説明

負極,電池およびそれらの製造方法

【課題】 サイクル特性を向上させることができる負極およびそれを用いた電池、ならびにそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】 構成元素としてSnを含む負極活物質粒子11を覆うように、鍍金により、Cuなどの金属材料よりなる負極集電体12が形成されている。充放電を行い負極活物質粒子11が膨張収縮しても、負極集電体12により負極活物質粒子11の形状崩壊を抑制することができると共に、負極活物質粒子11と負極集電体12との接触性を高くすることができ、集電性の低下を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スズを構成元素として含む負極活物質を用いた負極および電池、ならびにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイル機器の高性能化および多機能化に伴い、それらの電源である二次電池の高容量化が要求されている。この要求に応える二次電池としてはリチウムイオン二次電池があるが、現在実用化されているものは、負極に黒鉛を用いているので、電池容量は飽和状態にあり、大幅な高容量化は難しい。そこで、負極にスズ(Sn)あるいはスズ合金などを用いた高容量の負極について検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−171876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、スズあるいはスズ合金などは充放電に伴う膨張収縮が大きいので、微粉化、あるいは集電体から負極活物質層が脱落することにより、集電性が低下しサイクル特性が低下してしまうという問題があった。
【0004】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、集電性を向上させることにより、サイクル特性を向上させることができる負極および電池ならびそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による第1の負極は、スズを構成元素として含む負極活物質粒子と、この負極活物質粒子を内部に有する負極集電体とを有するものである。
【0006】
本発明による第2の負極は、スズを構成元素として含む負極活物質粒子と、この負極活物質粒子を被覆するように鍍金により形成された負極集電体とを有するものである。
【0007】
本発明による第3の負極は、粒子状の負極集電体と、この負極集電体を内部に有し、スズを構成元素として含む電極反応部とを有するものである。
【0008】
本発明による第4の負極は、粒子状の負極集電体と、この負極集電体を被覆するように鍍金により形成されたスズを構成元素として含む電極反応部とを有するものである。
【0009】
本発明による第1の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、負極は、スズを構成元素として含む負極活物質粒子と、この負極活物質粒子を内部に有する負極集電体とを有するものである。
【0010】
本発明による第2の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、負極は、スズを構成元素として含む負極活物質粒子と、この負極活物質粒子を被覆するように鍍金により形成された負極集電体とを有するものである。
【0011】
本発明による第3の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、負極は、粒子状の負極集電体と、この負極集電体を内部に有し、スズを構成元素として含む電極反応部とを有するものである。
【0012】
本発明による第4の電池は、正極および負極と共に電解質を備えたものであって、負極は、粒子状の負極集電体と、この負極集電体を被覆するように鍍金により形成されたスズを構成元素として含む電極反応部とを有するものである。
【0013】
本発明による第1の負極の製造方法は、基材上にスズを構成元素として含む負極活物質粒子を担持させ、鍍金により、負極活物質粒子を被覆するように負極集電体を形成する工程と、負極集電体を形成したのち、基材を剥離する工程とを含むものである。
【0014】
本発明による第2の負極の製造方法は、基材上に粒子状の負極集電体を担持させ、鍍金により、負極集電体を被覆するようにスズを構成元素として含む電極反応部を形成する工程と、電極反応部を形成したのち、基材を剥離する工程とを含むものである。
【0015】
本発明による第1の電池の製造方法は、正極および負極と共に電解質を備えた電池を製造するものであって、負極は、基材上にスズを構成元素として含む負極活物質粒子を担持させ、鍍金により、負極活物質粒子を被覆するように負極集電体を形成したのち、基材を剥離することにより形成するものである。
【0016】
本発明による第2の電池の製造方法は、正極および負極と共に電解質を備えた電池を製造するものであって、負極は、基材上に粒子状の負極集電体を担持させ、鍍金により、負極集電体を被覆するようにスズを構成元素として含む電極反応部を形成したのち、基材を剥離することにより形成するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1あるいは第2の負極によれば、負極集電体の内部に負極活物質粒子を有するように、または、負極集電体により負極活物質粒子を被覆するようにしたので、負極活物質粒子の形状崩壊を抑制することができると共に、負極活物質粒子と負極集電体との接触性を高くすることができ、負極活物質粒子の膨張収縮による集電性の低下を抑制することができる。また、本発明の第3あるいは第4の負極によれば、電極反応部の内部に粒子状の負極集電体を有するように、または、電極反応部により粒子状の負極集電体を被覆するようにしたので、負極集電体と電極反応部との接触性を高くすることができ、電極反応部の膨張収縮による集電性の低下を抑制することができる。よって、これらの負極を用いた本発明の第1ないし第4の電池によれば、優れたサイクル特性を得ることができる。また、例えば、電池に使用する集電体の体積比率を小さくすることができ、体積エネルギー密度を向上させることができる。
【0018】
特に、負極活物質粒子あるいは粒子状の負極集電体の平均粒径を0.01μm以上20μm以下の範囲内にするようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0019】
更に、負極活物質粒子と負極集電体、あるいは粒子状の負極集電体と電極反応部とが、界面の少なくとも一部において合金化しているようにすれば、これらの接触性をより向上させることができる。
【0020】
