説明

貸金庫システム

【課題】銀行など店舗側からの鍵の貸与を要することなく保護箱を開けることができる貸金庫システムを提供する。
【解決手段】顧客の物品が保護箱5に格納され、ブース機器6に設けられた保護箱利用口を介して顧客が保護箱5を利用する貸金庫システムにおいて、保護箱5に設けられる保護箱側解施錠ユニット12と、ブース機器6に設けられ、保護箱利用口に位置した保護箱5の保護箱側解施錠ユニット12に連結するブース機器側解施錠ユニット31と、を備え、顧客がブース機器6で入力した情報と、予め保護箱5毎に登録された情報とが一致したときに、ブース機器側解施錠ユニット31が保護箱側解施錠ユニット12を解錠する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貸金庫システムに関する。
【背景技術】
【0002】
貸金庫システムの一例としては、複数の顧客に対応してそれぞれ設けられ、各顧客が所有する被格納物を格納するための複数の保護箱と、各保護箱を収納するための収納部と、取り出し指示信号に基づいて開口し、返却指示信号に基づいて閉じる保護箱利用口と、保護箱を前記収納部と前記保護箱利用口との間で搬送する搬送手段と、各顧客が顧客確認情報を入力する操作部と、顧客確認情報の入力に基づき、搬送手段および保護箱利用口を制御する制御部と、前記保護箱利用口および操作部を収容し、顧客が保護箱に被格納物の出し入れを行うブースと、を備えた構成のものが挙げられる(例えば、特許文献1−3参照)。
【0003】
従来の貸金庫システムでは、保護箱は鍵によって施錠/解錠される構造になっている。ブースの操作部は、例えばスライド開閉式のシャッタを備えた保護箱利用口と、タッチパネルによる入力方式の操作パネルと、利用者の認証カードを読み込む挿入式のカードリーダとを備える。正規な利用者である場合、その利用者がカードリーダに認証カードを挿入し、操作パネルにより暗証番号を入力することで、保護箱が保護箱利用口まで搬送され、シャッタが開く。保護箱利用口のシャッタが開くと、保護箱の上部蓋を鍵で解錠して蓋を開け、保護箱内から目的のものを取り出したり、収納する。保護箱を利用した後は、保護箱の蓋を閉め、鍵で施錠し、ブースの操作画面での返却ボタン等の操作により、保護箱利用口のシャッタが閉じ、保護箱は収納部へ搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平2−1956号公報
【特許文献2】特開2006−97434号公報
【特許文献3】特開2007−23668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術では、保護箱の上部蓋を解施錠するものは鍵であるため、利用者は認証カードと、保護箱の蓋を解施錠するための鍵の両方所持しなければ貸金庫システムを利用することが出来ず、特に鍵は厳重に管理する必要があり、また持ち運びにかさばるため鍵の使用は利用者にとっては煩わしかった。
【0006】
本発明は、銀行など店舗側からの鍵の貸与を要することなく保護箱を開けることができる貸金庫システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するため、顧客の物品が保護箱に格納され、ブース機器に設けられた保護箱利用口を介して顧客が保護箱を利用する貸金庫システムにおいて、保護箱に設けられる保護箱側解施錠ユニットと、ブース機器に設けられ、保護箱利用口に位置した保護箱の前記保護箱側解施錠ユニットに連結するブース機器側解施錠ユニットと、を備え、顧客がブース機器で入力した情報と、予め保護箱毎に登録された情報とが一致したときに、前記ブース機器側解施錠ユニットが前記保護箱側解施錠ユニットを解錠することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、高いセキュリティ性を維持しつつ、銀行など店舗側からの鍵の貸与を要することなく保護箱を開けることができる。
【0009】
また、本発明は、前記保護箱側解施錠ユニットの錠は機械錠からなり、前記ブース機器側解施錠ユニットに解施錠用の駆動源が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、保護箱側には電気部品や電気回路、その駆動源などの割高な部材を備える必要がなくなるため、低コストの保護箱となり、経済的な貸金庫システムを構築できる。また、保護箱側では電気部品を一切使用しないため、メンテナンス頻度も少なくて済む。
