説明

負荷制御装置

【課題】大型化を抑制しつつ、雑音端子電圧レベルを抑制できる負荷制御装置を提供する。
【解決手段】負荷制御装置1Aは、交流電源2と負荷3との間に直列に接続され、負荷3に対して電源の供給を制御する主開閉部11、整流部12、制御部13及び主開閉部11が非導通のときに負荷3に対して電源の供給を制御する補助開閉部17などで構成される。主開閉部11は、双方向制御可能なトランジスタ構造の主スイッチ素子11aで構成され、制御部13は、主開閉部11の制御電極に制御信号を出力するフォトカプラ13fと、フォトカプラ13fに入力される信号を制御するローパスフィルタ13bを有する。ローパスフィルタ13bによってフォトカプラ13fに入力される信号の立ち上がり時間が長くなり、負荷電流が滑らかに上昇され、スイッチングノイズが低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源と照明装置などの負荷の間に直列に接続される2線式の負荷制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からトライアックやサイリスタなどの無接点スイッチ素子を用いた照明装置用の負荷制御装置が実用化されている。これらの負荷制御装置は、省配線の見地から2線式結線が一般的であり、交流電源と負荷との間に直列に接続される。このように交流電源と負荷との間に直列に接続される負荷制御装置においては、どのようにして自己の回路電源を確保するかが課題となる。
【0003】
図8に示す第1従来例の負荷制御装置50は、交流電源2と負荷3との間に直列に接続され、主開閉部51と整流部52と制御部53と、制御部53に安定した電力を供給するための第1電源部54と、負荷3への電力停止状態のときに第1電源部54に電力を供給するための第2電源部55と、負荷3への電力供給が行われているときに第1電源部54に電力を供給する第3電源部56と、負荷電流のうち微小電流の通電をおこなう補助開閉部57などによって構成されている。主開閉部51のスイッチ素子51aはトライアックによって構成されている。
【0004】
負荷3に電力供給が行われていない負荷制御装置50のオフ状態では、交流電源2から負荷制御装置50に印加される電圧は、整流部52を介して第2電源部55に供給される。第2電源部55は、抵抗とツェナーダイオードで構成された定電圧回路である。このときに負荷3に流れる電流は、負荷3が誤動作しない程度の微小電流であり、制御部53の消費電流は小さく、第2電源部55のインピーダンスは高く維持されるように設定されている。
【0005】
一方、負荷3への電力供給が行われている負荷制御装置50のオン状態では、制御部53からの制御信号により第3電源部56がオンし、負荷制御装置50のインピーダンスが低下して負荷3に流れる電流量が増加するとともに、第3で電源部56に流れる電流は第1電源部54にも流れ、バッファコンデンサ54aの充電を開始する。バッファコンデンサ54aの充電電圧が所定のしきい値よりも高くなると、第3電源部56を構成するツェナーダイオード56aがブレークダウンして電流が流れ始め、補助開閉部57のゲートに電流が流れこみ、補助開閉部57が導通する(閉状態)。その結果、整流部52から第3電源部56に流れていた電流は、補助開閉部57に転流し、さらに主開閉部51のスイッチ素子51aのゲートに流れ込み、主開閉部51が導通する(閉状態)。そのため、負荷3に対してほぼすべての電力が供給される。一旦、主開閉部51が導通する(閉状態)と電流を流し続けるが、交流電流がゼロクロス点に達したときにスイッチ素子51aは自己消弧し、主開閉部51が非導通(開状態)になる。主開閉部51が非導通(開状態)になると、再び整流部52から第3電源部56を経て第1電源部54に電流が流れ、負荷制御装置50の自己回路電源を確保する動作を行う。すなわち、交流の1/2周期毎に、負荷制御装置50の自己電源確保、補助開閉部57の導通及び主開閉部51の導通動作が繰り返される。
【0006】
上述した第1従来例の負荷制御装置とは別の第2従来例の技術として、特許文献1には、第1のスイッチ部(主開閉部)と、この第1のスイッチ素子よりオン抵抗の大きい第2のスイッチ部を設けた負荷制御装置が示されている(同文献1の図1参照)。この負荷制御装置においては、第2スイッチ部をオンさせた後第1スイッチ部をオンさせるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−92859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、第1従来例の負荷制御装置のように、主開閉部のスイッチ素子がトライアックやサイリスタの場合、オンするときに負荷への電流供給が増える。オフ状態からオン状態へ推移する(ターンオン)時のトライアックの導通インピーダンス変化は不連続的であり (トライアックやサイリスタのターンオン動作はラッチ動作である)、言い換えるとトライアックのスイッチングが急峻であるため、本質的に負荷電流の単位時間当たりの変化率が増えることは避けられない。そのため、外部接続端子4,5から外部に漏洩する雑音端子電圧が増大してしまう。
