に整えることを可能にした。
【0007】
しかし、(特許文献1)の選別供給装置の場合、認識ミスが生じないようにするためには高精度のカメラの装備が必要で、しかも複数種類の様々なパターンを記憶し、且つ画像処理して判断する必要があり、どうしても設備投資と処理のための時間が必要で、ハード的にもソフト的にも高コストにならざるを得なかった。このような要素を必要とせず、確実に物品の向きを捉えることができる安価な装置が期待される。
【0008】
さて、近年バーコードに代わって、RFID(Radio Frequency Identification)タグ等の非接触ICタグが脚光を浴びている。そして、今後あらゆる物品にこのRFIDタグ等が貼付され、流通することが予想されている。
【0009】
このRFIDタグには、大きくいって次のような種類(通信方式)がある。第1の種類は電磁誘導による方式である。この電磁誘導による方式にも2種類があり、使用周波数が400kHz〜530kHzで、電磁的結合度が高く、トランスのようにRFIDタグのコイルとリーダのコイルの相互誘導・電磁誘導により通信するものと、主として250kHz以下または13.56MHzの電磁波を利用し、比較的電磁的結合度が低く、両コイル間の誘起電圧を使って交信するものがある。前者の交信距離は短く最大数cmであり、後者の交信距離は相対的に長く数十cmである。
【0010】
これに対し、第2の種類として電波方式がある。リーダのアンテナ等から放射されたマイクロ波をRFIDタグの平面波アンテナで受信しこの反射波を使ってデータを送信するものである。このマイクロ波方式にも、2.45GHzのマイクロ波を使って交信する方式と、UHF(860MHz〜960MHz)帯の電波を使って通信する方式の2種類がある。前者の交信距離は最大1m程度であるが、後者の交信距離は比較的長く最大8m程度である。なお、第3の種類として赤外線などを使用した光方式がある。
【0011】
従って、RFIDタグが通信する場合、数十cm、数cm程度の通信が可能な近接型の通信と、1m、8m近くの通信が可能な遠距離型の通信の2種類があり、使用周波数でさらに細かく5種類に判別できることが分かる。そして、光方式まで加えると6種類の多様な種類の通信が存在する。
【0012】
今後、RFIDタグは世界的規模で普及が見込まれ、ほとんどあらゆる物品に貼付されることが予想されており、普及と共に、タグ、リーダがきわめて安価になることが予想される。すなわち、RFIDタグの物品への添付は稀なものではなくなり、貼付があることが常態となる。
【0013】
このように、多くの物品に対して貼付が予想されるRFIDタグを利用し、搬送される物品の姿勢を判断し整えることができたら、カメラや画像処理装置を用意することなく、物品の姿勢を簡単且つ確実、安価に調整することが可能になる。そして、このとき、物品の向きを従来のように画像処理装置などによってパターン認識するのでなく、RFIDタグの位置、種類、通信距離という新しい手法を使って確実に判定することが可能になる。
【0014】
そこで本発明は、被搬送物が搬送されているとき、その姿勢を整える必要性の判断が行え、不揃をなくすことができる調整装置と調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような問題を解決するために本発明の調整装置は、被搬送物に貼付された第1のタグからIDコードを含む信号を電磁誘導によって受信する第1のICタグリーダと、被搬送物に貼付された第2のタグから電磁誘導と比較して通信距離の長い電波によってIDコードを含む信号を受信する第2のICタグリーダと、を備え、上記第1のICタグのIDコードと上記第2のICタグのIDコードとが対応する調整装置において、第1及び第2のICタグリーダが上記被搬送物の第1及び第2のタグのIDコードを含む信号の受信動作を行い、第2のICタグリーダが第2のICタグのIDコードを含む信号を受信した場合に、第1のICタグリーダがIDコードを含む信号を受信できなかったとき、上記被搬送物が上下又は左右に反転している旨の判断を行う制御部が設けられたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の調整装置と調整方法によれば、被搬送物が搬送されているとき、その姿勢を整える必要性の判断が行え、不揃をなくすことができる。