説明

貫通防害性製品

EN12562により測定された破断伸度が8%よりも小さい繊維の多数の布地層からなる貫通防害性製品が提案される。ここで、少なくとも1つの布地層内に少なくとも2つの繊維群が存在し、第1群の複数の領域は8%〜80%のワルツによる第1布地密度DG1を有しそして第2群の複数の領域は8%〜80%のワルツによる第2布地密度を有しそしてDG1とDG2との差は少なくとも3%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、EN12562により測定された破断伸度が8%より小さい繊維からなるヤーンで作成された布地の複数層からなる、貫通を妨害する製品に関する。
【背景技術】
【0002】
布地の複数層から作成された、貫通を妨害する製品は一般に知られている。文献JP61275440Aはヤーンがサテン織になっている布地の複数層の抗弾道性ベストを開示している。リネン織のヤーンと対比して、例えば、サテン織のヤーンは布地構造内に比較的弱い強さで固定されている。文献JP61275440Aによれば、それは、リネン織の布地層を持つベストのエネルギー吸収と比較して、弾丸のベストによるエネルギー吸収を改善する。しかしながら、サテン織を持つ布地層を取扱う困難性が欠点となっている。例えば、抗弾道性物品の製造の際に、そのような布地層を切断し重ねることは非常に非経済的である。
【0003】
文献WO02/14588A1は、複数の布地層が抗弾道性物品のためのサテン織を持つ、複数の積層された布地層の使用を開示している。しかしながら、開いたサテン織のエネルギーを吸収する高い能力が積層のために失われるという点で、積層されたサテン織布地層の使用には欠点がある。また別の欠点はサテンに織られた布地層は弾丸による大きなトラウマを許容することにある。このように、抗弾道性作用を持つ布地におけるサテン織は布地層を取扱う際の困難性のみならず、悪いトラウマ値を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
それ故、本発明の目的は、従来技術の欠点を少なくとも回避しそしてそれにもかかわらず良好な抗弾道性能を持って製造され得る、初めに名を挙げた、貫通を妨害する種類の製品を入手可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、EN12562による破断伸度が8%よりも小さい繊維のヤーンを持つ布地の複数層からなる貫通防害性製品により達成される。そこでは、布地の少なくとも1つの層の中に、少なくとも2つの領域群があり、第1群の領域はワルツによる第1布地密度DG1が8%〜80%を示しそして第2群の領域はワルツによる布地密度DG2が8%〜80%を示し、且つDG1とDG2との差は少なくとも3%である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明による貫通防害性製品を製造するための布地層の織意匠を概略的に示している。
【図2】比較布地層の織意匠を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
EN12562により測定された破断伸度が5%より小さく、特に好ましくは3.5%より小さい繊維の布地の複数層からなる貫通防害性製品が特に好ましい。
DG1とDG2の間の少なくとも3%の差は、絶対値として理解されるべきである。DG1は、上記差が負の値であることなしに、DG2よりも大きいことがあり得る。
布地密度DG1は8%〜31%であるのが好ましく、8%〜25%であるのが特に好ましく8%〜20%であることがとりわけ好ましい。
布地密度DG2は32%〜80%が好ましく、32%〜70%が特に好ましく、32%〜50%であることがとりわけ好ましい。
ワルツによる布地密度は下記式により決定される。
DG=(d+d×f×f
ここで、d=縦ヤーン基質の直径mm
=横ヤーン基質の直径mm
=1cm当りの縦糸数
=1cm当りの横糸数
ヤーン基質の直径、dまたはdは次のようにして計算される。
【0008】
【数1】

【0009】
ここで、dはdまたはdのいずれかであり、問題のヤーンのタイターはdtexであり、ヤーンの密度はg/cmで用いられる。
【0010】
上記式で計算された布地密度はリネン織布地に適用される。仮に織組織がリネン織以外である場合には、織修正値が計算に入れられなければならない。例えば、下記値は各特殊織の布地用織修正値として用いられる。