【0009】
雑音端子電圧レベルを例えばIEC(International Electrotechnical Commission)規格等で規定されている範囲内に収めるため、第1従来例では図8に示すようにトライアック51aと外部接続端子4,5との間にノイズフィルタ58が設けられていた。ノイズフィルタ58は、負荷3への電力供給を停止する際に、電源2から伝播されるノイズによる誤動作を防止する機能も有している。ノイズフィルタ58は、例えば外部接続端子4,5との間に接続されるコンデンサと、主開閉部51のトライアック51aとコンデンサとの間に接続されるコイルなどによって構成される。従って、雑音端子電圧レベルを抑制するために実装されるコンデンサ及びコイルなどによって、負荷制御装置50が大型化してしまうという問題があった。また、コイルの発熱が大きいことも負荷制御装置50の小型化を阻む要因となっている。
【0010】
一方、上記特許文献1に示されている第2従来例の負荷制御装置にあっては、スイッチ素子の数の増大に伴い、回路構成が複雑になると共に、スイッチオンのタイミングの制御が複雑になる。
【0011】
本発明は、上記従来例の課題を解決するためになされたものであり、装置の大型化を抑制しつつ、雑音端子電圧レベルを抑制できる負荷制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、外部に接続された負荷への電流供給回路を制御する負荷制御装置であり、トランジスタ構造のスイッチ素子を有し、負荷に対して電源の供給を制御する主開閉部と、前記主開閉部における両端電圧を整流する整流部と、サイリスタ構造のスイッチ素子を有し、前記主開閉部が非導通のときに負荷に対して電源の供給を制御する補助開閉部と、前記主開閉部及び前記補助開閉部の開閉を制御する制御部と、前記主開閉部の両端から前記整流部を介して電力供給され、前記制御部に安定した電圧を供給する第1電源部と、前記主開閉部の両端から整流部を介して電力供給され、負荷への電力供給を停止しているときに、前記第1電源部への電源を供給する第2電源部と、前記主開閉部又は前記補助開閉部が閉状態で、負荷への電力供給を行っているときに、前記第1電源部への電源を供給する第3電源部を備えた負荷制御装置において、前記主開閉部のスイッチ素子は双方向制御可能なトランジスタ素子で構成され、前記制御部は、前記主開閉部の制御電極に制御信号を出力する光絶縁素子と、前記光絶縁素子に入力される信号を制御するローパスフィルタとを有し、前記ローパスフィルタを通って入力される信号に応じて前記光絶縁素子の出力側を導通又は遮断動作させることにより、前記主開閉部の制御電極に出力する制御信号をオン又はオフに制御することを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の負荷制御装置において、前記トランジスタ素子は、横型のトランジスタ構造で構成され、前記交流電源及び負荷に対してそれぞれ直列に接続される第1電極及び第2電極と、前記第1電極及び第2電極の間に配置される制御電極を有し、前記光絶縁素子から前記制御電極に制御信号が出力されることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項2に記載の負荷制御装置において、前記制御電極及び光絶縁素子は2系統設けられ、単一のローパスフィルタから前記2系統の光絶縁素子に同一の信号が入力されることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の負荷制御装置において、前記光絶縁素子は、トランジスタ出力型の素子によって構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の負荷制御装置において、前記光絶縁素子は、MOSFET出力型の素子によって構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明によれば、光絶縁素子により制御部と主開閉部の制御電極を絶縁できるので、制御部の駆動電圧・電流からなる駆動エネルギーを主開閉部を構成するトランジスタ素子の容量に依らず最小限度に設定することが可能になる。ローパスフィルタによって
