説明

貼付材の貼付方法及び貼付装置

【課題】硬い被貼付材に対し同じ硬い貼付材を貼付する際に、貼付面間に気泡が発生する割合を低減し、後工程における脱泡の確率を高めることができる貼付方法を提供する。
【解決手段】被貼付材3を第1テーブル1上に保持し、貼付材4を第2テーブル2上に保持し、第2テーブル2を退避位置から貼付開始位置まで前進移動させ、この位置で第2テーブル2を第1テーブル1に対し傾斜して、貼付材4の先端部4aを押圧手段7により第1テーブル1上の被貼付材3に押し付け、貼付材4の後端部4bを跳ね上がり防止用押え片8で押えた後、押圧手段7を第2テーブル2と共に貼付開始位置から被貼付材3の後端側方向へ移動させて、貼付材4をその先端部4aから後端部4bに向かって被貼付材3に押し付けながら、貼付材4の後端部4bに対する押え片8の押えを徐々に緩めていって、押圧手段7が最終貼付位置に達する迄に押え片8を貼付材4から撤退させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質の貼付材を同じく硬質の被貼付材に対し両者の対向面の何れか一方に設けた粘着剤層を介して貼付する貼付材の貼付方法及び貼付装置に関するもので、例えば、液晶ディスプレーの液晶板やタッチパネル等の製造に利用される。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、特許公報等の公知文献を具体的に挙げることはできないが、例えば、ガラス板(被貼付材)にプラスチックフィルム(貼付材)を貼り付けるのに、従来では、粘着剤層を設けたガラス板を第1テーブルに保持し、プラスチックフィルムを第2テーブルに保持し、そうして第1テーブルに第2テーブルを、貼付面どうしが対面するように対向させた状態から、第2テーブルをその先端側が第1テーブルに接近するように傾斜させて、プラスチックフィルムの先端部を押圧ローラで押さえ、この状態で押圧ローラをプラスチックフィルムの後端側方向へ移動させて、プラスチックフィルムをその先端部から後端部に向かってガラス板に押し付けていき、これによってプラスチックフィルムをガラス板に全面的に貼り付けるようにする。
【0003】
このように、第2テーブルを傾斜させ、プラスチックフィルムの先端部を押圧ローラで押さえた状態で、押圧ローラをプラスチックフィルムの後端側方向へ移動させて、プラスチックフィルムをその先端部から後端部へとガラス板に押し付けていくことにより、ガラス板とプラスチックフィルムとの貼付面間での気泡の発生をできるだけ少なくするようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記貼付方法は、ガラス板のように硬い被貼付材に対しプラスチックフィルムのような柔らかい貼付材を貼り付ける場合や、被貼付材及び貼付材の両方共プラスチックフィルムのような柔らかい材料である場合には適する方法であるが、ガラス板(被貼付材)にガラス板(貼付材)を貼付し、またガラス板(被貼付材)に硬いプラスチック板(貼付材)を貼付したり、あるいは硬いプラスチック板(被貼付材)に同じく硬いプラスチック板(貼付材)を貼付する場合は適当ではない。
【0005】
即ち、上記貼付方法によって、ガラス板(被貼付材)に硬質プラスチック板(貼付材)を貼付する場合に、粘着剤層を設けたガラス板を第1テーブルに保持し、硬質プラスチック板を保持した第2テーブルを第1テーブルに対し所要角度傾斜させた状態で、硬質プラスチック板の先端部を押圧ローラで押さえると、硬質プラスチック板はその剛性によって可動テーブルから瞬時に跳ね上がって、ガラス板の粘着剤層に接触してしまい、その時にガラス板の粘着剤層と硬質プラスチック板の貼付面との間に空気が混入して多数の気泡が発生し、後工程で脱泡処理を行っても、例えば、液晶板やタッチパネル等に要求される品質レベルでの脱泡ができない状態となる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑み、硬い被貼付材に対し同