説明

質問器

【課題】指定した特定の情報を有する応答器を探索する探索機能の実行を可能とした質問器にあって、探索の作業を効率的且つ確実に行なう。
【解決手段】作業者が指定した特定の情報(ID番号)を有するRFタグを探索するにあたり、制御回路は、送信部より質問電波を送信し、受信部によりRFタグからの応答信号を受信することに基づいて、通信エリア内に存在する全てのRFタグの情報を読取る(S1)。当初は通信エリアが比較的広いものとされる。その通信エリア内に目的とするRFタグが存在した場合には(S2:Y)、その旨及びその通信エリア内に存在するRFタグの数を表示部に表示する(S4)。RFタグが複数個あった場合に、送信出力調整回路を制御し、自動で通信エリアを縮小すると共に、通信エリアを縮小した旨を通知する(S6)。そして、再度の読取の作業(S1)を繰返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、応答器に向けて質問電波を送信する送信手段と、前記質問電波を受信した応答器が返信する応答電波を受信する受信手段とを備え、通信によって前記応答器に記録された情報を読取る質問器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば商品管理、物流等の分野においては、商品,荷物等の物品に荷札状のRFタグ(応答器)を添付し、ハンディターミナル(IHT)と称される携帯型のリーダライタ(質問器)を用いてそのRFタグとの間で電磁波(例えばUHF帯の電波)による通信を行ない、該RFタグに記録された商品等に関する情報の読取り(及び書込み)を行なうシステムが実用化されている。このシステムでは、リーダライタを、読取るべきRFタグに近接させた状態で、RFタグに対して電磁波により動作電力の供給が行われると共に、データの通信(書込み及び読取り)が行われるようになっている。
【0003】
この種のリーダライタとして、例えば特許文献1には、問合せ信号を低い出力で送信し、非接触ICカード(RFタグ)からの返答信号を受信したときに、通信可能領域内に非接触ICカードが存在すると判断し、コマンド命令や書込みデータ信号を高い出力で送信することにより、非接触ICカードの電力不足を防止して安定した動作を行わせる技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、リーダライタ装置において、特定の(近くに存在する)RFタグからの応答電波の強度に基づいて、受信回路の受信感度を低下させることにより、目的外のRFタグの情報を読取らないようにした技術が開示されている。更には、特許文献3には、RFIDタグ用リーダの近くに移動してきた特定の1つのRFIDタグからの信号強度に基づいて、送受信回路の受信感度を低く(受信範囲を狭く)して、目的とするRFIDタグからのみ情報を読取るようにした技術が開示されている。
【特許文献1】特開2004−220492号公報
【特許文献2】特開2006−120090号公報
【特許文献3】特開2006−5582号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記したRFIDのシステムを用いて実行される作業として、例えば、夫々RFタグが添付された多数個の物品が収納された棚のなかから、携帯型のリーダライタを使って特定のRFタグ(物品)を離れた位置から探索するといった探索の作業がある。この場合、例えば、リーダライタのキー操作部において、探索のモードを設定すると共に、探索したいRFタグに付されて(記憶されて)いる固有のID番号を指定入力することにより、目的とするRFタグ(物品)の探索を行うことができる。
【0006】
しかし、上記探索の作業において、リーダライタの通信エリアが比較的広い場合には、その通信エリア内に複数個のRFタグ(物品)が存在するケースが多くなる。このとき、リーダライタにより、その通信エリア内に目的とするRFタグ(物品)が存在するかどうかを容易に見つけることはできるが、目的とするRFタグ(物品)がその通信エリア内のどこに存在するかをピンポイントで見つけることはできない。このため、目的とするRFタグ(物品)が存在するエリアを検出した後、作業者が、その大体の範囲内で目視にて目的とする物品を探索する必要があり、作業者の手間がかかると共に、間違いが起こる虞もある。尚、例えば機密を要するため、RFタグや物品自体にその物品を特定する情報が記されていない場合には、目視による探索自体ができなくなる。
