識別方法、コンピュータプログラム及びコンピュータプログラム装置
CTスキャン画像中の病巣と壁との間の接合の検出方法において、内部空間(L)に対して前記壁の境界(B)を決定し、前記境界に沿った特異点(c1 ,c2 )を識別し、及び前記壁と前記病巣との間の接合点として、病巣のどちらかの側の1つの特異点を選択することを特徴とする方法が提供される。特異点は、境界の極大曲率の点及び直線と湾曲部との遷移点であってよい。特異点は、病巣の両側の第1および第2シード点(p1 ,p2 )を受付け、それらが既に境界上にあるわけではない場合にシード点を境界に対して移動し、シード点に最も近い特異点を探索することによって選択されてよい。シード点は、決定された接合点(j1 ,j2 )を隣り合うスライス画像から現在のスライス画像に移すことで決定してよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、詳細にはコンピュータ支援断層撮影(CT)スキャン画像であるがそれに制限されない、予め人体や動物からスキャンされた画像において、胸膜に接する肺結節又は大腸に接するポリプ等の、壁と病巣との接合部を検出する方法に関する。本発明は、前記方法を実行するためのソフトウェア及び装置を含む。
【背景技術】
【0002】
ガンの早期段階で病巣と疑わしき部位を検出することは、生存率を向上するために最も効果的な手段と考えられる。肺結節の検出及びポリプの検出は、医療用画像処理分野において、かなり困難であるが達成すべき課題の一部である。
コンピュータ補助技術が、CTスキャン画像内の結節を含む対象領域を識別するために提案されてきており、それらは結節を血管又は肺壁等の囲繞物体から分離したり、結節の物性を算出したり、及び/又は結節の自動診断を提供したりするものである。完全に自動化された方式では、放射線技師の介入なしで、全ての工程が実行されるが、1つ以上の工程が放射線技師からの入力を必要とする場合もあり、これは準自動化方式と記述されることがある。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0099384号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
病巣のサイズ又は範囲を検出することは正確な診断に重要であるが、胸膜に接した肺結節の範囲を検出する、又は胸膜から結節を分離することは、それらがCTスキャン画像中で類似した強度を有するために困難である。同様に、ポリプと大腸壁との間の境界を検出することも困難である。
【0004】
米国特許出願公開第2003/0099384号明細書及び米国特許出願公開第2003/0099389号明細書には、小さい結節の輪郭を形態的(morphological)に閉じることで胸膜の結節を検出する方法、及び形態的な輪郭の閉鎖に用いられる構造要素よりも大きい結節に対する変形可能な表面モデルが開示されている。
国際公開第03/010102号パンフレット及びMed.Phys.第29巻第11号(2002年11月出版)の2552乃至2558ページに記載されたガーカン・Mら(Gurcan M et. al.)による論文「胸部のコンピュータ支援断層撮影画像における肺結節検出:コンピュータ支援診断システムの予備的評価(Lung Nodule Detection on Thoracic Computed Tomography Images:Preliminary Evaluation of a Computer−aided Diagnostic System)」は、肺の境界に沿って閉じた輪郭上の一対の点を探索することによる肺胸膜の近傍の局所欠刻(local indentation)サーチを用いて胸膜結節を検出する方法を開示しており、そこでは、境界に沿ったそれらの点の間の距離の比が、所定の閾値を越えた分だけ2点間の直線距離より大きくなるように探索される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、病巣とスキャン画像中の壁との間の接合の検出方法において、内部空間に対する境界を決定し、前記境界に沿った特異点を識別し、及び前記壁と前記病巣との間の接合点として、前記病巣のどちらかの側の1つの特異点を選択する方法が提供される。特異点は、境界の極大曲率の点及び/又は直線と湾曲部との遷移点であってよい。特異点は、病巣の両側の第1および第2シード点(seed points)を受付け、それらが既に境界上にあるわけではない場合にシード点を境界に対して移動し、シード点に最も近い特異点を探索することによって選択されてよい。シード点は、選択された接合点を隣り合うスライス画像から現在のスライス画像に移すことで決定してよい。
本方法の利点は、病巣と胸膜との当接点を3次元で正確に決定することができ、よって病巣の範囲をより精密に決定することができることである。
接合点の位置は、種々の方式で精密化されてよく、ある場合には決定した特異点と精密に一致しなくてもよい。
本発明は、好ましくはコンピュータをもちいて実施され、本方法を実行するソフトウェアに拡張される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
CT画像
各実施形態は、ヒト又は動物を検体としたCTスキャンから得られた一連のCTスキャンスライス画像に対して実施される。各スライス画像は、スキャン領域のX線吸収の2次元デジタルグレースケール画像である。スライス画像の特性は使用するCTスキャナに依存する。例えば、高解像度マルチスライスCTスキャナは、x及びy方向に(即ち各スライス画像面に)0.5乃至0.6mm/ピクセルの解像度の画像を生成する。各ピクセルは32ビットのグレースケール解像度を有してよい。各ピクセルの強度値は、通常ハウンズフィールド単位(HU、Hounsfield unit)で表される。一連のスライス画像は、例えば0.75乃至2.5mmの間隔で、z方向(即ちスキャン分離軸)に一定の間隔をおいて隔てられてよい。よって、スキャン画像は、3次元(3D)グレースケール画像であり、スキャンされたスライス画像の面積および数に依存するトータルのサイズを有する。
本発明は、特定のスキャニング方式に制限されない。電子ビームCT(EBCT)、マルチ検出器又はラセン型スキャン、もしくは、X線吸収を表す2D又は3D画像を生成する任意の方式に適用可能である。
図1に示すように、スキャン画像はコンピュータ4によって生成されるものであり、該コンピュータはスキャナ2からスキャンデータを受け取り、該スキャン画像を構築する。スキャン画像は1つ又は複数の電子ファイルとして保存され、固定型又はリムーバブルディスク等の記憶媒体6上に保存される。スキャン画像は肺結節の範囲を識別するためにコンピュータ4によって処理されてよく、又はスキャン画像は、下述のように画像を処理するためのソフトウェアを実行する他のコンピュータ8に転送されてよい。画像処理ソフトウェアはリムーバブルディスク等の担体に保存されてよく、又はネットワーク上でダウンロードされてよい。
【0007】
肺壁に付着した結節
ある特定の実施形態においては、結節と肺壁との間の境界が検出されるように設計されている。周辺の肺結節は、しばしば胸膜の表面にある程度接合している(肺の周囲で、胸腔の境界に対して圧接されている)。結節はその表面を胸膜とかなりの程度共有している。このため、胸膜と結節との間の境界を示すことは困難な問題である。この複雑さは、結節の対向する両端の胸壁の周辺を識別する入力として2つのシード点(seed points)を用いることで軽減される。該シード点は、放射線技師等のユーザによって選択されてよく、又は自動的に決定されてよい。境界描画法の理論及び実施例は以下に示される。
【0008】
第1の実施形態では、前記方法は図2を参照して概略を述べた以下のステップを備える。
1)シード点(seed points)を入力する(ステップ12)。
2)周囲の組織から肺を分けるため粗分離を行い、境界を決定する(ステップ14)。
3)輪郭上の特異点を決定する(ステップ16)。
4)各スライス画像に対して以下の処理を実行する(開始スライス画像から開始する)。
a.開始スライス画像でなく、現在点のそれぞれが組織内である場合、現在点を境界に移動する(ステップ18)。このプロセスが失敗した場合、プロセスを終える。
b.それぞれの点が肺空間内にある場合、それを他方の点に向けて境界に当たるまで移動する(ステップ20)。失敗した場合終える。
c.2つの現在点に対して輪郭に沿った最も近傍の特異点を探索する(ステップ22)。
d.点を精密化する(ステップ24)。
e.現在スライス画像において結節の輪郭を得る(ステップ26)。
f.前のスライス画像における結節のオーバラップを確認する。オーバラップがなければ終える。
g.2つの点を次のスライス画像にマップする(ステップ30)。
5)開始スライス画像から両方向に、連続するスライス画像に対して処理を繰返す。
【0009】
シード点の入力(ステップ12)
ユーザはCTスキャン画像の1つ以上のスライス画像を検査し、可能性のある胸膜結節を視覚的に識別する。ユーザ入力デバイスによって、ユーザはスライス画像の1つでの可能性のある胸膜結節の両側を2つのシード点として選ぶ。そのシード点は、胸膜結節の両側にあるだけでよく、正確に境界上にある必要はない。
他に、ユーザは入力デバイスを用いて、可能性のある胸膜結節の周囲にボックス又は他の図形を描いてもよい。その図形と胸膜との交叉点を2つのシード点として選んでもよい。
他の選択肢として、スキャン画像は可能性のある胸膜結節を識別する前処理を施されてよく、シード点はこの前処理段階で入力されてもよい。
【0010】
分割(ステップ14)
シード点を含むスライス画像形成像の上下の複数(例えば30)のスライス画像からなる部分的な画像が選択され、その画像を肺空間と(胸膜に付着した任意の結節を含む)胸膜とに分離するように粗分割が実行される。肺空間の強度は胸膜及び結節のそれよりかなり低いので、その分割は所定の閾値を画像に適用することで実行してよい。その閾値より上ではあるが胸膜に連続していない物体は、このアルゴリズムでは考慮されない。
他に、より再現性よく実施するために、最適の中心スライス画像を探索し、当該最適の中心スライス画像を部分的な画像の中心としてよい。例えば60ピクセル×60ピクセル×10スライス画像の窓(window)を決め、その中心を2つのシード点の中点とする。窓内で最大の強度を有する点を探索し、その最大強度の点を含む対応するスライス画像を、当該部分画像の中心スライス画像として決める。
分割は、初期の粗分割の後に適応分割を実行することでさらに改善される。適応分割においては、粗分割で得られた肺空間は、肺空間を含むマスク及び肺空間の周囲の縁(へり)を得るために、距離変換を用いて拡大される。拡大因子は50%であってよい。このような適応型分割は、マスク内での強度値のみから得られた閾値で実行される。
分割の結果は、スライス画像の2値マップであり、2値の一方の値を有し肺空間を示すピクセルと2値の他方の値を有し囲繞組織を示すピクセルとを含む。肺空間と囲繞組織とのあいだの境界上のピクセルは境界ピクセルとしてラベルされる。
例として、図3aは肺のスライスのスキャン画像を示し、図3bは分割の結果を示している。図3bは、肺空間が白色(2進数の1)であり囲繞組織が黒色(2進数の0)である2値画像である。図3cは、白色で、分割で得られた境界ピクセルを示している。