じ硬い貼付材を貼付する際に、被貼付材と貼付材との間の貼付面間に気泡が発生する割合を極力低減し、後工程における脱泡の確率を高めることができる貼付材の貼付方法及び貼付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明は、硬質の貼付材4を同じく硬質の被貼付材3に対し両者の対向面の何れか一方に設けた粘着剤層5を介して貼付する方法であって、被貼付材3を第1テーブル1上に保持し、貼付材4は先端部4aを第2テーブル2先端から突出させた状態で第2テーブル2上に保持し、第1テーブル1を定位置に固定しておいて、第2テーブル2を退避位置から貼付材4が第1テーブル1上の被貼付材3に対向する貼付開始位置まで前進移動させると共に、第2テーブル2を第1テーブル1に対し傾斜させて、貼付材4の先端部4aを押圧手段7により第1テーブル1上の被貼付材3に押し付けると共に、貼付材4の後端部4bを跳ね上がり防止用の押え片8で押えた後、押圧手段7を第2テーブル2と共に貼付開始位置から被貼付材3の後端側方向へ移動させて、貼付材4をその先端部4aから後端部4bに向かって被貼付材3に押し付けながら、貼付材4の後端部4bに対する前記押え片8の押えを徐々に緩めていって、押圧手段7が貼付材4の最終貼付位置に達するまでに前記押え片8を貼付材4から撤退させ、それにより貼付材4を被貼付材3に対し全面的に貼付させることを特徴とする。
【0008】
請求項2は、請求項1に記載の貼付方法を実施するための貼付装置であって、被貼付材3を保持する第1テーブル1と、第1テーブル1に対し傾斜可能で、貼付材4を保持する第2テーブル2と、第2テーブル2を退避位置と貼付材4が第1テーブル1上の被貼付材3に対向する貼付開始位置との間で進退移動させると共に、退避位置で第2テーブル2をその先端側が第1テーブル1に接近するように傾斜させる第2テーブル駆動手段6と、傾斜した第2テーブル2の先端から突出した貼付材4の先端部4aを第1テーブル1上の被貼付材3に押し付ける押圧手段7と、先端部が押圧手段7で被貼付材3に押し付けられた貼付材4の後端部4bを押え片8で押えることにより貼付材4の跳ね上がりを防止する跳ね上がり防止手段9と備え、押圧手段7は、貼付開始位置から第2テーブル2と共に被貼付材3の後端側方向へ移動して、貼付材4をその先端部4aから後端部4bに向かって被貼付材3に押し付けながら接着させ、跳ね上がり防止手段9は、押圧手段7の移動に従って貼付材4の後端部4bに対する前記押え片8の押えを徐々に緩めて、押圧手段7が貼付材4の最終貼付位置に達するまでに前記押え片8を貼付材から撤退させ、それによって貼付材4が被貼付材3に対して全面的に貼付されることを特徴とする。
【0009】
請求項3は、請求項2に記載の貼付材の貼付装置において、前記跳ね上がり防止手段9は、第2テーブル2の移動方向及び上下方向に移動可能な支持アーム25と、この支持アーム25の先端に設けられて、貼付材4の後端部4bに対し進退移動可能な押え片8とからなることを特徴とする。
【0010】
請求項4は、請求項2又は3に記載の貼付材の貼付装置において、第2テーブル駆動手段6は、第2テーブル2を前後に傾転可能に搭載して、第2テーブル2の退避位置と貼付開始位置との間で往復走行する台車11からなるもので、台車11と第2テーブル2の前端部との間に昇降用シリンダ12を設け、このシリンダ12によって押え片8としての押圧ローラを昇降させると共に、昇降用シリンダ12を第2テーブル2の前端部に連動連結して第2テーブル2を傾転させるようにしてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明の貼付方法によれば、第2テーブル2を退避位置から貼貼付開始位置まで前進移動させ、この位置で第2テーブル2を傾斜させて、貼付材4の先端部4aを押圧手段7で第1テーブル1上の被貼付材3に押し付けると共に、貼付材4の後端部4bを跳ね上がり防止用の押え片8で押えた後、押圧手段7を第2テーブル2と共に貼付開始位置から被貼付材3の後端側方向へ移動させて、貼付材4を先端部4aから後端部4b方向へ被貼付材3に押し付けながら、貼付材4の後端部4bに対する押え片8の押えを徐々に緩めていって、押圧手段7が貼付材4の最終貼付位置に達するまでに押え片8を貼付材4から撤退させるようにしたから、ガラス板のように硬い被貼付材3に対し、同じくガラス板のように硬い貼付材4を貼付する際に、貼付面間に気泡が発生する割合を極力低減し、後工程における脱泡の確率を高めることができる。
