説明

貼付用のマトリックス及びそれからなる化粧料

【課題】 本発明は、経時的な縮みや離水を殆ど生じない、形状維持性に優れ、保存安定性の良いマトリックスを提供することを課題とする。
【解決手段】 1)親水性増粘剤及び/又は親水性ゲル化剤を0.5〜5質量%と、2)多価アルコールを40〜50質量%と、3)水を30〜60質量%とを含有することを特徴とする、貼付用のマトリックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料及びその構成要素である貼付用のマトリックスに関し、詳しくは、シート状パック化粧料及びその構成要素である貼付用のマトリックスに関する。
【背景技術】
【0002】
パック化粧料などの貼付剤は、粘性のある層(以下、粘性組成物層ともいう)を直接皮膚上に貼付することにより、かかる粘性組成物層中の有効成分を、時間をかけて徐々に経皮に吸収させるために使用されるものである(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照)。この様な貼付剤においては、粘性組成物層の形状を維持する目的で、通常不織布などの支持体が使用され、支持体上に粘性組成物を塗工する方法がとられている。しかしながら、かかる支持体の使用は、形状維持には有効ではあるが、曲面からなる顔などに貼付する場合において、支持体が有する多少の剛性が皮膚と粘性組成物層との密着を妨げることから充分な貼付けができないという問題を有していた。また、支持体上に塗工できる粘性組成物層の厚さには限界があり、粘性組成物中の有効成分の貯蓄量に制約があった。さらにまた、支持体を用いる場合においては、粘性組成物と支持体との接着性にも注力しなければならず、最終製品である貼付剤が、必ずしも肌親和性に良いものになるとは限らなかった。そこで、支持体がなくても粘性組成物層のみで貼付できる、自立型の貼付剤が望まれていた。
【0003】
ところで、親水性ゲル化剤と、多価アルコールであるグリセリンを25重量%含有する貼付剤が知られている(例えば、特許文献4を参照)。しかし、ここで記載されている貼付剤は、支持体上に粘性組成物を塗工するタイプのものである。またこの貼付剤を構成するゲル状組成物は、肌との密着性や有効成分の貯蓄性能を改善するものとはなっているが、該ゲル状組成物の層は経時的に縮んだり離水したりする等の問題を有していた。
【0004】
【特許文献1】特開2004−26707号公報
【特許文献2】特開2004−51516号公報
【特許文献3】特開2003−113036号公報
【特許文献4】特開2002−255742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、経時的な縮みや離水を殆ど生じない、形状維持性に優れ、保存安定性の良い粘性組成物層(特に本発明の粘性組成物層に対し、以下、マトリックスともいう)を提供することを課題とする。さらに、形状維持安定性に優れていることから、支持体がなくても粘性組成物層のみで貼付けできる自立型貼付剤として使用できる粘性組成物層を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
支持体を用いず粘性組成物層のみで貼付けを行うには、粘性組成物層が経時的な縮みや離水を生じさせないようにする必要があることから、本発明者らは、経時的な縮みや離水を殆ど生じない粘性組成物層を得るため鋭意検討を重ねた結果、特定の成分を特定の割合で含有する粘性組成物層がそのような性質を示すことを見出し、発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)1)親水性増粘剤及び/又は親水性ゲル化剤を0.5〜5質量%と、2)多価アル
コールを40〜50質量%と、3)水を30〜60質量%とを含有することを特徴とする、貼付用のマトリックス。
(2)前記親水性増粘剤が、ポリアクリル酸、ポリグルタミン酸、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、及びこれらの塩から選択される1種又は2種以上からなることを特徴とする、(1)に記載の貼付用のマトリックス。
(3)前記親水性ゲル化剤が、カチオン化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、イオン化デンプン誘導体、デンプンと合成高分子のブロック重合体、ヒアルロン酸、カラギーナン(カッパー、イオタ、ラムダ形)、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グァーガム、ジェランガム、タマリンドウ、グルコマンナン、キチン、キトサン、プルラン、チューベロースポリサッカライド、コラーゲン、アルキル変性されていても良いカルボキシビニルポリマー、アーネストガム、ゼラチン、ペクチン、アガロース、及びこれらの塩から選択される1種又は2種以上からなることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の貼付用のマトリックス。
