負極活物質および電池
【課題】高容量で、優れたサイクル特性を得ることができる負極活物質およびそれを用いた電池を提供する。
【解決手段】負極22は、リチウムと反応可能な負極活物質を含んでいる。この負極活物質は、構成元素として、スズと鉄と炭素とを少なくとも含み、炭素の含有量が11.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズと鉄との合計に対する鉄の割合が26.4質量%以上48.5質量%以下である。これにより、高い容量を保ちつつ、サイクル特性が改善される。
【解決手段】負極22は、リチウムと反応可能な負極活物質を含んでいる。この負極活物質は、構成元素として、スズと鉄と炭素とを少なくとも含み、炭素の含有量が11.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズと鉄との合計に対する鉄の割合が26.4質量%以上48.5質量%以下である。これにより、高い容量を保ちつつ、サイクル特性が改善される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成元素としてスズ(Sn)と鉄(Fe)と炭素(C)とを含む負極活物質およびそれを用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ),携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。これらの電子機器のポータブル電源として用いられている電池、特に二次電池はキーデバイスとして、エネルギー密度の向上を図る研究開発が活発に進められている。中でも、非水電解質二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)は、従来の水系電解液二次電池である鉛電池あるいはニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるため、その改良に関する検討が各方面で行われている。
【0003】
リチウムイオン二次電池に使用される負極活物質としては、比較的高容量を示し良好なサイクル特性を有する難黒鉛化性炭素あるいは黒鉛などの炭素材料が広く用いられている。ただし、近年の高容量化の要求を考えると、炭素材料の更なる高容量化が課題となっている。
【0004】
このような背景から、炭素化原料と作成条件とを選ぶことにより炭素材料で高容量を達成する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような炭素材料を用いた場合には、負極放電電位が対リチウム(Li)で0.8V〜1.0Vであるので、電池を構成したときの電池放電電圧が低くなることから、電池エネルギー密度の点では大きな向上が見込めない。さらには、充放電曲線形状にヒステリシスが大きく、各充放電サイクルでのエネルギー効率が低いという欠点もある。
【0005】
一方で、炭素材料を上回る高容量負極として、ある種の金属がリチウムと電気化学的に合金化し、これが可逆的に生成・分解することを応用した合金材料に関する研究も進められている。例えば、Li−Al合金あるいはSn合金を用いた高容量負極が開発され、さらには、Si合金からなる高容量負極が開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、Li−Al合金,Sn合金あるいはSi合金は、充放電に伴って膨張収縮し、充放電を繰り返すたびに負極が微粉化するので、サイクル特性が極めて悪いという大きな問題がある。
【0007】
そこで、サイクル特性を改善する手法として、スズやケイ素(Si)を合金化することによりこれらの膨張を抑制することが検討されており、例えば鉄などの遷移金属とスズとを合金化することが提案されている(例えば、特許文献3〜5,非特許文献1〜3参照)。また、Mg2 Siなども提案されている(例えば、非特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平8−315825号公報
【特許文献2】米国特許第4950566号明細書等
【特許文献3】特開2004−22306号公報
【特許文献4】特開2004−63400号公報
【特許文献5】特開2005−78999号公報
【非特許文献1】「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p405
【非特許文献2】「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p414
【非特許文献3】「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p423
【非特許文献4】「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p4401
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの手法を用いた場合においても、サイクル特性改善の効果は十分とは言えず、合金材料における高容量負極の特長を十分に活かしきれていないのが実状である。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、高容量で、優れたサイクル特性を得ることができる負極活物質およびそれを用いた電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の負極活物質は、構成元素として、スズと、鉄と、炭素とを少なくとも含み、炭素の含有量が11.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズと鉄との合計に対する鉄の割合が26.4質量%以上48.5質量%以下のものである。
【0011】
本発明の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、負極は、構成元素として、スズと、鉄と、炭素とを少なくとも含む負極活物質を含有し、負極活物質における炭素の含有量は11.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズと鉄との合計に対する鉄の割合が26.4質量%以上48.5質量%以下のものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の負極活物質によれば、構成元素として、スズを含むようにしたので、高容量を得ることができる。また、構成元素として鉄を含み、スズと鉄との合計に対する鉄の割合を26.4質量%以上48.5質量%以下とするようにしたので、高容量を保ちつつ、サイクル特性を向上させることができる。更に、構成元素として炭素を含み、その含有量を11.9質量%以上29.7質量%以下とするようにしたので、サイクル特性をより向上させることができる。よって、この負極活物質を用いた本発明の電池によれば、高容量を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができる。
【0013】
また、負極活物質に、構成元素として銀(Ag)を含むようにすれば、電解質との反応性を低減することができ、サイクル特性をより向上させることができる。特に、負極活物質における銀の含有量を0.1質量%以上9.9質量%以下とするようにすれば、より高い容量を得ることもできる。
【0014】
更に、負極活物質に、構成元素としてケイ素を含むようにすれば、更に高い容量を得ることができる。
【0015】
更にまた、負極活物質に、構成元素として、アルミニウム(Al),チタン(Ti),バナジウム(V),クロム(Cr), ニオブ(Nb)およびタンタル(Ta)からなる群のうちの少なくとも1種と、コバルト(Co),ニッケル(Ni),銅(Cu),亜鉛(Zn),ガリウム(Ga)およびインジウム(In)からなる群のうちの少なくとも1種とを含むようにすれば、よりサイクル特性を向上させることができ、特に、これらの含有量をそれぞれ0.1質量%以上9.9質量%以下、0.5質量%以上14.9質量%以下とするようにすれば、より高い容量を得ることもできる。
【0016】
加えて、電解質にハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、負極における溶媒の分解反応を抑制することができ、サイクル特性を更に向上させることができる。また、環式炭酸エステル誘導体に加えて、環式硫黄化合物を含むようにすれば、溶媒の分解反応をより抑制することができ、更に高い効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
本発明の一実施の形態に係る負極活物質は、リチウムなどと反応可能なものであり、構成元素として、スズと鉄とを含んでいる。スズは単位質量あたりのリチウムの反応量が高く、高い容量を得ることができるからである。また、スズ単体では十分なサイクル特性を得ることは難しいが、鉄を含むことによりサイクル特性を向上させることができるからである。
【0019】
鉄の含有量は、スズと鉄との合計に対する鉄の割合で、26.4質量%以上48.5質量%以下であり、29.3質量%以上45.5質量%以下の範囲内であればより好ましい。割合が低いと鉄の含有量が低下し十分なサイクル特性が得られず、また、割合が高いとスズの含有量が低下し、従来の負極材料、例えば炭素材料の容量に対して優位性が得られないからである。
【0020】
この負極活物質は、また、構成元素として、スズおよび鉄に加えて炭素を含んでいる。炭素を含むことによりサイクル特性をより向上させることができるからである。炭素の含有量は、11.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内であり、13.9質量%以上27.7質量%以下の範囲内であれば好ましく、特に15.8質量%以上23.8質量%以下の範囲内であればより好ましい。この範囲内において高い効果を得ることができるからである。
【0021】
この負極活物質は、更に、構成元素として、これらに加えて銀を含んだ方が好ましい場合もある。電解質との反応性を低減することができ、サイクル特性を向上させることができるからである。銀の含有量は、0.1質量%以上9.9質量%以下の範囲内であることが好ましく、1.0質量%以上7.4質量%以下の範囲内であることがより好ましく、特に、2.0質量%以上5.0質量%以下の範囲内であれば望ましい。少ないとサイクル特性を向上させる効果が十分でなく、多いとスズの含有量が低下して十分な容量が得られないからである。
【0022】
この負極活物質は、更にまた、構成元素として、これらに加えてケイ素を含んだ方が好ましい場合もある。ケイ素は単位質量あたりのリチウムの反応量が高く、容量をより向上させることができるからである。ケイ素の含有量は、0.5質量%以上7.9質量%以下の範囲内であることが好ましい。少ないと容量を高くする効果が十分でなく、多いとサイクル特性を低下させてしまうからである。ケイ素は、銀と共に含まれていてもよい。
【0023】
この負極活物質は、また、構成元素として、アルミニウム,チタン,バナジウム,クロム,ニオブおよびタンタルからなる群のうちの少なくとも1種と、コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウムおよびインジウムからなる群のうちの少なくとも1種とを含んだ方が好ましい場合もある。これらを含むことによりサイクル特性をより向上させることができるからである。アルミニウム,チタン,バナジウム,クロム, ニオブおよびタンタルの含有量は、0.1質量%以上9.9質量%以下であることが好ましく、またコバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウムおよびインジウムの含有量は、0.5質量%以上14.9質量%以下であることが好ましい。少ないと十分な効果が得られず、多いとスズの含有量が低下して十分な容量が得られないからである。これらの元素は、銀あるいはケイ素と共に含まれていてもよい。
【0024】
また、この負極活物質は、結晶性の低いまたは非晶質な相を有している。この相は、リチウムなどと反応可能な反応相であり、これにより優れたサイクル特性を得ることができるようになっている。この相のX線回折により得られる回折ピークの半値幅は、特定X線としてCuKα線を用い、掃引速度を1°/minとした場合に、回折角2θで0.5°以上であることが好ましい。リチウムなどをより円滑に吸蔵および放出させることができると共に、電解質との反応性をより低減させることができるからである。
【0025】
なお、X線回折により得られた回折ピークがリチウムなどと反応可能な反応相に対応するものであるか否かは、リチウムなどとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較することにより容易に判断することができる。例えば、リチウムなどとの電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、リチウムなどと反応可能な反応相に対応するものである。この負極活物質では、結晶性の低いまたは非晶質な反応相の回折ピークが例えば2θ=20°〜50°の間に見られる。この結晶性の低いまたは非晶質な反応相は、例えば上述した各構成元素を含んでおり、主に炭素により低結晶化または非晶質化しているものと考えられる。
【0026】
なお、この負極活物質は、この結晶性の低いまたは非晶質な相に加えて、各構成元素の単体または一部を含む相を有している場合もある。
【0027】
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSは、軟X線(市販の装置ではAl−Kα線、またはMg−Kα線を用いる)を試料表面に照射し、試料表面から飛び出してくる光電子の運動エネルギーを測定することによって、試料表面から数nmの領域の元素組成、および元素の結合状態を調べる方法である。
【0028】
元素の内殻軌道電子の束縛エネルギーは、第1近似的には、元素上の電荷密度と相関して変化する。例えば、炭素元素の電荷密度が近傍に存在する元素との相互作用により減少した場合には、2p電子などの外殻電子が減少しているので、炭素元素の1s電子は殻から強い束縛力を受けることになる。すなわち、元素の電荷密度が減少すると、束縛エネルギーは高くなる。XPSでは、束縛エネルギーが高くなると、高いエネルギー領域にピークはシフトするようになっている。
【0029】
XPSでは、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、負極活物質について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
【0030】
なお、負極活物質のXPS測定に際しては、表面が表面汚染炭素で覆われている場合、XPS装置に付属のアルゴンイオン銃で表面を軽くスパッタすることが好ましい。また、測定対象の負極活物質が後述のように電池の負極中に存在する場合には、電池を解体して負極を取り出した後、炭酸ジメチルなどの揮発性溶媒で洗浄するとよい。負極の表面に存在する揮発性の低い溶媒と電解質塩とを除去するためである。これらのサンプリングは、不活性雰囲気下で行うことが望ましい。
【0031】
また、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、物質表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。なお、XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークと負極活物質中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、負極活物質中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0032】
この負極活物質は、例えば各構成元素の原料を混合して電気炉,高周波誘導炉あるいはアーク溶解炉などにより溶解しその後凝固することにより、また、ガスアトマイズあるいは水アトマイズなどの各種アトマイズ法、各種ロール法、またはメカニカルアロイング法あるいはメカニカルミリング法などのメカノケミカル反応を利用した方法により製造することができる。中でも、メカノケミカル反応を利用した方法により製造することが好ましい。負極活物質を低結晶化あるいは非晶質な構造とすることができるからである。この方法には、例えば、遊星ボールミル装置を用いることができる。
【0033】
原料には、各構成元素の単体を混合して用いてもよいが、炭素以外の構成元素の一部については合金を用いることが好ましい。このような合金に炭素を加えてメカノケミカル反応を利用した方法により合成することにより、低結晶化あるいは非晶質な構造を有するようにすることができ、反応時間の短縮も図ることができるからである。なお、原料の形態は粉体であってもよいし、塊状であってもよい。
【0034】
原料として用いる炭素には、難黒鉛化炭素,易黒鉛化炭素,グラファイト,熱分解炭素類,コークス,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,活性炭およびカーボンブラックなどの炭素材料のいずれか1種または2種以上を用いることができる。このうち、コークス類には、ピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子化合物を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。これらの炭素材料の形状は、繊維状,球状,粒状あるいは鱗片状のいずれでもよい。
【0035】
この負極活物質は、例えば次のようにして二次電池に用いられる。
【0036】
(第1の二次電池)
図1は第1の二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池はいわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して積層し巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケルのめっきがされた鉄により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、液状の電解質である電解液が注入され、セパレータ23に含浸されている。また、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0037】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0038】
巻回電極体20の中心には、例えば、センターピン24が挿入されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウムなどよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0039】
図2は図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面あるいは片面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。
【0040】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質としては、例えば、リチウム酸化物、リチウム硫化物、リチウムを含む層間化合物あるいはリン酸化合物などのリチウム含有化合物が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物、またはリチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物が好ましく、特に遷移金属元素として、コバルト,ニッケル,マンガン,鉄,アルミニウム,バナジウム,およびチタンのうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。その化学式は、例えば、Lix MIO2 あるいはLiy MIIPO4 で表される。式中、MIおよびMIIは1種類以上の遷移金属元素を含む。xおよびyの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
【0041】
リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物の具体例としては、リチウムコバルト複合酸化物(Lix CoO2 )、リチウムニッケル複合酸化物(Lix NiO2 )、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(Lix Ni1-z Coz O2 (z<1))、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(Lix Ni(1-v-w) Cov Mnw O2 (v+w<1))、あるいはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 O4 )などが挙げられる。リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物の具体例としては、例えばリチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4 )あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-u Mnu PO4 (u<1))が挙げられる。
【0042】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質としては、また、リチウムを含有しない化合物が挙げられ、例えば、TiS2 あるいはMoS2 などの金属硫化物、V2 O5 などの酸化物、NbSe2 が挙げられる。更に、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質としては、高分子材料も挙げられ、例えば、ポリアニリンあるいはポリチオフェンが挙げられる。
【0043】
負極22は、例えば、正極21と同様に、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面あるいは片面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極集電体22Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
【0044】
