説明

貼着用反射防止フィルム

【課題】基材上に密着層塗工液を塗布する際に静電気の発生がしなくなり、密着層を均一の厚みに設けることができるようになる。また、反射率に悪影響を及ぼさない優れた貼着用反射防止フィルムを提供することである。
【解決手段】透明基材の片面に反射防止処理が施された反射防止フィルムにおいて、反射防止面と反対側の面が、透明基材から易接着層、中間層、密着層の順で積層されており、各層の屈折率が下記の式の関係になっている貼着用反射防止フィルムとする。
基材の屈折率≧易接着層の屈折率≧中間層の屈折率≧密着層の屈折率

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼り直しが簡単にでき、再剥離時には、わずかな剥離力で簡単に剥離でき、糊残りが発生しない貼着用反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材上に密着層を設け、他方の面に印刷適正処理を施した装飾用貼着用シートが提供されてきた(特許文献1)。このシートの片面に印刷を施し、密着層面を窓ガラス等の表面がフラットな被着体に貼ることにより、ディスプレイを容易におこなうものである。シートを剥がしても糊残りの問題もなく、何回も貼って剥がせるという特徴を有するものであった。このシートの製造は、基材上にコーターを使って密着層塗工液を塗布し、他方の面に、印刷適正処理の塗工液を塗布した後、密着層面に、剥離シートを密着させて仕上げるものである。ここで基材上に密着層塗工液を塗布する際に、基材に静電気が発生して塗布ムラが生じる問題が発生していた。塗布ムラが生じると密着層が均一の厚みにならないので、外観上透明感が低下する。また。貼って剥がせるというリワーク性能が劣る問題があった。
【0003】
そこで、基材と密着層の間に帯電防止性易接着層を設けることにより静電気対策を行い、塗布ムラを対策するシートが提供されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−59800号公報
【特許文献2】特開2007−145881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2において、帯電防止剤としてATO微粒子が用いられている。該公報にも記載されているように一般的な帯電防止剤である、アニオン性(リン酸エステル型、スルホン酸型)、カチオン性(第4級アンモニウム塩型、第3級アミン型)、非イオン性(多価アルコールエステル型、アマイド型)、および両性の各種帯電防止剤は、その効果が得られるまでの量を使用すると、密着層の硬化剤と帯電防止剤が反応硬化して、密着層が十分硬化しなくなる問題が発生したり、塗膜界面にブリードしたりして、密着層との接着機能を十分果たさない。
【0006】
一方、ATO微粒子は、ナノオーダーの微粒子を用いることにより導電性、透明性が共に優れた層が形成できる。
ところが、ATO微粒子を含んだ帯電防止層を反射防止フィルムの反射防止面と反対側の面に設置した場合、ATO微粒子の高い屈折率が影響して、反射防止フィルムの反射率が大きく変動してしまうという不具合が生じることが判明した。
【0007】
本発明は上記の問題を解決するために、反射防止フィルムの反射防止面の反対側の面の屈折率を制御することにより、反射防止フィルムの反射率に影響を及ぼさない貼着用反射防止フィルムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明は、透明基材の片面に反射防止処理が施された反射防止フィルムにおいて、反射防止面と反対側の面が、透明基材から易接着層、中間層、密着層の順で積層されており、各層の屈折率が次式の関係になっていることを特徴とする貼着用反射防止フィルムである。
基材の屈折率≧易接着層の屈折率≧中間層の屈折率≧密着層の屈折率
第2発明は、前記密着層が両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端にのみビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものからなることを特徴とする第1発明記載の貼着用反射防止フィルムである。
【0009】