本発明の第1,第2の負極の製造方法、または第1,第2の電池の製造方法によれば、基材上に負極活物質粒子を担持させ、鍍金により負極集電体を形成するようにしたので、または、基材上に粒子状の負極集電体を担持させ、鍍金により電極反応部を形成するようにしたので、本発明の第1ないし第4の負極または第1ないし第4の電池を容易に製造することができる。
【0021】
また、アニール処理あるいは加圧処理を行うようにすれば、負極活物質粒子と負極集電体、あるいは負極集電体と電極反応部との界面の少なくとも一部を合金化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る負極10の断面構成を模式的に表したものである。
【0024】
この負極10は、スズを構成元素として含む負極活物質粒子11と、この負極活物質粒子11を内部に有する負極集電体12とを有している。これにより、負極活物質粒子11が電極反応により膨張収縮しても微粉化が抑制されると共に、負極活物質粒子11と負極集電体12との接触性が保たれ、集電性の低下が抑制されるようになっている。なお、負極活物質粒子11は、全てが負極集電体12の内部に存在している必要はなく、一部が負極集電体12の表面から露出していてもよい。
【0025】
負極活物質粒子11は、スズの単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体,共晶(共融混合物),金属間化合物あるいはそれらのうちの2種以上が共存するものがある
【0026】
スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素(Si),ニッケル(Ni),銅(Cu),鉄(Fe),コバルト(Co),マンガン(Mn),亜鉛(Zn),インジウム(In),銀(Ag),チタン(Ti),ゲルマニウム(Ge),ビスマス(Bi),アンチモン(Sb)およびクロム(Cr)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズの化合物としては、例えば、酸素(O)あるいは炭素(C)を含むものが挙げられ、スズに加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0027】
また、負極活物質粒子11は、負極集電体12と、それらの界面の少なくとも一部において合金化していることが好ましい。具体的には、界面において負極活物質粒子11の構成元素が負極集電体12に、または負極集電体12の構成元素が負極活物質粒子11に、またはそれらが互いに拡散していることが好ましい。接触性をより向上させることができるからである。
【0028】
負極活物質粒子11の平均粒径は、0.01μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましい。平均粒径が小さいと、比表面積の増大により電解液との副反応が促進され、負極活物質粒子11の周りに被膜が成長し、電極反応が阻害されてしまうからである。また、平均粒径が大きくても、比表面積が小さくなり、負極活物質粒子11と負極集電体12との接触面積の低下により接触性が低下して、容量が低下してしまうからである。
【0029】
負極集電体12は、例えば多孔質体よりなり、負極活物質粒子11とは部分的に接合していることが好ましい。負極活物質粒子11の反応性を向上させることができるからである。負極集電体12の構成材料としては、負極活物質粒子11により吸蔵および放出される電極反応物質に対する反応性が低い金属材料が好ましい。例えば、電極反応物質としてリチウムを用いる場合には、リチウムと金属間化合物を形成しない金属元素を含むものが好ましい。電極反応物質との反応性が高いと、電極反応によりに伴い負極集電体12も膨張収縮し、構造破壊が起こって、集電性が低下する他、負極活物質粒子11を支える能力が小さくなるからである。中でも、銅,ニッケル,鉄あるいはこれらの合金などは、電子伝導性も高いので好ましい。
【0030】
また、この負極10は、負極活物質粒子11と共にこれを結着するための結着材を含んでいてもよい。
【0031】
この負極10は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0032】
図2はその製造工程を順に表すものである。まず、例えば、負極活物質粒子11をN−メチル−ピロリドンなどの分散媒を用いて混合し、適当な粘度のスラリーを作製する。その際、負極活物質粒子11と共に結着材を分散させることが好ましい。続いて、図2(A)に示すように基材20を用意し、このスラリーを基材20の表面に塗布し乾燥させて、図2(B)に示したように塗布膜21を形成し、負極活物質粒子11を担持させる。基材20は、例えば、ステンレスなどの金属材料により構成することが好ましい。また、アクリル樹脂,フェノール樹脂,エポキシ樹脂,ポリエステルあるいはポリ塩化ビニル(PVC)などの樹脂材料により構成してもよく、これらに導電性物質を混合した電気伝導性樹脂、またはこれらの樹脂に触媒を担持させたもの、あるいはこれらの樹脂に導電性の膜を形成したものにより構成するようにしてもよい。
【0033】
次いで、鍍金法により、負極集電体12を形成する。鍍金法は、電解鍍金法あるいは無電解鍍金法などのいずれを用いてもよい。負極集電体12は、次のように形成される。まず、図2(C)に示したように、基材20と塗布膜21との間に、負極集電体12を構成する金属の粒子12Aが析出する。このとき、塗布膜21が基材20に対する遮蔽板となり、基材20の表面の電流密度が低下するので、析出する粒子12Aは小さく、緻密で均一な形状となる。
【0034】
続いて、図2(D)に示したように、粒子12Aは、塗布膜21の負極活物質粒子11に沿って析出し、更に図2(E)に示したように、塗布膜21の表面に析出する。このとき、塗布膜21の表面には、遮蔽板となるものがないので、電流密度が高く、析出する粒子12Aも大きくなる。
【0035】
負極集電体12を形成したのち、基材20から負極集電体12を剥離することにより、図1に示した負極10が完成する。なお、負極集電体12は、銅,ニッケルあるいは鉄により形成することが好ましい。基材20との密着力が低く、剥離し易いからである。また、負極集電体12を形成したのち、真空雰囲気中,大気雰囲気中,還元雰囲気中,酸化雰囲気中あるいは不活性雰囲気中において、アニール処理を行うことが好ましい。負極活物質粒子11と負極集電体12との界面の少なくとも一部を合金化することができるからである。更に、負極集電体12を形成したのち、加圧処理を行うようにしてもよい。体積エネルギー密度を向上させることができると共に、負極活物質粒子11と負極集電体12との接触性を向上させることができるからである。これらの処理は基材20を剥離する前でも剥離した後でもよく、それらの一方のみを行うようにしても両方を行うようにしてもよい。