第1及び第2のタグのIDコードで向きを判断するので、複数種類の被搬送物が搬送されている場合でも自在に対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記課題を解決するために本発明の第1の発明は、被搬送物に貼付された第1のタグからIDコードを含む信号を電磁誘導によって受信する第1のICタグリーダと、被搬送物に貼付された第2のタグから電磁誘導と比較して通信距離の長い電波によってIDコードを含む信号を受信する第2のICタグリーダと、を備え、上記第1のICタグのIDコードと上記第2のICタグのIDコードとが対応する調整装置において、第1及び第2のICタグリーダが上記被搬送物の第1及び第2のタグのIDコードを含む信号の受信動作を行い、第2のICタグリーダが第2のICタグのIDコードを含む信号を受信した場合に、第1のICタグリーダがIDコードを含む信号を受信できなかったとき、上記被搬送物が上下又は左右に反転している旨の判断を行う制御部が設けられたことを特徴とした調整装置であり、被搬送物が搬送されているとき、その姿勢を整える必要性の判断が行え、不揃をなくすことができる。第1及び第2のタグのIDコードで向きを判断するので、複数種類の被搬送物が搬送されている場合でも自在に対応できる。
【0018】
本発明の第2の発明は、第1の発明に従属する発明であって、上記第1のICタグのIDコードと上記第2のICタグのIDコードとが同一であることを特徴とする調整装置であり、被搬送物に対して共通のIDコードを付与することで処理が容易になる。
【0019】
本発明の第3の発明は、第1の発明に従属する発明であって、上記第1のICタグが上記被搬送物の一端に且つ上記第2のICタグが上記被搬送物の他端に貼付されていることを特徴とする調整装置であり、最も容易且つ高精度で姿勢を整えるための判定が行える。
【0020】
本発明の第4の発明は、 第1の発明に従属する発明であって、第1のICタグリーダが受信しなかった上記第1のICタグのIDコードと対応する第2のICタグのIDコードを第2のICタグリーダが受信した場合、上記被搬送物の上下又は左右を反転させる調整部を備えることを特徴とする調整装置であり、被搬送物が搬送されているとき、その姿勢を整える必要性の判断が行え、調整部によって向きを反転させることができる。
【0021】
本発明の第5の発明は、電磁誘導によって応答する第1のICタグ及び電波を受信することにより応答する第2のICタグが貼付された被搬送物の上下又は左右を調整する調製方法であって、上記第2のICタグに対して電波を送信し第2のICタグのIDコードを含む信号を受信する第1のステップと、上記被搬送物の一端を所定の電磁界に置いて電磁誘導で第1のICタグのIDコードを含む信号を受信する第2のステップと、第1のステップにおいて第2のICタグのIDコードを受信し、第2のステップにおいて第1のICタグのIDコードを受信した場合、上記被搬送物が上下又は左右に反転している旨の判断を行う第3のステップと、を備えることを特徴とする調製方法であり、被搬送物が搬送されているとき、その姿勢を整える必要性の判断が行え、不揃をなくすことができる。第1及び第2のタグのIDコードで向きを判断するので、複数種類の被搬送物が搬送されている場合でも自在に対応できる。
【0022】
本発明の第6の発明は、第5の発明に従属する発明であって、上記第1のICタグのIDコードと上記第2のICタグのIDコードとが同一であることを特徴とする調製方法であり、被搬送物に対して共通のIDコードを付与することで処理が容易になる。
【0023】
本発明の第7の発明は、第5の発明に従属する発明であって、上記第1のICタグが上記被搬送物の一端に且つ上記第2のICタグが上記被搬送物の他端に貼付されていることを特徴とする調製方法であり、最も容易且つ高精度で姿勢を整えるための判定が行える。
【0024】
本発明の第8の発明は、第5の発明に従属する発明であって、上記第3ステップの後、上記被搬送物の上下又は左右を反転させる第4ステップを備えることを特徴とする調製方法であり、被搬送物が搬送されているとき、その姿勢を整える必要性の判断が行え、向きを反転させることができる。
【0025】