(4)前記多価アルコール中に、1気圧、25℃の条件下で液体である多価アルコールが30質量%以上含有されていることを特徴とする、(1)〜(3)の何れかに記載の貼付用のマトリックス。
(5)前記多価アルコール中に、グリセリンが20質量%以上含有されていることを特徴とする、(1)〜(4)の何れかに記載の貼付用のマトリックス。
(6)(1)〜(5)の何れかに記載の貼付用のマトリックスを基材として含む化粧料。(7)目の周囲に適用することを特徴とする、(6)に記載の化粧料。
(8)前記マトリックスは、適用部位に合った形状に成形されていることを特徴とする、(6)又は(7)に記載の化粧料。
(9)前記マトリックスは、透明な型枠にマトリックスを流し込むことにより成形されたものであることを特徴とする、(6)〜(8)の何れかに記載の化粧料。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、経時的な縮みや離水を殆ど生じない、形状を長期間安定に維持できるマトリックスを提供することができる。特に、本発明のマトリックスは、形状維持性に優れていることから、支持体がなくても粘性組成物層のみで貼付けできる自立型貼付剤として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
<1>本発明のマトリックスの必須成分である親水性増粘剤、及び親水性ゲル化剤
【0010】
本発明のマトリックスは、親水性増粘剤及び/又は親水性ゲル化剤を必須成分として、マトリックス全量に対して、0.5〜5質量%、より好ましくは、1〜3質量%含有する。
ここで、本発明でマトリックスとは、貼付剤において、有効成分の投与のために必要な構成部分であって、容易には分割できない部分をいう。例えば、支持体に薬剤を含む粘性組成物を塗工した貼付剤においては、塗工された粘性組成物層が、本発明に言うマトリックスに相当する。
【0011】
上記親水性増粘剤とは、化粧料や皮膚外用医薬品などの皮膚外用剤の分野で使用される水系の製剤において、主として、粘度を高める目的で配合される成分をいう。具体的には、ポリアクリル酸、ポリグルタミン酸、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、又はこれらの塩が好ましく例示できる。特に好ましいものは、カルボキシメチルセルロース及び/又はその塩である。
【0012】
上記親水性ゲル化剤とは、化粧料や皮膚外用医薬品などの皮膚外用剤の分野で使用され
る水系の製剤において、主として、ゲル化させる目的で配合される成分をいう。具体的には、カチオン化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、イオン化デンプン誘導体、デンプンと合成高分子のブロック重合体、ヒアルロン酸、カラギーナン(カッパー、イオタ、ラムダ形)、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グァーガム、ジェランガム、タマリンドウ、グルコマンナン、キチン、キトサン、プルラン、チューベロースポリサッカライド、コラーゲン、アルキル変性されていても良いカルボキシビニルポリマー、アーネストガム、ゼラチン、ペクチン、アガロース、又はこれらの塩が好ましく例示できる。特に好ましいものは、カラギーナンである。
【0013】
また、塩としては、生理的に許容されるものであれば特段の限定はなく、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン塩、トリエチルアミン塩等の有機アミン塩類、リジン塩、アルギニン塩等の塩基性アミノ酸塩等が好ましく例示できる。
【0014】
これらの親水性増粘剤や親水性ゲル化剤は唯一種用いることも出来るし、二種以上組み合わせて用いることも出来る。本発明のマトリックスにおいては、かかる親水性増粘剤及び/又は親水性ゲル化剤について、親水性増粘剤と、親水性ゲル化剤とを、ともに含有する形態が特に好ましく、その場合に於ける、該親水性増粘剤と、親水性増粘剤の含有比は、3:1〜1:3が好ましく、2:1〜1:2がより好ましい。これは、この様な組成に於いて、マトリックスの形状安定性が最も高いからである。
<2>本発明のマトリックスの必須成分である多価アルコール
【0015】
本発明のマトリックスは、多価アルコールを必須成分として、マトリックス全量に対して、40〜50質量%、より好ましくは、35〜45質量%含有する。
【0016】
かかる多価アルコールとしては、化粧料や皮膚外用医薬組成物で通常使用されているものであれば特段の限定無く使用することが出来、例えば、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ソルビトール、マルチトールなどが好ましく例示できる。
【0017】
これら、多価アルコールは唯一種含有することも出来るし、二種以上を組み合わせて含有させることも出来る。二種以上含有させる場合、総量で、上記40〜50質量%の範囲内にする。
【0018】
また本発明では、上記多価アルコール中に、1気圧、25℃の条件下で液体である多価アルコールが、30質量%以上含有されているとより好ましい。ここで、1気圧、25℃の条件下で液体である多価アルコールとしては、例えば、上記の例示化合物の中から挙げるとすると、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、グリセリン、ポリエチレングリコールが相当する。