【0007】
そうかといって、リーダライタの通信エリアを、1個のRFタグとのみ通信できる程度に狭くした場合には、例えば棚の端に位置する物品から順に、RFタグの情報を読取って目的のものかを判定し、目的のものでなかった場合にはリーダライタを隣のRFタグ(物品)側に移動させて再度読取りを行う、といった作業を、目的とするRFタグ(物品)を見つけるまで、何度も繰返さなければならなくなる。このため、探索の作業を必ずしも効率的に行うことができず、探索に時間がかかってしまう不具合がある。尚、上記特許文献1〜3に記載された技術では、特定の情報を有するRFタグを探索する作業には対応できないものとなっている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、指定した特定の情報を有する応答器を探索する探索機能の実行を可能としたものにあって、探索の作業を効率的且つ確実に行なうことができる質問器を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の質問器は、指定した特定の情報を有する応答器を探索する探索機能の実行を可能としたものにあって、前記探索機能を、送信手段により所定の指向性をもった質問電波を送信し、受信手段により応答器からの応答信号を受信することに基づいて、通信可能な通信エリア内に存在する全ての応答器の情報を読取る読取手段と、前記通信エリア内に前記特定の情報を有する応答器が存在した場合にその旨を報知する報知手段と、前記通信エリア内に前記特定の情報を有する応答器を含む複数の応答器が存在した場合にその数を通知する数量通知手段と、前記通信エリア内に前記特定の情報を有する応答器を含む複数の応答器が存在した場合に、自動で前記読取手段の通信エリアを縮小するように変更する通信エリア変更手段と、この通信エリア変更手段により通信エリアが変更された際にその旨を通知する通信エリア変更通知手段とを含んで構成したところに特徴を有する(請求項1の発明)。
【0010】
これによれば、探索の作業を行うにあたっては、読取手段によって、所定の通信エリア内に存在する全ての応答器の情報が読取られ、目的とする応答器が存在した場合にその旨が報知手段により報知されると共に、その通信エリア内に複数の応答器が存在した場合にその数が数量通知手段により通知される。従って、作業者は、通信エリア内に目的とする応答器が存在するかどうか、存在した場合にそのエリア内に他の応答器も存在するかどうかを知ることができる。通信エリア内に存在する応答器が、目的とする応答器1個のみであれば、探索は終了する。
【0011】
そして、通信エリア内に、目的とする応答器を含めて複数個の応答器が存在する場合には、通信エリア変更手段により、読取手段の通信エリアが自動で縮小するように変更されると共に、通信エリア変更通知手段によりその旨が通知される。このとき、作業者は、目的とする応答器が、変更前の通信エリア内のどこかに存在することは判っているので、通信エリアを狭くした状態で、再度読取手段による読取りを行わせることによって、いわば目的とする応答器の存在するエリアの絞り込み(存在しないエリアの除外)を行いながら、より狭い範囲内で目的とする応答器の探索を行うことが可能となる。
【0012】
この場合、作業者が目視により目的とする応答器を見つける必要はないので、応答器や物品自体にその物品を特定する情報が記されていない場合であっても、確実に探索を行うことができる。また、最初から通信エリアを狭くしておく場合と比較して、当初は比較的広い通信エリア内での探索を行うことができるので、効率的な探索を行うことができる。通信エリアの変更が自動で行われるため、そのための操作等を作業者が行う必要がないことは勿論である。
【0013】
尚、上記数量通知手段により通知される応答器の数とは、厳密な数値を通知するものでも良いことは勿論であるが、概数的な通知や、1個か複数個かの通知を行う場合も含まれる。また、本発明において、質問器と応答器との通信に利用される電波の波長(周波数)としては、ある程度大きい指向性をもった、UHF帯やマイクロ波帯を採用することが望ましい。
【0014】