第3発明は、前記中間層が帯電防止機能を有する中間層であり、カーボンナノチューブとアクリルポリオールからなることを特徴とする第1発明又は第2発明記載の貼着用反射防止フィルムである。
【0010】
第4発明は、前記中間層が帯電防止機能を有する中間層であり、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリキノキサリンの少なくとも1種から選ばれる導電性ポリマーとアクリルポリオールからなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の貼着用反射防止フィルムである。
【0011】
第5発明は、前記透明基材がポリエステルフィルムであることを特徴とする第1発明から第4発明のいずれかに記載の貼着用反射防止フィルムである。
【発明の効果】
【0012】
基材上に密着層塗工液を塗布する際に静電気の発生がしなくなり、密着層を均一の厚みに設けることができるようになる。また、反射率に悪影響を及ぼさない優れた貼着用反射防止フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で使用する基材は、各種のプラスチィックからなるフィルムであれば、特に限定されない。例えば、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、ポリアミドイミド、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、セルロース系樹脂等よりなるフィルムが例示されるが、これらに限定されるものではない。取り扱性、貼着層との接着力の向上、コストの面より好ましくはポリエステルフィルムを用いるとよい。基材の厚みは、用途に応じて適宜選択すればよいが、通常4〜400μmの範囲のものを用いる。
【0014】
本発明の基材には易接着層が積層されることが好ましい。易接着層に用いられる樹脂としては、例えば共重合ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−マレイン酸グラフトポリエステル樹脂、アクリルグラフトポリエステル樹脂などが挙げられ、少なくとも1つ以上を使用することが好ましい。さらに易接着層中には、すべり性を付与するための粒子を含有してもよい。該易接着層中に含有させる粒子の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。
【0015】
また、下記に詳細する反射防止層をポリエステルフィルムのような基材に塗工する場合、一般的な易接着層では反射防止層に干渉ムラが生じるため、易接着層の中に、屈折率が高い、芳香族を有するような樹脂や金属元素を有する有機化合物を含有させて、易接着層の屈折率を1.55〜1.75にすると、干渉ムラに対して効果が高い。
【0016】
本発明における反射防止層は光の干渉作用を利用することによって、反射光を低減させる層であって、透明フィルムの屈折率よりも低屈折率の層を透明フィルムに設けて反射防止層とするものである。反射防止層の屈折率をn0 、厚みをh、隣接する層の屈折率をng 、光の波長をλとすると、n0 =√ng で、n0 h=λ/4を満足するときに、垂直入射した光を100%透過し、反射を100%防止することができる。光の波長λを5500Åで代表させれば、例えば透明フィルムとしてアクリル樹脂フィルムの屈折率ng が約1.5、反射防止層としてMgF2 を設けた場合、屈折率n0 が1.38であるから、反射防止層の厚みは約0.1μmとする必要がある。低屈折率の層としては、例えば低屈折率無機材料からなる層がある。低屈折率無機材料としては、例えば、LiF、MgF2 、3Na・AlF3 、AlF3 、Na3 AlF6 、SiOX (x:1.50≦x≦2.00)等が挙げられる。これらの無機材料による反射防止層の形成は、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、プラズマCVD等によって行い、単層又は多層形成する。特にプラズマCVD法で形成したSiOX (xは1.50≦x≦4.00、好ましくは1.70≦x≦2.20)の膜は硬度が高く、且つ下記に示すハードコート層との密着性に優れ、透明フィルムへの熱ダメージも少なく好ましい一つである。