【0011】
特異点の決定(ステップ16)
結節と胸膜との接合を検出する予備的ステップとして、境界の特異点が決定される。境界の各区画は凹部、凸部、又は直線部として識別される。特異点は、最大の凹曲率又は凸曲率の点、もしくは凹、凸、又は直線の状態間の遷移点のいずれかである。換言すれば、直線部と凸部又は凹部との間、もしくは直接に凸部と凹部との間である。胸膜と結節との間の境界を示すことが可能なので、特異点は重要である。
特異点を決定する、ある特定の方法について述べる。境界輪郭のマップが入力される。これは、例えば、アレイ内での位置が各ピクセルのx及びy座標で示される2値アレイであってよい。そして、境界ピクセルは2進数“1”でフラグされる。これは、換言すれば、境界のビットマップである。
次に、境界ピクセルが開始点として選択される。これは、任意の境界ピクセルが可能であり、例えば、第1の境界ピクセルはビットマップのラスタスキャン(左から右、上から下)で探索される。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】
【0014】
【表3】
【0015】
アルゴリズムは、それから、連続し隣り合う境界ピクセルの間で角度を記録して境界に沿って動かす。各スライス画像のピクセルは2Dカーテシアン(Cartesian)座標に配列しているので、8つの角度のみが可能である。各ピクセルに対して、隣接ピクセルは表1に示すような格子で表される。
各ピクセルと隣接ピクセルとの間の角度は、表2に示すようにコード化可能である。
コードは、表3に示す角度に対応する。
そして、ビットマップは、例えば(1,1,1,2,1,3,3…)のような、境界の周囲のループ内の連続する隣接境界ピクセルの間の角度を示すコードからなる1次元ベクトルを有する連鎖コードに変換される。なお、これらは下方向に対する絶対角度である。
次に、連鎖コードは、各境界ピクセルでの境界の曲率角度に変換される。これは、各境界ピクセルの周りの連鎖コードを取り出し、現在の境界ピクセルの近傍の境界ピクセルに関する連鎖コードがより強く重み付けされるように重み付けを施すことで実行される。なお、曲率角度は、絶対角度よりむしろ境界に対する相対的なものであり、ループの上の現在のピクセルの前の連鎖コードが、該ループの上の現在のピクセルの次のそれから減算されるようになっている。
【0016】
【数1】
【0017】
一例として、境界ピクセルiに対する曲率角度は、式に示されるように計算される。ここで、mj はガウス分布に従う重み付け因子であり、cci+j はピクセル(i+j)に対する連鎖コードで、負のjに対しては負数であり、nは、例えばn=5のような、境界の周囲の各方向を考慮した数を示している。
結果として、境界の周りの両方向で近傍のピクセルに関して、各境界ピクセルでの境界の曲率角度を示す1次元ベクトルが得られる。重み付けフィルタの効果は、連鎖コードの厳密な分散値に対して、角度を滑らかにすることである。
次に、曲率角度の極大及び極小が識別される。例えば、近隣比較法が用いられてよく、各角度はベクトル中の前後所定数(例えば3つ)の角度と比較される。
直線と凹部又は凸部との間の遷移点を識別するために、「直線」に対応する角度範囲を画定する。例えば、180°±fの全ての角度を直線として分類してよい。
図4aから4cは、それぞれf=5、15、30°に対する特異点を示している。凹極大及び直線と凹部との間の遷移は正方形で示しており、凸極大及び直線と凸部との間の遷移は円で示してある。図4aは、fを低く設定しすぎると、境界の曲率で緩やかな遷移しか示さない多数の特異点が生じることを示している。fの値は、ソフトウェアで予め設定される、及び/又はユーザにより調整されてよい。
【0018】
結節の向きの探索
結節を検出する前に、2つのシード点p1 及びp2 に対して、結節が肺中でどの方向に延びているかを、まず決定する。一実施形態において、図5に図説のように、ベクトルvを2つの点p1 及びp2 の間に設定し、直交するベクトルoをベクトルvの中点から両側に延ばす。肺の空間Lに向かうoの向きは、肺の方向、つまり、胸膜結節Nが胸膜Pから肺の中に延びる方向を示している。
初期スライス画像の後は、結節の方向は、シード点p1 及びp2 に対して、前のスライス画像における検出された結節の方向から決定される。
【0019】
空間への移動(ステップ18)
各スライス画像に対して、シード点p1 及びp2 は先ず、それらが境界B上にあるかどうか確認決定し、そうでない場合、それらは境界上の適切な点に移動される。初期スライス画像において、ユーザはシード点p1 及びp2 を正確に境界上に置く必要はない。シード点を境界上に移動し、それらのz座標を変更することで次のスライス画像にシード点を移動した後に、シード点は新しいスライス画像の境界上には最早なくてよい。
シード点p1 及びp2 のいずれかが胸膜P内にある場合、その点は、境界上に移動される。移動の方向と距離は、一の特異点から離れて移動しないように制限されてよく、結節と胸膜との界面を示すようになされる。詳細には、界面の角度は、1つのスライス画像から次へ大きく変更しないようにする。シード点を組織から境界へ移動する1つの方式を示す。
先ず、移動するシード点を中心とする窓(例えば、20mm×20mm)中に任意の肺空間Lが存在するかどうか決定する。存在しない場合、エラー条件が示されてよい。存在する場合、図6に示すように、以降のステップが実行される。
・組織中にある点p1 、p2 のそれぞれから2つの線l1 、l2 を、結節Nの方向oに、ベクトルvからそれぞれ45及び135度、それぞれ10単位の長さだけ引く。
・移動するシード点から2つの線l1 、l2 の両端までの最小のサイズの矩形Rを生成する(点p1 、p2 のうち1つが組織中にない場合、そのような一対の線のみがあればよいことに注意する)。
・矩形R内で、境界B上の、シード点に最も近い点を探索する。
・移動距離が10mm未満ならば、その境界上の点に移動する。
本方式は、ベクトルvが回転できる角度及びシード点が移動できる距離に適切な制限をかけるものである。
【0020】
2つの点の統合(ステップ20)
2つのシード点p1 及びp2 のそれぞれが肺空間Lにある場合、その点は、図7に示すように、境界Bに当たるまで、他方の点に向けて移動される。移動した点が互いに所定の距離(例えば2mm)以内の場合、これは点の間に空間しかないことを示しているので、処理は終了する。
【0021】
最も近い(最近傍の)特異点の探索(ステップ22)
シード点p1 及びp2 は、両者とも今や境界B上にあるはずである。次にそれらは、以下により詳細に述べるように、不適切な特異点の選択を避けるように企図したある条件に従って、境界Bに沿った最も近い特異点に対して移動される。
各シード点に対して、境界Bに沿った両方向で最も近い特異点が決定される。境界に沿った一方向の特異点が、他方向の特異点より顕著に近い場合、シード点はその近い特異点に移動される。例えば、シード点と一方向の最も近い特異点との間の距離(寸法)がある閾値より大きい場合、シード点は他方向の最も近い特異点に移動される。閾値は、例えば距離の2倍のように、各方向の2つの最も近い特異点のうちより近い方とシード点との間の距離の関数であってよい。
各方向の最も近い特異点が略等距離である場合、一の特異点がシード点と各特異点との間の直線上の肺空間の量に基いて選択される。例えば、図9に示すように、境界Bに沿った2つの最も近い特異点c1 、c2 とシード点p1 との間の距離の差が閾値未満の場合、シード点p1 から2つの最も近い特異点c1 、c2 それぞれへの直線l3 を生成し、肺空間Lを通過する線長の割合を決定する。割合が所定の閾値(例えば20%)を超える場合、その特異点は不適切な選択であるとみなし、他方向の最も近い特異点c2 に対する割合が閾値以下であれば、シード点はその点へ移動される。両方の特異点が閾値より大きい割合を有する場合、シード点はどちらの特異点へも移動されない。
【0022】
点同士が近すぎる場合の移動
ある場合、シード点のうちの1つは最良の特異点から比較的離れていることがあり、すると、最も近い特異点を探索する場合、両方のシード点が同じ特異点に、又はかなり近づきあった特異点に移動されることがある。これは、シード点が前のスライス画像からマップされた場合、特に以下に述べるように精密分割移動が適用された場合に起こり得る。境界に沿った2つのシード点の間の距離が5mmのような閾値距離未満の場合、特異点により近いシード点はその特異点に移動される一方、シード点の間の初期の距離のような所定の閾値を越えて2つのシード点の間の距離が増加しないという条件で、他のシード点は境界に沿ってもう1つのシード点から離れて最も近い特異点に移動される。換言すれば、一方を離れるように移動した後のシード点の間の距離は、移動前の距離の2倍を越えることはないはずである。
【0023】
近傍に特異点が存在しない場合
シード点のうちの1つの近傍に特異点が存在しないような場合、そのシード点を、他方のシード点に対する最も近い特異点に移動してよい。これは、1つのシード点が移動前のシード点の間の距離の50%といった所定の割合を越えて境界に沿って移動されるのを避けることで防げ、その場合、任意の特異点から離れたシード点は移動されない。
【0024】
精密分割(ステップ24)
粗く分割された境界を用いて最も近い特異点を探索した後、シード点の移動は、局所コントラストに応じて、精密分割を用いてシード点の近傍の境界Bを再評価することにより精密化してよい。例えば、各点が前景にあるか背景にあるかを決定するための閾値は、その点を囲む所定範囲の局所点からなるマスク内での各点の強度に基づいて決定してよい。閾値は、該閾値の上下の強度の中心の平均が、前記閾値と等しいか又は所定の程度前記閾値からずれるように選択されてよい。
次に、特異点を精密分割された境界上で決定する。シード点は、以下に例示するように、ある条件に従い、精密分割された境界上で最も近い特異点に移動されてよい。
・シード点の精密分割された境界への移動は、常に結節の方向から離れるように行われる。
・移動する距離は所定の閾値未満とする。閾値は、シード点が、スライス内で初期の点から粗分割を用いた最終の点へどれだけ動いたかに従って設定される。
・精密分割された境界の特異点へ移動する場合にシード点の間の線が回転する角度は、40度のような所定の角度未満とする。
粗分割された境界は、強力な部分体積効果がある結節の精密分割された境界の近傍にないことがあり得る。最も近い特異点が結節から離れる可能性があるこの場合、結節から離れる移動のみが許容されるので、正しい特異点が探索されない。これは、シード点が精密分割された境界と比較して肺内部にある場合、シード点を境界に到達するまで互いに向けて移動し、精密分割された境界上の最も近い特異点を探索することで解決することが可能である。
精密分割の効果は、結節の肺膜との接合を曖昧にする感染した組織等の、結節の周囲の物質の影響を除去することにある。粗分割では、通常境界の部分としてそのような物質が含まれ、一方、精密分割では、そのような物質は背景として再分類されるのである。
【0025】
複数の境界