本発明においては、前記通信エリア変更手段を、通信エリア内に存在する応答器が特定の情報を有する応答器のみとなるまで、前記通信エリアを段階的に縮小させていくことを繰返すように構成することができる(請求項2の発明)。これによれば、応答器同士の距離(間隔)が狭い場合であっても、最終的に、目的とする1個の応答器まで探索を続けることが可能となり、より効果的となる。また、本発明においては、上記通信エリア変更手段を、送信手段の送信出力又は受信手段の受信感度を低下させることにより、通信エリアを変更するように構成することができる(請求項3の発明)。いずれの場合も、所期の目的を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を、例えば商品管理に用いられるRFIDシステムのリーダライタに適用した第1の実施例について、図1ないし図3を参照して説明する。この場合、RFIDシステムは、物品例えば箱入りの商品1に添付される応答器としてのRFタグ2(図3参照)と、そのRFタグ2との間で電磁波(例えばUHF帯の周波数の電波)による通信を行って電力の供給及びデータの読取り,書込みを行うこの場合ハンディタイプ(携帯型)のリーダライタ3とを備えて構成される。
【0016】
ここで、詳しく図示はしないが、応答器としてのRFタグ2について簡単に述べておく。このRFタグ2は、例えばプラスチック製の荷札状(矩形板状)をなしている。そして、その内部には、リーダライタ3との間での通信を行うためのアンテナを備えると共に、データの保持及び応答信号を発生するICチップを備えて構成される。ICチップは、前記リーダライタ3から送信された電波(質問電波)から動作電源を得るための整流・平滑回路、通信等の制御を行うCPU、送受信信号の変調,復調を行う変復調回路、動作プログラム等を記憶するROM、データを記憶する読書き可能なEEPROM等をワンチップIC化して構成されている。このRFタグ2に記憶されるデータ(情報)には、固有のID番号や、場合によっては貼付される商品1のデータ等が含まれる。
【0017】
一方、本実施例に係る質問器としてのリーダライタ3は、ハンディターミナル(IHT)と称される携帯型のものである。図2は、このリーダライタ3の電気的構成を概略的に示しており、また、図3には、リーダライタ3の外観が示されている。図3に示すように、このリーダライタ3の外殻を構成する本体ケース4は、前後方向にやや長く先端部が横方向に膨らむような形状のヘッド部とされた薄型矩形箱状をなしている。本体ケース4の基端側部分は、作業者が片手で把持して操作可能な大きさ(形状)とされている。
【0018】
この本体ケース4の上面部には、図2にも示すように、先端側(ヘッド部)に位置して、小型の液晶表示器からなる表示部5が設けられていると共に、基端側に位置して数字キーや機能キー等の複数個の操作キーを有するキー操作部6が設けられている。また、詳しく図示はしないが、本体ケース4の側面部には、読取指示用のトリガスイッチが設けられている。その他、本体ケース4には、電源スイッチ、報知用のLED、ブザー等も設けられている。
【0019】
図2に示すように、本体ケース4内には、マイコンを主体として構成され全体を制御する制御回路7が設けられている。この制御回路7には、前記トリガスイッチやキー操作部6等からの操作信号が入力されるようになっている。また、制御回路7が、前記報知用LED、ブザー、表示部5等を制御するようになっている。図示はしないが、本体ケース4内には、電源となるバッテリ、外部(ホスト装置)との間でのデータ通信を行うための外部インターフェース等も設けられている。そして、本体ケース4内には、前記制御回路7に接続され、前記RFタグ2との間での電磁波による通信を行うことにより、データの読取り及び書込みを行なう通信機構(送信部15及び受信部16)が次のようにして設けられている。
【0020】
即ち、前記制御回路7には、変調回路8を介して送信回路9が接続され、この送信回路9に送信アンテナ10が接続されている。これと共に、制御回路7には、復調回路11を介して受信回路12が接続され、この受信回路12に受信アンテナ13が接続されている。更に本実施例では、前記送信出力調整回路14が設けられている。尚、前記送信アンテナ10及び受信アンテナ13は、例えば共に平面状のパッチアンテナからなり、本体ケース4のうちヘッド部内に配設されている。
【0021】