【0017】
或いは、熱または電離放射線により架橋する含フッ素樹脂の架橋からなる低屈折率層、ゾルゲル法による低屈折率層、および粒子とバインダーポリマーを用い、粒子間または粒子内部に空隙を有する低屈折率層等を用いても膜形成しても良い。
【0018】
反射防止性能をさらに向上させる目的で、低屈折率層の下に屈折率が1.55〜2.30の高屈折率層を積層しても良い。高屈折率の層としては、例えば高屈折率無機材料からなる層がある。高屈折率無機材料としては、TiO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITO等が挙げられる。これらを上述の真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、プラズマCVD等によって、単層又は多層形成する。あるいはTiO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITO等の無機微粒子とバインダーポリマーを用いて膜形成しても良い。
【0019】
反射防止層の耐傷性を向上させるために、反射防止層の下にハードコート層を設けても良い。該ハードコート層は、多官能アクリルモノマー、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のオリゴマー、各種重合開始剤を溶媒に溶解した組成物に、必要に応じてシリカ、アルミナ等の無機フィラーを添加して得られた塗布組成物の塗布、溶媒の乾燥、熱および/または電離放射線により硬化することで好ましく形成される。
【0020】
本発明の中間層は帯電防止剤と樹脂バインダーから構成されることが好ましい。とりわけ密着層が下記に詳細するシリコーン樹脂である場合は、樹脂バインダーとしてはアクリルポリオールが最も好ましい。アクリルポリオールは、基材に密着層をシリコーン層とした場合に、十分な接着力でもって接着させる機能をもつものである。貼着フィルムを長期にわたってガラス面等に貼っておいた後に、剥がしたとしても、基材とシリコーン層との間で、剥離が発生することがないものである。また、貼着フィルムに直射日光が当たるところで使用し、剥がした場合でも、同様にシリコーン層の剥離が発生することがない優れた接着性を与える。
【0021】
アクリルポリオールとしては、例えば、分子内に1個以上の水酸基を有する重合性単量体と、これに共重合可能な別の単量体とを共重合させることによって得られる共重合体が挙げられ、水酸基を有する重合性単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2,2−ジヒドロキシメチルブチル(メタ)アクリレート、ポリヒドロキシアルキルマレエート、ポリヒドロキシアルキルフマレートなどが挙げられる。また、これらと共重合可能な単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキル(C1〜C12)、マレイン酸、マレイン酸アルキル、フマル酸、フマル酸アルキル、イタコン酸、イタコン酸アルキル、スチレン、α−メチルスチレン、酢酸ビニル、(メタ)アクリロニトリル、3−(2−イソシアネート−2−プロピル)−α−メチルスチレン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。そして、これら単量体を、適当な溶剤および重合開始剤の存在下において共重合させることによって、アクリルポリオールを得ることができる。
【0022】
アクリルポリオールを使用することによって、アクリルポリオール中の水酸基とシリコーン層中のSiH基とがシリコーンを架橋反応させる際に、架橋されて中間層とシリコーン層との界面の接着力が向上するものである。よって水酸基を持っていない樹脂を中間層に使用しても十分な接着力を得ることができない。
貼着用フィルムは、直射日光を受けるとシリコーン層と被着体の接着力がアップして貼着用フィルムを剥がす際に、基材とシリコーン層とで剥離が生じてシリコーン層が被着体に残る場合がある。しかし、中間層のバインダーにアクリルポリオールを使用すると、基材にシリコーン層を強固に接着させるので、このような問題は発生しない。アクリルポリオールは、他の水酸基を持った樹脂、例えばポリエステルポリオール等に比べ耐光性の優れた接着力が得られる。