【0012】
因みに、傾転させた第2テーブル2の貼付材4の後端部4bを押えることなく、貼付材4の先端部4aを押圧手段7で第1テーブル1の被貼付材3に押し付けると、貼付材4がその剛性により第1テーブル1側へ跳ね上がって第2テーブル2から離れて被貼付材3の粘着剤層5に接触してしまうことになるが、押圧手段7によって貼付材4の先端部4aを押し付けると同時に、貼付材4の後端部4bを押え片8で押えることで、粘着剤層5への貼付材4の接触が防止され、それによって被貼付材3と貼付材4との貼付面間への空気の混入を防止し、貼付面間での気泡の発生割合を極力低減することができる。
【0013】
尚、貼付材4の後端部4bを跳ね上がり防止手段9の押え片8で押えた状態で、貼付材4の先端部4aを押圧手段7で第1テーブル1の被貼付材3に押し付けながら被貼付材3の後端側方向へ移動させていくと、貼付材4は、先端部4a側から順次弾性変形しながら第1テーブル1の被貼付材3に押し付けられて接着、即ち貼付されていくわけであるが、このとき押え片8が貼付材4の後端部4bを終始同じ状態で押えていると、貼付材4の弾性変形による撓み量の増大して貼付材4が破壊してしまうことから、本発明の方法では、貼付材4の後端部4bに対する押え片8の押えを徐々に緩めていくようにすることにより、貼付材4の弾性変形による撓み量の増大を抑制して、貼付材4の破壊を防止することができると共に、被貼付材3と貼付材4との間への空気の混入を防止することができる。
【0014】
また、跳ね上がり防止手段9の押え片8は、押圧手段7が貼付材4の最終貼付位置に達するまでに貼付材4から撤退させるため、特に同じ大きさの被貼付材3と貼付材4とを貼り合わせる場合に、被貼付材3に対する貼付材4の最終貼付位置付近において、貼付材4は押え片8に邪魔されることなく、被貼付材3に対し的確に貼り合わせられる。
【0015】
請求項2に係る発明の貼付装置によれば、請求項1に係る発明の貼付方法を有効に実施することができる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、跳ね上がり防止手段9が、第2テーブル2の移動方向及び上下方向に移動可能な支持アーム25と、この支持アーム25の先端に設けられて、貼付材4の後端部4bに対して進退移動可能な押え片8とからなるため、被貼付材3及び貼付材4の厚みや大きさが変更されても、貼付材4の後端部4bを最適の位置に確実に位置決めすることができる共に、貼付材4からの最終的な撤退を的確に行うことができる。気泡の発生は、被貼付材3、貼付材4の剛性のみならず、粘着剤層5の厚みや粘度、貼付材4の大きさや長さ、貼付のための押圧スピード等の種々多様な要素の影響を受ける。このような多様な要素の影響は、貼付材4を十分撓ませることにより吸収するようにすれば、気泡の発生を抑えることができる。一方、本発明の対象である貼付材4は硬質であるため、これにストレスを与えずに貼付するためには、貼付材4を十分撓ませる前記のようにして行う気泡排除の要請とは相反するが、その先端部4aと後端部4bとの間の撓みは、極力小さくすることが要請される。硬い被貼付材3に必要以上の撓みを与えてストレスをかけると、被貼付材3は破断する可能性が高くなるからである。即ち、硬い貼付材4を、気泡の発生を抑えつつ、且つ撓みを抑えてストレスがかからない状態で貼付するためには、後端部4bの位置決めの制御を厳格に行えることが必須の条件となる。