説明

貧血および赤血球機能不全を治療するためのLCATの使用

内因性LCATのレベルまたはLCAT活性を増加させる薬剤を投与することにより、貧血または赤血球機能不全を特徴とする状態を治療するための方法を開示する。加えて、赤血球が、変形能、酸素化に関連する機能低下、付着および凝集の増加、一酸化窒素機能の低下、もしくは寿命の減少、遊離コレステロールの増加、または異常なリン脂質含量を有する状態を治療する方法を開示する。赤血球中の遊離コレステロールの異常濃度を特徴とする状態を治療するための方法、および赤血球の遊離コレステロール含量を正常化する方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2009年6月12日に出願された米国仮出願第61/186,668号、および2010年9月9日に出願された米国仮出願第61/241,223号に対して優先権を主張する。米国仮出願第61/186,668号および米国仮出願第61/241,223号の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、医学の分野、特に、貧血および/または変形能、酸素化、凝集、一酸化窒素代謝、もしくは寿命に関して異常機能を有する赤血球を特徴とする疾患の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
血流中の赤血球(RBC)の質および量は、身体的ストレスが増加する時期に低下することが多く、貧血ならびに罹患率および死亡率の高リスクをもたらす。貧血の発現に関連する身体的ストレスは、自己免疫疾患、大手術、外傷、感染症、癌、重症疾患、糖尿病、肝疾患、腎疾患、心不全、および寄生虫症を含む。全身性の炎症は、循環中の炎症性サイトカインの増加したレベルの存在により明白であるように、これらの全ての状態に共通する特徴である。ヘモグロビン異常症による貧血、例えば、鎌状赤血球症またはサラセミアに罹患しやすい個人においてさえ、炎症性サイトカインレベルは上昇することが多く、特にクリーゼ発症中、疾患の症状を悪化させる場合がある。
【0004】
炎症性サイトカインレベルが上昇した結果の1つは、酵素レシチン:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)の肝産生の減少である。通常、LCATは肝臓から血漿中に放出され、血漿脂質交代を促進し、血液中のコレステロールおよびリン脂質と血液により灌流された組織とのバランスを維持する。過剰コレステロールは、動脈等の組織から除去され、コレステロール逆輸送(RCT)として知られるプロセスにより、胆汁中に排出するために肝臓に送達される。RCTの第1段階において、コレステロールは、循環中、組織細胞から高密度のリポタンパク質(HDL)に渡される。第2段階において、酵素LCATは、ホスファチジルコリン(PC)(レシチンとしても知られる)からコレステロールへの脂肪酸のエステル転移反応を触媒して、コレステリルエステル(CE)を形成することにより、HDLのコレステロール輸送能力を強化する。CE産物は、肝臓のHDLレセプターで除去されるまで、HDL内部に蓄積される。HDLにより肝臓に送達されたCEは、胆汁中に排出されるコレステロールおよび胆汁酸に転換される。
【0005】
血漿LCAT活性の減少の健康上の結果は、血漿LCAT活性が存在しない稀な遺伝性疾患である、家族性LCAT欠損症(FLD)を有する個人において最も明白である。LCAT活性の不在は、血漿CEレベルの大幅な減少をもたらし、これは、HDLの減少、および低密度リポタンパク質、ならびに血漿中の過剰なLCAT基質の蓄積に反映される。FLDの主な健康上の結果は、角膜における脂質のびまん性増加の結果起こる視力低下、腎脂質蓄積による最終的な腎不全(糸球体硬化症)、および溶血性貧血である。
【0006】
低LCAT活性の結果起こるもの等の、脂質代謝障害による血漿リポタンパク質脂質組成の歪みは、RBCの脂質含量の変化に関連している。血漿脂質の変化に応じるRBC脂質の変化は、これらの性質が細胞脂質含量に依存するため、RBCの性能および生存を変更する可能性がある。起こり得るRBC脂質変化の種類は、RBCがコレステロールおよびPC中に富化され、かつスフィンゴミエリン(SM)含量が減少する、FLDの対象において明白である。これらのRBC脂質の異常がLCAT欠損の結果としての血漿リポタンパク質脂質における妨害によって決まるというエビデンスは、RBCコレステロール含量の一時的な正常化が、正常な血漿をFLDの対象に注入した後に生じた実験で得られた(Muryama et al.Am.J.Hematol.16:129−137、1984)。RBC脂質のこの一時的な正常化は、FLDを有する患者において、存在しない、または非常に減少したLCAT、HDL、アポリオタンパク質A−I、または他の血漿因子の補充による可能性がある。
【0007】
血漿LCAT活性の減少がそれほど重度でない場合、貧血とLCAT活性との間に因果関係は見られない。例えば、軽度のLCAT欠損症である魚眼病を有する患者は、正常な血漿LCAT活性の30%未満を示すが、正常なヘモグロビンおよびヘマトクリットを有する(Rousset ei al.Curr.Opin.Endocrinol.Diabetes Obes.16:163−171、2009)。同様に、肝疾患を有する対象における研究では、低LCAT活性と貧血との間(LW Powell et al.(1975) Aust.N.Z.J.Med.5:101−107)、またはLCAT活性とRBC脂質異常との間(RA Cooper et al.(1972)J.Clin.Invest.51:3182−3192)に相関関係は認められなかった。
【0008】
FLD患者において検出されるものと類似する身体的ストレス下にある個人において、RBCの有害な脂質変化のエビデンスがあるが、LCATとRBCレベルまたは脂質との間に明らかな関係はない。異常なRBC脂質組成の例としては、肝疾患を有する個人からのRBC、およびリポタンパク質リパーゼ欠損症またはタンジール病による脂質異常症を有する個人におけるPC/SM比の増加の報告を含む。我々(図1)および他の研究者は、クリーゼ状態ではない鎌状疾患の患者からのRBCにおいて、PC/SM比の増加も認めた。さらに、糖尿病、心疾患(急性肝動脈症候群)、高コレステロール血症、鎌状赤血球貧血を有する個人からのRBC、および宇宙飛行後の個人のコレステロール富化が報告されている。
【0009】
修飾されたRBC脂質組成物の結果は完全に理解されていないが、RBCコレステロール上昇の場合において、膜タンパク質の活性が異常になるエビデンスがある。肝疾患患者からのコレステロール富化RBCは、Mg++−ATPaseおよびアセチルコリンエステラーゼの活性の減少を示す。コレステロール富化は、内部から細胞外膜表面へのホスファチジルセリンの移動強化に関連しており、これは、網内系によるRBCのクリアランス強化のシグナルである。RBCコレステロールの増加は、RBC変形能を低下させ、RBC形態の異常を誘発する可能性があり、その両方は、毛細管を通過するRBCを損傷する可能性がある。重要なRBC機能である膜貫通型ガス交換も、コレステロール上昇により影響を受ける。
【0010】
最近のエビデンスは、異常なRBC脂質組成が、赤血球の機能に有害な作用を有する可能性があり、よって、RBC脂質組成を正常化するための方法、および赤血球機能障害を治療するための方法が必要であることを示唆する。
【発明の概要】
【0011】
HDL−Cと内因性LCAT活性との間の相関関係に関して、文献に共通の見解はない。我々は、組み換えヒトLCATの注射による血漿LCATレベルの増加が、速やかに組織からのコレステロールの除去をもたらすという意外な発見をした。加えて、HDL−Cは、速やかに増加した。HDLとRBCとの間に存在する平衡を考えると、これらの意外な結果は、LCATの注入が速やかに血液細胞脂質の異常性を修正し、血液細胞の機能を改善するために使用することも可能であることを示す。
【0012】