【0023】
アクリルポリオールは、水酸基価が10〜45の範囲のものを使用するのが好ましい。水酸基価が前記範囲未満であると中間層とシリコーン層との接着力が弱く、シリコーン層が基材から離脱しやくなる。前記範囲を超えると中間層中の水酸基がシリコーン層中のSiH基を消費しすぎて、シリコーン層の十分な硬化が得られない。
【0024】
本発明の中間層に用いる帯電防止剤としてはカーボンナノ材料を用いることが好ましい。カーボンナノ材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、カーボンナノウォール、及びフラーレンなどが挙げられる。これらのなかでカーボンナノチューブを用いることが最も好ましい。カーボンナノチューブは、一般に中空繊維状形状をしており、直径0.5nm〜5μm、長さ10nm〜1000μm程度の炭素物質である。本発明においては、直径0.5nm〜1μm、長さ10nm〜100μmのカーボンナノチューブを用いることが好ましい。
【0025】
なお、帯電防止剤として、カーボンナノ材料と共に、もしくは単独で、導電性ポリマーを用いてもよい。導電性ポリマーとしては、光学特性、外観、帯電防止効果および帯電防止効果の熱時、加湿時での安定性が良好なものを使用する。そのような導電性ポリマーとしては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリキノキサリン等のポリマーがあげられる。これらのなかでも、水溶性導電性ポリマーまたは水分散性導電性ポリマーになりやすい、ポリアニリン、ポリチオフェンなどが好ましく使用される。特にポリチオフェンが好ましい。
【0026】
樹脂バインダーと帯電防止剤の比率は、樹脂バインダー成分100重量部に対して、帯電防止剤が20重量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.001〜10重量部である。帯電防止材料がこれより少ないと、帯電防止効果が得られず、これより多いとフィルムの透過率が低下する。
【0027】
中間層の表面抵抗値は、1×1012Ω/□以下であることが好ましく、さらに好ましくは1×1011Ω/□以下である。表面抵抗値が1×1012Ω/□を超える場合には、帯電防止機能が十分でなく、密着層塗工液を塗布する際に、基材に静電気が発生して塗布ムラが生じる問題が発生する可能性が高い。
【0028】
中間層の厚みは、0.01〜5μmの範囲が好ましい。中間層の厚みが、前記範囲未満であるとシリコーン層が基材より離脱しやすくなる。前記範囲を超えると中間層自体の柔軟性がなくなって硬い層となり、中間層の基材への密着が悪くなる。さらに好ましい厚みの範囲は、0.05〜1.0μmである。
【0029】
中間層には、上記樹脂以外の熱可塑性樹脂を本発明の効果が低下しない範囲で加えても良い。熱可塑性樹脂としては、例えばポリアミド樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられ、これらの1種以上を使用してよい。
【0030】
本発明の密着層は、粘着性、自己粘着性、吸着性等の機能を有した層である。用いられる樹脂としては、例えばポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、塩ビ系、シリコーン系等から選ばれる一種以上の樹脂からなる。とりわけ、周辺環境に対して非常に安定で物性が大きく左右されず、糊残りが少なく、かつ何度でも貼り剥がしが可能なことから、シリコーン樹脂が最も好ましい。
【0031】
シリコーン層としては、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端にのみビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてからなるものを用いる。
これらのシリコーンの1形態としては、両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンとは下記一般式(化1)で表せられる化合物である。
【0032】
【化1】