このような観点から、請求項3に係る発明によれば、被貼付材3の後端部4bを最適な位置に容易、確実に位置決めできるので、気泡の発生が少なく、製造中のストレスが小さいため製造歩留りを高く維持した、高品質且つ生産性の高い積層材の生産が可能となる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、第2テーブル駆動手段6は、第2テーブル2の退避位置と貼付開始位置との間で往復走行する台車11からなるもので、台車11と第2テーブル2の前端部との間に昇降用シリンダ12を設け、このシリンダ12によって押え片8としての押圧ローラを昇降させると共に、昇降用シリンダ12を第2テーブル2の前端部に連動連結して第2テーブル2を傾転させるようにしたから、部品点数を少なくできて、構造の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1は本発明に係る貼付装置の概念図を示す正面図、(b) は平面図であり、図2の(a) は図1の(a) のX−X線断面図である。ここに示す貼付装置は、被貼付材2を保持する第1テーブル1と、この第1テーブル1に対し傾斜可能で、貼付材4を保持する第2テーブル2と、この第2テーブルを、図1の(a) の仮想線及び(b) の実線で示すような退避位置と貼付材4が第1テーブル1上の被貼付材3に対向する貼付開始位置(図1の(a) の実線図示)との間で進退移動させると共に、貼付開始位置で第2テーブル2をその先端側が第1テーブル1に接近するように傾斜させる第2テーブル駆動手段6と、傾斜した第2テーブル2の先端から突出した貼付材4の先端部4aを第1テーブル1の被貼付材3に押し付ける押圧ローラ7(押圧手段)と、先端部4aが押圧ローラ7で被貼付材3に押し付けられた貼付材4の後端部4bを押え片8で押えることによって貼付材4の跳ね上がりを防止する跳ね上がり防止手段9とを備えている。
【0019】
尚、図1の(a) には退避位置にある第2テーブル2及びこれを搭載した台車11を仮想線で示し、貼付開始位置にある第2テーブル2及び台車11を実線で示しているが、(b) には退避位置にある台車11上の第2テーブル2を実線で示している。
【0020】
第1テーブル1及び第2テーブル2には夫々の表面(被貼付材3、貼付材4を載置する面)に真空吸着用の小さなエア吸引孔37が多数整列状態に配設され、これらエア吸引孔37は、図示は省略するが、各テーブル1,2の夫々の内部のエア吸引室に通じていて、各テーブル1,2のエア吸引室は、エア吸引管、圧力調整弁等を介して真空ポンプに接続されている。そして、被貼付材3は第1テーブル1の表面に、また貼付材4は第2テーブル2の表面に夫々真空吸着作用によって保持されるようになっている。
【0021】
被貼付材3は、ガラス板や硬質のプラスチック板等からなるものであり、この被貼付材3に貼付される貼付材4も、被貼付材3と同じくガラス板や硬質のプラスチック板等からなるものである。そして、被貼付材3の貼付面又は貼付材4の貼付面の何れか一方に粘着剤層5(図3参照)が設けられる。粘着剤層5としては、例えば両面テープが使用され、被貼付材3又は貼付材4の貼付面に接着される。
【0022】
図1の(a) ,(b) に示すように、装置基台14上に設けられた架構15の対向する支持枠16,17間に第1テーブル反転用の回転軸18が軸架され、この回転軸18に第1テーブル1が取り付けられていて、この回転軸18を回転させることにより、第1テーブル1が図1の(a) の仮想線で示す上向きの被貼付材セット位置と、同図の実線で示す下向きの貼付材貼り付け位置とに位置決めできるようになっている。尚、回転軸18の回転操作は、図示しないハンドルによる手動操作でもよいし、モータによる自動操作でもよい。
【0023】
第2テーブル駆動手段6は、図1の(a) に示すように、第2テーブル2を枢着部10により前後に傾転できるように搭載して、第2テーブル2の退避位置と貼付開始位置との間を往復走行する台車11からなるもので、この台車11と第2テーブル2の前端部との間にはエアシリンダよりなる昇降用シリンダ12が設置され、この昇降用シリンダ12によって押圧ローラ7を昇降させるようにすると共に、昇降用シリンダ12を連結部材13を介して第2テーブル2の前端部に連動連結し、このシリンダ12の昇降動作によって第2テーブル2を傾転駆動するようになっている。
