説明

貫流式電解採取用電解槽中で電解採取することにより銅粉末を生成するためのシステムおよび方法

本発明は、貫流式電解採取用電解槽中で従来の電解採取化学(すなわち、アノードにおける酸素発生)を使用して、金属粉末生成物を生成するためのシステムおよび方法に関する。本発明は、従来の電解採取プロセスおよび/または直接電解最終を使用して、金属含有溶液から高品質の金属粉末(銅粉末を含む)の生成を可能とする。貫流式アノードの可能な構造としては、金属、メタルウール、メタルファブリック、他の適切な伝導性非金属材料(例えば、炭素材料)、多孔性エキスパンドメタル構造物、メタルメッシュ、エキスパンドメタルメッシュ、コルゲートメタルメッシュ、多様な金属細長片、多様な金属ワイヤもしくは金属ロッド、織金網(woven wire cloth)、有孔金属板など、またはこれらの組み合わせが挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、電解採取を使用して、金属粉末を生成するためのシステムおよび方法に関する。特に、本発明は、貫流式(flow−through)電解採取用電解槽中で従来の電解採取化学を使用して、銅粉末生成物を生成するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
従来の銅電解採取プロセスは、銅カソード薄膜を生成する。しかしながら、銅粉末が、固体銅カソード薄膜の代替物である。銅カソード薄膜と比較すると、銅粉末の生成は、多くの点で有利であり得る。例えば、相対的に重くて嵩張る銅カソード薄膜の取り扱いとは対照的に、電解採取用電解槽からの銅粉末の除去および取り扱いが、潜在的に容易である。銅カソード薄膜を生成する従来の電解採取作業において、採取が、典型的に5日〜8日毎(電解採取用装置の運転パラメータによる)に行われる。しかしながら、銅粉末生成は、連続的または反連続的プロセスとなる潜在性を有するため、採取が実質的に連続的に実施され、したがって、従来の銅カソード生成設備と比較し、「仕掛品」在庫量を減少させ得る。また、銅粉末を生成する場合、銅カソード薄膜を生成する従来の電解採取プロセスを用いる場合よりも高い電流密度で銅電解採取プロセスを運転する可能性があり、電解採取用電解槽設備についての資本費が生産量1単位当たりベースで縮小し得、かつ、そのようなプロセスを用いて運転費を低下させる可能性もあり得る。また、従来の電解採取を使用するよりも低い濃度の銅を含む溶液から受容可能な効率で、効果的に銅を電解採取することも可能である。さらに、銅粉末は、銅カソード薄膜よりも優れた融解特性を示し、銅粉末は、従来の銅カソード薄膜よりも広い範囲で種々の製品および用途に使用され得る。例えば、銅粉末から直接的に、ロッド、型材、ならびに他の銅製品および銅合金製品を形成することが可能であり得る。銅粉末はまた、直接的に融解し得るか、または融解および従来のロッド生成前にブリケットにされ得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の要旨)
本発明の種々の実施形態に従い、従来の電解採取化学(すなわちアノードにおける酸素発生)および/または直接電解採取(すなわち溶媒抽出技術を使用しない銅含有溶液からの銅電解採取)を使用して、銅粉末を生成かつ採取し得る。
【0004】
本発明が先行技術の欠点および不都合に取り組む方法が、以下により詳細に記載されるが、一般に、本発明の種々の局面に従う銅粉末を生成するためのプロセスは、(i)銅粉末を銅含有溶液から電解採取して、銅粉末粒子および電解質を含むスラリー流を生成する工程;(ii)必要に応じ、少なくとも一部の電解質を、スラリー流中の銅粉末粒子から分離する工程;(iii)必要に応じ、スラリー流を調整してこのスラリー流のpHレベルを調節する工程;(iv)必要に応じ、少なくとも一部の銅粉末粒子を安定化させる工程;(v)液体の大部分を銅粉末粒子から除去する工程;ならびに(vi)必要に応じ、当初スラリー流中に存在した銅粉末粒子を乾燥させて、最終銅粉末生成物を生成する工程を包含する。
【0005】
本発明の別の典型的な実施形態に従い、銅粉末を生成するためのプロセスは、(i)銅粉末を銅含有溶液から電解採取して、銅粉末粒子および電解質を含むスラリー流を生成する工程;(ii)必要に応じ、少なくとも一部の電解質をスラリー流中の銅粉末粒子から分離する工程;(iii)必要に応じ、1つ以上の分粒段階において、スラリー流中の1つ以上の粗大銅粉末粒径分布を、スラリー流中の1つ以上のより微細な銅粉末粒径分布から分離する工程;(iv)必要に応じ、スラリー流を調整して、スラリー流のpHレベルを調節し、そして/または銅粉末粒子を安定化させる工程;(v)液体の大部分を銅粉末粒子から除去する工程;(vi)必要に応じ、当初スラリー流中に存在した銅粉末粒子を乾燥させて、乾燥銅粉末流を生成する工程;(vii)必要に応じ、1つ以上の分粒段階において、乾燥銅粉末流中の1つ以上の粗大銅粉末粒径分布を、乾燥銅粉末流中の1つ以上のより微細な銅粉末粒径分布から分離する工程;ならびに(viii)銅粉末最終生成物をこのプロセスから回収するか、または銅粉末流にさらなる処理を施す工程を包含する。
【0006】
本発明の種々の局面に従い、銅含有溶液から銅粉末を電解採取するためのプロセスおよび装置を、銅粉末粒径および/もしくは粒径分布の最適化、電解槽運転電圧、電解槽電流密度および総所要電力の最適化、カソードからの銅粉末採取の容易さの最大化、ならびに/または電解採取作業から出て行く希薄電解質流中の銅濃度の最適化するように構成する。
【0007】
本発明の他の局面に従い、プロセス段階および運転パラメータを、銅粉末の質、特に銅粉末粒子の表面酸化のレベルについて、そして必要に応じ、粒径分布および最終銅粉末生成物(または複数の最終銅粉末生成物)の物理的性質を最適化するように設計する。さらに、一般的な前提として、本発明の種々の実施形態は、好ましくは、銅含有溶液の導入から1種以上の販売可能な最終銅粉末生成物を提供するまでの所要処理工程の数を減少させ、経済効率を最適化する。さらに、本発明の種々の局面は、改善されたプロセスの経済学を達成する一方で、プロセスの人間工学およびプロセスの安全性を向上させ得る。
【0008】
本発明の種々の局面および実施形態に従うプロセスのこれらの利点および他の利点が、付随する図を参照して以下の詳細な説明を読み、理解することにより、当業者に明らかとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(発明の詳細な説明)