【0033】

(式中Rは下記有機基、nは整数を表す)
【0034】
【化2】

【0035】
(式中Rは下記有機基、n、mは整数を表す)
このビニル基以外のケイ素原子に結合した有機基(R)は異種でも同種でもよいが、具体例としてはメチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基、などのアリール基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した同種又は異種の非置換又は置換の脂肪族不飽和基を除く1価炭化水素基で好ましくはその少なくとも50モル%がメチル基であるものなどが挙げられるが、このジオルガノポリシロキサンは単独でも2種以上の混合物であってもよい。
【0036】
両末端および側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンは、上記一般式(化1)中のRの一部がビニル基である化合物である。末端にのみビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンは上記一般式(化2)で表せられる化合物である。末端及び側鎖にビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーン上記一般式(化2)中のRの一部がビニル基である化合物である。
ここで架橋反応に用いる架橋剤は公知のものでよい。架橋剤の例として、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも3個有するものであるが、実用上からは分子中に2個の≡SiH結合を有するものをその全量の50重量%までとし、残余を分子中に少なくとも3個の≡SiH結合を含むものとすることがよい。
【0037】
架橋反応に用いる白金系触媒は公知のものでよく、これには塩化第一白金酸、塩化第二白金酸などの塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール化合物、アルデヒド化合物あるいは塩化白金酸と各種オレフィンとの鎖塩などがあげられる。架橋反応したシリコーン層は、シリコーンゴムのような柔軟性を持ったものとなり、この柔軟性が被着体との密着を容易にさせるものである。
【0038】
本発明に係るシリコーンの市販品の形状は、無溶剤型、溶剤型、エマルション型があるが、いずれの型も使用できる。中でも、無溶剤型は、溶剤を使用しないため、安全性、衛生性、大気汚染の面で非常に利点がある。又、シリコーン層の塗布厚みは、1.1μmを超えることが必要であり、場合によっては、数10μmの厚みに設けることから、溶剤型シリコーンや、エマルション型シリコーンでは、塗工時の溶媒の乾燥に多大なエネルギーがかかり、不経済となるので、本発明に使用するシリコーンは、無溶剤型のシリコーンを用いるのがよい。
【0039】
シリコーン層の厚みは、1.1〜100μmが好ましい。さらに好ましくは、1.1〜50μmであるとよい。シリコーン層の厚みが、1.1μm未満であると、被着体に密着しにくくなり、被着体に対する貼着用シートの剪断力が1.0N/cm未満となり、長期貼りつけ時には、貼着用シートの剥がれが発生する可能性が出てくる。シリコーン層の厚みが、100μmを超えると、シリコーンの使用量が多くなり、コスト上不経済となる。
【0040】
一般的に、被着体の材質は、ガラス、樹脂板、金属板、セラミック板あるいは、塗装された板等であり、被着体の表面はできる限り平滑である必要がある。表面の凹凸が大きいとシリコーン層面が凹凸に追従することが難しくなり、密着することができなくなる。
尚、本発明に係る2種の形態のシリコーンは、一般工業製品では、粘着シートに重ね合わせる剥離紙用の剥離剤として使用されるものである。例えば、特開平10−140099には、本発明に係る2種の形態のシリコーンを剥離紙用の剥離剤として使用されていることが記載されている。しかしながら、剥離紙用シリコーンの塗布量は、「シリコーンハンドブック」(日刊工業発刊)の519頁で記載されているように、表面固形分で0.1〜1.0g/m(厚さ0.1〜1.0μm)程度と非常に少ないものである。従って、本発明に係る2種の形態のシリコーンを剥離剤として塗布した剥離紙ないし剥離シートは、本発明の貼着用フィルムとして使用することは、塗布厚みが少ないことから使用できないものである。
【0041】
反射防止層、易接着層、中間層、密着層の塗工液の塗工方法としては、ロールコーター、グラビアコーター、バーコーター、ナイフコーター、ダイコーター、等が適宜使用される。なお、易接着層は基材メーカーにより塗工されるケースが多い。
【0042】
密着層の表面の汚れや異物付着を防いだり、貼着用フィルムのハンドリングを向上させるためにセパレータを密着層面に貼り合わせることができる。
【実施例】
【0043】
本発明を以下の実施例に従って、さらに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1〜3、比較例1〜3の貼着用反射防止フィルムの作製。
【0044】
[反射防止層の形成]
表1に記載の厚み100μmの2種類の両面易接着層付きポリエチレンテレフタレートフィルムの片面に、下記ハードコート塗工液をグラビアコーターで塗工後、80℃で乾燥した後、積算光量500mj/cmの紫外線を照射して硬化させ、厚さ3μmのハードコート層を形成した。

・ ハードコート塗工液
ペンタエリスリトールテトラアクリレート(アクリルモノマー、日本化薬製)29重量部
ダロキュア1173(光開始剤、チバスペシャリティケミカル製) 1重量部
MEK 70重量部

次に上記ハードコート層を塗工した上に下記低屈折率塗工液をグラビアコーターで塗工、乾燥した後、塗工済みフィルムを120℃で1時間加熱硬化し、厚さ98nmの反射防止層を形成した。

・ 低屈折率塗工液
フッ素系樹脂液(商品名「オプスターJN7215」、JSR製) 100重量部

[中間層の形成]
上記のようにして作製した反射防止フィルムの反対側の面に、表1に示した各実施例、比較例に対応した下記中間層A〜D塗工液をグラビアコーターで塗布後、80℃で乾燥して厚さ0.3μmの中間層を形成した。
・ 中間層A
アクリルポリオール(商品名「コータックスLH455」、固形分50%、東レファインケミカル製) 20重量部カーボンナノチューブ(固形分100%、商品名「CNF−T」、三菱マテリアル製) 0.3重量部
分散剤(固形分100%) 0.7重量部
MEK 79重量部
・ 中間層B
アクリルポリオール(固形分50%、商品名「コータックスLH455」、東レファインケミカル製) 20重量部
ポリチオフェン(固形分3%、商品名「セプルジーダOC−SC100」信越ポリマー製) 27重量部
MEK 53重量部