【0024】
台車11は、図1の(a) 及び図2の(a) に示すように、装置基台14上に敷設してある両側一対のレール19,19によって案内される前後左右の走行ガイド20を有し、この走行ガイド20とボールネジ機構21とにより走行駆動される。ボールネジ機構21は、装置基台14内に軸架されたネジ軸22と、ネジ軸22に螺合したナット部材23と、このナット部材23を台車11に一体的に連結する連結枠36と、ネジ軸22を回転させるサーボモータ24とからなる。
【0025】
跳ね上がり防止手段9は、図1の(a) 及び(b) に示すように、第2テーブル2が移動する前後方向及び上下方向に移動可能な支持アーム25と、この支持アーム25の先端部に取付片26を介して取り付けられて、貼付材4の後端部4bに対し進退移動可能となっている押え片8とからなる。支持アーム25は、上下駆動用の一軸ロボット27に取り付けられ、この上下駆動用一軸ロボット27は、図1の(b) に概略示すように、架構15上の台枠28に設けられた前後駆動用の一軸ロボット31により前後移動可能な横支軸29にブラケット30を介して角度調整可能に取り付けられている。この横支軸29の一端部は、前後駆動用一軸ロボット31に取り付けられ、その他端部は、架構15上の台座38に沿って前後移動可能なガイド39に取り付けられている。押え片8は、図1、図3及び図4から分かるように、平面視が矩形状、側面視が略三角形状で、先端部が薄くなるように形成されている。
【0026】
前記一軸ロボット27,31は、図示は省略するが、ボールネジ、サーボモータ、リニアガイド、これらを取り付けるボディ等により構成されたもので、上下駆動用の一軸ロボット27は、支持アーム25を上下方向に往復動させると共に、任意の位置で精度良く停止させることができ、また前後駆動用の一軸ロボット31は、上下駆動用の一軸ロボット27を取り付けた横支軸29を前後方向(台車11の移動方向)に往復動させると共に、任意の位置で精度良く停止させることができる。
【0027】
従って、跳ね上がり防止手段9の押え片8は、上記のような前後駆動用の一軸ロボット31、横支軸29、上下駆動用の一軸ロボット27及び支持アーム25によって、貼付材4の後端部4bに対し進退移動するようになっているから、被貼付材3及び貼付材4の厚みや大きさが変更されても貼付材4の後端部4b上面を的確に押えることができると共に、貼付材後端部4bからの引き上げ動作及び撤退動作を精確に行うことができる。
【0028】
図2の(b) は、昇降用シリンダ12の昇降動作を第2テーブル2に連動させる連結部材13を示したもので、この連結部材13は、昇降用シリンダ12の可動部に取り付けられたアーム32と、このアーム32に設けられた第1支持ローラ33と第2支持ローラ34とからなり、第1支持ローラ33は、昇降用シリンダ12の上昇作動時に第2テーブル2の下面に当接して、第2テーブル2をその先端側が第1テーブル1に接近するように傾斜させるものであり、第2支持ローラ34は、昇降用シリンダ12の下降作動時に第2テーブル2の下面に突設された係止片35に係止して、第2テーブル2を元の水平位置まで復帰させるものである。
【0029】
この実施形態では、押圧ローラ7を昇降させる昇降用シリンダ12の可動部に連結部材13を設けて、この連結部材13で昇降用シリンダ12を第2テーブル2に連動させて、第2テーブル2を傾動させるようにしているが、押圧ローラ昇降用シリンダ12とは別に、第2テーブル傾動用のシリンダを設けて、第2テーブル2を単独で傾動させるようにしてもよい。但し、この実施形態のように昇降用シリンダ12を第2テーブル2の前端部に連動連結して第2テーブル2を傾転させる構成とすれば、部材点数が少なく、構造を簡素化できる利点がある。
【0030】