本発明の第9の発明は、第5の発明に従属する発明であって、被搬送物に通信距離が異なる第1及び第2のタグを貼付し、第1のタグと通信可能な範囲に第1のICタグリーダを配置すると共に、これより通信距離の長い第2のタグと通信可能な範囲に第2のICタグリーダを配置し、第1及び第2のICタグリーダから第1及び第2のタグにそれぞれ被搬送物のIDコード情報を要求し、第1及び第2のICタグリーダがIDコード情報を取得した場合は上記被搬送物が正規の向きに置かれていると判断し、第1のICタグリーダがIDコード情報を受信できずに第2のICタグリーダがIDコード情報を受信した場合には、上記被搬送物が上下又は左右に反転して置かれていると判断し、第2のICタグリーダがIDコード情報を受信できなかった場合には上記被搬送物が搬送されていないと判断することを特徴とした調整方法であり、被搬送物が搬送されているとき、その姿勢を整える必要性の判断が行え、向きを反転させることができる。第1及び第2のタグのIDコードで向きを判断するので、複数種類の被搬送物が搬送されている場合でも自在に対応できる。
【0026】
本発明の第10の発明は、第9の発明に従属する発明であって、第1のICタグリーダがIDコード情報を受信できず且つ第2のICタグリーダがIDコード情報を受信した場合に、上記被搬送物が上下又は左右に反転していると判断した後、この旨を報知部により報知することを特徴とした調整方法であり、反転していると判断されたとき、この旨を報知して不揃いを回避することができる。
【0027】
本発明の第11の発明は、第9の発明に従属する発明であって、第1のICタグリーダがIDコード情報を受信できず且つ第2のICタグリーダがIDコード情報を受信した場合に、上記被搬送物が上下又は左右に反転していると判断した後、上記被搬送物の上下又は左右を調整部により反転させることを特徴とした調整方法であり、反転していると判断されたとき、向きを反転させ、不揃いを回避することができる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
本発明の実施例1における被搬送物の搬送路上の左右または上下の向きを調整する調整装置、及び調整方法について説明する。図1は本発明の実施例1における被搬送物の向きを調整する調整装置の構成図、図2は本発明の実施例1における被搬送物の向きを調整する調整装置で使用されるRFIDタグのブロック構成図、図3は本発明の実施例1における被搬送物の向きを調整する調整装置で使用されるリーダの構成図、図4は本発明の実施例1における被搬送物の向きを調整する調整装置が被搬送物の向きを反転するときの全体構成図、図5は本発明の実施例1における被搬送物の向きを調整する調整装置が上下を反転するときの全体構成図、図6はは本発明の実施例1における被搬送物の向きを調整する調整方法のフローチャートである。
【0029】
図1において、1は被搬送物10(図4参照)の向きを検出するためこれに貼付されたRFIDタグ11(図4参照)と無線で通信する第1のICタグリーダである。この第1のICタグリーダ1は、RFIDタグ11と400kHz〜530kHzで相互誘導・電磁誘導により通信するものでも、13.56MHzの電磁波を利用して誘起電圧を使って交信するものでもよい。このいずれもが近接型のICタグリーダであって、交信距離は最大でも数cm〜数十cm程度である。第1のICタグリーダ1は被搬送物10が搬送される搬送路8からこの交信距離で通信できるようにこの距離内に設置される。1aは第1のICタグリーダ1がRFIDタグ11と送受信するための送受信部である。
【0030】
図1に示す2は、被搬送物10の向きを検出するため、RFIDタグ12(図4参照)と無線通信する第2のICタグリーダである。実施例1の第2のICタグリーダ2はRFIDタグ12と860MHz〜960MHzのUHF帯の周波数で無線通信する。これは遠距離型のICタグリーダであって、最大8m程度の距離で交信が可能である。なお、UHF帯の第2のICタグリーダ2に代えて、遠距離型に属する2.45GHz等のICタグリーダで通信するのもよい。このように第2のICタグリーダ2は被搬送物10が搬送される搬送路8から最大8m近く、あるいは1m近くの遠距離に設置される。すなわち、第2のICタグリーダ2は第1のICタグリーダ1と比較して搬送路8から遠方に配置されることになる。2aは第2のICタグリーダ2がRFIDタグ12と送受信するための送受信部である。
【0031】
