説明

貯湯式給湯装置

【課題】出湯時に貯湯タンクから高温水と中温水とを取り出して使用するタイプの貯湯式給湯装置において、再出湯初期時のアンダシュートやオーバシュートを抑制する。
【解決手段】温水を貯湯する貯湯タンク1と、貯湯タンク1内の高温水を流出させる高温水給湯管4と、貯湯タンク1内の中温水を流出させる中温水給湯管5と、高温水給湯管4からの高温水と中温水給湯管5からの中温水とを混合する中温水ミキシング弁7と、中温水ミキシング弁7で混合された温水と給水管3から供給される水とを混合して、給湯口10から出湯させる給湯ミキシング弁8と、を備えた貯湯式給湯装置であって、中温水給湯管5に逆止め弁31を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯湯タンクから供給される温水と給水管から供給される水とをミキシング弁で混合して給湯口から出湯させる湯水混合型の貯湯式給湯装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
湯水混合型の貯湯式給湯装置の一構成例を図2に示す。符号1は温水を貯湯する貯湯タンクであり、水道等に接続した給水本管2を介して水が貯湯タンク1に供給される。この貯湯タンク1内に供給された水は、例えばヒートポンプ式の加熱器21で加熱されることで温水となって貯湯タンク1内に貯湯される。加熱器21は、往き管22と戻り管23とからなる循環経路により貯湯タンク1に接続されている。往き管22には循環ポンプ24が介設される。
【0003】
貯湯タンク1内の温水は、高温の温水(高温水)が高温水給湯管4を介して取り出され、中温の温水(中温水)が中温水給湯管5を介して取り出される。高温水給湯管4は貯湯タンク1の上部に取り付けられ、中温水給湯管5は高温水給湯管4よりも低い位置である貯湯タンク1の中程に取り付けられる。これらの取り出された高温水と中温水とはミキシング弁7(以降、このミキシング弁を「中温水ミキシング弁」という)により混合されて給湯管6に流出する。給湯管6の下流側は給湯分岐管6a、6bに分岐形成され、その各下流端口がミキシング弁8、9(以降、これらのミキシング弁を「給湯ミキシング弁」という)の各温水側ポートに接続されている。前記給水本管2から分岐した給水管3の下流側は給水分岐管3a,3bに分岐形成されており、その各下流端口が給湯ミキシング弁8、9の各水側ポートに接続されている。中温水ミキシング弁7や給湯ミキシング弁8、9はいずれも比例制御が可能な三方弁からなり、図では電動三方弁として示している。
【0004】
給湯ミキシング弁8、9で混合された各湯はそれぞれ出湯管12、13を介して給湯口10、11から出湯される。給湯口10は例えばキッチンに備え付けられ、給湯口11は例えば風呂に備え付けられる。出湯管12には上流側から、湯温を検知する温度センサ14、給湯量を計測する流量カウンタ15が設けられ、出湯管13にも同様に、温度センサ16、流量カウンタ17が設けられている。
【0005】
貯湯タンク1から高温水と共に中温水を取り出す理由は以下の通りである。出湯に伴って追い焚き等が行われた場合、貯湯タンク1内の温水は熱交換によって温度低下し、比重の関係で上層に高温水が、中層に中温水が溜まる。この中温水は、再沸き上げの場合に加熱器21のCOP(エネルギ消費効率)の低下を招く。したがって、出湯の際、高温水と共にこの中温水を積極的に貯湯タンク1から取り出して使用することでCOPの低下を抑制している。
【0006】
以上の貯湯式給湯装置の作動は制御装置25により制御される。給湯ミキシング弁8のフィードバック制御に関する一例を挙げると、給湯口10が開栓されて流量カウンタ15により出湯が検知されると、制御装置25は、温度センサ14で検知された湯温がリモコン26等で予め設定された湯温となるように給湯ミキシング弁8の開度をフィードバック制御する。また、フィードフォワード制御として、給湯ミキシング弁8は、給湯口10からの出湯が停止した後も次の出湯(再出湯)に備えて適正な開度を維持して待機した状態となっており、これにより再出湯初期時のアンダシュート(湯温が設定値を下回る現象)やオーバシュート(湯温が設定値を上回る現象)を抑制している。また、制御装置25は、中温水ミキシング弁7や給湯ミキシング弁9についても開度に関する制御を行い、さらに、貯湯タンク1に設けた複数の温度センサ(図示せず)の検知等に基づいて、加熱器21や循環ポンプ24の制御も行う。
【0007】