【0011】
また、本発明は、前記保護箱側解施錠ユニットは、保護箱毎に固有な錠前編成を有する複数個のタンブラーを有し、前記ブース機器側解施錠ユニットは、前記各タンブラーを順次回転させて解錠する回転装置を有する構成からなることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、タンブラー式による解錠構造のため、外部から解錠することは極めて困難となり、セキュリティ性が向上する。
【0013】
また、本発明は、前記保護箱側解施錠ユニットのタンブラー軸の端面には、前記ブース機器側解施錠ユニットのガイドピンが連結するガイドピン穴が形成され、前記ガイドピン穴には前記ガイドピンを穴中心に導くための拡径斜面が形成され、前記ブース機器側解施錠ユニットには、前記ガイドピンが前記拡径斜面に接触したときに受ける反力によって作動し、前記ガイドピンの穴中心への移動を許容するフローティング機構が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、簡単な構造により、保護箱の位置がずれている場合であってもブース機器側解施錠ユニットを保護箱側解施錠ユニットにスムースに連結させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高いセキュリティ性を維持しつつ、銀行など店舗側からの鍵の貸与を要することなく保護箱を開けることができ、顧客にとって貸金庫利用の便宜性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】貸金庫システムにおけるブース周りの一例を示す外観斜視図である。
【図2】保護箱の外観斜視図である。
【図3】保護箱側解施錠ユニット周りの外観斜視図である。
【図4】保護箱側解施錠ユニットの外観斜視図であり、(a)は施錠状態、(b)は解錠状態を示す。
【図5】保護箱側解施錠ユニットおよびブース機器側解施錠ユニットの側面図である。
【図6】本発明の貸金庫システムにおける操作フローである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1または図2において、顧客が利用するブース1は仕切り壁3を隔てて貸金庫室2に隣接している。貸金庫室2内では各顧客の物品を格納した複数の保護箱5(図2)が所定の収納部に収納されており、ブース1内の顧客の指示を受けることで、図示しない搬送装置により、その顧客の保護箱5がブース1内の保護箱利用口4まで搬送される。保護箱利用口4は、ブース機器6に形成されており、通常時は例えばスライド開閉式のシャッタ4aにより閉じられている。
【0018】
ブース機器6には、タッチパネルによる入力方式の操作パネル7が設けられている。この操作パネル7は各種情報を表示するモニタ機能を有する。顧客は、この操作パネル7を用いて顧客個々を特定するための顧客確認情報を入力する。操作パネル7で入力する顧客確認情報としては、パスワードや暗証番号等が挙げられる。他の顧客確認情報としては、てのひら静脈や指静脈などの生体情報やICカード情報などが挙げられ、その場合それぞれ生体認証装置、ICカードリーダを介して情報を入力する。
【0019】
「操作フロー例」
図6は本発明の貸金庫システムにおける顧客の操作フローであり、「生体認証なし」、「生体認証あり」の場合の各例を示している。先ず「生体認証なし」の場合、顧客はブース機器6のカードリーダに認証カードを挿入し(S1)、操作パネル7によりカードの暗証番号を入力する(S2)。図示しないメインコントローラが、この入力された暗証番号(顧客確認情報)が予めメインコントローラに登録されている顧客登録情報と一致するか否かを判別し、一致した場合、保護箱5がブース1内の保護箱利用口4まで搬送される。なお、メインコントローラは例えば貸金庫室2内に設置されている。
【0020】