ある場合、肺Lは、粗分割によって2つ以上の部分に分割され、シード点は、例えば図10に図説されるように、それぞれ異なる部分に位置する。これは、現在のスライス画像で、肺を横切って血管が延びている場合に起こり得る。そして、結節Nの部分として血管を含むことで、結節Nの範囲を決定するのに障害となることがある。
この問題を克服するために、シード点が、境界Bに移動される場合、異なる連通していない境界の部分を形成するかどうかを決定する。そのように決定された場合、図11に示すように、結節の方向oで2つのシード点の間にある、2つの境界の間の距離の変化を算出する。距離の変化の例となるグラフを図12に示す。グラフの勾配が最も大きな変化を示す点gが得られ、その点が境界Bに組み込まれる。このようにして、結節Nは血管から分離される。
【0026】
輪郭の補正
例えば図13aに示すように、検出された接合点の間の境界の縁が行き過ぎている場合には、特異点が肺壁への結節の当接の正しい位置にない可能性があり、これは、例えば接合での緩やかな角度変化のために起こる。
この問題を避けるために、輪郭補正機能が用いられてよく、図13b乃至13dに示すように、正しい領域の抽出ができるよう接合点を再調整する。先ず、接合点の間に線を引く。線が境界と交叉する場合は、一方の接合点を、その側で境界と交叉しなくなるまで、境界に沿って他方に向けて移動する。そして、他方の接合点を、境界と交叉しなくなるまで、第1の接合点に向けて移動する。
ある場合、特に結節が小さい場合、図14aに示すように、縁が行き過ぎていても接合点の間の線が境界と交叉しないことがある。この場合、図14cに示すように、線が境界に交叉するまで小刻みに変化させることで、図14bに示すように、接合点は境界に沿って同時に移動される。それから、図14dに示すように、線が境界と交叉しなくなるまで、上述の輪郭の補正を進める。
【0027】
結節境界の取得
この段階では、2つの接合点が決定されており、結節Nが胸膜Pと接合している境界Bに沿った点を示している。これらの接合点は、スライス画像内での結節Nの境界を推定するために用いることができる。第1近似として、接合点を結ぶ直線は、結節Nと胸膜Pとの間の接合を示すのに用いられる。代わりに、結節Nを囲む胸膜の曲率から推定したそれを有する曲線を用いてもよい。
次に、結節Nの範囲を決定する。一実施形態では、結節Nは胸膜P以外の主要物とは当接していないか、又はその近傍にもないと仮定する。ステップ14の分割結果が、図15に示すように、結節Nの部分を形成する際に、接合点を結ぶ線を越えた全ての前景領域を識別するために用いられる。
他の実施形態では、ファジーコントラスト領域拡張法が、結節Nの範囲を識別するために用いられる。先ず、局所閾値を基準とした分割処理によって、結節Nの範囲を推定する。各点に対する閾強度値を得るために局所マスクが用いられる。よって、閾値は局所コントラストに敏感であり、低いコントラストの結節を背景から区別することができる。精密分割によって得られた結節領域Nは、「孔」、即ち前景ピクセルによって囲まれた背景、を含みうる。孔は、コントラストの局所的な小さな差に対する精密分割の感度に基づいて生じる。適切な孔充填アルゴリズムが、そのような孔を充填するために用いられ、換言すれば、それらを前景ピクセルに変換する。
次に、結節領域N内で最も高い強度を有するピクセルがシード点として取り出され、バイナリ領域拡張がそのシード点から実行されて連続した前景領域Fを識別する。この領域は、前景及び背景の両者を含むマスクMを得るために、拡張因子を伴い距離変換法を用いて拡張される。拡張因子は50%であってよい。しかし、図16に示すように、マスクMは、接合点を結ぶ線の他側のピクセルを含むことはなく、接合点を超えたその線の射影を含む。次に、連続した前景領域F部分ではない、精密分割処理によって分割された前景ピクセルは、マスクMから除去される。マスクMの背景ピクセルは、背景領域Bとしてラベルされる。
前景及び背景領域F、Bの強度及び勾配分布の平均及び標準偏差が決定される。背景強度の平均μB 、前景強度の平均μF 、背景強度の標準偏差σB 、及び前景強度の標準偏差σF が算出される。パラメータεは、シード点が背景強度の平均μB から離れる前景強度の標準偏差σF の数を計数することで推定され、これはコントラストの測度(measure)として得られ、以下に述べるファジーマップを構築するのに続いて用いられる。
ファジー対象抽出法は、シード点に対するマスクM内のそれぞれのピクセルのファジー連続性(fuzzy connectivity)の2Dマップを確定するために用いられる。隣り合うピクセルの間のファジー親和性関数(fuzzy affinity function)が定義され、ピクセルとシード点との間の経路に沿って親和性を探索することによって、それぞれのピクセルとシード点との間のファジー連続性が得られる。
2点(隣り合う必要はない)間のファジー連続性は、2点間の最も強い親和性を有する経路を考慮することで得られる。最も強い親和性を有する経路が最良の経路として選択され、各経路の強度は、経路に沿った隣り合う点の最も弱い親和性のそれと等しい。2つの隣り合う点の間の強度はそれらの点の間の親和性である。
2点間の親和性は、それらが同一の対象に属する確率の測度である。この確率は、近接度(即ち、ユークリッド距離)の関数であり、それらのピクセルの間の画像の特徴の近似性である。
【0028】
ファジー親和性の一般モデルは、
μk =(c,d)=h(μa (c,d),f(c),f(d),c,d)
で与えられる。ここで、hは範囲[0,1]でのスカラ値、c及びdは2つのピクセルの画像中位置、及びf(i)はスペル(spel)iの強度である。μa は2つのピクセルの間の距離に基づく近傍性関数(adjacency function)であり、式で与えられる。
【0029】
【数2】
【0030】
シフト非依存性に簡略化すると、c≠dのとき式で与えられ、更に
μk (c,c)=1
である。
【0031】
【数3】
【0032】
ここで、下付き「i」は強度に関する計算を示し、「gk」は適切な方向(x、y、zであり得る)それぞれにおける勾配値に関する計算を示している。ωi 及びωg は和が1となる自由パラメータの加重値である。ωi に対して0.9及びωg に対して0.1の値が、強度の近似性を効果的とするために選択されてきた。現関数に用いられたファジー親和性は式に示される。
【0033】
【数4】
【0034】
ここで、mi 、Si 、mg 及びSg は強度及び勾配に対するガウス分布パラメータである。これらは予め定義されてよく、又は以下に述べるようにシード点の回りの小領域から推定される。
マスクM内の全ての点にわたって、強度及び勾配の平均及び標準偏差σが算出される。勾配に関するパラメータは3方向(x、y及びz)で別々に算出される。対応するσは最大及び最小の勾配の間の差に基いて算出される。
統計的な計算について、以下に詳述する。パラメータmi は開始の強度であり、mgx、mgyはそれぞれx及びy方向の勾配の平均である。パラメータSgx、Sgyはそれぞれの方向の勾配の標準偏差である。
親和性の式に現れる標準偏差(Sd )は、ファジーマップの形成に影響し、そのため結節境界の決定に影響する。それが大きすぎる場合、親和性曲線は比較的扁平となる。結果として、背景領域がより高い親和性を有し、拡張する領域は過剰に分割される。反対に、それが小さすぎる場合、親和性曲線の形状は狭くなり、前景はシード点と低い親和性を有することとなり、結果は過小にしか分割されない。理想的には、曲線は、背景のシード点との親和性が最小であるが有限である程度に分散しているとよい。よって、親和性のガウス曲線は、理想的な分散を達成するように標準偏差を変更して制限又は拡張される。
そして、ファジーマップが、シード点に対するそれぞれのピクセルのファジー連続性値を探索することによって作成される。ファジーマップは、そのピクセルがどれだけ強くシード点と関連付けられているかを示す強調された画像であると捉えてよい。
次に、シード点から開始して、コントラストに基づく領域拡張をファジーマップに施す。領域拡張中に各ピクセルが領域に追加されるとき、領域の内部と外部との間で周辺コントラストが算出される。領域の周辺コントラストは、内部境界の平均グレーレベルと現在の境界の平均グレーレベルとの間の差として画定されてよい。
コントラストに基づく領域拡張の繰返しの各回において、現在の境界から1つのピクセルが選択され、現在の領域に追加される。現在の境界で優先的に選択されるピクセルは、強度と現在の領域の中心に対する距離とに基づいて決定される。領域拡張中に各ピクセルが領域に追加されるとき、領域の内部と外部との間で周辺コントラストが算出される。領域の周辺コントラストは、内部境界の平均グレーレベルと現在の境界の平均グレーレベルとの間の差として画定されてよい。それぞれの段階での周辺コントラストは記録され、領域拡張はマスクMを満たすまで継続される。領域拡張中に得られた最も高い周辺コントラスト値は、結節Nのそれに対応するような境界を有する最適の領域を示すとものとして選び出される。
【0035】
次のスライス画像へのマップ(ステップ28)
現在のスライス画像中の結節Nの範囲が決定された後、現在のスライス画像中の結節Nが、前の隣り合うスライス画像で決定された結節Nの範囲に重なり合うかどうかを決定する。これは、種々の方法で行われてよく、例えば、それぞれのスライス画像中の結節Nの中心を囲む所定半径の円形の「核」を決定し、隣り合うスライス画像同士でその核が重なり合うかどうか、即ち2つの核の間に同一のx及びy座標を有する任意のピクセルがあるかどうか、を決定することによってなされてよい。重なり合いがない、つまり現在のスライス画像では全く結節が検出されなかった場合、これは、開始スライス画像から現在の方向での結節Nの境界に達したことを示しているとしてよい。アルゴリズムが開始スライス画像から一方向のみに進んだ場合、それを他方向に進める。結節境界検出が両方向に実行された場合、アルゴリズムは終了し、結節Nが検出されたそれぞれのスライス画像における検出された結節の範囲を出力する。
前のスライス画像との重なり合いがある場合、アルゴリズムは次のスライス画像に進み、図17に示すように、現在のスライス画像の接合点j1 、j2 を次のスライス画像の2つのシード点p1 、p2 として用いる。例えば、新しいスライス画像のシード点は、前のスライス画像の接合点と同一のx及びy座標を有する。
【0036】
結果
図18は、サンプルのスキャン画像に検出された結節Nの範囲を示している。
【0037】
大腸への応用
上述した実施形態は、大腸のCTスキャン画像におけるポリプの検出に適用することもできる。ポリプは常に、CTスキャン画像中で類似の強度を有する大腸壁に付着している。ポリプの形状は、肺結節のそれとは若干異なっているが、大腸壁とポリプとの接合部は類似の幾何学的特徴を有しており、実施形態はその接合部を検出するのに用いることができる。
本発明は、人体及び/又は動物の内部空間の壁に付着している、他の異常腫瘍の検出に適用可能である。
【0038】
他の実施形態
例示とともに上述の実施形態は本発明の範囲を限定するものではない。種々の変形例が請求項の範囲内で想到され得る。上記議論から明らかなように、本方法は単一のCTスライス画像からなる2D画像、又は連続したCTスライス画像からなる3D画像において実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】CTスキャン装置を示し、該スキャン装置からの画像データを処理する遠隔コンピュータを示す略示図である。
