説明

貼着性機能性フィルム

【課題】 貼着性機能性フィルムを室外、室内等で使用されても基材とシリコーン層との接着力が低下することのない貼着性機能性フィルムを提供するものである。さらに直射日光が当たるところでも、シリコーン層と被着体との密着力が上昇しない貼着性機能性フィルムを提供するものである。
【解決手段】基材の上に少なくとも片面に接着剤層、シリコーン層を積層した貼着性機能性フィルムにおいて、接着剤層に含有する樹脂の酸価が7〜100の範囲にあるポリエステル系樹脂より選ばれる樹脂よりなる貼着性機能性フィルムとする。さらに、前記樹脂中にカルボン酸基が存在する貼着性機能性フィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材にシリコーン層を設けた貼着性機能性フィルムに印刷の機能を施して、平滑な面に貼ったり剥がしたりが何回も可能な貼着用装飾フィルムに関する。さらに、印刷以外の機能例えば紫外線遮断や赤外線遮断等の特定機能を付与された貼着性機能性フィルムに関する。その他、産業上の広い分野で使用されるシール材、クッション材等に関する。
【背景技術】
【0002】
基材上にシリコーン層を設けた貼着性機能性フィルムは、基材に印刷を施すことによりウィンドウ等の平滑面に容易に貼ったり剥がしたりを何回もできる装飾用フィルムとなる。(特許文献1)また、基材及び又は積層に特定機能を付与することにより各種の貼着性機能性フィルムとなる。基材上にシリコーン層を設けたものや、シリコーン層の反対面の基材上にハードコート層を設けたものは、液晶画面に貼着して画面の保護フィルムとして利用されている。
他の用途として、基材上にシリコーン層を設けた貼着性機能性フィルムは、各種分野の工業材料として、シール材、クッション材等に使用されている。(特許文献2)しかしながら、プラスチックからなる基材とシリコーン層とはなじみが低く、使用中に基材とシリコーン層との界面で剥がれる問題があった。そのため基材の表面をコロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、火炎処理等活性線で処理したり、基材の表面に接着性を向上させる化合物からなる易接着層を積層した易接着性フィルムを使用する方法が提供されていた。ところが、被着体に貼着すると経時で密着力が上昇し被着体にシリコーン層が剥離するという問題が発生した。さらに、直射日光が当たるところでは、同じ問題が顕著に発生した。
【0003】
【特許文献1】実公平6−21711号公報
【特許文献2】特開平10―95071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、前記の問題を解決するものであって、貼着性機能性フィルムを室外、室内等で使用されても基材とシリコーン層との接着力が低下することのない貼着性機能性フィルムを提供するものである。さらに直射日光が当たるところでも、シリコーン層と被着体との密着力が上昇しない貼着性機能性フィルムを提供するものである。

【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明は、基材の上に少なくとも片面に接着剤層、シリコーン層を積層した貼着性機能性フィルムにおいて、接着剤層に含有する樹脂の酸価が7〜110の範囲にあるポリエステル系樹脂より選ばれる樹脂からなる貼着性機能性フィルムである。
第2発明は、前記ポリエステル系樹脂中にカルボン酸基が存在することを特徴とする第1発明記載の貼着性機能性フィルムである。
第3発明は、前記シリコーン層がビニル基とSiH基とのヒドロキシル反応により架橋して得たポリオルガノシロキサンからなる第1、2発明記載の貼着性機能性フィルムである。
第4発明は、前記シリコーン層が、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端にのみビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものである第1〜3発明記載の貼着性機能性フィルムである。
第5発明は、前記基材及び又は積層に少なくとも1以上の特定機能が付与された第1〜4発明記載の貼着性機能性フィルム。
前記積層とは、接着剤層、シリコーン層、その他必要に応じて付加される機能層及び/又はフィルム及び/又は布帛をいう。
【発明の効果】
【0006】
本発明の貼着性機能性フィルムは、印刷をしたものは、ガラス窓等の平滑な面に貼着することができ、貼ったり剥がしたりを何回も繰り返すことができる。基材とシリコーン層との接着力が強いので、貼られた場所が、室外室内を問わず被着体から剥がしてもシリコーン層のみが被着体に残る問題が発生しないものである。
【0007】
