質量分析による分子量決定のためのタンパク質のマイクロ波支援脱グリコシル化
タンパク質のマイクロ波支援酵素脱グリコシル化方法を提供する。タンパク質を変性することなく脱グリコシル化を達成する速度により、質量分析による迅速且つ正確な分子量決定が容易になる。本発明は、マイクロ波条件下にてグリコシル化タンパク質を酵素で処理し、それにより、脱グリコシル化タンパク質を形成する工程を含む、タンパク質の脱グリコシル化方法を提供する。脱グリコシル化タンパク質を、脱塩媒体に適用し、溶離し、質量分析によって分析することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国特許法施行規則§1.53(b)のもとで出願された本願は、2006年5月2日に出願された米国仮特許出願第60/797,334号の米国特許法§119(e)のもとでの利益を主張し、米国仮特許出願第60/797,334号はその全体が参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、穏やかなマイクロ波条件下でタンパク質から炭水化物基を除去する方法に関する。本方法により、質量分析による正確な分子量の決定および分析が容易になる。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
真核生物プロテオームの膨大な微小不均一性は、いくつかの遺伝的事象およびプロテオーム事象(ゲノムスプライスバリエーション、細胞内プロセシング、および翻訳後修飾(PTM)の動態過程が含まれる)に起因する。グリコシル化は、最も一般的であるが複雑な翻訳後修飾の1つとして存在する。糖タンパク質(すなわち、グリコシル化タンパク質)は、広範な生物学的機能(受容体結合、細胞シグナル伝達、免疫認識、炎症、および病原性など)に関与する。グリコシル化および脱グリコシル化過程は、インビボにて、重要なプロテオーム機能(タンパク質折り畳み、タンパク質および細胞の輸送、タンパク質安定化、プロテアーゼ保護、および四次構造など)で重要な役割を果たす(非特許文献1)。グリコシル化はまたは、受容体結合および炎症に計り知れない影響を与え得る。実際、多くの疾患の発症または回復は、グリコシル化部位の存在、多様性、または欠損に関与している(例えば、HIV−2(Shi et al(2005)J.Gen.Virol.86:3385−96)、クロイツフェルト・ヤコブ病−CJD(Silveyra,et al(2005)J.Neurochem.online)、関節リウマチ(Gindzienska−Sieskiewicz et al(2005)Postepy Hig.Med.Dosw.59:485−9)、および結核(Romain et al(1999)Infect.Immun.67:5567−72)。
【0004】
グリコシル化部位は、N結合(アスパラギンのアミド窒素を介する)またはO結合(セリン、トレオニン、時折、ヒドロキシリジンまたはヒドロキシプロリンのヒドロキシル基を介する)のいずれかに分類される。炭水化物構造の多様な性質が糖タンパク質の特徴づけを困難にしている。グリコシル化は複雑且つ不均一であるので、グライコームの解読は極めて困難な作業であり得る。グリコシル化部位の特定は、多数の方法(レクチン親和性樹脂を使用したグリコール富化(Yang et al(2005)Proteomics.5:3353−66)、β脱離およびその後のO結合糖残基を含むペプチドのフラッグまたは親和性精製のためのタグまたは親和性基のいずれかでのマイケル付加(Rademaker et al(1998)Anal.Biochem.257:149−60)、ケトン−ビオチンタグでO−GlcNAcタンパク質を選択的に標識するためのガラクトーストランスフェラーゼ酵素の操作およびその後の親和性選択による化学酵素特性の利用(Khidekel et al(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101:13132−7)、および脱グリコシル化前後のタンパク質の酵素切断産物のクロマトグラフィマッピング/プロファイリングの比較およびその後の分光分析が含まれる)で行われている。
【0005】
クロマトグラフィマッピングプロトコールおよび他の分析シナリオのために、タンパク質およびペプチドの両方の完全な脱グリコシル化が望ましいことが多い。例えば、脱グリコシル化により、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によるタンパク質分離時のスミアーを減少させることができるか、質量分析時のイオン化およびスペクトルの解釈が容易になる。これは、特に、PTMの豊富さによる不均一性によって食い違い得るタンパク質のインタクトな分子量を調査する場合に有用であり得る。例えば、真核生物細胞株中で産生された天然に発現した抗体および組換え抗体の大部分は、N結合グリコシル化鎖を有する。治療抗体の場合、脱グリコシル化は、C末端リジンの存在などの修飾の特徴づけ、または、標識または薬物結合モノクローナル抗体(A.M.Wu & P.D.Senter.(2005)Nature Biotechnology 23:1137−46)については、免疫グロブリンにカップリングした小分子の数をモニタリングするためにしばしば必要であり得る。これらおよび多数の他の理由のために、糖タンパク質をグリコシル化することがしばしば有利である。
【0006】
O結合糖を脱グリコシル化するための2つの従来の方法は、以下である:(i)最も典型的には、その後の安定化のためにチオールを使用したマイケル付加へと続くβ離脱、および(ii)酵素シアリダーゼでのタンパク質の処理。多数のタンパク質は、O結合糖およびN結合糖の両方の混合物で不均一にグリコシル化されている。
【0007】
過去10年の間に、いくつかの技術によって、糖タンパク質のその各脱グリコシル化酵素/化学物質との従来の一晩のインキュベーションの改良が記載されている。これらには、グリコール−タンパク質から全ての糖残基を切断するために無水トリフルオロメタンスルホン酸−TFMSAを使用した化学的手順の至適化(非特許文献2)、目的のグリコシル化タンパク質をPVDF固定化し、その後に脱グリコシル化酵素とインキュベートするストラテジー(非特許文献3)、SELDI疎水性および親水性チップテクノロジーを使用したオンチップ脱グリコシル化(非特許文献4)、酵素に好都合な界面活性剤の存在下でのPNGアーゼFとの糖タンパク質のインキュベーション(非特許文献5)、セルロース上の容易な固定のためのハイブリッド脱グリコシル化酵素の操作(非特許文献6)が含まれる。
【0008】
溶液中または膜固定化脱グリコシル化技術に加えて、ゲル中脱グリコシル化が記載されている。これは、150KDaまでのO−グリコシル化タンパク質を脱グリコシル化し、分析のために抽出することができる。フェチュインおよびRNアーゼBなどの標準的な糖タンパク質の完全な脱グリコシル化には、2時間かかる(Kilz et al(2002)Journal of Mass spectrometry 37:331−335)。従来のプロトコール(すなわち、水浴中での対流または伝導加熱(conduction heating))を使用したPNGアーゼFを使用した脱グリコシル化プロトコールには、典型的には、完了するのに24時間必要である。多くの研究所(例えば、市販の高処理設定)では、短期間での完全な脱グリコシル化ストラテジーは極めて有利であろう。
【0009】
多数の化学反応型のために、マイクロ波エネルギーは、有用な加熱方法である(Shipe et al(2005)Drug Discovery Today:Technologies 2(2):155−161;"Scale−up of microwave−assisted organic synthesis " Roberts,Brett A.;Strauss,Christopher R.pp.237−271,Editor(s):Tierney,Jason P.;Lindstroem,Pelle.in Microwave Assisted Organic Synthesis(2005),Blackwell Publishing Ltd.,Oxford,UK;Kappe,C.Oliver(2004)Angewandte Chemie,International Edition,43(46):6250−6284;Das,S.(2004)Synlett(6):915−932;Mavandadi,F.,Lidstroem,P.(2004)Current Topics in Medicinal Chemistry 4(7):773 −792)。マイクロ波は、一般に、約1ギガHzと1テラHzとの間の電磁スペクトル内の周波数および約1mmと1mとの間の対応する波長を有するものに分類される。マイクロ波は、極性分子と十分に反応し、この分子を回転させる傾向がある。言い換えると、これは、マイクロ波の影響下で物質が加熱される傾向がある。多くの環境下で、マイクロ波照射はマイクロ波反応性の物質と迅速に相互作用し、それにより、非常に急速に温度が上昇するので、マイクロ波加熱は非常に有益である。他の加熱方法(伝導加熱または対流加熱が含まれる)は、一定の環境下で有利であるが、一般に、任意の所与の物質に対してより長い準備時間が必要である。
【0010】
類似の様式では、マイクロ波適用の停止により、それに迅速に対応してマイクロ波によって生じる分子移動が停止する。したがって、化学物質および組成物を加熱するためのマイクロ波照射の使用は、一定の化学的および物理的過程の開始、制御、および促進に有意な利点を付与することができる。マイクロ波照射テクノロジーは、プロテオミクス分野に導入されており、以下の従来の方法:アミノ酸のタンパク質分解(S.H.Chiou,& K.T.Wang.(1990)Current Research in protein chemistry,Academic Press Inc.)、トリプシン消化(Pramanik et al(2002)Protein Science.11:2676−2687;Lin et al(2005)Jour.Amer.Soc.Mass Spec.16:581−588)、およびマイクロ波酸支援加水分解(microwave acid−assisted hydrolysis(MAAH)(Zhong,et al(2004)Nature Biotechnology 22:1291−6;Zhong et al(2005).Jour.Amer.Soc.Mass Spec.16:471−81;Hua et al(2005)Proteomics(online)のより迅速な代替方法となっている。MAAHは、最近、トリフルオロ酢酸を使用した部分的酸加水分解を使用して糖タンパク質のオリゴサッカリド部分を特徴づけることが証明された(Lee et al(2005)Rapid Commun.Mass spectrum 19:1545−50;Lee et al(2005)Rapid Commun.Mass spectrum 19:2629−2635)。
【0011】
質量分析(MS)によるタンパク質分析の最近の利点は、フロントエンド気相イオン化および導入技術(エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI、特許文献1)、および表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI、特許文献2)など)に起因し、装置の感度、分解能、質量の正確さ、バイオインフォマティクス、およびソフトウェアデータデコンボリューション(deconvolution)アルゴリズムが改良されている("Electrospray Ionization Mass Spectrometry:Fundamentals,Instrumentation,and Applications",Cole,R.B.,Ed.(1997)Wiley,New York;"Modern Protein Chemistry:Practical Aspects",Howard,G.C.and Brown,W.E.,Eds.(2002)CRC Press,Boca Raton,FL,p.71−102)。
【0012】