次に、3は被搬送物10の向きを調整する調整装置の制御を行う制御部である。4は制御部3によって制御され被搬送物10の向きを調整する調整部、5は第2のICタグリーダ2がRFIDタグ12を検出したにもかかわらず、第1のICタグリーダ1がRFIDタグ11を検出しないときにこの旨を報知する報知部である。スピーカやランプ等で構成される。なお、RFIDタグ12を検知しないような場合は報知しない。6は表示部、7は調整装置に対する設定などを行う入力部である。
【0032】
そこで、ICタグリーダの構成についてさらに説明する。なお、以下、第1のICタグリーダ1について説明するが、第2のICタグリーダ2も、通信方式が電磁誘導による主として磁界を使った無線通信でなく、電波で行われるというだけで、ブロック構成に基本的な違いはない。従って、第2のICタグリーダ2の構成の説明は第1のICタグリーダ1の説明に譲って省略する。
【0033】
20は制御部3と所定のプロトコルで通信するためのインターフェース部、21は第1のICタグリーダ1の制御を行うリーダ制御部、21aはリーダ制御部21に設けられRFIDタグ11からデータを受信したとき所定のプロトコルで制御部3に通知する通知手段、22はリーダ制御部21が動作するためのプログラムやデータを格納する記憶部である。通知手段21aはデータを取得すると、制御部3に被搬送物10の向きを調整するか否かの判断を仰ぐ。23はベースバンド信号を伝送すると共にRFIDタグ11からの受信信号を通知手段21aに渡すデータ処理部である。
【0034】
24は所定の周波数(上述したRFIDタグ11との通信周波数)で発振する発振部、25は発振部24で発振した信号とデータ処理部23からのベースバンド信号をミキシングして変調させる変調部である。26は変調部25で変調された信号を増幅する増幅部、27はRFIDタグ11と電磁誘導により無線通信するアンテナ部である。このアンテナ部27は、第1のICタグリーダ1においてはループアンテナ(コイル)であるが、第2のICタグリーダ2では平面波を送受信するアンテナとなる。
【0035】
28はアンテナ部27で受信したRFIDタグ11の信号を所定の周波数帯だけ抽出するフィルタ部、29はフィルタ部28から出力された信号を増幅する増幅部、30は増幅部29で増幅された信号を検波し復号する検波復号部である。検波復号部30からの出力信号はデータ処理部23に送られ、RFIDタグ11から送信された受信データが取り出される。
【0036】
続いて、図3に基づいてRFIDタグ1の詳細なブロック構成を説明する。RFIDタグ1は、IC回路を内蔵したカードを樹脂製フィルムで覆い、IC回路には導電性材料を用いて印刷されたアンテナが接続されている。このIC回路は次のような構成が設けられる。31はアンテナ、32はアンテナ31が受信したRF信号から電源電圧を生成するための整流回路、33は整流回路32からの出力を安定化する定電圧回路である。
【0037】
また、34は受信したRF信号を復調して受信データとする受信部、35はこの受信データから第1のICタグリーダ1から送信されたコマンドを検出するための処理を行う検出部、36は受信データから検出部35と制御部37(後述)を動作させるために必要なクロック信号を生成するクロック生成部である。
【0038】
37はクロック生成部36で生成されたクロック信号に従って検出部35で検出した信号によりコマンドを取得し、これを実行する制御部である。38は不揮発メモリであって、例えば、EPROM(erasable and programmable read only memory)、EEPROM(electrically erasable and programmable read only memory)、フラッシュメモリなどが用いられる。さらに、39は不揮発メモリ38から読み出したデータを制御部37から受け取り、RF信号としてアンテナ31に伝送して送信する送信部である。
【0039】
ここで、図4,5に基づいて実施例1の被搬送物の向きを調整する調整装置の調整部の説明をする。図4の示す調整部は、被搬送物が長尺状の物体で左右が反転している場合に、この方向を整えるものである。図4において、4a,4bは油圧シリンダなどのシリンダを備え、例えば長尺状の被搬送物10の向きが左右反転しているような場合に、これを反転させるため搬送路8上から外部に押し出し、反転後には再び搬送路8上に戻すための押し出し装置である。押し出し装置4a,4bは図示するように制御部3の制御で油圧ポンプ等が駆動され、また切り換え弁等が切り換えられることによって、押し出し、戻り、保持等の操作が行われる。