貼着性機能性フィルムに特定機能を施したものは、シール材やクッション材の用途の他に紫外線カットフィルム、熱線カットフィルム、電磁波カットフィルム、制電性フィルム、インクジェットインク受容フィルム、液晶画面保護フィルム等種々の用途で活用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で使用する基材は、各種のプラスチックからなるフィルムであれば、特に限定されない。例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル等よりなるフィルムが例示されるが、これらに限定されるものではない。取り扱性、シリコーン層との接着力の向上、コストの面より好ましくはポリエステルフィルムを用いるとよい。基材の厚みは、用途に応じて適宜選択すればよいが、通常4〜400μmの範囲のものを用いる。
【0009】
このポリエステルフィルムとして、その表面を活性線で処理したり、ポリエステルフィルムの表面に接着性を向上させる化合物を積層したりした易接着性ポリエステルフィルムを使用することができる。活性線による処理方法としては、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、火炎処理等が例示され、易接着層積層フィルムの易接着成分としては、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアクリル系の化合物、またはこれらの配合物が挙げられる。易接着層を積層する方法は、製膜時に積層するいわゆるインライン法、または製膜したフィルムに積層するいわゆるオフライン法のいずれでもよい。また、易接着層を積層したフィルムの易接着層表面を上記の活性線で処理したもの等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0010】
前記活性線の処理基材や、基材上に易接着層を積層した上にシリコーン層を積層しても基材とシリコーン層との接着力は十分でなく、耐光性試験をすると剥がれてきてしまうものである。この対策として、シリコーン層に接着性改良剤を配合することが行なわれている。しかし、本発明の接着剤層は、シリコーン層に接着性改良剤を配合しなくとも基材とシリコーン層を強い接着力で接着して、耐光性試験においても基材をシリコーン層との剥がれがないものとするものである。
【0011】
接着剤層は、酸価が7〜110の範囲にあるポリエステル系樹脂より選ばれる樹脂を使用する。2種類以上のポリエステル系樹脂を併用してもよい。酸価が前記範囲未満であるとシリコーン層と被着体との密着力が時間の経過と共に高くなりすぎ、本発明のフィルムを被着体より剥がす際に剥がれにくくなってしまう。酸価が前記範囲を超えるポリエステル系樹脂は製造が困難である。より好ましい酸価は、8〜100の範囲のポリエステル系樹脂とする。
【0012】
また、ポリエステル系樹脂は、水溶性ポリエステル系樹脂又は水分散ポリエステル系樹脂が好ましい。その理由は、接着剤層に制電防止機能を与える場合、接着剤層塗工液が有機溶剤系よりも水系の方が、塗工液中に制電効果の高い水に分散性のよい制電防止剤を多く含有させることが出来る。例えば、接着剤層の固形分中に40〜70重量%の制電防止剤を含有させることにより、接着剤層の上に塗工するシリコーン塗工液の塗工ムラを防ぐことができたり、本発明の貼着性機能フィルムのシリコーン層を被着体に貼着した後で剥がす際に静電気の発生いわゆる剥離帯電を防ぐことができる。
【0013】
上記の樹脂を使用することによって、樹脂中の酸基とシリコーン層中に残存するSiH基とが架橋反応し、シリコーン自身の架橋反応後に残存するSiH基の数を減らし、貼着時に被着体表面、特にガラス面とシリコーン層との反応による密着力の上昇を防ぐことができる。ポリエステル系樹脂中の酸基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。前記酸基としては、カルボン酸基が特に好ましい。
【0014】
接着剤層の厚みは、0.01〜5μmの範囲が好ましい。より好ましくは、0.1〜3μmの範囲である。接着剤層の厚みが、前記範囲未満であるとシリコーン層が基材より離脱しやすくなる。前記範囲を超えると接着剤層自体の柔軟性がなくなって硬い層となり、接着剤層の基材への密着が悪くなる。
【0015】
接着剤層には、上記樹脂以外の熱可塑性樹脂を本発明の効果が低下しない範囲で加えても良い。熱可塑性樹脂としては、例えばアクリル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられ、これらの1種以上を使用してよい。
【0016】
本発明のシリコーン層に用いるシリコーンとしては、たとえば、付加重合型のシリコーン重合体を使用することができる。付加重合型シリコーン樹脂は白金触媒により重合するものを挙げることができる。本発明の目的にかなうシリコーン層の性状としては、ゴムのような柔軟性を持っていて被着体の表面の凸凹に対してもシリコーン層の面が凸凹に沿うことがもとめられる。さらに剥離の際には、小さい剥離力で、容易に剥離できることが求められる。
【0017】