光絶縁素子の入力側信号を制御することで、主開閉部のトランジスタ素子の導通インピーダンスを連続的に変化させることが可能となり、負荷電流の時間当たりの変化率(di/dt)を低減することができる。これにより、トランジスタ素子の制御電極の直前にコイルなどの必要以上に大きな部品の追加を必要とすることなく、電流変化に起因する雑音端子電圧の低減を図ることができる。
【0018】
請求項2の発明によれば、主開閉部のトランジスタ素子が横型のトランジスタ構造で構成されているので、1チップに集積することも可能で、制御部によって高電圧の交流電源を直接制御することができる。
【0019】
請求項3の発明によれば、単一のローパスフィルタから2系統の光絶縁素子に同一の信号が入力されるので、主開閉部の2系統のゲートの駆動タイミングが同時となるように設定することができる。
【0020】
請求項4の発明によれば、光絶縁素子の出力側がトランジスタ素子であることから、入力電流を低減することで、光絶縁素子のスイッチング時間のターンオン時間だけを長くしつつ、一方のターンオフ時間を殆ど変化させないように設定することが可能になる。従って、主開閉部のターンオン時の負荷電流の単位時間当たりの変化率を低減し、雑音端子電圧レベルの低減に寄与しつつ、主開閉部の遮断時に遅延なく動作して交流電圧の次の半周期にずれ込むことがない。
【0021】
請求項5の発明によれば、光絶縁素子の出力側がMOSFETであることから、入力電流を低減することで、光絶縁素子のスイッチング時間のターンオン時間だけを遅くしつつ、一方のターンオフ時間を殆ど変化させないように設定することが可能になる。従って、主開閉部のターンオン時の負荷電流の変化率を低減し、雑音端子電圧レベルの低減に寄与しつつ、主開閉部の遮断時に遅延なく動作して交流電圧の次の半周期にずれ込むことがない。さらに、MOSFETと主開閉部の制御電極とをバッファ回路を介することなく直接的に接続できるようになり、回路構成を簡素化して部品点数を減らすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態に係る負荷制御装置の構成を示す回路図。
【図2】同装置の各部における信号波形を示すタイムチャート。
【図3】フォトカプラの入力側回路の発光ダイオードに流れる順電流とスイッチング時間との関係を示す図。
【図4】本発明の第1実施形態に係る負荷制御装置の変形例の構成を示す回路図。
【図5】本発明の第1実施形態に係る負荷制御装置の別の変形例の構成を示す回路図。
【図6】本発明の第2実施形態に係る負荷制御装置の構成を示す回路図。
【図7】本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る負荷制御装置に適用される双方向トランジスタ素子の構成を示す断面図。
【図8】第1従来例の負荷制御装置の構成を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る負荷制御装置について図面を参照して説明する。図1は負荷制御装置1Aの構成を示している。負荷制御装置1Aは、交流電源2と負荷3との間に直列に接続され、負荷3に対して電源の供給を制御する主開閉部11と、整流部12と、負荷制御装置1A全体を制御する制御部13と、制御部13に安定した電源を供給するための第1電源部14と、負荷3への電力停止状態のときに第1電源部14へ電力を供給する第2電源部15と、負荷3への電力供給が行われているときに第1電源部14へ電力を供給する第3電源部16と、負荷電流のうち微小電流の通電を行う補助開閉部17とを備え構成されている。負荷制御装置1Aと交流電源2及び負荷3とは、外部接続端子4、5を介して接続されている。第3電源部16には、第3電源部16に入力される電圧を検出する電圧検出部18が設けられている。主開閉部11は、トランジスタ構造の主スイッチ素子11aを有し(図7参照)、補助開閉部17は、サイリスタ構造の補助スイッチ素子17aを有している。第1電源部14は、負荷3への電力停止状態のときに制御部13に供給する電荷をチャージするためのバッファコンデンサ14aを有している。
【0024】
制御部13には、CPUなどで構成された主制御部13eと、第1パルス出力部13cと、第2パルス出力部13dと、ローパスフィルタ13bと、光MOSリレー13a(図6参照)又はフォトカプラ13fなどの光絶縁素子と、フォトカプラ13fに組み合わされるバッファ回路13gが設けられている。主制御部13eは、第1パルス出力部13c及び第2パルス出力部13dに制御信号を出力する。ローパスフィルタ13b、フォトカプラ13f及びバッファ回路13gは、主スイッチ素子11aのゲート電極(制御電極)に対応させて2つずつ設けられている。なお、光MOSリレー13aに関しては、後述する第2実施形態において説明する。
【0025】