【図2】本発明の実施形態におけるアルゴリズムのフローチャートである。
【図3】(a)は肺のCTスキャン画像の単一のスライス画像を示す図、(b)は分割によって得られた肺領域のCTスキャン画像の単一のスライス画像を示す図、(c)は肺領域の境界のCTスキャン画像の単一のスライス画像を示す図である。
【図4】3つの異なる閾値のうちの1つにより肺境界上に検出された特異点を示す図である。
【図5】結節の両側のシード点を示す図である。
【図6】胸膜から境界へシード点を移動する方法を説明する図である。
【図7】肺空間から境界へシード点を移動する方法を説明する図である。
【図8】最も近い特異点へシード点を移動する方法を説明する図である。
【図9】略等距離にある場合最良の特異点を決定する方法を説明する図である。
【図10】肺が複数の境界に分割された例を示す図である。
【図11】境界の間の接合がどこで決定されるかを示す図である。
【図12】接合がどのように決定されるかを示し、2つの境界の間の中線上の距離に対して幅を示すグラフである。
【図13】結節の行き過ぎた縁を補正する方法を示す図である。
【図14】検出された縁が結節を越えている場合、行き過ぎた縁を補正する方法を示す図である。
【図15】検出された結節の範囲を示す図である。
【図16】結節の範囲を検出する別の方法を説明する図である。
【図17】接合点を次のスライス画像のシード点にマップすることを説明する図である。
【図18】一連の連続したスライス画像中で検出された結節の範囲を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、詳細にはコンピュータ支援断層撮影(CT)スキャン画像であるがそれに制限されない、予め人体や動物からスキャンされた画像において、胸膜に接する肺結節又は大腸に接するポリプ等の、壁と病巣との接合部を検出する方法に関する。本発明は、前記方法を実行するためのソフトウェア及び装置を含む。
【背景技術】
【0002】
ガンの早期段階で病巣と疑わしき部位を検出することは、生存率を向上するために最も効果的な手段と考えられる。肺結節の検出及びポリプの検出は、医療用画像処理分野において、かなり困難であるが達成すべき課題の一部である。
コンピュータ補助技術が、CTスキャン画像内の結節を含む対象領域を識別するために提案されてきており、それらは結節を血管又は肺壁等の囲繞物体から分離したり、結節の物性を算出したり、及び/又は結節の自動診断を提供したりするものである。完全に自動化された方式では、放射線技師の介入なしで、全ての工程が実行されるが、1つ以上の工程が放射線技師からの入力を必要とする場合もあり、これは準自動化方式と記述されることがある。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0099384号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
病巣のサイズ又は範囲を検出することは正確な診断に重要であるが、胸膜に接した肺結節の範囲を検出する、又は胸膜から結節を分離することは、それらがCTスキャン画像中で類似した強度を有するために困難である。同様に、ポリプと大腸壁との間の境界を検出することも困難である。
【0004】
米国特許出願公開第2003/0099384号明細書及び米国特許出願公開第2003/0099389号明細書には、小さい結節の輪郭を形態的(morphological)に閉じることで胸膜の結節を検出する方法、及び形態的な輪郭の閉鎖に用いられる構造要素よりも大きい結節に対する変形可能な表面モデルが開示されている。
国際公開第03/010102号パンフレット及びMed.Phys.第29巻第11号(2002年11月出版)の2552乃至2558ページに記載されたガーカン・Mら(Gurcan M et. al.)による論文「胸部のコンピュータ支援断層撮影画像における肺結節検出:コンピュータ支援診断システムの予備的評価(Lung Nodule Detection on Thoracic Computed Tomography Images:Preliminary Evaluation of a Computer−aided Diagnostic System)」は、肺の境界に沿って閉じた輪郭上の一対の点を探索することによる肺胸膜の近傍の局所欠刻(local indentation)サーチを用いて胸膜結節を検出する方法を開示しており、そこでは、境界に沿ったそれらの点の間の距離の比が、所定の閾値を越えた分だけ2点間の直線距離より大きくなるように探索される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、病巣とスキャン画像中の壁との間の接合の検出方法において、内部空間に対する境界を決定し、前記境界に沿った特異点を識別し、及び前記壁と前記病巣との間の接合点として、前記病巣のどちらかの側の1つの特異点を選択する方法が提供される。特異点は、境界の極大曲率の点及び/又は直線と湾曲部との遷移点であってよい。特異点は、病巣の両側の第1および第2シード点(seed points)を受付け、それらが既に境界上にあるわけではない場合にシード点を境界に対して移動し、シード点に最も近い特異点を探索することによって選択されてよい。シード点は、選択された接合点を隣り合うスライス画像から現在のスライス画像に移すことで決定してよい。
本方法の利点は、病巣と胸膜との当接点を3次元で正確に決定することができ、よって病巣の範囲をより精密に決定することができることである。
接合点の位置は、種々の方式で精密化されてよく、ある場合には決定した特異点と精密に一致しなくてもよい。
本発明は、好ましくはコンピュータをもちいて実施され、本方法を実行するソフトウェアに拡張される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
CT画像
各実施形態は、ヒト又は動物を検体としたCTスキャンから得られた一連のCTスキャンスライス画像に対して実施される。各スライス画像は、スキャン領域のX線吸収の2次元デジタルグレースケール画像である。スライス画像の特性は使用するCTスキャナに依存する。例えば、高解像度マルチスライスCTスキャナは、x及びy方向に(即ち各スライス画像面に)0.5乃至0.6mm/ピクセルの解像度の画像を生成する。各ピクセルは32ビットのグレースケール解像度を有してよい。各ピクセルの強度値は、通常ハウンズフィールド単位(HU、Hounsfield unit)で表される。一連のスライス画像は、例えば0.75乃至2.5mmの間隔で、z方向(即ちスキャン分離軸)に一定の間隔をおいて隔てられてよい。よって、スキャン画像は、3次元(3D)グレースケール画像であり、スキャンされたスライス画像の面積および数に依存するトータルのサイズを有する。
本発明は、特定のスキャニング方式に制限されない。電子ビームCT(EBCT)、マルチ検出器又はラセン型スキャン、もしくは、X線吸収を表す2D又は3D画像を生成する任意の方式に適用可能である。
図1に示すように、スキャン画像はコンピュータ4によって生成されるものであり、該コンピュータはスキャナ2からスキャンデータを受け取り、該スキャン画像を構築する。スキャン画像は1つ又は複数の電子ファイルとして保存され、固定型又はリムーバブルディスク等の記憶媒体6上に保存される。スキャン画像は肺結節の範囲を識別するためにコンピュータ4によって処理されてよく、又はスキャン画像は、下述のように画像を処理するためのソフトウェアを実行する他のコンピュータ8に転送されてよい。画像処理ソフトウェアはリムーバブルディスク等の担体に保存されてよく、又はネットワーク上でダウンロードされてよい。
【0007】
肺壁に付着した結節
ある特定の実施形態においては、結節と肺壁との間の境界が検出されるように設計されている。周辺の肺結節は、しばしば胸膜の表面にある程度接合している(肺の周囲で、胸腔の境界に対して圧接されている)。結節はその表面を胸膜とかなりの程度共有している。このため、胸膜と結節との間の境界を示すことは困難な問題である。この複雑さは、結節の対向する両端の胸壁の周辺を識別する入力として2つのシード点(seed points)を用いることで軽減される。該シード点は、放射線技師等のユーザによって選択されてよく、又は自動的に決定されてよい。境界描画法の理論及び実施例は以下に示される。
【0008】
第1の実施形態では、前記方法は図2を参照して概略を述べた以下のステップを備える。
1)シード点(seed points)を入力する(ステップ12)。
2)周囲の組織から肺を分けるため粗分離を行い、境界を決定する(ステップ14)。
3)輪郭上の特異点を決定する(ステップ16)。
4)各スライス画像に対して以下の処理を実行する(開始スライス画像から開始する)。
a.開始スライス画像でなく、現在点のそれぞれが組織内である場合、現在点を境界に移動する(ステップ18)。このプロセスが失敗した場合、プロセスを終える。
b.それぞれの点が肺空間内にある場合、それを他方の点に向けて境界に当たるまで移動する(ステップ20)。失敗した場合終える。
c.2つの現在点に対して輪郭に沿った最も近傍の特異点を探索する(ステップ22)。
d.点を精密化する(ステップ24)。
e.現在スライス画像において結節の輪郭を得る(ステップ26)。
f.前のスライス画像における結節のオーバラップを確認する。オーバラップがなければ終える。
g.2つの点を次のスライス画像にマップする(ステップ30)。
5)開始スライス画像から両方向に、連続するスライス画像に対して処理を繰返す。
【0009】
シード点の入力(ステップ12)
ユーザはCTスキャン画像の1つ以上のスライス画像を検査し、可能性のある胸膜結節を視覚的に識別する。ユーザ入力デバイスによって、ユーザはスライス画像の1つでの可能性のある胸膜結節の両側を2つのシード点として選ぶ。そのシード点は、胸膜結節の両側にあるだけでよく、正確に境界上にある必要はない。
他に、ユーザは入力デバイスを用いて、可能性のある胸膜結節の周囲にボックス又は他の図形を描いてもよい。その図形と胸膜との交叉点を2つのシード点として選んでもよい。
他の選択肢として、スキャン画像は可能性のある胸膜結節を識別する前処理を施されてよく、シード点はこの前処理段階で入力されてもよい。
【0010】
分割(ステップ14)
シード点を含むスライス画像形成像の上下の複数(例えば30)のスライス画像からなる部分的な画像が選択され、その画像を肺空間と(胸膜に付着した任意の結節を含む)胸膜とに分離するように粗分割が実行される。肺空間の強度は胸膜及び結節のそれよりかなり低いので、その分割は所定の閾値を画像に適用することで実行してよい。その閾値より上ではあるが胸膜に連続していない物体は、このアルゴリズムでは考慮されない。
他に、より再現性よく実施するために、最適の中心スライス画像を探索し、当該最適の中心スライス画像を部分的な画像の中心としてよい。例えば60ピクセル×60ピクセル×10スライス画像の窓(window)を決め、その中心を2つのシード点の中点とする。窓内で最大の強度を有する点を探索し、その最大強度の点を含む対応するスライス画像を、当該部分画像の中心スライス画像として決める。