負極活物質層22Bは、例えば、本実施の形態に係る負極活物質を含み、必要に応じてポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んで構成されている。このように本実施の形態に係る負極活物質を含むことにより、この二次電池では、高容量が得られると共に、サイクル特性を向上させることができるようになっている。負極活物質層22Bは、また、本実施の形態に係る負極活物質に加えて他の負極活物質、または導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。他の負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な炭素材料が挙げられる。この炭素材料は、充放電サイクル特性を向上させることができると共に、導電剤としても機能するので好ましい。炭素材料としては、例えば、負極活物質を製造する際に用いたものと同様のものが挙げられる。
【0045】
この炭素材料の割合は、本実施の形態の負極活物質に対して、1質量%以上95質量%以下の範囲内であることが好ましい。炭素材料が少ないと負極22の導電性が低下し、多いと電池容量が低下してしまうからである。
【0046】
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0047】
セパレータ23に含浸された電解液は、例えば、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。溶媒としては、例えば、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、酪酸エステルあるいはプロピオン酸エステルが挙げられる。溶媒は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
溶媒は、また、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含んでいればより好ましい。負極22における溶媒の分解反応を抑制することができ、サイクル特性を向上させることができるからである。このような環式炭酸エステル誘導体について具体的に例を挙げれば、化1(1)に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化1(2)に示した4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化1(3)に示した4,5−ジフルオロ−1, 3−ジオキソラン−2−オン、化1(4)に示した4−ジフルオロ−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化1(5)に示した4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化1(6)に示した4,5−ジクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化1(7)に示した4−ブロモ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化1(8)に示した4−ヨード−1,3−ジオキソラン−2−オン、化1(9)に示した4−フルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、あるいは化1(10)に示した4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどがあり、中でも、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが望ましい。より高い効果を得ることができるからである。環式炭酸エステル誘導体は、いずれか1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0049】
【化1】
【0050】
溶媒は、この環式炭酸エステル誘導体のみにより構成するようにしてもよいが、大気圧(1.01325×105 Pa)において沸点が150℃以下である低沸点溶媒と混合して用いることが好ましい。イオン伝導性を高くすることができるからである。この炭酸エステル誘導体の含有量は、溶媒全体に対して0.1質量%以上80質量%以下の範囲内であることが好ましい。少ないと負極22における溶媒の分解反応を抑制する効果が十分ではなく、多いと粘度が高くなりイオン伝導性が低くなるからである。
【0051】
溶媒として環式炭酸エステル誘導体を含む場合には、更に、環式硫黄化合物を含んでいることが好ましい。溶媒の分解反応をより抑制することができ、サイクル特性をより向上させることができるからである。環式硫黄化合物としては、化2に示した化合物が好ましく挙げられる。更に高い効果が得られるからである。
【0052】
【化2】
(Rは、−(CH2 )n −で表される基、またはそれら少なくとも一部の水素を置換基で置換した基を表す。nは2,3または4である。)
【0053】
このような化合物について具体的に例を挙げれば、化3に示した1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシド(エチレンスルフィト)、1,3,2−ジオキサチアン−2−オキシド、1,2−オキサチオラン−2,2−ジオキシド、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−オキシド、あるいはそれらの誘導体などがある。
【0054】
【化3】
【0055】
環式硫黄化合物の含有量は、溶媒全体に対して0.1質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましい。少ないと溶媒の分解反応を抑制する効果が十分ではなく、多いと、内部抵抗が上昇してしまうからである。
【0056】
電解質塩としては例えばリチウム塩が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、例えば、LiClO4 ,LiAsF6 ,LiPF6 ,LiBF4 ,LiB(C6 H5 )4 ,CH3 SO3 Li,CF3 SO3 Li,LiClあるいはLiBrが挙げられる。なお、電解質塩としては、リチウム塩を用いることが好ましいが、リチウム塩でなくてもよい。充放電に寄与するリチウムイオンは、正極21などから供給されれば足りるからである。
【0057】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0058】
まず、例えば、正極活物質と必要に応じて導電剤および結着剤とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて正極合剤スラリーを作製する。次いで、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し乾燥させ圧縮して正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製する。続いて、正極21に正極リード25を溶接する。
【0059】
また、例えば、本実施の形態に係る負極活物質と必要に応じて他の負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーを作製する。次いで、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し乾燥させ圧縮して負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。続いて、負極22に負極リード26を溶接する。
【0060】
そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。次いで、電解液を電池缶11の内部に注入する。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が完成する。
【0061】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極22に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極21に吸蔵される。ここでは、負極22が、スズ,鉄および炭素を上述した割合で含む負極活物質を含有しているので、高い容量を保ちつつ、サイクル特性が改善される。
【0062】
このように本実施の形態に係る負極活物質によれば、構成元素として、スズを含むようにしたので、高容量を得ることができる。また、構成元素として鉄を含み、スズと鉄との合計に対する鉄の割合を26.4質量%以上48.5質量%以下とするようにしたので、高容量を保ちつつ、サイクル特性を向上させることができる。更に、構成元素として炭素を含み、その含有量を11.9質量%以上29.7質量%以下とするようにしたので、サイクル特性をより向上させることができる。よって、本実施の形態に係る二次電池によればこの負極活物質を用いるようにしたので、高容量を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができる。
【0063】
また、負極活物質に、構成元素として銀を含むようにすれば、電解質との反応性を低減することができ、サイクル特性をより向上させることができる。特に、負極活物質における銀の含有量を0.1質量%以上9.9質量%以下とするようにすれば、より高い容量を得ることもできる。
【0064】
更に、負極活物質に、構成元素としてケイ素を含むようにすれば、更に高い容量を得ることができる。
【0065】
更にまた、負極活物質に、構成元素として、アルミニウム,チタン,バナジウム,クロム,ニオブおよびタンタルからなる群のうちの少なくとも1種と、コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウムおよびインジウムからなる群のうちの少なくとも1種とを含むようにすれば、よりサイクル特性を向上させることができ、特に、これらの含有量をそれぞれ0.1質量%以上9.9質量%以下、0.5質量%以上14.9質量%以下とするようにすれば、より高い容量を得ることもできる。
【0066】
加えて、電解液にハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、負極22における溶媒の分解反応を抑制することができ、サイクル特性を更に向上させることができる。また、環式炭酸エステル誘導体に加えて、環式硫黄化合物を含むようにすれば、溶媒の分解反応をより抑制することができ、更に高い効果を得ることができる。
【0067】
(第2の二次電池)
図3は、第2の二次電池の構成を表すものである。この二次電池は、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものであり、小型化,軽量化および薄型化が可能となっている。
【0068】
正極リード31,負極リード32は、それぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム,銅,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
【0069】
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
【0070】
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0071】
図4は、図3に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面構造を表すものである。巻回電極体30は、正極33と負極34とをセパレータ35および電解質層36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ37により保護されている。
【0072】
正極33は、正極集電体33Aの片面あるいは両面に正極活物質層33Bが設けられた構造を有している。負極34は、負極集電体34Aの片面あるいは両面に負極活物質層34Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層34Bの側が正極活物質層33Bと対向するように配置されている。正極集電体33A,正極活物質層33B,負極集電体34A,負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ上述した正極集電体21A,正極活物質層21B,負極集電体22A,負極活物質層22Bおよびセパレータ23と同様である。
【0073】
電解質層36は、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質層36は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。電解液(すなわち溶媒および電解質塩)の構成は、図1に示した円筒型の二次電池と同様である。高分子化合物は、例えばポリフッ化ビニリデンあるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、またはポリアクリロニトリルなどが挙げられる。特に、酸化還元安定性の観点からは、フッ素系高分子化合物が望ましい。
【0074】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0075】
まず、正極33および負極34のそれぞれに、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させて電解質層36を形成する。そののち、正極集電体33Aの端部に正極リード31を溶接により取り付けると共に、負極集電体34Aの端部に負極リード32を溶接により取り付ける。次いで、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して巻回電極体30を形成する。最後に、例えば、外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図3,4に示した二次電池が完成する。
【0076】
また、この二次電池は、次のようにして作製してもよい。まず、上述したようにして正極33および負極34を作製し、正極33および負極34に正極リード31および負極リード32を取り付けたのち、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ37を接着して、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成する。次いで、この巻回体を外装部材40で挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。続いて、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、必要に応じて重合開始剤と、重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物とを用意し、外装部材40の内部に注入する。
【0077】
電解質用組成物を注入したのち、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次いで、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層36を形成し、図3,4に示した二次電池を組み立てる。
【0078】
この二次電池は、第1の二次電池と同様に作用し、同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0079】
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0080】
(実施例1−1〜1−10)
まず、負極活物質を作製した。原料としてスズ粉末と鉄粉末と炭素粉末とを用意し、スズ粉末と鉄粉末とを合金化してスズ・鉄合金粉末を作製したのち、この合金粉末に炭素粉末を加えて乾式混合した。その際、原料の割合は、表1に示したように、スズと鉄との合計に対する鉄の割合(以下、Fe/(Sn+Fe) 比という)を32質量%で一定とすると共に、炭素の原料比を12質量%以上30質量%以下の範囲内で変化させた。続いて、この混合物20gを直径9mmの鋼玉約400gと共に、伊藤製作所製の遊星ボールミルの反応容器中にセットした。次いで、反応容器中をアルゴン雰囲気に置換し、毎分250回転の回転速度による10分間の運転と、10分間の休止とを運転時間の合計が30時間になるまで繰り返した。そののち、反応容器を室温まで冷却して合成された負極活物質粉末を取り出し、280メッシュのふるいを通して粗粉を取り除いた。
【0081】
【表1】
【0082】
得られた負極活物質について組成の分析を行った。炭素の含有量は、炭素・硫黄分析装置により測定し、スズおよび鉄の含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分析により測定した。これらの分析値を表1に示す。また、XPSを行ったところ、ピークP1が得られ、このピークP1を解析すると、表面汚染炭素のピークP2と、ピークP2よりも低エネルギー側に負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られた。実施例1−1〜1−10のいずれについてもピークP3は、284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質中の炭素が他の元素と結合していることが確認された。
【0083】
次に、実施例1−1〜1−10の負極活物質粉末を用いて、図5に示したようなコイン型の二次電池を作製し、初回充電容量およびサイクル特性を調べた。このコイン型電池は、本実施例の負極活物質を用いた試験極51を外装部材52に収容すると共に、対極53を外装部材54に貼り付け、電解液を含浸させたセパレータ55を介して積層したのち、ガスケット56を介してかしめたものである。
【0084】
試験極51は、得られた負極活物質粉末と、導電剤および他の負極活物質である黒鉛と、導電剤としてアセチレンブラックと、結着剤としてポリフッ化ビニリデンとを混合し、適当な溶剤に分散させてスラリーとしたのち、これを銅箔集電体上に塗布、乾燥して直径15.2mmのペレットに打ち抜くことにより作製した。
【0085】
対極53には、直径15.5mmに打ち抜いた金属リチウム板を用いた。電解液には炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、炭酸ジメチルとの混合溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を溶解させたものを用いた。
【0086】
初回充電容量は、1mAの定電流で電池電圧が0.2mVに達するまで定電流充電を行ったのち、0.2mVの定電圧で電流が10μAに達するまで定電圧充電を行い、試験極51の質量から銅箔集電体および結着剤の質量を除いた単位質量あたりの充電容量を求めた。なお、ここでいう充電は負極活物質へのリチウム挿入反応を意味する。結果を表1および図6に示す。
【0087】
また、サイクル特性は次にようして測定した。まず、1mAの定電流で電池電圧が0.2mVに達するまで定電流充電を行ったのち、0.2mVの定電圧で電流が10μAに達するまで定電圧充電を行い、引き続き、1mAの定電流で電池電圧が1200mVに達するまで定電流放電を行うことにより、1サイクル目の充放電を行った。
【0088】
2サイクル目以降は、2mAの定電流で電池電圧が0.2mVに達するまで定電流充電を行ったのち、0.2mVの定電圧で電流が10μAに達するまで定電圧充電を行い、引き続き、2mAの定電流で電池電圧が1200mVに達するまで定電流放電を行った。サイクル特性は、2サイクル目の放電容量に対する50サイクル目の容量維持率(50サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100(%)を求めた。結果を表1および図6に示す。
【0089】
実施例1−1〜1−10に対する比較例1−1として、原料として炭素粉末を用いなかったことを除き、他は実施例1−1〜1−10と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。また、比較例1−2〜1−5として、炭素粉末の原料比を表1に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−10と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。比較例1−1〜1−5の負極活物質についても、実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表1に示す。また、XPSを行ったところ、比較例1−2〜1−5では、ピークP1が得られた。ピークP1を解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。一方、比較例1−1ではピークP4が得られ、これを解析したところ、表面汚染炭素のピークP2のみが得られた。
【0090】
また、二次電池についても、実施例1−1〜1−10と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。これらの結果についても表1および図6に示す。
【0091】
表1および図6から分かるように、負極活物質における炭素の含有量が11.9質量%以上29.7質量以下である実施例1−1〜1−10によれば、炭素の含有量がこの範囲外である比較例1−1〜1−5よりも容量維持率を飛躍的に向上させることができた。また、初回充電容量も向上させることができた。
【0092】
更に、負極活物質における炭素の含有量が13.9質量%以上27.7質量%以下の範囲内、更には15.8質量%以上23.8質量%以下の範囲内においてより高い値が得られた。
【0093】
すなわち、炭素の含有量を11.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内とすれば、容量およびサイクル特性を向上させることができ、13.9質量%以上27.7質量%以下の範囲内、更には15.8質量%以上23.8質量%以下の範囲内とすればより好ましいことが分かった。
【0094】
(実施例2−1〜2−8)
スズと鉄と炭素との原料比を表2に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−10と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。具体的には、炭素の原料比を30.0質量%で一定とし、Fe/(Sn+Fe) 比を26質量%以上48質量%以下の範囲内で変化させた。
【0095】
【表2】
【0096】
また、実施例2−1〜2−8に対する比較例2−1〜2−5として、Fe/(Sn+Fe) 比を表2に示したように変化させたことを除き、他は実施例2−1〜2−10と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。比較例2−1〜2−5における原料のFe/(Sn+Fe) 比は、それぞれ19質量%,21質量%,25質量%,49質量%、または50質量%とした。