なお、以上の構成に類似した湯水混合型の貯湯式給湯装置の一例が特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開2003−240342号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで従来の貯湯式給湯装置では、出湯が停止して待機状態となったとき、再出湯の際に所定の温度のお湯を迅速に給湯ミキシング弁8、9に供給できるように、中温水ミキシング弁7をある開度で待機させている。このとき、高温水給湯管4からの高温水と中温水給湯管5からの中温水とが中温水ミキシング弁7内で対流を起こし、中温水ミキシング弁7から中温水給湯管5の途中までが高温水となる場合があった。したがってこの場合、再出湯の初期時においては、中温水ミキシング弁7からは高温水のみが給湯ミキシング弁8、9に供給されることとなり、給湯ミキシング弁8、9での出湯温度が不正確になりやすいという問題があった。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、出湯時に貯湯タンクから高温水と中温水とを取り出して使用するタイプの貯湯式給湯装置において、再出湯初期時の出湯温度が安定して、アンダシュートやオーバシュートを抑制できる貯湯式給湯装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するため、温水を貯湯する貯湯タンクと、この貯湯タンク内の高温水を流出させる高温水給湯管と、前記貯湯タンクに対して前記高温水給湯管よりも低い位置に接続され、前記貯湯タンク内の中温水を流出させる中温水給湯管と、前記高温水給湯管からの高温水と前記中温水給湯管からの中温水とを混合する中温水ミキシング弁と、この中温水ミキシング弁で混合された温水と給水管から供給される水とを混合して、給湯口から出湯させる給湯ミキシング弁と、を備えた貯湯式給湯装置であって、前記中温水給湯管に逆止め弁を設けたことを特徴とする貯湯式給湯装置とした。
【0011】
この貯湯式給湯装置によれば、中温水給湯管に逆止め弁を設けたことで、再出湯のとき迅速に所定の温度の温水を給湯ミキシング弁に供給できるように、中温水ミキシング弁をある開度で待機させた場合であっても、中温水ミキシング弁を介しての高温水給湯管からの高温水と中温水給湯管からの中温水との対流が発生しない。したがって、再出湯のとき、中温水ミキシング弁において、最初から高温水給湯管からの高温水と中温水給湯管からの中温水とを混合できるので、中温水ミキシング弁における高温水と中温水との混合具合が安定する。これにより、下流側に位置する給湯ミキシング弁のフィードフォワード制御が正確なものとなって、再出湯初期時におけるアンダシュートやオーバシュートの発生を抑制することができるものである。
【0012】
また、本発明は、前記中温水ミキシング弁における中温水ミキシング弁設定温度を給湯設定温度よりも所定温度高く設定し、中温水の温度が中温水ミキシング弁設定温度以上のとき、前記中温水ミキシング弁は前記中温水給湯管側を100%連通する開度で待機し、前記給湯ミキシング弁はその熱源温度を中温水の温度として前記給水管からの水との混合が制御され、中温水の温度が中温水ミキシング弁設定温度未満のとき、前記中温水ミキシング弁は前回の出湯停止時の開度を維持して待機すると共に、再出湯のとき、混合された温水が中温水ミキシング弁設定温度となるように制御され、前記給湯ミキシング弁はその熱源温度を中温水ミキシング弁設定温度として前記給水管からの水との混合が制御されることを特徴とする貯湯式給湯装置とした。
【0013】
この貯湯式給湯装置によれば、中温水の温度が中温水ミキシング弁設定温度以上のとき、中温水ミキシング弁は中温水給湯管側を100%連通する開度で待機し、給湯ミキシング弁はその熱源温度を中温水の温度として給水管からの水との混合が制御され、中温水の温度が中温水ミキシング弁設定温度未満のとき、中温水ミキシング弁は前回の出湯停止時の開度を維持して待機すると共に、再出湯のとき、混合された温水が中温水ミキシング弁設定温度となるように制御され、給湯ミキシング弁はその熱源温度を中温水ミキシング弁設定温度として給水管からの水との混合が制御されるので、中温水の温度に関わらず中温水ミキシング弁から給湯ミキシング弁に流れる温水の温度が安定し、これにより給湯ミキシング弁での制御が安定して給湯口からの出湯温度を安定させることができるものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、貯湯タンクから取り出した高温水と中温水とを混合させて使用する場合であっても、再出湯初期時のアンダシュートやオーバシュートを抑制できる。これにより、再出湯初期時の出湯温度特性に優れた貯湯式給湯装置となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明について図1を参照して説明し、「背景技術」の欄で説明した構成部材に関し重複する事項については説明を省略する。図1は本発明に係る貯湯式給湯装置の回路構成図である。図1は図2に対し逆止め弁31を設けた点のみが異なっている。