【0036】
この負極10は、例えば、次のような二次電池に用いられる。なお、本実施の形態では、電極反応物質としてリチウムを用いる場合について説明する。
【0037】
図3は、その二次電池の構成を表すものである。この二次電池は、いわゆるコイン型といわれるものであり、外装カップ31内に収容された負極10と、外装缶32内に収容された正極33とが、セパレータ34を介して積層されたものである。外装カップ31および外装缶32の周縁部は絶縁性のガスケット35を介してかしめることにより密閉されている。外装カップ31および外装缶32は、例えば、ステンレスあるいはアルミニウム(Al)などの金属によりそれぞれ構成されている。
【0038】
正極33は、例えば、正極集電体33Aと、正極集電体33Aに設けられた正極活物質層33Bとを有している。正極集電体33Aは、例えば、アルミニウム,ニッケルあるいはステンレスなどにより構成されている。
【0039】
正極活物質層33Bは、例えば、正極活物質としてリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料のいずれか1種または2種以上を含んでおり、必要に応じて炭素材料などの導電剤およびポリフッ化ビニリデンなどの結着材を含んでいてもよい。リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極材料としては、例えば、一般式Lix MIO2 で表されるリチウム含有金属複合酸化物が好ましい。高容量化を図ることができるからである。なお、MIは1種類以上の遷移金属であり、例えばコバルト,ニッケルおよびマンガンからなる群のうちの少なくとも1種が好ましい。xは電池の充放電状態によって異なり、通常0.05≦x≦1.10の範囲内の値である。このようなリチウム含有金属複合酸化物の具体例としては、LiCoO2 あるいはLiNiO2 などが挙げられる。
【0040】
セパレータ34は、負極10と正極33とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものであり、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンにより構成されている。
【0041】
セパレータ34には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液は、例えば、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩であるリチウム塩とを含んでおり、必要に応じて各種添加剤を含んでいてもよい。このように電解液を用いるようにすれば、高いイオン伝導率を得ることができるので好ましい。溶媒としては、例えば、炭酸エチレン,炭酸プロピレン,炭酸ジメチル,炭酸ジエチルあるいは炭酸エチルメチル等の非水溶媒が挙げられる。溶媒は、いずれか1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0042】
リチウム塩としては、例えば、LiPF6 あるいはLiClO4 が挙げられる。リチウム塩は、いずれか1種を用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
この二次電池は、例えば、正極33、電解液が含浸されたセパレータ34および負極10を積層して、外装缶32と外装カップ31との中に入れ、それらをかしめることにより製造することができる。
【0044】
この二次電池では、充電を行うと、例えば、正極33からリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極10に吸蔵される。放電を行うと、例えば、負極10からリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極33に吸蔵される。この充放電に伴い負極活物質粒子11は大きく膨張収縮するが、負極活物質粒子11が負極集電体12の内部に存在しているので、負極活物質粒子11と負極集電体12との接触性が保たれる。
【0045】
本実施の形態に係る負極10は、次のようにして二次電池に用いてもよい。
【0046】
図4は、その二次電池を分解して表すものである。この二次電池は、正極リード41および負極リード42が取り付けられた電極巻回体40をフィルム状の外装部材50の内部に収容したものであり、小型化,軽量化および薄型化が可能となっている。
【0047】
正極リード41および負極リード42は、それぞれ、外装部材50の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード41および負極リード42は、例えば、アルミニウム,銅,ニッケルあるいはステンレスなどの金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
【0048】
外装部材50は、例えば、ナイロンフィルム,アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装部材50は、例えば、ポリエチレンフィルム側と電極巻回体40とが対向するように配設されており、各外縁部が融着あるいは接着剤により互いに密着されている。外装部材50と正極リード41および負極リード42との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム43が挿入されている。密着フィルム43は、正極リード41および負極リード42に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン,ポリプロピレン,変性ポリエチレンあるいは変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂により構成されている。
【0049】
なお、外装部材50は、上述したアルミラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム,ポリプロピレンなどの高分子フィルムあるいは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。
【0050】
図5は、図4に示した電極巻回体40のI−I線に沿った断面構造を表すものである。電極巻回体40は、負極10と正極44とをセパレータ45および電解質層46を介して積層し、巻回したものであり、最外周部は保護テープ47により保護されている。
【0051】
正極44は、正極集電体44Aの両面に正極活物質層44Bが設けられた構造を有している。正極集電体44A,正極活物質層44Bおよびセパレータ45の構成は、それぞれ上述した正極集電体33A,正極活物質層33Bおよびセパレータ34と同様である。