血漿HDL−Cレベルは、しばしば、身体的ストレス、例えば、自己免疫疾患、大手術、外傷、感染症、癌、重症疾患、糖尿病、肝疾患、腎疾患、心不全、および寄生虫症の場合に減少することが報告されており、RBCとリポタンパク質との間の直接的な脂質交換を考慮すると、RBC脂質含量の歪みの主な要因である可能性がある。貧血は、HDLが減少する場合において、多発している。
【0013】
本開示は、LCATの治療有効量を投与することにより、LCAT濃度および/または活性を正常なヒトLCATを超える濃度および/または活性に増加させることによって赤血球膜の脂質含量を調節する方法に関する。
【0014】
本開示の一実施形態は、治療有効量のLCATを対象に投与することを含む、赤血球機能障害を特徴とする状態を有する患者を治療する方法である。
【0015】
別の実施形態は、貧血、または変形能の低下、酸素化の低下、一酸化窒素機能の低下、付着および/もしくは凝集の増加、または寿命の減少、またはそれらの任意の組み合わせを伴う赤血球を特徴とする状態を有する患者を治療する方法であり、それを必要とする対象に治療有効量のLCATを投与することを含む。
【0016】
別の実施形態において、貧血、または変形能の低下、酸素化の低下、一酸化窒素機能の低下、付着および/もしくは凝集の増加、または寿命の減少、またはそれらの任意の組み合わせを伴う赤血球を特徴とする状態を有する患者を治療する方法は、RBC変形能、またはRBC酸素化、またはRBC凝集もしくは付着、またはRBCの寿命のベースラインを決定することと、治療有効量のLCATを、治療を必要とする患者に投与することと、LCAT投与後の変化を決定することとを含み、RBC変形能もしくはRBC酸素化の向上、またはRBC凝集もしくは付着の減少、またはRBCの寿命の増加は、状態の改善を示す。
【0017】
いくつかの実施形態において、治療される状態は、鎌状赤血球症、糖尿病、サラセミア、リウマチ様疾患、自己免疫疾患、関節炎、肝疾患、肝硬変、肝炎、有蕀赤血球増加症、敗血症、認知症、貧血、または微小血管障害、炎症性障害、寄生虫症、勃起不全、癌、子癇前症、重篤疾患、または外傷である。
【0018】
別の実施形態は、有効治療量のLCATを、治療を必要とする対象に投与することを含む、RBC膜における高FCレベルを特徴とする状態を有する患者を治療する方法である。別の実施形態は、FC対PLのベースライン比を決定すること、治療有効量のLCATを、治療を必要とする対象に投与すること、およびLCATの投与後のFC対PLの比率を決定することと、を含む、RBC膜における高FCレベルを特徴とする状態を有する患者を治療する方法であり、ここで、FC対PLの比率における減少は、状態の改善を示す。別の実施形態は、LCATの治療有効量を患者に投与することを含む、患者の血液細胞のFC含量を減少させる方法である。
【0019】
別の実施形態は、治療有効量のLCATを、治療を必要とする対象に投与することを含む、RBC膜におけるPC/SM比の増加を特徴とする状態を有する患者を治療する方法である。別の実施形態は、PC対SMのベースライン比を決定することと、治療有効量のLCATを、治療を必要とする対象に投与することと、およびLCATの投与後のPC対SMの比率を決定することと、を含む、RBC膜におけるPC/SM比の増加を特徴とする状態を有する患者を治療する方法であり、ここで、PC対SMの比率における減少は、状態の改善を示す。別の実施形態は、LCATの治療有効量を患者に投与することを含む、患者の血液細胞のPC/SM比を減少させる方法である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】正常な対象および鎌状赤血球症を有する対象からのRBCのリン脂質組成を示す。
【図2】LCATを注射した後のヒトApoA−I遺伝子導入マウスにおける血漿HDL−Cの増加を示すグラフである。
【図3】組み換えヒトLCATを注射した後の、LCAT−ノックアウト/アポリポタンパク質A−I遺伝子導入マウスからの組織のコレステロール含量を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書に使用される、「治療有効量」とは、所望の治療レジメンに従い投与された時に、所望の治療効果または応答を引き出すLCATの量を意味する。好ましい治療有効量は、血漿LCATのレベルを、正常を超えるレベルに増加させるLCATの量である。
【0022】
本明細書に使用される「LCATレベル」とは、LCATの血漿濃度を指す。
【0023】
本明細書に使用される、LCATの「正常なレベル」とは、LCATレベルを変更するかもしれない任意の薬物療法を現在受けていない、平均的な健康な未治療の対象に存在するLCATの血漿濃度を意味する。「正常なレベル」および「内因性レベル」は、本明細書において互換的に使用される。
【0024】
疑念の回避のため、本明細書において、「治療」または「治療する」への言及は、治癒的治療、姑息的治療、および予防的治療を含む。
【0025】
「対象」および「患者」は、互換的に使用される。
【0026】
有効量または単位投与量に関して本明細書に使用される、「〜」とは、包括的であり、例えば、「1mg〜5000mg」とは、1mgおよび5000mgを含む。
【0027】
有効量または単位投与量に関して本明細書に使用される、「から」とは、包括的であり、例えば、1mgから5000mg」は、1mgおよび5000mgを含む。
【0028】
「FC」とは、遊離コレステロールの略語であり、本明細書に使用されるように、非エステル化コレステロールを意味する。
【0029】
「一酸化窒素機能」とは、一酸化窒素産生、微小血管への一酸化窒素送達、血小板および白血球付着の阻害、血管拡張、RBC変形能およびRBC生存を含む、一酸化窒素に依存するRBC媒介プロセスを意味する。
【0030】
「PC」とは、ホスファチジルコリンの略語である。
【0031】
「SM」とは、スフィンゴミエリンの略語である。
【0032】
「RBC変形能」とは、細胞の流れ抵抗を最小限にし、細胞が小さい血管を通過できるようにするために、動的に変化する流況にそれらの形状を適応させる細胞の能力を意味する。変形能の低下は、硬性の増加と同じである。
【0033】
「遺伝子療法ベクター」とは、軟組織細胞中の染色体において、関心の遺伝子を組み込み、積極的に発現させるために使用される薬剤である。例えば、アデノウイルスは、ヒトLCAT遺伝子を運搬するために操作された。
【0034】
「浸透圧脆弱性」とは、周囲の浸透圧の変化による、破裂に対する細胞の感受性を意味する。
【0035】
「RBC凝集性」とは、血漿タンパク質または他の巨大分子の存在下において、通常ルロー形状で、多細胞型凝集体を形成する能力を意味する。
【0036】
「LCAT」は、「レシチン−コレステロールアシルトランスフェラーゼ」と互換的に使用される。
【0037】
「LCAT」または「LCATポリペプチド」は、本明細書で使用される時、天然配列LCAT、LCAT変異体、修飾されたLCAT、およびキメラLCATを包含する。LCAT配列におけるアミノ酸位置の特定において、配列番号1を参照とする。

ヒトLCAT配列番号1(Genbank受入番号AAB34898)
【表1】

【0038】
天然ヒトLCATタンパク質配列における特定のアミノ酸は、一文字でアミノ酸を指定した後にタンパク質配列の位置を用いて表され、例えば、W2は、2位がトリプトファンであることを示す。特定の位置での置換を表すために、置換されたアミノ酸は位置の後に続き、例えば、W2Yは、2位のトリプトファンがチロシンと置換されることを示す。
【0039】
「天然配列LCAT」は、天然に由来するLCATと同じアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。よって、天然配列LCATは、自然に生じるLCATの切断型形態、および自然に生じる変異形態(例えば、交互にスプライスされた形態)である、自然に生じるLCATの対立遺伝子変異体を特に包含する。好ましい天然配列LCATは、成熟天然配列LCATである。