パナマ織 2:2 0.56
綾織 2:1 0.70
綾織 2:2 0.56
綾織 3:1 0.56
綾織 4:4 0.38
サテン織 1:4 0.49
サテン織 1:5 0.44
ワルツによる式で計算された布地密度DGはこれらの修正係数と掛け合わされる。布地密度は%で報告される。
【0011】
各布地層内のワルツによる異なる布地密度を持つ複数の領域によって、1つの布地層内に必要とされる、高い布地密度もしくは低い布地密度の利点を全く自由に利用することが可能である利点がある。例えば、縁領域は布地層の中心部の領域よりも比較的高い布地密度を持つ布地層から作成されうる。
破断伸度は現行1999版の標準EN12562により決定される。
【0012】
もし、無撚マルチフィラメントヤーンが試験されるなら、この標準EN12562に記載されているとおりヤーンの撚り増加がある。もし短繊維を用いたヤーンもしくは他の既撚りヤーンが破断伸度の測定に用いられるなら、破断伸度の決定は本質的に同じである。しかしながら、短繊維ヤーンもしくは撚られたヤーンは撚りによる増加を既に得ているので、短繊維ヤーンもしくは他の撚られたヤーンの追加の撚り増加は発生しない。
【0013】
第1群の複数の領域が第1織型を有しそして第2群の複数の領域が第2織型を有することは好ましい。第1織型が第2織型と異なることが特に好ましい。このように、第1群の複数の領域の異なる布地密度は、第2群の複数の領域と比較して、第2群の複数の領域と比較された第1群の複数の領域間の異なる織型によって有利に得られ得る。このような異なる布地密度は、例えば、両方の領域に同じタイターを持つヤーンを用いているにもかかわらず、有利に得られうる。
第1群の複数の領域は第1織型としてサテン織を持つことが特に好ましい。サテン織は好ましくは1/5または1/4サテン織である。
第2群の複数の領域は、第2織型とし綾織りまたは1/1リネン織を持つことが、さらに特に好ましい。もし、第1群の複数の領域のサテン織が1/5織である場合には、綾織は2/1織であるのが特に好ましい。もし、第1群の複数の領域に1/4サテン織が存在するときには、第2群の複数の領域は2/3もしくは1/4または1/1リネン織を持つのが好ましい。
【0014】
同様に、第1群の複数の領域のヤーンが第1ヤーンタイターを持ちそして第2群の複数の領域が第2ヤーンタイターを持つのが好ましい。ここで、第1ヤーンタイターが第2ヤーンタイターと異なることが特に好ましい。しかしながら、第1ヤーンタイターが第2ヤーンタイターと実質的に同じであることも同様に好ましい。もし、第2群の複数の領域と比較して、異なるヤーンタイターが第1群の複数の領域内に用いられているならば、仮に第1群の複数の領域と第2群の複数の領域とに同じ織型が用いられていても、布地密度の差は第1群の複数の領域と第2群の複数の領域との間に、生み出されうる。第1ヤーンタイターと第2ヤーンタイターは100dtex〜8000dtexの範囲にあることができる。しかしながら、2つの領域が異なる織型を持つならば、それによる布地密度の差は、異なる領域に異なるヤーンタイターを用いることで、有利に増加され得る。
【0015】
第1群の複数の領域は100dtex〜1,000dtexのヤーンタイターを持つのが好ましく、第2群の複数の領域は1,050dtex〜8,000dtexのヤーンタイターを持つことが好ましい。
第1群の複数の領域の布地層は第1打込数を持ち、第2群の複数の領域のそれは第2打込数を持つのがさらに好ましい。第1打込数と第2打込数とは同一でも異なってもよくそして2糸/cm〜50糸/cmの範囲にあることができる。第1群の複数の領域の布地層は2糸/cm〜10糸/cmの第1打込数を持ちそして第2群の複数の領域は10.1糸/cm〜50糸/cmの第2打込数を持つことが特に好ましい。
第1群の複数の領域と第2群の複数の領域におけるワルツによる布地密度は、織型、ヤーンタイター/型および打込数のファクターにより影響される。第1群の複数の領域が第2群の複数の領域と、これらのファクターの1つのみで異なるならば、第1群の複数の領域と第2群の複数の領域との間に、異なるワルツによる布地密度を作ることができる。明らかに、第1群の複数の領域と第2群の複数の領域は、上記ファクターの2つ又は全てについて異なることもできる。