【0052】
電解質層46は、保持体に電解液を保持させたいわゆるゲル状の電解質により構成されている。ゲル状の電解質は高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池の漏液を防止することができるので好ましい。電解液(すなわち溶媒および電解質塩)の構成は、図3に示したコイン型の二次電池と同様である。
【0053】
保持体は、例えば高分子化合物により構成されている。高分子化合物としては、例えばポリフッ化ビニリデンまたはフッ化ビニリデンの共重合体が挙げられる。
【0054】
この二次電池は例えば次のようにして製造することができる。
【0055】
まず、正極44および負極10のそれぞれに、保持体に電解液が保持された電解質層46を形成する。次いで、正極集電体44Aの端部に正極リード41を取り付けると共に、負極10の端部に負極リード42を取り付ける。続いて、電解質層46が形成された正極44と負極10とをセパレータ45を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ47を接着して電極巻回体40を形成する。そののち、例えば、外装部材50の間に電極巻回体40を挟み込み、外装部材50の外縁部同士を熱融着などにより密着させて封入する。その際、正極リード41および負極リード42と外装部材50との間には密着フィルム43を挿入する。これにより、図4,5に示した二次電池が完成する。
【0056】
この二次電池の作用は、図3に示したコイン型の二次電池と同様である。
【0057】
このように本実施の形態によれば、負極集電体12の内部に負極活物質粒子11を有するように、または、負極集電体12により負極活物質粒子11を被覆するようにしたので、負極活物質粒子11の形状崩壊を抑制することができると共に、負極活物質粒子11と負極集電体12との接触性を高くすることができ、負極活物質粒子11の膨張収縮による集電性の低下を抑制することができる。よって、優れたサイクル特性を得ることができる。また、電池における負極集電体の体積比率を小さくすることができ、体積エネルギー密度を向上させることができる。
【0058】
特に、負極活物質粒子11の平均粒径を0.01μm以上20μm以下の範囲内にするようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0059】
更に、負極活物質粒子11と負極集電体12とが界面の少なくとも一部において合金化しているようにすれば、これらの接触性をより向上させることができる。
【0060】
(第2の実施の形態)
図6は、第2の実施の形態に係る負極60の断面構成を模式的に表したものである。
【0061】
この負極60は、粒子状の負極集電体61と、この負極集電体61を内部に有し、スズを構成元素として含む電極反応部62とを有している。これにより、電極反応部62が電極反応により膨張収縮しても、負極集電体61と電極反応部62との接触性が保たれ、集電性の低下が抑制されるようになっている。なお、負極集電体61は、全てが電極反応部62の内部に存在している必要はなく、一部が電極反応部62の表面から露出していてもよい。
【0062】
負極集電体61は、例えば、第1の実施の形態で説明した負極集電体12と同様の材料により構成されることが好ましい。また、負極集電体61は、電極反応部62と、界面の少なくとも一部において合金化していることが好ましい。接触性をより向上させることができるからである。
【0063】
負極集電体61の平均粒径は、0.01μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましい。平均粒径が小さいと、比表面積の増大により電解液との副反応が促進され、特性が低下してしまうからである。また、平均粒径が大きくても、比表面積が小さくなり、負極集電体61と電極反応部62との接触面積の低下により接触性が低下して、容量が低下してしまうからである。
【0064】
電極反応部62は、負極活物質として、スズを構成元素として含む材料を含有しており、例えば、第1の実施の形態で説明した負極活物質粒子11と同様の材料により構成されている。また、電極反応部62は、多孔質体よりなることが好ましい。電極反応部62の反応性を向上させることができるからである。
【0065】
この負極60は、更に、負極集電体61と共にこれを結着するための結着材を含んでいてもよい。
【0066】
この負極60は、例えば、次のようにして製造することができる。
【0067】
まず、例えば、粒子状の負極集電体61をN−メチル−ピロリドンなどの分散媒を用いて混合し、適当な粘度のスラリーを作製する。その際、負極集電体61と共に結着材を分散させることが好ましい。続いて、基材を用意し、このスラリーを基材の表面に塗布し乾燥させて塗布膜を形成し、負極集電体61を担持させる。基材には、例えば、第1の実施の形態と同様のものを用いることができる。
【0068】
次いで、鍍金法により、電極反応部62を形成する。その際、電極反応部62は、次のように形成される。まず、スズを構成元素として含む粒子が基材と塗布膜との間に析出する。このとき、塗布膜が基材に対する遮蔽板となり、基材の表面の電流密度が低下するので、析出する粒子は小さく緻密で均一な形状となる。続いて、粒子は塗布膜の負極集電体61に沿って析出し、更に塗布膜の表面に析出する。このとき、塗布膜の表面には、遮蔽板となるものがないので、電流密度が高く、析出する粒子も大きくなる。
【0069】
電極反応部62を形成したのち、基材から電極反応部62を剥離することにより、図6に示した負極60が完成する。また、電極反応部62を形成したのち、第1の実施の形態と同様にアニール処理を行うことが好ましい。負極集電体61と電極反応部62との界面の少なくとも一部を合金化することができるからである。更に、第1の実施の形態と同様に加圧処理を行うようにしてもよい。体積エネルギー密度を向上させることができると共に、負極集電体61と電極反応部62との接触性を向上させることができるからである。
【0070】
この負極60は、例えば、第1の実施の形態と同様にして二次電池に用いられ、同様に作用する。すなわち、この二次電池では、充放電に伴い電極反応部62が大きく膨張収縮するが、負極集電体61が電極反応部62の内部に存在しているので、負極集電体61と電極反応部62との接触性が保たれる。
【0071】
このように本実施の形態によれば、電極反応部62の内部に粒子状の負極集電体61を有するように、または、電極反応部62により粒子状の負極集電体61を被覆するようにしたので、負極集電体61と電極反応部62との接触性を高くすることができ、電極反応部62の膨張収縮による集電性の低下を抑制することができる。よって、優れたサイクル特性を得ることができる。また、電池における集電体の体積比率を小さくすることができ、体積エネルギー密度を向上させることができる。