【0040】
「修飾されたLCAT」とは、天然LCATポリペプチドの1つ以上のアミノ酸が別のアミノ酸と置換されるか、または1つ以上のアミノ酸が天然ポリペプチドの一部、例えば、これらに限定されないが、N末端もしくはC末端アミノ酸に結合される、ポリペプチドを意味する。例えば、これらに限定されないが、修飾されたLCATは、米国特許出願第12/179,815号に記載される、修飾されたLCATタンパク質であってもよい。別の実施形態において、1つ以上のアミノ酸は、保存的置換と置換される。保存的置換の例を表2に提供するが、これらに限定されない。他の実施形態において、1つ以上のアミノ酸は、天然には存在しないアミノ酸と置換される。加えて、修飾されたLCATポリペプチドは、LCATまたは修飾されたLCATの誘導体を含む。これらの誘導体は、例えば、ポリペプチドの溶解性、吸収、生物学的半減期を改善する場合がある。ポリペプチドの誘導体は、当該分野において周知である。当業者は、それらの薬理学的性質を改善するために、どのようにポリペプチドを誘導体化するかを認識しているであろう。
【表2】

【0041】
本開示は、LCATの活性を増加させる、もしくはLCATの血漿レベルを増加させる、またはその両方の薬剤を、治療を必要とする患者に投与することを含む、貧血または赤血球の機能不全を特徴とする状態を有する患者を治療する方法に関する。LCATレベルおよび/またはLCAT活性は、任意の利用可能な手段によって増加させることができる。これは、LCATの直接投与、遺伝子療法によるLCATの発現、および薬物の投与を通した内因性LCATの上方制御を含むが、これらに限定されない。
【0042】
一実施形態において、LCATレベルおよび/または活性のレベルは、LCATの直接投与によって増加する。好ましくは、本開示に従う方法で投与されるLCATは、組み換えにより産生されたヒトLCAT(例えば、組み換えタンパク質発現系として、動物、哺乳動物の細胞、真菌、昆虫細胞、または植物を使用して)である。組み換えによりタンパク質を産生する方法は、当該分野において周知である。LCATは、例えば、ヒト血漿からの単離等の、任意の適切な方法によっても得ることができる。LCATは、安定したバルク形態または単位投与形に調製され得る。一実施形態において、LCAT活性のレベルは、遺伝子療法の使用によって増加する。本明細書に使用される、「遺伝子療法」とは、新しい遺伝子情報の対象の細胞への導入、かつ好ましくは、安定した組み込みを指す。遺伝子療法によりLCAT活性レベルを増加させる方法は、LCATの発現をコードする核酸配列を含む核酸を細胞に形質移入することを含む。形質移入された細胞はLCATを発現し、それを対象の血漿中に分泌する。細胞は、LCATの量を治療有効レベルに増加させるのに十分な数で、またはLCATのそのような高発現に十分であるように形質移入される。LCATをコードする遺伝子は、任意の適切な方法により、対象に導入することが可能である。一実施形態において、遺伝子は、発現ベクターを用いて、生体内で個人の細胞の中に導入される。別の実施形態において、遺伝子は、生体外で細胞に導入され、LCATを発現し、分泌する形質移入された細胞を対象に投与する。生体内アプローチにおいて、肝細胞は、形質移入に有用な標的である。肝細胞はLCATを産生するため、それらは、組み換えにより酵素を作製するための処理機構を備える。さらに、血流に注入されたベクターは、迅速に肝臓を通過するため、肝細胞は、速やかにベクターに曝される。血液幹細胞も、急速に増殖し、それによって、LCATを産生することができるより多くの細胞を作製するため、遺伝子療法に有用な標的である。生体外アプローチも、形質移入プロセスより制御を強化できるため、魅力的である。例えば、形質移入された細胞を検査し、最高量でLCATを発現するものを選択することができる。血液幹細胞を対象から採取し、生体外で形質移入し、対象に再導入することができる。したがって、一実施形態において、細胞は、対象からの細胞である。生体内および生体外のいずれかで遺伝子を哺乳動物の細胞の中に形質移入し、それらの発現を得る方法は、当該分野において周知である。
【0043】
本開示は、LCATレベルおよび/活性を、正常を超えるヒトLCATレベルに増加させることにより赤血球膜の脂質含量を調節する方法に関する。本開示の一実施形態は、治療有効量のLCATを対象に投与することを含む、赤血球機能障害を特徴とする状態を有する患者を治療する方法である。本開示の別の実施形態は、LCATの内因性産生を増加させる、またはLCAT活性を増加させる薬物の治療有効量を対象に投与することを含む、赤血球機能不全を特徴とする状態を有する患者を治療する方法である。特定の実施形態において、薬物は小分子治療薬である。
【0044】
いくつかの実施形態は、正常化を必要とする対象のLCATレベルを増加させる、またはLCAT活性を増加させることにより、RBC細胞膜のFC含量を正常化する方法に関する。本開示に従う一実施形態は、治療有効用量のLCATを、治療を必要とする患者に投与することにより、FC含量の増加を伴うRBCを有することを特徴とする状態を有する患者を治療する方法である。LCATレベルの増加は、急速に、RBCからHDLへのFCの純移送をもたらし、よって、RBC膜の組成をより流体状態に変化させる。この作用は、RBCの酸素化を向上させる、レオロジーを改善する(変形能、流動を増加させ、ホスファチジルセリン外在化を減少させ、付着および凝集の傾向を減少させる)、貧血を減少させる(変形能の低下、RBCの寿命の増加に関連する構造上のストレスおよび破壊を減少させる)、および組織、特に抹消組織を酸素化するRBCの能力を増加させる。いくつかの実施形態において、赤血球生成は、治療有効量のLCATの投与後、増加する。いくつかの実施形態において、一酸化窒素機能は、LCATの治療有効量の投与後、増加する。RBCの細胞膜がリン脂質レベルに関して増加したFCレベル有する、多くの状態が存在する。血液細胞膜におけるFC含量の増加は、鎌状赤血球症、糖尿病、サラセミア、リウマチ様疾患、自己免疫疾患、関節炎、肝疾患、肝硬変、肝炎、有蕀赤血球増加症、敗血症、認知症、貧血、または微小血管障害、炎症性障害、寄生虫症、勃起不全、癌、子癇前症、重篤疾患、または外傷を含むが、これらに限定されない数多くの疾患状態に存在する。
【0045】
RBC組成および機能の変化は、これらの疾患において原発性病理ではないが、根底にある障害の罹患率の悪化をもたらす。よって、本開示の一実施形態は、治療有効用量のLCATを、治療を必要とする患者に投与することにより、鎌状赤血球症、糖尿病、サラセミア、リウマチ様疾患、自己免疫疾患、関節炎、肝疾患、肝硬変、肝炎、有蕀赤血球増加症、敗血症、認知症、貧血、または微小血管障害、炎症性障害、寄生虫症、勃起不全、癌、子癇前症、重篤疾患、または外傷を有する患者を治療する方法である。
【0046】
鎌状赤血球症(SCD)、サラセミア、およびヘモグロビンE(HbE)等のヘモグロビン遺伝子変異は、RBC変形能および酸素を運搬/送達する能力を減少させる、種々の病理をもたらす可能性がある。例として、SCDは、ヘモグロビンのβ−グロブリンサブユニット(HbS)における単一アミノ酸置換により生じる、遺伝性障害である。低酸素状態下において、HbSは重合し(凝集し)、正常な凹状から「鎌状」にRBCの形状に変化をもたらす。硬質なHbS重合体の形成は、RBCの弾性または変形能を低下させ、これは、これらが組織を酸素化するために、それら自体の大きさより4倍小さい毛細管を繰り返し通過しなければならないため、それらの機能に有害である。したがって、鎌状化は、全ての大きさの後毛細管小静脈の閉塞およびRBCの脆弱性の増加による血管閉塞性疾患をもたらし、溶解および溶血性貧血を引き起こす。低酸素状態下の鎌状化は、急性クリーゼおよび疾患に関連する主な問題を引き起こすが、鎌状化されない患者からのRBCは、正常な酸素状態下で、変形能の低下、および凝集性の増加を伴う、より硬質な膜を有する。SCDからの赤血球膜の化学分析は、FC含量の増加も実証する。加えて、これらの患者は、通常、CE含量の減少を伴う低HDLを有し、LCAT活性の減少、または機能的LCAT欠損の減少が推測される。実際、一研究において、LCAT活性は、SCDの患者において、30%減少することを示した。したがって、本開示の一実施形態は、治療有効量のLCATを、治療を必要とする患者に投与することにより、鎌状赤血球症を有する患者を治療する方法である。