抗体療法は、癌、免疫学的障害、および血管原性障害(angiogenic disorder)の標的療法および標的診断のために確立された。抗体療法および抗体診断の目的は、特定の病変および障害を検出および/または治療することができるように高い特異性および親和性の抗体−抗原相互作用の組み合わせを活用することである。抗体を、単独で使用するか、検出標識、薬物動態修飾因子、放射性同位体、毒素、または薬物などの別の部分と結合(すなわち、負荷)させる。非結合薬物の全身投与によって正常細胞に対して許容不可能なレベルの毒性を生じ得るが腫瘍細胞を消失させようとする場合、癌治療における腫瘍細胞を死滅させるか阻害するための細胞毒性薬および細胞増殖抑制薬の局所送達のための抗体−薬物結合体(antibody−drug conjugates)(ADC)(すなわち、免疫結合体)の使用により(Syrigos and Epenetos(1999)Anticancer Research 19:605−614;Niculescu−Duvaz and Springer(1997)Adv.Drug Del.Rev.26:151−172;US 4975278)、理論上、薬物部分が腫瘍に標的送達され、細胞内蓄積される(Baldwin et al(1986)Lancet pp.(Mar.15,1986):603−05;Thorpe,(1985)"Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review," in Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,A.Pinchera et al(eds),pp.475−506)。それにより、最小の毒性で最大の有効性が追求される。ADCは、モノクローナル抗体(MAb)の選択性ならびに薬物結合特性および薬物放出特性に注目してデザインおよび精緻化される。薬物(ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、およびビンデシンが含まれる)に結合したポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方は、これらのストラテジーで有用であると報告されている(Rowland et al.,(1986)Cancer Immunol.Immunother.,21:183−87)。抗体−毒素結合体で使用される毒素には、細菌毒素(ジフテリア毒素など)、植物毒素(リシンなど)、小分子毒素(ゲルダナマイシン(Mandler et al(2000)Jour,of the Nat.Cancer Inst.92(19):1573−1581;Mandler et al(2000)Bioorganic & Med.Chem.Letters 10:1025−1028;Mandler et al(2002)Bioconjugate Chem.13:786−791)、マイタンシノイド(特許文献3;Liu et al.,(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618−8623)、およびカリチアマイシン(Lode et al(1998)Cancer Res.58:2928;Hinman et al(1993)Cancer Res.53:3336−3342)など)が含まれる。毒素および薬物は、機構(チューブリン結合、DNA結合、またはトポイソメラーゼ阻害が含まれる)によってその細胞傷害性および細胞静止作用を発揮することができる。いくつかの細胞傷害性薬剤は、大きな抗体またはタンパク質受容体リガンドに結合した場合に不活化するか活性が低くなる傾向がある。
【0013】
治療用として承認されているか開発中である上記の抗体−薬物結合体(ADC)は、抗体への薬物部分の共有結合過程がほとんど制御されず、得られた結合産物が不完全に特徴づけられる不均一な混合物である。さらに、薬物負荷(drug loading)(薬物/Ab比)は、組成物または処方物中のADC分子集団の統計的平均である。抗体−薬物結合組成物の不均一性のために、投与後に生物源から回収した薬物動態学的サンプルは評価が困難である。ELISAアッセイは、抗体−抗原結合の検出に制限される(DiJoseph et al(2004)Blood 103:1807−1814)。UV分光学により、一定の蛍光またはUV活性薬の一部または代謝産物の総吸光度を測定することができるが、遊離薬物と抗体−薬物結合体を区別できない。抗体および抗体結合体の特徴づけを容易にする方法は、治療開発に有用である。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0027216号明細書
【特許文献2】米国特許第6020208号明細書
【特許文献3】欧州特許第1391213号明細書
【非特許文献1】R.A.Dwek.(1998)Biological importance of glycosylation.Dev.Biol.Stand.96:43−7
【非特許文献2】T.S.Raju.& E.A.Davidson.(1994)Biochem.Mol.Biol.Int.34:943−54
【非特許文献3】Papac et al(1998)Glycobiology 8:445−454
【非特許文献4】Ge et al(2005)Anal.Chem 77:3644−3650
【非特許文献5】Yu et al(2005)Rapid communications in Mass Spectrometry 19:2331−2336
【非特許文献6】Kwan et al(2005)Protein Engineering,Design & Selection,497−501
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の概要)
本発明は、マイクロ波条件下にてグリコシル化タンパク質を酵素で処理し、それにより、脱グリコシル化タンパク質を形成する工程を含む、タンパク質の脱グリコシル化方法を提供する。
【0015】
一定の実施形態では、脱グリコシル化タンパク質を、脱塩媒体に適用し、溶離し、質量分析によって分析することができる。
【0016】
1つの態様では、本発明は、マイクロ波テクノロジーを使用して、タンパク質のN結合グリコシル化部位を迅速に除去する手順に関する。N結合糖残基を除去するためのN−グリコシダーゼF(PNGアーゼF)を使用して、一定範囲のタンパク質(抗体が含まれる)を約1時間未満で完全に脱グリコシル化する(Sandoval et al(2007)Intl.Jour.Mass Spec.(259(1−3):117−123)。
【0017】
本発明は、N結合タンパク質の迅速な脱グリコシル化方法を提供する。本発明は、マイクロ波条件下で約5分〜1時間で完全に脱グリコシル化し、60秒未満で部分的に脱グリコシル化する方法を含む。
【0018】
別の態様では、本発明は、糖部分を質量分析によって分析する、マイクロ波条件下でグリコシル化タンパク質から取り出された糖部分を分析する方法を含む。糖部分を、高pH陰イオン交換クロマトグラフィによって単離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(例示的実施形態の詳細な説明)
ここに本発明の一定の実施形態を詳細に言及し、その例を、添付の構造および式で説明する。本発明を列挙した実施形態と合わせて記載する一方で、本発明がその実施形態に制限されることを意図しないことが理解されるであろう。対照的に、本発明は、全ての変更形態、修正形態、等価物を対象とすることを意図し、これらは、特許請求の範囲に定義の本発明の範囲内に含まれ得る。当業者は、本明細書中に記載の方法および材料と類似するか等価な多数の方法および材料を認識し、これらを本発明で使用することができる。本発明は、記載の方法および材料に決して制限されない。1つまたは複数の引用された文献、特許、および類似の資料が本願(定義の用語、用語の用法、または記載の技術などが含まれるが、これらに限定されない)と異なるか矛盾する事象では、本発明に従う。
【0020】
(定義)
他で記載しない限り、本明細書中で使用する場合、以下の用語および句は、以下の意味を有することが意図される。
【0021】
用語「グライコーム」は、細胞中または生物中の炭水化物全体の集合体(collective identity)を意味する。
【0022】
用語「糖」、「グリカン」、「ポリサッカリド」、「オリゴサッカリド」、および「炭水化物」を、本明細書中で交換可能に使用する。炭水化物は、酸素、水素、および炭素原子を含む化合物である。炭水化物は、種々の鎖長のモノサッカリドからなり、一般化学式Cn(H2O)nを有するか、その誘導体である。
【0023】
用語「グリコシル化」は、タンパク質および脂質へのサッカリドの付加の過程または結果を意味する。この過程は、膜タンパク質および分泌タンパク質合成における4つの主な翻訳にともなう修飾工程および翻訳後修飾工程の1つであり、粗面小胞体中で合成されたタンパク質の大部分がグリコシル化を受ける。これは、酵素に管理された部位特異的過程であり、グリコシル化の非酵素的化学反応とは対照的である。N結合グリコシル化は、アスパラギン側鎖のアミド窒素で起こり、O結合グリコシル化はセリン側鎖およびトレオニン側鎖の水酸基の酸素で起こり得る。
【0024】
「マイクロ波」は、一般に、遠赤外と高周波との間(すなわち、約1mmと約30cmとの間)の波長(λ)(対応周波数は約1〜100ギガヘルツ(GHz)の範囲)を有する電子スペクトルの一部を説明するために使用される。マイクロ波形態のエネルギーを、マイクロ波照射のビームライン中に存在する物質に移行することができる。双極分子が回転して双極分子自体が変動する照射の電場成分と整列する場合またはイオンが同一の現象によって行き来して発熱する場合にエネルギーの吸収が起こる(Mavandadi,F.,Lidstroem,P.(2004)Current Topics in Medicinal Chemistry 4(7):773−792)。所与の反応混合物による発熱量は、その誘電特性、体積、形状、濃度、粘度、および温度の複合関数である(Galema,S.A.(1997)Chem.Soc.Rev.26:233−238)。マイクロ波リアクターでは、マイクロ波をマグネトロンによって発生させ、導波管を介して反応室の空洞に入れる。研究用の市販のマイクロ波リアクターを利用可能であり、変動可能且つ正確に出力、時間、および温度を調節して種々の混合物を確実に加熱することができる。
【0025】
本明細書中の用語「抗体」は、最も広い意味で使用し、具体的には、所望の生物活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体フラグメントを対象とする。抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、または他の種由来の抗体であり得る。
【0026】
抗体は、特定の抗体を認識して結合することができる免疫系によって生成されるタンパク質である(Janeway,et al(2001)"Immunobiology",5th Ed.,Garland Publishing,New York)。標的抗原は、一般に、複数の抗体上のCDRによって認識されるエピトープとも呼ばれる多数の結合部位を有する。異なるエピトープに特異的に結合する各抗体は、異なる構造を有する。したがって、1つの抗原は、1つを超える対応する抗体を有することができる。
【0027】
本明細書中で使用する場合、用語「抗体」はまた、全長免疫グロブリン分子または全長免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分をいう(すなわち、目的の標的の抗原またはその一部に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子であり、かかる標的には、自己免疫疾患に関連する自己免疫抗体を産生する癌細胞が含まれるが、これらに限定されない)。本明細書中に開示される免疫グロブリンは、免疫グロブリン分子の任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、およびIgA)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスに由来し得る。免疫グロブリンは、任意の種に由来し得る。しかし、1つの態様では、免疫グロブリンは、ヒト、マウス、またはウサギに由来し得る。
【0028】
「抗体フラグメント」は、全長抗体の一部、一般に、その抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント、二特異性抗体、線状抗体(linear antibodies)、Fab発現ライブラリーによって産生されたフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、CDR(相補性決定領域)、ECD(細胞外ドメイン)、癌細胞抗原、ウイルス抗原、または微生物抗原に免疫特異的に結合する上記のいずれかのエピトープ結合フラグメント、単鎖抗体分子、ならびに抗体フラグメントから形成した多重特異性抗体が含まれる。
【0029】
本明細書中の「インタクトな抗体」は、VLおよびVHドメインならびに完全な軽鎖および重鎖の定常領域を含む抗体である。
【0030】
本明細書中で使用する場合、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体集団から得た抗体をいう。すなわち、集団を含む各抗体は、少量で存在し得る可能性のある天然に存在する変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、特異性が高く、単一の抗原部位に指向する。さらに、異なる決定基(エピトープ)に指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に指向する。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体によって夾雑することなく合成することができるという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法によって抗体が産生される必要があると解釈されるべきではない。例えば、本発明で使用されるモノクローナル抗体を、Kohler et al(1975)Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製することができるか、組換えDNA法によって作製することができる(米国特許第4816567号)。「モノクローナル抗体」を、例えば、Clackson et al(1991)Nature,352:624−628;Marks et al(1991)J.Mol Biol.,222:581−597に記載の技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0031】