【0072】
特に、負極集電体61の平均粒径を0.01μm以上20μm以下の範囲内にするようにすれば、より高い効果を得ることができる。
【0073】
更に、負極集電体61と電極反応部62とが界面の少なくとも一部において合金化しているようにすれば、これらの接触性をより向上させることができる。
【実施例】
【0074】
更に、本発明の具体的な実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0075】
(実施例1−1〜1−4)
図1に示した負極10を作製した。まず、負極活物質粒子11として平均粒径が1μmのスズ粒子を用意し、このスズ粒子に、結着材としてポリフッ化ビニリデンを10質量%となるように混合し、この混合物を分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて適当な粘度のスラリーとした。このスラリーを基材20に塗布して乾燥させ、塗布膜21を作製した。基材20には、厚み20μmのステンレス箔を用いた。続いて、塗布膜21が形成された基材20に鍍金法により銅を鍍金することにより、負極活物質粒子11を被覆して負極集電体12を形成した。鍍金には、pH=0.5の鍍金液を用いた。そののち、この負極活物質粒子11を被覆した負極集電体12から基材20を剥離し、流水で水洗いをしたのち、真空乾燥を行うことにより負極10を作製した。なお、更に実施例1−2では、真空乾燥したのち200℃で10時間のアニール処理を行い、実施例1−3では、真空乾燥したのち加圧処理を行い、実施例1−4では、真空乾燥したのち200℃で10時間のアニール処理と、加圧処理とを行った。
【0076】
作製した負極10について、ミクロトームにより切り出し、走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope;SEM)により断面を観察した。図7は、負極10の断面構成を表すSEM写真であり、図8は、図7の断面構成をハッチングにより分別して表したものである。また、EDX(エネルギー分散型X線分析装置)により構成を調べたところ、図8において、右斜下線により表される部分は銅よりなり、右斜上線により表される部分はスズよりなることが確認された。すなわち、スズ粒子が銅の内部に存在していることが分かった。
【0077】
また、負極10について、作製した際に基材20に接触していた側の面と接触していない表面側の面とを走査電子顕微鏡により観察した。図9は、負極10の基材20に接触していた面のSEM写真であり、図10は、接触していない表面側の面のSEM写真である。これらのSEM写真から分かるように、基材20に接触していた面は、接触していない表面側の面よりも、粒子が小さく、緻密で均一な形状となっていた。
【0078】
実施例1−1〜1−4に対する比較例1−1として、実施例1−1〜1−4と同様にして作製した負極活物質粒子を含むスラリーを、厚み20μmの銅箔よりなる負極集電体に塗布し乾燥させることにより負極を作製した。
【0079】
また、比較例1−2として、負極活物質粒子である平均粒径が1μmのスズ粒子と、導電材である平均粒径が1μmの銅粒子とを、1:1の質量比で混合した混合物に、結着材であるポリフッ化ビニリデンを10質量%となるように混合し、これを分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させ、厚み20μmの銅箔よりなる負極集電体に塗布し乾燥させることにより負極を作成した。
【0080】
更に、比較例1−3として、実施例1−1〜1−4と同様にして作製した負極活物質粒子を含むスラリーを、厚み20μmの銅箔よりなる負極集電体に塗布し乾燥させたのち、この上に、導電材である平均粒径が1μmの銅粒子と、結着材であるポリフッ化ビニリデンとを、ポリフッ化ビニリデンが10質量%となるように混合し、分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させたスラリーを塗布し乾燥させることにより負極を作成した。
【0081】
加えて、比較例1−4として、銅を主原料とする金属不織布の表面に、無電解鍍金法により、厚み1μmのスズの膜を形成することにより負極を作成した。
【0082】
続いて、実施例1−1〜1−4および比較例1−1〜1−4の負極10を用いて、図3に示したようなコイン型の試験電池を作製した。対極はリチウム金属板とし、セパレータには多孔質ポリエチレンフィルムを用いると共に、電解液には炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを、炭酸エチレン:炭酸ジエチル=1:2の体積比で混合した溶媒にLiPF6 を1mol/lの濃度で溶解させたものを用いた。
【0083】
作製した実施例1−1〜1−4および比較例1−1〜1−4の試験電池について、1mA/cm2 の電流密度で充放電を50サイクル行い、1サイクル目に対する50サイクル目の放電容量の割合を放電容量維持率として求めた。その結果を表1に示す。なお、比較例1−1については、1サイクル目に対する20サイクル目の放電容量の割合を表1に示した。
【0084】
【表1】

【0085】
表1から分かるように、負極活物質粒子11に鍍金により負極集電体12を形成した実施例1−1〜1−4によれば、箔状の負極集電体の表面に負極活物質粒子を塗布した比較例1−1〜1−3および不織布よりなる負極集電体の表面に負極活物質を鍍金した比較例1−4に比べて、放電容量維持率が向上した。また、アニール処理または加圧処理を行った実施例1−2〜1−4によれば、これらの処理を行っていない実施例1−1よりも、更に放電容量維持率が向上し、特に、アニール処理を行うと共に、加圧処理を行った実施例1−4において、高い値が得られた。
【0086】
すなわち、負極集電体12の内部に負極活物質粒子11を有するようにすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。また、負極集電体12を形成したのち、アニール処理または加圧処理を行うようにすれば、より高い効果を得られることが分かった。
【0087】
(実施例2−1〜2−6)
負極活物質粒子11であるスズ粒子の平均粒径を0.005μm〜30μmの範囲で変化させたことを除き、他は実施例1−1と同様にして負極10および試験電池を作製した。作製した実施例2−1〜2−6の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして放電容量維持率を求めた。これらの結果を実施例1−1の結果と共に表2に示す。
【0088】
【表2】

【0089】