【0019】
さらにまた本発明では、上記多価アルコール中に、グリセリンが20質量%、さらには30質量%含有されていると特に好ましい。グリセリンは、肌への保湿効果が大きく、貼付け時の冷感を抑えることができる。
<3>本発明のマトリックスの必須成分である水
【0020】
本発明のマトリックスは、水を必須成分として、マトリックス全量に対して、30〜60質量%、より好ましくは、40〜60質量%含有する。
この様な形態を取ることにより、粘着剤層のみからなる貼付用のマトリックスと異なり、保湿成分を皮膚へ移行させる作用に優れるとともに、長時間貼付しても貼付によるかゆみや炎症を抑えることができる。又、上記量の水分を含有しても、他の必須成分との兼ね
合いにより安定なゲルが形成されているため、マトリックスが崩れることなく形状を長期間維持することができる。
<4>本発明のマトリックス及び貼付剤
【0021】
本発明のマトリックスは、上記必須成分を含有する。本発明のマトリックスは、ゲル状態を呈しており、該マトリックスを一旦成形した後は、その成形された層は、経時的な縮みや離水を殆ど生じない、形状維持性に優れ保存安定性の良いものとなる。
【0022】
そこで、本発明のマトリックスは、支持体なしにマトリックスのみで貼付するタイプの自立型貼付剤(この場合、マトリックス=(イコール)貼付剤となる)として使用することができる。但し、本発明のマトリックスを、支持体上にマトリックスが塗工されているタイプの貼付剤(この場合、支持体とマトリックスを合わせたものを貼付剤という)に使用しても構わない。
【0023】
支持体を使用する場合、支持体の種類としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレンシートなどで裏打ちした不織布などが好ましく例示できる。塗工は通常の方法に従って行えば良く、例えば、ドクターブレード(MDC社製)等の塗工具を用いて、所定の厚さに塗工することができる。
【0024】
本発明のマトリックスには、上記成分以外に、通常化粧料や皮膚外用医薬で使用される任意成分を含有することが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類; 流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類; オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類; セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等; イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類; ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類; 脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類; 塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類; イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類; ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等); グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール
脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類; ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、トリメチルグリシン等の保湿成分類; 表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類; 表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類; 表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類; レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類; ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類; パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、桂皮酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、糖系紫外線吸収剤、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類; エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体,ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類、α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類; 塩化カリウム等の粘度調整剤; メチルパラベンなどのパラベン類等の防腐剤などが好ましく例示できる。本発明のマトリックスは、上記必須成分と、任意の成分とを常法に従って処理することにより製造することが出来る。
