説明

調湿式冷暖房省エネ装置

【課題】 環境問題が深刻な状況となり、冷暖房の省エネに関する技術向上が急務であり、特にイニシャルコストと稼動コストの掛からない省エネ装置の開発が求められる状況にある。
シリカゲルなどの調湿材を用いた住宅工法などは既に普及しつつあるが、その調湿効果において省エネ効果を確実にしたものの存在がなかった。
【解決手段】 本発明は、家屋内に透湿性の伴った素材の上に吸放湿の出来る公知の調湿材を載せた調湿式冷暖房省エネ装置を家屋内に設置し、調湿材の上下両面を空気に触れさせるような構造とし、その際の調湿材の調湿効果を利用して冷房や暖房のエネルギー負荷を低減させる調湿式冷暖房省エネ装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力などを用いずにシリカゲルや人工ゼオライトなどの公知の調湿材を設置するだけで省エネ効果をもたらす装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
環境問題が深刻な状況となり、冷暖房の省エネに関する技術向上が急務であり、特にイニシャルコストと稼動コストの掛からない省エネ装置の開発が求められる状況にある。
シリカゲルなどの調湿材を用いた住宅工法などは既に普及しつつあるが、その調湿効果において省エネ効果を確実にしたものの存在がなかった背景がある。
【0003】
参考文献1:ファース工法と言う、床下に調湿の出来るシリカゲルを敷設した住宅システムや、炭、湿気を吸排湿出来るタイルや内装材を使用した工法が存在するが、これらは湿度調整と空気浄化を目的に使用されており、省エネ効果を発揮するに及ぶものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
我国は高温多湿の夏期間と、カラカラに乾燥する冬期間において膨大な冷房エネルギーと暖房エネルギーを使用しているが、調湿特性を意図的に調整して製造できるシリカゲルや人工ゼオライトなどの調湿材を用い、多湿時の冷房器稼働率と暖房時の暖房器稼動率を低減させる事を課題として発明された装置である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、架台▲1▼にメッシュ(ネット)など透湿性の伴った素材▲2▼を張り付け、その上に吸放湿の出来る公知の調湿材▲3▼を載せた調湿式冷暖房省エネ装置▲10▼を家屋内に設置して、当該家屋内の生活空気を調湿材▲3▼の上下両面を接触させる構造とした事を手段とする。
【発明の効果】
【0006】
同じ家屋内で湿気に含まれる熱(潜熱)の遣り取りを行っても、省エネ効果など在り得ないと思えるが、次のような作用で省エネ効果を発揮する。
【0007】
多湿な夏期間は、家屋内の生活発生水が空気に含まれると湿気(潜熱)となり、生活者の生活動によって空気が移動する際、調湿材▲3▼に吸着されて湿度を低下させる。この時の凝縮熱で顕熱(気温)を若干上昇させるが、吸着する潜熱(湿気の持つ熱)の方がはるかに大きくなる。
この冷房時において、調湿式冷暖房省エネ装置▲10▼を使用したものと、使用していないものとの実際比較を空気線図(図4)で表すと、当該装置を使用しない室内の気温29℃・湿度70%の環境が、当該装置を使用した場合、凝縮熱によって気温が30℃と1℃上昇するが、湿度が70%から60%に低下する。
これを空気線図(図4)の左上に表記されるエンタルピーで見るとその差が0.77kcalとなり、同空気線図(図4)右下で表記される仕事量で、3.23KJ/kg(1KJ=0.2778W)となる。これを熱量換算すると0.897Wとなり、このような情況では時間当たり、3,230Wの省エネ効果となる。
【0008】
乾燥する冬期間は、調湿材▲3▼が家屋内での人の営みによって発生した湿気(潜熱)を吸着して乾燥した時に放出する。放出する際に気化熱(蒸発潜熱)で室内気温(顕熱)を低下させてしまうが、通常の生活状態では、放出した湿気の持つ熱(潜熱)の方が大きくなるため、暖房省エネの効果が認められる。
暖房時においては、調湿式冷暖房省エネ装置▲10▼を設置しない方の室内が気温20℃・湿度40%の時、当該装置を設置すると気温が0.5℃低下するが、湿度を約10%上昇させる。これを空気線図から求めたエンタルピーで見ると0.63kcal、同空気線図(図4)右下で表記される仕事量で、2.64KJ/kg(1KJ=0.2778W)となる。これを熱量換算すると0.733Wとなり、このような状況下では時間当たり2,640Wの省エネ効果となる。
【0009】
同一の家屋内での調湿材▲3▼は、当該家屋内の気温や湿度によって湿気の吸着・放出を繰り返す事になる。気温上昇時には調湿材▲3▼が保有していた湿気を放出(再生)される状態となる。この時、湿気放出による気化熱で、調湿式冷暖房省エネ装置▲10▼を設置していない場合と対比すると気温が若干低くなる(図5・冷房時の温湿度データ(A)に記載)。
家屋内の気温が低下した時は、湿気を吸着している状態となり、その時の凝縮熱で気温が、調湿式冷暖房省エネ装置▲10▼の設置していない場合と対比すると若干高くなる(図5・冷房時の温湿度データ(B)に記載)。