これにて、制御回路7の制御により、変調回路8及び送信回路9を介して送信アンテナ10から質問電波が送信される。そして、受信アンテナ13によりRFタグ2からの応答電波を受信し、その受信信号が、受信回路12及び復調回路11を通じて復調され、受信データとして制御回路7に入力されるようになっている。従って、変調回路8、送信回路9、送信アンテナ10などから送信手段としての送信部15が構成され、復調回路11、受信回路12、受信アンテナ13などから受信手段としての受信部16が構成される。
【0022】
このとき、図3に示すように、前記送信アンテナ10からは、本体ケース4の前方に指向性を有した質問電波が送信され、RFタグ2と通信可能な通信エリア(図3に破線A1〜A3で示す)内に存在する全てのRFタグ2に対して、電磁波により電力供給が行われると共に、データの通信(読取り(及び書込み))が行われるようになっている。また、前記送信出力調整回路14は、制御回路7により制御され、送信アンテナ10から出力される質問電波の送信出力(ひいてはRFタグ2と通信可能な通信エリア)を自在に変更することができるようになっている。
【0023】
さて、本実施例では、上記構成のリーダライタ3の実行可能な機能の一つとして、作業者が指定した特定の情報(例えばID番号)を有するRFタグ2(ひいては商品1)を探索(棚調べ)する探索機能がある。この探索機能は、作業者がキー操作部6を操作して探索のモードを指示すると共に、探索したいRFタグ2のID番号を入力指定することにより実行され、このとき、制御回路7は、そのソフトウエア的構成(探索プログラムの実行)により、以下のように各機構を制御して、探索機能を実行する。
【0024】
即ち、次の作用説明(フローチャート説明)でも述べるように、制御回路7は、まず、送信部15により質問電波を送信し、受信部16によりRFタグ2からの応答信号を受信することに基づいて、通信エリア内に存在する全てのRFタグ2の情報を読取る。この際、当初は通信エリアが比較的広いものとされる。そして、その通信エリア内に目的とするRFタグ2が存在した場合には、その旨を報知(表示部5に表示)すると共に、その通信エリア内に存在するRFタグ2の数を併せて報知(表示)する。この場合、通信エリア内に存在するRFタグ2が目的とするもの1個であった場合には、探索処理は終了する。
【0025】
これに対し、通信エリア内に存在するRFタグ2が複数個であった場合には、送信出力調整回路14を制御し、自動で通信エリアを縮小する(送信出力を低下させる)ように変更し、これと共に、通信エリアを縮小した旨を通知(表示部5に表示)する。そして、再度の読取の作業(リーダライタ3の位置変更を含む)を行うように促す表示を行い、読取の処理からを繰返すようになっている。また、本実施例では、通信エリアを変更するにあたっては、通信エリア内に存在するRFタグ2が特定の情報を有するRFタグ2のみとなるまで、通信エリアを段階的に縮小させていくことを繰返すようになっている。
【0026】
従って、制御回路7、送信部15、受信部16から読取手段が構成され、制御回路7及び表示部5から、報知手段、数量通知手段、通信エリア変更通知手段が構成され、制御回路7及び送信出力調整回路14から、通信エリア変更手段が構成されるようになっている。尚、上記した報知或いは通知において、ブザー音の鳴動や、報知用LEDの点灯(点滅)などを併せて行うようにしても良い。
【0027】
次に、上記構成の作用について、図1も参照しながら述べる。尚、ここでは、図3に示すように、棚17内に、RFタグ2が付された多数個の商品1が多段(上下左右)に並んで収納されており、作業者がそのなかから目的の商品1(RFタグ2)を探索する(いわゆる棚調べを行う)場合を具体例としてあげながら説明する。またこのとき、仮に、棚17の中段の右側に、探索の目的とされた商品1(指定された特定の情報を有するRFタグ2)が存在するものとする。
【0028】
図1のフローチャートは、上記探索機能の実行が指示された際に、制御回路7が実行する処理手順を示している。上記したように、探索の作業を行うにあたっては、まず作業者は、リーダライタ3のキー操作部6を操作して探索のモードを指示し、引続き、探索したいRFタグ2のID番号を入力指定する。そして、作業者は、リーダライタ3を探索したい方向に向け、その状態でトリガキーをオン操作することにより、RFタグ2の読取りが行われる(ステップS1)。