分割は、初期の粗分割の後に適応分割を実行することでさらに改善される。適応分割においては、粗分割で得られた肺空間は、肺空間を含むマスク及び肺空間の周囲の縁(へり)を得るために、距離変換を用いて拡大される。拡大因子は50%であってよい。このような適応型分割は、マスク内での強度値のみから得られた閾値で実行される。
分割の結果は、スライス画像の2値マップであり、2値の一方の値を有し肺空間を示すピクセルと2値の他方の値を有し囲繞組織を示すピクセルとを含む。肺空間と囲繞組織とのあいだの境界上のピクセルは境界ピクセルとしてラベルされる。
例として、図3aは肺のスライスのスキャン画像を示し、図3bは分割の結果を示している。図3bは、肺空間が白色(2進数の1)であり囲繞組織が黒色(2進数の0)である2値画像である。図3cは、白色で、分割で得られた境界ピクセルを示している。
【0011】
特異点の決定(ステップ16)
結節と胸膜との接合を検出する予備的ステップとして、境界の特異点が決定される。境界の各区画は凹部、凸部、又は直線部として識別される。特異点は、最大の凹曲率又は凸曲率の点、もしくは凹、凸、又は直線の状態間の遷移点のいずれかである。換言すれば、直線部と凸部又は凹部との間、もしくは直接に凸部と凹部との間である。胸膜と結節との間の境界を示すことが可能なので、特異点は重要である。
特異点を決定する、ある特定の方法について述べる。境界輪郭のマップが入力される。これは、例えば、アレイ内での位置が各ピクセルのx及びy座標で示される2値アレイであってよい。そして、境界ピクセルは2進数“1”でフラグされる。これは、換言すれば、境界のビットマップである。
次に、境界ピクセルが開始点として選択される。これは、任意の境界ピクセルが可能であり、例えば、第1の境界ピクセルはビットマップのラスタスキャン(左から右、上から下)で探索される。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】
【0014】
【表3】
【0015】
アルゴリズムは、それから、連続し隣り合う境界ピクセルの間で角度を記録して境界に沿って動かす。各スライス画像のピクセルは2Dカーテシアン(Cartesian)座標に配列しているので、8つの角度のみが可能である。各ピクセルに対して、隣接ピクセルは表1に示すような格子で表される。
各ピクセルと隣接ピクセルとの間の角度は、表2に示すようにコード化可能である。
コードは、表3に示す角度に対応する。
そして、ビットマップは、例えば(1,1,1,2,1,3,3…)のような、境界の周囲のループ内の連続する隣接境界ピクセルの間の角度を示すコードからなる1次元ベクトルを有する連鎖コードに変換される。なお、これらは下方向に対する絶対角度である。
次に、連鎖コードは、各境界ピクセルでの境界の曲率角度に変換される。これは、各境界ピクセルの周りの連鎖コードを取り出し、現在の境界ピクセルの近傍の境界ピクセルに関する連鎖コードがより強く重み付けされるように重み付けを施すことで実行される。なお、曲率角度は、絶対角度よりむしろ境界に対する相対的なものであり、ループの上の現在のピクセルの前の連鎖コードが、該ループの上の現在のピクセルの次のそれから減算されるようになっている。
【0016】
【数1】
【0017】
一例として、境界ピクセルiに対する曲率角度は、式に示されるように計算される。ここで、mj はガウス分布に従う重み付け因子であり、cci+j はピクセル(i+j)に対する連鎖コードで、負のjに対しては負数であり、nは、例えばn=5のような、境界の周囲の各方向を考慮した数を示している。
結果として、境界の周りの両方向で近傍のピクセルに関して、各境界ピクセルでの境界の曲率角度を示す1次元ベクトルが得られる。重み付けフィルタの効果は、連鎖コードの厳密な分散値に対して、角度を滑らかにすることである。
次に、曲率角度の極大及び極小が識別される。例えば、近隣比較法が用いられてよく、各角度はベクトル中の前後所定数(例えば3つ)の角度と比較される。
直線と凹部又は凸部との間の遷移点を識別するために、「直線」に対応する角度範囲を画定する。例えば、180°±fの全ての角度を直線として分類してよい。
図4aから4cは、それぞれf=5、15、30°に対する特異点を示している。凹極大及び直線と凹部との間の遷移は正方形で示しており、凸極大及び直線と凸部との間の遷移は円で示してある。図4aは、fを低く設定しすぎると、境界の曲率で緩やかな遷移しか示さない多数の特異点が生じることを示している。fの値は、ソフトウェアで予め設定される、及び/又はユーザにより調整されてよい。
【0018】
結節の向きの探索
結節を検出する前に、2つのシード点p1 及びp2 に対して、結節が肺中でどの方向に延びているかを、まず決定する。一実施形態において、図5に図説のように、ベクトルvを2つの点p1 及びp2 の間に設定し、直交するベクトルoをベクトルvの中点から両側に延ばす。肺の空間Lに向かうoの向きは、肺の方向、つまり、胸膜結節Nが胸膜Pから肺の中に延びる方向を示している。
初期スライス画像の後は、結節の方向は、シード点p1 及びp2 に対して、前のスライス画像における検出された結節の方向から決定される。
【0019】
空間への移動(ステップ18)
各スライス画像に対して、シード点p1 及びp2 は先ず、それらが境界B上にあるかどうか確認決定し、そうでない場合、それらは境界上の適切な点に移動される。初期スライス画像において、ユーザはシード点p1 及びp2 を正確に境界上に置く必要はない。シード点を境界上に移動し、それらのz座標を変更することで次のスライス画像にシード点を移動した後に、シード点は新しいスライス画像の境界上には最早なくてよい。
シード点p1 及びp2 のいずれかが胸膜P内にある場合、その点は、境界上に移動される。移動の方向と距離は、一の特異点から離れて移動しないように制限されてよく、結節と胸膜との界面を示すようになされる。詳細には、界面の角度は、1つのスライス画像から次へ大きく変更しないようにする。シード点を組織から境界へ移動する1つの方式を示す。
先ず、移動するシード点を中心とする窓(例えば、20mm×20mm)中に任意の肺空間Lが存在するかどうか決定する。存在しない場合、エラー条件が示されてよい。存在する場合、図6に示すように、以降のステップが実行される。
・組織中にある点p1 、p2 のそれぞれから2つの線l1 、l2 を、結節Nの方向oに、ベクトルvからそれぞれ45及び135度、それぞれ10単位の長さだけ引く。
・移動するシード点から2つの線l1 、l2 の両端までの最小のサイズの矩形Rを生成する(点p1 、p2 のうち1つが組織中にない場合、そのような一対の線のみがあればよいことに注意する)。
・矩形R内で、境界B上の、シード点に最も近い点を探索する。
・移動距離が10mm未満ならば、その境界上の点に移動する。
本方式は、ベクトルvが回転できる角度及びシード点が移動できる距離に適切な制限をかけるものである。
【0020】
2つの点の統合(ステップ20)
2つのシード点p1 及びp2 のそれぞれが肺空間Lにある場合、その点は、図7に示すように、境界Bに当たるまで、他方の点に向けて移動される。移動した点が互いに所定の距離(例えば2mm)以内の場合、これは点の間に空間しかないことを示しているので、処理は終了する。
【0021】
最も近い(最近傍の)特異点の探索(ステップ22)
シード点p1 及びp2 は、両者とも今や境界B上にあるはずである。次にそれらは、以下により詳細に述べるように、不適切な特異点の選択を避けるように企図したある条件に従って、境界Bに沿った最も近い特異点に対して移動される。
各シード点に対して、境界Bに沿った両方向で最も近い特異点が決定される。境界に沿った一方向の特異点が、他方向の特異点より顕著に近い場合、シード点はその近い特異点に移動される。例えば、シード点と一方向の最も近い特異点との間の距離(寸法)がある閾値より大きい場合、シード点は他方向の最も近い特異点に移動される。閾値は、例えば距離の2倍のように、各方向の2つの最も近い特異点のうちより近い方とシード点との間の距離の関数であってよい。
各方向の最も近い特異点が略等距離である場合、一の特異点がシード点と各特異点との間の直線上の肺空間の量に基いて選択される。例えば、図9に示すように、境界Bに沿った2つの最も近い特異点c1 、c2 とシード点p1 との間の距離の差が閾値未満の場合、シード点p1 から2つの最も近い特異点c1 、c2 それぞれへの直線l3 を生成し、肺空間Lを通過する線長の割合を決定する。割合が所定の閾値(例えば20%)を超える場合、その特異点は不適切な選択であるとみなし、他方向の最も近い特異点c2 に対する割合が閾値以下であれば、シード点はその点へ移動される。両方の特異点が閾値より大きい割合を有する場合、シード点はどちらの特異点へも移動されない。
【0022】
点同士が近すぎる場合の移動
ある場合、シード点のうちの1つは最良の特異点から比較的離れていることがあり、すると、最も近い特異点を探索する場合、両方のシード点が同じ特異点に、又はかなり近づきあった特異点に移動されることがある。これは、シード点が前のスライス画像からマップされた場合、特に以下に述べるように精密分割移動が適用された場合に起こり得る。境界に沿った2つのシード点の間の距離が5mmのような閾値距離未満の場合、特異点により近いシード点はその特異点に移動される一方、シード点の間の初期の距離のような所定の閾値を越えて2つのシード点の間の距離が増加しないという条件で、他のシード点は境界に沿ってもう1つのシード点から離れて最も近い特異点に移動される。換言すれば、一方を離れるように移動した後のシード点の間の距離は、移動前の距離の2倍を越えることはないはずである。
【0023】
近傍に特異点が存在しない場合
シード点のうちの1つの近傍に特異点が存在しないような場合、そのシード点を、他方のシード点に対する最も近い特異点に移動してよい。これは、1つのシード点が移動前のシード点の間の距離の50%といった所定の割合を越えて境界に沿って移動されるのを避けることで防げ、その場合、任意の特異点から離れたシード点は移動されない。
【0024】
精密分割(ステップ24)
粗く分割された境界を用いて最も近い特異点を探索した後、シード点の移動は、局所コントラストに応じて、精密分割を用いてシード点の近傍の境界Bを再評価することにより精密化してよい。例えば、各点が前景にあるか背景にあるかを決定するための閾値は、その点を囲む所定範囲の局所点からなるマスク内での各点の強度に基づいて決定してよい。閾値は、該閾値の上下の強度の中心の平均が、前記閾値と等しいか又は所定の程度前記閾値からずれるように選択されてよい。
次に、特異点を精密分割された境界上で決定する。シード点は、以下に例示するように、ある条件に従い、精密分割された境界上で最も近い特異点に移動されてよい。
・シード点の精密分割された境界への移動は、常に結節の方向から離れるように行われる。
・移動する距離は所定の閾値未満とする。閾値は、シード点が、スライス内で初期の点から粗分割を用いた最終の点へどれだけ動いたかに従って設定される。
・精密分割された境界の特異点へ移動する場合にシード点の間の線が回転する角度は、40度のような所定の角度未満とする。