次に、上記のような構成よりなる貼付装置を使用して貼付材4を被貼付材3に貼付する方法を、図3及び図4を参照して以下に説明する。ここでは、被貼付材3として比較的厚い方形状のガラス板を使用し、その片面には粘着剤層5としての両面テープが貼り付けられ、また貼付材4としては、被貼付材3のガラス板よりも薄く、そのガラス板と同じ大きさの方形状ガラス板を使用する。
【0031】
先ず、図3の(a) に示すように、上向きの被貼付材セット位置にある第1テーブル1の表面所定位置に被貼付材3を真空吸着により保持し、また退避位置にある第2テーブル2の表面所定位置に貼付材4を、その先端部4aが第2テーブル2の先端から突出した状態で真空吸着により保持する。この時、被貼付材3に設けてある粘着剤層5は上を向いている。
【0032】
この場合、貼付材4を保持する第2テーブル2側の真空吸着力は、第2テーブル2の移動時に貼付材4の位置がズレない程度の比較的弱い吸着力でよいものとする。また、跳ね上がり防止手段9の押え片8は、第2テーブル2が貼付開始位置へ移動してくる時にこの第2テーブル2の邪魔にならないような位置にセットされる。
【0033】
それから、図3の(b) に示すように、回転軸18の回転操作により、第1テーブル1を反転させて下向きの貼付材貼り付け位置とした後、第2テーブル駆動手段6によって、退避位置にある第2テーブル2を、貼付材4が第1テーブル1の被貼付材3に対向する貼付開始位置まで移動させると共に、第2テーブル2を第1テーブル1に対し所要角度傾転させて、第2テーブル2上の貼付材4の先端部4aを押圧ローラ7で第1テーブル1の被貼付材3に押し付け、それと同時に跳ね上がり防止手段9の押え片8を貼付材4の後端部4bと被貼付材3の間に進入させて貼付材4の後端部4bをその上から押える。この押え片8は、貼付材4の後端部4bと被貼付材3との間に進入し易いように、側面視が略三角形状で先端部が薄く形成されている。
【0034】
因みに、傾転させた第2テーブル2の貼付材4の後端部4bを押えることなく、貼付材4の先端部4aを押圧手段7で第1テーブル1の被貼付材3に押し付けると、貼付材4がその剛性により第1テーブル1側へ跳ね上がって第2テーブル2から離れて被貼付材3の粘着剤層5に接触してしまうことになるが、押圧手段7によって貼付材4の先端部4aを押し付けると同時に、貼付材4の後端部4bを押え片8で押えることで、粘着剤層5への貼付材4の接触が防止され、それによって被貼付材3と貼付材4との貼付面間への空気の混入が防止され、貼付面間での気泡の発生割合が極力低減されることになる。
【0035】
上記のように押え片8が貼付材4の後端部4bと被貼付材3との間に進入して貼付材4の後端部4bを押えた後、図3の(c) に示すように、第2テーブル駆動手段6によって、第2テーブル2を貼付開始位置から退避位置へ移動させると共に、押圧ローラ7を同方向へ移動させ、それによって貼付材4をその先端部4aから弾性変形させながら後端部4bに向かって第1テーブル1の被貼付材3に押し付けていき、これと同時に跳ね上がり防止手段9の押え片8を徐々に引き上げていって、貼付材4が先端部4aから順次被貼付材3に接触するように貼付材4と被貼付材3との貼り合わせを行っていく。
【0036】
尚、貼付材4の後端部4bを跳ね上がり防止手段9の押え片8で押えた状態で、貼付材4の先端部4aを押圧手段7で第1テーブル1の被貼付材3に押し付けながら被貼付材3の後端側方向へ移動させていくと、貼付材4は、先端部4a側から順次弾性変形しながら第1テーブル1の被貼付材3に押し付けられて接着、即ち貼付されていくわけであるが、このとき押え片8が貼付材4の後端部4bを終始同じ状態で押えていると、貼付材4の弾性変形による撓み量の増大して貼付材4が破壊してしまうことから、この貼付方法では、貼付材4の後端部4bに対する押え片8の押えを徐々に緩めていくようにすることによって、貼付材4の弾性変形による撓み量の増大を抑制して、貼付材4の破壊を防止することができると共に、被貼付材3と貼付材4との間への空気の混入を防止することができる。貼付材4としてガラス板が使用される場合、ガラス板の厚さが例えば5mm程度と厚くても、その大きさが例えば縦横600mm×600mm程度になると、弾性効果を発揮して貼付材4として十分使用可能となる。