第1パルス出力部13cは、主制御部13eから出力された制御信号を受け、2つのLPF13bに第1パルス信号を出力する。第2パルス出力部13dは、主制御部13eから出力された制御信号を受け、補助スイッチ素子17aに第2パルス信号を出力する。ローパスフィルタ13bは、抵抗RとコンデンサC等によって構成され、第1パルス出力部13cから出力された第1パルス信号の低域周波数のみを通過させることにより、フォトカプラ13fに入力される信号を制御する。フォトカプラ13fの入力側回路にはローパスフィルタ13bが、出力側回路にはバッファ回路13gがそれぞれ接続されている。入力側回路と出力側回路とは電気的に絶縁され、入力側回路に設けられている発光ダイオードから出射された光を出力側回路に設けられているフォトトランジスタが受光することにより、主スイッチ素子11aの制御信号をバッファ回路13gに出力する。フォトカプラ13fから出力された制御信号は、バッファ回路13gを介して緩衝され、主スイッチ素子11aのゲート電極に入力される。
【0026】
図2は負荷制御装置1Aの各部における信号波形を示すタイムチャートである。制御部13は、交流電源の1/2周期のうち主開閉部11を導通させる主開閉部導通時間を設定し、負荷3に流れる電流を間欠的に制御する。主制御部13eは、電圧検出部18から出力されたバッファコンデンサ14aの充電完了信号を受け、第1パルス出力部13cを制御する。第1パルス出力部13cは、主制御部13eからバッファコンデンサ14aの充電が完了した旨の信号を受けた後、第1所定時間だけ主開閉部11を導通させるよう、第1パルスを出力する。電圧検出部18から第1パルス出力部13cに充電完了信号を直接出力するように構成されていてもよい。すなわち、第1パルスは、電圧検出部18から充電完了信号を受けて立ち上がり、第1所定時間の経過後立ち下がる。第1パルス出力部13cから発せられた信号は、ローパスフィルタ13bを経由してフォトカプラ13fの入力側回路に入力される。フォトカプラ13fの出力側回路から出力された信号は、バッファ回路13gを経由して主スイッチ素子11aのゲート電極に入力される。
【0027】
第2パルス出力部13dは、主開閉部11が非導通(開状態)になったことを検出してから、第2所定時間だけ補助開閉部17を導通させるように、所定時間の第2パルス信号を出力する。すなわち、第2パルスは、主開閉部11が非導通(開状態)になったときに立ち上がり、第2所定時間の経過後立ち下がる。
【0028】
負荷3への電力供給が行われていない負荷制御装置1Aのオフ状態、すなわち主開閉部11が非導通状態においても、電源2から整流部12を介して第2電源部15に電流が流れるため、負荷3にも微小電流が流れているが、その電流は負荷3を誤動作させない程度に低く抑えられており、第2電源部15のインピーダンスが高い値に維持されている。
【0029】
負荷3へ電力供給が行われているとき、第3電源部16のインピーダンスを低くし、負荷制御装置1Aの内部の回路側に電流を流し、バッファコンデンサ14aを充電する。上記のように、第3電源部16には、電圧検出部(充電監視部)18が設けられており、第3電源部16に入力される電圧すなわちバッファコンデンサ14aの充電電圧を検出する。バッファコンデンサ14aへの充電が完了すると、第3電源部16を一旦オフとし、主開閉部11の動作と同期して再び第3電源部16のインピーダンスを低くしてオンとする。
【0030】
電圧検出部18は、例えばツェナーダイオードとトランジスタ等によって構成されている。第3電源部16に入力される電圧がツェナーダイオードのツェナー電圧を超えると、トランジスタが導通して制御部13にその旨の検出信号が入力される。通常動作時において、制御部13は、電圧検出部18からの検出信号を受信すると、主開閉部11を第1所定時間導通させる(閉状態にさせる)。図1では、電圧検出部18からの検出信号に応じて、直接的に第1パルス信号を出力するように、専用のICなどを用いてハードウェア的に構成された第1パルス出力部13cを制御部13の一部として設けた構成例を示している。あるいは、図示した構成に限定されず、電圧検出部18からの出力を、CPUなどで構成された主制御部13eに入力し、ソフトウェア的に第1パルス信号を出力するように構成してもよい。主開閉部11を導通させる第1所定時間としては、商用周波数電源の1/2周期よりも少し短い時間にする設定することが好ましい。
【0031】
次に、上記第1所定時間経過後、主開閉部11が非導通(開状態)になる動作を開始する際、制御部13は、補助開閉部17を第2所定時間(例えば、数百μ秒)だけ導通させる(閉状態にさせる)。この動作は、補助開閉部17が主開閉部11よりも少し遅れて非導通(開状態)になればよい。または、上記主制御部13eから、主開閉部11に対して出力する第1パルス信号よりも第2所定時間分だけ長いパルス信号を補助開閉部17に対して出力するようにしてもよい。あるいは、ダイオードやコンデンサを用いて遅延回路を構成してもよい。