本明細書中のモノクローナル抗体には、具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種に由来するか特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるか相同する一方で、残りの鎖が別の種に由来するか別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるか相同する「キメラ」抗体およびかかる抗体のフラグメント(所望の生物活性を示す限り)が含まれる(米国特許第4816567号およびMorrison et al(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855)。本明細書中の目的のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿など)由来の可変ドメイン抗体結合配列およびヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体が含まれる。
【0032】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の一部(例えば、その抗原結合領域または可変領域を含む)を含む。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント、二特異性抗体、線状抗体、単鎖抗体分子、ならびに抗体フラグメントから形成した多重特異性抗体が含まれる。
【0033】
「インタクトな」抗体は、抗原結合可変領域、軽鎖定常ドメイン(CL)、重鎖定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を含む抗体である。定常ドメインは、未変性配列定常ドメイン(例えば、ヒト未変性配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異型であり得る。
【0034】
インタクトな抗体は、抗体のFc領域(未変性配列Fc領域またはアミノ酸変異Fc領域)に起因する生物活性をいう1つまたは複数の「エフェクター機能」を有することができる。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合、補体依存性細胞傷害性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方制御などが含まれる。
【0035】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、インタクトな抗体を異なる「クラス」に割り当てることができる。インタクトな抗体には5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちのいくつかを、「サブクラス」(アイソタイプ)(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2)にさらに分類することができる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインを、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ぶ。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元立体配置は周知である。
【0036】
用語「アミノ酸配列変異型(variant)」は、未変性配列のポリペプチドといくらか異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドをいう。通常、アミノ酸配列変異型は、未変性抗体の少なくとも1つの受容体ドメインまたは未変性受容体の少なくとも1つのリガンド結合ドメインと少なくとも70%の配列が同一であり、好ましくは、かかる受容体またはリガンド結合ドメインと少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%の配列が相同である。アミノ酸配列変異型は、未変性アミノ酸配列のアミノ酸配列内の一定の位置に置換、欠失、および/または挿入を含む。アミノ酸を、従来の名称(一文字表記および三文字表記)で示す。
【0037】
「配列同一性」は、必要に応じて、最大の配列同一率を達成するために配列を整列させ、ギャップを導入したのちに同一であるアミノ酸配列変異型中の残基の比率と定義する。アラインメントの方法およびコンピュータプログラムは、当該分野で周知である。1つのかかるコンピュータプログラムは、1991年12月10日に米国著作権局(Washington,DC20559)にユーザー文書と共に申請されたGenentech,Inc.によって記された「Align2」である。
【0038】
有用なモノクローナル抗体は、特定の抗原決定基(例えば、癌細胞抗原、ウイルス抗原、微生物抗原、タンパク質、ペプチド、炭水化物、化学物質、核酸、またはそのフラグメント)に対する均一な抗体集団である。目的の抗原に対するモノクローナル抗体(MAb)を、培養物中の連続継代細胞系によって抗体分子が産生される当該分野で公知の任意の技術の使用によって調製することができる。これらには、Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495−497によって最初に記載されたハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al(1983)Immunology Today 4:72)、およびEBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al(1985)in Monoclonal Antiboies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96)が含まれるが、これらに限定されない。かかる抗体は、任意の免疫グロブリンクラス(IgG、IgM、IgE、IgA、およびIgD)およびその任意のサブクラスに由来し得る。本発明で使用されるMAbを産生するハイブリドーマを、インビトロまたはインビボで培養することができる。
【0039】
有用なモノクローナル抗体には、ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、抗体フラグメント、またはキメラヒト−マウス(または他の種)モノクローナル抗体が含まれるが、これらに限定されない。ヒトモノクローナル抗体を、当該分野で公知の多数の技術のいずれかによって作製することができる(例えば、Teng et al(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:7308−7312;Kozbor et al(1983)Immunology Today 4:72−79;およびOlsson et al(1982)Methods in Enzymology 92:3−16)。
【0040】
抗体はまた、二重特異性抗体であり得る。二重特異性抗体は、一方のアーム中に第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖および他方のアーム中にハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性が得られる)を有することができる。二重特異性分子の半分のみの免疫グロブリン軽鎖の存在によって容易な分離方法が得られるので、この非対称構造により、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異性化合物の分離が容易になる(国際公開第94/04690号パンフレット;Suresh et al(1986)Methods in Enzymology,121:210;Rodrigues et al(1993)J.of Immunology 151:6954−6961;Carter et al(1992)Bio/Technology 10:163−167;Carter et al(1995)J.of Hematotherapy 4:463−470;Merchant et al(1998)Nature Biotechnology 16:677−681)。二重特異性抗体の作製方法は、当該分野で公知である(Milstein et al(1983)Nature 305:537−539;国際公開第93/08829号パンフレット;Traunecker et al(1991)EMBO J.10:3655−3659)。かかる技術を使用して、本明細書中に定義の疾患の治療または防止におけるADCとしての結合のために二重特異性抗体を調製することができる。
【0041】
異なるアプローチにしたがって、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原組み合わせ部位)を、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合する。ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインと融合することができる。第1の重鎖定常領域(CH1)は、融合物の少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含むことができる。免疫グロブリン重鎖融合物および、必要に応じて、免疫グロブリン軽鎖をコードする配列を有する核酸を、個別の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に同時トランスフェクトした。これにより、構築で使用した異なる比の3つのポリペプチド鎖が最適に得られる実施形態で3つのポリペプチドフラグメントの相互の比率の調整が非常に柔軟になる。しかし、等しい比の少なくとも2つのポリペプチドの発現によって収率が高くなる場合、または比が特に有意でない場合に、1つの発現ベクター中の2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を挿入することが可能である。
【0042】
ハイブリッドまたは二官能性抗体を、生物学的(すなわち、細胞融合技術)または特に架橋剤またはジスルフィド結合形成試薬を使用して化学的に誘導することができ、これらの抗体は、全抗体またはそのフラグメントを含むことができる(欧州特許第105360号明細書;国際公開第83/03679号パンフレット;欧州特許第217577号明細書)。
【0043】
抗体は、癌細胞抗原、ウイルス抗原、または微生物抗原に免疫特異的に結合する抗体または腫瘍細胞もしくはマトリックスに結合する他の抗体の機能的に活性なフラグメント、誘導体、またはアナログであり得る。これに関して、「機能的に活性な」は、フラグメント、誘導体、またはアナログが、フラグメント、誘導体、またはアナログが由来する抗体が認識する同一の抗原を認識する抗抗イディオタイプ抗体を誘発することができることを意味する。具体的には、例示的実施形態では、免疫グロブリン分子のイディオタイプの抗原性を、抗原を特異的に認識するCDRに対してC末端側にあるCDRフレームワークおよびCDR配列の欠失によって増強することができる。CDR配列が抗原に結合することを決定するために、CDR配列を含む合成ペプチドを、当該分野で公知の任意の結合アッセイ方法(例えば、BIAコアアッセイ)による抗原を使用した結合アッセイで使用することができる(例えば、Kabat et al,(1991)in Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md;Kabat et al(1980)J.of Immunology 125(3):961−969を参照のこと)。
【0044】
他の有用な抗体には、抗体のフラグメント(抗体分子のペプシン消化によって産生することができる、可変領域、軽鎖定常領域、および重鎖のCH1ドメインを含むF(ab’)2フラグメントおよびF(ab’)2フラグメントのジスルフィド結合の還元によって生成することができるFabフラグメントなどであるが、これに限定されない)が含まれる。他の有用な抗体は、抗体の重鎖および軽鎖二量体、またはその任意の最小フラグメント(Fvまたは単鎖抗体(SCA)など)(例えば、米国特許第4946778号明細書;Bird(1988)Science 242:423−42;Huston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;およびWard et al(1989)Nature 334:544−54に記載)、または抗体と同一の特異性を有する任意の他の分子である。
【0045】
さらに、標準的な組換えDNA技術を使用して作製することができるヒトおよび非ヒト部分を含む組換え抗体(キメラおよびヒト化モノクローナル抗体など)は、有用な抗体である。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子(マウスモノクローナルおよびヒト免疫グロブリン定常領域由来の可変領域を有する分子など)である(米国特許第4816567号明細書および米国特許第4816397号明細書(その全体が本明細書中で参考として援用される))。キメラおよびヒト化モノクローナル抗体を、当該分野で公知の組換えDNA技術(例えば、国際公開第87/02671号パンフレット;欧州特許第184,187号明細書;欧州特許第171496号明細書;欧州特許第173494号明細書;国際公開第86/01533号パンフレット;米国特許第4816567号明細書;欧州特許第12023号明細書;Better et al(1988)Science 240:1041−1043;Liu et al(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liu et al(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sun et al(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimura et al(1987)Cancer.Res.47:999−1005;Wood et al(1985)Nature 314:446−449;およびShaw et al(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559;Morrison(1985)Science 229:1202−1207;Oi et al(1986)BioTechniques 4:214;米国特許第5225539号明細書;Jones et al(1986)Nature 321:552−525;Verhoeyan et al(1988)Science 239:1534;およびBeidler et al(1988)J.Immunol.141:4053−4060(それぞれその全体が本明細書中で参考として援用される)に記載の方法を使用する)によって産生することができる。