【0037】
しかして、押圧ローラ7が貼付材4の最終貼付位置付近になると、図4の(a) に示すように、跳ね上がり防止手段9の押え片8が、被貼付材3と貼付材4との間から抜け出て、貼り合わせの邪魔にならないように退避し、その間に押圧ローラ7が最終貼付位置に達して、貼付材4が被貼付材3に対し全面的に貼り合わされる。
【0038】
貼付材4が被貼付材3に全面的に貼り合わされると、図4の(b) に示すように、第1テーブル1を下向きの貼付材貼り付け位置から上向きの上向きの被貼付材セット位置に戻すと共に、第1テーブル1を傾斜姿勢から水平姿勢に戻し、被貼付材3に対する貼付材4の貼付作業を完了する。この後、第1テーブル1及び第2テーブル2の真空吸着動作を停止し、第1テーブル1から被貼付材3と貼付材4との貼り合わせ製品Sを取り出す。
【0039】
以上説明したような貼付装置によれば、第2テーブル2を退避位置から貼貼付開始位置まで前進移動させ、この位置で第2テーブル2を傾斜させて、貼付材4の先端部4aを押圧ローラ7により第1テーブル1上の被貼付材3に押し付けると共に、貼付材4の後端部4bを跳ね上がり防止手段9の押え片8により押えた後、押圧ローラ7を第2テーブル2と共に貼付開始位置から被貼付材3の後端側方向へ移動させて貼付材4を先端部4aから後端部4b方向へ被貼付材3に押し付けながら、貼付材4の後端部4bに対する押え片8の押えを徐々に緩めていって、押圧手段7が貼付材4の最終貼付位置に達するまでに押え片8を貼付材4から撤退させるようにしたから、ガラス板のように硬い被貼付材3に対し、同じくガラス板のように硬い貼付材4を貼付する際に、貼付面間に気泡が発生する割合を極力低減し、後工程における脱泡の確率を高めることができる。
【0040】
また、この貼付装置では、貼付材4の後端部4bに対する押え片8の押えが徐々に緩められるようになっているから、貼付材4の弾性変形による撓み量の増大が抑制されて、貼付材4の破壊が防止されると共に、被貼付材3と貼付材4との間への空気の混入が有効に防止される。そして、この押え片8は、押圧ローラ7が貼付材4の最終貼付位置に達するまでに貼付材4から撤退するため、同じ大きさの被貼付材3と貼付材4とを貼り合わせる場合でも、被貼付材3と貼付材4とは、押え片8に邪魔されることなく、的確に貼り合わせられる。
【0041】
以上の実施形態は、上側に第1テーブル1があって、この第1テーブル1の下面に保持させた被貼付材3に対し、第2テーブル2を退避位置から第1テーブル1の下方に位置する貼付開始位置へ移動させ、この位置で第2テーブル2を傾斜させて、貼付材4の先端部4aに対し押圧ローラ(押圧手段)7を上昇させることにより第1テーブル1の被貼付材3に押し付けると共に、貼付材4の後端部4bに対し跳ね上がり防止手段9の押え片8を上方より押える場合であるが、第1テーブル1と第2テーブル2を上下逆の配置にして、下側の第1テーブル1に保持した被貼付材3に対し、上側の第2テーブル2を、退避位置から第1テーブル1の上方に位置する貼付開始位置に移動させ、この位置で第2テーブル2を傾斜させて、貼付材4の先端部4aに対し押圧ローラ7を下降させることにより第1テーブル1の被貼付材3に押し付けると共に、貼付材4の後端部4bに対して跳ね上がり防止手段9の押え片8をその下方から押えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る貼付装置の概念図を示す正面図、(b) は平面図である。
【図2】(a) は図1の(a) のX−X線断面図、(b) は昇降用シリンダの昇降動作を第2テーブルに連動させる連結部材を示す説明図である。
【図3】(a) 〜(c) は本発明に係る貼付方法を示す説明図である。