・ 中間層C
アクリルポリオール(固形分50%、商品名「コータックスLH455」、東レファインケミカル製) 20重量部ATO微粒子(固形分27%、商品名「LS−110」、ソルベックス製) 56重量部
MEK 24重量部

・ 中間層D
アクリルポリオール(固形分50%、商品名「コータックスLH455」、東レファインケミカル製) 20重量部
MEK 80重量部

[密着層の形成]
上記中間層の上に、下記のシリコーン塗工液を塗工し、150℃、100秒加熱して、シリコーンを架橋させて、厚み25μmのシリコーン層を形成した。

・ シリコーン塗工液
両末端のみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシリコーン 100重量部
(架橋剤を含有する無溶剤型)(商品名「X-62−1347」信越化学工業製)
白金触媒 (商品名「CAT−PL−56」信越化学工業製) 2重量部

以上の様にして作製した貼着用反射防止フィルムを厚み3mmの透明アクリル板に貼着した。次に以下の方法により各サンプルを評価・測定した。
【0045】
1.屈折率
FilmTek3000(光学式膜厚屈折率測定装置、米国SCI社製)を用いて各層の屈折率を測定した。
2.反射率
FilmTek3000(光学式膜厚屈折率測定装置、米国SCI社製)を用いて各サンプルの視感反射率を測定した。
3.中間層の表面抵抗値
100μmPETフィルムに中間層のみを0.3μm塗工したサンプルを作製し、ハイレスタMCP−HT450(表面抵抗値測定器、三菱化学アナリテック製)を用いて表面抵抗値を測定した。
4.密着層の塗工性
次の基準で目視判定を行った。
判定基準
○:塗布面にムラがなく、良好な面質
×:塗布面に静電気の帯電によるムラが発生

上記方法に従って測定および評価結果を表1にまとめる。
【0046】
【表1】

【0047】
※1、※2:PETフィルムの片面に反射防止層を施したフィルム。
※3:実施例1〜3、比較例1〜3で、STDサンプルの反射率と比べ、反射率の上昇率が0.2%未満のものは○、0.2%以上は×と判定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の片面に反射防止処理が施された反射防止フィルムにおいて、反射防止面と反対側の面が、透明基材から易接着層、中間層、密着層の順で積層されており、各層の屈折率が下記の式の関係になっていることを特徴とする貼着用反射防止フィルム。
基材の屈折率≧易接着層の屈折率≧中間層の屈折率≧密着層の屈折率
【請求項2】
前記密着層が両末端にのみビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、両末端及び側鎖にビニル基を有する直鎖状ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端にのみビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンと、末端及び側鎖にビニル基を有する分岐上ポリオルガノシロキサンからなるシリコーンとから選ばれる少なくとも1種のシリコーンを架橋させてなるものからなることを特徴とする請求項1記載の貼着用反射防止フィルム。
【請求項3】
前記中間層が帯電防止機能を有する中間層であり、カーボンナノチューブとアクリルポリオールからなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の貼着用反射防止フィルム。
【請求項4】
前記中間層が帯電防止機能を有する中間層であり、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリキノキサリンの少なくとも1種から選ばれる導電性ポリマーとアクリルポリオールからなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の貼着用反射防止フィルム。
【請求項5】
前記透明基材がポリエステルフィルムであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の貼着用反射防止フィルム。

【公開番号】特開2011−64920(P2011−64920A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−215098(P2009−215098)
【出願日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(000237237)フジコピアン株式会社 (130)
【Fターム(参考)】