本発明は、特に生成物品質およびプロセス効率に関して、先行技術のプロセスからの大きな進歩を示す。さらに、従来の電解採取プロセスを利用する既存の銅回収プロセスを、多くの場合、本発明が提供する多くの商業的利益を開発するように改造し得る。
【0010】
一般に、本発明の種々の局面に従う銅粉末を生成するためのプロセスは、(i)銅粉末を銅含有溶液から電解採取して、銅粉末粒子および電解質を含むスラリー流を生成する工程;(ii)必要に応じ、少なくとも一部の電解質を、スラリー流中の銅粉末粒子から分離する工程;(iii)スラリー流を調整する工程;(iv)必要に応じ、液体の大部分を銅粉末粒子から分離する工程;ならびに(v)必要に応じ、当初はスラリー流中に存在した銅粉末粒子を乾燥させて、安定した最終銅粉末生成物を生成する工程を包含する。
【0011】
まず図1を参照して、銅粉末プロセス100は、電解採取段階1010を含み、この電解採取段階1010において、銅粉末が銅含有溶液101から電解採取されて、銅粉末スラリー流102を生成する。
【0012】
最初の問題として、本発明の種々の実施形態が、従来の電解採取化学(すなわちアノードにおける酸素発生)を使用し、続いて溶媒抽出法および/または溶液中の銅の濃度についての他の方法(例えば、イオン交換、イオン選択膜技術、溶液再循環、エバポレーションおよび他の方法)、直接電解採取(すなわち、溶媒抽出技術を使用せずに、あるいは溶液中の銅の濃度についての他の方法(例えば、イオン交換、イオン選択膜技術、溶液再循環、エバポレーションおよび他の方法)を使用せずに銅含有溶液から銅を電解採取ること)、ならびに代替アノード反応電解採取化学(すなわち、アノードにおける第一鉄イオンから第二鉄イオンへの酸化)を使用して、銅含有溶液から高品質の銅粉末を生成するためにうまく使用され得ることが理解されるべきである。従来の銅電解採取は、以下の反応により行われる。
【0013】
【化1】

従来のいわゆる銅電解採取化学および電解採取用装置は、当該技術分野において公知である。従来の電解採取作業は、典型的に活性カソード1平方メートル当たり約220A〜約400A(20A/ft〜35A/ft)、最も典型的には、約300A/m〜約350A/m(28A/ft〜32A/ft)の範囲の電流密度にて運転する。さらに電解質循環および/または電解槽への空気噴射を使用することにより、より高い電流密度を達成し得る(例えば、400A/m〜500A/m)。
【0014】
本発明の実施形態の1つの局面に従い、電解採取用装置は、連続して構成されるか、さもなければ電気的接続により構成される多重電解槽を含み、各電解槽は、アノードとカソードとを交互にした一連の電極を含む。典型的な実施形態の1つの局面に従い、各電解採取用電解槽または電解採取用電解槽の各部分は、約4個〜約80個のアノード、および約4個〜約80個のカソードを含む。別の典型的な実施形態の1つの局面に従い、各電解採取用電解槽または電解採取用電解槽の各部分は、約15個〜約40個のアノード、および約16個〜約41個のカソードを含む。しかしながら、本発明に従い、アノードおよび/またはカソードの任意の数を利用し得るということが理解されるべきである。
【0015】
各電解採取用電解槽または各電解採取用電解槽の一部は、好ましくは、回収構造を有するベース部分(例えば、円錐形またはトレンチ形のベース部分など)で構成され得、このベース部分は、カソードから採取された銅粉末生成物を電解採取用電解槽から除去するために回収する。本発明の好ましい実施形態の詳細な説明のために、用語「カソード」は、完全な正電極の集合体(典型的に単一の極棒に接続される)をいう。例えば、極棒から吊り下げられた複数の細いロッドを含むカソードアッセンブリにおいて、用語「カソード」は、単一のロッドを表すためではなく、細いロッドの群を表すために使用される。
【0016】
図1をさらに参照して、電解採取用装置の運転において、銅含有溶液101は、(好ましくは、一端から)電解採取用装置に入り、この装置を貫流し(従って電極を通り過ぎ)、その間、銅は溶液から電解採取されて銅粉末を形成する。銅粉末生成物および電解質を含む銅粉末スラリー流102は、装置のベース部分に集まり、その後に除去され、その一方で、希薄電解質流108は、装置の側部または上端部から、好ましくは、銅含有溶液の装置への入り口とほぼ反対側から装置を出て行く。必要に応じ、本発明の1つの典型的な実施形態に従い、電解採取用装置を出て行く希薄電解質に、濾過を施して懸濁した銅粒子を除去し、その後、電解採取用装置に再利用されるか、他の処理分野で利用されるか、または処分される。さらに、電解採取用装置に入る濃厚な電解質に、電解採取前に濾過を施して、任意の望ましくない固体および/または液体不純物(有機液体不純物を含む)を除去し得る。濾過を利用する場合、一般的に、最終銅粉末生成物により要求される純度(電解採取の前に濾過する場合)、他の処理作業による要求ならびに/またはスラリー流中に存在する固体および/もしくは液体不純物の量により、望ましい濾過の程度を決定する。
【0017】
(アノード特性)
本発明の1つの典型的な実施形態に従い、貫流式アノードを電解槽に組み込む。本明細書中で使用される場合、用語「貫流式アノード」は、電解質が通過し得るように構成された任意のアノードをいう。電解質流動マニフォールドからの流体流が、電解質に動きを与え、貫流式アノードは、電解採取プロセス中、電気化学的電池中の電解質がアノードを貫流することを可能とする。任意の現在公知であるかまたはこれから先に考案される貫流式アノードを、本発明の種々の局面に従って利用し得る。可能な構造としては、これらに限定されないが、金属、メタルウール、メタルファブリック、他の適切な伝導性非金属材料(例えば、炭素材料)、多孔性エキスパンドメタル構造物、メタルメッシュ、エキスパンドメタルメッシュ、コルゲートメタルメッシュ、多様な金属細長片、多様な金属ワイヤもしくは金属ロッド、織金網(woven wire cloth)、有孔金属板など、またはこれらの組み合わせが挙げられる。さらに適切なアノード構造は、平面構造に限定されず、任意の適切な多平面(multiplanar)幾何構造を含み得る。
【0018】
従来の電解採取作業に使用されるアノードは、典型的に、鉛または鉛合金(例えば、Pb−Sn−Caなど)を含む。そのようなアノードを使用することの1つの重大な不都合は、電解採取作業中に、少量の鉛がアノードの表面から放出され、望ましくない沈殿物、「スラッジ」、電解質中に懸濁する微粒子、他の腐食生成物、または電解採取用電解槽中の他の物理的分解生成物の発生、および銅生成物の汚染を、最終的に引き起こす。例えば、鉛含有アノードを使用する作業において生成される銅は、典型的に、約0.5ppm〜約15ppmのレベルで鉛混入物を含む。本発明の好ましい実施形態の1つの局面に従い、アノードは、実質的に無鉛である。したがって、アノードからの鉛による鉛含有沈殿物、「スラッジ」、電解質中に懸濁する微粒子、または他の腐食生成物もしくは物理的分解生成物の発生、および結果として生ずる銅粉末の汚染が、避けられる。そのような鉛アノードを使用する従来の電解採取プロセスにおいて、別の不都合は、アノードの表面腐食特性を制御するため、酸化鉛の形成を制御するため、および/またはシステム中のマンガンの有害効果を妨げるためにコバルトを必要とすることである。