【0016】
ごく一般的に云えば、本発明による製品を製造するための布地層の単層もしくは複数の層は、存在する織または打込数を独立に、第1群の複数の領域と第2群の複数の領域に、約100dtex〜約8,000dtexのヤーンタイターを持つヤーンを有することができる。さらに、本発明による製品を製造するための単層または複数層の布地層は、存在する織またはヤーンタイターと独立に、2糸/cm〜50糸/cmの打込数を有することができる。明らかに、本発明による製品を製造するための布地層は、第1群の複数の領域と第2群の複数の領域に存在する打込数またはヤーンタイターと独立に、リネン織、綾織またはサテン織を有することができる。
【0017】
第2群の複数の領域は布地層の全面積の少なくとも20%そして最大で80%の面積割合を構成するのが好ましい。第2群の面積割合は布地層の全面積の30%と60%との間にあることが特に好ましく、40%と50%との間にあることがとりわけ好ましい。第2群の複数の領域は布地層内で連続していないことが好ましい。むしろ、布地層は、第2群の多くの複数領域を有し、この第2群の複数の領域は、例えば、第1群の多くの複数領域によってお互に分離されており、しかしながら第2群の複数の領域が互に接触している複数の点を有していることが好ましい。それ故、1つの布地層内に第1群の多数の非連続領域も存在し得ることになる。加えて、その布地層内にワルツによる異なる布地密度を持つ複数の領域が2群よりも多く存在することも好ましい。第1群の複数の領域と第2群の複数の領域は、それぞれ選択された織の少なくとも1つの繰返しに亘って続いている。
【0018】
第1群の複数の領域と第2群の複数の領域は、互に、細長い模様であるいは格子じま模様で配置されているのが好ましい。明らかに、菱形模様や三角形模様の如き他の模様も可能である。第1または第2群の複数の領域が布地層の縁領域(例えば窓枠のように)に主として存在しそしてそれぞれの他の群の複数の領域が布地層の中心領域に存在することが同様に好ましい。貫通防害性製品の2つの連続する布地層について、連続する布地層は互に実質的に同じであるか相違する構造を有することができる。異なる構造については、例えば第1布地層は縁領域に第1群の複数の領域と中心領域に第2群の複数の領域を持つことができ、一方第2布地層は縁領域に第2群の複数の領域と中心領域に第1群の複数の領域を持っている。貫通を防止するための製品の布地層を製造するためのヤーンは、アラミドヤーンまたは超高分子量のポリエチレン、超高分子量のポリプロピレン、ポリベンツオキサゾールもしくはポリベンツチアゾールのヤーンであることが好ましい。テイジンアラミド社からTWARON(登録商標)として市販されているようなポリ(p−フェニレンテレフタラミド)の繊維製のヤーンが特に好ましい。布地密度の部分的変化に寄与する異なるヤーンが布地層に存在することも、もちろん可能である。布地層はマルチフィランメントヤーン、短繊維ヤーンあるいはこれら2つの型のヤーンの混合物により作られることができる。ヤーンの繊維は900MPaより大きい、特に好ましくは1,100MPaより大きい、ASTM D−885により測定された強度を持つことが好ましい。
【0019】
本願請求項1による貫通防害性製品および従属請求項による実施態様は、弾丸抵抗性ベストの如き保護衣類を製造するために好ましく用いられる。明らかに、本発明による製品は、布地層の適切な形成によって、対刺防護も保証できる。
【0020】
明確にするため2つの図を用いて本発明をさらに詳しく説明する。
図1は本発明による貫通防害性製品を製造するための布地層の織意匠を概略的に示している。複数のA領域において、布地層は、ワルツによる布地密度が例えば37%の1/1リネン織を持っている。複数のB領域の布地層は、ワルツによる布地密度が例えば16%であるような1/5サテン織(カウンター2,2,3,4,4)を持っている。また、この複数のB領域は第1群の本発明による複数の領域であり、そして、第2群の複数の領域を表している複数のA領域に関して格子じま模様で存在している。図1に示された織意匠は、実施例1によるパッケージが次の射撃テストのために形成された布地層を示している。
【0021】