【0047】
高レベルのLCAT、例えば、SCD患者におけるLCATの内因性活性の1000倍に内因性活性の倍増をもたらす量の注入は、RBCからFCを強制的に移動させ、同時に、血漿HDL−Cレベルを増加させるだろう。RBCのFC含量における減少は、RBCの変形する能力を増加させ、O交換の速度を改善する。RCD機能の改善は、血液の流動性質の改善と鎌状化の速度の減少(RBCの良好な再酸素化により)の両方により、閉塞事象を少なくする可能性がある。別の実施形態において、治療有効量のLCATを患者に投与することは、RBCの変形能およびRBCの酸素化を増加させる。いくつかの実施形態において、RBCの寿命は、LCATの投与後に増加する。
【0048】
肝疾患において、RBCコレステロールが増加し、しばしば、貧血が起こる。LCAT療法は、RBCコレステロールを正常化し、正常な形状およびもたらされたRBCの機能を回復させ、RBC破壊を減少させ、寿命を増加させ、よって貧血の傾向を減少させる。したがって、別の実施形態は、治療有効量のLCATを患者に投与することにより、貧血を有する患者を治療する方法である。
【0049】
標的細胞および棘細胞性貧血(有棘赤血球増加症):標的細胞および棘細胞は、機能の低下ならびに溶血および貧血の増加をもたらす、増加したFC含量を有する。
【0050】
敗血症、リウマチ性疾患、および炎症性障害(炎症による貧血を含む)等の状態において、さらなる合併症をもたらす、RBC変形能の低下、および異常なレオロジー等の、無数の病理がある。酸素化の低下およびRBC凝集の増加による組織および臓器系の破損は、初期の炎症性障害により罹患率および死亡率の増加をもたらす。よって、別の実施形態は、LCATの治療有効量を、減少を必要とする患者に投与することにより、RBCの凝集性を減少させる方法である。LCATは、炎症中に生成された酸化リン脂質にも作用する場合がある。酸化脂質は、非常に反応性であり、細胞および臓器系への破損を増加させる可能性がある。RBC膜脂質の正常化は、流動および組織の酸素化を改善し、反応性酸化脂質の濃度を低下させるだろう。これは、潜在性感染がRBC機能を低下させ、創傷の治癒時間を増加させる、術後に有用である。
【0051】
微小血管障害は、RBC FCが増加し、それによって、硬化を生じ、RBCの付着および凝集を増加させる時に生じる場合がある。これらの変化は、毛細管および細静脈に認められる低流(または低圧)に誇張される。RBCが適切に変形できない場合、それらの通過は、これらの小さい血管において、大幅に遅くなる。凝集および付着の傾向が増加すると、抹消血管における閉塞の可能性が高くなる。微小血管が正常な機能にとって重要である臓器(例えば、眼、耳、脳、腎臓、陰茎、肺)において、これらの血管において繰り返される虚血事象は、機能の損失(例えば、失明、難聴、腎不全、虚血性微小血管脳疾患(例えば、認知症、アルツハイマー病)、勃起不全)をもたらす可能性がある。LCAT治療は、RBC FCを減少させ、RBCレオロジーを改善し、さらなる閉塞および最終臓器破損のリスクを低減するだろう。
【0052】
本開示の実施例1に実証するように、正常なLCAT活性レベルの約30倍を有するマウスは、正常なマウスと比較して、増加したRBC量を有し、LCAT活性がRBC量の調節の主要な要因であり、この点で、律速であり得ることを実証する。
【0053】
よって、異常なレオロジー(貧血、変形能の低下、凝集の増加、流動の減少、RBC寿命の減少)を特徴とする状態を有する患者への高用量のLCAT、例えば、LCATの内因性レベルの1倍〜1000倍、またはLCATの内因性レベルの1倍〜500倍、またはLCATの内因性レベルの1倍〜100倍の投与は、状態の改善をもたらすだろう。
【0054】
よって、別の実施形態は、治療有効用量のLCATを投与することにより、鎌状赤血球症、糖尿病、サラセミア、リウマチ様疾患、自己免疫疾患、関節炎、肝疾患、肝硬変、肝炎、有蕀赤血球増加症、敗血症、認知症、貧血、または微小血管障害、炎症性障害、寄生虫症、勃起不全、癌、子癇前症、重篤疾患、または外傷を有する患者を治療する方法である。本開示のまた別の実施形態は、LCAT活性またはLCATレベルを増加させる薬物の投与により、鎌状赤血球症、糖尿病、サラセミア、リウマチ様疾患、自己免疫疾患、関節炎、肝疾患、肝硬変、肝炎、有蕀赤血球増加症、敗血症、認知症、貧血、または微小血管障害、炎症性障害、寄生虫症、勃起不全、癌、子癇前症、重篤疾患、または外傷を有する患者を治療する方法である。好ましい実施形態において、薬物は小分子治療である。別の実施形態において、LCATレベルおよび/またはLCAT活性は、遺伝子療法を使用することにより増加する。
【0055】
別の実施形態は、治療有効用量のLCATを投与することにより、アルツハイマー病関連認知症を有する患者を治療する方法である。別の実施形態は、治療有効用量の修飾されたLCATを投与することにより、鎌状赤血球症、糖尿病、サラセミア、リウマチ様疾患、自己免疫疾患、関節炎、肝疾患、肝硬変、肝炎、有蕀赤血球増加症、敗血症、認知症、貧血、または微小血管障害、炎症性障害、寄生虫症、勃起不全、癌、子癇前症、重篤疾患、または外傷を有する患者を治療する方法である。いくつかの実施形態において、修飾されたLCATは、保存的アミノ酸置換を含む。一実施形態において、修飾されたLCATは、位置F1、L3、L4、N5、L7、C31、N384、またはE416での置換を含む。種々の実施形態において、修飾されたLCATは、31位にアミノ酸置換を含む。他の実施形態において、修飾されたLCATは、C31Y置換、およびアミノ酸残基F1、L4、L32、またはN34のうちの1つ以上での置換を含む。別の実施形態において、修飾されたLCATは、C31Y置換、および以下の置換のうちの1つ以上を含む:F1S、F1W、L4M、L4K、N34S、L32F、またはL32H。種々の実施形態において、修飾されたLCATは、以下の置換のうちの1つ以上を含む:F1A、F1G、F1I、F1L、F1M、F1P、F1V、F1Y、F1T、F1Q、F1N、F1H、F1D、L3I、L3F、L3C、L3W、L3Y、L4A、L4I、L4M、L4F、L4V、L4W、L4Y、L4T、L4Q、L4R、N5A、N5M、N5H、N5K、N5D、N5E、L7M、L7R、L7E、C31A、C31I、C31M、C31F、C31V、C31W、C31Y、C31T、C31R、C31H、N384C、N384Q、またはE416C。他の実施形態において、患者のLCATのレベルは、遺伝子療法技術を使用することにより増加する。別の実施形態において、LCAT発現は、薬物投与により亢進される。
【0056】
本開示に従う方法において、LCATは、概して、薬学的に許容される担体または希釈剤を含む薬学的組成物で、対象に投与される。薬学的組成物は、選択された投与経路、すなわち、経口的、非経口的、静脈内、筋肉内、または皮下経路に適応する薬学的組成物として、日常的手順に従い製剤化することができる。
【0057】
本開示の化合物の送達およびそれらの調製方法に適した薬学的組成物は、当業者に容易に理解されるだろう。そのような組成物およびそれらの調製方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th Edition(Mack Publishing Company,1995)に見出すことができる。
【0058】