【0046】
内因性免疫グロブリンの重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができないが、ヒトの重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを使用して、完全なヒト抗体を産生することができる。トランスジェニックマウスを、選択した抗原(例えば、本発明のポリペプチドの全部または一部)を使用して、通常の様式で免疫化する。従来のハイブリドーマテクノロジーを使用して、抗原に指向するモノクローナル抗体を得ることができる。トランスジェニックマウスが保有するヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化時に再編成され、その後にクラススイッチングおよび体細胞変異を受ける。したがって、かかる技術を使用して、治療的に有用なIgG、IgA、IgM、およびIgE抗体を産生することが可能である。このヒト抗体産生テクノロジーの概説については、Lonberg and Huszar(1995)Int.Rev.Immunol.13:65−93)を参照のこと。このヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体の産生テクノロジーおよびかかる抗体の産生プロトコールの詳細な考察については、例えば、米国特許第5625126号明細書;同第5633425号明細書;同第5569825号明細書;同第5661016号明細書;同第5545806号明細書(それぞれその全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。他のヒト抗体は、例えば、Abgenix,Inc.(Freemont,CA)およびGenpharm(San Jose,CA)から購入することができる。
【0047】
選択されたエピトープを認識する完全なヒト抗体を、「ガイド選択(guided selection)」と呼ばれる技術を使用して生成することができる。このアプローチでは、選択した非ヒトモノクローナル抗体(例えば、マウス抗体)を使用して、同一のエピトープを認識する完全なヒト抗体の選択をガイドする(Jespers et al(1994)Biotechnology 12:899−903)。当該分野で公知の種々の技術(ファージディスプレイライブラリーが含まれる)を使用して、ヒト抗体を産生することもできる(Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991);Marks et al(1991)J.Mol.Biol.222:581)。
【0048】
抗体は、例えば、抗体が共有結合(例えば、ペプチド結合)を介して、この抗体でない別の抗体のアミノ酸配列(またはその一部(タンパク質の少なくとも10、20、または50アミノ酸部分など))のN末端またはC末端のいずれかに融合する抗体の融合タンパク質またはその機能的に活性なフラグメントであり得る。抗体またはそのフラグメントを、他のタンパク質の定常ドメインのN末端に共有結合することができる。
【0049】
抗体には、修飾される(すなわち、共有結合によって抗体のその抗原結合免疫特異性が保持される場合に限り、任意の分子型の共有結合によって)アナログおよび誘導体が含まれる。例えば、制限されないが、抗体の誘導体およびアナログには、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/封鎖基による誘導体化、タンパク質分解性の切断、細胞抗体単位または他のタンパク質への結合などによってさらに修飾された誘導体およびアナログが含まれる。多数の化学修飾のうちのいずれかを、公知の技術(特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの存在下での代謝的合成などが含まれるが、これらに限定されない)によって行うことができる。さらに、アナログまたは誘導体は、1つまたは複数の非天然アミノ酸を含むことができる。
【0050】
用語「受容体」には、細胞表面上に固有に発現するか過剰発現し、循環ターゲティング因子(circulating targeting agent)(抗体−薬物結合体など)と相互作用可能な様式で細胞表面上に曝露される任意のペプチド、タンパク質、糖タンパク質(グリコシル化タンパク質)、ポリ炭水化物(polycarbohydrate)、または脂質が含まれる。受容体を保有する細胞には、腫瘍細胞が含まれる。
【0051】
用語「標識」は、抗体に共有結合することができ、(i)検出可能なシグナルを生成し、(ii)第1および第2の標識によって得られる検出可能なシグナル(例えば、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移))を修飾するために第2の標識と相互作用するか、(iii)抗原またはリガンドとの相互作用を安定化するか、結合親和性を増加させるか、(iv)電荷、疎水性、形状、または他の物理的パラメーターによって、移動度(例えば、電気泳動移動度)または細胞透過性に影響を及ぼすか、(v)リガンド親和性、抗体/抗原結合、またはイオン錯体化を調整するための捕捉部分を提供するように機能する任意の部分を意味する。
【0052】
「反応性官能基」には、オレフィン、アセチレン、アルコール、フェノール、エーテル、オキシド、ハライド、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、カーボネート、アミド、シアナート、イソシアナート、チオシアナート、イソチオシアナート、アミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル、メルカプタン(チオール)、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、硫酸、アセタール、ケタール、アンヒドリド、スルフェート、スルフェン酸、イソニトリル、アミジン、イミド、イミダート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルソエステル、スルファイト、エナミン、イナミン(ynamine)、尿素、プソイド尿素、セミカルバジド、カルボジイミド、カルバマート、イミン、アジド、アゾ化合物、アゾキシ化合物、およびニトロソ化合物が含まれるが、これらに限定されない。例示的な反応性官能基には、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、パラ−ニトロフェニル(PNP)カルボナート、ペンタフルオロフェニル(PFP)カルボナート、およびマレイミドが含まれる。Sandler and Karo,Eds.in Organic Functional Group Preparations,Academic Press,San Diego,1989を参照のこと。
【0053】
「リンカー」、「リンカー単位」、または「リンク」は、共有結合または抗体が薬物部分に共有結合する原子の鎖を含む化学的部分を意味する。種々の実施形態では、リンカーをLと指定する。リンカーには、アルキレン、アリールジイル、ヘテロアリールジイルなどの2価のラジカル、−(CR2)nO(CR2)n−(アルキルオキシ(例えば、ポリエチレンオキシ、PEG、ポリメチレンオキシの反復単位)およびアルキルアミノ(例えば、ポリエチレンアミノ、Jeffamine(商標))などの部分、ならびに二価酸のエステルおよびアミド(スクシナート、スクシンアミド、ジグリコラート、マロナート、およびカプロアミドが含まれる)が含まれる。
【0054】
例示的なリンカーの略語には、以下が含まれる:MC=6−マレイミドカプロイル、MP=マレイミドプロパノイル、val−cit=バリン−シトルリン(プロテアーゼ切断リンカー中のジペプチド部位)、ala−phe=アラニン−フェニルアラニン(プロテアーゼ切断リンカー中のジペプチド部位)、PAB=p−アミノベンジルオキシカルボニル(リンカーの「自壊的(self immolative)」部分)、SPP=N−スクシニミジル4−(2−ピリジルチオ)ペンタノアート、SMCC=N−スクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1カルボキシラート、SIAB=N−スクシニミジル(4−ヨード−アセチル)ベンゾアート。
【0055】
Bocは、N−(t−ブトキシカルボニル)である。citは、シトルリン(2−アミノ−5−ウレイドペンタン酸)である。dapは、ドラプロインである。DCCは、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドである。DCMは、ジクロロメタンである。DEAは、ジエチルアミンである。DEADは、ジエチルアゾジカルボキシラートである。DEPCは、ジエチルホスホリルシアニダートである。DIADは、ジイソプロピルアゾジカルボキシラートである。DIEAは、N,N−ジイソプロピルエチルアミンである。dilは、ドライソロイインである。DMAPは、4−ジメチルアミノピリジンである。DMEは、エチレングリコールジメチルエーテル(または1,2−ジメトキシエタン)である。DMFは、N,N−ジメチルホルムアミドである。DMSOは、ジメチルスルホキシドである。doeは、ドラフェニンである。dovは、N,N−ジメチルバリンである。DTNBは、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)である。DTPAは、ジエチレントリアミン五酢酸である。DTTは、ジチオスレイトールである。EDCIは、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩である。EDTAは、エチレンジアミン五酢酸である。EEDQは、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリンである。ES−MSは、エレクトロスプレー質量分析である。EtOAcは、酢酸エチルである。Fmocは、N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)である。glyは、グリシンである。HATUは、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートである。HOBtは、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールである。HPLCは、高速液体クロマトグラフィである。ileは、イソロイシンである。lysは、リジンである。MeCN(CH3CN)は、アセトニトリルである。LC/MSは、液体クロマトグラフィおよび質量分析である。MAAHは、マイクロ波支援酸加水分解(microwave assisted acid hydrolysis)である。MeOHは、メタノールである。MQは、Milli−Q水である。Mtrは、4−アニシルジフェニルメチル(または4−メトキシトリチル)である。norは、(1S,2R)−(+)−ノルフェドリンである。PBSは、リン酸緩衝化生理食塩水(Ph7.4)である。PEGは、ポリエチレングリコールである。Phは、フェニルである。PNGアーゼFは、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカムから最初に単離されたN−グリコシダーゼFである。PNGアーゼAは、アーモンドから単離されたN−グリコシダーゼである。Pnpは、p−ニトロフェニルである。PTMは、翻訳後修飾である。PVDFは、ポリビニリデンフルオリドである。PyBropは、ブロモトリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファートである。SDS−PAGEは、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動である。SECは、サイズ排除クロマトグラフィである。Suは、スクシンイミドである。TFAは、トリフルオロ酢酸である。TFMSAは、トリフルオロメタンスルホン酸である。TLCは、薄層クロマトグラフィである。TOFは、飛行時間である。UVは、紫外線である。valは、バリンである。
タンパク質のマイクロ波支援脱グリコシル化
タンパク質同定前の糖タンパク質(グリコシル化タンパク質)からの炭水化物基の除去が通常好ましい。研究者は、しばしば、さらなるC末端リジンの存在を評価し、修飾残基をマッピングし、薬物結合体での誘導体化レベルを評価する(すなわち、平均薬物抗体比を確立する)ための抗体の正確な分子量決定を容易にするために脱グリコシル化を必要とする。PNGアーゼFは、しばしば、ゲルまたは溶液中で糖タンパク質からN結合グリカンを放出するのに有効な酵素である。しかし、未変性糖タンパク質のタンパク質分解性消化は、しばしば、オリゴサッカリドによる立体障害のために不完全である。本発明の方法を、任意のPNGアーゼ型(未変性または組換えが含まれ、PNGアーゼFおよびPNGアーゼAが含まれる)を使用して行うことができる。本発明の方法を、基質グリコシル化タンパク質に対して触媒量のPNGアーゼを使用して行うことができる。PNGアーゼのグリコシル化タンパク質に対するモル比は、1:10〜1:1000であり得る。