表2から分かるように、放電容量維持率は、スズ粒子の平均粒径が大きくなるに伴い、上昇し、極大値を示したのち低下した。すなわち、負極活物質粒子11の平均粒径は、0.01μm以上20μm以下の範囲内が好ましいことが分かった。
【0090】
(実施例3−1〜3−9)
負極活物質粒子11をSn−Zn合金,Sn−Co合金,Sn−Ag合金,Sn−In合金,Sn−Fe合金,Sn−Cu合金,Sn−Ni合金,Sn−Pb合金またはSn−Bi合金としたことを除き、他は実施例1−1と同様にして負極10および試験電極を作製した。作製した実施例3−1〜3−9の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして放電容量維持率を求めた。これらの結果を実施例1−1の結果と共に表3に示す。
【0091】
【表3】

【0092】
表3から分かるように、実施例1−1と同様に、負極活物質粒子11にスズを構成元素として含む合金を用いた実施例3−1〜3−9においても、高い放電容量維持率が得られた。すなわち、スズを構成元素として含む他の負極活物質粒子11を用いても、同様の効果を得られることが分かった。
【0093】
(実施例4−1〜4−3)
鍍金法によりニッケル,銅,またはCu−Zn合金を鍍金することにより、負極活物質粒子11を被覆して負極集電体12を形成したことを除き、他は実施例1−1と同様にして負極10および試験電池を作製した。作製した実施例4−1〜4−3の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして放電容量維持率を求めた。これらの結果を実施例1−1の結果と共に表4に示す。
【0094】
【表4】

【0095】
表4から分かるように、実施例1−1と同様に、ニッケル,銅,またはCu−Zn合金を鍍金することにより負極集電体12を形成した実施例4−1〜4−3においても、高い放電容量維持率が得られた。すなわち、負極集電体12を他の材料により構成しても、同様の効果を得られることが分かった。
【0096】
(実施例5−1〜5−3)
実施例5−1, 5−2として、実施例1−1と同様にして作製した負極10を用い、図3に示した二次電池を作製した。その際、正極33は正極活物質としてコバルト酸リチウム(LiCoO2 )を用い、コバルト酸リチウムと導電材である人造黒鉛と結着材であるポリフッ化ビニリデンとを混合し、分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させたのち、アルミニウム箔よりなる正極集電体に塗布し乾燥させることにより作製した。セパレータ34には多孔質ポリエチレンフィルムを用いると共に、電解液には炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを炭酸エチレン:炭酸ジエチル=1:2の体積比で混合した溶媒にLiPF6 を1mol/lの濃度で溶解させたものを用いた。
【0097】
また、実施例5−1では、負極10を作製する際に基材20に接触していた側の面を正極33に対向させるように配置し、実施例5−2では、負極10を作製する際に基材に接触していない表面側の面を正極33に対向させるように配置した。
【0098】
また、実施例5−3として、図4,5に示した二次電池を作製した。その際、正極44は実施例5−1,5−2と同様にして作製し、セパレータ45も実施例5−1,5−2と同様のものを用いた。また、電解質層46は、ポリフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体と、炭酸エチレンと炭酸プロピレンとを同体積で混合した溶媒にLiPF6 を1mol/lの濃度で溶解させた電解液とを混合し、正極44および負極10の両面に塗布することにより形成した。
【0099】
作製した実施例5−1〜5−3の二次電池について、実施例1−1〜1−4と同様にして放電容量維持率を求めた。結果を表5に示す。
【0100】
【表5】

【0101】
表5から分かるように、負極10のいずれかの面あるいは両面を正極33,44に対向させても、同等の放電容量維持率が得られた。すなわち、負極10のいずれの面においても、同等に電極反応物質を吸蔵および放出することができ、更に、同等のサイクル特性を得ることができることが分かった。
【0102】
(実施例6−1〜6−4)
図6に示した負極60を作製した。まず、負極集電体61である平均粒径が1μmの銅粒子と、結着材であるポリフッ化ビニリデンとを、ポリフッ化ビニリデンが10質量%になるように混合し、この混合物を分散媒であるN−メチル−2−ピロリドンに分散させて適当な粘度のスラリーとした。このスラリーを基材に塗布し乾燥させ、塗布膜を作製した。基材には、厚み20μmのステンレス箔を用いた。続いて、塗布膜が形成された基材に鍍金法により負極活物質であるスズを鍍金することにより、負極集電体61を被覆した電極反応部62を形成した。そののち、この負極集電体61を被覆した電極反応部62から基材を剥離し、流水で水洗いをしたのち、真空乾燥を行うことにより負極60を作製した。なお、実施例6−2では、真空乾燥したのち200℃で10時間のアニール処理を行い、実施例6−3では、真空乾燥したのち加圧処理を行い、実施例6−4では、真空乾燥したのち200℃で10時間のアニール処理と、加圧処理とを行った。
【0103】
作製した負極60について、ミクロトームにより切り出し、SEMにより断面を観察した。図11は、負極60の断面構成を表すSEM写真であり、図12は、図11の断面構成をハッチングにより分別して表したものである。また、EDXにより構成を調べたところ、図12において、右斜上線により表される部分はスズよりなり、右斜下線により表される部分は銅よりなることが確認された。すなわち、銅粒子がスズの内部に存在しいることが分かった。
【0104】
また、負極60について、作製した際に基材に接触していた側の面と接触していない表面側の面とを走査電子顕微鏡により観察した。図13、負極60の基材に接触していた面のSEM写真であり、図14は、接触していない表面側の面のSEM写真である。これらのSEM写真から分かるように、基材に接触していた面は、接触していない表面側の面よりも、粒子が小さく、緻密で均一な形状となっていた。
【0105】
この負極60を用いて実施例1−1〜1−4と同様にして試験電池を作製した。得られた実施例6−1〜6−4の試験電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして放電容量維持率を求めた。結果を比較例1−1〜1−4の結果と共に表6に示す。
【0106】
【表6】

【0107】