【0032】
これらの動作により、バッファコンデンサ14aの充電完了後、商用の交流電源の1/2周期のうち、ほとんどの時間を主開閉部11から負荷3に電力を供給した後、通電電流が少なくなってから、補助開閉部17から負荷3に電力を供給することになる。このとき、電流値が零となる時点(ゼロクロス点)の前に主開閉部11が非導通とされるように第1所定時間が設定されているので、ゼロクロス点を越えて主開閉部11が導通状態とされることはない。なお、補助開閉部17は、サイリスタ構造の補助スイッチ素子17aを有しているので、電流値が零となる時点(ゼロクロス点)で非導通(開状態)となる。補助開閉部17が非導通(開状態)になると、再び第3電源部16に電流が流れ込むため、上記の動作を商用電源の1/2周期毎に繰り返す。
【0033】
本実施形態においては、第1パルス出力部13cとフォトカプラ13fとの間に介挿されたローパスフィルタ13bによって、フォトカプラ13fに入力される第1パルス信号の立ち上がり時間を長くすることができる。ローパスフィルタ13bにて第1パルス信号の立ち上がり時間が長くなることに伴い、フォトカプラの出力信号の過渡応答時間も長くなる。これにより、主開閉部11の主スイッチ素子11aのターンオン時間も遅く設定することができ、主開閉部11のターンオン時間に係る負荷電流の単位時間当たりの変化量も低減できる。ここで負荷電流とは外部接続端子4から負荷制御装置1Aに流入し、外部接続端子5から流出し、負荷3に流れる電流のことである。なお、電源2は交流電源であるので、周波数で決まる周期の半分相当の時間経過後、極性が変わると、負荷電流は、外部接続端子5から負荷制御装置1Aに流入し、外部接続端子4から流出することになる。
【0034】
一般に、主開閉部11のターンオン時には、負荷電流の単位時間当たりの変化率の不連続点が発生し、これが原因となって、電源線(すなわち交流電源2、負荷3、外部接続端子4,5、及び主開閉部11によって構成される回路)に重畳する伝導性ノイズが発生する。本実施形態にあっては、主開閉部11の主スイッチ素子11aがトランジスタ構造であることから、導通インピーダンスを連続的に変化させることが可能となり、負荷電流の単位時間当たりの変化率(di/dt)を低減でき、上述したスイッチングノイズを抑制できる。
【0035】
図3は、フォトカプラ13fの入力側回路の発光ダイオードに流れる順電流とスイッチング時間との関係を示している。図3に示すように、フォトカプラ13f及びバッファ回路13gを経由した信号のターンオン時間(主開閉部11の主スイッチ素子11aの制御信号がオフ状態からオン状態に切り替わるのに要する時間)は順電流に対する依存性が高く、順電流が減少するとターンオン時間は大幅に長くなる。一方、フォトカプラ13f及びバッファ回路13gを経由した信号のターンオフ時間(主開閉部11の主スイッチ素子11aの制御信号がオン状態からオフ状態に切り替わるのに要する時間)は順電流に対する依存性が低く、順電流が減少してもターンオフ時間の短縮は僅かに留まる。従って、フォトカプラ13fのスイッチング動作にて開閉制御される主開閉部11の主スイッチ素子11aもターンオン時のスイッチング時間だけを遅く設定することができる。これにより、負荷電流は滑らかに上昇し、ターンオン時に発生するスイッチングノイズは低減されて、負荷制御装置1Aの主開閉部11のスイッチング動作に起因して外部接続端子4,5から外部に漏洩する雑音端子電圧を抑制することが可能となる。また、主スイッチ素子11aのターンオフ時のスイッチング時間は大きく変化しないから、負荷電流の次のゼロクロス点が到来する前に主開閉部11が開状態(非導通状態)になり、補助開閉部17が閉状態(導通状態)になる。その後、負荷電流のゼロクロス点に到達すると、補助開閉部17の補助スイッチ素子17aがサイリスタ構造であるから、サイリスタの消弧作用により補助開閉部17が開状態(非導通状態)になる。さらにゼロクロス点を超えて次の半周期に入ると、再び第3電源部16に電流が流れ込む動作が始まる。このように半周期毎の繰り返し動作を損なうことがない。
【0036】