図2は、相当する白黒逆の部分を持つサテン織の布地の織意匠を概略的に示している。C領域において布地層は5/1サテン織(カウンター2,2,3,4,4)を示しており、一方C’領域は1/5サテン織(カウンター2,2,3,4,4)を持っている。CとC’領域で異なる織型であるにもかかわらず、ワルツによる布地密度は、例えば両領域において、16%である。図2の実施態様において、1/5サテン織(領域C’)は2つの繰返しで作られておりそして5/1サテン織(領域C)は1つの繰返しで作られている。図2に示された織意匠は、比較例3によるパッケージが次の射撃テストのために作成された布地層を示している。
【実施例】
【0022】
実施例と比較例において、布地層を作成するために用いられたヤーンは、ASTM D885による3384MPaの強度と960dtexの有効タイターを持つアラミドフィラメントヤーンである。それらは、ブランド名TWARON(登録商標)930dtexf1000の下でテイジンアラミド社から購入された。用いられたアラミドフィラメントヤーンは、EN12562により測定された破断伸度が3.45%である。アラミドは1.44g/cmの密度を有する。
多数の布地層から作成された数多くのパッケージのそれぞれがテストに付された。
【0023】
比較例1
比較例1による製品、すなわちパッケージは、26層の重層された布地層からなり、各布地層は1/1リネン織と10.5/cm×10.5/cmの糸打込数(TC)を持っている。ワルツによる布地密度は、これらの布地層のそれぞれについて、37%である。
【0024】
比較例2
同様に比較例2によるパッケージは26層の布地層からなるが、各布地層は1/5サテン織(カウンター2,2,3,4,4)を持っている。打込数は10.5/cm×10.5/cmである。ワルツによる布地密度はこれらの布地層のそれぞれについて16%である。
【0025】
実施例1
実施例1の本発明による製品は、異なる布地密度を持つ2つの群の領域を持つ、26層の布地層からなる。
本発明による製品を作成するために用いられたそれぞれの布地層は、第1群の複数の領域として、1/5サテン織(カウンター2,2,3,4,4)と10.5/cm×10.5/cmの打込数とを備えた複数の領域を持つ。この第1群について、ワルツによる布地密度は16%である。第2群の複数の領域は10.5/cm×10.5/cmの打込数の1/1リネン織を持つ布地層内に、複数の領域によって形成される。第2群の複数の領域についてワルツによる布地密度は37%である。リネン織の領域対サテン織の領域の比は1:1である。サテン織は縦方向と横方向に2つの繰返しを持ち、一方リネン機は縦と横方向に6つの繰返しを持つ。ワルツによる布地密度は前に示した式により次のとおり計算される。
【0026】
DG(第2群、1/1リネン織、960dtex、10.5×10.5/cm)=37%
DG(第1群、1/5サテン織、960dtex、10.5×10.5/cm)=37%×0.44(修正係数)=16%
【0027】
本発明による製品の布地層はドビー織機を備えたグリッパ織機に、ドビー品として糸群を供給することにより製造される。6本のシャフトがリネン織で複数の領域を作成するヤーンを供給するのに必要とされ、また6本のシャフトがサテン織を持つ複数の領域を作成するヤーンを供給するために必要とされる。
【0028】
比較例3
比較例3のパッケージは、26層の布地層からなる。この布地層は、各布地層が2つの異なる織を持つように実施例1に記載された方法を用いて作成される。布地層内のワルツによる布地密度は異なる織りにもかかわらず同じである。1/5サテン織(連続番号2,2,3,4,4)と5/1サテン織(連続番号2,2,3,4,4)が織りとして用いられた。ワルツによる布地密度は全ての領域において16%である。
【0029】
弾道能力の比較
比較例1〜3それぞれの3つのパッケージと実施例1とが各タイプの攻撃手段についてテストされた。各パッケージ(〜5.2kg/m)は26層の布地層を有し、そして各タイプの攻撃手段について、V50値と吸収エネルギーとを決定するために10mの範囲で8回射撃された。V50値は貫通確率50%の弾丸速度である。ウエイブル(Weible)プラスチシンブロックが各パッケージの後に置かれた。エネルギー吸収は1/2mvとして計算された。mは弾丸の重量kgであり、vはV50速度m/秒である。
【0030】