組成物は、懸濁液、溶液、または油性もしくは水性ビヒクル中のエマルジョン等の形態をとることができ、懸濁剤、安定剤および/または分散剤等の製剤用薬剤を含有してもよい。代替的に、活性成分は、使用前に、適切なビヒクル、例えば、減菌発熱性物質除去蒸留水で構成するための粉末形態であってもよい。典型的に、そのような組成物は、減菌等張水性懸濁液中の溶液である。組成物は、防腐剤が添加された、または添加されていないアンプル、シリンジ、またはバイアル等の気密密封された容器であってもよい。
【0059】
液状担体またはビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、植物油、非毒性グリセリルエステル、およびそれらの適切な混合物を含む、溶媒または液状分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、リポソームの形成によって、分散液の場合においては、必要とされる粒径の維持によって、または界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等の種々の抗菌剤および抗真菌剤によって実現することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖類、緩衝剤、または塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。注入可能な組成物の吸収の延長は、吸収を遅延する薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを組成物中に使用することによって実現することができる。
【0060】
本開示によると、LCATは、単独で、または前述の状態を治療するために使用される他の薬物と併用療法で使用することができる。そのような療法は、関与する薬物の同時または遂次投与を含むが、これらに限定されない。例えば、LCAT製剤は、特定の状態の標準的な治療として通常使用される薬物とともに投与することができる。例えば、LCATは、貧血の治療のための、エリスロポエチン、メトキシポリエチレン−グリコール−エポエチン−β、ダルベポエチン−α、ロミプロスチム、およびエポエチン−α等の、赤血球形成刺激剤(ESA)と組み合わせて投与することができる。または、例えば、LCATは、鎌状赤血球症の治療のための、ヒドロキシ尿素、ヒドロキシカルバミド、デシタビン、または酪酸塩と組み合わせて投与することができる。
【0061】
一実施形態において、治療有効量のLCATは、皮下注射により投与される。別の実施形態において、治療有効量のLCATは、筋肉内注射により投与される。別の実施形態において、治療有効量のLCATは、静脈内注射または注入により投与される。いくつかの実施形態において、LCATの治療有効量は、1mg〜5000mg、または1mg〜2000mg、または10mg〜5000mg、または10mg〜1000mg、または10mg〜500mg、または5mg〜100mgである。
【0062】
いくつかの実施形態において、LCATの治療有効量は、LCAT内因性レベルの1倍〜1000倍、25倍〜1000倍、50倍〜1000倍、1倍〜100倍、50倍〜500倍、または1倍〜500倍である。
【0063】
使用される特定の投与量は変動し得る。例えば、投与量は、投与頻度、組み換えLCAT酵素の特異的活性、患者の体重、患者の特別な必要条件、患者の特別な状態(例えば、腎臓または肝臓機能の異常)、治療される状態等を含むが、これらに限定されない数多くの要因に依存し得る。投与頻度および投与量は、主治医の判断で、本明細書に記載される典型的な範囲外であってもよい。これらの投与量は、約60kg〜70kgの体重の平均的なヒト対象に基づく。特定の患者についての最適な投与量の決定は、当業者に周知である。医師は、乳児および高齢者等の、本範囲外の体重の対象についての用量を容易に決定することができる。
【0064】
治療される障害および患者により、当業者(すなわち、医師)は、以下の用量より高い初期用量が適切であることを決定することができる。例えば、クリーゼ状態の鎌状赤血球症を示す患者は、「通常」レベルの30倍の初期用量で投与される場合がある。患者のRBC酸素化レベルが所望のレベルに達したら、用量は、例えば、「通常」レベルの3倍に減少される。
【0065】
特定の用量の有効性は、バイオマーカー、または特定の生理学的パラメータにおける改善を参照することによって評価することができる。適切なバイオマーカーは、FC対PL、FC対膜タンパク質、PC対SM、またはHDL−Cレベルの比率を含むが、これらに限定されない。適切な生理学的パラメータは、貧血の減少、RBCにおける増加、RBC変形能、血流および/またはRBC凝集性により測定されるレオロジーの改善、浸透圧脆弱性、またはRBC酸素化レベルを含むが、これらに限定されず、これらのパラメータのいずれか1つにおける増加は、改善を示す。バイオマーカーレベルの測定および上述のパラメータは、当該分野に周知の方法を使用して測定することができる。例えば、貧血の減少は、標準的な、十分に確立されている臨床技法を用いて測定されたヘマトクリットもしくはヘモグロビンの増加、またはヘモグロビン分解産物(例えば、非抱合ビリルビン)により測定することができる。変形能は、濾過、粘性、エクタサイトメトリー、およびマイクロピペットの使用により測定することができる。凝集は、エクタサイトメトリーおよび凝集計(aggregometer)を含む、種々の機器により測定することが可能である。RBC酸素化は、標準的なパルスオキシメトリーおよび血液ガス分析により測定することができ、組織酸素化は、酸素センサを備えるサイラスティックトノメータを用いて、指向プローブで測定することができる。当業者は、結果の有意性を理解し、上述のもの等の評価に基づき、用量を調節するように選択してもよい。
【0066】
実施例4に記載され、また図2に示されるように、LCATをヒトアポリポタンパク質A−1遺伝子導入マウスに投与した後、血漿HDL−Cレベルは増加した。増加は、意外にも速く、血漿HDL−Cレベルは、4時間で対照の約70%、24時間までに約120%増加した。よって、本開示の別の実施形態は、治療有効量のLCATを、治療を必要とする対象に投与することを含む、貧血または赤血球機能不全を特徴とする状態を有する患者を治療する方法であり、対象の血漿HDL−Cレベルは、LCATの投与後、速やかに増加する。特定の実施形態において、LCATの投与後4時間の対象の血漿HDL−Cレベルは、LCAT投与前の血漿HDL−Cレベルの少なくとも30%、または少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも70%、または少なくとも80%増加する。また別の実施形態において、LCATの投与後12時間の対象の血漿HDL−Cは、LCAT投与前の血漿HDL−Cレベルの少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも100%、または少なくとも110%、または少なくとも120%増加する。さらに別の実施形態において、LCATの投与後24時間の対象の血漿HDL−Cは、LCAT投与前の血漿HDL−Cレベルの少なくとも40%、または少なくとも50%、または少なくとも60%、または少なくとも70%、または少なくとも80%、または少なくとも90%、または少なくとも100%、または少なくとも110%、または少なくとも120%、または少なくとも130%、または少なくとも140%、または少なくとも150%増加する。
【0067】
実施例5に記載され、また図3に示されるように、LCATのLCAT−ノックアウト/アポリポタンパク質A−I遺伝子導入マウスへの投与は、血漿コレステロールレベルの増加である、組織コレステロール(大動脈および肝臓)の増加をもたらした。実施例4および5からの統合したデータは、LCATの注入が、迅速に、組織から血漿HDLに脂質を再分配したことを実証する。肝臓および大動脈のコレステロール含量に対するLCAT注入の作用を考えると、類似する変化が赤血球において迅速に観察されるであろうことが予想される。
【0068】