【0025】
このようにして得られた本発明のマトリックスは、肌との密着性がよく、有効成分の貯蓄能力が優れているうえ、経時的な縮みや離水を殆ど生じさせないものとなっている。
【0026】
上述したように、本発明のマトリックスは、そのままで貼付剤として使用することも出来るし、支持体上に塗工して支持体を有する貼付剤に使用することも出来る。本発明の貼付剤は化粧料として使用するのが好ましく、より詳しくは、本発明のマトリックスを基材として使用し、他に有効成分を配合させた化粧料として使用するのが好ましい。特にシート状パック化粧料に適用するのが好ましい。ここで、シート状パック化粧料とは、本発明のマトリックスからなるシートを皮膚に貼付けし有効成分を皮膚に吸収させ、その後該シートを剥がすタイプの化粧料をいう。
【0027】
化粧料を適用する箇所としては、特に目の周囲が好ましい。かかる部位は、肌が乾燥しやすく、シワも形成されやすい箇所であり、パック化粧料の処置が有効となるからである。
また、目の周囲は、面積が小さく、立体的にも窪んだところであるため、通常のパック化粧料では、肌との密着性が悪い、保湿性能が劣る等の問題が生じていたが、本発明のマ
トリックスを使用すると、このような問題を解消することができる。特に、支持体を用いず本発明のマトリックスのみ適用した場合には、肌との密着性をより高めることができ適用効果を充分発揮させることができるため好ましい。
【0028】
本発明のマトリックスを適用するに際し、適用部位に合った形状に本発明のマトリックスを成形したうえで、適用部位に適用するとよい。例えば、支持体を使用する場合には、所望の形状にした支持体上に本発明のマトリックスを塗布することができる。或いは、支持体を使用しない場合には、透明な型枠にマトリックスを流し込み、所望の形状に成形することができる。より具体的には、以下のようにして本発明のマトリックスを成形することができる。
【0029】
予め、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート等で作製した型に、マトリックスが流動性を有するうちに流し込み、しかる後に固化させマトリックスを所望の形状に成形することができる。
マトリックスを流し込む型としては、製造後の美観まで考慮すると、上述したように透明な素材を用いることが好ましい。また、この型は、予め貼付する箇所に適合した形状に加工しておくとよい。例えば、目の周囲に貼付する場合、目の周囲の形状に合わせ曲玉型の形状にするとよい。
【実施例1】
【0030】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
【0031】
以下に示す処方に従って、本発明のマトリックスを作製した。即ち、イ、ロの成分を秤取り、80℃に加熱し、攪拌下イに徐々にロを加えて一様な系を作製し、これを図1に示す、ポリプロピレン製の型に流し入れ、アルミシールで密閉した後、固化させて本発明のマトリックス=ゲルシート状パック化粧料1を得た。
【0032】
イ)
水 57 質量%
塩化カリウム 0.3質量%
1%トリメチルグリシン水溶液 0.5質量%
ロ)
グリセリン 30 質量%
ソルビトール 10 質量%
カラギーナン 0.8質量%
カルボキシメチルセルロース 0.7質量%
グルコマンナン 0.3質量%
1,3−ブタンジオール 0.2質量%
メチルパラベン 0.2質量%
【0033】
実施例1中のグリセリン30質量%のうちグリセリンを15質量%とし、残り15質量%を水に置換した比較例1を実施例1と同様にして作製した。
ゲルシート状パック化粧料1と比較例1とを40℃で1ヶ月間保存し、20℃に戻した状態で形状を観察した。形状の指標としては、横幅における縮み長さを計測した。また、無作為に選択したパネラー10人にこれらのサンプルを見せ、縮みに気がついたかどうか質問した。さらに、縮みに気がついたパネラーについては、この縮みが品質上問題と思うかどうかも併せて質問した。
結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
上記結果から、本発明のマトリックス=ゲルシート状パック化粧料は、(縮みや離水を生じない)形状維持性に優れたものであることが確認できた。
(実施例2)
【0036】
実施例1と同様に、下記に示す処方に従って、本発明のマトリックスを作製し、このものをゲルシート状パック(化粧料)とした。
実施例1と同様に40℃1ヶ月の保存試験も行った。
この化粧料においても、実施例1と同様の効果が存することが判る。
【0037】
イ)
水 52 質量%
塩化カリウム 0.3質量%
1%トリメチルグリシン水溶液 0.5質量%