【0056】
タンパク質の脱グリコシル化を、溶液中または電気泳動後のゲルスライス中で行うことができる。インゲル法(in−gel method)は、電気泳動後に目的のグリコシル化タンパク質を、ゲルスライスとして切り出し、脱色溶液中で脱色する工程を含む。抽出したタンパク質を有するゲルスライスを、典型的には、本発明の方法によって乾燥させ、PNGアーゼF溶液中に再懸濁し、マイクロ波照射した。グリカン含有上清を除去し、廃棄する。脱グリコシル化タンパク質を含むゲルスライスを、洗浄し、乾燥させた。脱グリコシル化タンパク質を、ゲルスライスまたは消化インゲル(例えば、トリプシン)から溶離する。
【0057】
本発明は、一般に、試薬(グリコシル化タンパク質および酵素が含まれる)とマイクロ波範囲で電磁波照射に熱的反応性を示す少なくとも1つの試薬との温度モニタリング混合物への十分なマイクロ波照射によって化学反応速度を増大させる一方で温度上昇を制御する方法を含む。
脱グリコシル化タンパク質の質量分析
質量分析は、質量(すなわち、分子量)によるタンパク質の迅速な同定のために広く使用されている。糖ペプチドは、しばしば、結合したグリカンの微小不均一性により、その脱グリコシル化形態と比較して、不十分にイオン化され、シグナルが抑制される。不完全に脱グリコシル化されたタンパク質のサンプルは、そのマススペクトルをデコンボリューションするには比較的より複雑である。測定したタンパク質の質量は平均質量であり、最大エンベロープは多数の各質量に及ぶ。例えば、質量10kDaのタンパク質は、約20質量単位幅である最大エンベロープを有するであろう(最も多いピークの1%を超える強度を有するピークを含む全同位体を計数(Anal.Chem.(1983)55:353−356))。質量分析の多くの型(例えば、MALDI−TOF)では、グリコシル化タンパク質のスペクトルは、より高い質量範囲の幅が広すぎて正確に検出するのに十分な分解能が得られないピークを示す(Evershed et al(2005)Rapid Commun.in Mass Spec.7(10):882−886)。ピーク幅は、同位体エンベロープおよび装置の分解能を反映する。他の質量分析技術(例えば、Q−TOF−MSまたは三連四重極分析)について、糖タンパク質由来の複雑なデータは、デコンボリューションして正確な質量を決定するのに困難であり得る。
【0058】
抗体のマイクロ波支援脱グリコシル化を、還元するか還元しないで37℃〜60℃の温度範囲および2〜60分の種々の測定点にて触媒量のPNGアーゼFの存在下で行った。脱グリコシル化後、インタクトなサンプル塊を、Q−TOFまたは三連四重極質量分析法によって分析し、複雑な高度に負荷されたデータを、MaxEnt(登録商標)(Waters Corp.)またはProMass Deconvolution(商標)(Novatia,LLC)プログラムをそれぞれ使用してデコンボリューションした。
【0059】
図1aは、ジチオスレイトール(DTT)での還元前のインタクトな抗体ベバシズマブ(アバスチン(登録商標),Genentech,Inc.,South San Francisco,CA)のスペクトルを示す。出発抗体ベバシズマブは、それぞれ1445Daの2つの炭水化物の付加物(各重鎖上に2100 G1−GalGlcNAc残基(149183Da[M+H+2890]+での主ピーク)を示す)を含む。図1bで、PNGアーゼFおよび37℃のマイクロ波照射で5分間の処理後、1つ(147767Da[M+H+1445]+)および2つ(146333Da[M+H]+)の糖の喪失が認められた。マイクロ波における10分後、脱グリコシル化が完了する(図1c)。ベバシズマブおよびPNGアーゼF反応物を含む同一混合物をマイクロ波照射を行わずに37℃で反応させた場合、マイクロ波照射による脱グリコシル化の促進が認められた(図2a〜c)。5分後(図2a)、10分後(図2b)、および60分後(図2c)の時点での混合物由来のアリコートのサンプルを、質量分析によって分析した。マイクロ波で10分後の脱グリコシル化(図1c)は、マイクロ波照射を行わない10分後の脱グリコシル化(図2b)よりもさらに進行し、事実上完了することが認められる。比較してみると、同温の水浴中での抗体の完全な脱グリコシル化は、1時間のインキュベーション後に認められた(図1g)。
【0060】
脱グリコシル化前に、抗体の重鎖および軽鎖を、システインジスルフィド残基の還元的切断によって分離することができる。ベバシズマブ(10μg、アバスチン(登録商標)、Genentech,South San Francisco,CA)を、脱グリコシル化前に50mM DTTを含む0.1M Tris−HClで処理した。
【0061】
マイクロ波における還元抗体重鎖の脱グリコシル化も、マイクロ波照射を行わない場合(すなわち、水浴中)よりもかなり速く起こった。図3aは、ベバシズマブ(51162Da[M+H+1445]+)のグリコシル化重鎖を示す。37℃でのマイクロ波照射下で、重鎖は、5分後に約75%が脱グリコシル化され(図3b)、10分後に完全に脱グリコシル化された(49721Da[M+H]+)(図3c)。対照的に、37℃でマイクロ波照射を用いない場合、重鎖は、5分後に不完全に脱グリコシル化され(図4a)、10分(図4b)〜60分(図4c)でのみそのうちに完全に脱グリコシル化される。
【0062】
抗体およびPNGアーゼFへのより高い温度(例えば、60℃)でのマイクロ波照射も好ましかった。急速な脱グリコシル化が起こったが(2分未満)、シグナルの有意な喪失が認められた。これはおそらく抗体および/または酵素の分解を示す。ベバシズマブおよびトラスツズマブの両方については、温度が高いほど、PNGアーゼF酵素活性の低下および全抗体ピーク強度の減少が得られる時点が頻繁になった。
【0063】
トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)、Genentech,South San Francisco,CA)を、本発明のマイクロ波条件によって脱グリコシル化した。トラスツズマブは、主に、重鎖のAsn297に糖部分を有するG0グリコフォームとして存在する。図8および9はまた、ベバシズマブと同一の実験を示し、この場合、トラスツズマブ抗体の軽鎖(図8aおよび9a)および重鎖(図8bおよび9b)を分析している。同一の所見が得られた(すなわち、60℃で同一の喪失を受け、37℃および45℃のより低い温度では、全タンパク質物質は、脱グリコシル化反応中に影響を受けなかった)。さらに、トラスツズマブは、5分間で部分的に脱グリコシル化され、10分後で完全に脱グリコシル化され得る。マイクロ波照射を行わない同一の条件下では、トラスツズマブの完全な脱グリコシル化には、約12〜24時間を必要とする。
【0064】
治療用の毒素結合抗体と共に、抗体を二官能性キレート剤(BCA)と結合し、それにより、放射線画像化によって動物モデル中の治療抗体の分布を追跡することができる。BCAは、生物学的ターゲティングベクター(この場合、抗体)にキレート化部分を結合して、生体分布決定のための放射性同位体を組み込む(Gansow O.A.(1991)Int.J.Appl.Instrum.Part B Nucl.Med.Biol.18:369−382)。DOTA(1,4,7,10テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸)は、3価の放射性金属と生理学的に安定な錯体を精製する能力を好む十分に特徴づけられた二官能性結合リンカーである。DOTAは、金属錯体化キレートリガンドである。DOTA標識試薬を、標準的技術およびタンパク質の反応官能性の使用によってタンパク質と反応して、安定な結合を介して共有結合することができる。タンパク質上のDOTA金属錯化リンカーは、安定なイオン結合を介して、一定の金属イオンと錯体を形成する。反応性DOTA標識試薬は、市販されている(DOTA−NHSエステルなど)。タンパク質が、典型的には、活性エステル標識試薬と反応することができる多数のアミンを含むので(例えば、リジン側鎖)、得られた生成物は、タンパク質分子上の種々の部位でのDOTAリンカーとのタンパク質の不均一の混合物である。DOTA標識タンパク質は、0、1、2、3、またはそれを超えるDOTA基、および種々のアミノ酸残基が分布し得る。抗体上のDOTAリンカーの不均一性のために、これらの抗体のマススペクトルのデコンボリューションは、通常の「裸の」抗体よりもいくらか扱いにくく、しばしば解読できない。これに加えて、不均一な結合体と組み合わせて存在するより多数のグリコフォームの1つを有することにより、抗体の正確な分子量を得ることは極めて困難であり得る。
【0065】
本発明は、DOTA結合抗体のマイクロ波支援脱グリコシル化法を含む。グリコシル化抗CD4−DOTA結合体由来のデータを、デコンボリューションすることができなかった。図5aは、還元したグリコシル化抗CD4のデコンボリューションしたマススペクトルの重鎖質量領域を示す。図5bは、37℃で60分間のマイクロ波照射後の還元抗CD4−DOTAおよびPNGアーゼFのデコンボリューションしたマススペクトルの重鎖質量領域を示す。脱グリコシル化前に、スペクトルは複雑すぎて良好にデコンボリューションされず、それにより、正確な質量を決定できなかった。糖の除去により、デコンボリューションを容易にし、脱グリコシル化重鎖により、質量49043、49430、49816で認められたDOTA結合抗体の3つの変異型の存在が明らかとなった。図5cは、マイクロ波照射を行わずに37℃の水浴中で一晩後の還元抗CD4−DOTAおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルの重鎖質量領域を示す。質量分光学的同定により、結合体はマイクロ波照射中で安定であることが確認され、マイクロ波支援脱グリコシル化を使用し、従来の水浴または従来の加熱装置を使用したサーモサイクラーも使用して測定点を再度取った。
【0066】
糖タンパク質標準RNアーゼBは、Asn−60を介して結合した高マンノースN結合オリゴサッカリドである。図6aは、PNGアーゼFへの任意の曝露前の還元RNアーゼBの典型的なデコンボリューションした質量スペクトルを示す。40℃でのマイクロ波照射を用いたPNGアーゼFでのRNアーゼBの脱グリコシル化の質量分析を、5分間(図6b)、10分間(図6c)、および60分間(図6d)行った。マイクロ波照射を行わずに、37℃の水浴中で5分間(図7a)、1時間(図7b)、および一晩(図7c)の時点での同一のRNアーゼBの脱グリコシル化実験を行った。
【0067】
マイクロ波中で1時間後にRNアーゼBの完全な脱グリコシル化が認められる(図6d)。水浴中での同一時点(図7b)と比較して、マイクロ波エネルギーの存在下で行った場合にさらに迅速に脱グリコシル化が起こった。実際、37℃の水浴中での一晩のインキュベーション後でさえ、完全な脱グリコシル化は依然として認められない(図7c)。
【0068】
マイクロ波デバイスを使用して本発明の方法を行う場合、その効率を最大にするための有用な技術は、単一の比較的大きな共鳴器にて個別のコンテナ(「容器」)中で複数の脱グリコシル化反応を同時に行うことである。コンテナは、典型的には、適切なプラスチック、ガラス、またはセラミックなどのマイクロ波透過材料でできている。一般に、2つまたはそれを超える複数の、時折50個ものコンテナを、研究用マイクロ波オーブンの空洞部に入れ、マイクロ波で照射する。典型的な環境下で、容器の1つを、圧力、温度、色の変化、または単一容器中の反応の進行を測定するか示すいくつかの他のパラメーターをモニタリングする。残りのモニタリングしていない容器は、モニタリングした容器と同一の挙動をしたと見なすことができる。
標識タンパク質
本発明のタンパク質を、システインチオールまたはリジンアミノなどの反応性官能基を介してタンパク質に共有結合することができる任意の標識部分と結合することができる(Singh et al(2002)Anal.Biochem.304:147−15;Harlow E.and Lane,D.(1999)in Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Lundblad R.L.(1991)in Chemical Reagents for Protein Modification,2nd ed.CRC Press,Boca Raton,FL)。結合した標識は、(i)検出可能なシグナルを提供するか、(ii)第1または第2の標識によって得られる検出可能なシグナルを修飾するための第2の標識と相互作用し、例えば、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)が得られるか、(iii)抗原またはリガンドとの相互作用を安定化するか結合親和性を増加させるか、(iv)電荷、疎水性、形状、または他の物理的パラメーターによって移動度(例えば、電気泳動移動度または細胞透過性)に影響を及ぼすか、(v)リガンド親和性、抗体/抗原結合、またはイオン結合型錯化を調整するための捕捉部分が得られるように機能することができる。
【0069】
診断に適用するために、タンパク質を、典型的には、検出可能な部分で標識する。一般に以下のカテゴリーに分類することができる多数の標識が利用可能である。
【0070】