RBCからHDLへのFCの移送は、RBC膜の組成をより正常な状態に変更するはずである。この作用は、RBCの酸素化を向上させる、レオロジーを改善する(変形能、流動を増加させ、付着および凝集の傾向を減少させる)、貧血を減少させる(変形能の低下、RBCの寿命の増加に関連する構造上のストレスおよび破壊を減少させる)、および組織、特に抹消組織を酸素化するRBCの能力を増加させる。
【0069】
いくつかの実施形態において、LCATは、皮下注射または筋肉内注射のいずれかにより、患者により自己投与される。自己投与は、これらに限定されないが、鎌状赤血球症、糖尿病、リウマチ様疾患、または肝炎に罹患する患者を含む、患者の長期治療において、好ましい実施形態である。
実施例1
マウスにおけるヘマトクリットに対するLCATの作用
【0070】
血液を3つの群のマウスから採取した:LCAT欠損(LCAT−KO)マウス、LCAT過剰発現遺伝子導入(正常なLCAT活性の約30倍)マウス、および対照C57/b6マウス。RBC膜を血液試料から単離し、RBC量またはヘマトクリットの代替として、リン脂質を含有するコリンを測定した(Wako Phospholipids B,Richmond)。RBC量は、正常なマウスと比較して、LCAT欠損マウスにおいて、有意に低かった(それぞれ、402±22.0μg/ml全血対486±25.7μg/ml全血)。ここで実証されたLCAT欠損マウスにおける貧血は、FLD患者において観察された貧血の程度と類似する。意外にも、RBC量は、正常なLCAT活性のマウスと比較して、LCAT過剰発現の遺伝子導入マウスにおいて、有意に上昇した(それぞれ、556±20.1μg/mL全血対486+25.7μg/mL全血)。これらの結果は、LCATレベルとヘマトクリットとの間に正の関係があることを示す。加えて、また最も重要なことには、超正常レベルのLCATは、貧血性であるとみなされない動物において、ヘマトクリットを増加させる可能性がある。これらの試験は、増加レベルが、正常なLCAT活性を有する患者においても、種々の原因により、貧血を有する患者において有望な治療選択肢であることを示す。
実施例2
正常およびSCD対象(クリーゼでない)から調製されたRBCゴースト膜のリン脂質組成
【0071】
リン酸緩衝生理食塩水中で洗浄されたRBCの試料は、正常な対象(n=7)およびSCD患者(n=6)から採集された新鮮な血液から調製された。濃縮RBCの50マイクロリットルアリコートを、0.95mLリン酸緩衝生理食塩水中に懸濁した。ガラス管に各RBC懸濁液の0.4mLアリコートを20μLの酢酸エチルアセトン中の1−エイコサノール(2:1)(内部標準)の1mg/mL溶液および2mLの酢酸エチル:アセトン:メタノール(6:3:1)と混合することにより、脂質を抽出した。蓋をした管を2分間振盪した後、5分間、2000rpmで遠心分離した。上部有機相を12×32mm HPLCバイアルに移動した。N2流下で、その後、少なくとも1時間、高真空で、溶媒をバイアルから蒸発させた。乾燥させた脂質を、200μLのトリメチルペンタン:メタノール:テトラヒドロフラン(95:5:2)で再構成した。シリカカラム上の高速液体クロマトグラフィーにより、膜脂質をクロマトグラフィーにかけた。ホスファチジルコリン(PC)およびスフィンゴミエリン(SM)を検出し、蒸発光散乱検出器を用いて定量化した。結果は、正常な対象(図1)と比較して、SCD患者のRBC脂質がPCに富化され、SM含量において減少し、それぞれ、対照とSCDについて、0.67から0.98のPC/SM比の増加をもたらしたことを示す。本試験で分析されたSCDのRBCは、正常なRBCと異なるリン脂質組成パターンを示す。SCDのRBC脂質組成は、低血漿LCAT活性の他の例症のRBCについて報告されたものと類似する。
実施例3
組み換えヒトLCATの調製
【0072】
ヒトLCATタンパク質をコードするプラスミドpCMV6−XL4/LCATをOrigene Technologies(Rockville,MD)から購入し、pcDNA3.1/Hygro(Invitrogen,Carlsbad,CA)の中に連結した。pcDNA3.1ベクターをHEK293f細胞に形質移入した。安定に形質移入された細胞を200μg/mLのハイグロマイシンBを用いて選択し、4日間、10Lの振盪フラスコ中のFreestyle293無血清培地(Invitrogen)で成長させた。塩化亜鉛を用いた沈殿によりrhLCATを培養培地から単離した後、バッチ捕捉し、フェニルセファロースを用いて溶出した。
実施例4
HDLコレステロールはLCATを注入されたヒトアポリポタンパク質A−I遺伝子導入マウスにおいて増加する
【0073】
ヒトアポリポタンパク質A−I遺伝子(Jackson Laboratory)を発現する雄の遺伝子導入マウスを、自由摂取で、通常の食餌で保持した。後眼窩洞を介して、生理食塩水または生理食塩水中の組み換えヒトLCAT(4mg/kg)をマウスに単回静脈内注射した。注射後0、1、4、24、48、および72時間で、イソフルランで麻酔した動物の眼窩神経嚢から血液を採集した。血漿コレステロール濃度を、市販の酵素アッセイキットを用いて決定した。Helena LabsのSPIFEシステムを用いて、アガロースゲル電気泳動により、HDL中のコレステロール(HDL−C)の量を決定した。図2は、LCATを投与されたマウスが血漿HDL−Cのレベルにおいて、対照の120%もの有意な増加を示したことを示す。HDL−Cレベルは、実験の間(72時間)、増加したレベルのままであった。血漿HDLの上昇は、意外にも速く、4時間で対照の約70%、24時間までに約120%の増加を示した。
実施例5
LCAT−ノックアウト/アポリポタンパク質A−I遺伝子導入マウスの組織におけるコレステロール含量に対するLCAT注入の作用
【0074】
ヒトアポリポタンパク質A−I(Jackson Laboratory)を発現する遺伝子導入マウスをLCAT−KOマウスと交差交配して、LCAT−KO/apoA−I−Tgマウスを得た。LCAT−KO/apoA−I−Tgマウスを、自由摂取で、通常のゲッ齒類食餌で保持した。生理食塩水または0.4mgのLCATの静脈内(IV)注射は、後眼窩洞を介して、4日間、毎日行われた。動物を5日目に致死した。動物に麻酔をし、ヘパリン処置された生理食塩水で灌流により失血させた。肝臓葉および大動脈を各動物から除去し、クロロホルムおよびメタノール溶液で抽出した。抽出した組織から回収した脂質中のコレステロールを商業用酵素アッセイキットで測定した。
【0075】
図3は、生理食塩水(Ctrl)またはLCAT(Exp)を注入されたマウスの(A)肝臓、(B)大動脈、および(C)血漿のコレステロール含量を示す。LCATを用いた治療は、肝臓および大動脈におけるコレステロールのレベルを有意に低下させ、血漿コレステロールレベルを有意に上昇させた。実施例4および5からの統合したデータは、LCATの注入が、迅速に、組織から血漿HDLに脂質を再分配したことを実証する。肝臓および大動脈のコレステロール含量に対するLCAT注入の作用を考えると、類似する変化が赤血球において観察されるであろうことが予想される。
実施例6
【0076】
鎌状赤血球クリーゼの子供(30kg)が病院に入院した。標準的な診察治療とともに、総量100mLの生理食塩水で、1時間にわたり、5mg/kgの組み換えヒトLCAT(rhLCAT)を子供(男の子)に注入する。治療後、血液酸素レベルが測定され、改善された。クリーゼの緩和として、赤血球の形態および物理的特徴(RBC変形能、RBC凝集性、および浸透圧脆弱性)を測定し、結果を入院時に採取した血液試料からの結果と比較する。RBCの物理的特徴および酸素化の改善は、0.5mg/kgの用量のrhLCATの週1回の皮下注射により維持される。
実施例7
【0077】
関節リウマチを呈する35歳の女性(55kg)は、9g/dl(正常な範囲は12〜14g/dl)のヘモグロビンレベルの貧血を有する。血液試料を採取し、女性の赤血球はあまり変形せず、正常な赤血球より容易に凝集することが実証される。患者は、皮下的に投与される1mg/kgの用量のrhLCATの週1回の注射を処方される。ヘマトクリットおよびヘモグロビンレベルは、6回の週1回の注射後に測定され、20%増加したことが分かった。6ヶ月の治療後、ヘモグロビンは14g/dlである。医師は、隔週で注射される1mg/kgの用量のrhLCATに患者を維持することを決める。