【0029】
この読取りは、通信エリアに存在する全てのRFタグ2に対して行われるのであるが、初期状態では、図3(a)に示すように、送信部15における送信出力が比較的高く、通信エリアA1,A2が比較的広い(本体ケース4の前方に例えば1〜2m程度の距離まで通信可能)ものとなっている。図3(a)の例では、通信エリアA1,A2は、棚17(商品1全体)の半分の範囲をカバーできる程度の大きさとされている。従って、作業者は、まず例えば棚17の左側寄りにリーダライタ3を向け、棚17の左半部(通信エリアA1)に位置する商品1のRFタグ2のデータを読取るようにする。
【0030】
次のステップS2では、ステップS1で読取ったRFタグ2の中に、指定した特定の情報を記憶したRFタグ2が存在するかどうかが判断される。読取ったRFタグ2の中に、指定したID番号のものが存在しない場合には(ステップS2にてNo)、ステップS3にて、表示部5に、読取った範囲内には指定されたRFタグ2が存在しないので、リーダライタ3の位置を変更して再度読取り作業を行うことを促すための表示がなされ、ステップS1に戻る。
【0031】
図3(a)の例では、棚17の左半部(通信エリアA1)には、指定されたRFタグ2(目的とする商品1)が存在しないので、作業者は、表示部5における、指定されたRFタグ2が存在せずリーダライタ3の位置変更を促す表示を見て、リーダライタ3を右側に移動させ(棚17の右半部に向け)、棚17の右半部(通信エリアA2)に位置する商品1のRFタグ2のデータを読取るようにする。
【0032】
すると、今度は、読取った通信エリアA2のRFタグ2の中に、指定したID番号のものが存在することになる(ステップS2にてYes)。次のステップS4では、表示部5に、指定されたRFタグ2が見付かった旨が表示されると共に、その通信エリア(上記例では通信エリアA2)内において検知したRFタグ2の個数(例えば10個)が併せて表示される。ステップS5では、通信エリアA2内に存在する(検知された)RFタグ2の個数が、複数(2個以上)かどうかが判断される。
【0033】
ここで、RFタグ2の個数が1個である場合には(ステップS5にてNo)、その通信エリアA2内に存在する1個のRFタグ2(商品1)が目的とするものであるので、探索の処理が終了される。これに対し、RFタグ2の個数が複数あった場合には(ステップS5にてYes)、ステップS6にて、送信部15の送信出力を低下させることにより、通信エリアが縮小するように変更されると共に、通信エリアを縮小した旨が表示部5に表示される。さらに、ステップS7にて、表示部5に、リーダライタ3の位置を変更して再度読取り作業を行うことを促すための表示がなされ、ステップS1に戻る。
【0034】
図3の例では、ステップS4の表示によって、作業者は、通信エリアA2内(棚17の右半部)に、目的とするRFタグ2(商品1)が存在することは判るが、他にも多数(例えば全部で10個)のRFタグ2が存在するため、未だ棚17のどこに存在するかは絞り込めない状態となっている。そして、ステップS6にて、通信エリアA3が、図3(b)に示す程度(例えば前方に向けて50cm程度)に縮小されるようになる。そこで、作業者は、棚17の右半分のうち、上段の左側から順に同様の読取りを繰返し実行させるようにする。
【0035】
今度は、棚17の右半分のなかで、より絞込んだ状態で、目的とするRFタグ2の探索が行われることになる。そして、図3(b)に示す位置(通信エリアA3)において、探索を行った結果、指定されたRFタグ2が見つかるようになると共に、その通信エリアA3内において検知したRFタグ2の個数は1個となるので、ステップS4にて、指定されたRFタグ2が見付かった旨及び通信エリアA3内のRFタグ2の個数が1個である旨が表示され、探索処理が終了する(ステップS5にてNo)。
【0036】
尚、詳しい説明はしないが、上記の通信エリアを縮小した後でも、ある通信エリア内において指定されたRFタグ2を含めて複数のRFタグ2を検知した場合には、(ステップS5にてYes)、再度ステップS6に進み、送信出力が更に低下され、通信エリアが更に縮小される。このように、ステップS6を通るたびに、通信エリアを、前方への距離が例えば、30cm、10cmと段階的に縮小させるようになっている。これにより、RFタグ2(商品1)同士の距離(配置間隔)が狭い場合であっても、最終的に、目的とする1個のRFタグ2まで探索を続けることが可能となるのである。また、上記探索処理が行われた後、別の探索処理が開始される際には、通信エリアが初期の大きさに戻されることは勿論である。