顧客が操作パネル7に表示された「取出ボタン」をタッチすると、保護箱利用口4のシャッタ4aが開口する(S3)。次いで、顧客はその保護箱5についての保護箱暗証番号を操作パネル7で入力する(S4)。メインコントローラは、この入力された保護箱暗証番号(保護箱確認情報)が予めメインコントローラに登録されている保護箱登録情報と一致するか否かを判別し、一致した場合、後記するようにブース機器側解施錠ユニット31が保護箱側解施錠ユニット12に向けて前進して両ユニットが連結し、所定の0点位置の調整が行われる。そして、顧客が操作パネル7に表示された「解錠ボタン」をタッチすると(S5)、後記するようにブース機器側解施錠ユニット31の回転シャフト32が回転して保護箱5を解錠する。これにより、顧客は保護箱5を利用できる状態となる(S6)。利用後、顧客が操作パネル7に表示された「施錠ボタン」をタッチすると(S7)、ブース機器側解施錠ユニット31および保護箱側解施錠ユニット12による施錠がなされ、さらに「返却ボタン」をタッチすると(S8)、保護箱利用口4のシャッタ4aが閉じ、保護箱5は貸金庫室2に戻される。
【0021】
「生体認証あり」の例としては、顧客はブース機器6のカードリーダに認証カードを挿入し(S11)、操作パネル7によりカードの暗証番号を入力する(S12)。次いで、前記したてのひら静脈や指静脈などの生体情報を入力する(S13)。メインコントローラは、これらの入力された顧客確認情報が予めメインコントローラに登録されている顧客登録情報と一致するか否かを判別し、一致した場合、保護箱5がブース1内の保護箱利用口4まで搬送されたうえで、ブース機器側解施錠ユニット31が保護箱側解施錠ユニット12に向けて前進して両ユニットが連結し、所定の0点位置の調整が行われる。なお、S12のカードの暗証入力は省略してもよい。
【0022】
顧客が操作パネル7に表示された「取出ボタン」をタッチすると、保護箱利用口4のシャッタ4aが開口する(S14)。次いで、顧客が操作パネル7に表示された「解錠ボタン」をタッチすると(S15)、ブース機器側解施錠ユニット31の回転シャフト32が回転して保護箱5を解錠する。これにより、顧客は保護箱5を利用できる状態となる(S16)。利用後、顧客が操作パネル7に表示された「施錠ボタン」をタッチすると(S17)、ブース機器側解施錠ユニット31および保護箱側解施錠ユニット12による施錠がなされ、さらに「返却ボタン」をタッチすると(S18)、保護箱利用口4のシャッタ4aが閉じ、保護箱5は貸金庫室2に戻される。
【0023】
「保護箱5」
保護箱5の構造例を説明すると、図2において、保護箱5は扁平の直方体形状を呈しており、物品の収納部8を構成する筐体10の上面には、凹状の開閉取手11と非常用の鍵(図示せず)を差し込む非常用錠前13とを備えた回動開閉式の蓋9が取り付けられている。顧客はスライド摘み部23を動かしたうえで蓋9を仮想線で示すように上方に開き、収納部8において物品の出し入れを行う。
【0024】
「保護箱側解施錠ユニット12」
主に図3、図4を参照して保護箱側解施錠ユニット12について説明する。保護箱5の長手方向一端側(開閉取手11が位置する側)には保護箱側解施錠ユニット12が設けられる。本実施形態では、保護箱側解施錠ユニット12は機械錠からなる。保護箱側解施錠ユニット12は、筐体10に内蔵させてもよいし、例えば筐体10とは独立して形成したうえで公知の係合手段により筐体10の一端側に一体に取り付けたものでもよい。図示の構成例では、筐体10の一端側に取り付けられるユニットフレーム14と、このユニットフレーム14に取り付けられる符号錠15と、ユニットフレーム14に取り付けられ、符号錠15と蓋9の被係合部9aとの間に介設されるカンヌキ16と、を有する。
【0025】
符号錠15としては、例えば、カンヌキ16の一端が差し込み可能な解錠溝17aをそれぞれ形成した複数のタンブラー17と、各タンブラー17を回転させるタンブラー軸18とを備えた公知のタンブラー錠を適用できる。この場合、タンブラー軸18を例えば左右に所定角度回動させることにより各タンブラー17を回転させて全解錠溝17aを一致させる。具体的には、タンブラー17の係合爪(図示せず)を隣のタンブラー17に係合させることで、順次隣接するタンブラー17を回転させていき、全ての解錠溝17aを一致させる。当該一致した解錠溝17aにカンヌキ16の一端を差し込んでカンヌキ16の他端側を被係合部9aから外すことで解錠状態となる。
【0026】
本実施形態では3枚のタンブラー17を備えた場合を示している。タンブラー軸18は、ブース機器側解施錠ユニット31側でのパルス制御により回転するため、ダイヤル符号錠のような目盛りは特に形成されていない。仮に30パルスでタンブラー軸18の1回転分とすると、3枚のタンブラー17で計27000個の錠前編成となる。