(a)放射性同位体(35S、14C、125I、3H、および131Iなど)。Current Protocols in Immunology,Volumes 1 and 2,Coligen et al.,Ed.Wiley−Interscience,New York,New York,Pubs.(1991)に記載の技術を使用して、タンパク質を、放射性同位体を含む試薬で標識することができるか、試薬が抗体の操作されたシステインチオールと反応性を示す場合に放射性同位体を錯化することができる試薬で標識することができる。
【0071】
(b)蛍光標識(希土類キレート(ユウロピウムキレート)またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリトリン、テキサスレッドを利用可能である。Current Protocols in Immunology(上記)に開示の技術および例えば、Molecular Probes(Eugene,OR)の蛍光標識試薬を使用して、蛍光標識をポリペプチド変異型に結合することができる。
【0072】
(c)キレート試薬(金属イオンと錯化することができるDOTAまたはクラウンエーテルなど)(米国特許出願公開第2002/0006379号明細書)。
【0073】
(d)種々の酵素−基質標識を利用可能であるか、開示されている(米国特許第4275149号明細書)。酵素は、一般に、種々の技術を使用して測定することができる呈色基質の化学変化を触媒する。例えば、酵素は、分光光度法で測定することができる基質の呈色を触媒することができる。あるいは、酵素は、基質の蛍光または化学発光を変化させることができる。蛍光の変化を定量する技術は、上に記載されている。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起されるようになり、それによって発光し、これを、測定することができるか(例えば、化学照度計を使用)、エネルギーを蛍光アクセプターに供与することができる。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼなど;米国特許第4737456号明細書)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ(西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)など)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(ウリカーゼおよびキサンテンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、およびミクロペルオキシダーゼ(microperoxidase)などが含まれる。酵素の抗体への結合技術は、O’Sullivan et al(1981)"Methods for the Preparation of Enzyme−Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay," in Methods in Enzym.(ed J.Langone & H.Van Vunakis),Academic Press,New York,73:147−166に記載されている。
【0074】
酵素−基質組み合わせの例には、例えば、以下が含まれる:
(i)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と基質としての水素ペルオキシダーゼとの組み合わせ(水素ペルオキシダーゼは、色素前駆体(例えば、オルソフェニレンジアミン(OPD)または3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する)
(ii)アルカリホスファターゼ(AP)と呈色基質としてのパラ−ニトロフェニルホスファートとの組み合わせ、および
(iii)β−D−ガラクトシダーゼ(β−D−Gal)と呈色基質(例えば、p−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシダーゼとの組み合わせ。
【0075】
当業者は、多数の他の酵素−基質組み合わせを利用可能である。これらの一般的概説については、米国特許第4275149号明細書および米国特許第4318980号明細書を参照のこと。
【0076】
しばしば、標識は、タンパク質と非直接的に結合する。タンパク質をビオチンと結合することができ、且つ上記の標識の部類のいずれかをアビジンと結合することができるか、その逆を行うことができる。ビオチンは、アビジンと選択的に結合することができるので、この間接的様式で、標識をタンパク質と結合させることができる。あるいは、標識をタンパク質と間接的に結合させるために、タンパク質を、小ハプテン(例えば、ジゴキシン)と結合させ、上記の異なる標識型の1つを抗ハプテンタンパク質(例えば、抗ジゴキシン抗体)と結合させる。したがって、標識をタンパク質と間接的に結合させることができる(Hermanson,G.(1996)in Bioconjugate Techniques Academic Press,San Diego)。
【0077】
タンパク質およびペプチドの標識方法は、周知である。Haugland(2003)in Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,Molecular Probes,Inc.;Brinkley(1992)Bioconjugate Chem.3:2;Garman(1997)in Non−Radioactive Labelling:A Practical Approach,Academic Press,London;Means(1990)Bioconjugate Chem.1:2;Glazer et al(1975)in Chemical Modification of Proteins.Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology(T.S.Work and E.Work,Eds.)American Elsevier Publishing Co.,New York;Lundblad,R.L.and Noyes,C.M.(1984)in Chemical Reagents for Protein Modification,Vols.I and II,CRC Press,New York;Pfleiderer,G.(1985)“Chemical Modification of Proteins” in Modern Methods in Protein Chemistry,H.Tschesche,Ed.,Walter DeGryter,Berlin and New York;および Wong(1991)in Chemistry of Protein Conjugation and Cross−linking,CRC Press,Boca Raton,Fla.を参照のこと。
【0078】
十分に接近した2つの部分(蛍光レポーターおよびクエンチャー)で標識したタンパク質は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を受ける。レポーター基は、典型的には、一定の波長の光によって励起され、最大輝度で発光する適切なストークスシフトでエネルギーがアクセプター(すなわち、クエンチャー基)に移行する。蛍光色素には、広い芳香族性を有する分子(フルオレセインおよびローダミンなど)およびその誘導体が含まれる。蛍光レポーターを、インタクトなタンパク質中のクエンチャー部分によって部分的または有意に消光することができる。ペプチダーゼまたはプロテアーゼによるタンパク質切断の際に、蛍光の検出可能な増加を測定することができる(Knight,C.(1995)"Fluorimetric Assays of Proteolytic Enzymes",in Methods in Enzymology,Academic Press,248:18−34)。
【0079】
標識試薬は、典型的には、(i)抗体の反応性官能基(例えば、システインチオール)と直接反応して標識タンパク質を形成することができるか、(ii)リンカー試薬と反応してリンカー標識中間体を形成することができるか、(iii)リンカー抗体と反応して標識抗体を形成することができる反応性官能基(reactive functionality)を有する。標識試薬の反応官能性には、マレイミド、ハロアセチル、ヨードアセトアミドスクシニミジルエステル(例えば、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド))、イソチオシアナート、スルホニルクロリド、2,6−ジクロロトリアジニル、ペンタフルオロフェニルエステル、およびホスホルアミダイトが含まれるが、他の官能基も使用することができる。
【0080】
例示的反応性官能基は、検出可能な標識(例えば、ビオチンまたは蛍光色素)のカルボキシル置換基のN−ヒドロキシスクシニミジルエステル(NHS)である。標識のNHSエステルを、予め形成し、単離し、精製し、そして/または特徴づけることができるか、in situで形成し、タンパク質の求核基と反応させることができる。典型的には、カルボジイミド試薬(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド)またはウロニウム試薬(例えば、TSTU(O−(N−スクシニミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート、HBTU(O−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)、またはHATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート))、アクチベーター(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)およびN−ヒドロキシスクシンイミドなど)のいくつかの組み合わせと反応させて、標識のNHSエステルを得ることによって標識のカルボキシル形成を活性化する。いくつかの場合、標識およびタンパク質を、標識のin situ活性化および抗体との反応によってカップリングして、標識−抗体結合体を1工程で形成することができる。他の活性化試薬およびカップリング試薬には、TBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾ−1−イル)−1−1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)、TFFH(N,N’,N’’,N’’’−テトラメチルウロニウム2−フルオロ−ヘキサフルオロホスファート)、PyBOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスファート、EEDQ(2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロ−キノリン)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド);DIPCDI(ジイソプロピルカルボジイミド)、MSNT(1−(メシチレン−2−スルホニル)−3−ニトロ−1H−1,2,4−トリアゾール、およびアリールスルホニルハライド(例えば、トイイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド)が含まれる。
【実施例】
【0081】
(実施例)
本発明を例証するために、以下の実施例を含む。しかし、これらの実施例は本発明を制限せず、本発明の実施方法を提案することのみを意味すると理解すべきである。当業者は、記載の例示的方法、プロトコール、プロセス、試薬、および装置を、本発明の範囲内と見なされる本発明の他の方法を実施するために容易に適合させることができると認識するであろう。
【0082】
(実施例1)DOTA結合
DOTA−NHS−エステルを、ジメチルアセトアミド(DMA,FlukaChemika,Switzerland)に溶解し、濃度60〜100mg/mLに調製した。典型的な手順は、MAbの2mM EDTA(pH7.2)を含むPBSへの緩衝液交換を含んでいた。反応を、MAb1分子に対してDOTA4分子の比(1:4)で反応を行い、Thermomixerプレート(Eppendorf,Westbury,NY)で穏やかに撹拌しながら25℃で反応させた。
【0083】
(実施例2)N結合脱グリコシル化
個別の実験では、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ、Genentech,South SanFrancisco,CA)、アバスチン(登録商標)(ベバシズマブ、Genentech,South San Francisco,CA)、RNアーゼ、およびDOTA標識抗体(10μg)を、それぞれ、50mMジチオトレイトール−DTT(Promega,Madison,WI)を含む0.1M Tris(MQ water,Millipore Corp,Billerica,MA)中で最終体積20μLに希釈した。室温で30分間還元させた。1単位のPNGアーゼF(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)をサンプルに添加し、種々の温度および時間条件下でDiscover Microwave装置(CEM Corp.,Newark,CA)を使用してマイクロ波照射に曝露するか、コントロールについては水浴中でインキュベートした非マイクロ波支援実験を行った。1〜20Wのマイクロ波電力設定を使用した37〜60℃の範囲の温度で2〜60分の間隔で測定点を取った。全ての場合、5%TFA(2μL)で反応を直ちに停止させ、質量分析によって直接分析するか、分析するまで冷蔵した。
【0084】