図4及び図5は、負荷制御装置1Aの変形例を示している。図4に示す負荷制御装置1Bは、2つのフォトカプラ13fの入力側回路が直列に接続されている例、図5に示す負荷制御装置1Cは、2つのフォトカプラ13fの入力側回路が並列に接続されている例でうる。負荷制御装置1B及び負荷制御装置1Cは、共に単一のローパスフィルタ13bから2系統のフォトカプラ13fに同一の信号が出力される。2系統のフォトカプラ13fの出力側回路及びバッファ回路13gなどの構成は、負荷制御装置1Aと同様である。負荷制御装置1B及び負荷制御装置1Cによれば、単一のローパスフィルタ13bから2系統のフォトカプラ13fに同一の信号が入力されるので、主スイッチ素子11aの2系統のゲートの駆動タイミングが同時となるように設定することができる。
【0037】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る負荷制御装置について説明する。図6は負荷制御装置1Dの構成を示している。負荷制御装置1Dは、負荷制御装置1Bにおいて、光絶縁素子としてフォトカプラ13fに変えてMOSFET出力型の光MOSリレー13aが適用され、これに伴い2つのバッファ回路13gが省略されている点で、第1実施形態とは異なっている。光MOSリレー13aは、入力側回路に発光ダイオードを出力側回路にMOSFETを適用した光絶縁素子である。
【0038】
光MOSリレー13aは、入力側回路の発光ダイオードに流れる順電流とスイッチング時間との関係において、図3に示したフォトカプラ13f及びバッファ回路13gを経由した信号と同様な傾向を有している。すなわち、光MOSリレー13aのターンオン時間は順電流に対する依存性が高く、順電流が減少するとターンオン時間は大幅に長くなる。一方、光MOSリレー13aのターンオフ時間は順電流に対する依存性が低く、順電流が減少してもターンオフ時間の短縮は僅かに留まる。従って、光MOSリレー13aのスイッチング動作にて開閉制御される主開閉部11の主スイッチ素子11aもターンオン時のスイッチング時間だけを遅く設定することができる。これにより、負荷制御装置1Aの主開閉部11のスイッチング動作に起因する雑音端子電圧を抑制することが可能である。また、主スイッチ素子11aのターンオフ時のスイッチング時間は大きく変化しないから、負荷電流の次のゼロクロス点が到来する前に主開閉部11が開状態(非導通状態)になり、補助開閉部17が閉状態(導通状態)になる。その後、負荷電流のゼロクロス点に到達すると、補助開閉部17の補助スイッチ素子17aがサイリスタ構造であるから、サイリスタの消弧作用により補助開閉部17が開状態(非導通状態)になる。さらにゼロクロス点を超えて次の半周期に入ると、再び第3電源部16に電流が流れ込む動作が始まる。このように半周期毎の繰り返し動作を損なうことがない。また、光MOSリレーと主開閉部11の主スイッチ素子11aのゲート電極とを図3に示したバッファ回路13gを介することなく直接的に接続できるようになり、回路構成を簡素化して部品点数を減らすことが可能となる。
【0039】
(横型トランジスタ素子)
以下、上記第1実施形態及び第2実施形態において、主スイッチ素子11aとして適用される双方向制御可能な横型トランジスタ素子について説明する。図7は、双方向制御可能な横型トランジスタ素子の概略構成を示す。このような横型トランジスタ素子は、HFET(Heterostructure Field-Effect Transistor)と称され、チャネル層としてAlGaN/GaNへテロ界面に生じる2次元電子ガス層を利用し、基板の表面には交流電源2及び負荷3に対してそれぞれ直列に接続された第1電極6及び第2電極7とを備える。また、第1電極6と第2電極7に対して、通電オフ時に高耐電圧が維持できるように、第1ゲート電極21と第2ゲート電極22が形成されている。
【0040】
双方向トランジスタ構造の主スイッチ素子11aはシリコン(Si)からなる基板23の上に窒化アルミニウム(AlN)と窒化ガリウム(GaN)とが交互に積層されてなるバッファ層24が形成され、その上に半導体層積層体25が形成されている。半導体層積層体25は、第1の半導体層と、この第1の半導体層と比べてバンドギャップが大きい第2の半導体層とが基板側から順次積層されている。第1の半導体層は、アンドープの窒化ガリウム(GaN)層26であり、第2の半導体層は、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層27である。GaN層とAlGaN層とのヘテロ界面近傍には、自発分極及びピエゾ分極による電荷が生じる。これにより電子移動度の高い2次元電子ガス(2DEG)層であるチャネル領域が形成されている。
【0041】
半導体層積層体25の上には、お互いに距離をおいて第1のオーミック電極28と第2のオーミック電極29とが形成されている。第1のオーミック電極28及び第2のオーミック電極29はチャネル領域とオーミック接合を形成している。図7においては、コンタクト抵抗を低減するために、AlGaN層の一部を除去すると共にGaN層を掘り下げて第1のオーミック電極28及び第2のオーミック電極29がAlGaN層27とGaN層26の界面に接するように形成した形態が示されている。なお、第1のオーミック電極28及び第2のオーミック電極29は、AlGaN層27の上に形成されていてもよい。