裏面変形(以下において、トラウマと呼ばれる)を検査する第2の研究において、ウエイブルプラスチシンブロックが前と同じに用いられた。周知のとおり、おどし(射撃側)から離れた側の突出は、弾丸により引き起こされたトラウマの度合である。トラウマを決定するために、各パッケージはウエイブルプラスチシンブロックの前に置かれ、そして434m/秒〜443m/秒の範囲でほぼ一定速度で8回5mの範囲で射撃された。4回の射撃でパッケージの外側の領域がそして4回の射撃でパッケージの内側の領域が狙われた。選択された弾丸速度では、貫通は起らず、単に弾丸が埋入された。平均的トラウマ、プラスチシンへの浸入の深さmmは各意匠および各タイプの攻撃手段についてこれら8回の射撃から決定された。
表1および2に射撃テストの結果の平均をまとめて示す。
【0031】
射撃テスト1
レミントン、44マグナム、JHP、15.6gを用いて射撃した。
【0032】
【表1】

【0033】
表1に示されるとおり、比較例2(サテン織)により作成されたパッケージは、44マグナムにより攻撃されたとき493m/sのV50値と1896Jの対応するエネルギー吸収を持つ。確かなことに、そのようなパッケージについての攻撃トラウマは59mmである。一方、比較例1(リネン織)のパッケージは、弾丸V50値が488m/sでありそしてエネルギー吸収は1858Jを持つ。この場合、トラウマは50mmにすぎない。このように、開いたサテン織(比較例2)はリネン織(比較例1)よりも高いエネルギー吸収によって特色づけられるが、トラウマはリネン織についてよりも明らかに悪くなっている。本発明による製品(実施例1)は1927Jのエネルギー吸収に相当する、497m/sのV50値を持つ。実施例1のパッケージについてのトラウマは54mmである。本発明による製品が純粋なサテン織層のパッケージよりも大きなエネルギー吸収を示し、改良された抗弾道性を持つことは、当業者にとり全く驚くべきことであり、予測できないことである。また、実施例1のパッケージのトラウマの値は、比較例1によるパッケージについてのトラウマ値よりも僅かに大きいものの、比較例2のパッケージのトラウマよりはるかに改善されていることも全く驚くべきことである。比較例3と実施例1によるパッケージの比較によると、エネルギー吸収とトラウマの改善を起こすのは布地層内における異なる織型の存在ではなくて、異なる織型内に異なる布地密度が存在しなければならないことで決定されることは驚くべきことである。布地層内にリネン織とサテン織の組合せを持つとき(実施例1)、サテン織の良好な抗弾道性はリネン織の安定性と驚くように結合され得る。このようにして製造された布地層は、明らかに改善された取扱い性能と共に、攻撃されたとき、純粋なリネン織と比較してより良好なエネルギー吸収と、純粋なサテン織と比較してより良好なトラウマとを示す。
【0034】
射撃テスト2
レミントン、357マグナム、JSP、10.2gを用いて射撃した。
【0035】
【表2】

【0036】
表2によれば、357マグナムによって攻撃されたとき、純粋なサテン織層のパッケージ(比較例2)のエネルギー吸収は、本発明による製品(実施例1)のそれよりも僅かに大きいが、本発明による製品が用いられるときのトラウマは、純粋なサテン織層のパッケージが用いられるときのトラウマよりも、射撃されたときに明らかに小さい。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
EN12562により測定された破断伸度が8%よりも小さいヤーンによる布地の複数層からなる貫通防害性製品であって、少なくとも1つの布地層の内に複数の領域の少なくとも2つの群が存在し、第1の群の複数の領域は8%〜80%のワルツによる第1布地密度DG1を有し、第2の群の複数の領域は8%〜80%のワルツによる第2布地密度DG2を有しそしてDG1とDG2との差は少なくとも3%である、上記貫通防害性製品。
【請求項2】
第1布地密度DG1が8%〜31%でありそして第2布地密度DG2が32%〜80%である請求項1による貫通防害性製品。
【請求項3】
第1布地密度DG1が8%〜25%でありそして第2布地密度DG2が32%〜70%である請求項1による貫通障害製品。
【請求項4】
第1布地密度DG1が8%〜20%でありそして第2布地密度DG2が32%〜50%である請求項1による貫通防害性製品。
【請求項5】
第1群の複数の領域が第1織型を持ちそして第2群の複数の領域が第2織型を持ちそして第1織型と第2織型が互に異なっている請求項1〜4の1つまたはそれ以上による貫通防害性製品。