【0019】
本発明の典型的な実施形態の1つの局面に従い、アノードは、いわゆる「バルブ」金属(チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、またはニオブ(Nb)を含む)のうちの1つから形成される。アノードはまた、他の金属(例えば、ニッケル(Ni)もしくは金属合金(例えば、ニッケル−クロム合金)、金属間混合物、またはセラミックもしくは1種以上のバルブ金属を含むサーメット)からも形成され得る。例えば、チタンをニッケル、コバルト(Co)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、または銅(Cu)との合金にして、適切なアノードを形成し得る。別の例では、チタンで銅またはアルミニウム上を被覆し、適切なアノードを形成し得る。とりわけチタンは丈夫で、耐腐食性であるので、1つの典型的な実施例に従い、アノードは、チタンを含むことが好ましい。チタンアノードは、例えば、本発明の種々の実施形態に従って使用される場合、潜在的に、15年以上に至る耐用年数を有する。
【0020】
アノードはまた、必要に応じ、任意の電気化学的に活性な被覆を含み得る。典型的な被覆としては、白金、ルテニウム、イリジウム、または他のVIII族金属、VIII族金属酸化物もしくはVIII族金属を含む化合物、ならびにチタン、モリブデン、タンタルの酸化物および化合物、そして/あるいはそれらの混合物および組み合わせが挙げられる。酸化ルテニウムおよび酸化イリジウムは、チタンアノード上の電気化学的に活性な被覆としての使用に好ましい2つの化合物である。
【0021】
本発明の典型的な実施形態の別の局面に従い、アノードは、チタンメッシュ(あるいは、上記に提示した、他の金属、金属合金、金属間混合物、またはセラミックもしくはサーメット)を含み、その上に、炭素、グラファイト、炭素およびグラファイトの混合物、貴金属酸化物、またはスピネル型被覆を含む被覆を適用する。好ましくは、1つの典型的な実施形態に従い、アノードは、カーボンブラックパウダーおよびグラファイトパウダーの混合物からなる被覆を有するチタンメッシュを含む。
【0022】
本発明の典型的な実施形態に従い、アノードは、炭素複合体、または金属−グラファイト焼結物質を含む。本発明の他の実施形態に従い、アノードを、炭素複合体物質、グラファイトロッド、グラファイト−炭素で被覆したメタリックメッシュなどから形成し得る。さらに、メタリックメッシュ中の金属または金属−グラファイトを焼結させた典型的な実施形態中の金属を、本明細書中に記載し、チタンを使用する実施例により示す;しかしながら、任意の金属が、本発明の範囲から逸脱することなく使用され得る。
【0023】
1つの典型的な実施形態に従い、ワイヤーメッシュを伝導体ロッドに溶接し得、これらのワイヤーメッシュおよび伝導体ロッドは、アノードについて上記されるような物質を含み得る。1つの典型的な実施形態において、ワイヤーメッシュは、1平方インチ当たり80×80ストランドを有する金網スクリーンからなるが、種々のメッシュ構造(例えば、1平方インチ当たり30×30ストランドなど)を使用し得る。さらに、種々の規則的な幾何メッシュ構造および不規則的な幾何メッシュ構造を使用し得る。さらに別の典型的な実施形態に従い、貫流式アノードは、複数の垂直に吊り下げられた金属ロッドもしくは金属合金ロッド、またはグラファイトチューブもしくはグラファイトリングを取り付けた金属ロッドもしくは金属合金ロッドを含み得る。典型的な実施形態の別の局面に従い、アノード本体が取り付けられている吊極棒(hanger bar)は、銅もしくは適切な導電性銅合金、アルミニウム、または他の適切な導電性物質を含む。
【0024】
(カソード特性)
従来の銅電解採取作業は、カソードとして始動用銅薄膜か、またはステンレススチール「ブランク」もしくはチタン「ブランク」を使用する。しかしながら、これらの従来のカソードは、電解質を貫流させず、したがって、本発明の種々の局面に関連した銅粉末の生成には適さない。本発明の典型的な実施形態の1つの局面に従い、電解採取用装置中のカソードは、カソードを通る電解質の流れを可能とするように構成される。本発明の1つの典型的な実施形態に従い、貫流式カソードを、電解採取用装置に組み込む。本明細書中で使用される場合、用語「貫流式カソード」は、電解質が通過し得るように構成される任意のカソードをいう。電解質流動マニフォールドからの流体流が、電解質に動きを与える一方で、貫流式カソードは、電解採取プロセス中、電解採取用電解槽中の電解質が、カソードを貫流することを可能とする。
【0025】
種々の貫流式カソード構造が適し得る。その適切な貫流式構造としては:(1)多重平行金属ワイヤー、細いロッド(六角ロッドまたは他の幾何構造を含む)、(2)電解質流動と一直線にに並ぶかもしくは流れの方向に対し一定の角度で傾いた、多重平行金属細長片、(3)メタルメッシュ、(4)多孔性エキスパンドメタル構造物、(5)メタルウールもしくはメタルファブリック、ならびに/または(6)導電性ポリマーが挙げられる。このカソードを、銅、銅合金、チタン、アルミニウム、あるいは任意の他の金属または金属および/もしくは他の物質の組み合わせから形成し得る。カソードの表面仕上げ(例えば、研磨されているか非研磨であるか)が、銅粉末の採取能を影響し得る。研磨もしくは他の表面仕上げ、表面被覆、表面酸化層(もしくは複数の表面酸化層)、または任意の他の適切なバリヤー層を、好都合に使用し、採取能を高め得る。代替的に、非研磨の表面も利用し得る。
【0026】
本発明の種々の実施形態に従い、カソードを、現在公知であるかまたは当業者によってこれから先に考案される任意の方法で構成し得る。
【0027】