【0016】
本発明は、温水を貯湯する貯湯タンク1と、この貯湯タンク1内の高温水を流出させる高温水給湯管4と、貯湯タンク1に対して高温水給湯管4よりも低い位置に接続され、貯湯タンク1内の中温水を流出させる中温水給湯管5と、高温水給湯管4からの高温水と中温水給湯管5からの中温水とを混合する中温水ミキシング弁7と、この中温水ミキシング弁7で混合された温水と給水管3から供給される水とを混合して、給湯口10(11)から出湯させる給湯ミキシング弁8(9)と、を備えた貯湯式給湯装置であって、中温水給湯管5に逆止め弁31を設けたことを主な特徴とする。
【0017】
この逆止め弁31を設けたうえでの好適な制御形態について説明する。以下では一方の給湯口10側の系について作用を説明するが、給湯口11側についても同様である。
【0018】
先ず、出湯していた給湯口10が閉栓されると、制御装置25は流量カウンタ15の信号に基づいて給湯口10の出湯停止を検知する。そして、制御装置25は、再出湯に備え、給湯ミキシング弁8を、出湯停止時の開度、つまり制御装置25が給湯口10の出湯停止を検知したときの開度(待機開度)で待機させる。
【0019】
ここで、中温水ミキシング弁7の中温水ミキシング弁設定温度T2(中温水ミキシング弁7によって混合された温水の温度)は、給湯口10の給湯設定温度T1に対し、途中に給湯ミキシング弁8が介在する分、高い温度(給湯設定温度T1+α)として設定することができる。αは任意に設定される温度値である。そして、貯湯タンク1の中温水取り出し口27における中温水の温度T3が中温水ミキシング弁設定温度T2以上であるとき、つまり「T3≧T2」の関係にあれば、中温水ミキシング弁7において、中温水給湯管5側のみを給湯管6と連通させればよく、中温水給湯管5側を100%連通する開度で待機させる。出湯として中温水を100%利用することができるので効率的である。その差分である(T3−T2)は、給水分岐管3aからの水の混合比率を高めるように給湯ミキシング弁8をフィードフォワード制御することで吸収される。なお、中温水取り出し口27における中温水の温度T3は図示しない温度センサにより検知される。
【0020】
また、前記中温水の温度T3が中温水ミキシング弁設定温度T2未満であるとき、つまり「T3<T2」の関係にある場合には、中温水ミキシング弁7を、給湯口10の閉栓時(前回の出湯停止時)の開度を維持して待機させる。この待機状態の中温水ミキシング弁7内では、高温水給湯管4側と中温水給湯管5側とが互いに連通した状態である。そして、給湯口10の再出湯のときには、中温水ミキシング弁7は、混合した温水が中温水ミキシング弁設定温度T2となるようにその開度が制御される。
【0021】
前者の「T3≧T2」の関係にある場合、給湯ミキシング弁8をフィードフォワード制御するに当たってのパラメータは、中温水取り出し口27における中温水の温度T3のみとなる。つまり、給湯ミキシング弁8は、その熱源温度を中温水の温度T3として、給水管3からの水との混合が制御されるので、給湯設定温度T1に対する給湯口10の出湯温度が正確となり、再出湯初期時にアンダシュートやオーバシュートが殆ど起きない。
【0022】
しかし、後者の「T3<T2」の関係にある場合、もし図2のように逆止め弁31が無いと次のような不都合が生じる。この「T3<T2」の場合、給湯ミキシング弁8をフィードフォワード制御するに当たってのパラメータは、高温水と中温水とが中温水ミキシング弁7で混合されたうえでの中温水ミキシング弁設定温度T2となる。つまり、給湯ミキシング弁8は、その熱源温度を中温水ミキシング弁設定温度T2として、給水管3からの水との混合が制御される。このとき、逆止め弁31が無いと、比重の関係により、中温水ミキシング弁7を介して高温水給湯管4からの高温水が中温水給湯管5側に流れるかたちで対流し、中温水ミキシング弁設定温度T2が安定しないという問題が生じる。その結果、給湯ミキシング弁8のフィードフォワード制御が不正確となりやすく、再出湯初期時にアンダシュートやオーバシュートが発生しやすくなるおそれがある。