【請求項6】
第1織型がサテン織である請求項5による貫通防害性製品。
【請求項7】
サテン織が1/5または1/4織である請求項6による貫通防害性製品。
【請求項8】
第2織型がリネン織または綾織である請求項5による貫通防害性製品。
【請求項9】
綾織が2/1綾織または1/4綾織でありそしてリネン織が1/1リネン織である請求項8による貫通防害性製品。
【請求項10】
第1群の複数の領域におけるヤーンが第1ヤーンタイターを持ちそして第2群の複数の領域におけるヤーンが第2ヤーンタイターを持ちそして1つの布地層内で第1ヤーンタイターと第2ヤーンタイターを持ちそして1つの布地層内で第1ヤーンタイターと第2ヤーンタイターは互に異なっている請求項1〜4の1つまたはそれ以上による貫通防害性製品。
【請求項11】
第1群の複数の領域のヤーンが第1ヤーンタイターを持ちそして第2群の複数の領域のヤーンが第2ヤーンタイターを持ちそして1つの布地層内で第1ヤーンタイターと第2ヤーンタイターとが同じであるかあるいは互に異なっている請求項1〜9の1つまたはそれ以上による貫通防害性製品。
【請求項12】
第1ヤーンタイターと第2ヤーンタイターとが100dtex〜8,000dtexの範囲内にある請求項10または11による貫通防害性製品。
【請求項13】
第1ヤーンタイターが100dtex〜1,000dtexでありそして第2ヤーンタイターが1,050dtex〜8,000dtexである請求項10、11または12による貫通防害性製品。
【請求項14】
第1群の複数の領域が第1打込数を持ちそして第2群の複数の領域が第2打込数を持ち、そして1つの布地層内で第1打込数と第2打込数とが互に異なっている請求項1〜4の1つまたはそれ以上による貫通防害性製品。
【請求項15】
第1群の複数の領域が第1打込数を持ちそして第2群の複数の領域が第2打込数を持ち、そして1つの布地層内の第1打込数と第2打込数とが同じであるかあるいは互に異なっている請求項1〜13の1つまたはそれ以上による貫通防害性製品。
【請求項16】
第1打込数と第2打込数とが2糸/cm〜50糸/cmの範囲にある請求項14または15による貫通防害性製品。
【請求項17】
第1群の複数の領域は2糸/cm〜10糸/cmの打込数を持ちそして第2群の複数の領域は10.1糸/cm〜50糸/cmの打込数を持つ請求項14、15または16による貫通防害性製品。
【請求項18】
第2群の複数の領域が布地層の全表面の少なくとも20%そして最大で80%の表面割合を被覆する請求項1〜17の1つまたはそれ以上による貫通防害性製品。
【請求項19】
第1群の複数の領域および第2群の複数の領域が互に格子じま模様で配置されている請求項1〜18の1つまたはそれ以上による貫通防害性製品。
【請求項20】
第1群の複数の領域と第2群の複数の領域が互に細長い模様で配置されている請求項1〜18の1つまたはそれ以上による貫通防害性製品。
【請求項21】
ヤーンがアラミドヤーンまたは超高分子量ポリエチレンヤーンまたは超高分子量ポリプロピレンヤーンまたはポリベンツオキサゾールもしくはポリベンゾチアゾールヤーンである請求項1〜20の1つまたはそれ以上による貫通防害性製品。
【請求項22】
ヤーンの繊維がASTM D885による900MPaよりも大きい強度を持つ請求項1〜21の1つまたはそれ以上による貫通防害性製品。
【請求項23】
請求項1〜22の1つまたはそれ以上による貫通防害性物品の、保護布の製造への使用。



【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−523684(P2011−523684A)
【公表日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510947(P2011−510947)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2009/056116
【国際公開番号】WO2009/153121
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(502036011)テイジン・アラミド・ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】