【0027】
タンブラー軸18は、保護箱5の長手方向を軸方向としてユニットフレーム14に回転自在に枢支されており、ユニットフレーム14の外面側に臨む軸端面には、ブース機器側解施錠ユニット31との連結用の穴が形成されている。具体的には、軸端面中央にガイドピン穴18aが形成されるとともに、このガイドピン穴18aの横に位置出し用穴18bが形成されている。ガイドピン穴18aの軸端面側は、図5に示すように軸端面側に向けて拡径処理されており、保護箱5の位置がずれている場合、その拡径斜面18cでブース機器側解施錠ユニット31のガイドピン44をガイドピン穴18aの中央に誘導できるようにしてある。
【0028】
カンヌキ16は、例えば折り曲げ加工された板材から構成され、ユニットフレーム14の内面に沿って保護箱5の左右方向(保護箱5の長手方向と直交する方向)に延設される鉛直面部16aと、鉛直面部16aの上下からそれぞれ筐体10側に水平に延設される上面部16b、下面部16cとを有した形状からなる。鉛直面部16aには保護箱5の左右方向に沿ってスライドガイド溝19が形成されており、このスライドガイド溝19が、ユニットフレーム14に取り付けてある一対のスライドガイドピン20にガイドされることで、カンヌキ16が保護箱5の左右方向にスライド自在に構成される。上面部16bの一端はタンブラー17の解錠溝17aに差し込まれるタンブラー側係合部21を構成し、他端寄りは保護箱5における蓋9の被係合部9aの上方に位置して蓋側係合部22を構成する。また、上面部16bには指をかけるためのスライド摘み部23が突設されている。
【0029】
蓋9に形成される被係合部9aは例えば板材から構成され、施錠時にはその上方にカンヌキ16の蓋側係合部22が位置していることで蓋9の開きが阻止される。なお、前記したように本実施形態では非常用錠前13を設けてあり、被係合部9aはこの非常用錠前13と一体的に回転するように取り付けられている。解錠しようとするときに何らかの理由によりカンヌキ16の解錠方向へのスライドが不可能となった場合には、店舗側で管理している非常用の鍵で非常用錠前13を解錠することで、被係合部9aがカンヌキ16の蓋側係合部22の直下から外れるように回り、蓋9を開くことが可能となる。
【0030】
以上の保護箱側解施錠ユニット12の解施錠機構部は、勿論、ユニットフレーム14や、ユニットフレーム14を覆うカバー24などによって隠される。勿論、保護箱側解施錠ユニット12が筐体10に内蔵されている場合は筐体10によって隠される。ただし、ガイドピン穴18aおよび位置出し用穴18bが形成されたタンブラー軸18の端面とスライド摘み部23は外部に露出している。
【0031】
「ブース機器側解施錠ユニット31」
次に、主に図5を参照してブース機器側解施錠ユニット31について説明する。ブース機器6の内部には、保護箱利用口4に位置した保護箱5の保護箱側解施錠ユニット12に連結するブース機器側解施錠ユニット31が設けられている。ブース機器側解施錠ユニット31は、例えば先端に保護箱側解施錠ユニット12との連結部を有する連結シャフト32と、連結シャフト32の回転駆動源となるステッピングモータ33と、保護箱側解施錠ユニット12に対して連結シャフト32を前後移動させる駆動源となるリニアアクチュエータ(図示せず)とを主な構成要素とする。
【0032】
ブース機器6の内部にはガイドレール35aが固定設置され、このガイドレール35aにスライダ35bが摺動自在に取り付けられている。このガイドレール35aおよびスライダ35bからなる第1スライドガイド35は、保護箱側解施錠ユニット12に対するブース機器側解施錠ユニット31の前後移動のガイド機能を担うものであり、公知のベアリング内蔵式のリニアスライダユニットを用いることができる。
【0033】
スライダ35bにはユニット支持ブラケット36が取り付けられている。ユニット支持ブラケット36は、スライダ35bの上面に取り付けられる水平状の基面部36aと、基面部36aの後縁から立ち上がる鉛直面部36bとを有した形状からなる。基面部36aには、前記リニアアクチュエータのロッド(図示せず)の先端が連結される。また、基面部36aには第2スライドガイド37が取り付けられ、鉛直面部36bにはステッピングモータ33が取り付けられる。なお、前記リニアアクチュエータとしては、電磁ソレノイドなどが好適である。