電気化学電解槽の運転中に電解質中に浸かるカソード部分の合計表面積の全てもしくは実質的に全てを、本明細書中および一般的に文献中で、カソードの「活性」表面積という。これは、電解採取中にその上に銅粉末が形成されるカソードの一部分である。本発明の典型的な実施形態に従い、電解採取用電解槽中のアノードおよびカソードを、電解槽中に等間隔にして並べ、電極間の電流の電気的短絡を最小限にしながら、電力消費および物質伝達を最適化するために、できる限り電極間の間隔を接近させて維持する。従来の電解採取用電解槽中のアノード/カソードの間隔は、典型的に、アノードからカソードまで約2インチ以上であるが、本発明の種々の局面に従って構成される電解採取用電解槽は、約0.5インチ〜約4インチ、好ましくは約2インチ未満のアノード/カソード間隔を示すことが好ましい。より好ましくは、本発明の種々の局面に従って構成される電解採取用電解槽は、約1.5インチ以下のアノード/カソード間隔を示す。本明細書中で使用される場合、「アノード/カソード間隔」は、アノード吊極棒の中心線から、隣接するカソード吊極棒の中心線までを測定される。
【0028】
本発明の典型的な実施形態の1つの局面に従い、電解採取用電解槽中で1つ以上の貫流式カソードを、1つ以上の貫流式アノードと組み合せて利用する場合、アノード表面とカソード表面との間で、イオン種の物質伝達に大いなる向上を達成し得る。
【0029】
(電解質流動特性)
一般的に述べると、本明細書中に記載されるプロセスの詳細事項が実用的となるような電解採取用電解槽中で電極間の電解質の十分な流動および循環を維持し得る任意の電解質ポンプ輸送、循環、または攪拌システムを、本発明の種々の実施形態に従って使用し得る。
【0030】
本発明の典型的な実施形態に従って、電解質流動速度を、活性カソード1平方フィート当たり約0.05ガロン/分〜活性カソード1平方フィート当たり約30ガロン/分のレベルで維持する。好ましくは、電解質流動速度を、活性カソード1平方フィート当たり約0.1ガロン/分〜活性カソード1平方フィート当たり約0.75ガロン/分のレベル、好ましくは、活性カソード1平方フィート当たり約0.2〜約0.3ガロン/分のレベルで維持する。本発明に従って有用な、実施可能である最適電解質流動速度は、プロセス装置の特有の構造に依存し、したがって、活性カソード1平方フィート当たり約30ガロン/分を上回る流動速度、または活性カソード1平方フィート当たり約0.05ガロン/分未満の流動速度は、本発明の種々の実施形態に従って、最適となり得ることが認識されるべきである。さらに、電解槽中の電解質の動きを攪拌(例えば、機械的攪拌および/または気体/溶液注入デバイスの使用による攪拌)により増大して、物質伝達を向上させ得る。
【0031】
(槽電圧)
本発明の典型的な実施形態に従い、約1.5V〜約3.0V、好ましくは、約1.6V〜約2.5V、より好ましくは、約1.7V〜約2.0Vの総槽電圧を達成し得る。電解採取用電解槽中の槽電圧を最適化する機序は、本発明の種々の典型的な局面および実施形態にしたがって変化する。さらに、達成可能な総槽電圧は、多数の他の相互に関係する要因(電極間隔、電極の構造および構成材料、電解質中の酸濃度および銅濃度、電流密度、電解質温度、ならびに(それらよりも低い程度で)電解採取プロセスへの任意の添加剤(例えば、凝集剤、界面活性剤など)の性質および量を含む)に依存している。
【0032】
さらに、電圧の過電圧の管理と共に、アノードおよびカソードの電流密度の独立制御が、総槽電圧および電流密度の効果的な制御を可能とするために利用され得ることを、本発明者は認識した。例えば、電解採取用電解槽のハードウェアの構造(これに限定されないが、カソード表面積とアノード表面積との比率を含む)を、本発明に従って修正し、電解槽運転条件、電流効率、および全体的な電解槽効率を最適化し得る。
【0033】
(電流密度)
電解採取用電解槽の運転電流密度は、銅粉末生成物の形態に影響し、直接的に、電解槽中の銅粉末の生成速度に影響する。一般に、電流密度が高くなると、銅粉末のかさ密度および粒径が縮小し、銅粉末の表面積が増大するが、電流密度を下げると、銅粉末のかさ密度は拡大する(電流電圧が低すぎると、一般的に望ましくないカソード銅を生ずる場合がある)。例えば、電解採取用電解槽による銅粉末の生成速度は、その電解槽に適用される電流にほぼ比例する。つまり、活性カソード1平方フィート当たり100Aで運転している電解槽は、他の全ての運転条件(活性カソード面積を含む)が変わらなければ、活性カソード1平方フィート当たり20Aで運転している電解槽の約5倍の銅粉末を所定時間に生成する。しかしながら、電解槽の備品の電流容量が、1つの制限要因である。また、高電流密度で電解採取用電解槽を運転する場合、電解槽を通る電解質の流動速度を、電解採取に利用可能な電解質中の銅を枯渇させないように調節する必要があり得る。さらに、高電流密度で運転する電解槽は、低電流密度で運転する電解槽よりも電力受容が増大し得、そのようなものとして、経済学もまた、運転パラメータの選択、および個々のプロセスの最適化に役割を果たす。
【0034】
本発明の典型的な実施形態に従い、電解採取用装置の運転電流密度は、活性カソード1平方フィート当たり約10A〜約200Aの範囲に及び、好ましくは、活性カソード1平方フィート当たり約90A〜約100Aである。電解採取用電解槽中の運転電流密度を最適化するための機序は、本発明の種々の典型的な局面および実施形態に従って変化する。
【0035】
(温度)
本発明の典型的な実施形態の1つの局面に従い、電解採取用電解槽中の電解質温度を、約40°F〜約150°Fで維持する。1つの好ましい実施形態に従い、電解質を、約90°F〜約140°Fの温度で維持する。しかしながら、より高い温度を好都合に使用し得る。例えば、直接電解採取の作業において、140°Fよりも高い温度を利用し得る。あるいは、特定の用途において、より低い温度を好都合に使用し得る。例えば、希薄銅含有溶液の直接電解採取が望ましい場合、85°F未満の温度を利用し得る。
【0036】
電解採取用電解槽中の電解質の運転温度を、当該技術分野において周知の種々の方法(例えば、熱交換、浸漬発熱体(immersion heating element)、インライン加熱デバイス(例えば、熱交換器)を含む)のうち任意の1つ以上の手段により、好ましくは効率のよいプロセス制御のために1つ以上のフィードバック温度制御手段と連結して制御し得る。
【0037】
(酸濃度)
本発明の典型的な実施形態に従い、電解採取のための電解質中の酸濃度を、電解質1リットル当たり約5g〜約250gの酸のレベルで維持し得る。本発明の好ましい実施形態の1つの局面に従い、電解質中の酸濃度を、上流プロセスに応じ、電解質1リットル当たり約150g〜約205gの酸、好ましくは、電解質1リットル当たり約190gの酸のレベルに好都合に維持し得る。
【0038】
(銅濃度)