【0097】
得られた実施例2−1〜2−8および比較例2−1〜2−5の負極活物質についても、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、実施例1−1〜1−10と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表2および図7に示す。
【0098】
表2および図7から分かるように、合成した負極活物質のFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とした実施例1−10,2−1〜2−8によれば、これらの範囲外とした比較例2−1〜2−5よりも、容量維持率および初回充電容量を共に向上させることができた。特に、Fe/(Sn+Fe) 比を29.4質量%以上45.4質量%以下とした実施例1−10,2−2〜2−7において、より高い値が得られた。
【0099】
すなわち、負極活物質におけるFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とするようにすれば、容量およびサイクル特性を向上させることができ、29.4質量%以上45.4質量%以下とするようにすれば、より好ましいことが分かった。
【0100】
(実施例3−1〜3−8)
スズと鉄と炭素との原料比を表3に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−10と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。具体的には、炭素の原料比を20.0質量%で一定とし、Fe/(Sn+Fe) 比を26質量%以上48質量%以下の範囲内で変化させた。
【0101】
【表3】
【0102】
また、実施例3−1〜3−8に対する比較例3−1〜3−5として、Fe/(Sn+Fe) 比を表3に示したように変化させたことを除き、他は実施例3−1〜3−8と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。比較例3−1〜3−5における原料のFe/(Sn+Fe) 比は、それぞれ19質量%,21質量%,25質量%,49質量%,50質量%とした。
【0103】
実施例3−1〜3−8および比較例3−1〜3−5の負極活物質についても、実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表3に示す。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、実施例1−1〜1−10と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表3および図8に示す。
【0104】
表3および図8から分かるように、合成した負極活物質のFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とした実施例1−5,3−1〜3−8によれば、これらの範囲外とした比較例3−1〜3−5よりも、容量維持率および初回充電容量を共に向上させることができた。特に、Fe/(Sn+Fe) 比を29.4質量%以上45.4質量%以下とした実施例1−5,3−2〜3−7において、より高い値が得られた。
【0105】
すなわち、負極活物質におけるFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とするようにすれば、炭素の含有量が19.8質量%の場合にも、容量およびサイクル特性を向上させることができ、29.4質量%以上45.4質量%以下とするようにすれば、より好ましいことが分かった。
【0106】
(実施例4−1〜4−8)
スズと鉄と炭素との原料比を表4に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−10と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。具体的には、炭素の原料比を12.0質量%で一定とし、Fe/(Sn+Fe) 比を26質量%以上48質量%以下の範囲内で変化させた。
【0107】
【表4】
【0108】
また、実施例4−1〜4−8に対する比較例4−1〜4−5として、Fe/(Sn+Fe) 比を表4に示したように変化させたことを除き、他は実施例4−1〜4−8と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。比較例4−1〜4−5における原料のFe/(Sn+Fe) 比は、それぞれ19質量%,21質量%,25質量%,59質量%,または50質量%とした。
【0109】
得られた実施例4−1〜4−8および比較例4−1〜4−5の負極活物質についても、実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。結果を表4に示す。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表4および図9に示す。
【0110】
表4および図9から分かるように、合成した負極活物質のFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とした実施例1−1,4−1〜4−8によれば、これらの範囲外とした比較例4−1〜4−5よりも、容量維持率および初回充電容量を共に向上させることができた。特に、Fe/(Sn+Fe) 比を29.3質量%以上45.4質量%以下とした実施例1−1,4−2〜4−7において、より高い値が得られた。
【0111】
すなわち、負極活物質におけるFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とするようにすれば、炭素の含有量が11.9質量%の場合にも、容量およびサイクル特性を向上させることができ、29.3質量%以上45.4質量%以下とするようにすれば、より好ましいことが分かった。
【0112】
(実施例5−1〜5−14)
原料として、更にケイ素粉末を用い、スズと鉄と炭素とケイ素との原料比を表5に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−5と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。具体的には、ケイ素粉末の原料比を0.2質量%以上10.0質量%以下の範囲内で変化させ、Fe/(Sn+Fe) 比を32.0質量%とした。実施例5−1〜5−14の負極活物質についても実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表5に示す。なお、ケイ素の含有量はICP発光分析により測定した。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表5に示す。
【0113】
【表5】
【0114】
表5から分かるように、ケイ素を含む実施例5−1〜5−14によれば、ケイ素を含まない実施例1−5よりも初回充電容量を向上させることができた。但し、ケイ素の含有量が多くなるに従い、容量維持率は低下する傾向が見られた。
【0115】
すなわち、負極活物質にケイ素を含有するようにすれば、容量を向上させることができ、その含有量は0.5質量%以上7.9質量%以下の範囲内が好ましいことが分かった。
【0116】
(実施例6−1〜6−18)
実施例6−1〜6−16では、原料に第1成分としてアルミニウム粉末,チタン粉末,バナジウム粉末,クロム粉末,ニオブ粉末およびタンタル粉末からなる群のうちの少なくとも1種と、第2成分としてコバルト粉末,ニッケル粉末,銅粉末,亜鉛粉末,ガリウム粉末およびインジウム粉末のうちの少なくとも1種とを用い、スズと鉄と炭素と第1成分と第2成分との原料比を表6に示したようにしたことを除き、他は実施例1−5と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。また、実施例6−17では、原料に第1成分としてチタン粉末を用意し、スズと鉄と炭素とチタンとの原料比を表6に示したようにしたことを除き、他は実施例1−5と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。更に、実施例6−18では、原料に第2成分として亜鉛粉末を用意し、スズと鉄と炭素と亜鉛との原料比を表6に示したようにしたことを除き、他は実施例1−5と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。これらの負極活物質についても実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表6に示す。なお、アルミニウム,チタン,バナジウム,クロム,ニオブ,タンタル,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウムおよびインジウムの含有量は、ICP発光分析により測定した。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表6に示す。
【0117】
【表6】
【0118】
表6から分かるように、第1成分と第2成分とを含む実施例6−1〜6−16によれば、これらを含まない実施例1−5、または第1成分のみあるいは第2成分のみを含む実施例6−17,6−18よりも、容量維持率が向上した。
【0119】
また、第1成分の含有量が0.1質量%以上9.9質量%以下、第2成分の含有量が0.5質量%以上14.9質量%以下である実施例6−1〜6−14によれば、初回充電容量についても高い値が得られた。
【0120】
すなわち、負極活物質にアルミニウム,チタン,バナジウム,クロム,ニオブおよびタンタルからなる群のうちの少なくとも1種と、コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウムおよびインジウムからなる群のうちの少なくとも1種とを含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができ、これらの含有量をそれぞれ0.1質量%以上9.9質量%以下、0.5質量%以上14.9質量%以下とするようにすれば、高い容量を得ることができることが分かった。
【0121】
(実施例7−1〜7−19)
溶媒として、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステルである4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸エチレン(EC)と、炭酸プロピレン(PC)と、炭酸ジメチル(DMC)とのうちの2種以上を用い、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量を0質量%以上80.0質量%以下の範囲内で変化させたことを除き、他は実施例1−5と同様にして二次電池を作製した。各溶媒の具体的な組成については、表7に示したようにした。
【0122】
【表7】
【0123】
実施例7−1〜7−19の二次電池について、実施例1−1〜1−10と同様にしてサイクル特性を調べた。結果を表7に示す。
【0124】
表7から分かるように、容量維持率は4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量が増加するに伴い大きくなり、極大値を示したのち低下した。
【0125】
すなわち、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0126】
(実施例8−1〜8−8,9−1)
実施例8−1〜8−8では、溶媒として、環式硫黄化合物である1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシド(ES)と、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステルである4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、炭酸ジメチルとを用い、溶媒における1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドの含有量を0.1質量%以上10.0質量%以下の範囲内で変化させたことを除き、他は実施例1−5と同様にして二次電池を作製した。各溶媒の具体的な組成については、表8に示したようにした。
【0127】
【表8】
【0128】
また、実施例9−1では、溶媒として、環式硫黄化合物である1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドと、炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、炭酸ジメチルとを用いたことを除き、他は実施例1−5と同様にして二次電池を作製した。溶媒における1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドの含有量は3.0質量%とし、その他の溶媒については、表8に示したようにした。
【0129】
実施例8−1〜8−8,9−1の二次電池について、実施例1−1〜1−10と同様にしてサイクル特性を調べた。結果を実施例7−1,7−6の結果と共に表8に示す。
【0130】
表8から分かるように、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いた実施例7−6,8−1〜8−8では、容量維持率は1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドの含有量が増加するに伴い大きくなり、極大値を示したのち低下した。一方、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いなかった実施例7−1,9−1では、1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドを用いることによる容量維持率向上の効果は観られなかった。
【0131】
すなわち、電解液に、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体に加えて、環式硫黄化合物を含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができ、溶媒における環式硫黄化合物の含有量を0.1質量%以上10質量%以下とするようにすれば、好ましいことが分かった。
【0132】
(実施例10−1〜10−10)
原料としてスズ粉末と鉄粉末と銀粉末と炭素粉末とを用意し、スズ粉末と鉄粉末と銀粉末とを合金化してスズ・鉄・銀合金粉末を作製したのち、この合金粉末に炭素粉末を加えて乾式混合した。その際、原料の割合は、表9に示したように、スズと鉄との合計に対する鉄の割合を32質量%、銀の原料比を3.0質量%で一定とすると共に、炭素の原料比を12質量%以上30質量%以下の範囲内で変化させた。続いて、この混合物20gを直径9mmの鋼玉約400gと共に、伊藤製作所製の遊星ボールミルの反応容器中にセットした。次いで、反応容器中をアルゴン雰囲気に置換し、毎分250回転の回転速度による10分間の運転と、10分間の休止とを運転時間の合計が30時間になるまで繰り返した。そののち、反応容器を室温まで冷却して合成された負極活物質粉末を取り出し、280メッシュのふるいを通して粗粉を取り除いた。
【0133】
【表9】
【0134】
得られた負極活物質について実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。なお、銀の含有量は、ICP発光分析により測定した。これらの分析値を表9に示す。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質中の炭素が他の元素と結合していることが確認された。
【0135】
実施例10−1〜10−10に対する比較例10−1として、原料として炭素粉末を用いなかったことを除き、他は実施例10−1〜10−10と同様にして負極活物質を合成した。また、比較例10−2〜10−5として、炭素粉末の原料比を表9に示したように変化させたことを除き、他は実施例10−1〜10−10と同様にして負極活物質を合成した。比較例10−1〜10−5の負極活物質についても、実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表9に示す。また、XPSを行ったところ、比較例10−2〜10−5では、ピークP1が得られた。ピークP1を解析したところ、実施例10−1〜10−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。一方、比較例10−1ではピークP4が得られ、これを解析したところ、表面汚染炭素のピークP2のみが得られた。
【0136】
次に、実施例10−1〜10−10および比較例10−1〜10−5の負極活物質粉末を用いて、実施例1−1〜1−10と同様にして二次電池を作製し、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表9および図10に示す。
【0137】
表9および図10から分かるように、負極活物質における炭素の含有量が11.9質量%以上29.7質量以下である実施例10−1〜10−10によれば、炭素の含有量がこの範囲外である比較例10−1〜10−5よりも容量維持率を飛躍的に向上させることができた。また、初回充電容量も向上させることができた。
【0138】
更に、負極活物質における炭素の含有量が13.9質量%以上27.7質量%以下の範囲内、更には15.8質量%以上23.8質量%以下の範囲内においてより高い値が得られた。
【0139】
すなわち、負極活物質に銀を含む場合にも、炭素の含有量を11.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内とすれば、容量およびサイクル特性を向上させることができ、13.9質量%以上27.7質量%以下の範囲内、更には15.8質量%以上23.8質量%以下の範囲内とすればより好ましいことが分かった。
【0140】
(実施例11−1〜11−8)
スズと鉄と銀と炭素との原料比を表10に示したように変化させたことを除き、他は実施例10−1〜10−10と同様にして負極活物質を合成した。具体的には、銀の原料比を3.0質量%,炭素の原料比を30.0質量%で一定とし、Fe/(Sn+Fe) 比を26質量%以上48質量%以下の範囲内で変化させた。
【0141】
【表10】
【0142】
また、実施例11−1〜11−8に対する比較例11−1〜11−5として、Fe/(Sn+Fe) 比を表10に示したように変化させたことを除き、他は実施例11−1〜11−10と同様にして負極活物質を合成した。比較例11−1〜11−5におけるFe/(Sn+Fe) 比は、それぞれ19質量%,21質量%,25質量%,49質量%、または50質量%とした。
【0143】
得られた実施例11−1〜11−8および比較例11−1〜11−5の負極活物質についても、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。
【0144】
次に、実施例11−1〜11−8および比較例11−1〜11−5の負極活物質粉末を用いて、実施例1−1〜1−10と同様にして二次電池を作製し、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表10および図11に示す。
【0145】
表10および図11から分かるように、合成した負極活物質のFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.5質量%以下とした実施例10−10,11−1〜11−8によれば、これらの範囲外とした比較例11−1〜11−5よりも、容量維持率および初回充電容量を共に向上させることができた。特に、Fe/(Sn+Fe) 比を29.4質量%以上45.5質量%以下とした実施例10−10,11−2〜11−7において、より高い値が得られた。
【0146】
すなわち、負極活物質に銀を含む場合にも、負極活物質におけるFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.5質量%以下とするようにすれば、容量およびサイクル特性を向上させることができ、29.4質量%以上45.5質量%以下とするようにすれば、より好ましいことが分かった。
【0147】
(実施例12−1〜12−8)
スズと鉄と銀と炭素との原料比を表11に示したように変化させたことを除き、他は実施例10−1〜10−10と同様にして負極活物質を合成した。具体的には、銀の原料比を3.0質量%,炭素の原料比を20.0質量%で一定とし、Fe/(Sn+Fe) 比を26質量%以上48質量%以下の範囲内で変化させた。
【0148】
【表11】
【0149】
また、実施例12−1〜12−8に対する比較例12−1〜12−5として、Fe/(Sn+Fe) 比を表11に示したように変化させたことを除き、他は実施例12−1〜12−8と同様にして負極活物質を合成した。比較例12−1〜12−5におけるFe/(Sn+Fe) 比は、それぞれ19質量%,21質量%,25質量%,49質量%,50質量%とした。
【0150】
実施例12−1〜12−8および比較例12−1〜12−5の負極活物質についても、実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表3に示す。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。
【0151】
次に、実施例12−1〜12−8および比較例12−1〜12−5の負極活物質粉末を用いて、実施例1−1〜1−10と同様にして二次電池を作製し、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表11および図12に示す。
【0152】
表11および図12から分かるように、合成した負極活物質のFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とした実施例10−5,12−1〜12−8によれば、これらの範囲外とした比較例12−1〜12−5よりも、容量維持率および初回充電容量を共に向上させることができた。特に、Fe/(Sn+Fe) 比を29.4質量%以上45.5質量%以下とした実施例10−5,12−2〜12−7において、より高い値が得られた。
【0153】
すなわち、負極活物質におけるFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とするようにすれば、炭素の含有量が19.8質量%の場合にも、容量およびサイクル特性を向上させることができ、29.4質量%以上45.5質量%以下とするようにすれば、より好ましいことが分かった。