【0034】
第2スライドガイド37は、基面部36aに固定されるガイドレール37aと、ガイドレール37a上を摺動するスライダ37bとからなり、保護箱側解施錠ユニット12とブース機器側解施錠ユニット31との間の左右方向の位置ずれ、具体的には、ガイドピン穴18aとガイドピン44との間の左右方向の位置ずれを吸収する機能を担う。すなわち、第2スライドガイド37は、ガイドピン44がガイドピン穴18aの拡径斜面18cに接触したときに受ける反力によって、ガイドピン44がガイドピン穴18aの中心に来るまでスライダ37bが左右方向に移動する構造であり、左右方向のフローティング機構を構成する。
【0035】
次いで、スライダ37bには連結シャフト支持ブラケット39が取り付けられる。連結シャフト支持ブラケット39は、スライダ37bの上面に取り付けられる水平状の基面部39aと、基面部39aの前縁から立ち上がる鉛直面部39bとを有した形状からなり、鉛直面部39bには第3スライドガイド40が取り付けられる。
【0036】
第3スライドガイド40は、鉛直面部39bに鉛直状に固定されるガイドレール40aと、ガイドレール40aを摺動するスライダ40bとからなり、保護箱側解施錠ユニット12とブース機器側解施錠ユニット31との間の上下方向の位置ずれ、具体的には、ガイドピン穴18aとガイドピン44との間の上下方向の位置ずれを吸収する機能を担う。すなわち、第3スライドガイド40は、ガイドピン44がガイドピン穴18aの拡径斜面18cに接触したときに受ける反力によって、ガイドピン44がガイドピン穴18aの中心に来るまでスライダ40bが上下方向に移動する構造であり、上下方向のフローティング機構を構成する。
【0037】
スライダ40bには軸受ホルダ41が取り付けられ、その軸受42により連結シャフト32が支承されている。連結シャフト32の基端側は、ユニバーサルジョイント43を介してステッピングモータ33の出力軸38に連結している。連結シャフト32の先端側は、保護箱側解施錠ユニット12のガイドピン穴18a、位置出し用穴18bにそれぞれ嵌まり込むガイドピン44、位置出しピン45が設けられている。ガイドピン44は連結シャフト32の軸上に一体に形成されている。保護箱5の位置がずれている際、ガイドピン44が先に拡径斜面18cに接触できるようにガイドピン44の先端は位置出しピン45の先端よりも突出しており、ガイドピン44の先端は球面状に形成されている。位置出しピン45は、その基端側が連結シャフト32の先端面に形成されたピン収容穴46に収容されて、連結シャフト32に対して前後方向に移動自在に取り付けられている。また、ピン収容穴46において、穴の底部と位置出しピン45の基端との間には圧縮コイルばね47が収容される。なお、位置出しピン45は図示しないストッパなどにより連結シャフト32の先端面から抜け落ちないようになっている。
【0038】
ステッピングモータ33にはエンコーダが接続され、モータの回転変位量を電気信号に変換し、この信号を処理してモータの回転位置、すなわち連結シャフト32の回転位置を検出する。エンコーダには、予めモータの回転基準の0点位置を認識させておく。モータの回転方向の左右、回転数、回転角度、停止位置を制御する電気信号を発信する制御部では、貸金庫番号毎、つまり保護箱毎に設定された解錠番号に基づいて演算処理し、モータに制御信号を送信する。ステッピングモータ33はこの送信された制御信号に基づき回転する。
【0039】
以上の構成からなる両解施錠ユニットの作用について説明する。図6におけるS4またはS13の操作がなされ、入力された情報と登録された情報が一致すると、図示しないリニアアクチュエータが作動してそのロッドが所定ストローク分伸長し、ユニット支持ブラケット36に搭載されたブース機器側解施錠ユニット31が前進して、ガイドピン44および位置出しピン45が保護箱5の保護箱側解施錠ユニット12におけるガイドピン穴18a、位置出し用穴18bにそれぞれ嵌まり込む。
【0040】
連結過程について具体的に説明すると、先ずリニアアクチュエータのロッドが所定ストローク分伸長すると、ガイドピン44の先端周りがガイドピン穴18aに挿入されるとともに、位置出しピン45が位置出し用穴18bに対して連結シャフト32の円周方向にずれている場合、位置出しピン45の先端がタンブラー軸18の軸端面に当接する。このとき、位置出しピン45は圧縮コイルばね47の付勢力によりタンブラー軸18の軸端面に押さえ付けられた状態となる。この状態で連結シャフト32がゆっくり回転し、位置出しピン45が位置出し用穴18bの位置に達した時点で、圧縮コイルばね47の付勢力により位置出しピン45が位置出し用穴18bに嵌まり込む。