このような性状のシリコーンとして、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端にのみビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものを用いると良い。
【0018】
これらのシリコーンの1形態としては、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンとは下記一般式(化1)で表せられる化合物である。
【0019】
【化1】

【0020】
(式中Rは下記有機基、nは整数を表す)
【0021】
【化2】

【0022】
(式中Rは下記有機基、mは整数を表す)
【0023】
このビニル基以外のケイ素原子に結合した有機基(R)は異種でも同種でもよいが、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、などのアリール基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した同種又は異種の非置換又は置換の脂肪族不飽和基を除く1価炭化水素基で好ましくはその少なくとも50モル%がメチル基であるものなどが挙げられるが、このジオルガノポリシロキサンは単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0024】
両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンは、上記一般式(化1)中のRの一部がビニル基である化合物である。末端にのみビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンは上記一般式(化2)で表せられる化合物である。末端及び側鎖にビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーン上記一般式(化2)中のRの一部がビニル基である化合物である。
【0025】
ここで架橋反応に用いる架橋剤は公知のものでよい。架橋剤の例として、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するものであるが、実用上からは分子中に2個の≡SiH結合を有するものをその全量の50重量%までとし、残余を分子中に少なくとも3個の≡SiH結合を含むものとすることがよい。
【0026】
架橋反応に用いる白金系触媒は公知のものでよく、これには塩化第一白金酸、塩化第二白金酸などの塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物あるいは塩化白金酸と各種オレフィンとの鎖塩などがあげられる。架橋反応したシリコーン層は、シリコーンゴムのような柔軟性を持ったものとなり、この柔軟性が被着体との密着を容易にさせるものである。
【0027】
本発明に係るシリコーンの市販品の形状は、無溶剤型、溶剤型、エマルション型があるが、いずれの型も使用できる。中でも、無溶剤型は、溶剤を使用しないため、安全性、衛生性、大気汚染の面で非常に利点がある。又、シリコーン層の塗布厚みは、1.1μmを超えることが必要であり、場合によっては、数ミリの厚みに設けることから、溶剤型シリコーンや、エマルション型シリコーンでは、塗工時の溶媒の乾燥に多大なエネルギーがかかり、不経済となるので、本発明に使用するシリコーンは、無溶剤型のシリコーンを用いるのがよい。
【0028】
前記の通り本発明の接着剤層とシリコーン層との接着力は、十分高い接着力を持つものであるが、さらに高い接着力を求めるものであれば、シリコーン層に、少量の接着性改良剤を含有させてもよい。この接着性改良剤は、ラジカル反応に対して活性な官能基を含む化合物であることが好ましい。この化合物としては、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体、アリル誘導体等が例示されるが、これらの誘導体の中で不飽和結合を2個以上、特に3個以上有する化合物が好ましい。これらの化合物は、ゴムの架橋剤として広く使用されている化合物であり、多価アルコールのアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル、多価カルボン酸のアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられる。
【0029】
シリコーン層の表面の汚れや異物付着を防いだり、貼着性機能性フィルムのハンドリングを向上させるために樹脂フィルム等のセパレータをシリコーン層面に貼り合わせることができる。
【0030】
一般にはシリコーン層の厚みは、1.1〜3000μmの範囲が好ましい。
装飾用表示フィルムであれば好ましくは、1.1〜50μmであるとよい。シリコーン層の厚みが、1.1μm未満であると、被着体に密着しにくくなり、被着体に対する貼着性機能性フィルムの密着面方向の剪断力が1.0N/cm未満となり、長期貼りつけ時には、貼着性機能性フィルムが剥がれる可能性が出てくる。シリコーン層の厚みが、50μmを超えると、シリコーンの使用量が多くなり、コスト上不経済となる。