【0154】
(実施例13−1〜13−8)
スズと鉄と銀と炭素との原料比を表12に示したように変化させたことを除き、他は実施例10−1〜10−10と同様にして負極活物質を合成した。具体的には、銀の原料比を3.0質量%,炭素の原料比を12.0質量%で一定とし、Fe/(Sn+Fe) 比を26質量%以上48質量%以下の範囲内で変化させた。
【0155】
【表12】
【0156】
また、実施例13−1〜13−8に対する比較例13−1〜13−5として、Fe/(Sn+Fe) 比を表12に示したように変化させたことを除き、他は実施例13−1〜13−8と同様にして負極活物質を合成した。比較例13−1〜13−5におけるFe/(Sn+Fe) 比は、それぞれ19質量%,21質量%,25質量%,59質量%,または50質量%とした。
【0157】
実施例13−1〜13−8および比較例13−1〜13−5の負極活物質についても、実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。結果を表12に示す。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。
【0158】
次に、実施例13−1〜13−8および比較例13−1〜13−5の負極活物質粉末を用いて、実施例1−1〜1−10と同様にして二次電池を作製し、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表12および図13に示す。
【0159】
表12および図13から分かるように、合成した負極活物質のFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とした実施例10−1,13−1〜13−8によれば、これらの範囲外とした比較例13−1〜13−5よりも、容量維持率および初回充電容量を共に向上させることができた。特に、Fe/(Sn+Fe) 比を29.5質量%以上45.4質量%以下とした実施例10−1,13−2〜13−7において、より高い値が得られた。
【0160】
すなわち、負極活物質におけるFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とするようにすれば、炭素の含有量が11.9質量%の場合にも、容量およびサイクル特性を向上させることができ、29.5質量%以上45.4質量%以下とするようにすれば、より好ましいことが分かった。
【0161】
(実施例14−1〜14−9)
スズと鉄と銀と炭素との原料比を表13に示したように変化させたことを除き、他は実施例10−1〜10−10と同様にして負極活物質を合成した。具体的には、銀の原料比を0.1質量%以上15.0質量%以下の範囲内で変化させ、Fe/(Sn+Fe) 比を32.0質量%とした。
【0162】
【表13】
【0163】
実施例14−1〜14−9の負極活物質についても、実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。結果を表13に示す。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。
【0164】
次に、実施例14−1〜14−9の負極活物質粉末を用いて、実施例1−1〜1−10と同様にして二次電池を作製し、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を実施例1−5,10−5の結果と共に表13に示す。
【0165】
表13から分かるように、銀を含む実施例10−5,14−1〜14−9によれば、銀を含まない実施例1−5よりも容量維持率を向上させることができた。但し、銀の含有量が多くなるに従い、初回充電容量は低下する傾向が見られた。
【0166】
すなわち、負極活物質に銀を含むようにすれば、サイクル特性を向上させることができ、その含有量は、0.1質量%以上9.9質量%以下の範囲内が好ましく、1.0質量%以上7.4質量%以下の範囲内がより好ましく、特に、2.0質量%以上5.0質量%以下の範囲内が望ましいことが分かった。
【0167】
(実施例15−1〜15−14)
原料として、更にケイ素粉末を用い、スズと鉄と銀と炭素とケイ素との原料比を表14に示したように変化させたことを除き、他は実施例10−5と同様にして負極活物質を合成した。具体的には、ケイ素粉末の原料比を0.2質量%以上10.0質量%以下の範囲内で変化させ、Fe/(Sn+Fe) 比を32.0質量%とした。実施例15−1〜15−14の負極活物質についても実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表14に示す。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。
【0168】
【表14】
【0169】
表14から分かるように、ケイ素を含む実施例15−1〜15−14によれば、ケイ素を含まない実施例10−5よりも初回充電容量を向上させることができた。但し、ケイ素の含有量が多くなるに従い、容量維持率は低下する傾向が見られた。
【0170】
すなわち、負極活物質にケイ素を含有するようにすれば、容量を向上させることができ、その含有量は0.5質量%以上7.9質量%以下の範囲内が好ましいことが分かった。
【0171】
(実施例16−1〜16−18)
実施例6−1〜6−16では、原料に第1成分としてアルミニウム粉末,チタン粉末,バナジウム粉末,クロム粉末,ニオブ粉末およびタンタル粉末からなる群のうちの少なくとも1種と、第2成分としてコバルト粉末,ニッケル粉末,銅粉末,亜鉛粉末,ガリウム粉末およびインジウム粉末のうちの少なくとも1種とを用い、スズと鉄と銀と炭素と第1成分と第2成分との原料比を表15に示したようにしたことを除き、他は実施例10−5と同様にして負極活物質を合成した。また、実施例16−17では、原料に第1成分としてチタン粉末を用意し、スズと鉄と銀と炭素とチタンとの原料比を表15に示したようにしたことを除き、他は実施例10−5と同様にして負極活物質を合成した。更に、実施例6−18では、原料に第2成分として亜鉛粉末を用意し、スズと鉄と銀と炭素と亜鉛との原料比を表15に示したようにしたことを除き、他は実施例10−5と同様にして負極活物質を合成した。これらの負極活物質についても実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表15に示す。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。
【0172】
【表15】
【0173】
次に、実施例16−1〜16−18の負極活物質粉末を用いて、実施例1−1〜1−10と同様にして二次電池を作製し、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表15に示す。
【0174】
表15から分かるように、第1成分と第2成分とを含む実施例16−1〜16−16によれば、これらを含まない実施例10−5、または第1成分のみあるいは第2成分のみを含む実施例16−17,16−18よりも、容量維持率が向上した。
【0175】
また、第1成分の含有量が0.1質量%以上9.9質量%以下、第2成分の含有量が0.5質量%以上14.9質量%以下である実施例16−1〜16−14によれば、初回充電容量についても高い値が得られた。
【0176】
すなわち、銀を含む場合にも、負極活物質にアルミニウム,チタン,バナジウム,クロム,ニオブおよびタンタルからなる群のうちの少なくとも1種と、コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウムおよびインジウムからなる群のうちの少なくとも1種とを含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができ、これらの含有量をそれぞれ0.1質量%以上9.9質量%以下、0.5質量%以上14.9質量%以下とするようにすれば、高い容量を得ることができることが分かった。
【0177】
(実施例17−1〜17−19)
溶媒として、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステルである4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、炭酸ジメチルとのうちの2種以上を用い、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量を0質量%以上80.0質量%以下の範囲内で変化させたことを除き、他は実施例10−5と同様にして二次電池を作製した。各溶媒の具体的な組成については、表16に示したようにした。
【0178】
【表16】
【0179】
実施例17−1〜17−19の二次電池について、実施例1−1〜1−10と同様にしてサイクル特性を調べた。結果を表16に示す。
【0180】
表16から分かるように、容量維持率は4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量が増加するに伴い大きくなり、極大値を示したのち低下した。
【0181】
すなわち、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0182】
(実施例18−1〜18−8,19−1)
実施例18−1〜18−8では、溶媒として、環式硫黄化合物である1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドと、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステルである4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、炭酸ジメチルとを用い、溶媒における1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドの含有量を0.1質量%以上10.0質量%以下の範囲内で変化させたことを除き、他は実施例10−5と同様にして二次電池を作製した。各溶媒の具体的な組成については、表17示したようにした。
【0183】
また、実施例19−1では、溶媒として、環式硫黄化合物である1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドと、炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、炭酸ジメチルとを用いたことを除き、他は実施例10−5と同様にして二次電池を作製した。溶媒における1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドの含有量は3.0質量%とし、その他の溶媒については、表17に示したようにした。
【0184】
実施例18−1〜18−8,19−1の二次電池について、実施例1−1〜1−10と同様にしてサイクル特性を調べた。結果を実施例17−1,17−6の結果と共に表17に示す。
【0185】
【表17】
【0186】
表17から分かるように、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いた実施例17−6,18−1〜18−8では、容量維持率は1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドの含有量が増加するに伴い大きくなり、極大値を示したのち低下した。一方、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いなかった実施例17−1,19−1では、1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドを用いることによる容量維持率向上の効果は観られなかった。
【0187】
すなわち、電解液に、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体に加えて、環式硫黄化合物を含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができ、溶媒における環式硫黄化合物の含有量を0.1質量%以上10質量%以下とするようにすれば、好ましいことが分かった。
【0188】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、コイン型,および巻回構造を有する二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は、ボタン型,シート型あるいは角型などの他の形状を有する二次電池、または正極および負極を複数積層した他の積層構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。
【0189】
また、実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、負極活物質と反応可能であればナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの長周期型周期表における他の1族の元素、またはマグネシウム(Mg)あるいはカルシウム(Ca)などの長周期型周期表における2族の元素、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その際、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な正極活物質あるいは非水溶媒などは、その電極反応物質に応じて選択される。
【0190】
更に、上記実施の形態および実施例では、電解質として電解液を用いる場合について説明し、更に上記実施の形態では、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状電解質を用いる場合についても説明したが、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、イオン伝導性セラミックス,イオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などのイオン伝導性無機化合物、または他の無機化合物、またはこれらの無機化合物と電解液あるいはゲル状電解質とを混合したものが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した二次電池における巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る他の二次電池の構成を表す分解斜視図である。
【図4】図3に示した巻回電極体のI−I線に沿った構成を表す断面図である。
【図5】実施例で作製したコイン型電池の構成を示す断面図である。
【図6】負極活物質における炭素の含有量と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す特性図である。
【図7】負極活物質におけるスズと鉄との合計に対する鉄の割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す特性図である。
【図8】負極活物質におけるスズと鉄との合計に対する鉄の割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図9】負極活物質におけるスズと鉄との合計に対する鉄の割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図10】負極活物質における炭素の含有量と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図11】負極活物質におけるスズと鉄との合計に対する鉄の割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図12】負極活物質におけるスズと鉄との合計に対する鉄の割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図13】負極活物質におけるスズと鉄との合計に対する鉄の割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【符号の説明】
【0192】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17,56…ガスケット、20,30…巻回電極体、21,33…正極、21A, 33A…正極集電体、21B,33B…正極活物質層、22,34…負極、22A,34A…負極集電体、22B,34B…負極活物質層、23,35,55…セパレータ、24…センターピン、25,31…正極リード、26,32…負極リード、36…電解質層、37…保護テープ、40,52,54…外装部材、41…密着フィルム、51…試験極、53…対極。
【技術分野】
【0001】
本発明は、構成元素としてスズ(Sn)と鉄(Fe)と炭素(C)とを含む負極活物質およびそれを用いた電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラ一体型VTR(ビデオテープレコーダ),携帯電話あるいはノートパソコンなどのポータブル電子機器が多く登場し、その小型軽量化が図られている。これらの電子機器のポータブル電源として用いられている電池、特に二次電池はキーデバイスとして、エネルギー密度の向上を図る研究開発が活発に進められている。中でも、非水電解質二次電池(例えば、リチウムイオン二次電池)は、従来の水系電解液二次電池である鉛電池あるいはニッケルカドミウム電池と比較して大きなエネルギー密度が得られるため、その改良に関する検討が各方面で行われている。
【0003】
リチウムイオン二次電池に使用される負極活物質としては、比較的高容量を示し良好なサイクル特性を有する難黒鉛化性炭素あるいは黒鉛などの炭素材料が広く用いられている。ただし、近年の高容量化の要求を考えると、炭素材料の更なる高容量化が課題となっている。
【0004】
このような背景から、炭素化原料と作成条件とを選ぶことにより炭素材料で高容量を達成する技術が開発されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、このような炭素材料を用いた場合には、負極放電電位が対リチウム(Li)で0.8V〜1.0Vであるので、電池を構成したときの電池放電電圧が低くなることから、電池エネルギー密度の点では大きな向上が見込めない。さらには、充放電曲線形状にヒステリシスが大きく、各充放電サイクルでのエネルギー効率が低いという欠点もある。
【0005】
一方で、炭素材料を上回る高容量負極として、ある種の金属がリチウムと電気化学的に合金化し、これが可逆的に生成・分解することを応用した合金材料に関する研究も進められている。例えば、Li−Al合金あるいはSn合金を用いた高容量負極が開発され、さらには、Si合金からなる高容量負極が開発されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、Li−Al合金,Sn合金あるいはSi合金は、充放電に伴って膨張収縮し、充放電を繰り返すたびに負極が微粉化するので、サイクル特性が極めて悪いという大きな問題がある。
【0007】
そこで、サイクル特性を改善する手法として、スズやケイ素(Si)を合金化することによりこれらの膨張を抑制することが検討されており、例えば鉄などの遷移金属とスズとを合金化することが提案されている(例えば、特許文献3〜5,非特許文献1〜3参照)。また、Mg2 Siなども提案されている(例えば、非特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平8−315825号公報
【特許文献2】米国特許第4950566号明細書等
【特許文献3】特開2004−22306号公報
【特許文献4】特開2004−63400号公報
【特許文献5】特開2005−78999号公報
【非特許文献1】「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p405
【非特許文献2】「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p414
【非特許文献3】「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p423
【非特許文献4】「ジャーナル オブ ザ エレクトロケミカル ソサエティ(Journal of The Electrochemical Society)」、1999年、第146号、p4401
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの手法を用いた場合においても、サイクル特性改善の効果は十分とは言えず、合金材料における高容量負極の特長を十分に活かしきれていないのが実状である。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、高容量で、優れたサイクル特性を得ることができる負極活物質およびそれを用いた電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の負極活物質は、構成元素として、スズと、鉄と、炭素とを少なくとも含み、炭素の含有量が11.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズと鉄との合計に対する鉄の割合が26.4質量%以上48.5質量%以下のものである。
【0011】
本発明の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、負極は、構成元素として、スズと、鉄と、炭素とを少なくとも含む負極活物質を含有し、負極活物質における炭素の含有量は11.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズと鉄との合計に対する鉄の割合が26.4質量%以上48.5質量%以下のものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の負極活物質によれば、構成元素として、スズを含むようにしたので、高容量を得ることができる。また、構成元素として鉄を含み、スズと鉄との合計に対する鉄の割合を26.4質量%以上48.5質量%以下とするようにしたので、高容量を保ちつつ、サイクル特性を向上させることができる。更に、構成元素として炭素を含み、その含有量を11.9質量%以上29.7質量%以下とするようにしたので、サイクル特性をより向上させることができる。よって、この負極活物質を用いた本発明の電池によれば、高容量を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができる。
【0013】
また、負極活物質に、構成元素として銀(Ag)を含むようにすれば、電解質との反応性を低減することができ、サイクル特性をより向上させることができる。特に、負極活物質における銀の含有量を0.1質量%以上9.9質量%以下とするようにすれば、より高い容量を得ることもできる。