ロ)
グリセリン 35 質量%
ソルビトール 10 質量%
カラギーナン 0.8質量%
カルボキシメチルセルロース 0.7質量%
グルコマンナン 0.3質量%
1,3−ブタンジオール 0.2質量%
メチルパラベン 0.2質量%
【0038】
【表2】

(実施例3)
【0039】
実施例1と同様に、下記に示す処方に従って、本発明のマトリックスを作製し、このものをゲルシート状パック(化粧料)とした。
実施例1と同様に40℃1ヶ月の保存試験も行った。
この化粧料においても、実施例1と同様の効果が存することが判る。
【0040】
イ)
水 57 質量%
塩化カリウム 0.3質量%
1%トリメチルグリシン水溶液 0.5質量%
ロ)
グリセリン 20 質量%
ソルビトール 10 質量%
カラギーナン 0.8質量%
カルボキシメチルセルロース 0.7質量%
グルコマンナン 0.3質量%
1,3−ブタンジオール 10.2質量%
メチルパラベン 0.2質量%
【0041】
【表3】


(実施例4)
【0042】
実施例1、比較例1について、支持体の存在下での、支持体の影響を検討した。即ち、実施例1、比較例1の製造において、プラスチック型に流し込んだ後、固化する前に型より一回り小さい、同様の形状の不織布(厚さ0.3mm)を載せ、アルミシールで密閉した後、固化させた(実施例4及び比較例2)。
これらについて、同様に40℃、1ヶ月の保存試験を行った。
結果を表4に示す。
また、各パネラーには実際化粧料を使用してもらったが、比較例2の化粧料は、使用の為に型より取り出す際にゲルシートからの支持体の剥がれが観察された。
【0043】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、シート状パック化粧料に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施例1で用いたポリプロピレン製の流し型を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)親水性増粘剤及び/又は親水性ゲル化剤を0.5〜5質量%と、2)多価アルコールを40〜50質量%と、3)水を30〜60質量%とを含有することを特徴とする、貼付用のマトリックス。
【請求項2】
前記親水性増粘剤が、ポリアクリル酸、ポリグルタミン酸、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、及びこれらの塩から選択される1種又は2種以上からなることを特徴とする、請求項1に記載の貼付用のマトリックス。
【請求項3】
前記親水性ゲル化剤が、カチオン化セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、イオン化デンプン誘導体、デンプンと合成高分子のブロック重合体、ヒアルロン酸、カラギーナン(カッパー、イオタ、ラムダ形)、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グァーガム、ジェランガム、タマリンドウ、グルコマンナン、キチン、キトサン、プルラン、チューベロースポリサッカライド、コラーゲン、アルキル変性されていても良いカルボキシビニルポリマー、アーネストガム、ゼラチン、ペクチン、アガロース、及びこれらの塩から選択される1種又は2種以上からなることを特徴とする、請求項1又は2に記載の貼付用のマトリックス。
【請求項4】
前記多価アルコール中に、1気圧、25℃の条件下で液体である多価アルコールが30質量%以上含有されていることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の貼付用のマトリックス。
【請求項5】
前記多価アルコール中に、グリセリンが20質量%以上含有されていることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の貼付用のマトリックス。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の貼付用のマトリックスを基材として含む化粧料。
【請求項7】
目の周囲に適用することを特徴とする、請求項6に記載の化粧料。
【請求項8】
前記マトリックスは、適用部位に合った形状に成形されていることを特徴とする、請求項6又は7に記載の化粧料。
【請求項9】
前記マトリックスは、透明な型枠にマトリックスを流し込むことにより成形されたものであることを特徴とする、請求項6〜8の何れか1項に記載の化粧料。

【図1】
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【公開番号】特開2006−8616(P2006−8616A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189484(P2004−189484)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(390011017)ダイヤ製薬株式会社 (20)
【出願人】(500512003)オルビス株式会社 (2)
【Fターム(参考)】