【0031】
シール材、クッション材等の工業用に使用する場合のシリコーン層の厚みは、30〜500μmが好ましい。その他の特定機能を付与した貼着性機能性フィルムは、その用途に応じてシリコーン層の厚みを適宜設定する。
【0032】
接着剤層の塗工は、上記の各種のポリエステルを最適な溶剤に溶解分散させたものを基材に塗工乾燥させる。接着剤層塗工液、シリコーン層塗工液の塗工方法としては、3本オフセットグラビアコーターや5本ロールコーターに代表される多段ロールコーター、ダイレクトグラビアコーター、バーコーター、エアナイフコーター等が適宜使用される。
【0033】
シリコーン層の表面の汚れや異物付着を防いだり、固定シートのハンドリングを向上させるために樹脂フィルム製のセパレータをシリコーン層面に張り合わせることができる。
【0034】
被着体の材質は、一般的に、ガラス、樹脂板、金属板、あるいは塗装された板等であり、被着体の表面はできる限り平滑である必要がある。表面の凹凸が大きいとシリコーン層面が凹凸に追従することが難しくなり、密着することができなくなる。
【0035】
第5発明の特定機能とは、紫外線遮断性、赤外線遮断性、電磁波遮断性、制電性、導電性、消臭性、脱臭性、抗菌性、印刷性、インク受容性、親水性、防曇性、撥水性、耐スクラッチ性、 熱伝導性等をいう。
【0036】
上記の特定機能は、上記の基材および積層のいずれか一層または複数層に機能化剤を含
有させたり、機能層とすることにより与えることができる。
前記の諸機能中、紫外線遮断性は、基材および積層のいずれか、好ましくは透明な基材に無機または有機の紫外線吸収剤を配合することにより付与される。得られた機能性フィルムは、例えば住居、ビル、車両の窓ガラスに貼着することにより、紫外線を吸収させ、日焼け等の紫外線障害を防ぐことができる。また、美術館や博物館の陳列ケースのガラス部に貼着して陳列物の劣化をおさえたり、ポスター、広告媒体、証明書等の表面に貼着して変色を防ぐこともできる。また、各種の写真やカラーコピーの表面に貼着して褪色を押さえたり、食品や衣裳の保存ケースの透明部分に貼着して劣化を防いだりすることもできる。
【0037】
赤外線遮断性は、透明な基材および積層のいずれかに無機または有機の赤外線吸収剤を配合することにより付与される。また、基材の表面に金属酸化物の薄膜を形成して赤外線反射性を与えてもよい。得られた機能性フィルムは、住居、ビル、車両の窓ガラスに貼着すると、室内や車両内の温度上昇をおさえられ、冷房効率が向上し、また冷凍・冷蔵用ショーケースの窓ガラスに貼着すると、冷房効率が向上する。また、プラズマディスプレーの画面表面に貼着し、プラズマにより発生する赤外線を遮断してリモートコントロールの誤作動を防ぐことができる。また、ガラスや透明プラスチック板の表面に貼着して光学フィルターとして利用する。
【0038】
電磁波遮断性は、基材および積層のいずれかに無機もしくは有機の導電化剤、または磁性体を配合することにより、また基材に金属もしくは金属酸化物の薄膜を形成することにより、金属メッキをした布帛を積層することにより、またこれらの手段を複合することより付与することができる。得られた機能性フィルムは、各種のOA機器、家庭電化製品、情報機器または医療用機器等の表示部、筐体部に貼着し、機器から発生する電磁波を遮蔽して人体を保護し、また妨害電磁波による機器の誤作動を防止する。また、病院の医療用機器、交通機関や向上の制御システム等が置かれている空間の壁その他の仕切り部に貼着して妨害電磁波から遮蔽し、上記機器の誤作動を防止する。
【0039】
制電性、導電性は、基材および積層のいずれか、好ましくは基材に制電剤、導電剤を配合することにより、また基材に金属もしくは金属酸化物の薄膜を形成することにより付与される。得られた機能性フィルムは、半導体工場の窓ガラスに貼着することにより、窓ガラスからのアルカリイオンの放出を防止し、埃の吸着を防止する。また、クリーンルームの窓ガラスや壁等の間仕切り部に貼着することにより、パーティクル汚染をおさえ、半導体のチップトレイ等に貼着することにより、半導体の静電気障害を防ぐ。
【0040】
消臭性、脱臭性は、基材および積層のいずれか、好ましくは基材に無機または有機の消臭剤、脱臭剤を配合することにより付与され、得られた機能性フィルムを住居、ビル、車両等の窓ガラスや壁に貼着することにより、煙草や排泄物等の悪臭を消して快適空間をつくる。
【0041】
抗菌性は、基材および積層のいずれか、好ましくは基材に無機または有機の抗菌剤を配合することにより、また基材に酸化チタン等の光触媒を含む活性層を積層することにより、与えられる。そして、得られた機能性フィルムを家庭電化製品、OA機器、文具等の日常使用する機器や器具の手に触れる部分、住居、病院、食堂等の窓や壁その他の間仕切り部または調理器具、調理台、食品用の容器、保存庫等の表面に貼着して細菌類の繁殖を抑える。