(実施例3)質量分析
インタクトな質量測定を、Q−TOF質量分析計(Micromass,Manchester,UK)またはTSQ Quantum三連四重極質量分析計(Thermo Electron,San Jose,CA)を使用して行った。三連四重極MSによる分析のために、サンプルを、0.1%TFA(溶媒A)で2倍希釈し、10μL(約25pmol)を、オートサンプラーによってPLRP−S 300A逆相微小孔(micro−bore)カラム(50×2.1mm,Polymer Laboratories,Shropshire,UK)にロードした。化合物を、0〜60%のB(溶媒A:0.05%TFAの水溶液および溶媒B:0.05%TFAのアセトニトリル溶液)の12分間の勾配で分離し、エレクトロスプレー源を使用してイオン化した。Xcalibur(商標)ソフトウェア(Thermo Electron Corp.,Waltham MA)を使用してデータを収集し、ProMassを使用してデコンボリューションを行った。あるいは、5μL(25pmol)のサンプルを、0.1%ギ酸で40μLに希釈し、脱塩カラムを通過させた。タンパク質を溶離し、エレクトロスプレーイオン化を使用してイオン化し、その後にイオンをQ−TOF質量分析計を使用してフルMSモードで分析した。データを、MassLynx(商標)ソフトウェア(Waters Corp.,Milford MA)を使用したデコンボリューション後に解釈し、脱グリコシル化レベルを評価した。
【0085】
上記説明は、本発明の原理のみを説明していると見なされる。さらに、多数の修正形態および変更形態が当業者に明らかであるので、本発明を上記の構造および過程に厳密に制限することを望んでいない。したがって、全ての適切な修正形態および等価物は、以下の特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲内に含まれると見なすことができる。
【0086】
用語「comprise」、「comprising」、「include」、「including」、および「includes」は、本明細書および以下の特許請求の範囲で使用する場合、記載の特徴、整数、成分、または工程の存在を特定することを意図するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、成分、工程、または群の存在または付加を排除しない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1a】図1aは、インタクトな非還元グリコシル化ベバシズマブ(アバスチン(登録商標),Genentech,South San Francisco CA)のデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図1b】図1bは、37℃で5分間のマイクロ波照射後のインタクトな非還元グリコシル化ベバシズマブおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図1c】図1cは、37℃で10分間のマイクロ波照射後のインタクトな非還元グリコシル化ベバシズマブおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図2a】図2aは、マイクロ波照射を行わずに37℃の水浴中で5分後のインタクトな非還元グリコシル化ベバシズマブおよびPNGアーゼF(酵素:基質/1:10)のデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図2b】図2bは、マイクロ波照射を行わずに37℃の水浴中で10分後のインタクトな非還元グリコシル化ベバシズマブおよびPNGアーゼF(酵素:基質/1:10)のデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図2c】図2cは、マイクロ波照射を行わずに37℃の水浴中で60分後のインタクトな非還元グリコシル化ベバシズマブおよびPNGアーゼF(酵素:基質/1:10)のデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図3a】図3aは、DTTでの還元後のベバシズマブ重鎖のデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図3b】図3bは、37℃で5分間のマイクロ波照射後の還元ベバシズマブ重鎖およびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図3c】図3cは、37℃で10分間のマイクロ波照射後の還元ベバシズマブ重鎖およびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図4a】図4aは、マイクロ波照射を行わずに37℃の水浴中で5分後の還元ベバシズマブ重鎖およびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図4b】図4bは、マイクロ波照射を行わずに37℃の水浴中で10分後の還元ベバシズマブ重鎖およびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図4c】図4cは、マイクロ波照射を行わずに37℃の水浴中で60分後の還元ベバシズマブ重鎖およびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図5a】図5aは、還元グリコシル化抗CD4のデコンボリューションした質量スペクトルの重鎖質量領域を示す。
【図5b】図5bは、37℃で60分間のマイクロ波照射後の還元抗CD4−DOTAおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルの重鎖質量領域を示す。
【図5c】図5cは、マイクロ波照射を行わずに37℃の水浴中で一晩後の還元抗CD4−DOTAおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルの重鎖質量領域を示す。
【図6a】図6aは、還元RNアーゼBのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図6b】図6bは、40℃で5分間のマイクロ波照射後の還元RNアーゼBおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図6c】図6cは、40℃で10分間のマイクロ波照射後の還元RNアーゼBおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図6d】図6dは、40℃で60分間のマイクロ波照射後の還元RNアーゼBおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図7a】図7aは、マイクロ波照射を行わずに40℃の水浴中で5分後の還元RNアーゼBおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図7b】図7bは、マイクロ波照射を行わずに40℃の水浴中で1時間後の還元RNアーゼBおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図7c】図7cは、マイクロ波照射を行わずに40℃の水浴中で一晩後の還元RNアーゼBおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図8a】図8aは、還元トラスツズマブのデコンボリューションした質量スペクトルの軽鎖質量領域を示す。
【図8b】図8bは、還元トラスツズマブのデコンボリューションした質量スペクトルの重鎖質量領域を示す。
【図9a】図9aは、45℃で10分間のマイクロ波照射後の還元トラスツズマブおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルの軽鎖質量領域を示す。
【図9b】図9bは、45℃で10分間のマイクロ波照射後の還元トラスツズマブおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルの重鎖質量領域を示す。
【技術分野】
【0001】
米国特許法施行規則§1.53(b)のもとで出願された本願は、2006年5月2日に出願された米国仮特許出願第60/797,334号の米国特許法§119(e)のもとでの利益を主張し、米国仮特許出願第60/797,334号はその全体が参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、穏やかなマイクロ波条件下でタンパク質から炭水化物基を除去する方法に関する。本方法により、質量分析による正確な分子量の決定および分析が容易になる。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
真核生物プロテオームの膨大な微小不均一性は、いくつかの遺伝的事象およびプロテオーム事象(ゲノムスプライスバリエーション、細胞内プロセシング、および翻訳後修飾(PTM)の動態過程が含まれる)に起因する。グリコシル化は、最も一般的であるが複雑な翻訳後修飾の1つとして存在する。糖タンパク質(すなわち、グリコシル化タンパク質)は、広範な生物学的機能(受容体結合、細胞シグナル伝達、免疫認識、炎症、および病原性など)に関与する。グリコシル化および脱グリコシル化過程は、インビボにて、重要なプロテオーム機能(タンパク質折り畳み、タンパク質および細胞の輸送、タンパク質安定化、プロテアーゼ保護、および四次構造など)で重要な役割を果たす(非特許文献1)。グリコシル化はまたは、受容体結合および炎症に計り知れない影響を与え得る。実際、多くの疾患の発症または回復は、グリコシル化部位の存在、多様性、または欠損に関与している(例えば、HIV−2(Shi et al(2005)J.Gen.Virol.86:3385−96)、クロイツフェルト・ヤコブ病−CJD(Silveyra,et al(2005)J.Neurochem.online)、関節リウマチ(Gindzienska−Sieskiewicz et al(2005)Postepy Hig.Med.Dosw.59:485−9)、および結核(Romain et al(1999)Infect.Immun.67:5567−72)。
【0004】
グリコシル化部位は、N結合(アスパラギンのアミド窒素を介する)またはO結合(セリン、トレオニン、時折、ヒドロキシリジンまたはヒドロキシプロリンのヒドロキシル基を介する)のいずれかに分類される。炭水化物構造の多様な性質が糖タンパク質の特徴づけを困難にしている。グリコシル化は複雑且つ不均一であるので、グライコームの解読は極めて困難な作業であり得る。グリコシル化部位の特定は、多数の方法(レクチン親和性樹脂を使用したグリコール富化(Yang et al(2005)Proteomics.5:3353−66)、β脱離およびその後のO結合糖残基を含むペプチドのフラッグまたは親和性精製のためのタグまたは親和性基のいずれかでのマイケル付加(Rademaker et al(1998)Anal.Biochem.257:149−60)、ケトン−ビオチンタグでO−GlcNAcタンパク質を選択的に標識するためのガラクトーストランスフェラーゼ酵素の操作およびその後の親和性選択による化学酵素特性の利用(Khidekel et al(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101:13132−7)、および脱グリコシル化前後のタンパク質の酵素切断産物のクロマトグラフィマッピング/プロファイリングの比較およびその後の分光分析が含まれる)で行われている。
【0005】
クロマトグラフィマッピングプロトコールおよび他の分析シナリオのために、タンパク質およびペプチドの両方の完全な脱グリコシル化が望ましいことが多い。例えば、脱グリコシル化により、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)によるタンパク質分離時のスミアーを減少させることができるか、質量分析時のイオン化およびスペクトルの解釈が容易になる。これは、特に、PTMの豊富さによる不均一性によって食い違い得るタンパク質のインタクトな分子量を調査する場合に有用であり得る。例えば、真核生物細胞株中で産生された天然に発現した抗体および組換え抗体の大部分は、N結合グリコシル化鎖を有する。治療抗体の場合、脱グリコシル化は、C末端リジンの存在などの修飾の特徴づけ、または、標識または薬物結合モノクローナル抗体(A.M.Wu & P.D.Senter.(2005)Nature Biotechnology 23:1137−46)については、免疫グロブリンにカップリングした小分子の数をモニタリングするためにしばしば必要であり得る。これらおよび多数の他の理由のために、糖タンパク質をグリコシル化することがしばしば有利である。
【0006】
O結合糖を脱グリコシル化するための2つの従来の方法は、以下である:(i)最も典型的には、その後の安定化のためにチオールを使用したマイケル付加へと続くβ離脱、および(ii)酵素シアリダーゼでのタンパク質の処理。多数のタンパク質は、O結合糖およびN結合糖の両方の混合物で不均一にグリコシル化されている。
【0007】
過去10年の間に、いくつかの技術によって、糖タンパク質のその各脱グリコシル化酵素/化学物質との従来の一晩のインキュベーションの改良が記載されている。これらには、グリコール−タンパク質から全ての糖残基を切断するために無水トリフルオロメタンスルホン酸−TFMSAを使用した化学的手順の至適化(非特許文献2)、目的のグリコシル化タンパク質をPVDF固定化し、その後に脱グリコシル化酵素とインキュベートするストラテジー(非特許文献3)、SELDI疎水性および親水性チップテクノロジーを使用したオンチップ脱グリコシル化(非特許文献4)、酵素に好都合な界面活性剤の存在下でのPNGアーゼFとの糖タンパク質のインキュベーション(非特許文献5)、セルロース上の容易な固定のためのハイブリッド脱グリコシル化酵素の操作(非特許文献6)が含まれる。