【0037】
このように本実施例によれば、リーダライタ3の探索機能の実行時において、所定の通信エリア内に存在する全てのRFタグ2の情報が読取られ、目的とするRFタグ2が存在した場合にその旨が報知されると共に、その通信エリア内に複数のRFタグ2が存在した場合にその数が通知される。従って、作業者は、通信エリア内に目的とするRFタグ2が存在するかどうか、存在した場合にそのエリア内に他のRFタグ2も存在するかどうかを知ることができる。
【0038】
そして、通信エリア内に、目的とするRFタグ2を含めて複数個のRFタグ2が存在する場合には、通信エリアが自動で縮小するように変更されると共に、その旨が通知される。このとき、作業者は、目的とするRFタグ2、変更前の比較的広い通信エリア内のどこかに存在することは判っているので、通信エリアを狭くした状態で、再度読取りを行わせることによって、いわば目的とするRFタグ2の存在するエリアの絞り込み(存在しないエリアの除外)を行いながら、より狭い範囲内で目的とするRFタグ2の探索を行うことが可能となる。
【0039】
このとき、作業者が目視により目的とするRFタグ2(商品1)を見つける必要はないので、RFタグ2や商品1自体にその商品1を特定する情報が記されていない場合であっても、確実に探索を行うことができる。また、最初から通信エリアを狭くしておく場合と比較して、当初は比較的広い通信エリア内での探索を行うことができるので、効率的な探索を行うことができる。通信エリアの変更が自動で行われるため、そのための操作等を作業者が行う必要がないことは勿論である。
【0040】
この結果、本実施例によれば、指定した特定の情報を有するRFタグ2を探索する探索機能の実行を可能としたものにあって、探索の作業を効率的且つ確実に行なうことができるという優れた効果を奏する。また、本実施例では、通信エリア内に存在するRFタグ2が特定の情報を有するRFタグ2のみとなるまで、通信エリアを段階的に縮小させていくことを繰返すように構成したので、RFタグ2同士の距離(間隔)が狭い場合であっても、最終的に、目的とする1個のRFタグ2で探索を続けることが可能となり、より効果的となる。
【0041】
図4及び図5は、本発明の第2の実施例を示すものであり、この実施例が、上記第1の実施例と異なる点は、通信エリアを変更する通信エリア変更手段に構成にある。即ち、図5に示すように、この第2の実施例では、上記第1の実施例の送信出力調整回路14に代えて、前記受信回路12の受信感度を調整するための、受信感度調整回路21を設けるようにしている。この受信感度調整回路21は、前記制御回路7により制御されるようになっており、これらから自動で通信エリアを縮小するように変更する通信エリア変更手段が構成される。
【0042】
このとき、図4に示すように、制御回路7は、探索処理を行うにあたって、上記第1の実施例と同様に、通信エリアに存在する全てのRFタグ2の読取りを行い(ステップS1)、読取った通信エリアのRFタグ2の中に、指定したID番号のものが存在する場合には(ステップS2にてYes)。表示部5に、指定されたRFタグ2が見付かった旨が表示されると共に、その通信エリア内において検知したRFタグ2の個数が併せて表示される(ステップS4)。
【0043】
そして、本実施例では、通信エリア内に存在する(検知された)RFタグ2の個数が、複数あった場合には(ステップS5にてYes)、ステップS11にて、受信感度調整回路21を制御し、自動で通信エリアを縮小する(受信感度を低下させる)ように変更し、これと共に、通信エリアを縮小した旨を通知するようになっている。従って、この第2の実施例によっても、指定した特定の情報を有するRFタグ2を探索する探索機能の実行を可能としたものにあって、探索の作業を効率的且つ確実に行なうことができるといった、上記第1の実施例と同様の作用・効果を得ることができる。
【0044】