【0042】
AlGaN層27の上における第1のオーミック電極28と第2のオーミック電極29との間の領域には、第1のp型半導体層30及び第2のp型半導体層31が互いに間隔をおいて形成されている。第1のp型半導体層30の上には第1のゲート電極21が形成され、第2のp型半導体層31の上には第2のゲート電極22が形成されている。第1のゲート電極21及び第2のゲート電極22はそれぞれパラジウム(Pd)と金(Au)とが積層されており、第1のp型半導体層30及び第2のp型半導体層31とオーミック接触している。さらに、AlGaN層27及びp型の半導体層30及び第2のp型半導体層31を覆うように窒化シリコン(SiN)からなる保護膜32が形成されている。この保護膜32を形成することにより、いわゆる電流コラプスの原因となる欠陥を補償し、電流コラプスを改善することが可能となる。第1のp型半導体層30及び第2のp型半導体層31と、AlGaN層27とによりPN接合がそれぞれ形成される。これにより、第1のオーミック電極28と第1のゲート電極21との間の電圧が例えば0Vでは、第1のp型GaN層30からチャネル領域中に空乏層が広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができる。同様に、第2のオーミック電極29と第2のゲート電極22との間の電圧が例えば0V以下のときには、第2のp型GaN層31からチャネル領域中に空乏層が広がるため、チャネルに流れる電流を遮断することができ、いわゆるノーマリーオフ動作をする半導体を実現している。
【0043】
以下、第1のオーミック電極28の電位をV1,第1のゲート電極21の電位をV2,第2のゲート電極22の電位をV3,第2のオーミック電極29の電位をV4とする。この場合において、V2がV1より1.5V以上高ければ、第1のp型半導体層30からチャネル領域中に広がる空乏層が縮小するため、チャネル領域に電流を流すことができる。同様にV3がV4よりも1.5V以上高ければ、第2のp型半導体層31からチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができる。第1のゲート電極21の下側においてチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができるようになる第1のゲート電極21のしきい値電圧を第1のしきい値電圧とし、第2のゲート電極22の下側においてチャネル領域中に広がる空乏層が縮小し、チャネル領域に電流を流すことができるようになる第2のゲート電極22のしきい値電圧を第2のしきい値電圧とする。つまり、第1のしきい値電圧及び第2のしきい値電圧は、ともに1.5Vである。また、第1のp型半導体層30と第2のp型半導体層31との距離は、第1のオーミック電極28及び第2のオーミック電極29に印加される最大の電圧に耐えられるように設定されている。第1のオーミック電極28と第1のゲート電極21との間にゲート駆動信号(すなわち、第1ゲート端子への制御信号)を入力するようになっている。第2のオーミック電極29と第2のゲート電極22との間も同様にゲート駆動信号(すなわち、第2ゲート端子への制御信号)を入力するようになっている。なお、第1電極6は第1のオーミック電極28に接続され、第2電極7は第2のオーミック電極29に接続され、第1ゲート端子33は第1のゲート電極21に接続され、第2ゲート端子34は第2のゲート電極22に接続されている。(参考文献 T.Morita, et.al, IEEE International Electron Devices Meeting, pp. 865-868, December 2007)
【0044】
主開閉部11が非導通のとき、ゲート電極には制御部13からLowレベルの信号が印加されるが、主開閉部11の最低電位よりは整流部12のダイオード1個分だけ高い電位となる。ここで、主開閉部11の導通(閉状態)/非導通(開状態)を切り換えるしきい値が上記ダイオード1個分の電位よりも充分に高ければ、確実に非導通(開状態)を維持することができる。一方、主開閉部11の導通状態(閉状態)の場合は上述の動作を行う。そのため、数Vの制御信号で駆動される制御部にあって、高電圧の交流電源を直接制御することができる。また、このように電子移動度の高いHFETを用いることにより、2線式負荷制御装置の小型高容量化が実現できる。