粗分割された境界は、強力な部分体積効果がある結節の精密分割された境界の近傍にないことがあり得る。最も近い特異点が結節から離れる可能性があるこの場合、結節から離れる移動のみが許容されるので、正しい特異点が探索されない。これは、シード点が精密分割された境界と比較して肺内部にある場合、シード点を境界に到達するまで互いに向けて移動し、精密分割された境界上の最も近い特異点を探索することで解決することが可能である。
精密分割の効果は、結節の肺膜との接合を曖昧にする感染した組織等の、結節の周囲の物質の影響を除去することにある。粗分割では、通常境界の部分としてそのような物質が含まれ、一方、精密分割では、そのような物質は背景として再分類されるのである。
【0025】
複数の境界
ある場合、肺Lは、粗分割によって2つ以上の部分に分割され、シード点は、例えば図10に図説されるように、それぞれ異なる部分に位置する。これは、現在のスライス画像で、肺を横切って血管が延びている場合に起こり得る。そして、結節Nの部分として血管を含むことで、結節Nの範囲を決定するのに障害となることがある。
この問題を克服するために、シード点が、境界Bに移動される場合、異なる連通していない境界の部分を形成するかどうかを決定する。そのように決定された場合、図11に示すように、結節の方向oで2つのシード点の間にある、2つの境界の間の距離の変化を算出する。距離の変化の例となるグラフを図12に示す。グラフの勾配が最も大きな変化を示す点gが得られ、その点が境界Bに組み込まれる。このようにして、結節Nは血管から分離される。
【0026】
輪郭の補正
例えば図13aに示すように、検出された接合点の間の境界の縁が行き過ぎている場合には、特異点が肺壁への結節の当接の正しい位置にない可能性があり、これは、例えば接合での緩やかな角度変化のために起こる。
この問題を避けるために、輪郭補正機能が用いられてよく、図13b乃至13dに示すように、正しい領域の抽出ができるよう接合点を再調整する。先ず、接合点の間に線を引く。線が境界と交叉する場合は、一方の接合点を、その側で境界と交叉しなくなるまで、境界に沿って他方に向けて移動する。そして、他方の接合点を、境界と交叉しなくなるまで、第1の接合点に向けて移動する。
ある場合、特に結節が小さい場合、図14aに示すように、縁が行き過ぎていても接合点の間の線が境界と交叉しないことがある。この場合、図14cに示すように、線が境界に交叉するまで小刻みに変化させることで、図14bに示すように、接合点は境界に沿って同時に移動される。それから、図14dに示すように、線が境界と交叉しなくなるまで、上述の輪郭の補正を進める。
【0027】
結節境界の取得
この段階では、2つの接合点が決定されており、結節Nが胸膜Pと接合している境界Bに沿った点を示している。これらの接合点は、スライス画像内での結節Nの境界を推定するために用いることができる。第1近似として、接合点を結ぶ直線は、結節Nと胸膜Pとの間の接合を示すのに用いられる。代わりに、結節Nを囲む胸膜の曲率から推定したそれを有する曲線を用いてもよい。
次に、結節Nの範囲を決定する。一実施形態では、結節Nは胸膜P以外の主要物とは当接していないか、又はその近傍にもないと仮定する。ステップ14の分割結果が、図15に示すように、結節Nの部分を形成する際に、接合点を結ぶ線を越えた全ての前景領域を識別するために用いられる。
他の実施形態では、ファジーコントラスト領域拡張法が、結節Nの範囲を識別するために用いられる。先ず、局所閾値を基準とした分割処理によって、結節Nの範囲を推定する。各点に対する閾強度値を得るために局所マスクが用いられる。よって、閾値は局所コントラストに敏感であり、低いコントラストの結節を背景から区別することができる。精密分割によって得られた結節領域Nは、「孔」、即ち前景ピクセルによって囲まれた背景、を含みうる。孔は、コントラストの局所的な小さな差に対する精密分割の感度に基づいて生じる。適切な孔充填アルゴリズムが、そのような孔を充填するために用いられ、換言すれば、それらを前景ピクセルに変換する。
次に、結節領域N内で最も高い強度を有するピクセルがシード点として取り出され、バイナリ領域拡張がそのシード点から実行されて連続した前景領域Fを識別する。この領域は、前景及び背景の両者を含むマスクMを得るために、拡張因子を伴い距離変換法を用いて拡張される。拡張因子は50%であってよい。しかし、図16に示すように、マスクMは、接合点を結ぶ線の他側のピクセルを含むことはなく、接合点を超えたその線の射影を含む。次に、連続した前景領域F部分ではない、精密分割処理によって分割された前景ピクセルは、マスクMから除去される。マスクMの背景ピクセルは、背景領域Bとしてラベルされる。
前景及び背景領域F、Bの強度及び勾配分布の平均及び標準偏差が決定される。背景強度の平均μB 、前景強度の平均μF 、背景強度の標準偏差σB 、及び前景強度の標準偏差σF が算出される。パラメータεは、シード点が背景強度の平均μB から離れる前景強度の標準偏差σF の数を計数することで推定され、これはコントラストの測度(measure)として得られ、以下に述べるファジーマップを構築するのに続いて用いられる。
ファジー対象抽出法は、シード点に対するマスクM内のそれぞれのピクセルのファジー連続性(fuzzy connectivity)の2Dマップを確定するために用いられる。隣り合うピクセルの間のファジー親和性関数(fuzzy affinity function)が定義され、ピクセルとシード点との間の経路に沿って親和性を探索することによって、それぞれのピクセルとシード点との間のファジー連続性が得られる。
2点(隣り合う必要はない)間のファジー連続性は、2点間の最も強い親和性を有する経路を考慮することで得られる。最も強い親和性を有する経路が最良の経路として選択され、各経路の強度は、経路に沿った隣り合う点の最も弱い親和性のそれと等しい。2つの隣り合う点の間の強度はそれらの点の間の親和性である。
2点間の親和性は、それらが同一の対象に属する確率の測度である。この確率は、近接度(即ち、ユークリッド距離)の関数であり、それらのピクセルの間の画像の特徴の近似性である。
【0028】
ファジー親和性の一般モデルは、
μk =(c,d)=h(μa (c,d),f(c),f(d),c,d)
で与えられる。ここで、hは範囲[0,1]でのスカラ値、c及びdは2つのピクセルの画像中位置、及びf(i)はスペル(spel)iの強度である。μa は2つのピクセルの間の距離に基づく近傍性関数(adjacency function)であり、式で与えられる。
【0029】
【数2】
【0030】
シフト非依存性に簡略化すると、c≠dのとき式で与えられ、更に
μk (c,c)=1
である。
【0031】
【数3】
【0032】
ここで、下付き「i」は強度に関する計算を示し、「gk」は適切な方向(x、y、zであり得る)それぞれにおける勾配値に関する計算を示している。ωi 及びωg は和が1となる自由パラメータの加重値である。ωi に対して0.9及びωg に対して0.1の値が、強度の近似性を効果的とするために選択されてきた。現関数に用いられたファジー親和性は式に示される。
【0033】
【数4】
【0034】
ここで、mi 、Si 、mg 及びSg は強度及び勾配に対するガウス分布パラメータである。これらは予め定義されてよく、又は以下に述べるようにシード点の回りの小領域から推定される。
マスクM内の全ての点にわたって、強度及び勾配の平均及び標準偏差σが算出される。勾配に関するパラメータは3方向(x、y及びz)で別々に算出される。対応するσは最大及び最小の勾配の間の差に基いて算出される。
統計的な計算について、以下に詳述する。パラメータmi は開始の強度であり、mgx、mgyはそれぞれx及びy方向の勾配の平均である。パラメータSgx、Sgyはそれぞれの方向の勾配の標準偏差である。
親和性の式に現れる標準偏差(Sd )は、ファジーマップの形成に影響し、そのため結節境界の決定に影響する。それが大きすぎる場合、親和性曲線は比較的扁平となる。結果として、背景領域がより高い親和性を有し、拡張する領域は過剰に分割される。反対に、それが小さすぎる場合、親和性曲線の形状は狭くなり、前景はシード点と低い親和性を有することとなり、結果は過小にしか分割されない。理想的には、曲線は、背景のシード点との親和性が最小であるが有限である程度に分散しているとよい。よって、親和性のガウス曲線は、理想的な分散を達成するように標準偏差を変更して制限又は拡張される。
そして、ファジーマップが、シード点に対するそれぞれのピクセルのファジー連続性値を探索することによって作成される。ファジーマップは、そのピクセルがどれだけ強くシード点と関連付けられているかを示す強調された画像であると捉えてよい。
次に、シード点から開始して、コントラストに基づく領域拡張をファジーマップに施す。領域拡張中に各ピクセルが領域に追加されるとき、領域の内部と外部との間で周辺コントラストが算出される。領域の周辺コントラストは、内部境界の平均グレーレベルと現在の境界の平均グレーレベルとの間の差として画定されてよい。
コントラストに基づく領域拡張の繰返しの各回において、現在の境界から1つのピクセルが選択され、現在の領域に追加される。現在の境界で優先的に選択されるピクセルは、強度と現在の領域の中心に対する距離とに基づいて決定される。領域拡張中に各ピクセルが領域に追加されるとき、領域の内部と外部との間で周辺コントラストが算出される。領域の周辺コントラストは、内部境界の平均グレーレベルと現在の境界の平均グレーレベルとの間の差として画定されてよい。それぞれの段階での周辺コントラストは記録され、領域拡張はマスクMを満たすまで継続される。領域拡張中に得られた最も高い周辺コントラスト値は、結節Nのそれに対応するような境界を有する最適の領域を示すとものとして選び出される。
【0035】
次のスライス画像へのマップ(ステップ28)
現在のスライス画像中の結節Nの範囲が決定された後、現在のスライス画像中の結節Nが、前の隣り合うスライス画像で決定された結節Nの範囲に重なり合うかどうかを決定する。これは、種々の方法で行われてよく、例えば、それぞれのスライス画像中の結節Nの中心を囲む所定半径の円形の「核」を決定し、隣り合うスライス画像同士でその核が重なり合うかどうか、即ち2つの核の間に同一のx及びy座標を有する任意のピクセルがあるかどうか、を決定することによってなされてよい。重なり合いがない、つまり現在のスライス画像では全く結節が検出されなかった場合、これは、開始スライス画像から現在の方向での結節Nの境界に達したことを示しているとしてよい。アルゴリズムが開始スライス画像から一方向のみに進んだ場合、それを他方向に進める。結節境界検出が両方向に実行された場合、アルゴリズムは終了し、結節Nが検出されたそれぞれのスライス画像における検出された結節の範囲を出力する。
前のスライス画像との重なり合いがある場合、アルゴリズムは次のスライス画像に進み、図17に示すように、現在のスライス画像の接合点j1 、j2 を次のスライス画像の2つのシード点p1 、p2 として用いる。例えば、新しいスライス画像のシード点は、前のスライス画像の接合点と同一のx及びy座標を有する。
【0036】
結果
図18は、サンプルのスキャン画像に検出された結節Nの範囲を示している。
【0037】
大腸への応用