尚、上記実施例では、応答器として、荷札状のRFタグ(RFIDタグ)を具体例としてあげたが、RFタグには、コイン状、キー(キーホルダ)状など様々な形状のものがあり、更に、カード状のもの(非接触ICカード)も応答器に含まれる。また、光学情報が記載されたラベルに、更にRFタグを固着して構成された情報ラベル(スマートラベル等と称される)を物品に貼付して使用するようなシステムも存在し、この場合、情報ラベルが応答器となる。
【0045】
また、上記実施例では、棚17内におけるRFタグ2付きの商品1の探索を行う場合を例としてあげたが、それ以外にも、例えばトラックの荷台や、台車,パレット等に積まれた多数の荷物から、特定の荷物を探索する場合等、様々な対象物や形態、用途が考えられる。質問器としてのリーダライタの構成としても、様々な変更が可能であることは勿論であり、例えば光学コードの読取機能を併せて備えたハンディターミナルであっても良い。ハンディタイプのものに限らず定置式のものであっても良い。
【0046】
その他、上記実施例では、ステップ4にてRFタグ2の個数を通知するようにしたが、RFタグ2の数を概数的に通知したり、1個か複数個かの通知を行ったりしても良い。また、サーキュレータを使用して、質問器の送信アンテナと受信アンテナを兼用した構成も可能である。さらには、質問器と応答器との通信に利用される電波の波長(周波数)としても、ある程度の指向性をもった通信エリアを形成するものであれば良く、UHF帯以外にも、短波帯やマイクロ波帯を採用することもできる等、本発明は要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施例を示すもので、制御回路が実行する探索の処理手順を示すフローチャート
【図2】リーダライタの電気的構成を概略的に示すブロック図
【図3】探索処理の様子を概略的に示す斜視図
【図4】本発明の第2の実施例を示す図1相当図
【図5】図2相当図
【符号の説明】
【0048】
図面中、1は商品、2はRFタグ(応答器)、3はリーダライタ(質問器)、5は表示部、6はキー操作部、7は制御回路、14は送信出力調整回路(通信エリア変更手段)、15は送信部(送信手段)、16は受信部(受信手段)、21は受信感度調整回路(通信エリア変更手段)、A1〜A3は通信エリアを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
応答器に向けて質問電波を送信する送信手段と、前記質問電波を受信した応答器が返信する応答電波を受信する受信手段とを備え、通信によって前記応答器に記録された情報を読取る質問器であって、
指定した特定の情報を有する応答器を探索する探索機能の実行が可能とされていると共に、
前記探索機能は、
前記送信手段により所定の指向性をもった質問電波を送信し、前記受信手段により応答信号を受信することに基づいて、通信可能な通信エリア内に存在する全ての応答器の情報を読取る読取手段と、
前記通信エリア内に前記特定の情報を有する応答器が存在した場合にその旨を報知する報知手段と、
前記通信エリア内に前記特定の情報を有する応答器を含む複数の応答器が存在した場合にその数を通知する数量通知手段と、
前記通信エリア内に前記特定の情報を有する応答器を含む複数の応答器が存在した場合に、自動で前記読取手段の通信エリアを縮小するように変更する通信エリア変更手段と、
この通信エリア変更手段により通信エリアが変更された際にその旨を通知する通信エリア変更通知手段とを含んで構成されていることを特徴とする質問器。
【請求項2】
前記通信エリア変更手段は、前記通信エリア内に存在する応答器が前記特定の情報を有する応答器のみとなるまで、前記通信エリアを段階的に縮小させていくことを繰返すように構成されていることを特徴とする請求項1記載の質問器。
【請求項3】
前記通信エリア変更手段は、前記送信手段の送信出力又は前記受信手段の受信感度を低下させることにより、前記通信エリアを変更するように構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の質問器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−98951(P2009−98951A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270218(P2007−270218)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】