【0045】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限られることなく、少なくとも主開閉部11の主スイッチ素子11aは、双方向制御可能なトランジスタ素子で構成され、主開閉部11のゲート電極に制御信号を出力するフォトカプラ13f又は光MOSリレー13aなどの光絶縁素子と、光絶縁素子に入力される信号を制御するローパスフィルタ13bを備えていればよい。また、本発明は種々の変形が可能であり、例えば、主開閉部11を構成する主スイッチ素子11aは、双方向制御可能なスイッチ素子であればよく、複数個の単ゲートのトランジスタ素子で構成されているものであってもよい。複数個の単ゲートのトランジスタ素子で構成される場合は、縦型構造のトランジスタ素子であってもよいし横型構造のトランジスタ素子であってもよい。また、補助開閉部17を構成する補助スイッチ素子17aは、トライアックであってもよい。
【0046】
また、ローパスフィルタ13bは、その構成要素としてのコンデンサの容量を勘案すると第1パルス出力部13cとフォトカプラ13f又は光MOSリレー13aとの間に介挿されている形態が望ましいが、フォトカプラ13f又は光MOSリレー13aと主開閉部11との間に介挿されていてもよい。すなわち、ローパスフィルタ13bは、第1パルス信号の立ち上がり時間を長くするように、第1パルス出力部13cから主開閉部11に至る経路に設けられていればよい。
【符号の説明】
【0047】
1A 負荷制御装置
2 交流電源
3 負荷
11 主開閉部
11a 主スイッチ素子
12 整流部
13 制御部
13a 光MOSリレー(光絶縁素子)
13b ローパスフィルタ
13c 第1パルス出力部
13d 第2パルス出力部
13e 主制御部
13f フォトカプラ(光絶縁素子)
13g バッファ回路
14 第1電源部
15 第2電源部
16 第3電源部
17 補助開閉部
17a 補助スイッチ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部に接続された負荷への電流供給回路を制御する負荷制御装置であり、
トランジスタ構造のスイッチ素子を有し、負荷に対して電源の供給を制御する主開閉部と、
前記主開閉部における両端電圧を整流する整流部と、
サイリスタ構造のスイッチ素子を有し、前記主開閉部が非導通のときに負荷に対して電源の供給を制御する補助開閉部と、
前記主開閉部及び前記補助開閉部の開閉を制御する制御部と、
前記主開閉部の両端から前記整流部を介して電力供給され、前記制御部に安定した電圧を供給する第1電源部と、
前記主開閉部の両端から整流部を介して電力供給され、負荷への電力供給を停止しているときに、前記第1電源部への電源を供給する第2電源部と、
前記主開閉部又は前記補助開閉部が閉状態で、負荷への電力供給を行っているときに、前記第1電源部への電源を供給する第3電源部を備えた負荷制御装置において、
前記主開閉部のスイッチ素子は双方向制御可能なトランジスタ素子で構成され、
前記制御部は、前記主開閉部の制御電極に制御信号を出力する光絶縁素子と、前記光絶縁素子に入力される信号を制御するローパスフィルタとを有し、
前記ローパスフィルタを通って入力される信号に応じて前記光絶縁素子の出力側を導通又は遮断動作させることにより、前記主開閉部の制御電極に出力する制御信号をオン又はオフに制御することを特徴とする負荷制御装置。
【請求項2】
前記トランジスタ素子は、横型のトランジスタ構造で構成され、前記交流電源及び負荷に対してそれぞれ直列に接続される第1電極及び第2電極と、前記第1電極及び第2電極の間に配置される制御電極を有し、
前記光絶縁素子から前記制御電極に制御信号が出力されることを特徴とする請求項1に記載の負荷制御装置。
【請求項3】
前記制御電極及び光絶縁素子は2系統設けられ、
単一のローパスフィルタから前記2系統の光絶縁素子に同一の信号が入力されることを特徴とする請求項2に記載の負荷制御装置。
【請求項4】
前記光絶縁素子は、トランジスタ出力型の素子によって構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の負荷制御装置。
【請求項5】
前記光絶縁素子は、MOSFET出力型の素子によって構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の負荷制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−170468(P2011−170468A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31846(P2010−31846)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】