本発明の典型的な実施形態に従い、電解採取のための電解質中の銅濃度を、電解質1リットル当たり約5g〜約40gの銅のレベルに好都合に維持する。1つの典型的な実施形態に従い、銅濃度を約10g/L〜約30g/Lのレベルに維持し、好ましくは、銅濃度を約15g/Lのレベルに維持する。しかしながら、本発明の種々の局面を、これらのレベルよりも高い銅濃度および/または低い銅濃度を使用するプロセスに有益に適用し得、場合により、約0.5g/L〜約5g/Lの上記より低い銅濃度レベル、および約40g/L〜約50g/Lの上記より高い銅濃度レベルが適用される。
【0039】
(鉄濃度)
本発明の典型的な実施形態に従い、電解質中の合計鉄濃度を、電解質1リットル当たり約0.01g〜約3.0gの鉄のレベルに維持する。しかしながら、合計鉄濃度は、電解質中の鉄の溶解度に依存する性質のものであるため、電解質中の合計鉄濃度は、本発明の種々の実施形態に従って変化し得ることが留意される。電解質中の鉄の溶解度は、他のプロセスパラメータ(例えば、酸濃度、銅濃度、および温度など)により変化する。本発明の典型的な実施形態の1つの局面に従い、電解質中の鉄濃度を、可能な限り低いレベルで維持する。この場合、電極表面を「被覆」し、槽電圧に不利益な影響を及ぼす傾向を有する電解質中のマンガンの影響を、減殺するのに十分な鉄のみを電解質中に維持する。
【0040】
(銅粉末の採取)
インサイチュでの採取形態は、カソードの動きを最小限にし、継続的に銅粉末の除去を促進することが望ましいが、本発明の種々の局面に従い、カソードから銅粉末生成物を採取するためのあらゆる機序を利用し得る。カソード表面から電解採取用装置のベース部分へと銅粉末の放出を促進する機能を果たし、本発明の他の局面に従う銅粉末の回収およびさらなる処理を可能とする、現在公知であるかまたはこれから先に考案される任意のデバイスを使用し得る。本発明の特定の実施形態にとって最適な採取機序は、多数の相互に関係する要因、主に電流密度、電解質中の銅濃度、電解質流動速度、および電解質温度に大いに依存する。寄与する他の要因としては、電解採取用装置中の混合レベル、採取方法の頻度および継続時間、および任意のプロセス添加剤(例えば、凝集剤、界面活性剤など)の存在および量が挙げられる。
【0041】
インサイチュでの採取形態は、自動採取(下記)によるかまたは他のデバイスそのものにより、電解採取用電解槽からの銅粉末の除去を促進するために、カソードを取り出して取り扱う必要性を最小限にすることが望ましい。さらに、インサイチュでの採取形態は、固定電極電解槽の設計の使用を好都合に許容し得る。そのようなものとして、あらゆる機序および形態を利用し得る。
【0042】
可能な採取機序の例としては、振動(例えば、所定の時間間隔でカソード表面から銅粉末をはずすために1つ以上のカソードに取り付けられた1つ以上の振動および/または衝撃デバイス)、パルス流動システム(例えば、カソード表面から銅粉末をはずすために短時間で劇的に上昇させた電解質流動速度)、電解槽へのパルス電力供給の使用、超音波の使用、およびカソード表面から銅粉末を除去するための他の機械的な取り外し手段(例えば、断続的または連続的な気泡)の使用が挙げられる。あるいは、ある条件下において、電解質流動速度が、銅粉末が形成されると同時に、すなわち析出および結晶成長が起こった直後にカソード表面から銅粉末をはずすのに十分である場合に、「自動採取」または「動的採取」を達成し得る。
【0043】
本発明の1つの実施形態の局面に従い、電解質と共に電解槽を通って運ばれる微細銅粉末を、適切な濾過、沈降分離、または他の微粒子除去/回収システムにより除去する。
【0044】
再度図1を参照し、本発明の典型的な実施形態の1つの局面に従い、電解採取段階1010からの銅粉末スラリー流102に、必要に応じ、固体/液体分離(工程1020)を施して、流れ102中の電解質量を減少させる。必要に応じて成される固体/液体分離段階1020は、現在公知であるかまたはこれから先に開発される、少なくとも一部の電解質を銅粉末スラリー流102中の銅粉末から分離する(流れ104)ための任意の装置(例えば、クラリファイヤー、スパイラル分級器、他のスクリュー式デバイス、向流式デカンテーション(CCD)回路、沈殿濃縮装置、濾過装置、コンベア式デバイス、重力分離デバイス、または他の適切な装置など)を含み得る。本発明の典型的な実施形態の1つの局面に従い、選択される固体/液体分離装置は、銅粉末粒子の急速な表面酸化の原因となり得る大気への銅粉末の曝露を妨げながら、銅粉末からの電解質の分離を可能とする。
【0045】
本発明の典型的な実施形態の必要に応じてなされる局面に従い、固体/液体分離段階1020を出て行く少なくとも一部の電解質流104を、電解採取用電解槽に再利用し得(流れ112)、かつ/あるいは希薄電解質流108と組み合せ得る(流れ111)。
【0046】
本発明の1つの実施形態に従い、電解採取段階1010からの銅粉末スラリー流102は、約5重量%〜約30重量%までの固体含有量を有する。しかしながら、電解採取段階1010からの銅粉末スラリー流の固体含有量は、電解採取段階1010で選択される銅粉末採取方法に大いに依存している。好ましくは、固体/液体分離段階1020(使用される場合)を、銅粉末のかさ密度および形態にさらに依存し、少なくとも約20重量%、そして好ましくは、約30重量%を上回る、例えば、約60重量%〜約80重量%以上の範囲における固体含有量を有する濃縮銅粉末スラリー流103を生成するように構成する。高い固体含有量は、特に粗大もしくは粒状の銅粉末を採取する場合、好都合であり得る。銅粉末スラリー流にさらなる処理を施す前に、銅粉末から可能な限り多くの電解質を分離することが、一般的に望ましく、そうすることにより、下流処理のコストを(例えば、プロセス流量、したがって資本および運転費を減少させることにより)潜在的に減少させ、最終銅粉末生成物の質を(例えば、電解質による銅粉末粒子の表面酸化を減少させること、および同伴不純物のレベルを減少させることにより)潜在的に上昇させる。
【0047】
続けて図1を参照して、本発明の典型的な実施形態に従い、固体/液体分離段階1020を出た後、濃縮した銅粉末スラリー流103に調整段階1030を施して、乾燥処理に備えて銅粉末をさらに調整する。典型的な実施形態の種々の局面に従い、1つ以上の処理工程を含む調整段階1030を、(i)濃縮した銅粉末スラリー流103のpHを調節し、(ii)銅粉末粒子の表面を安定させて表面酸化を妨げ、および/または(iii)さらに、湿った銅粉末生成物を形成する銅粉末スラリー流中の過剰液体量を減少させるように構成する。濃縮した銅粉末スラリー流103のpHの調節および銅粉末スラリー流103中の銅粉末粒子表面の安定化を、調整段階1030に1種以上の調整剤105を添加することにより促進する。
【0048】
