説明

貫流型風車

【課題】貫流型風車の案内羽根の形状、配列によって風車の効率を向上させる。
【解決手段】円筒形に配列した動力羽根2の外側に案内羽根を固定する籠30が設けてあり、動力羽根2の抵抗側に風が入り込むことを防止するための風量増加用案内羽根31が風の主流方向に対して62度の角度で取り付けてあり、更に籠の外側に延びる延長部32が設けてあり、延長部は、風を推力側に導くために折り曲げてある。動力羽根2の抵抗側へ風が回りこむのが防止されて、推力側に貫流する風量を増加させると共に加速することによって、高速回転域における効率を大幅に上昇させている。推力側には、籠の中央から動力羽根2に向かう流速吹き込み用案内羽根33が設けてある。加速された流速吹き込み用案内羽根を設けたことによって、推力側において風が抜けるのが阻止され、動力羽根2への流入風速が上昇し、低速回転域での出力を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電等に利用可能な案内羽根を有する貫流型風車に関する。
【背景技術】
【0002】
風車には空気流に平行な回転軸を持つプロペラ型の風車と空気流に垂直な回転軸を持つ貫流型(籠型)の風車がある。貫流型風車は、構造が比較的簡単であり、また、起動トルクが大きく、風向きについての指向性がないなど、風車として優れた特性を有しており、案内羽根を設けることによって効率が上がることが知られている。
【0003】
貫流型風車は、プロペラ型風車に比較して多くの利点がある。上述のように、風の方向に影響されずに常に一定の方向に回転することで、プロペラ型風車のように風向制御の必要がなく安定して風エネルギーを吸収でき、構造が単純、軽量且つ高い剛性を有するものであるので低コストで製造でき、軸受端部が比較的広く大きい基礎となっているため発電機等の動力活用機器との連結が容易である等の利点を備えている。
【0004】
このように多くの利点を持つ貫流型風車ではあるが、風を受ける側(推進側)で有効に動力化できるが、羽根の裏側に風を受ける反対側(抵抗側)が、推進側で受けた動力の一部を打ち消すために効率の悪いものになっていた。この欠点を打ち消し、かつ吸入空気を有効に活用するため、図7の(2)、図2に示すように、動力羽根の外周に案内羽根を対称に設けることが提案された。案内羽根は円筒形の案内籠の中に収容され、約50%の出力向上が得られている。(特許文献1参照)
【0005】
【特許文献1】特開平05−240141号公報
【特許文献2】特開昭50−144842号公報
【特許文献3】特開昭55−142978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
対称型案内羽根を設けることにより、風は図2に示す流れとなり、貫流型風車の効率を向上させているが、しかし、案内羽根の役割を個別に検討していくと、図2に示すように羽根車の抵抗側に流線が集中し、効率向上に貢献しない案内羽根がある。本発明は、この検討結果から、風車の効率向上に貢献する案内羽根の形状、位置及び配列を検討して、貫流型風車の効率を更に高めるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
動力羽根の外側に案内羽根を有する貫流型風車であって、抵抗側に設けた風量増加用案内羽根が案内羽根の外周より外側に延長する延長部を形成したものであり、動力羽根に向かう風量を増加させ、動力変換率を高めたものである。
また、動力羽根の外側に案内羽根を有する貫流型風車であって、推力側に中間から動力羽根側に折り曲げてある加速用案内羽根が設けたものであり、動力羽根に向かう風を加速して変換率を高めたものである。
【発明の効果】
【0008】
案内羽根の配列及び形状を前記のようにすることにより、動力羽根の抵抗側へ風が回りこむのを防止し、貫流する風量を増加させると共に加速することによって、高速回転域における効率を大幅に上昇させ、更に、推力側に加速された流速吹き込み用案内羽根を設けることによって推力側において風が抜けて動力羽根に風が到達しなくなるのを防止し、流入風速を上昇させることによって低速回転域での出力を大幅に向上させた。
案内羽根がないときと比較して出力は3.4倍、トルクは2倍となった。また、従来型の8枚対称型案内羽根の貫流型風車と比較すると、出力が1.6倍、トルクは1.3倍となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1実施例
本発明の貫流型風車1は、図1に示すように、風車1の動力羽根2は、厚さ0.5mm、長さ40mm、曲率半径38mmの30枚のアルミ板を円筒状に等間隔に取付角度30度で配列したものである。
【0010】
この、円筒形に配列した動力羽根2の外側に案内羽根を固定する籠30が設けてあり、動力羽根2の抵抗側に風が入り込むのを防止するための風量増加用案内羽根31が風の主流方向に対する垂線に対して角度αで取り付けてある。αは、実験によると28度(風向に対して62度)が最適である。風量増加用案内羽根31には、更に籠30の外側に延びる延長部32が設けてあり、延長部32は、風を推力側に導くために中心側に折り曲げてある。