上述した実施形態は、大腸のCTスキャン画像におけるポリプの検出に適用することもできる。ポリプは常に、CTスキャン画像中で類似の強度を有する大腸壁に付着している。ポリプの形状は、肺結節のそれとは若干異なっているが、大腸壁とポリプとの接合部は類似の幾何学的特徴を有しており、実施形態はその接合部を検出するのに用いることができる。
本発明は、人体及び/又は動物の内部空間の壁に付着している、他の異常腫瘍の検出に適用可能である。
【0038】
他の実施形態
例示とともに上述の実施形態は本発明の範囲を限定するものではない。種々の変形例が請求項の範囲内で想到され得る。上記議論から明らかなように、本方法は単一のCTスライス画像からなる2D画像、又は連続したCTスライス画像からなる3D画像において実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】CTスキャン装置を示し、該スキャン装置からの画像データを処理する遠隔コンピュータを示す略示図である。
【図2】本発明の実施形態におけるアルゴリズムのフローチャートである。
【図3】(a)は肺のCTスキャン画像の単一のスライス画像を示す図、(b)は分割によって得られた肺領域のCTスキャン画像の単一のスライス画像を示す図、(c)は肺領域の境界のCTスキャン画像の単一のスライス画像を示す図である。
【図4】3つの異なる閾値のうちの1つにより肺境界上に検出された特異点を示す図である。
【図5】結節の両側のシード点を示す図である。
【図6】胸膜から境界へシード点を移動する方法を説明する図である。
【図7】肺空間から境界へシード点を移動する方法を説明する図である。
【図8】最も近い特異点へシード点を移動する方法を説明する図である。
【図9】略等距離にある場合最良の特異点を決定する方法を説明する図である。
【図10】肺が複数の境界に分割された例を示す図である。
【図11】境界の間の接合がどこで決定されるかを示す図である。
【図12】接合がどのように決定されるかを示し、2つの境界の間の中線上の距離に対して幅を示すグラフである。
【図13】結節の行き過ぎた縁を補正する方法を示す図である。
【図14】検出された縁が結節を越えている場合、行き過ぎた縁を補正する方法を示す図である。
【図15】検出された結節の範囲を示す図である。
【図16】結節の範囲を検出する別の方法を説明する図である。
【図17】接合点を次のスライス画像のシード点にマップすることを説明する図である。
【図18】一連の連続したスライス画像中で検出された結節の範囲を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CT(コンピュータ支援断層撮影)スキャン画像中の病巣と内部空間に隣り合う壁との間の接合部の識別方法において、
a.前記壁と内部空間との間の境界を決定し、
b.前記境界に沿った1つ以上の特異点を決定し、
c.前記病巣の両側のそれぞれ少なくとも1つの特異点の位置に基づいて、前記病巣の両側にて前記境界上の第1及び第2の接合点を選択し、
その結果、前記接合点により前記病巣と壁との間の前記接合部が識別されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記特異点は、前記境界に沿った少なくとも1つの曲率極大点を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特異点は、少なくとも1つの、直線と曲線との間の遷移点を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記病巣の両側の第1及び第2のシード点の入力を受付け、
第1及び第2の前記接合点は、第1及び第2の前記シード点の位置に基づいて選択されることを特徴とする先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記特異点のうち、第1及び第2の前記シード点それぞれの最近傍にある第1及び第2のものは、それぞれ第1及び第2の前記接合点として選択されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記シード点から前記特異点への寸法は、最近傍の前記接合点を決定すべく、前記境界に沿って測定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記シード点は、前記境界に沿った前記特異点への寸法を決定すべく、前記境界に向けて移動されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シード点のうちの1つが前記内部空間にある場合、該シード点は、前記シード点のうちの他の1つに向かう方向に前記境界に対して移動されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記シード点のうちの1つが前記壁の中にある場合、該シード点は、前記シード点の間の線の回転角度が制限されるように前記境界に対して移動されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記シード点のうちの1つが前記壁の中にある場合、それは、前記境界への距離が所定の閾値未満のとき前記境界に対して移動されることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各シード点に対して、前記境界に沿った両方向にある最近傍の特異点が識別され、両方向にある該最近傍の特異点への前記境界に沿った寸法が所定の基準を満たす場合、前記最近傍の特異点のうち、より近い方が対応する接合点として選択されることを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
第1及び第2の前記接合点の間の線が前記境界と交叉する場合、第1及び/又は第2の前記接合点は、前記線が前記境界と交叉しなくなるまで前記境界に沿って互いに向かって移動されることを特徴とする先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項13】
第1及び第2の前記接合点の間の線が病巣からはみ出す場合、前記線が病巣と交叉するが前記境界とは交叉しなくなるまで前記境界に沿って互いに向かって移動されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
ステップa乃至cはスキャン画像の連続した一連のスライス画像のそれぞれに対して実行され、該スライス画像のうちの1つにおいて決定された第1及び第2の前記接合点は、前記スライス画像のうちの隣り合う1つに対して第1及び第2の前記シード点を生成するために用いられることを特徴とする請求項4乃至11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
ステップa乃至cはスキャン画像の連続した一連のスライス画像のそれぞれに対して実行され、所定の開始スライス画像から開始され、前記病巣の端が検出されるまで、該開始スライス画像からそれぞれの方向に実行されていくことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
現在のスライス画像中の前記シード点の間に前記病巣が検出されない場合、前記病巣の端が検出されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記連続した一連のスライス画像のそれぞれに対して、前記病巣の範囲が検出され、現在のスライス画像に検出された前記病巣の範囲が、隣り合うスライス画像に検出された前記病巣の範囲と重ならない場合、
前記病巣の端が検出されることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記病巣と前記壁との間の前記接合部は、第1及び第2の前記接合点の間に延びる接合線によって画定され、
前記病巣の範囲を該接合線によって制限するように決定することを特徴とする先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項19】
前記病巣の範囲は前記結合線によって制限されており、前記スキャン画像を分割し、領域拡張を実行することにより決定されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1及び第2の前記接合点が前記境界で繋がっていない場合、前記病巣の範囲は、前記接合点がそれぞれ位置する離れた境界区画どうしを繋げる境界接続線によって更に制限されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記境界接続線は、離れた前記境界区画の間の距離の変化を決定することで画定されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記病巣の範囲は、
局所コントラストを基にして閾値を用いて、前記病巣の周りの画像を前景と背景とに分離する精密分離を実行し、
前記接合線によって制限された、前記病巣を示す連続した前景領域を識別し、
マスクを生成するために、前記前景領域を、背景点を加えるように、且つ前記前景領域内に含まれない前景点を除くように拡張し、
前記病巣内のシード点に対して前記マスク内の点の連続性を画定するファジー連続性マップを得、
該ファジー連続性マップから病巣の範囲を決定する
ことによって決定されることを特徴とする請求項18乃至21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
前記病巣の範囲は、前記ファジー連続性マップ内のシード点から連続領域を拡張し、最も高い境界コントラストを有する領域を前記病巣の範囲として出力することによって、前記ファジー連続性マップから決定されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
肺のCTスキャン画像中での、壁に付着する病巣の範囲の識別方法において、
a.前記病巣と前記壁との間の接合部を識別し、
b.局所コントラストに基づく閾値を用いて、前記病巣の周囲の画像を前景と背景とに分離する精密分割を実行し、
c.前記接合部で制限して、前記病巣を示す前景領域を拡張し、
d.マスクを生成するために、背景点を含んで前記前景領域を拡張し、前記前景領域内に含まれない前景点を除き、
e.前記病巣内のシード点に対する前記マスク内の点の連続性を画定するファジー連続性マップを得、
f.前記ファジー連続性マップから前記病巣の範囲を決定する
ことを特徴とする方法。
【請求項25】
ステップfにおいて、
前記ファジー連続性マップ内で前記シード点から連続性領域を拡張し、
前記病巣の範囲として最も高い境界コントラストを有する領域を出力する
ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記病巣は結節であり、前記内部空間は肺であることを特徴とする先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項27】
前記病巣はポリプであり、前記内部空間は大腸であることを特徴とする請求項1乃至25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