【0014】
更に、負極活物質に、構成元素としてケイ素を含むようにすれば、更に高い容量を得ることができる。
【0015】
更にまた、負極活物質に、構成元素として、アルミニウム(Al),チタン(Ti),バナジウム(V),クロム(Cr), ニオブ(Nb)およびタンタル(Ta)からなる群のうちの少なくとも1種と、コバルト(Co),ニッケル(Ni),銅(Cu),亜鉛(Zn),ガリウム(Ga)およびインジウム(In)からなる群のうちの少なくとも1種とを含むようにすれば、よりサイクル特性を向上させることができ、特に、これらの含有量をそれぞれ0.1質量%以上9.9質量%以下、0.5質量%以上14.9質量%以下とするようにすれば、より高い容量を得ることもできる。
【0016】
加えて、電解質にハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、負極における溶媒の分解反応を抑制することができ、サイクル特性を更に向上させることができる。また、環式炭酸エステル誘導体に加えて、環式硫黄化合物を含むようにすれば、溶媒の分解反応をより抑制することができ、更に高い効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
本発明の一実施の形態に係る負極活物質は、リチウムなどと反応可能なものであり、構成元素として、スズと鉄とを含んでいる。スズは単位質量あたりのリチウムの反応量が高く、高い容量を得ることができるからである。また、スズ単体では十分なサイクル特性を得ることは難しいが、鉄を含むことによりサイクル特性を向上させることができるからである。
【0019】
鉄の含有量は、スズと鉄との合計に対する鉄の割合で、26.4質量%以上48.5質量%以下であり、29.3質量%以上45.5質量%以下の範囲内であればより好ましい。割合が低いと鉄の含有量が低下し十分なサイクル特性が得られず、また、割合が高いとスズの含有量が低下し、従来の負極材料、例えば炭素材料の容量に対して優位性が得られないからである。
【0020】
この負極活物質は、また、構成元素として、スズおよび鉄に加えて炭素を含んでいる。炭素を含むことによりサイクル特性をより向上させることができるからである。炭素の含有量は、11.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内であり、13.9質量%以上27.7質量%以下の範囲内であれば好ましく、特に15.8質量%以上23.8質量%以下の範囲内であればより好ましい。この範囲内において高い効果を得ることができるからである。
【0021】
この負極活物質は、更に、構成元素として、これらに加えて銀を含んだ方が好ましい場合もある。電解質との反応性を低減することができ、サイクル特性を向上させることができるからである。銀の含有量は、0.1質量%以上9.9質量%以下の範囲内であることが好ましく、1.0質量%以上7.4質量%以下の範囲内であることがより好ましく、特に、2.0質量%以上5.0質量%以下の範囲内であれば望ましい。少ないとサイクル特性を向上させる効果が十分でなく、多いとスズの含有量が低下して十分な容量が得られないからである。
【0022】
この負極活物質は、更にまた、構成元素として、これらに加えてケイ素を含んだ方が好ましい場合もある。ケイ素は単位質量あたりのリチウムの反応量が高く、容量をより向上させることができるからである。ケイ素の含有量は、0.5質量%以上7.9質量%以下の範囲内であることが好ましい。少ないと容量を高くする効果が十分でなく、多いとサイクル特性を低下させてしまうからである。ケイ素は、銀と共に含まれていてもよい。
【0023】
この負極活物質は、また、構成元素として、アルミニウム,チタン,バナジウム,クロム,ニオブおよびタンタルからなる群のうちの少なくとも1種と、コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウムおよびインジウムからなる群のうちの少なくとも1種とを含んだ方が好ましい場合もある。これらを含むことによりサイクル特性をより向上させることができるからである。アルミニウム,チタン,バナジウム,クロム, ニオブおよびタンタルの含有量は、0.1質量%以上9.9質量%以下であることが好ましく、またコバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウムおよびインジウムの含有量は、0.5質量%以上14.9質量%以下であることが好ましい。少ないと十分な効果が得られず、多いとスズの含有量が低下して十分な容量が得られないからである。これらの元素は、銀あるいはケイ素と共に含まれていてもよい。
【0024】
また、この負極活物質は、結晶性の低いまたは非晶質な相を有している。この相は、リチウムなどと反応可能な反応相であり、これにより優れたサイクル特性を得ることができるようになっている。この相のX線回折により得られる回折ピークの半値幅は、特定X線としてCuKα線を用い、掃引速度を1°/minとした場合に、回折角2θで0.5°以上であることが好ましい。リチウムなどをより円滑に吸蔵および放出させることができると共に、電解質との反応性をより低減させることができるからである。
【0025】
なお、X線回折により得られた回折ピークがリチウムなどと反応可能な反応相に対応するものであるか否かは、リチウムなどとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較することにより容易に判断することができる。例えば、リチウムなどとの電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、リチウムなどと反応可能な反応相に対応するものである。この負極活物質では、結晶性の低いまたは非晶質な反応相の回折ピークが例えば2θ=20°〜50°の間に見られる。この結晶性の低いまたは非晶質な反応相は、例えば上述した各構成元素を含んでおり、主に炭素により低結晶化または非晶質化しているものと考えられる。
【0026】
なお、この負極活物質は、この結晶性の低いまたは非晶質な相に加えて、各構成元素の単体または一部を含む相を有している場合もある。
【0027】
元素の結合状態を調べる測定方法としては、例えばX線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)が挙げられる。このXPSは、軟X線(市販の装置ではAl−Kα線、またはMg−Kα線を用いる)を試料表面に照射し、試料表面から飛び出してくる光電子の運動エネルギーを測定することによって、試料表面から数nmの領域の元素組成、および元素の結合状態を調べる方法である。
【0028】
元素の内殻軌道電子の束縛エネルギーは、第1近似的には、元素上の電荷密度と相関して変化する。例えば、炭素元素の電荷密度が近傍に存在する元素との相互作用により減少した場合には、2p電子などの外殻電子が減少しているので、炭素元素の1s電子は殻から強い束縛力を受けることになる。すなわち、元素の電荷密度が減少すると、束縛エネルギーは高くなる。XPSでは、束縛エネルギーが高くなると、高いエネルギー領域にピークはシフトするようになっている。
【0029】
XPSでは、炭素の1s軌道(C1s)のピークは、グラファイトであれば、金原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正された装置において、284.5eVに現れる。また、表面汚染炭素であれば、284.8eVに現れる。これに対して、炭素元素の電荷密度が高くなる場合、例えば炭素が金属元素または半金属元素と結合している場合には、C1sのピークは、284.5eVよりも低い領域に現れる。すなわち、負極活物質について得られるC1sの合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる場合には、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合している。
【0030】
なお、負極活物質のXPS測定に際しては、表面が表面汚染炭素で覆われている場合、XPS装置に付属のアルゴンイオン銃で表面を軽くスパッタすることが好ましい。また、測定対象の負極活物質が後述のように電池の負極中に存在する場合には、電池を解体して負極を取り出した後、炭酸ジメチルなどの揮発性溶媒で洗浄するとよい。負極の表面に存在する揮発性の低い溶媒と電解質塩とを除去するためである。これらのサンプリングは、不活性雰囲気下で行うことが望ましい。
【0031】
また、XPS測定では、スペクトルのエネルギー軸の補正に、例えばC1sのピークを用いる。通常、物質表面には表面汚染炭素が存在しているので、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、これをエネルギー基準とする。なお、XPS測定では、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークと負極活物質中の炭素のピークとを含んだ形として得られるので、例えば市販のソフトウエアを用いて解析することにより、表面汚染炭素のピークと、負極活物質中の炭素のピークとを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
【0032】
この負極活物質は、例えば各構成元素の原料を混合して電気炉,高周波誘導炉あるいはアーク溶解炉などにより溶解しその後凝固することにより、また、ガスアトマイズあるいは水アトマイズなどの各種アトマイズ法、各種ロール法、またはメカニカルアロイング法あるいはメカニカルミリング法などのメカノケミカル反応を利用した方法により製造することができる。中でも、メカノケミカル反応を利用した方法により製造することが好ましい。負極活物質を低結晶化あるいは非晶質な構造とすることができるからである。この方法には、例えば、遊星ボールミル装置を用いることができる。
【0033】
原料には、各構成元素の単体を混合して用いてもよいが、炭素以外の構成元素の一部については合金を用いることが好ましい。このような合金に炭素を加えてメカノケミカル反応を利用した方法により合成することにより、低結晶化あるいは非晶質な構造を有するようにすることができ、反応時間の短縮も図ることができるからである。なお、原料の形態は粉体であってもよいし、塊状であってもよい。
【0034】
原料として用いる炭素には、難黒鉛化炭素,易黒鉛化炭素,グラファイト,熱分解炭素類,コークス,ガラス状炭素類,有機高分子化合物焼成体,活性炭およびカーボンブラックなどの炭素材料のいずれか1種または2種以上を用いることができる。このうち、コークス類には、ピッチコークス,ニードルコークスあるいは石油コークスなどがあり、有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂などの高分子化合物を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。これらの炭素材料の形状は、繊維状,球状,粒状あるいは鱗片状のいずれでもよい。
【0035】
この負極活物質は、例えば次のようにして二次電池に用いられる。
【0036】
(第1の二次電池)
図1は第1の二次電池の断面構造を表すものである。この二次電池はいわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、帯状の正極21と帯状の負極22とがセパレータ23を介して積層し巻回された巻回電極体20を有している。電池缶11は、例えばニッケルのめっきがされた鉄により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶11の内部には、液状の電解質である電解液が注入され、セパレータ23に含浸されている。また、巻回電極体20を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板12,13がそれぞれ配置されている。
【0037】
電池缶11の開放端部には、電池蓋14と、この電池蓋14の内側に設けられた安全弁機構15および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)16とが、ガスケット17を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶11の内部は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により構成されている。安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱などにより電池の内圧が一定以上となった場合にディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、温度が上昇すると抵抗値の増大により電流を制限し、大電流による異常な発熱を防止するものである。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0038】
巻回電極体20の中心には、例えば、センターピン24が挿入されている。巻回電極体20の正極21にはアルミニウムなどよりなる正極リード25が接続されており、負極22にはニッケルなどよりなる負極リード26が接続されている。正極リード25は安全弁機構15に溶接されることにより電池蓋14と電気的に接続されており、負極リード26は電池缶11に溶接され電気的に接続されている。
【0039】
図2は図1に示した巻回電極体20の一部を拡大して表すものである。正極21は、例えば、対向する一対の面を有する正極集電体21Aの両面あるいは片面に正極活物質層21Bが設けられた構造を有している。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んでいてもよい。
【0040】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質としては、例えば、リチウム酸化物、リチウム硫化物、リチウムを含む層間化合物あるいはリン酸化合物などのリチウム含有化合物が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物、またはリチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物が好ましく、特に遷移金属元素として、コバルト,ニッケル,マンガン,鉄,アルミニウム,バナジウム,およびチタンのうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。その化学式は、例えば、Lix MIO2 あるいはLiy MIIPO4 で表される。式中、MIおよびMIIは1種類以上の遷移金属元素を含む。xおよびyの値は電池の充放電状態によって異なり、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
【0041】
リチウムと遷移金属元素とを含む複合酸化物の具体例としては、リチウムコバルト複合酸化物(Lix CoO2 )、リチウムニッケル複合酸化物(Lix NiO2 )、リチウムニッケルコバルト複合酸化物(Lix Ni1-z Coz O2 (z<1))、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物(Lix Ni(1-v-w) Cov Mnw O2 (v+w<1))、あるいはスピネル型構造を有するリチウムマンガン複合酸化物(LiMn2 O4 )などが挙げられる。リチウムと遷移金属元素とを含むリン酸化合物の具体例としては、例えばリチウム鉄リン酸化合物(LiFePO4 )あるいはリチウム鉄マンガンリン酸化合物(LiFe1-u Mnu PO4 (u<1))が挙げられる。
【0042】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質としては、また、リチウムを含有しない化合物が挙げられ、例えば、TiS2 あるいはMoS2 などの金属硫化物、V2 O5 などの酸化物、NbSe2 が挙げられる。更に、リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質としては、高分子材料も挙げられ、例えば、ポリアニリンあるいはポリチオフェンが挙げられる。
【0043】
負極22は、例えば、正極21と同様に、対向する一対の面を有する負極集電体22Aの両面あるいは片面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有している。負極集電体22Aは、例えば、銅箔などの金属箔により構成されている。
【0044】
負極活物質層22Bは、例えば、本実施の形態に係る負極活物質を含み、必要に応じてポリフッ化ビニリデンなどの結着剤を含んで構成されている。このように本実施の形態に係る負極活物質を含むことにより、この二次電池では、高容量が得られると共に、サイクル特性を向上させることができるようになっている。負極活物質層22Bは、また、本実施の形態に係る負極活物質に加えて他の負極活物質、または導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。他の負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な炭素材料が挙げられる。この炭素材料は、充放電サイクル特性を向上させることができると共に、導電剤としても機能するので好ましい。炭素材料としては、例えば、負極活物質を製造する際に用いたものと同様のものが挙げられる。
【0045】
この炭素材料の割合は、本実施の形態の負極活物質に対して、1質量%以上95質量%以下の範囲内であることが好ましい。炭素材料が少ないと負極22の導電性が低下し、多いと電池容量が低下してしまうからである。
【0046】
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリプロピレンあるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、またはセラミック製の多孔質膜により構成されており、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。
【0047】
セパレータ23に含浸された電解液は、例えば、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含んでいる。溶媒としては、例えば、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトリル、アニソール、酢酸エステル、酪酸エステルあるいはプロピオン酸エステルが挙げられる。溶媒は、いずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
溶媒は、また、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含んでいればより好ましい。負極22における溶媒の分解反応を抑制することができ、サイクル特性を向上させることができるからである。このような環式炭酸エステル誘導体について具体的に例を挙げれば、化1(1)に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化1(2)に示した4−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化1(3)に示した4,5−ジフルオロ−1, 3−ジオキソラン−2−オン、化1(4)に示した4−ジフルオロ−5−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化1(5)に示した4−クロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化1(6)に示した4,5−ジクロロ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化1(7)に示した4−ブロモ−1,3−ジオキソラン−2−オン、化1(8)に示した4−ヨード−1,3−ジオキソラン−2−オン、化1(9)に示した4−フルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、あるいは化1(10)に示した4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどがあり、中でも、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが望ましい。より高い効果を得ることができるからである。環式炭酸エステル誘導体は、いずれか1種を単独で用いてもよく、複数種を混合して用いてもよい。
【0049】
【化1】
【0050】
溶媒は、この環式炭酸エステル誘導体のみにより構成するようにしてもよいが、大気圧(1.01325×105 Pa)において沸点が150℃以下である低沸点溶媒と混合して用いることが好ましい。イオン伝導性を高くすることができるからである。この炭酸エステル誘導体の含有量は、溶媒全体に対して0.1質量%以上80質量%以下の範囲内であることが好ましい。少ないと負極22における溶媒の分解反応を抑制する効果が十分ではなく、多いと粘度が高くなりイオン伝導性が低くなるからである。
【0051】
溶媒として環式炭酸エステル誘導体を含む場合には、更に、環式硫黄化合物を含んでいることが好ましい。溶媒の分解反応をより抑制することができ、サイクル特性をより向上させることができるからである。環式硫黄化合物としては、化2に示した化合物が好ましく挙げられる。更に高い効果が得られるからである。
【0052】
【化2】
(Rは、−(CH2 )n −で表される基、またはそれら少なくとも一部の水素を置換基で置換した基を表す。nは2,3または4である。)
【0053】
このような化合物について具体的に例を挙げれば、化3に示した1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシド(エチレンスルフィト)、1,3,2−ジオキサチアン−2−オキシド、1,2−オキサチオラン−2,2−ジオキシド、1,3,2−ジオキサチオラン−2,2−オキシド、あるいはそれらの誘導体などがある。
【0054】
【化3】
【0055】
環式硫黄化合物の含有量は、溶媒全体に対して0.1質量%以上10質量%以下の範囲内であることが好ましい。少ないと溶媒の分解反応を抑制する効果が十分ではなく、多いと、内部抵抗が上昇してしまうからである。
【0056】
電解質塩としては例えばリチウム塩が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、例えば、LiClO4 ,LiAsF6 ,LiPF6 ,LiBF4 ,LiB(C6 H5 )4 ,CH3 SO3 Li,CF3 SO3 Li,LiClあるいはLiBrが挙げられる。なお、電解質塩としては、リチウム塩を用いることが好ましいが、リチウム塩でなくてもよい。充放電に寄与するリチウムイオンは、正極21などから供給されれば足りるからである。