したがって、動力羽根の抵抗側へ風が回りこむのが防止されて、推力側に貫流する風量を増加させると共に加速することによって、高速回転域における効率を向上させる。
【0011】
また、推力側の案内羽根として推力側案内羽根の籠の中央から動力羽根に向かう加速された流速吹き込み用案内羽根33が風の主流方向に対する垂線に対して角度βで取り付けてある。βは、実験によると25度(風向に対して65度)が最適である。加速された流速吹き込み用案内羽根33は途中から折り曲げた折り曲げ部34が設けてある。加速された流速吹き込み用案内羽根33を設けたことによって、推力側において風が抜けるのが阻止され、動力羽根2への流入風速が上昇し、低速回転域での出力を向上させる。
【0012】
第2実施例
第1実施例より、動力羽根2は、厚さ0.5mm、長さ50mm、曲率半径が100mmのアルミ板16枚を同様に等間隔に配列したものであり、案内羽根は第1実施例と同じである。
【0013】
本発明の貫流型風車の効率向上を以下のようにして確認した。
開放型風洞に二枚翼プロペラと4mmφコアのハニカム型整流板を設置し、風速を制御した。この風洞内に前記の実施例1及び2の貫流型風車を整流板から800mmの位置に設置した。受風面における風速はほぼ全域で一様である。
この状態において、風車軸にトルク検出器、回転数検出器、逆トルクを発生するトルクモータを取り付け、負荷トルク及び回転数はトルクコンバータを介して計測器(コンピュータ)に入力して記録した。
【0014】
図3及び図4に、風速4.5m/sのときの動力羽根が30枚の第1実施例の出力(Cp)及びトルク特性(Cq)を示す。なお、横軸のλは、動力羽根2の先端周速比であり、λ=πDBN/60Vである。
(DB:羽根車の直径(m)、N:回転数(rpm)、V:風速(m/s)
【0015】
抵抗側に風力増加用案内羽根を設けたことによって動力羽根を貫流する風量の増大が認められ、高速回転域での効率が大幅に向上した。また、低速回転域では、8枚案内羽根の風車と同程度かそれ以上の効率が得られた。
低速回転域では、8枚案内羽根と同程度の効率を示した。風力増加用案内羽根の延長部32を設けないと、低速回転域では推力側で風が抜けてしまっており、トルク特性の向上は顕著なものとは認められなかった。
【0016】
表1及び表2に風速4.0mのときの案内羽根がない場合、従来の8枚の案内羽根を有する風車及び本発明の風車の出力とトルク特性を示し、案内羽根ゼロのとき及び8枚のときの値を基準として、その比率を示した。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】
表1及び2から分かるように、本発明による風車の出力特性は、案内羽根無しに比較して3.4倍、トルク特性は2倍であり、8枚案内羽根の風車と比較しても、夫々1.6倍、1.3倍と大幅な向上が認められた。
【0020】
図5及び図6には、動力羽根2が16枚の第2実施例の出力及びトルク特性を示す。
動力羽根が30枚の第1実施例に比較して出力特性は25%ほど低下しているが、本発明の風力増加用案内羽根と加速された流速吹き込み用案内羽根を設けることによって大幅な性能向上が認められた。
案内羽根の角度は、最適角度から前後10度程度の範囲内で本発明の顕著な効果が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の貫流型風車の断面図。
【図2】従来の対称型案内羽根の風の流れ説明図。
【図3】第1実施例の出力特性を示すグラフ。
【図4】第1実施例のトルク特性を示すグラフ。
【図5】第2実施例の出力特性を示すグラフ。
【図6】第2実施例のトルク特性を示すグラフ。
【図7】従来の貫流型風車の斜視図。
【図8】従来の案内羽根による風の流れの説明図。
【符号の説明】
【0022】
1 風車
20 動力羽根
3 案内羽根(図8)
30 籠
31 風量増加用案内羽根
32 延長部
33 流速吹き込み用案内羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力羽根の外側に案内羽根を有する貫流型風車であって、抵抗側に設けた風量増加用案内羽根が外側に延長する延長部を有する貫流型風車。
【請求項2】
請求項1において、風量増加用案内羽根が風向に対して62度の角度であり、延長部が風を推力側に案内するように折り曲げてある貫流型風車。
【請求項3】
動力羽根の外側に案内羽根を有する貫流型風車であって、推力側に中間から動力羽根側に折り曲げてある加速された流速吹き込み用案内羽根が設けてある貫流型風車。
【請求項4】
請求項3において、加速された流速吹き込み用案内羽根が風向に対して65度の角度であり、中間から動力羽根に向かって折り曲げてある貫流型風車。
【請求項5】
請求項1または2において、推力側に中間から動力羽根側に折り曲げてある加速された流速吹き込み用案内羽根が設けてある貫流型風車。
【請求項6】
請求項5において、加速された流速吹き込み用案内羽根が風向に対して65度の角度であり、中間から動力羽根に向かって折り曲げてある貫流型風車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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