先行するいずれかの請求項に記載の方法を実行すべく構成されたコンピュータプログラム。
【請求項29】
請求項28に記載のコンピュータプログラムを記録する記録媒体を備えるコンピュータプログラム装置。
【請求項1】
CT(コンピュータ支援断層撮影)スキャン画像中の病巣と内部空間に隣り合う壁との間の接合部の識別方法において、
a.前記壁と内部空間との間の境界を決定し、
b.前記境界に沿った1つ以上の特異点を決定し、
c.前記病巣の両側のそれぞれ少なくとも1つの特異点の位置に基づいて、前記病巣の両側にて前記境界上の第1及び第2の接合点を選択し、
その結果、前記接合点により前記病巣と壁との間の前記接合部が識別されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記特異点は、前記境界に沿った少なくとも1つの曲率極大点を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記特異点は、少なくとも1つの、直線と曲線との間の遷移点を含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記病巣の両側の第1及び第2のシード点の入力を受付け、
第1及び第2の前記接合点は、第1及び第2の前記シード点の位置に基づいて選択されることを特徴とする先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記特異点のうち、第1及び第2の前記シード点それぞれの最近傍にある第1及び第2のものは、それぞれ第1及び第2の前記接合点として選択されることを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記シード点から前記特異点への寸法は、最近傍の前記接合点を決定すべく、前記境界に沿って測定されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記シード点は、前記境界に沿った前記特異点への寸法を決定すべく、前記境界に向けて移動されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シード点のうちの1つが前記内部空間にある場合、該シード点は、前記シード点のうちの他の1つに向かう方向に前記境界に対して移動されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記シード点のうちの1つが前記壁の中にある場合、該シード点は、前記シード点の間の線の回転角度が制限されるように前記境界に対して移動されることを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記シード点のうちの1つが前記壁の中にある場合、それは、前記境界への距離が所定の閾値未満のとき前記境界に対して移動されることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各シード点に対して、前記境界に沿った両方向にある最近傍の特異点が識別され、両方向にある該最近傍の特異点への前記境界に沿った寸法が所定の基準を満たす場合、前記最近傍の特異点のうち、より近い方が対応する接合点として選択されることを特徴とする請求項5乃至10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
第1及び第2の前記接合点の間の線が前記境界と交叉する場合、第1及び/又は第2の前記接合点は、前記線が前記境界と交叉しなくなるまで前記境界に沿って互いに向かって移動されることを特徴とする先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項13】
第1及び第2の前記接合点の間の線が病巣からはみ出す場合、前記線が病巣と交叉するが前記境界とは交叉しなくなるまで前記境界に沿って互いに向かって移動されることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
ステップa乃至cはスキャン画像の連続した一連のスライス画像のそれぞれに対して実行され、該スライス画像のうちの1つにおいて決定された第1及び第2の前記接合点は、前記スライス画像のうちの隣り合う1つに対して第1及び第2の前記シード点を生成するために用いられることを特徴とする請求項4乃至11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
ステップa乃至cはスキャン画像の連続した一連のスライス画像のそれぞれに対して実行され、所定の開始スライス画像から開始され、前記病巣の端が検出されるまで、該開始スライス画像からそれぞれの方向に実行されていくことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
現在のスライス画像中の前記シード点の間に前記病巣が検出されない場合、前記病巣の端が検出されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記連続した一連のスライス画像のそれぞれに対して、前記病巣の範囲が検出され、現在のスライス画像に検出された前記病巣の範囲が、隣り合うスライス画像に検出された前記病巣の範囲と重ならない場合、
前記病巣の端が検出されることを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記病巣と前記壁との間の前記接合部は、第1及び第2の前記接合点の間に延びる接合線によって画定され、
前記病巣の範囲を該接合線によって制限するように決定することを特徴とする先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項19】
前記病巣の範囲は前記結合線によって制限されており、前記スキャン画像を分割し、領域拡張を実行することにより決定されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
第1及び第2の前記接合点が前記境界で繋がっていない場合、前記病巣の範囲は、前記接合点がそれぞれ位置する離れた境界区画どうしを繋げる境界接続線によって更に制限されることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記境界接続線は、離れた前記境界区画の間の距離の変化を決定することで画定されることを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記病巣の範囲は、
局所コントラストを基にして閾値を用いて、前記病巣の周りの画像を前景と背景とに分離する精密分離を実行し、
前記接合線によって制限された、前記病巣を示す連続した前景領域を識別し、
マスクを生成するために、前記前景領域を、背景点を加えるように、且つ前記前景領域内に含まれない前景点を除くように拡張し、
前記病巣内のシード点に対して前記マスク内の点の連続性を画定するファジー連続性マップを得、
該ファジー連続性マップから病巣の範囲を決定する
ことによって決定されることを特徴とする請求項18乃至21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
前記病巣の範囲は、前記ファジー連続性マップ内のシード点から連続領域を拡張し、最も高い境界コントラストを有する領域を前記病巣の範囲として出力することによって、前記ファジー連続性マップから決定されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
肺のCTスキャン画像中での、壁に付着する病巣の範囲の識別方法において、
a.前記病巣と前記壁との間の接合部を識別し、
b.局所コントラストに基づく閾値を用いて、前記病巣の周囲の画像を前景と背景とに分離する精密分割を実行し、
c.前記接合部で制限して、前記病巣を示す前景領域を拡張し、
d.マスクを生成するために、背景点を含んで前記前景領域を拡張し、前記前景領域内に含まれない前景点を除き、
e.前記病巣内のシード点に対する前記マスク内の点の連続性を画定するファジー連続性マップを得、
f.前記ファジー連続性マップから前記病巣の範囲を決定する
ことを特徴とする方法。
【請求項25】
ステップfにおいて、
前記ファジー連続性マップ内で前記シード点から連続性領域を拡張し、
前記病巣の範囲として最も高い境界コントラストを有する領域を出力する
ことを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記病巣は結節であり、前記内部空間は肺であることを特徴とする先行するいずれかの請求項に記載の方法。
【請求項27】
前記病巣はポリプであり、前記内部空間は大腸であることを特徴とする請求項1乃至25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
先行するいずれかの請求項に記載の方法を実行すべく構成されたコンピュータプログラム。
【請求項29】
請求項28に記載のコンピュータプログラムを記録する記録媒体を備えるコンピュータプログラム装置。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図13c】
【図13d】
【図14a】
【図14b】
【図14c】
【図14d】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13a】
【図13b】
【図13c】
【図13d】
【図14a】
【図14b】
【図14c】
【図14d】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2008−503294(P2008−503294A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517400(P2007−517400)
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001841
【国際公開番号】WO2006/000738
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(505161792)メディックサイト ピーエルシー (4)
【氏名又は名称原語表記】Medicsight plc
【住所又は居所原語表記】46 Berkeley Square,Mayfair,London W1J 5AT,United Kingdom
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月13日(2005.5.13)
【国際出願番号】PCT/GB2005/001841
【国際公開番号】WO2006/000738
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(505161792)メディックサイト ピーエルシー (4)
【氏名又は名称原語表記】Medicsight plc
【住所又は居所原語表記】46 Berkeley Square,Mayfair,London W1J 5AT,United Kingdom
【Fターム(参考)】
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