本発明の実施形態の1つの典型的な局面に従い、調整段階1030は、現在公知であるかまたはこれから先に開発される、上記の目的を達成し得る、特に、銅粒子の実質的に全ての表面を調整剤105で適度に等しく処理し得る任意の装置を含む。本発明の1つの典型的な実施形態に従い、調整段階1030は、遠心分離機の使用を含む。調整段階1030の典型的な処理パラメータを、本発明の別の実施形態と関連して以下で検討する。
【0049】
本発明の典型的な実施形態の1つの局面に従い、脱水段階1040を、銅粉末流106中の大部分の液体が、可能な限り経済的に、銅粉末の大部分から分離され得るように使用することは、好都合であり得る。例えば、遠心分離、濾過装置、または他の適切な固体/液体分離装置を使用し得る。本発明のこの実施形態の1つの局面に従い、この分離を、調整段階1030において、銅粉末スラリーを調整する間、ならびに/あるいは銅粉末スラリーの調整に関連して(例えば、遠心分離調整工程の使用を実行する場合に調整段階1030と関連して)達成し得る。あるいは、特定の実施形態において、さらなる調整および/または処理(例えば、乾燥処理)なしに後の処理に使用し得る銅粉末生成物を生成するために、さらなる脱水が必要となり得る。
【0050】
さらに図1を参照して、必要に応じて成される脱水段階1040を出た後、銅粉末流107に、必要に応じて成される乾燥段階1050を施して、最終銅粉末生成物流110を生成し得る。本発明の実施形態の典型的な局面に従い、乾燥段階1050は、現在公知であるかまたはこれから先に開発される、最終生成物として梱包するため、ならびに/あるいは下流プロセスへの移動のため、および代替的な銅生成物の形成のための下流処理工程のために、銅粉末を十分に乾燥させ得る任意の装置を含む。たとえば、乾燥段階1050は、気流乾燥機、サイクロン、乾燥焼結装置、コンベヤベルト乾燥機、および/または他の適切な装置を含み得る。さらに、銅粉末を融解させる場合(例えば、線材圧延機、およびシャフト炉)には、融解プロセスからの過剰な熱を、銅粉末生成物を乾燥させるために有益に使用し得る。
【0051】
本発明の別の典型的な実施形態に従い、銅粉末を生成するためのプロセスは、(i)銅粉末を銅含有溶液から電解採取して、銅粉末粒子及び電解質を含むスラリー流を生成する工程;(ii)必要に応じ、少なくとも一部の電解質をスラリー流中の銅粉末粒子から分離する工程;(iii)必要に応じ、1つ以上の分粒段階においてスラリー流中の1つ以上の粗大銅粉末粒径分布を、スラリー流中の1つ以上のより微細な銅粉末粒径分布から分離する工程;(iv)スラリー流を調整する工程;(v)必要に応じ、液体の少なくとも一部を銅粉末粒子から分離する工程;(vi)必要に応じ、スラリー流中の銅粉末粒子を乾燥させて、乾燥銅粉末流を生成する工程;(vii)必要に応じ、1つ以上の分粒段階において、乾燥銅粉末流中の1つ以上の粗大銅粉末粒径分布を、乾燥銅粉末流中の1つ以上のより微細な銅粉末粒径分布から分離する工程;ならびに(viii)銅粉末最終生成物をプロセスから回収するか、または銅粉末流にさらなる処理(例えば、ブリケット形成、押出成形、融解、または他の下流プロセス)を施す工程を包含する。
【0052】
次に図2を参照すると、銅粉末プロセス200は、本発明の別の実施形態の種々の局面を例示する。図示される実施形態に従い、銅含有溶液201を、電解採取段階2010に与える。電解採取段階2010を、銅粉末及び電解質を含む銅粉末スラリー流203および希薄電解質流202を生成するように構成する。希薄電解質流202を、上流処理作業(例えば、銅含有溶液201を生成するために使用される上流リーチング作業など)に再生利用するか、他の処理作業において使用するか、または収容するかもしくは処分する。銅生成物を融解する場合(例えば、線材圧延機またはシャフト炉内で)、融解プロセスからの過剰な熱を、この銅生成物を乾燥させるために有益に使用し得る。
【0053】
本発明の典型的な実施形態の1つの局面に従い、次いで必要に応じ、固体/液体分離(もしくは「脱水」)段階2020において、銅粉末スラリー流203に固体/液体分離を施す。この固体/液体分離段階2020は、図1に関連して上記されるように、現在公知であるかまたはこれから先に開発される、少なくとも一部のバルク電解質(流れ204)を、銅粉末スラリー流203中の銅粉末から分離するための任意の装置(例えば、クラリファイヤー、スパイラル分級器、他のスクリュー式デバイス、向流式デカンテーション(CCD)回路、沈殿濃縮装置、濾過装置、重力分離デバイス、コンベア式デバイス、または他の適切な装置)を含み得る。そのような好都合なバルク液体除去工程は、さらなる調整および/または処理なしに後の処理に使用し得る銅粉末生成物を生成し得る。好ましくは、電解採取用電解槽中での半連続的な銅粉末採取を、銅粉末生成物がより連続的に回収されるように、バッチ下流処理(例えば、脱水および調整)と好都合に適合させる。例えば、多重固体/液体分離デバイスを、調整段階と関連して使用し得、そのようなものとして、下流の固体/液体分離を排除し得る。
【0054】
さらに図2を参照して、本発明の実施形態の必要に応じて成される局面に従い、必要に応じて成される固体/液体分離段階2020から得られる濃縮した銅粉末スラリー(流れ205)を、銅粉末スラリー槽2030に回収し得る。銅粉末スラリー槽2030を、濃縮した銅スラリーを収容し、混合、攪拌または他の手段によってスラリーの均質性を維持するように構成する。さらに、プロセス水215および/またはpH調節剤216(例えば、水酸化アンモニウムなど)を、必要に応じ、銅粉末スラリー槽に加え、スラリー中の銅粉末を安定化させてスラリーの均質性の維持を助け、かつ/あるいはさらなる処理に備えてスラリーのpHを調節する。本発明の典型的な実施形態の別の局面に従い、スラリー槽2030を、保管および/または処理の間、銅粉末スラリーが大気に曝露しないように構成する(そうした曝露は、上記されるように、銅粉末粒子表面の完全性に有害な影響を及ぼすため)。
【0055】
スラリー槽2030からの排出の際、スラリー流206に、必要に応じ、分粒段階2040を施し得る。利用される場合、分粒段階2040の目的は、所望の最終銅粉末生成物についての詳細事項に従い、スラリー流中のより粗大な銅粉末粒子をより微細な銅粉末粒子から分離することである。例えば、最終銅粉末生成物が銅型または他の製品を(例えば、直接回転押出成形により)押出成形するために使用される場合、より微細な銅粉末粒子を含むスラリー流が好ましいが、最終銅粉末生成物が、ロッドまたは他の製品形成のために融解される場合は、比較的粗大な銅粉末粒子が好ましくなり得る。本明細書で使用される場合、用語「粗大な」は、約150ミクロンよりも(プラス約100メッシュの範囲で)大きな銅粉末粒子を表す。用語「微細な」は、約45ミクロンよりも(マイナス約325メッシュの範囲で)小さな銅粉末粒子を表すために、本明細書で使用される。これらの範囲の間にある粒子を「中間」粒子と呼ぶ。