【0042】
印刷性は、基材の表面を改質して印刷インキやトナーの付着性を向上することによって与えられる。また、基材の表面に親水性ポリマー層または多孔質の微粒子を配合した親水性ポリマー層を形成することにより、インクジェット用インクの受容性が高められる。得られた機能性フィルムは、印刷またはコピーの内容により、ポスターその他の広告媒体として建物の壁や掲示板に、また会議資料や連絡、通達の手段としてホワイトボードや壁、掲示板に貼着して利用することができる。
【0043】
親水性、防曇性は、基材に親水剤、防曇剤を配合または積層することにより与えられる。また、基材の表面に親水層、防曇層または光触媒活性層を積層することにより与えられる。得られた機能性フィルムは、各種のミラーの表面に貼着して曇り防止に用いる。また、住居、ビル、車両等の窓や壁の表面に貼着し、セルフクリーニングや結露防止に利用する。また、看板等の広告媒体の表面に貼着してセルフクリーニング性を付与し、また、冷蔵ショーケースの窓に貼着して結露防止に利用する。
【0044】
撥水性は、基材の表面にフッ素化合物の単体またはフッ素化合物と光触媒との複合体からなる撥水層を形成することにより与えられ、上記の親水性、防曇性と同様な目的で利用される。
【0045】
耐スクラッチ性は、基材の表面に有機質もしくは無機質、またはその複合体からなるハードコート層を形成することにより与えられる。得られた機能性フィルムは、家庭電化製品、OA機器、情報機器等の液晶表示部や入力部におけるメンブレンスイッチ、防眩フィルター、タッチパネル等の表面にその保護用として貼着される。また、銘板、表示板、壁材、化粧板等の表面保護用として貼着して使用される。
【0046】
熱伝導性は、熱伝導性充填剤を積層に含有させればよく、熱伝導性充填剤として例えば、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、炭化ケイ素、石英、水酸化アルミニウム等が挙げられる。得られた機能性フィルムは、各種電子機器に使用されているパワートランジスタ、サイリスタ等の発熱性電子部品、及びIC,LSI,CPU,MPU等の集積回路素子より発生する熱による特性が低下するのを防ぐための放熱フィルムとして使用される。
【0047】
この発明において、基材と接着剤層とシリコーン層以外の積層の複合手段は、いずれも任意である。すなわち、個別に成形して得られたフィルムを接着剤や粘着剤または熱接着で貼合わせてもよく、塗工法やトッピング法、押出しラミネート法等で直接一体化する方法でもよい。この直接一体化する方法は経済性の点で特に好ましい。
【実施例】
【0048】
本発明を下記の実施例によって、さらに具体的に説明する。
[インク受像層の形成]
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、下記の受像層塗工液を分散機にて分散後、塗工、乾燥して厚み25μmのインクジェットプリンタ用の受像層を形成した。
・受像層塗工液
合成非晶質シリカ 4.2重量部
親水性ウレタン樹脂 6.2重量部
ポリアクリル酸エステル水溶液(固形分30%) 1重量部
ジシアンジアミド系樹脂水溶液(固形分25%) 2重量部
水 37.6重量部
メタノール 49重量部
合計 100重量部
【0049】
[接着剤層の樹脂の合成]
実施例1〜4及び比較例1〜2の接着剤層に含有する樹脂の合成方法は、下記の通りとした。
表1、2に示した原料化合物を、表1、2に示した量(モル部)で反応容器に仕込み、窒素気流下、圧力0.3MPaG、温度260℃で、3.5時間エステル化反応を行った。得られたエステル化物に、三酸化アンチモンを2.5×10−4モル/酸性分1モル添加し、0.5hPaに減圧し、280℃で3時間重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。次いで、このポリエステルに表1、2に示した解重合剤を表1、2に示した量(モル量)を添加し、常圧下、250℃で2時間解重合反応を行い、表1、2の特性を持つポリエステル樹脂を得た。さらに90℃の熱水を加え、固形分20%のポリエステル水溶液とした。
比較例3〜4の接着剤層に含有する樹脂の合成方法は、下記の通りとした。
表3に示した原料化合物を、表3に示した量(モル部)、およびアゾビスイソブチロニトリル5.0×10−2モル部を反応容器に仕込み、窒素気流下、115℃、3時間反応させた。反応終了後、ジメチルエタノールアミンで当量中和し、さらにブチルセロソルブを加え、固形分20%の表2の特性を持つアクリル共重合体溶液を得た。
【0050】
[接着剤層の形成]
実施例1〜4及び比較例1〜4の樹脂溶液を前記基材の反対面に、塗工、乾燥して厚み0.3μmの接着剤層を形成した。
【0051】
[シリコーン層の形成]
実施例1〜4、比較例1〜4の接着剤層の上に、下記のシリコーン塗工液を塗工し、150℃、100秒加熱して、シリコーンを架橋させて、厚み25μmのシリコーン層を形成してインクジェット記録用フィルムを製造した。