【0040】
4cは被搬送物10の向きを反転させるための反転テーブルである。反転テーブル4cの下方には駆動モータが設けられており、被搬送物10が押し出し装置4aによって所定位置に押し出されてきたとき、制御部3によって180度回転(半転)される。その後、被搬送物10は反転テーブル4cから押し出し装置4bの作用で搬送路8に戻される。また、5aは報知部5を構成するアナウンス部、5bは同じく報知部5を構成するランプ部である。従って、搬送路8の所定位置に設けられた押し出し装置4a,4bと反転テーブル4cが、実施例1における左右反転のための調整部である。
【0041】
次に、図4において、8は被搬送物10を搬送するベルトコンベア等の搬送路である。搬送路8は制御部3からの指示で駆動モータによって周回駆動される。被搬送物10の向きを反転させるときには、被搬送物10の反転が終わるまでこの搬送路8による搬送は一時停止される。10は搬送路8上に載置された被搬送物である。11は電磁誘導によって通信可能な近接型の通信が可能なRFIDタグ、12はUHF帯の電波で遠距離型の通信が可能なRFIDタグである。
【0042】
なお、実施例1においては、RFIDタグ11は13.56MHzの電磁波で誘起電圧を使って通信するRFIDタグ、RFIDタグ12はUHF帯の電波で通信可能なRFIDタグを使用しているが、必ずしもこれに限られるものではなく、RFIDタグ11,12の通信距離が異なれば、他の周波数帯(通信方式)のRFIDタグを使用することもできる。要するに、被搬送物10の2箇所(両端)に貼付したRFIDタグ11,12がICタグリーダ1,2との間でそれぞれ通信可能であって、通信距離の短いRFIDタグ11が第1のICタグリーダ1に検出されることにより、第1のICタグリーダ1の近くに被搬送物10の所定の一端が通過していることが認識できればよく、通信距離の長いRFIDタグ12が第2のICタグリーダ2に検出されることにより、第2のICタグリーダ2から所定の範囲内に被搬送物10の所定の他端が通過していることが認識できればよい。
【0043】
従って、使用周波数400kHz〜530kHzで第1のICタグリーダ1と相互誘導・電磁誘導で数cmの通信距離で通信するRFIDタグ、250kHz以下または13.56MHzの電磁波で誘起電圧を使って数十cmの通信距離で通信するRFIDタグ、さらには2.45GHzのマイクロ波を使って1m程度の通信距離で交信するRFIDタグ、UHF帯を使って8m程度の通信距離で交信するRFIDタグのうち、RFIDタグ11には相対的に通信距離の短い方式(例えば1m以下の通信方式のどれかの方式)が採用されればよく、RFIDタグ12は採用したRFIDタグ11の方式と比べて通信距離の長い方式が採用されればよい。
【0044】
さて、図4に基づいて、実施例1の調整装置が被搬送物10の向きを調整する調整部の動作について詳細に説明する。制御部3は被搬送物10が搬送路8に載置されると、駆動モータを回転させ、運転を開始させる。被搬送物10は、図4に示すように、長尺状で一端(B端)にRFIDタグ11が貼付され、他端(A端)にRFIDタグ12が貼付されている。図4は、被搬送物10は搬送路8にB端を左側、A端を右側に載置するのが正規の向きとされる場合であり、載置ミス(不揃い)がない状態ではこのような向きに配置されて整然と搬送される。
【0045】
この搬送路8の左側(正規の向きの一端(B端)側)には、RFIDタグ11と通信するための第1のICタグリーダ1がその近傍位置(通信距離の範囲内)に設けられ、さらに、第1のICタグリーダ1と距離をおいてRFIDタグ12と通信するための第2のICタグリーダ2が設けられている。従って、被搬送物10が、B端を左、A端を右にした正規の姿勢で搬送されるときは、第1のICタグリーダ1がB端のRFIDタグ11を検出すると共に、第2のICタグリーダ2がA端のRFIDタグ12を検出することができる。このとき、制御部3は被搬送物10が正規の姿勢で搬送されていると判断する。
【0046】