実施例8
【0078】
65歳の男性(80kg)は、四重バイパス手術を予定している。患者は、術後の出血の可能性を低減するために、手術5日前にクロピドグレルの服薬を止めるよう助言される。血小板の活性化、血栓症、またはRBC凝集のリスクを低減するために、患者は、手術の5日前に、1mg/kgのrhLCAT注入のために、診療所に連れてこられる。患者は、術後直後、術後7日目、および術後14日目に、1mg/kgのrhLCATを注入される。回復後(術後21日目)、患者は長期クロピドグレル治療に戻る。
実施例9
LCATの肝特異的過剰発現における遺伝子導入
【0079】
関節リウマチを呈する患者は、慢性貧血を伴った。患者は、門脈内カテーテルを通した注入により、4×1012アデノウイルス粒子(AdrLCAT)/kgの用量を投与される。LCATレベルは、治療後、毎週、監視される。治療4週後、患者は、10mg/LのLCATレベル、または関節炎ではない対象より約2倍高い濃度を有する。治療8週後、患者、毎月監視される。患者のLCATレベルが5mg/Lを下回る場合、手順を繰り返す。
実施例10
【0080】
鎌状赤血球発症の子供(30kg)が病院に入院した。標準的な診察治療とともに、総量100mLの生理食塩水で、1時間にわたり、5mg/kgの組み換えヒトLCAT(rhLCAT)を子供(男の子)に注入する。治療後、血液酸素レベルが測定され、改善された。クリーゼの緩和として、赤血球の形態および物理的特徴(RBC変形能、RBC凝集性、および浸透圧脆弱性)を測定し、結果を入院時に採取した血液試料からの結果と比較する。患者には、その後、医療装置が皮膚下に設置される手順がある。医療装置は、活性LCATを分泌するように操作された哺乳動物の細胞を含む。十分なLCATが細胞により放出されて、内因性LCAT活性を、正常を100%超えるLCATレベルに上昇させる。
【0081】
本発明の範囲は、特許請求の範囲により定義され、本明細書に詳細に記載される実施形態および実施例により制限されないことを理解するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貧血または赤血球機能不全を特徴とする状態を有する患者を治療する方法であって、LCATの活性を増加させる、もしくはLCATの血漿レベルを増加させる、またはその両方の薬剤の治療有効量を前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記薬剤はLCATである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記薬剤は、内因性LCATの活性またはレベルを増加させる薬物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記薬剤は、遺伝子療法ベクターである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
LCATの量は、LCAT濃度を正常を超えるLCATレベルに、またはLCAT活性を正常を超えるLCAT活性に増加させる量である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記状態は、変形する能力の低下、酸素化の低下、凝集および付着の増加、一酸化窒素機能の低下、寿命の減少、またはそれらの任意の組み合わせを有する赤血球を特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記状態は貧血である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記状態は、鎌状赤血球症、糖尿病、サラセミア、リウマチ様疾患、自己免疫疾患、関節炎、肝疾患、肝硬変、肝炎、有蕀赤血球増加症、敗血症、認知症、貧血、または微小血管障害、炎症性障害、寄生虫症、勃起不全、癌、子癇前症、重篤疾患、または外傷である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記炎症性障害は、敗血症、リウマチ様疾患、炎症による貧血、または術後の炎症である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記微小血管障害は、認知症または網膜症である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記状態は、寄生虫症であり、前記寄生虫症は、マラリア、睡眠病、フィラリア症、またはリーシュマニア症である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記状態は、アルツハイマー病関連認知症である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記状態は、鎌状赤血球症である、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記状態は、サラセミア症である、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
前記LCATは、修飾されたLCATである、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記修飾されたLCATは、31位にアミノ酸置換を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項17】
貧血、変形する能力が低下した赤血球、RBC酸素化の低下、RBCの凝集および付着の増加、一酸化窒素機能の低下、RBCの寿命の減少のうちの1つ以上を特徴とする状態を改善する方法であって、
ヘモグロビンレベル、ヘマトクリット値、RBC変形能、RBC酸素化、RBCの凝集および付着、もしくはRBCの寿命、のうちの1つ、または2つ以上のベースライン測定値を得ることと、
a)LCATの活性を増加させる、もしくはLCATの血漿レベルを増加させる、またはその両方の薬剤の治療有効量を、改善を必要とする患者に投与することと、
b)ヘモグロビンレベル、ヘマトクリット値、RBC変形能、RBC酸素化、RBCの凝集および付着、もしくはRBCの寿命、のうちの1つ以上の治療後の測定値を得ることと、
c)前記ベースライン測定値を、前記治療後の測定値と比較することと、を含み、ヘモグロビンレベルの増加、ヘマトクリット値、RBC変形能の増加、RBC酸素化の向上、RBCの凝集および付着の減少、もしくはRBCの寿命の上昇のうちの1つ以上の発生が、前記状態の改善を示す、方法。
【請求項18】
前記薬剤は、内因性LCATの活性またはレベルを増加させる薬物である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記薬剤は、遺伝子療法ベクターである、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記薬剤の治療有効量は、LCATの治療有効量である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記RBC変形能は、前記LCATの投与後に増加する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記RBC酸素化は、前記LCATの投与後に増加する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記ヘマトクリット値は、前記LCATの投与後に増加する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記ヘモグロビンレベルは、前記LCATの投与後に増加する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記一酸化窒素の機能は、LCATの投与後に増加する、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記RBCの寿命は、LCATの投与後に増加する、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記RBC凝集および付着は、LCATの投与後に減少する、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