表6から分かるように、粒子状の負極集電体61に鍍金により電極反応部62を形成した実施例6−1〜6−4によれば、比較例1−1〜1−4に比べて、放電容量維持率が向上した。また、アニール処理または加圧処理を行った実施例6−2〜6−4によれば、これらの処理を行っていない実施例6−1よりも、更に放電容量維持率が向上し、特に、アニール処理を行うと共に、加圧処理を行った実施例6−4において、高い値が得られた。
【0108】
すなわち、電極反応部62の内部に粒子状の負極集電体61を有するようにすれば、サイクル特性を向上させることができることが分かった。また、電極反応部62を形成したのち、アニール処理または加圧処理を行うようにすれば、より高い効果を得られることが分かった。
【0109】
(実施例7−1〜7−6)
負極集電体61である銅粒子の平均粒径を0.005μm〜30μmの範囲内で変化させたことを除き、他は実施例6−1と同様にして負極60および試験電池を作製した。作製した実施例7−1〜7−6の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして放電容量維持率を求めた。これらの結果を実施例6−1の結果と共に表7に示す。
【0110】
【表7】

【0111】
表7から分かるように、放電容量維持率は、銅粒子の平均粒径が大きくなるに伴い、上昇し、極大値を示したのち低下した。すなわち、負極集電体61の平均粒径は、0.01μm以上20μm以下の範囲内が好ましいことが分かった。
【0112】
(実施例8−1〜8−9)
鍍金に用いる金属をSn−Zn合金,Sn−Co合金,Sn−Ag合金,Sn−In合金,Sn−Fe合金,Sn−Cu合金,Sn−Ni合金,Sn−Pb合金またはSn−Bi合金に代えたことを除き、他は実施例6−1と同様にして負極60および試験電極を作製した。作製した実施例8−1〜8−9の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして放電容量維持率を求めた。これらの結果を実施例6−1の結果と共に表8に示す。
【0113】
【表8】

【0114】
表8から分かるように、実施例6−1と同様に、鍍金に用いる金属にSnを構成元素として含む合金を用いた実施例8−1〜8−9においても、高い放電容量維持率が得られた。すなわち、スズを構成元素として含む他の負極活物質により電極反応部62を構成しても、同様の効果を得られることが分かった。
【0115】
(実施例9−1〜9−3)
実施例6−1で作製した負極60を用いたことを除き、他は実施例5−1〜5−3と同様にして二次電池を作製した。作製した実施例9−1〜9−3の二次電池についても、実施例1−1〜1−4と同様にして放電容量維持率を求めた。これらの結果を表9に示す。
【0116】
【表9】

【0117】
表9から分かるように、負極60のいずれかの面あるいは両面を正極33,44に対向させても、同等の放電容量維持率が得られた。すなわち、負極60のいずれの面においても、同等に電極反応物質を吸蔵および放出することができ、更に、同等のサイクル特性を得ることができることが分かった。
【0118】
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態および実施例では、液状の電解質である電解液、またはいわゆるゲル状の電解質を用いる場合について説明したが、他の電解質を用いるようにしてもよい。他の電解質としては、イオン伝導性を有する固体電解質、固体電解質と電解液とを混合したもの、あるいは固体電解質とゲル状の電解質とを混合したものが挙げられる。
【0119】
なお、固体電解質には、例えば、イオン伝導性を有する高分子化合物に電解質塩を分散させた高分子固体電解質、またはイオン伝導性ガラスあるいはイオン性結晶などよりなる無機固体電解質を用いることができる。高分子固体電解質の高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンオキサイドあるいはポリエチレンオキサイドを含む架橋体などのエーテル系高分子化合物、ポリメタクリレートなどのエステル系高分子化合物、アクリレート系高分子化合物を単独あるいは混合して、または共重合させて用いることができる。また、無機固体電解質としては、窒化リチウムあるいはリン酸リチウムなどを含むもの用いることができる。
【0120】
また、上記実施の形態および実施例では、コイン型または巻回ラミネート型の二次電池について説明したが、本発明は、円筒型,角型,ボタン型,薄型,大型あるいは積層ラミネート型などの他の形状を有する二次電池についても同様に適用することができる。加えて、二次電池に限らず、一次電池についても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る負極の構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した負極の製造工程を表す説明図である。
【図3】図1に示した負極を用いた二次電池の構成を表す断面図である。
【図4】図1に示した負極を用いた他の二次電池の構成を表す分解斜視図である。
【図5】図4に示した二次電池のI−I線に沿った構造を表す断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る負極の構成を表す断面図である。
【図7】本発明の実施例で作製した負極の断面構成を表すSEM写真である。
【図8】図7に示した断面構成をハッチングにより分別して表す説明図である。
【図9】本発明の実施例で作製した負極の表面構造を表すSEM写真である。
【図10】本発明の実施例で作製した負極の表面構造を表す他のSEM写真である。
【図11】本発明の他の実施例で作製した負極の断面構成を表すSEM写真である。
【図12】図11に示した断面構成をハッチングにより分別して表す説明図である。
【図13】本発明の実施例で作製した負極の表面構造を表す他のSEM写真である。
【図14】本発明の実施例で作製した負極の表面構造を表す他のSEM写真である。
【符号の説明】
【0122】
10,60…負極、11…負極活物質粒子、12,61…負極集電体、12A…粒子、20…基材、21…塗布膜、31…外装カップ、32…外装缶、33,44…正極、33A,44A…正極集電体、33B,44B…正極活物質層、34,45…セパレータ、35…ガスケット、40…電極巻回体、41…正極リード、42…負極リード、43…密着フィルム、46…電解質層、47…保護テープ、50…外装部材、62…電極反応部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スズを構成元素として含む負極活物質粒子と、
この負極活物質粒子を内部に有する負極集電体と
を有することを特徴とする負極。
【請求項2】
前記負極活物質粒子の平均粒径は、0.01μm以上20μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項3】