しかし、被搬送物10が、A端を左、B端を右にした反転した姿勢で搬送されたときは、第1のICタグリーダ1は通信距離の短いB端に貼付されたRFIDタグ11を検出することはできない。これに対し、第2のICタグリーダ2はA端のRFIDタグ12と通信することができる。このような第2のICタグリーダ2だけの検出がなされたときは、制御部3は被搬送物10が反転した姿勢で搬送されていると判断する。そして、搬送路8は運転中であるにもかかわらず、少なくとも遠距離通信可能な第2のICタグリーダ2がRFIDタグ12を検出できないときは、制御部3は、通信可能な範囲内に被搬送物10が存在しない、すなわち被搬送物10が搬送路8を搬送されていない場合と判断する。
【0047】
なお、第2のICタグリーダ2がRFIDタグ12を検出できない場合の中には、例外的ではあるが、第2のICタグリーダ2の動作不良の場合がある。これに対しては、搬送路8が運転中である旨を示すフラグを制御部3にセットし、さらにRFIDタグ12を最後に検出した時から経過時間をタイマで計時するなどして、フラグONであるにもかかわらずカウントアウトした場合を動作不良とするのがよい。このとき、動作不良も検出可能で、被搬送物10の状態の判断がより正確になる。
【0048】
図4に示すように、制御部3が、搬送されてきた被搬送物10を反転していると判断した場合、制御部3は搬送路8を一時停止し、押し出し装置4aによって反転テーブル4c上に押し出す。その後、被搬送物10を載せた反転テーブル4cは制御部3によって180度回転され、被搬送物10が正規の向きに向いたとき、制御部3は押し出し装置4bを操作し、被搬送物10を搬送路8に戻す。これにより、被搬送物10はB端を左、A端を右にした正規の姿勢となり、戻った時点に制御部3は搬送路8の搬送を再開する。
【0049】
続いて、図5に基づいて搬送されてきた被搬送物10が上下裏返しになっている場合の調整部について説明する。上下を反転させる調整装置の構成は、調整部(上下反転装置)を除き、左右を反転させる図4の構成と共通した多くの部分を有している。すなわち、図4の押し出し装置4a,4bと反転テーブル4c、第1のICタグリーダ1、搬送路8以外は基本的に共通しており、図5に示すような、搬送路が分離され、2つの搬送路の間に上下反転装置が配置された点、さらに、被搬送物10の上下に貼付されたRFIDタグ11,12に反応するICタグリーダ1,2が搬送路の上方若しくは下方に設けられた点(図示しない)が相違するだけである。
【0050】
図5において、8a,8bは2つに分離された搬送路であり、9は搬送路8a,8b間に設置され、搬送路8a上を搬送されてきた被搬送物10を裏返しにする上下反転装置である。上下反転装置9には、待機状態で被搬送物10が搬送されてきたときその先端を受け入れることができる挿入開口が形成されている。上下反転装置9は被搬送物10を受け入れた後180度回転し、これを裏返して搬送路8b上に載置するものである。
【0051】
この動作を図面に基づいて説明すると、図5(a)に示すように被搬送物10が搬送路8a上を搬送されてきたとき、図5(b)のように待機していた上下反転装置9が挿入開口から被搬送物10を収容する。その後、図5(c)に示すように、上下反転装置9は時計回りに180度回転(半転)し、図5(d)のように被搬送物10の一端を搬送路8b上に載置する。この状態になると、搬送路8bが運転中であるために、被搬送物10は摩擦で引っ張られ、図5(e)に示すようにその後搬送路8bによって搬送される。
【0052】
さて、以上説明した調整装置で行われる被搬送物の左右または上下を反転する被搬送物の姿勢の調整方法について、図6のフローチャートに基づいて説明する。被搬送物を搬入し(step1)、各RFIDタグ11,12からICタグ情報を取得する(step2)。このICタグ情報はRFIDタグ11,12の不揮発メモリ38に格納されており、ユーザ領域情報とシステム領域情報から構成される。
【0053】
不揮発メモリ38は1ブロックが例えば16バイトの複数ブロックから構成されている。システム領域情報には、書き換え不可の個体のシリアル番号からなるユニークなUID(Unique Identifier)が収められ、ユーザ領域情報には16ビット等で表現されたICタグ情報であるIDコード、例えば、被搬送物Aの物品の種類を示す共通のコード「0001」などが書き込まれる。なお、全RFIDタグ11,12で共通のコード「0001」などを使うのではなく、RFIDタグ11,12ごとに被搬送物Aに対するコードを「0001」、「0011」といったように別のコードにし、このコードを同じ被搬送物Aを示すコードとして対応させて使うこともできる。この場合、制御部3ではこれらの関係を示す対応テーブルを格納しておく必要があり、制御部3はこれを参照して同じ被搬送物Aであるか否かを判断する。