【0056】
望まれる場合、分粒を銅粉末生成プロセスにおける任意の適切な段階で実施し得、任意の段階の適切さは、種々の要因(電解採取段階を出て行く銅粉末粒子の粒径、分粒装置の構造および建設材料、ならびに他の工学的プロセス要件および経済学的プロセス要件)に依存している。本発明の典型的な実施形態に従い、利用される場合、分粒を、電解採取用電解層、任意のスラリー層(調整前に)を出て行くスラリー流および/または銅粉末生成物流に対して実施し得る。そのような処理は、微細粒子の安定化および粗大粒子の異なる処理を考慮し得る。結局、分粒を実施し、異なる粒径分布、または望まれる場合、種々のそれらの混合物を、次に検討されるように、さらに処理し得る。
【0057】
再度、図2を参照すると、本発明の典型的な実施形態に従い、必要に応じて成される分粒段階2040を出た後、スラリー流207(または、分流を利用しない場合は、スラリー流206)に必要に応じて調整作業2050を施して、脱水および必要に応じて成される乾燥に備え、銅粉末および/または溶液を調整し得る。本発明の実施形態の1つの典型的な局面に従い、調整作業2050は、使用される場合、脱水作業2060と共に実施し得る。
【0058】
本発明の1つの実施形態に従い、必要に応じて成される調整作業2050は、洗浄、pH調節、不純物の除去、安定化、および/または他の調整作業を含み得る。
【0059】
本発明の典型的な実施形態に従い、銅スラリーを、洗浄剤208および/または安定化剤209と接触させ得る。洗浄剤208は、任意の液体物質、水、水酸化アンモニウム、および/またはそれらの混合物を含み得る。必要に応じ、洗浄剤208は、さらなる物質(例えば、界面活性剤、石鹸など)を含み得る。本発明の典型的な実施形態の1つの局面に従い、洗浄剤208を、洗浄前に加熱し得、これにより、不純物の除去を向上させ得る。安定化剤209を、銅粉末粒子の表面酸化を妨げるのに適した任意の薬剤であり得る(表面酸化は、銅粉末生成物の価値および/または質を低下させ、かつ/あるいは下流作業または適用に悪影響を与え得る)。
【0060】
典型的な実施形態の種々の局面に従い、安定化剤209は、安定剤と組み合わせた有機表面活性剤を含む。有機表面活性剤を、安定剤の表面張力を低下させるために使用し得、安定化剤に銅粉末粒子の全表面を被覆させ得る。他方で、安定化剤は、好ましくは粒子を被覆し、酸化を妨げる「活性な」薬剤であり、したがって、適切な貯蔵寿命を銅粉末生成物に与え、酸化性雰囲気(すなわち、空気)中の銅粉末の移動を可能とする。一部の適切な安定化剤としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール(BTA),動物性膠、魚性膠、石鹸などが挙げられる。しかしながら、特定の環境下において、例えば、銅粉末生成物を生成した直後に(例えば、融解および鋳造により)処理することが意図する場合、あるいは酸化した銅生成物が望ましい場合、安定化剤の使用は不要であり得る。さらに、処理中の銅粉末粒子の表面酸化を妨げる他の方法(例えば、銅粉末処理の1つ以上の段階中の帯電流動床の使用または窒素ブランケッティングの使用など)が、安定化剤の必要性を減少させ、排除し得る。しかしながら、長期間の間、銅粉末生成物を貯蔵することが望ましい場合、安定化剤は望ましくあり得る。
【0061】
本発明の実施形態の典型的な局面に従い、脱水段階2060を、銅粉末流211中の大部分の液体を、可能な限り経済的に、銅粉末の大部分から分離させるために使用することが好都合である。例えば、遠心分離、濾過または他の適切な固体/液体分離装置を使用し得る。
【0062】
本発明のこの実施形態の1つの局面に従い、この分離を、銅粉末スラリーを調整する間、または銅粉末スラリーの調整と関連して(例えば、必要に応じて成される調整作業2050と関連して)達成し得る。そのように好都合な脱水工程は、さらなる調整および/または処理(例えば、乾燥)なしに後の処理に使用し得る銅粉末生成物を生成し得る。典型的な実施形態に従い、銅粉末を洗浄し、安定化した後、脱水工程2060を、銅粉末スラリー211から、可能な限り多くの液体を抜き、湿った銅粉末流212を生成するために利用する。次いで、湿った銅粉末流212に、必要に応じて成される乾燥段階2070を施して、最終銅粉末生成物流213を生成し得る。
【0063】
本発明の実施形態の典型的な局面に従い、必要に応じて成される乾燥段階2070は、現在公知であるかまたはこれから先に開発される、最終生成物として梱包するため、ならびに/あるいは下流プロセスに出荷するためおよび代替銅生成物の形成のための下流処理工程ために十分に銅を乾燥させ得る任意の装置を含む。例えば、乾燥段階2070は、気流乾燥機、流動床乾燥機、回転乾燥機、サイクロン、乾燥焼結装置、コンベヤベルト乾燥機、および/または直接乾燥もしくは間接乾燥に適した他の装置を含み得る。典型的な実施形態に従い、必要に応じて成される乾燥段階2070は、銅粉末粒子上を被覆する安定剤の完全性を乱すことなく銅粉末粒子の急速な乾燥を可能とする気流乾燥機を含む。乾燥段階2070において、湿った銅粉末流212を、銅粉末粒子の水分含有量を減少させるのに十分な期間、十分に熱い大気と接触させる。銅粉末生成物流213の最終水分含有量は、銅粉末の任意の下流処理の性質に応じて(例えば、分粒、梱包、銅型およびロッドの直接成形、鋳造、ブリケット形成などを通じて)変わり得る。この点で、特定の適用におけるかなりの水分含有量を、有害な影響を後の処理に与えることなしに保持し得る。
【0064】
上記したように、さらに図2を参照して、必要に応じて成される乾燥段階2070を出た後、分粒段階2080において、必要に応じ、銅粉末生成物流213に分粒を施して、最終銅粉末生成物214中の所望の粒径分布を達成し得る。次いで、最終銅粉末生成物214を梱包作業2090(例えば、バギング作業)に送るか、あるいは最終銅粉末生成物214にさらなる処理2095を施して最終銅生成物の性質を変更し得る。
【0065】