前記負極集電体は、銅,ニッケル,鉄およびそれらの合金からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項4】
前記負極活物質粒子と、前記負極集電体とは、界面の少なくとも一部において合金化していることを特徴とする請求項1記載の負極。
【請求項5】
スズを構成元素として含む負極活物質粒子と、
この負極活物質粒子を被覆するように鍍金により形成された負極集電体と
を有することを特徴とする負極。
【請求項6】
粒子状の負極集電体と、
この負極集電体を内部に有し、スズを構成元素として含む電極反応部と
を有することを特徴とする負極。
【請求項7】
前記負極集電体の平均粒径は、0.01μm以上20μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項6記載の負極。
【請求項8】
前記負極集電体は、銅,ニッケル,鉄およびそれらの合金からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項6記載の負極。
【請求項9】
前記負極集電体と、前記電極反応部とは、界面の少なくとも一部において合金化していることを特徴とする請求項6記載の負極。
【請求項10】
粒子状の負極集電体と、
この負極集電体を被覆するように鍍金により形成されたスズを構成元素として含む電極反応部と
を有することを特徴とする負極。
【請求項11】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記負極は、スズを構成元素として含む負極活物質粒子と、この負極活物質粒子を内部に有する負極集電体とを有する
ことを特徴とする電池。
【請求項12】
前記負極活物質粒子の平均粒径は、0.01μm以上20μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項11記載の電池。
【請求項13】
前記負極集電体は、銅,ニッケル,鉄およびそれらの合金からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項11記載の電池。
【請求項14】
前記負極活物質粒子と、前記負極集電体とは、界面の少なくとも一部において合金化していることを特徴とする請求項11記載の電池。
【請求項15】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記負極は、スズを構成元素として含む負極活物質粒子と、この負極活物質粒子を被覆するように鍍金により形成された負極集電体とを有する
ことを特徴とする電池。
【請求項16】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記負極は、粒子状の負極集電体と、この負極集電体を内部に有し、スズを構成元素として含む電極反応部とを有する
ことを特徴とする電池。
【請求項17】
前記負極集電体の平均粒径は、0.01μm以上20μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項16記載の電池。
【請求項18】
前記負極集電体は、銅,ニッケル,鉄およびそれらの合金からなる群のうちの少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項16記載の電池。
【請求項19】
前記負極集電体と、前記電極反応部とは、界面の少なくとも一部において合金化していることを特徴とする請求項16記載の電池。
【請求項20】
正極および負極と共に電解質を備えた電池であって、
前記負極は、粒子状の負極集電体と、この負極集電体を被覆するように鍍金により形成されたスズを構成元素として含む電極反応部とを有する
ことを特徴とする電池。
【請求項21】
基材上にスズを構成元素として含む負極活物質粒子を担持させ、鍍金により、負極活物質粒子を被覆するように負極集電体を形成する工程と、
負極集電体を形成したのち、基材を剥離する工程と
を含むことを特徴とする負極の製造方法。
【請求項22】
前記負極活物質粒子の平均粒径は、0.01μm以上20μm以下の範囲内とすることを特徴とする請求項21記載の負極の製造方法。
【請求項23】
前記負極集電体は、銅,ニッケル,鉄およびそれらの合金からなる群のうちの少なくとも1種により形成することを特徴とする請求項21記載の負極の製造方法。
【請求項24】
更に、負極集電体を形成したのち、アニール処理および加圧処理のうちの少なくとも一方を行う工程を含むことを特徴とする請求項21記載の負極の製造方法。
【請求項25】
前記基材は、金属材料および樹脂材料からなる群のうちの少なくとも1種により形成することを特徴とする請求項21記載の負極の製造方法。
【請求項26】
基材上に粒子状の負極集電体を担持させ、鍍金により、負極集電体を被覆するようにスズを構成元素として含む電極反応部を形成する工程と、
電極反応部を形成したのち、基材を剥離する工程と
を含むことを特徴とする負極の製造方法。
【請求項27】
前記負極集電体の平均粒径は、0.01μm以上20μm以下の範囲内とすることを特徴とする請求項26記載の負極の製造方法。
【請求項28】
前記負極集電体は、銅,ニッケル,鉄およびそれらの合金からなる群のうちの少なくとも1種により形成することを特徴とする請求項26記載の負極の製造方法。
【請求項29】
更に、電極反応部を形成したのち、アニール処理および加圧処理のうちの少なくとも一方を行う工程を含むことを特徴とする請求項26記載の負極の製造方法。
【請求項30】
前記基材は、金属材料および樹脂材料からなる群のうちの少なくとも1種により形成することを特徴とする請求項26記載の負極の製造方法。
【請求項31】
正極および負極と共に電解質を備えた電池の製造方法であって、
前記負極は、基材上にスズを構成元素として含む負極活物質粒子を担持させ、鍍金により、負極活物質粒子を被覆するように負極集電体を形成したのち、基材を剥離することにより形成する
ことを特徴とする電池の製造方法。
【請求項32】
正極および負極と共に電解質を備えた電池の製造方法であって、
前記負極は、基材上に粒子状の負極集電体を担持させ、鍍金により、負極集電体を被覆するようにスズを構成元素として含む電極反応部を形成したのち、基材を剥離することにより形成する
ことを特徴とする電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−236685(P2006−236685A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47394(P2005−47394)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】