【0054】
ここで、本発明において「IDコードを含む信号」というのは、RFIDタグとICタグリーダ間で通信するときの通信パケットにおいて、データ域にIDコードを収めた信号のことであり、また、本発明における「IDコード情報」というのは、RFIDタグとICタグリーダ間で通信するときの通信パケットで、データ域に収められたIDコードを記述する情報のことである。
【0055】
この被搬送物の搬送を開始し、第1及び第2のICタグリーダを動作させ、遠距離型の通信が行える第2のICタグリーダで第2のICタグを検出させる(step3)。第2のICタグからこの被搬送物を示すIDコードを受信したか否かが判定され(step4)、IDコードを受信できなかったときは被搬送物が搬送されていないと判断して終了し、IDコードを受信できたときには近接型の通信が行える第1のICタグリーダで第1のICタグを検出させ(step5)、第1のICタグからこの被搬送物を示すIDコードを受信したか否かを判定させる(step6)。なお、step4において、IDコードを受信できなかったとき、運転中であるか否かを上記したフラグを参照し、フラグONでタイマがカウントアウトした場合に被搬送物が搬送されていないと判断し、他の場合を装置の動作不良と判断するのでもよい。
【0056】
step6において、IDコードを受信したときは、第1のICタグリーダの近傍を第1のICタグが通過しているから、被搬送物は正規の姿勢で搬送されていると判断し(step7)、そのまま終了する。step6において、IDコードを受信できなかったときには、被搬送物は反転していると判断し(step8)、被搬送物の反転を行うか、あるいはこの旨を報知し(step9)、終了する。
【0057】
このように本発明の実施例1における調整装置と調整方法によれば、被搬送物が不揃いの方向を向いて搬送されているとき、その不揃いを検出し、さらにそれを整えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、組立や物流などの被搬送物を搬送する搬送システムの調整装置と調整方法に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施例1における被搬送物の向きを調整する調整装置の構成図
【図2】本発明の実施例1における被搬送物の向きを調整する調整装置で使用されるRFIDタグのブロック構成図
【図3】本発明の実施例1における被搬送物の向きを調整する調整装置で使用されるリーダの構成図
【図4】本発明の実施例1における被搬送物の向きを調整する調整装置が被搬送物の向きを反転するときの全体構成図
【図5】本発明の実施例1における被搬送物の向きを調整する調整装置が上下を反転するときの全体構成図
【図6】本発明の実施例1における被搬送物の向きを調整する調整方法のフローチャート
【符号の説明】
【0060】
1 第1のICタグリーダ
1a 送受信部
2 第2のICタグリーダ
2a 送受信部
3 制御部
4 調整部
4a,4b 押し出し装置
4c 反転テーブル
5 報知部
6 表示部
7 入力部
8 搬送路
8a,8b 搬送路
9 上下反転装置
10 被搬送物
20 インターフェース部
21 リーダ制御部
21a 通知手段
22 記憶部
23 データ処理部
24 発振部
25 変調部
26 増幅部
27 アンテナ部
28 フィルタ部
29 増幅部
30 検波復号部
31 アンテナ
32 整流回路
33 定電圧回路
34 受信部
35 検出部
36 クロック生成部
37 制御部
38 不揮発メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被搬送物に貼付された第1のタグからIDコードを含む信号を電磁誘導によって受信する第1のICタグリーダと、前記被搬送物に貼付された第2のタグから前記電磁誘導と比較して通信距離の長い電波によってIDコードを含む信号を受信する第2のICタグリーダと、を備え、上記第1のICタグのIDコードと上記第2のICタグのIDコードとが対応する調整装置において、