本発明を、多数の典型的な実施形態を参照して上記した。本明細書中に示され、説明される特定の実施形態は、本発明および最良の形態の実例となり、いかなる場合も、本発明の範囲を限定することを意図しない。この開示内容を読んだ当業者は、典型的な実施例に対する変更および改変を、本発明の範囲から逸脱することなく成し得ることを認識する。例えば、本発明の種々の局面および実施形態を、銅以外の金属(例えば、ニッケル、亜鉛、コバルトなど)の電解採取に適用し得る。本発明の特定の好ましい局面を、典型的な実施形態によって本明細書中に記載するが、本発明のそのような局面を、現在公知であるかまたはこれから先に考案される、あらゆる適切な手段によって達成し得る。したがって、これらの変更もしくは改変、および他の変更もしくは改変を、本発明の範囲内に含むことを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
本発明の主題は、明細書の末尾部分において詳しく指摘され、明白に主張される。しかしながら、本発明のより完全な理解は、図と関連して考慮される場合に、詳細な説明および特許請求の範囲を参照することにより、最もうまく得られ得る。図中および詳細な説明中の同じ数字は、同じ要素を表す。
【図1】図1は、本発明の1つの典型的な実施形態に従って、銅粉末を生成するためのプロセスの種々の局面を図示した流れ図である。
【図2】図2は、本発明の別の典型的な実施形態に従って、銅粉末を生成するためのプロセスの種々の局面を図示した流れ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解採取により銅粉末を生成するプロセスであって:
貫流式電解採取用電解槽へ銅含有溶液を導入する工程;
該銅含有溶液から銅粉末を電解採取して、銅粉末粒子および電解質を含むスラリー流を生成する工程であって、該銅粉末を電解採取する工程は、アノードにおいて酸素ガスを生成し、カソードにおいて銅粉末を形成する工程を包含し、ここで総槽電圧が約1.5ボルト〜約3.0ボルトである工程
を包含する、プロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスであって、さらに、前記スラリー流中の銅粉末粒子から少なくとも一部の電解質を分離する工程を包含する、プロセス。
【請求項3】
請求項1に記載のプロセスであって、さらに、少なくとも一部の前記スラリー流を調整して、残留同伴電解質中に含まれる混入物および/または不純物を除去する工程を包含する、プロセス。
【請求項4】
請求項2に記載のプロセスであって、さらに、少なくとも一部の前記スラリー流を調整する工程を包含する、プロセス。
【請求項5】
請求項4に記載のプロセスであって、少なくとも一部の前記スラリー流を調整する工程が、少なくとも一部の該スラリー流を安定化させる工程を包含する、プロセス。
【請求項6】
請求項5に記載のプロセスであって、さらに、当初スラリー流中に存在した銅粉末粒子を乾燥させて、銅粉末生成物を生成する工程を包含する、プロセス。
【請求項7】
請求項1に記載のプロセスであって、さらに、前記銅粉末生成物に、分粒、梱包、直接成形、鋳造、ブリケット形成、押出成形または融解のうちの少なくとも1つを施す工程を包含する、プロセス。
【請求項8】
請求項1に記載のプロセスであって、さらに、分粒段階において、前記スラリー流中の少なくとも一部の粗大銅粉末粒子を、該スラリー流中の少なくとも一部の微細な銅粉末粒子から分離する工程を包含する、プロセス。
【請求項9】
請求項1に記載のプロセスであって、さらに、少なくとも一部の前記スラリー流を洗浄する工程を包含する、プロセス。
【請求項10】
請求項1に記載のプロセスであって、さらに、前記電解採取用電解槽を槽電圧で運転する工程を包含し、該槽電圧が、約2.0ボルト未満である、プロセス。
【請求項11】
請求項4に記載のプロセスであって、前記調整する工程が、少なくとも一部の前記スラリーを安定化剤と接触させる工程を包含する、プロセス。
【請求項12】
請求項4に記載のプロセスであって、前記調整する工程が、少なくとも一部の前記スラリーを、有機界面活性剤および安定化剤と接触させる工程を包含する、プロセス。
【請求項13】
請求項1に記載のプロセスであって、さらに:
前記スラリー流中で少なくとも一部の銅粉末粒子を洗浄して、廃液流を生成する工程;および
少なくとも一部の該廃液流を、該銅粉末粒子から分離する工程
を包含する、プロセス。
【請求項14】
電解採取により銅粉末を生成するためのプロセスであって、本質的に:
貫流式電解採取用電解槽に、銅含有溶液を導入する工程;
銅含有溶液から銅粉末を電解採取して、銅粉末粒子および電解質を含むスラリー流を生成する工程であって、該銅粉末を電解採取する工程が、アノードにおいて酸素を生成する工程およびカソードにおいて銅粉末を形成する工程を包含する工程;
必要に応じ、少なくとも一部の該電解質を、該スラリー流中の銅粉末粒子から分離する工程;
必要に応じ、分粒段階において、該スラリー流中の少なくとも一部の粗大銅粉末粒子を、該スラリー流中の少なくとも一部の微細銅粉末粒子から分離する工程;
少なくとも一部の該スラリー流を調整する工程;
必要に応じ、少なくとも一部のバルク液体を、該スラリー流中の銅粉末粒子から分離する工程;
必要に応じ、当初該スラリー流中に存在した銅粉末粒子の少なくとも一部を乾燥させて銅粉末生成物を生成する工程;および
必要に応じ、該銅粉末生成物に、分粒、梱包、直接成形、鋳造、ブリケット形成、押出成形または融解のうちの少なくとも1つを施す工程
からなる、プロセス。
【請求項15】
請求項15に記載のプロセスであって、前記調整する工程が、少なくとも一部の前記スラリーを、安定剤と接触させる工程を包含する、プロセス。
【請求項16】
請求項15に記載のプロセスであって、前記調整する工程が、少なくとも一部の前記スラリーを、有機界面活性剤および安定化剤と接触させる工程を包含する、プロセス。
【請求項17】
請求項15に記載のプロセスであって、前記銅粉末を電解採取する工程が、前記電解採取用電解槽を槽電圧で運転する工程を包含し、該槽電圧が、約3.0ボルト未満である、プロセス。
【請求項18】
請求項15に記載のプロセスであって、前記銅粉末を電解採取する工程が、前記電解採取用電解槽を槽電圧で運転する工程を包含し、該槽電圧が、約2.0ボルト未満である、プロセス。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−507626(P2008−507626A)
【公表日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522587(P2007−522587)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/025158
【国際公開番号】WO2006/020022
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(506029233)フェルプス ドッジ コーポレイション (7)
【Fターム(参考)】