前記LCATの治療有効量は、LCATの濃度またはLCAT活性を正常を超えるLCATレベルに上昇させる量である、請求項1、2、5〜16、および20〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記LCATの投与は、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射による、請求項1、2、5〜16および20〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記投与されるLCATの量は、約10mg〜約5000mgである、請求項1、2、5〜16、および20〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記投与されるLCATの量は、前記正常なLCATレベルの1倍〜1000倍である、請求項1、2、5〜16、および20〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
RBC膜における高PC/SM比を特徴とする状態を有する患者を治療する方法であって、前記患者に投与することを含む、方法。
【請求項33】
前記状態は、鎌状赤血球症、糖尿病、サラセミア、リウマチ様疾患、自己免疫疾患、関節炎、肝疾患、肝硬変、肝炎、有蕀赤血球増加症、敗血症、認知症、貧血、または微小血管障害、炎症性障害、寄生虫症、勃起不全、癌、子癇前症、重篤疾患、または外傷である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
PC対SMのベースライン比を決定することと、LCATの投与後のPC対SMの比率を決定することと、をさらに含み、前記PC対SMの比率の低下は、前記状態における改善を示す、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
高FC含量を特徴とする状態を有する患者を治療する方法であって、それを必要とする前記患者に、LCATの治療有効量を投与することを含む、方法。
【請求項36】
前記状態は、鎌状赤血球症、糖尿病、サラセミア、リウマチ様疾患、自己免疫疾患、関節炎、肝疾患、肝硬変、肝炎、有蕀赤血球増加症、敗血症、認知症、貧血、または微小血管障害、炎症性障害、寄生虫症、勃起不全、癌、子癇前症、重篤疾患、または外傷である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記血球細胞は、赤血球、単球、血小板、好中球、または白血球である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記血球細胞は赤血球である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
RBC膜における高FCレベルを特徴とする状態を改善する方法であって、
FC対PLの比率のベースライン測定値を得ることと、
a)LCATの治療有効量を、改善を必要とする患者に投与することと、
b)前記FC対PLの比率の投与後の測定値を得ることと、
c)前記ベースライン測定値を前記投与後の測定値を比較することと、を含み、前記FC対PLの比率の低下は、前記状態における改善を示す、方法。
【請求項40】
前記LCATは、静脈内注射、皮下注射、または筋肉内注射により投与される、請求項32〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記投与されるLCATの量は、約10mg〜約5000mgである、請求項32〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記投与されるLCATの量は、前記正常なLCATレベルの1倍〜1000倍である、請求項32〜40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記LCATは修飾されたLCATである、請求項32〜42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記修飾されたLCATは、31位にアミノ酸置換を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
貧血または赤血球機能不全を特徴とする状態を有する患者を治療する方法であって、それを必要とする対象にLCATの治療有効量を投与することを含み、前記対象の血漿HDL−Cレベルは、前記LCATの投与後、速やかに増加する、方法。
【請求項46】
前記状態は、鎌状赤血球症、糖尿病、サラセミア、リウマチ様疾患、自己免疫疾患、関節炎、肝疾患、肝硬変、肝炎、有蕀赤血球増加症、敗血症、認知症、貧血、または微小血管障害、炎症性障害、寄生虫症、勃起不全、癌、子癇前症、重篤疾患、または外傷である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記炎症性障害は、敗血症、リウマチ様疾患、炎症による貧血、または術後の炎症である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記微小血管障害は、認知症または網膜症である、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
前記状態は、寄生虫症であり、前記寄生虫症は、マラリア、睡眠病、フィラリア症、またはリーシュマニア症である、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記状態は、アルツハイマー病関連認知症である、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記状態は、鎌状赤血球症である、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
前記状態は、サラセミア症である、請求項46に記載の方法。
【請求項53】
前記LCATの投与から4時間後の前記対象の前記血漿HDL−Cレベルは、LCAT投与前の前記血漿HDL−Cレベルの少なくとも50%増加する、請求項44〜52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記LCATの投与から24時間後の前記対象の前記血漿HDL−Cレベルは、LCAT投与前の前記血漿HDL−Cレベルの少なくとも100%増加する、請求項44〜52に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−530070(P2012−530070A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515213(P2012−515213)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/038494
【国際公開番号】WO2010/144904
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(511290879)アルファコア ファーマ リミテッド ライアビリティ カンパニー (1)
【氏名又は名称原語表記】ALPHACORE PHARMA LLC
【住所又は居所原語表記】333 Parkland Plaza Ann Arbor, MI 48103 U.S.A.
【Fターム(参考)】