【図4】(a) 〜(c) は図3に引き続き貼付方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0043】
1 第1テーブル
2 第2テーブル
3 被貼付材
4 貼付材
5 粘着剤層
6 第2テーブル駆動手段
7 押圧ローラ(押圧手段)
8 跳ね上がり防止手段の押え片
9 跳ね上がり防止手段
11 台車
12 昇降用シリンダ
13 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質の貼付材を同じく硬質の被貼付材に対し両者の対向面の何れか一方に設けた粘着剤層を介して貼付する方法であって、被貼付材を第1テーブル上に保持し、貼付材は先端部を第2テーブル先端から突出させた状態で第2テーブル上に保持し、第1テーブルを定位置に固定しておいて、第2テーブルを退避位置から貼付材が第1テーブル上の被貼付材に対向する貼付開始位置まで前進移動させると共に、第2テーブルを第1テーブルに対し傾斜させて、貼付材の先端部を押圧手段により第1テーブル上の被貼付材に押し付けると共に、貼付材の後端部を跳ね上がり防止用の押え片で押えた後、押圧手段を第2テーブルと共に貼付開始位置から被貼付材の後端側方向へ移動させて、貼付材をその先端部から後端部に向かって被貼付材に押し付けながら、貼付材の後端部に対する前記押え片の押えを徐々に緩めていって、押圧手段が貼付材の最終貼付位置に達するまでに前記押え片を貼付材から撤退させ、それにより貼付材を被貼付材に対し全面的に貼付させることを特徴とする貼付材の貼付方法。
【請求項2】
請求項1に記載の貼付方法を実施するための貼付装置であって、被貼付材を保持する第1テーブルと、第1テーブルに対し傾斜可能で、貼付材を保持する第2テーブルと、第2テーブルを退避位置と貼付材が第1テーブル上の被貼付材に対向する貼付開始位置との間で進退移動させると共に、退避位置で第2テーブルをその先端側が第1テーブルに接近するように傾斜させる第2テーブル駆動手段と、傾斜した第2テーブルの先端から突出した貼付材の先端部を第1テーブル上の被貼付材に押し付ける押圧手段と、先端部が押圧手段で被貼付材に押し付けられた貼付材の後端部を押え片で押えることにより貼付材の跳ね上がりを防止する跳ね上がり防止手段と備え、押圧手段は、貼付開始位置から第2テーブルと共に被貼付材の後端側方向へ移動して、貼付材をその先端部から後端部に向かって被貼付材に押し付けながら接着させ、跳ね上がり防止手段は、押圧手段の移動に従って貼付材の後端部に対する前記押え片の押えを徐々に緩めて、押圧手段が貼付材の最終貼付位置に達するまでに前記押え片を貼付材から撤退させ、それによって貼付材が被貼付材に対して全面的に貼付されることを特徴とする貼付材の貼付装置。
【請求項3】
前記跳ね上がり防止手段は、第2テーブルの移動方向及び上下方向に移動可能な支持アームと、この支持アームの先端に設けられて、貼付材の後端部に対し進退移動可能な押え片とからなることを特徴とする請求項2に記載の貼付材の貼付装置。
【請求項4】
第2テーブル移動手段は、第2テーブル2を前後に傾転可能に搭載して、第2テーブル2の退避位置と貼付開始位置との間で往復走行する台車からなるもので、台車と第2テーブルの前端部との間に昇降用シリンダを設け、このシリンダによって押圧手段としての押圧ローラを昇降させると共に、昇降用シリンダを第2テーブルの前端部に連動連結して第2テーブルを傾転させるようにしてなることを特徴とする請求項2又は3に記載の貼付材の貼付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−139796(P2010−139796A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−316469(P2008−316469)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000130916)株式会社サンテック (4)
【Fターム(参考)】