前記第1及び第2のICタグリーダが上記被搬送物の前記第1及び第2のタグのIDコードを含む信号の受信動作を行い、前記第2のICタグリーダが前記第2のICタグのIDコードを含む信号を受信した場合に、前記第1のICタグリーダが前記IDコードを含む信号を受信できなかったとき、上記被搬送物が上下又は左右に反転している旨の判断を行う制御部が設けられたことを特徴とする調整装置。
【請求項2】
請求項1記載の調整装置において、上記第1のICタグのIDコードと上記第2のICタグのIDコードとが同一であることを特徴とする調整装置。
【請求項3】
請求項1記載の調整装置において、上記第1のICタグが上記被搬送物の一端に且つ上記第2のICタグが上記被搬送物の他端に貼付されていることを特徴とする調整装置。
【請求項4】
請求項1記載の調整装置において、前記第1のICタグリーダが受信しなかった上記第1のICタグのIDコードと対応する第2のICタグのIDコードを前記第2のICタグリーダが受信した場合、上記被搬送物の上下又は左右を反転させる調整部を備えることを特徴とする調整装置。
【請求項5】
電磁誘導によって応答する第1のICタグ及び電波を受信することにより応答する第2のICタグが貼付された被搬送物の上下又は左右を調整する調製方法であって、
上記第2のICタグに対して電波を送信し前記第2のICタグのIDコードを含む信号を受信する第1のステップと、
上記被搬送物の一端を所定の電磁界に置いて電磁誘導で前記第1のICタグのIDコードを含む信号を受信する第2のステップと、
前記第1のステップにおいて前記第2のICタグのIDコードを受信し、前記第2のステップにおいて前記第1のICタグのIDコードを受信した場合、上記被搬送物が上下又は左右に反転している旨の判断を行う第3のステップと、を備えることを特徴とする調製方法。
【請求項6】
請求項5記載の調製方法において、上記第1のICタグのIDコードと上記第2のICタグのIDコードとが同一であることを特徴とする調製方法。
【請求項7】
請求項5記載の調製方法において、上記第1のICタグが上記被搬送物の一端に且つ上記第2のICタグが上記被搬送物の他端に貼付されていることを特徴とする調製方法。
【請求項8】
請求項5記載の調製方法において、上記第3ステップの後、上記被搬送物の上下又は左右を反転させる第4ステップを備えることを特徴とする調製方法。
【請求項9】
被搬送物に通信距離が異なる第1及び第2のタグを貼付し、前記第1のタグと通信可能な範囲に第1のICタグリーダを配置すると共に、これより通信距離の長い第2のタグと通信可能な範囲に第2のICタグリーダを配置し、前記第1及び第2のICタグリーダから前記第1及び第2のタグにそれぞれ前記被搬送物のIDコード情報を要求し、前記第1及び第2のICタグリーダが前記IDコード情報を取得した場合は上記被搬送物が正規の向きに置かれていると判断し、前記第1のICタグリーダが前記IDコード情報を受信できずに前記第2のICタグリーダがIDコード情報を受信した場合には、上記被搬送物が上下又は左右に反転して置かれていると判断し、前記第2のICタグリーダが前記IDコード情報を受信できなかった場合には上記被搬送物が搬送されていないと判断することを特徴とする調整方法。
【請求項10】
請求項9記載の調製方法において、前記第1のICタグリーダが前記IDコード情報を受信できず且つ前記第2のICタグリーダがIDコード情報を受信した場合に、上記被搬送物が上下又は左右に反転していると判断した後、この旨を報知部により報知することを特徴とする調整方法。
【請求項11】
請求項9記載の調製方法において、前記第1のICタグリーダが前記IDコード情報を受信できず且つ前記第2のICタグリーダがIDコード情報を受信した場合に、上記被搬送物が上下又は左右に反転していると判断した後、上記被搬送物の上下又は左右を調整部により反転させることを特徴とする調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−56473(P2008−56473A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238488(P2006−238488)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】