【0052】
シリコーン塗工液
両末端のみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシリコーン 100重量部
(無溶剤型)(商品名「X-62−1347」信越化学工業(株)製)
白金触媒 (商品名「CAT−PL−56」信越化学工業(株)製) 2重量部
各サンプルを以下の評価方法に基づいて性能を評価した。
【0053】
[樹脂の酸価の測定方法]
試料30gを正確に共栓付三角フラスコに量り採る。(Sg)
混合溶剤(トルエン:メタノール=9:1 Vol比)100mLを加え、試料を溶解させる。これに1%フェノールフタレイン溶液を指示薬として加え、0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液で、30秒間紅色を保つ点を終点として滴定する。(AmL)
同様操作で空試験を行う。(BmL)

酸価(mgKOH/g)=(A−B)×f×56.1/S

上記式中の、A:試料に要した0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の使用量(mL)
B:空試験に要した0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液の使用量(mL)
f:0.1mol/Lアルコール性水酸化カリウム溶液のモル濃度 S:試料採取量(g)
【0054】
評価方法
1.耐光性試験
各実施例、比較例のフィルムを適宜の大きさにカットしたサンプルのシリコーン層面を透明ガラスに貼着する。このガラス面側に対して、カーボンアークを照射するカーボンアーク耐光性試験で100時間照射したガラスに貼着したカットサンプルを用意する。
A.接着剤層とシリコーン層との接着性評価
カットサンプルのエッジ部を指で擦りシリコーン層の剥がれ度合いを下記の基準で評価した。評価結果は、表1の通りであった。
○:全く剥がれは生じない。
△:基材から部分的に剥がれる。
×:完全に剥がれる。
【0055】
B.ガラス貼着時のシリコーン層の剥離評価
ガラスに貼着したカットサンプルのポリエチレンテレフタレートフィルムを180°ピールにより剥がし、ガラスに対しシリコーン層の剥離度合いを下記の基準で評価した。評価結果は、表1の通りであった。
○:ガラスよりシリコーン層が全てきれいに剥離できた。
△:部分的にシリコーン層の凝集破壊によるガラスへの移行が発生した。
×:貼着部全面でシリコーン層の凝集破壊によるガラスへの移行が発生した。
【0056】
2.画像形成性
前記実施例1〜3、比較例1〜5のサンプルで、PETフィルムに受像層、接着剤層、シリコーン層まで形成したサンプルのシリコーン層に対して、表面を保護するために厚みが25μmの透明PETフィルムをセパレータとして貼り合わせた。各サンプルをA4サイズにカットしてシートサンプルを用意した。セイコーエプソン製のインクジェットプリンタPM−900C(染料系インク)を使って、シートサンプルにフルカラー画像を形成した。いずれのシートサンプルにも鮮明なフルカラー画像を形成することができた。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の上に少なくとも片面に接着剤層、シリコーン層を積層した貼着性機能性フィルムにおいて、接着剤層に含有する樹脂の酸価が7〜110の範囲にあるポリエステル系樹脂より選ばれる樹脂からなることを特徴とする貼着性機能性フィルム。
【請求項2】
前記ポリエステル系樹脂中にカルボン酸基が存在することを特徴とする請求項1記載の貼着性機能性フィルム。
【請求項3】
前記シリコーン層がビニル基とSiH基とのヒドロキシル反応により架橋して得たポリオルガノシロキサンからなることを特徴とする請求項1、2記載の貼着性機能性フィルム。
【請求項4】
前記シリコーン層が、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端にのみビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものであることを特徴とする請求項1〜3記載の貼着性機能性フィルム。
【請求項5】
前記基材及び又は積層に少なくとも1以上の特定機能が付与されたことを特徴とする請求項1〜4記載の貼着性機能性フィルム。
前記積層とは、接着剤層、シリコーン層、その他必要に応じて付加される機能層及び/又はフィルム及び/又は布帛をいう。

【公開番号】特開2012−218373(P2012−218373A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88786(P2011−88786)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000237237)フジコピアン株式会社 (130)
【Fターム(参考)】