【0023】
これに対し、本発明では、中温水給湯管5に逆止め弁31が設けられているため、中温水給湯管5への高温水の流入が阻止される。これにより、中温水ミキシング弁7による高温水と中温水の混合具合が安定し、中温水ミキシング弁設定温度T2が安定する。したがって、下流側に位置する給湯ミキシング弁8のフィードフォワード制御が正確なものとなって、再出湯初期時におけるアンダシュートやオーバシュートの発生が抑制される。なお、高温水の流入を効果的に阻止するため、逆止め弁31は中温水ミキシング弁7の近傍に設けられることが好ましい。
【0024】
以上のように、中温水給湯管5に逆止め弁31を設けたうえで、中温水ミキシング弁7における中温水ミキシング弁設定温度T2を給湯設定温度T1よりも所定温度(α)高く設定し、中温水の温度T3が中温水ミキシング弁設定温度T2以上のとき、中温水ミキシング弁7は中温水給湯管5側を100%連通する開度で待機し、給湯ミキシング弁8はその熱源温度を中温水の温度T3として給水管3からの水との混合が制御され、中温水の温度T3が中温水ミキシング弁設定温度T2未満のとき、中温水ミキシング弁7は前回の出湯停止時の開度を維持して待機すると共に、給湯口10からの再出湯のとき、混合された温水が中温水ミキシング弁設定温度T2となるように制御され、給湯ミキシング弁8はその熱源温度を中温水ミキシング弁設定温度T2として給水管3からの水との混合が制御される構成とすれば、中温水を効率的に利用でき、かつ、中温水の温度に関わらず中温水ミキシング弁7から給湯ミキシング弁8に流れる温水の温度を安定させることができるので、給湯ミキシング弁8での制御が安定し、給湯口10からの出湯温度を安定させることができる。
【0025】
以上、本発明について好適な実施形態を説明した。実施形態では、給湯管6と給水管3との間に2つの給湯ミキシング弁8、9を並設した場合について説明したが、単体として設けた場合や3つ以上の給湯ミキシング弁を並設した場合であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る貯湯式給湯装置の回路構成図である。
【図2】従来の貯湯式給湯装置の回路構成図である。
【符号の説明】
【0027】
1 貯湯タンク
3 給水管
4 高温水給湯管
5 中温水給湯管
6 給湯管
7 中温水ミキシング弁
8、9 給湯ミキシング弁
10、11 給湯口
31 逆止め弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温水を貯湯する貯湯タンクと、
この貯湯タンク内の高温水を流出させる高温水給湯管と、
前記貯湯タンクに対して前記高温水給湯管よりも低い位置に接続され、前記貯湯タンク内の中温水を流出させる中温水給湯管と、
前記高温水給湯管からの高温水と前記中温水給湯管からの中温水とを混合する中温水ミキシング弁と、
この中温水ミキシング弁で混合された温水と給水管から供給される水とを混合して、給湯口から出湯させる給湯ミキシング弁と、
を備えた貯湯式給湯装置であって、
前記中温水給湯管に逆止め弁を設けたことを特徴とする貯湯式給湯装置。
【請求項2】
前記中温水ミキシング弁における中温水ミキシング弁設定温度を給湯設定温度よりも所定温度高く設定し、
中温水の温度が中温水ミキシング弁設定温度以上のとき、前記中温水ミキシング弁は前記中温水給湯管側を100%連通する開度で待機し、前記給湯ミキシング弁はその熱源温度を中温水の温度として前記給水管からの水との混合が制御され、
中温水の温度が中温水ミキシング弁設定温度未満のとき、前記中温水ミキシング弁は前回の出湯停止時の開度を維持して待機すると共に、再出湯のとき、混合された温水が中温水ミキシング弁設定温度となるように制御され、前記給湯ミキシング弁はその熱源温度を中温水ミキシング弁設定温度として前記給水管からの水との混合が制御されることを特徴とする請求項1に記載の貯湯式給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−139201(P2007−139201A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329051(P2005−329051)
【出願日】平成17年11月14日(2005.11.14)
【出願人】(000000538)株式会社コロナ (753)
【Fターム(参考)】