このように冷房時期の生活空間では、生活熱、生活発生水、外部湿度、外部気温などの影響を受けているが、調湿式冷暖房省エネ装置▲10▼は、この湿度や気温が上下する事を活用して恒常的に省エネ効果の仕事量を持続する事になる。
冬場の暖房期間においては、外気は乾燥状態となり、家屋内の生活空間においても乾燥気味となり、潜熱が不足する事から住む人の身体から水分を蒸発させて体温を奪い、寒さを助長させる。本装置の設置は、住む人の生活発生水が多い時にその湿気を吸着し、乾燥した時に、その水分を放出させる。その事で、家屋内の湿度を調湿式冷暖房省エネ装置▲10▼の設置していない場合と対比して、高い湿度で一定にさせる効果がある(図5・暖房時の温湿度データに記載)。
湿気吸着時には気温を若干上昇させ、放出時(再生)には気温を低下させるが、本装置における保湿での暖房省エネ効果が恒常的になされている。
【0010】
生活空間では気温(顕熱)と湿度(潜熱)が高くなると冷暖房機器の稼働率が高くなる。本発明はその湿度(潜熱)を調湿材▲3▼に吸着・放出させる事において、家屋内での冷暖房機器の稼働率を高くしない省エネ稼動で推移させる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、通常の家屋の室内の天井付近に吊るしただけで省エネ効果を発揮する事が確認されている。これに送風機▲11▼などを用いて強制的に空気を調湿材▲3▼に触れさせる事で、その効果が増大する。また天井裏▲7▼や上階・下階の間のデッド空間▲8▼、床下空間▲9▼に調湿式冷暖房省エネ装置▲10▼を設置し、空気導入通気口▲5▼、送風機を備えた室内導入通気口▲6▼を用いた業態とする事で、家全体の冷暖房省エネの効果を発揮する。
【実施例1】
【0012】
天井の下に通気性のある化粧グリルを施した調湿式冷暖房省エネ装置▲10▼を吊るした本発明の実施例。
【実施例2】
【0013】
天井裏に調湿式冷暖房省エネ装置▲10▼を設置して、空気導入通気口▲5▼で室内空気を貫通させた本発明の実施例。
【実施例3】
【0014】
天井裏に当該装置▲10▼を設置して空気導入通気口▲5▼で室内空気を貫通させ、送風機▲11▼の付いた室内導入通気口▲6▼で強制的に空気を移動させた本発明の実施例。
【実施例4】
【0015】
床下に調湿式冷暖房省エネ装置▲10▼を設置して空気導入通気口▲5▼で室内空気を貫通させ、送風機の付いた室内導入通気口▲6▼で強制的に空気を移動させた本発明の実施例。
【実施例5】
【0016】
上階・下階の間のデッド空間▲8▼に調湿式冷暖房省エネ装置▲10▼を設置して空気導入通気口▲5▼で室内空気を貫通させ、送風機の付いた室内導入通気口▲6▼で強制的に空気を移動させた本発明の実施例。
【実施例6】
【0017】
天井裏▲7▼や床下空間▲9▼などに調湿式冷暖房省エネ装置▲10▼を設置し、送風機▲11▼を用いて天井裏▲7▼の空気を床下空間▲9▼に強制的に送り込み、インナー通気層▲13▼や室内導入通気口▲6▼などを通じて強制的に空気を移動させた本発明の実施例。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、冷暖房の省エネ効果を恒常的に超長期間に渡りもたらす事が可能となる。
【0019】
本発明は、調湿効果により結露とハウスダストの発生を抑制する可能性がある。
【0020】
本発明は、有機ガスなどの有害物質を吸着するなど空気清浄の可能性がある。
【0021】
本発明にシリカゲルや人工ゼオライト(二酸化ケイ素)と言う、いずれも自然素材を用いる事で、それが不要となった場合に農地や園芸などの土壌改良などに汎用する事が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の断面図と取り付け断面図。
【図2】本発明の平屋家屋の取り付け立面断面図。
【図3】本発明の二階建て取り付け実施例の立面断面図。
【図4】本発明の効果を比較した空気線図
【図5】本発明の効果を測定した温湿度データ
【符号の説明】
【0023】
▲1▼架台
▲2▼メッシュ(ネット)など透湿性の伴った素材
▲3▼調湿材
▲4▼断熱・気密層
▲5▼空気導入通気口
▲6▼室内導入通気口
▲7▼天井裏
▲8▼上階・下階の間のデッド空間
▲9▼床下空間
▲10▼調湿式冷暖房省エネ装置
▲11▼送風機
▲12▼上昇気流
▲13▼インナー通気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台▲1▼に張ったメッシュ(ネット)など透湿性の伴った素材▲2▼の上に、吸放湿の出来る公知の調湿材▲3▼を載せて家屋内に設置し、当該調湿材▲3▼の上下両面を空気に触れさす構造にした事を特徴とする調湿式冷暖房省エネ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−139231(P2010−139231A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−336050(P2008−336050)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(393001039)株式会社福地建装 (10)
【Fターム(参考)】