【0057】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0058】
まず、例えば、正極活物質と必要に応じて導電剤および結着剤とを混合して正極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて正極合剤スラリーを作製する。次いで、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し乾燥させ圧縮して正極活物質層21Bを形成し、正極21を作製する。続いて、正極21に正極リード25を溶接する。
【0059】
また、例えば、本実施の形態に係る負極活物質と必要に応じて他の負極活物質と結着剤とを混合して負極合剤を調製し、N−メチル−2−ピロリドンなどの溶剤に分散させて負極合剤スラリーを作製する。次いで、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し乾燥させ圧縮して負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。続いて、負極22に負極リード26を溶接する。
【0060】
そののち、正極21と負極22とをセパレータ23を介して巻回し、正極リード25の先端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の先端部を電池缶11に溶接して、巻回した正極21および負極22を一対の絶縁板12,13で挟み電池缶11の内部に収納する。次いで、電解液を電池缶11の内部に注入する。そののち、電池缶11の開口端部に電池蓋14,安全弁機構15および熱感抵抗素子16をガスケット17を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示した二次電池が完成する。
【0061】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極21からリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極22に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極22からリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極21に吸蔵される。ここでは、負極22が、スズ,鉄および炭素を上述した割合で含む負極活物質を含有しているので、高い容量を保ちつつ、サイクル特性が改善される。
【0062】
このように本実施の形態に係る負極活物質によれば、構成元素として、スズを含むようにしたので、高容量を得ることができる。また、構成元素として鉄を含み、スズと鉄との合計に対する鉄の割合を26.4質量%以上48.5質量%以下とするようにしたので、高容量を保ちつつ、サイクル特性を向上させることができる。更に、構成元素として炭素を含み、その含有量を11.9質量%以上29.7質量%以下とするようにしたので、サイクル特性をより向上させることができる。よって、本実施の形態に係る二次電池によればこの負極活物質を用いるようにしたので、高容量を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができる。
【0063】
また、負極活物質に、構成元素として銀を含むようにすれば、電解質との反応性を低減することができ、サイクル特性をより向上させることができる。特に、負極活物質における銀の含有量を0.1質量%以上9.9質量%以下とするようにすれば、より高い容量を得ることもできる。
【0064】
更に、負極活物質に、構成元素としてケイ素を含むようにすれば、更に高い容量を得ることができる。
【0065】
更にまた、負極活物質に、構成元素として、アルミニウム,チタン,バナジウム,クロム,ニオブおよびタンタルからなる群のうちの少なくとも1種と、コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウムおよびインジウムからなる群のうちの少なくとも1種とを含むようにすれば、よりサイクル特性を向上させることができ、特に、これらの含有量をそれぞれ0.1質量%以上9.9質量%以下、0.5質量%以上14.9質量%以下とするようにすれば、より高い容量を得ることもできる。
【0066】
加えて、電解液にハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、負極22における溶媒の分解反応を抑制することができ、サイクル特性を更に向上させることができる。また、環式炭酸エステル誘導体に加えて、環式硫黄化合物を含むようにすれば、溶媒の分解反応をより抑制することができ、更に高い効果を得ることができる。
【0067】
(第2の二次電池)
図3は、第2の二次電池の構成を表すものである。この二次電池は、正極リード31および負極リード32が取り付けられた巻回電極体30をフィルム状の外装部材40の内部に収容したものであり、小型化,軽量化および薄型化が可能となっている。
【0068】
正極リード31,負極リード32は、それぞれ、外装部材40の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード31および負極リード32は、例えば、アルミニウム,銅,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
【0069】
外装部材40は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材40は、例えば、ポリエチレンフィルム側と巻回電極体30とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム41が挿入されている。密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
【0070】
なお、外装部材40は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0071】
図4は、図3に示した巻回電極体30のI−I線に沿った断面構造を表すものである。巻回電極体30は、正極33と負極34とをセパレータ35および電解質層36を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ37により保護されている。
【0072】
正極33は、正極集電体33Aの片面あるいは両面に正極活物質層33Bが設けられた構造を有している。負極34は、負極集電体34Aの片面あるいは両面に負極活物質層34Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層34Bの側が正極活物質層33Bと対向するように配置されている。正極集電体33A,正極活物質層33B,負極集電体34A,負極活物質層34Bおよびセパレータ35の構成は、それぞれ上述した正極集電体21A,正極活物質層21B,負極集電体22A,負極活物質層22Bおよびセパレータ23と同様である。
【0073】
電解質層36は、電解液と、この電解液を保持する保持体となる高分子化合物とを含み、いわゆるゲル状となっている。ゲル状の電解質層36は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。電解液(すなわち溶媒および電解質塩)の構成は、図1に示した円筒型の二次電池と同様である。高分子化合物は、例えばポリフッ化ビニリデンあるいはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体などのフッ素系高分子化合物、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、またはポリアクリロニトリルなどが挙げられる。特に、酸化還元安定性の観点からは、フッ素系高分子化合物が望ましい。
【0074】
この二次電池は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0075】
まず、正極33および負極34のそれぞれに、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物と、混合溶剤とを含む前駆溶液を塗布し、混合溶剤を揮発させて電解質層36を形成する。そののち、正極集電体33Aの端部に正極リード31を溶接により取り付けると共に、負極集電体34Aの端部に負極リード32を溶接により取り付ける。次いで、電解質層36が形成された正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ37を接着して巻回電極体30を形成する。最後に、例えば、外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込み、外装部材40の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間には密着フィルム41を挿入する。これにより、図3,4に示した二次電池が完成する。
【0076】
また、この二次電池は、次のようにして作製してもよい。まず、上述したようにして正極33および負極34を作製し、正極33および負極34に正極リード31および負極リード32を取り付けたのち、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層して巻回し、最外周部に保護テープ37を接着して、巻回電極体30の前駆体である巻回体を形成する。次いで、この巻回体を外装部材40で挟み、一辺を除く外周縁部を熱融着して袋状とし、外装部材40の内部に収納する。続いて、溶媒と、電解質塩と、高分子化合物の原料であるモノマーと、必要に応じて重合開始剤と、重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物とを用意し、外装部材40の内部に注入する。
【0077】
電解質用組成物を注入したのち、外装部材40の開口部を真空雰囲気下で熱融着して密封する。次いで、熱を加えてモノマーを重合させて高分子化合物とすることによりゲル状の電解質層36を形成し、図3,4に示した二次電池を組み立てる。
【0078】
この二次電池は、第1の二次電池と同様に作用し、同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0079】
更に、本発明の具体的な実施例について詳細に説明する。
【0080】
(実施例1−1〜1−10)
まず、負極活物質を作製した。原料としてスズ粉末と鉄粉末と炭素粉末とを用意し、スズ粉末と鉄粉末とを合金化してスズ・鉄合金粉末を作製したのち、この合金粉末に炭素粉末を加えて乾式混合した。その際、原料の割合は、表1に示したように、スズと鉄との合計に対する鉄の割合(以下、Fe/(Sn+Fe) 比という)を32質量%で一定とすると共に、炭素の原料比を12質量%以上30質量%以下の範囲内で変化させた。続いて、この混合物20gを直径9mmの鋼玉約400gと共に、伊藤製作所製の遊星ボールミルの反応容器中にセットした。次いで、反応容器中をアルゴン雰囲気に置換し、毎分250回転の回転速度による10分間の運転と、10分間の休止とを運転時間の合計が30時間になるまで繰り返した。そののち、反応容器を室温まで冷却して合成された負極活物質粉末を取り出し、280メッシュのふるいを通して粗粉を取り除いた。
【0081】
【表1】
【0082】
得られた負極活物質について組成の分析を行った。炭素の含有量は、炭素・硫黄分析装置により測定し、スズおよび鉄の含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合プラズマ)発光分析により測定した。これらの分析値を表1に示す。また、XPSを行ったところ、ピークP1が得られ、このピークP1を解析すると、表面汚染炭素のピークP2と、ピークP2よりも低エネルギー側に負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られた。実施例1−1〜1−10のいずれについてもピークP3は、284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質中の炭素が他の元素と結合していることが確認された。
【0083】
次に、実施例1−1〜1−10の負極活物質粉末を用いて、図5に示したようなコイン型の二次電池を作製し、初回充電容量およびサイクル特性を調べた。このコイン型電池は、本実施例の負極活物質を用いた試験極51を外装部材52に収容すると共に、対極53を外装部材54に貼り付け、電解液を含浸させたセパレータ55を介して積層したのち、ガスケット56を介してかしめたものである。
【0084】
試験極51は、得られた負極活物質粉末と、導電剤および他の負極活物質である黒鉛と、導電剤としてアセチレンブラックと、結着剤としてポリフッ化ビニリデンとを混合し、適当な溶剤に分散させてスラリーとしたのち、これを銅箔集電体上に塗布、乾燥して直径15.2mmのペレットに打ち抜くことにより作製した。
【0085】
対極53には、直径15.5mmに打ち抜いた金属リチウム板を用いた。電解液には炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、炭酸ジメチルとの混合溶媒に、電解質塩としてLiPF6 を溶解させたものを用いた。
【0086】
初回充電容量は、1mAの定電流で電池電圧が0.2mVに達するまで定電流充電を行ったのち、0.2mVの定電圧で電流が10μAに達するまで定電圧充電を行い、試験極51の質量から銅箔集電体および結着剤の質量を除いた単位質量あたりの充電容量を求めた。なお、ここでいう充電は負極活物質へのリチウム挿入反応を意味する。結果を表1および図6に示す。
【0087】
また、サイクル特性は次にようして測定した。まず、1mAの定電流で電池電圧が0.2mVに達するまで定電流充電を行ったのち、0.2mVの定電圧で電流が10μAに達するまで定電圧充電を行い、引き続き、1mAの定電流で電池電圧が1200mVに達するまで定電流放電を行うことにより、1サイクル目の充放電を行った。
【0088】
2サイクル目以降は、2mAの定電流で電池電圧が0.2mVに達するまで定電流充電を行ったのち、0.2mVの定電圧で電流が10μAに達するまで定電圧充電を行い、引き続き、2mAの定電流で電池電圧が1200mVに達するまで定電流放電を行った。サイクル特性は、2サイクル目の放電容量に対する50サイクル目の容量維持率(50サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100(%)を求めた。結果を表1および図6に示す。
【0089】
実施例1−1〜1−10に対する比較例1−1として、原料として炭素粉末を用いなかったことを除き、他は実施例1−1〜1−10と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。また、比較例1−2〜1−5として、炭素粉末の原料比を表1に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−10と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。比較例1−1〜1−5の負極活物質についても、実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表1に示す。また、XPSを行ったところ、比較例1−2〜1−5では、ピークP1が得られた。ピークP1を解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。一方、比較例1−1ではピークP4が得られ、これを解析したところ、表面汚染炭素のピークP2のみが得られた。
【0090】
また、二次電池についても、実施例1−1〜1−10と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。これらの結果についても表1および図6に示す。
【0091】
表1および図6から分かるように、負極活物質における炭素の含有量が11.9質量%以上29.7質量以下である実施例1−1〜1−10によれば、炭素の含有量がこの範囲外である比較例1−1〜1−5よりも容量維持率を飛躍的に向上させることができた。また、初回充電容量も向上させることができた。
【0092】
更に、負極活物質における炭素の含有量が13.9質量%以上27.7質量%以下の範囲内、更には15.8質量%以上23.8質量%以下の範囲内においてより高い値が得られた。
【0093】
すなわち、炭素の含有量を11.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内とすれば、容量およびサイクル特性を向上させることができ、13.9質量%以上27.7質量%以下の範囲内、更には15.8質量%以上23.8質量%以下の範囲内とすればより好ましいことが分かった。
【0094】
(実施例2−1〜2−8)
スズと鉄と炭素との原料比を表2に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−10と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。具体的には、炭素の原料比を30.0質量%で一定とし、Fe/(Sn+Fe) 比を26質量%以上48質量%以下の範囲内で変化させた。
【0095】
【表2】
【0096】
また、実施例2−1〜2−8に対する比較例2−1〜2−5として、Fe/(Sn+Fe) 比を表2に示したように変化させたことを除き、他は実施例2−1〜2−10と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。比較例2−1〜2−5における原料のFe/(Sn+Fe) 比は、それぞれ19質量%,21質量%,25質量%,49質量%、または50質量%とした。
【0097】
得られた実施例2−1〜2−8および比較例2−1〜2−5の負極活物質についても、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、実施例1−1〜1−10と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表2および図7に示す。
【0098】
表2および図7から分かるように、合成した負極活物質のFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とした実施例1−10,2−1〜2−8によれば、これらの範囲外とした比較例2−1〜2−5よりも、容量維持率および初回充電容量を共に向上させることができた。特に、Fe/(Sn+Fe) 比を29.4質量%以上45.4質量%以下とした実施例1−10,2−2〜2−7において、より高い値が得られた。
【0099】
すなわち、負極活物質におけるFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とするようにすれば、容量およびサイクル特性を向上させることができ、29.4質量%以上45.4質量%以下とするようにすれば、より好ましいことが分かった。
【0100】
(実施例3−1〜3−8)
スズと鉄と炭素との原料比を表3に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−10と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。具体的には、炭素の原料比を20.0質量%で一定とし、Fe/(Sn+Fe) 比を26質量%以上48質量%以下の範囲内で変化させた。
【0101】
【表3】
【0102】
また、実施例3−1〜3−8に対する比較例3−1〜3−5として、Fe/(Sn+Fe) 比を表3に示したように変化させたことを除き、他は実施例3−1〜3−8と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。比較例3−1〜3−5における原料のFe/(Sn+Fe) 比は、それぞれ19質量%,21質量%,25質量%,49質量%,50質量%とした。
【0103】
実施例3−1〜3−8および比較例3−1〜3−5の負極活物質についても、実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表3に示す。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、実施例1−1〜1−10と同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表3および図8に示す。
【0104】
表3および図8から分かるように、合成した負極活物質のFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とした実施例1−5,3−1〜3−8によれば、これらの範囲外とした比較例3−1〜3−5よりも、容量維持率および初回充電容量を共に向上させることができた。特に、Fe/(Sn+Fe) 比を29.4質量%以上45.4質量%以下とした実施例1−5,3−2〜3−7において、より高い値が得られた。
【0105】
すなわち、負極活物質におけるFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とするようにすれば、炭素の含有量が19.8質量%の場合にも、容量およびサイクル特性を向上させることができ、29.4質量%以上45.4質量%以下とするようにすれば、より好ましいことが分かった。
【0106】
(実施例4−1〜4−8)
スズと鉄と炭素との原料比を表4に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−1〜1−10と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。具体的には、炭素の原料比を12.0質量%で一定とし、Fe/(Sn+Fe) 比を26質量%以上48質量%以下の範囲内で変化させた。
【0107】
【表4】
【0108】
また、実施例4−1〜4−8に対する比較例4−1〜4−5として、Fe/(Sn+Fe) 比を表4に示したように変化させたことを除き、他は実施例4−1〜4−8と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。比較例4−1〜4−5における原料のFe/(Sn+Fe) 比は、それぞれ19質量%,21質量%,25質量%,59質量%,または50質量%とした。
【0109】