【0041】
ここで、ガイドピン44の挿入段階で保護箱利用口4における保護箱5の位置がずれている場合であっても、ガイドピン44の先端がガイドピン穴18aの拡径斜面18cに接触したときに受ける反力によって、第2スライドガイド37のスライダ37b、第3スライドガイド40のスライダ40bが移動し、ガイドピン44がガイドピン穴18aの中央に誘導されて完全に嵌まり込む。したがって、位置出しピン45についても位置出し用穴18bに対する連結シャフト32の径方向のずれが解消され、ガイドピン44および位置出しピン45がそれぞれの穴にスムースに嵌まり込むようになっている。
【0042】
以上のピンと穴との嵌合による両ユニットの連結完了後、連結シャフト32がゆっくり回転し、タンブラー軸18を、エンコーダが予め認識している0点位置(基準位置)に合わせる。
【0043】
そして、図6におけるS5またはS15の解錠指示操作がなされると、ステッピングモータ33は、メインコントローラに登録されているその保護箱5の解錠番号(解錠情報)に基づいて回転しタンブラー17を解錠する。例えば、本実施形態のように3枚のタンブラー17を有した錠の場合、ステッピングモータ33は、先ず1枚目のタンブラー17についての前記解錠情報に基づいたパルス分だけ回転してその解錠溝17aを解錠箇所に位置させ、次いで2枚目のタンブラー17についての前記解錠情報に基づいたパルス分だけ回転してその解錠溝17aを解錠箇所に位置させ、最後に3枚目のタンブラー17についての前記解錠情報に基づいたパルス分だけ回転してその解錠溝17aを解錠箇所に位置させ、全ての解錠溝17aを解錠箇所で一致させる。
【0044】
これにより保護箱5は解錠状態となり、顧客がスライド摘み部23に指をかけてカンヌキ16を図4(b)に示すようにスライドさせることにより、タンブラー側係合部21が解錠溝17aに差し込まれ、蓋側係合部22が蓋9の被係合部9aの上方から外れるので、蓋9を開くことができる。
【0045】
保護箱5を施錠する際は、顧客が蓋9を閉め、スライド摘み部23を施錠側にスライドさせてから図6におけるS7またはS17で施錠の指示操作をすると、ステッピングモータ33が所定の施錠位置まで回転し、タンブラー17の各位置を崩して施錠を行う。その後、図示しないリニアアクチュエータのロッドが縮退し、ブース機器側解施錠ユニット31と保護箱側解施錠ユニット12との連結が解かれる。
【0046】
以上のように、保護箱5に保護箱側解施錠ユニット12を設け、ブース機器6には、保護箱利用口4に位置した保護箱5の保護箱側解施錠ユニット12に連結するブース機器側解施錠ユニット31を設け、顧客がブース機器6で入力した情報と、予め保護箱5毎に登録された情報とが一致したときに、ブース機器側解施錠ユニット31が保護箱側解施錠ユニット12を解錠する構成とすれば、高いセキュリティ性を維持しつつ、銀行など店舗側からの鍵の貸与を要することなく保護箱5を開けることができる。
【0047】
また、保護箱側解施錠ユニット12の錠を機械錠とし、ブース機器側解施錠ユニット31にその解施錠用の駆動源を設けることで、保護箱5側には電気部品や電気回路、その駆動源などの割高な部材を備える必要がなくなるため、低コストの保護箱5となり、経済的な貸金庫システムを構築できる。保護箱5側には電気部品を一切使用しないため、メンテナンス頻度も少なくて済む。
【0048】
さらに、保護箱側解施錠ユニット12は、保護箱5毎に固有な錠前編成を有する複数個のタンブラー17を有し、ブース機器側解施錠ユニット31は、各タンブラー17を順次回転させて解錠する回転装置(ガイドピン44、位置出しピン45を形成した連結シャフト32、ステッピングモータ33などの構成部材からなる装置を意味する)を有する構成とすれば、タンブラー式による解錠構造のため、外部から解錠することは極めて困難となり、セキュリティ性が向上する。
【0049】