得られた実施例4−1〜4−8および比較例4−1〜4−5の負極活物質についても、実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。結果を表4に示す。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表4および図9に示す。
【0110】
表4および図9から分かるように、合成した負極活物質のFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とした実施例1−1,4−1〜4−8によれば、これらの範囲外とした比較例4−1〜4−5よりも、容量維持率および初回充電容量を共に向上させることができた。特に、Fe/(Sn+Fe) 比を29.3質量%以上45.4質量%以下とした実施例1−1,4−2〜4−7において、より高い値が得られた。
【0111】
すなわち、負極活物質におけるFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とするようにすれば、炭素の含有量が11.9質量%の場合にも、容量およびサイクル特性を向上させることができ、29.3質量%以上45.4質量%以下とするようにすれば、より好ましいことが分かった。
【0112】
(実施例5−1〜5−14)
原料として、更にケイ素粉末を用い、スズと鉄と炭素とケイ素との原料比を表5に示したように変化させたことを除き、他は実施例1−5と同様にして負極活物質および二次電池を作製した。具体的には、ケイ素粉末の原料比を0.2質量%以上10.0質量%以下の範囲内で変化させ、Fe/(Sn+Fe) 比を32.0質量%とした。実施例5−1〜5−14の負極活物質についても実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表5に示す。なお、ケイ素の含有量はICP発光分析により測定した。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表5に示す。
【0113】
【表5】
【0114】
表5から分かるように、ケイ素を含む実施例5−1〜5−14によれば、ケイ素を含まない実施例1−5よりも初回充電容量を向上させることができた。但し、ケイ素の含有量が多くなるに従い、容量維持率は低下する傾向が見られた。
【0115】
すなわち、負極活物質にケイ素を含有するようにすれば、容量を向上させることができ、その含有量は0.5質量%以上7.9質量%以下の範囲内が好ましいことが分かった。
【0116】
(実施例6−1〜6−18)
実施例6−1〜6−16では、原料に第1成分としてアルミニウム粉末,チタン粉末,バナジウム粉末,クロム粉末,ニオブ粉末およびタンタル粉末からなる群のうちの少なくとも1種と、第2成分としてコバルト粉末,ニッケル粉末,銅粉末,亜鉛粉末,ガリウム粉末およびインジウム粉末のうちの少なくとも1種とを用い、スズと鉄と炭素と第1成分と第2成分との原料比を表6に示したようにしたことを除き、他は実施例1−5と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。また、実施例6−17では、原料に第1成分としてチタン粉末を用意し、スズと鉄と炭素とチタンとの原料比を表6に示したようにしたことを除き、他は実施例1−5と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。更に、実施例6−18では、原料に第2成分として亜鉛粉末を用意し、スズと鉄と炭素と亜鉛との原料比を表6に示したようにしたことを除き、他は実施例1−5と同様にして負極活物質を合成し、二次電池を作製した。これらの負極活物質についても実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表6に示す。なお、アルミニウム,チタン,バナジウム,クロム,ニオブ,タンタル,コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウムおよびインジウムの含有量は、ICP発光分析により測定した。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。更に、二次電池についても、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表6に示す。
【0117】
【表6】
【0118】
表6から分かるように、第1成分と第2成分とを含む実施例6−1〜6−16によれば、これらを含まない実施例1−5、または第1成分のみあるいは第2成分のみを含む実施例6−17,6−18よりも、容量維持率が向上した。
【0119】
また、第1成分の含有量が0.1質量%以上9.9質量%以下、第2成分の含有量が0.5質量%以上14.9質量%以下である実施例6−1〜6−14によれば、初回充電容量についても高い値が得られた。
【0120】
すなわち、負極活物質にアルミニウム,チタン,バナジウム,クロム,ニオブおよびタンタルからなる群のうちの少なくとも1種と、コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウムおよびインジウムからなる群のうちの少なくとも1種とを含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができ、これらの含有量をそれぞれ0.1質量%以上9.9質量%以下、0.5質量%以上14.9質量%以下とするようにすれば、高い容量を得ることができることが分かった。
【0121】
(実施例7−1〜7−19)
溶媒として、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステルである4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)と、炭酸エチレン(EC)と、炭酸プロピレン(PC)と、炭酸ジメチル(DMC)とのうちの2種以上を用い、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量を0質量%以上80.0質量%以下の範囲内で変化させたことを除き、他は実施例1−5と同様にして二次電池を作製した。各溶媒の具体的な組成については、表7に示したようにした。
【0122】
【表7】
【0123】
実施例7−1〜7−19の二次電池について、実施例1−1〜1−10と同様にしてサイクル特性を調べた。結果を表7に示す。
【0124】
表7から分かるように、容量維持率は4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量が増加するに伴い大きくなり、極大値を示したのち低下した。
【0125】
すなわち、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0126】
(実施例8−1〜8−8,9−1)
実施例8−1〜8−8では、溶媒として、環式硫黄化合物である1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシド(ES)と、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステルである4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、炭酸ジメチルとを用い、溶媒における1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドの含有量を0.1質量%以上10.0質量%以下の範囲内で変化させたことを除き、他は実施例1−5と同様にして二次電池を作製した。各溶媒の具体的な組成については、表8に示したようにした。
【0127】
【表8】
【0128】
また、実施例9−1では、溶媒として、環式硫黄化合物である1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドと、炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、炭酸ジメチルとを用いたことを除き、他は実施例1−5と同様にして二次電池を作製した。溶媒における1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドの含有量は3.0質量%とし、その他の溶媒については、表8に示したようにした。
【0129】
実施例8−1〜8−8,9−1の二次電池について、実施例1−1〜1−10と同様にしてサイクル特性を調べた。結果を実施例7−1,7−6の結果と共に表8に示す。
【0130】
表8から分かるように、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いた実施例7−6,8−1〜8−8では、容量維持率は1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドの含有量が増加するに伴い大きくなり、極大値を示したのち低下した。一方、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いなかった実施例7−1,9−1では、1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドを用いることによる容量維持率向上の効果は観られなかった。
【0131】
すなわち、電解液に、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体に加えて、環式硫黄化合物を含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができ、溶媒における環式硫黄化合物の含有量を0.1質量%以上10質量%以下とするようにすれば、好ましいことが分かった。
【0132】
(実施例10−1〜10−10)
原料としてスズ粉末と鉄粉末と銀粉末と炭素粉末とを用意し、スズ粉末と鉄粉末と銀粉末とを合金化してスズ・鉄・銀合金粉末を作製したのち、この合金粉末に炭素粉末を加えて乾式混合した。その際、原料の割合は、表9に示したように、スズと鉄との合計に対する鉄の割合を32質量%、銀の原料比を3.0質量%で一定とすると共に、炭素の原料比を12質量%以上30質量%以下の範囲内で変化させた。続いて、この混合物20gを直径9mmの鋼玉約400gと共に、伊藤製作所製の遊星ボールミルの反応容器中にセットした。次いで、反応容器中をアルゴン雰囲気に置換し、毎分250回転の回転速度による10分間の運転と、10分間の休止とを運転時間の合計が30時間になるまで繰り返した。そののち、反応容器を室温まで冷却して合成された負極活物質粉末を取り出し、280メッシュのふるいを通して粗粉を取り除いた。
【0133】
【表9】
【0134】
得られた負極活物質について実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。なお、銀の含有量は、ICP発光分析により測定した。これらの分析値を表9に示す。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質中の炭素が他の元素と結合していることが確認された。
【0135】
実施例10−1〜10−10に対する比較例10−1として、原料として炭素粉末を用いなかったことを除き、他は実施例10−1〜10−10と同様にして負極活物質を合成した。また、比較例10−2〜10−5として、炭素粉末の原料比を表9に示したように変化させたことを除き、他は実施例10−1〜10−10と同様にして負極活物質を合成した。比較例10−1〜10−5の負極活物質についても、実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表9に示す。また、XPSを行ったところ、比較例10−2〜10−5では、ピークP1が得られた。ピークP1を解析したところ、実施例10−1〜10−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。一方、比較例10−1ではピークP4が得られ、これを解析したところ、表面汚染炭素のピークP2のみが得られた。
【0136】
次に、実施例10−1〜10−10および比較例10−1〜10−5の負極活物質粉末を用いて、実施例1−1〜1−10と同様にして二次電池を作製し、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表9および図10に示す。
【0137】
表9および図10から分かるように、負極活物質における炭素の含有量が11.9質量%以上29.7質量以下である実施例10−1〜10−10によれば、炭素の含有量がこの範囲外である比較例10−1〜10−5よりも容量維持率を飛躍的に向上させることができた。また、初回充電容量も向上させることができた。
【0138】
更に、負極活物質における炭素の含有量が13.9質量%以上27.7質量%以下の範囲内、更には15.8質量%以上23.8質量%以下の範囲内においてより高い値が得られた。
【0139】
すなわち、負極活物質に銀を含む場合にも、炭素の含有量を11.9質量%以上29.7質量%以下の範囲内とすれば、容量およびサイクル特性を向上させることができ、13.9質量%以上27.7質量%以下の範囲内、更には15.8質量%以上23.8質量%以下の範囲内とすればより好ましいことが分かった。
【0140】
(実施例11−1〜11−8)
スズと鉄と銀と炭素との原料比を表10に示したように変化させたことを除き、他は実施例10−1〜10−10と同様にして負極活物質を合成した。具体的には、銀の原料比を3.0質量%,炭素の原料比を30.0質量%で一定とし、Fe/(Sn+Fe) 比を26質量%以上48質量%以下の範囲内で変化させた。
【0141】
【表10】
【0142】
また、実施例11−1〜11−8に対する比較例11−1〜11−5として、Fe/(Sn+Fe) 比を表10に示したように変化させたことを除き、他は実施例11−1〜11−10と同様にして負極活物質を合成した。比較例11−1〜11−5におけるFe/(Sn+Fe) 比は、それぞれ19質量%,21質量%,25質量%,49質量%、または50質量%とした。
【0143】
得られた実施例11−1〜11−8および比較例11−1〜11−5の負極活物質についても、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。
【0144】
次に、実施例11−1〜11−8および比較例11−1〜11−5の負極活物質粉末を用いて、実施例1−1〜1−10と同様にして二次電池を作製し、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表10および図11に示す。
【0145】
表10および図11から分かるように、合成した負極活物質のFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.5質量%以下とした実施例10−10,11−1〜11−8によれば、これらの範囲外とした比較例11−1〜11−5よりも、容量維持率および初回充電容量を共に向上させることができた。特に、Fe/(Sn+Fe) 比を29.4質量%以上45.5質量%以下とした実施例10−10,11−2〜11−7において、より高い値が得られた。
【0146】
すなわち、負極活物質に銀を含む場合にも、負極活物質におけるFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.5質量%以下とするようにすれば、容量およびサイクル特性を向上させることができ、29.4質量%以上45.5質量%以下とするようにすれば、より好ましいことが分かった。
【0147】
(実施例12−1〜12−8)
スズと鉄と銀と炭素との原料比を表11に示したように変化させたことを除き、他は実施例10−1〜10−10と同様にして負極活物質を合成した。具体的には、銀の原料比を3.0質量%,炭素の原料比を20.0質量%で一定とし、Fe/(Sn+Fe) 比を26質量%以上48質量%以下の範囲内で変化させた。
【0148】
【表11】
【0149】
また、実施例12−1〜12−8に対する比較例12−1〜12−5として、Fe/(Sn+Fe) 比を表11に示したように変化させたことを除き、他は実施例12−1〜12−8と同様にして負極活物質を合成した。比較例12−1〜12−5におけるFe/(Sn+Fe) 比は、それぞれ19質量%,21質量%,25質量%,49質量%,50質量%とした。
【0150】
実施例12−1〜12−8および比較例12−1〜12−5の負極活物質についても、実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表3に示す。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。
【0151】
次に、実施例12−1〜12−8および比較例12−1〜12−5の負極活物質粉末を用いて、実施例1−1〜1−10と同様にして二次電池を作製し、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表11および図12に示す。
【0152】
表11および図12から分かるように、合成した負極活物質のFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とした実施例10−5,12−1〜12−8によれば、これらの範囲外とした比較例12−1〜12−5よりも、容量維持率および初回充電容量を共に向上させることができた。特に、Fe/(Sn+Fe) 比を29.4質量%以上45.5質量%以下とした実施例10−5,12−2〜12−7において、より高い値が得られた。
【0153】
すなわち、負極活物質におけるFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とするようにすれば、炭素の含有量が19.8質量%の場合にも、容量およびサイクル特性を向上させることができ、29.4質量%以上45.5質量%以下とするようにすれば、より好ましいことが分かった。
【0154】
(実施例13−1〜13−8)
スズと鉄と銀と炭素との原料比を表12に示したように変化させたことを除き、他は実施例10−1〜10−10と同様にして負極活物質を合成した。具体的には、銀の原料比を3.0質量%,炭素の原料比を12.0質量%で一定とし、Fe/(Sn+Fe) 比を26質量%以上48質量%以下の範囲内で変化させた。
【0155】
【表12】
【0156】
また、実施例13−1〜13−8に対する比較例13−1〜13−5として、Fe/(Sn+Fe) 比を表12に示したように変化させたことを除き、他は実施例13−1〜13−8と同様にして負極活物質を合成した。比較例13−1〜13−5におけるFe/(Sn+Fe) 比は、それぞれ19質量%,21質量%,25質量%,59質量%,または50質量%とした。
【0157】
実施例13−1〜13−8および比較例13−1〜13−5の負極活物質についても、実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。結果を表12に示す。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。
【0158】
次に、実施例13−1〜13−8および比較例13−1〜13−5の負極活物質粉末を用いて、実施例1−1〜1−10と同様にして二次電池を作製し、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表12および図13に示す。
【0159】
表12および図13から分かるように、合成した負極活物質のFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とした実施例10−1,13−1〜13−8によれば、これらの範囲外とした比較例13−1〜13−5よりも、容量維持率および初回充電容量を共に向上させることができた。特に、Fe/(Sn+Fe) 比を29.5質量%以上45.4質量%以下とした実施例10−1,13−2〜13−7において、より高い値が得られた。
【0160】
すなわち、負極活物質におけるFe/(Sn+Fe) 比を26.4質量%以上48.4質量%以下とするようにすれば、炭素の含有量が11.9質量%の場合にも、容量およびサイクル特性を向上させることができ、29.5質量%以上45.4質量%以下とするようにすれば、より好ましいことが分かった。
【0161】
(実施例14−1〜14−9)
スズと鉄と銀と炭素との原料比を表13に示したように変化させたことを除き、他は実施例10−1〜10−10と同様にして負極活物質を合成した。具体的には、銀の原料比を0.1質量%以上15.0質量%以下の範囲内で変化させ、Fe/(Sn+Fe) 比を32.0質量%とした。
【0162】
【表13】
【0163】
実施例14−1〜14−9の負極活物質についても、実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。結果を表13に示す。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。
【0164】
次に、実施例14−1〜14−9の負極活物質粉末を用いて、実施例1−1〜1−10と同様にして二次電池を作製し、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を実施例1−5,10−5の結果と共に表13に示す。
【0165】
表13から分かるように、銀を含む実施例10−5,14−1〜14−9によれば、銀を含まない実施例1−5よりも容量維持率を向上させることができた。但し、銀の含有量が多くなるに従い、初回充電容量は低下する傾向が見られた。
【0166】
すなわち、負極活物質に銀を含むようにすれば、サイクル特性を向上させることができ、その含有量は、0.1質量%以上9.9質量%以下の範囲内が好ましく、1.0質量%以上7.4質量%以下の範囲内がより好ましく、特に、2.0質量%以上5.0質量%以下の範囲内が望ましいことが分かった。
【0167】
(実施例15−1〜15−14)
原料として、更にケイ素粉末を用い、スズと鉄と銀と炭素とケイ素との原料比を表14に示したように変化させたことを除き、他は実施例10−5と同様にして負極活物質を合成した。具体的には、ケイ素粉末の原料比を0.2質量%以上10.0質量%以下の範囲内で変化させ、Fe/(Sn+Fe) 比を32.0質量%とした。実施例15−1〜15−14の負極活物質についても実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表14に示す。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。
【0168】
【表14】
【0169】
表14から分かるように、ケイ素を含む実施例15−1〜15−14によれば、ケイ素を含まない実施例10−5よりも初回充電容量を向上させることができた。但し、ケイ素の含有量が多くなるに従い、容量維持率は低下する傾向が見られた。