また、保護箱側解施錠ユニット12のタンブラー軸18の端面に、ブース機器側解施錠ユニット31のガイドピン44が連結するガイドピン穴18aを形成し、このガイドピン穴18aにガイドピン44を穴中心に導くための拡径斜面18cを形成し、ブース機器側解施錠ユニット31には、ガイドピン44が拡径斜面18cに接触したときに受ける反力によって作動し、ガイドピン44の穴中心への移動を許容するフローティング機構(第2スライドガイド37、第3スライドガイド40)を設ける構成とすれば、簡単な構造により、保護箱5の位置がずれている場合であってもブース機器側解施錠ユニット31を保護箱側解施錠ユニット12にスムースに連結させることができる。
【0050】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。説明した形態では、「顧客がブース機器6で入力した情報と、予め保護箱5毎に登録された情報とが一致したときに、ブース機器側解施錠ユニット31が保護箱側解施錠ユニット12を解錠する」構成において、その「情報」として、図6の「生体認証なし」の操作フローにおいてはS2のカード暗証情報とS4の保護箱暗証情報の2つを要しているが、場合によってはいずれか一方のみとしてもよい。また、説明した形態では、解錠のタイミングを図6におけるS5、S15の解錠ボタンの操作後としたが、設定してある情報についての入力情報と登録情報の一致が確認された以降であれば、その具体的な解錠のタイミングは特に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
1 ブース
2 貸金庫室
4 保護箱利用口
5 保護箱
6 ブース機器
7 操作パネル
9 蓋
9a 被係合部
10 筐体
12 保護箱側解施錠ユニット
15 符号錠
16 カンヌキ
17 タンブラー
18 タンブラー軸
18a ガイドピン穴
18b 位置出し用穴
18c 拡径斜面
23 スライド摘み部
31 ブース機器側解施錠ユニット
33 ステッピングモータ
37 第2スライドガイド(左右方向のフローティング機構)
40 第3スライドガイド(上下方向のフローティング機構)
44 ガイドピン
45 位置出しピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の物品が保護箱に格納され、ブース機器に設けられた保護箱利用口を介して顧客が保護箱を利用する貸金庫システムにおいて、
保護箱に設けられる保護箱側解施錠ユニットと、
ブース機器に設けられ、保護箱利用口に位置した保護箱の前記保護箱側解施錠ユニットに連結するブース機器側解施錠ユニットと、
を備え、
顧客がブース機器で入力した情報と、予め保護箱毎に登録された情報とが一致したときに、前記ブース機器側解施錠ユニットが前記保護箱側解施錠ユニットを解錠することを特徴とする貸金庫システム。
【請求項2】
前記保護箱側解施錠ユニットの錠は機械錠からなり、
前記ブース機器側解施錠ユニットに解施錠用の駆動源が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の貸金庫システム。
【請求項3】
前記保護箱側解施錠ユニットは、保護箱毎に固有な錠前編成を有する複数個のタンブラーを有し、
前記ブース機器側解施錠ユニットは、前記各タンブラーを順次回転させて解錠する回転装置を有する構成からなることを特徴とする請求項2に記載の貸金庫システム。
【請求項4】
前記保護箱側解施錠ユニットのタンブラー軸の端面には、前記ブース機器側解施錠ユニットのガイドピンが連結するガイドピン穴が形成され、
前記ガイドピン穴には前記ガイドピンを穴中心に導くための拡径斜面が形成され、
前記ブース機器側解施錠ユニットには、前記ガイドピンが前記拡径斜面に接触したときに受ける反力によって作動し、前記ガイドピンの穴中心への移動を許容するフローティング機構が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の貸金庫システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−196250(P2010−196250A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38860(P2009−38860)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(307011510)株式会社熊平製作所 (12)
【Fターム(参考)】