【0170】
すなわち、負極活物質にケイ素を含有するようにすれば、容量を向上させることができ、その含有量は0.5質量%以上7.9質量%以下の範囲内が好ましいことが分かった。
【0171】
(実施例16−1〜16−18)
実施例6−1〜6−16では、原料に第1成分としてアルミニウム粉末,チタン粉末,バナジウム粉末,クロム粉末,ニオブ粉末およびタンタル粉末からなる群のうちの少なくとも1種と、第2成分としてコバルト粉末,ニッケル粉末,銅粉末,亜鉛粉末,ガリウム粉末およびインジウム粉末のうちの少なくとも1種とを用い、スズと鉄と銀と炭素と第1成分と第2成分との原料比を表15に示したようにしたことを除き、他は実施例10−5と同様にして負極活物質を合成した。また、実施例16−17では、原料に第1成分としてチタン粉末を用意し、スズと鉄と銀と炭素とチタンとの原料比を表15に示したようにしたことを除き、他は実施例10−5と同様にして負極活物質を合成した。更に、実施例6−18では、原料に第2成分として亜鉛粉末を用意し、スズと鉄と銀と炭素と亜鉛との原料比を表15に示したようにしたことを除き、他は実施例10−5と同様にして負極活物質を合成した。これらの負極活物質についても実施例1−1〜1−10と同様にして組成の分析を行った。それらの結果を表15に示す。また、XPSを行ったところピークP1が得られた。得られたピークを解析したところ、実施例1−1〜1−10と同様に表面汚染炭素のピークP2と、負極活物質中におけるC1sのピークP3とが得られ、ピークP3は、いずれも284.5eVよりも低い領域に得られた。すなわち、負極活物質に含まれる炭素の少なくとも一部は、他の元素と結合していることが確認された。
【0172】
【表15】
【0173】
次に、実施例16−1〜16−18の負極活物質粉末を用いて、実施例1−1〜1−10と同様にして二次電池を作製し、同様にして初回充電容量およびサイクル特性を測定した。それらの結果を表15に示す。
【0174】
表15から分かるように、第1成分と第2成分とを含む実施例16−1〜16−16によれば、これらを含まない実施例10−5、または第1成分のみあるいは第2成分のみを含む実施例16−17,16−18よりも、容量維持率が向上した。
【0175】
また、第1成分の含有量が0.1質量%以上9.9質量%以下、第2成分の含有量が0.5質量%以上14.9質量%以下である実施例16−1〜16−14によれば、初回充電容量についても高い値が得られた。
【0176】
すなわち、銀を含む場合にも、負極活物質にアルミニウム,チタン,バナジウム,クロム,ニオブおよびタンタルからなる群のうちの少なくとも1種と、コバルト,ニッケル,銅,亜鉛,ガリウムおよびインジウムからなる群のうちの少なくとも1種とを含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができ、これらの含有量をそれぞれ0.1質量%以上9.9質量%以下、0.5質量%以上14.9質量%以下とするようにすれば、高い容量を得ることができることが分かった。
【0177】
(実施例17−1〜17−19)
溶媒として、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステルである4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、炭酸ジメチルとのうちの2種以上を用い、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量を0質量%以上80.0質量%以下の範囲内で変化させたことを除き、他は実施例10−5と同様にして二次電池を作製した。各溶媒の具体的な組成については、表16に示したようにした。
【0178】
【表16】
【0179】
実施例17−1〜17−19の二次電池について、実施例1−1〜1−10と同様にしてサイクル特性を調べた。結果を表16に示す。
【0180】
表16から分かるように、容量維持率は4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンの含有量が増加するに伴い大きくなり、極大値を示したのち低下した。
【0181】
すなわち、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含むようにすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。
【0182】
(実施例18−1〜18−8,19−1)
実施例18−1〜18−8では、溶媒として、環式硫黄化合物である1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドと、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステルである4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンと、炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、炭酸ジメチルとを用い、溶媒における1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドの含有量を0.1質量%以上10.0質量%以下の範囲内で変化させたことを除き、他は実施例10−5と同様にして二次電池を作製した。各溶媒の具体的な組成については、表17示したようにした。
【0183】
また、実施例19−1では、溶媒として、環式硫黄化合物である1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドと、炭酸エチレンと、炭酸プロピレンと、炭酸ジメチルとを用いたことを除き、他は実施例10−5と同様にして二次電池を作製した。溶媒における1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドの含有量は3.0質量%とし、その他の溶媒については、表17に示したようにした。
【0184】
実施例18−1〜18−8,19−1の二次電池について、実施例1−1〜1−10と同様にしてサイクル特性を調べた。結果を実施例17−1,17−6の結果と共に表17に示す。
【0185】
【表17】
【0186】
表17から分かるように、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いた実施例17−6,18−1〜18−8では、容量維持率は1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドの含有量が増加するに伴い大きくなり、極大値を示したのち低下した。一方、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンを用いなかった実施例17−1,19−1では、1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドを用いることによる容量維持率向上の効果は観られなかった。
【0187】
すなわち、電解液に、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体に加えて、環式硫黄化合物を含むようにすれば、サイクル特性をより向上させることができ、溶媒における環式硫黄化合物の含有量を0.1質量%以上10質量%以下とするようにすれば、好ましいことが分かった。
【0188】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、コイン型,および巻回構造を有する二次電池を具体的に挙げて説明したが、本発明は、ボタン型,シート型あるいは角型などの他の形状を有する二次電池、または正極および負極を複数積層した他の積層構造を有する二次電池についても同様に適用することができる。
【0189】
また、実施の形態および実施例では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明したが、負極活物質と反応可能であればナトリウム(Na)あるいはカリウム(K)などの長周期型周期表における他の1族の元素、またはマグネシウム(Mg)あるいはカルシウム(Ca)などの長周期型周期表における2族の元素、またはアルミニウムなどの他の軽金属、またはリチウムあるいはこれらの合金を用いる場合についても、本発明を適用することができ、同様の効果を得ることができる。その際、電極反応物質を吸蔵および放出することが可能な正極活物質あるいは非水溶媒などは、その電極反応物質に応じて選択される。
【0190】
更に、上記実施の形態および実施例では、電解質として電解液を用いる場合について説明し、更に上記実施の形態では、電解液を高分子化合物に保持させたゲル状電解質を用いる場合についても説明したが、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、例えば、イオン伝導性セラミックス,イオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などのイオン伝導性無機化合物、または他の無機化合物、またはこれらの無機化合物と電解液あるいはゲル状電解質とを混合したものが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】本発明の一実施の形態に係る二次電池の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した二次電池における巻回電極体の一部を拡大して表す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態に係る他の二次電池の構成を表す分解斜視図である。
【図4】図3に示した巻回電極体のI−I線に沿った構成を表す断面図である。
【図5】実施例で作製したコイン型電池の構成を示す断面図である。
【図6】負極活物質における炭素の含有量と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す特性図である。
【図7】負極活物質におけるスズと鉄との合計に対する鉄の割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す特性図である。
【図8】負極活物質におけるスズと鉄との合計に対する鉄の割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図9】負極活物質におけるスズと鉄との合計に対する鉄の割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図10】負極活物質における炭素の含有量と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図11】負極活物質におけるスズと鉄との合計に対する鉄の割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図12】負極活物質におけるスズと鉄との合計に対する鉄の割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【図13】負極活物質におけるスズと鉄との合計に対する鉄の割合と、容量維持率および初回充電容量との関係を表す他の特性図である。
【符号の説明】
【0192】
11…電池缶、12,13…絶縁板、14…電池蓋、15…安全弁機構、15A…ディスク板、16…熱感抵抗素子、17,56…ガスケット、20,30…巻回電極体、21,33…正極、21A, 33A…正極集電体、21B,33B…正極活物質層、22,34…負極、22A,34A…負極集電体、22B,34B…負極活物質層、23,35,55…セパレータ、24…センターピン、25,31…正極リード、26,32…負極リード、36…電解質層、37…保護テープ、40,52,54…外装部材、41…密着フィルム、51…試験極、53…対極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成元素として、スズ(Sn)と、鉄(Fe)と、炭素(C)とを少なくとも含み、
炭素の含有量が11.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズと鉄との合計に対する鉄の割合が26.4質量%以上48.5質量%以下である
ことを特徴とする負極活物質。
【請求項2】
更に、構成元素として、銀(Ag)を含むことを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
【請求項3】
銀の含有量は、0.1質量%以上9.9質量%以下であることを特徴とする請求項2記載の負極活物質。
【請求項4】
更に、構成元素として、アルミニウム(Al),チタン(Ti),バナジウム(V),クロム(Cr), ニオブ(Nb)およびタンタル(Ta)からなる群のうちの少なくとも1種よりなる第1成分と、コバルト(Co),ニッケル(Ni),銅(Cu),亜鉛(Zn),ガリウム(Ga)およびインジウム(In)からなる群のうちの少なくとも1種よりなる第2成分とを含むことを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
【請求項5】
前記第1成分の含有量は、0.1質量%以上9.9質量%以下であることを特徴とする請求項4記載の負極活物質。
【請求項6】
前記第2成分の含有量は、0.5質量%以上14.9質量%以下であることを特徴とする請求項4記載の負極活物質。
【請求項7】
更に、構成元素として、ケイ素(Si)を含むことを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
【請求項8】
ケイ素の含有量は、0.5質量%以上7.9質量%以下であることを特徴とする請求項7記載の負極活物質。
【請求項9】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記負極は、構成元素として、スズ(Sn)と、鉄(Fe)と、炭素(C)とを少なくとも含む負極活物質を含有し、
前記負極活物質における炭素の含有量は11.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズと鉄との合計に対する鉄の割合が26.4質量%以上48.5質量%以下である
ことを特徴とする電池。
【請求項10】
前記負極活物質は、更に、構成元素として、銀(Ag)を含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項11】
前記負極活物質における銀の含有量は、0.1質量%以上9.9質量%以下であることを特徴とする請求項10記載の電池。
【請求項12】
前記負極活物質は、更に、構成元素として、アルミニウム(Al),チタン(Ti),バナジウム(V),クロム(Cr), ニオブ(Nb)およびタンタル(Ta)からなる群のうちの少なくとも1種よりなる第1成分と、コバルト(Co),ニッケル(Ni),銅(Cu),亜鉛(Zn),ガリウム(Ga)およびインジウム(In)からなる群のうちの少なくとも1種よりなる第2成分とを含む
ことを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項13】
前記負極活物質における前記第1成分の含有量は、0.1質量%以上9.9質量%以下であることを特徴とする請求項12記載の電池。
【請求項14】
前記負極活物質における前記第2成分の含有量は、0.5質量%以上14.9質量%以下であることを特徴とする請求項12記載の電池。
【請求項15】
前記負極活物質は、更に、構成元素として、ケイ素(Si)を含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項16】
前記負極活物質におけるケイ素の含有量は、0.5質量%以上7.9質量%以下であることを特徴とする請求項15記載の負極活物質。
【請求項17】
前記電解質は、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含有する溶媒を含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項18】
溶媒における前記環式炭酸エステル誘導体の含有量は、0.1質量%以上80質量%以下であることを特徴とする請求項17記載の電池。
【請求項19】
前記溶媒は、更に環式硫黄化合物を含有することを特徴とする請求項17記載の電池。
【請求項20】
前記溶媒における前記環式硫黄化合物の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であることを特徴とする請求項19記載の電池。
【請求項21】
前記環式硫黄化合物は、化1に示した化合物を含むことを特徴とする請求項19記載の電池。
【化1】
(Rは、−(CH2 )n −で表される基、またはそれら少なくとも一部の水素を置換基で置換した基を表す。nは2,3または4である。)
【請求項22】
前記環式硫黄化合物は、化2に示した1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドおよびその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項19記載の電池。
【化2】
【請求項1】
構成元素として、スズ(Sn)と、鉄(Fe)と、炭素(C)とを少なくとも含み、
炭素の含有量が11.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズと鉄との合計に対する鉄の割合が26.4質量%以上48.5質量%以下である
ことを特徴とする負極活物質。
【請求項2】
更に、構成元素として、銀(Ag)を含むことを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
【請求項3】
銀の含有量は、0.1質量%以上9.9質量%以下であることを特徴とする請求項2記載の負極活物質。
【請求項4】
更に、構成元素として、アルミニウム(Al),チタン(Ti),バナジウム(V),クロム(Cr), ニオブ(Nb)およびタンタル(Ta)からなる群のうちの少なくとも1種よりなる第1成分と、コバルト(Co),ニッケル(Ni),銅(Cu),亜鉛(Zn),ガリウム(Ga)およびインジウム(In)からなる群のうちの少なくとも1種よりなる第2成分とを含むことを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
【請求項5】
前記第1成分の含有量は、0.1質量%以上9.9質量%以下であることを特徴とする請求項4記載の負極活物質。
【請求項6】
前記第2成分の含有量は、0.5質量%以上14.9質量%以下であることを特徴とする請求項4記載の負極活物質。
【請求項7】
更に、構成元素として、ケイ素(Si)を含むことを特徴とする請求項1記載の負極活物質。
【請求項8】
ケイ素の含有量は、0.5質量%以上7.9質量%以下であることを特徴とする請求項7記載の負極活物質。
【請求項9】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記負極は、構成元素として、スズ(Sn)と、鉄(Fe)と、炭素(C)とを少なくとも含む負極活物質を含有し、
前記負極活物質における炭素の含有量は11.9質量%以上29.7質量%以下であり、かつスズと鉄との合計に対する鉄の割合が26.4質量%以上48.5質量%以下である
ことを特徴とする電池。
【請求項10】
前記負極活物質は、更に、構成元素として、銀(Ag)を含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項11】
前記負極活物質における銀の含有量は、0.1質量%以上9.9質量%以下であることを特徴とする請求項10記載の電池。
【請求項12】
前記負極活物質は、更に、構成元素として、アルミニウム(Al),チタン(Ti),バナジウム(V),クロム(Cr), ニオブ(Nb)およびタンタル(Ta)からなる群のうちの少なくとも1種よりなる第1成分と、コバルト(Co),ニッケル(Ni),銅(Cu),亜鉛(Zn),ガリウム(Ga)およびインジウム(In)からなる群のうちの少なくとも1種よりなる第2成分とを含む
ことを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項13】
前記負極活物質における前記第1成分の含有量は、0.1質量%以上9.9質量%以下であることを特徴とする請求項12記載の電池。
【請求項14】
前記負極活物質における前記第2成分の含有量は、0.5質量%以上14.9質量%以下であることを特徴とする請求項12記載の電池。
【請求項15】
前記負極活物質は、更に、構成元素として、ケイ素(Si)を含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項16】
前記負極活物質におけるケイ素の含有量は、0.5質量%以上7.9質量%以下であることを特徴とする請求項15記載の負極活物質。
【請求項17】
前記電解質は、ハロゲン原子を有する環式炭酸エステル誘導体を含有する溶媒を含むことを特徴とする請求項9記載の電池。
【請求項18】
溶媒における前記環式炭酸エステル誘導体の含有量は、0.1質量%以上80質量%以下であることを特徴とする請求項17記載の電池。
【請求項19】
前記溶媒は、更に環式硫黄化合物を含有することを特徴とする請求項17記載の電池。
【請求項20】
前記溶媒における前記環式硫黄化合物の含有量は、0.1質量%以上10質量%以下であることを特徴とする請求項19記載の電池。
【請求項21】
前記環式硫黄化合物は、化1に示した化合物を含むことを特徴とする請求項19記載の電池。
【化1】
(Rは、−(CH2 )n −で表される基、またはそれら少なくとも一部の水素を置換基で置換した基を表す。nは2,3または4である。)
【請求項22】
前記環式硫黄化合物は、化2に示した1,3,2−ジオキサチオラン−2−オキシドおよびその誘導体からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項19記載の電池。
【化2】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−128842(P2007−128842A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−13911(P2006−13911)
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月23日(2006.1.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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