【0008】
溶液中または膜固定化脱グリコシル化技術に加えて、ゲル中脱グリコシル化が記載されている。これは、150KDaまでのO−グリコシル化タンパク質を脱グリコシル化し、分析のために抽出することができる。フェチュインおよびRNアーゼBなどの標準的な糖タンパク質の完全な脱グリコシル化には、2時間かかる(Kilz et al(2002)Journal of Mass spectrometry 37:331−335)。従来のプロトコール(すなわち、水浴中での対流または伝導加熱(conduction heating))を使用したPNGアーゼFを使用した脱グリコシル化プロトコールには、典型的には、完了するのに24時間必要である。多くの研究所(例えば、市販の高処理設定)では、短期間での完全な脱グリコシル化ストラテジーは極めて有利であろう。
【0009】
多数の化学反応型のために、マイクロ波エネルギーは、有用な加熱方法である(Shipe et al(2005)Drug Discovery Today:Technologies 2(2):155−161;"Scale−up of microwave−assisted organic synthesis " Roberts,Brett A.;Strauss,Christopher R.pp.237−271,Editor(s):Tierney,Jason P.;Lindstroem,Pelle.in Microwave Assisted Organic Synthesis(2005),Blackwell Publishing Ltd.,Oxford,UK;Kappe,C.Oliver(2004)Angewandte Chemie,International Edition,43(46):6250−6284;Das,S.(2004)Synlett(6):915−932;Mavandadi,F.,Lidstroem,P.(2004)Current Topics in Medicinal Chemistry 4(7):773 −792)。マイクロ波は、一般に、約1ギガHzと1テラHzとの間の電磁スペクトル内の周波数および約1mmと1mとの間の対応する波長を有するものに分類される。マイクロ波は、極性分子と十分に反応し、この分子を回転させる傾向がある。言い換えると、これは、マイクロ波の影響下で物質が加熱される傾向がある。多くの環境下で、マイクロ波照射はマイクロ波反応性の物質と迅速に相互作用し、それにより、非常に急速に温度が上昇するので、マイクロ波加熱は非常に有益である。他の加熱方法(伝導加熱または対流加熱が含まれる)は、一定の環境下で有利であるが、一般に、任意の所与の物質に対してより長い準備時間が必要である。
【0010】
類似の様式では、マイクロ波適用の停止により、それに迅速に対応してマイクロ波によって生じる分子移動が停止する。したがって、化学物質および組成物を加熱するためのマイクロ波照射の使用は、一定の化学的および物理的過程の開始、制御、および促進に有意な利点を付与することができる。マイクロ波照射テクノロジーは、プロテオミクス分野に導入されており、以下の従来の方法:アミノ酸のタンパク質分解(S.H.Chiou,& K.T.Wang.(1990)Current Research in protein chemistry,Academic Press Inc.)、トリプシン消化(Pramanik et al(2002)Protein Science.11:2676−2687;Lin et al(2005)Jour.Amer.Soc.Mass Spec.16:581−588)、およびマイクロ波酸支援加水分解(microwave acid−assisted hydrolysis(MAAH)(Zhong,et al(2004)Nature Biotechnology 22:1291−6;Zhong et al(2005).Jour.Amer.Soc.Mass Spec.16:471−81;Hua et al(2005)Proteomics(online)のより迅速な代替方法となっている。MAAHは、最近、トリフルオロ酢酸を使用した部分的酸加水分解を使用して糖タンパク質のオリゴサッカリド部分を特徴づけることが証明された(Lee et al(2005)Rapid Commun.Mass spectrum 19:1545−50;Lee et al(2005)Rapid Commun.Mass spectrum 19:2629−2635)。
【0011】
質量分析(MS)によるタンパク質分析の最近の利点は、フロントエンド気相イオン化および導入技術(エレクトロスプレーイオン化(ESI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI、特許文献1)、および表面増強レーザー脱離イオン化(SELDI、特許文献2)など)に起因し、装置の感度、分解能、質量の正確さ、バイオインフォマティクス、およびソフトウェアデータデコンボリューション(deconvolution)アルゴリズムが改良されている("Electrospray Ionization Mass Spectrometry:Fundamentals,Instrumentation,and Applications",Cole,R.B.,Ed.(1997)Wiley,New York;"Modern Protein Chemistry:Practical Aspects",Howard,G.C.and Brown,W.E.,Eds.(2002)CRC Press,Boca Raton,FL,p.71−102)。
【0012】
抗体療法は、癌、免疫学的障害、および血管原性障害(angiogenic disorder)の標的療法および標的診断のために確立された。抗体療法および抗体診断の目的は、特定の病変および障害を検出および/または治療することができるように高い特異性および親和性の抗体−抗原相互作用の組み合わせを活用することである。抗体を、単独で使用するか、検出標識、薬物動態修飾因子、放射性同位体、毒素、または薬物などの別の部分と結合(すなわち、負荷)させる。非結合薬物の全身投与によって正常細胞に対して許容不可能なレベルの毒性を生じ得るが腫瘍細胞を消失させようとする場合、癌治療における腫瘍細胞を死滅させるか阻害するための細胞毒性薬および細胞増殖抑制薬の局所送達のための抗体−薬物結合体(antibody−drug conjugates)(ADC)(すなわち、免疫結合体)の使用により(Syrigos and Epenetos(1999)Anticancer Research 19:605−614;Niculescu−Duvaz and Springer(1997)Adv.Drug Del.Rev.26:151−172;US 4975278)、理論上、薬物部分が腫瘍に標的送達され、細胞内蓄積される(Baldwin et al(1986)Lancet pp.(Mar.15,1986):603−05;Thorpe,(1985)"Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review," in Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications,A.Pinchera et al(eds),pp.475−506)。それにより、最小の毒性で最大の有効性が追求される。ADCは、モノクローナル抗体(MAb)の選択性ならびに薬物結合特性および薬物放出特性に注目してデザインおよび精緻化される。薬物(ダウノマイシン、ドキソルビシン、メトトレキサート、およびビンデシンが含まれる)に結合したポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の両方は、これらのストラテジーで有用であると報告されている(Rowland et al.,(1986)Cancer Immunol.Immunother.,21:183−87)。抗体−毒素結合体で使用される毒素には、細菌毒素(ジフテリア毒素など)、植物毒素(リシンなど)、小分子毒素(ゲルダナマイシン(Mandler et al(2000)Jour,of the Nat.Cancer Inst.92(19):1573−1581;Mandler et al(2000)Bioorganic & Med.Chem.Letters 10:1025−1028;Mandler et al(2002)Bioconjugate Chem.13:786−791)、マイタンシノイド(特許文献3;Liu et al.,(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:8618−8623)、およびカリチアマイシン(Lode et al(1998)Cancer Res.58:2928;Hinman et al(1993)Cancer Res.53:3336−3342)など)が含まれる。毒素および薬物は、機構(チューブリン結合、DNA結合、またはトポイソメラーゼ阻害が含まれる)によってその細胞傷害性および細胞静止作用を発揮することができる。いくつかの細胞傷害性薬剤は、大きな抗体またはタンパク質受容体リガンドに結合した場合に不活化するか活性が低くなる傾向がある。
【0013】
治療用として承認されているか開発中である上記の抗体−薬物結合体(ADC)は、抗体への薬物部分の共有結合過程がほとんど制御されず、得られた結合産物が不完全に特徴づけられる不均一な混合物である。さらに、薬物負荷(drug loading)(薬物/Ab比)は、組成物または処方物中のADC分子集団の統計的平均である。抗体−薬物結合組成物の不均一性のために、投与後に生物源から回収した薬物動態学的サンプルは評価が困難である。ELISAアッセイは、抗体−抗原結合の検出に制限される(DiJoseph et al(2004)Blood 103:1807−1814)。UV分光学により、一定の蛍光またはUV活性薬の一部または代謝産物の総吸光度を測定することができるが、遊離薬物と抗体−薬物結合体を区別できない。抗体および抗体結合体の特徴づけを容易にする方法は、治療開発に有用である。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0027216号明細書
【特許文献2】米国特許第6020208号明細書
【特許文献3】欧州特許第1391213号明細書
【非特許文献1】R.A.Dwek.(1998)Biological importance of glycosylation.Dev.Biol.Stand.96:43−7
【非特許文献2】T.S.Raju.& E.A.Davidson.(1994)Biochem.Mol.Biol.Int.34:943−54
【非特許文献3】Papac et al(1998)Glycobiology 8:445−454
【非特許文献4】Ge et al(2005)Anal.Chem 77:3644−3650
【非特許文献5】Yu et al(2005)Rapid communications in Mass Spectrometry 19:2331−2336
【非特許文献6】Kwan et al(2005)Protein Engineering,Design & Selection,497−501
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の概要)
本発明は、マイクロ波条件下にてグリコシル化タンパク質を酵素で処理し、それにより、脱グリコシル化タンパク質を形成する工程を含む、タンパク質の脱グリコシル化方法を提供する。
【0015】
一定の実施形態では、脱グリコシル化タンパク質を、脱塩媒体に適用し、溶離し、質量分析によって分析することができる。
【0016】
1つの態様では、本発明は、マイクロ波テクノロジーを使用して、タンパク質のN結合グリコシル化部位を迅速に除去する手順に関する。N結合糖残基を除去するためのN−グリコシダーゼF(PNGアーゼF)を使用して、一定範囲のタンパク質(抗体が含まれる)を約1時間未満で完全に脱グリコシル化する(Sandoval et al(2007)Intl.Jour.Mass Spec.(259(1−3):117−123)。
【0017】
本発明は、N結合タンパク質の迅速な脱グリコシル化方法を提供する。本発明は、マイクロ波条件下で約5分〜1時間で完全に脱グリコシル化し、60秒未満で部分的に脱グリコシル化する方法を含む。
【0018】
別の態様では、本発明は、糖部分を質量分析によって分析する、マイクロ波条件下でグリコシル化タンパク質から取り出された糖部分を分析する方法を含む。糖部分を、高pH陰イオン交換クロマトグラフィによって単離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(例示的実施形態の詳細な説明)
ここに本発明の一定の実施形態を詳細に言及し、その例を、添付の構造および式で説明する。本発明を列挙した実施形態と合わせて記載する一方で、本発明がその実施形態に制限されることを意図しないことが理解されるであろう。対照的に、本発明は、全ての変更形態、修正形態、等価物を対象とすることを意図し、これらは、特許請求の範囲に定義の本発明の範囲内に含まれ得る。当業者は、本明細書中に記載の方法および材料と類似するか等価な多数の方法および材料を認識し、これらを本発明で使用することができる。本発明は、記載の方法および材料に決して制限されない。1つまたは複数の引用された文献、特許、および類似の資料が本願(定義の用語、用語の用法、または記載の技術などが含まれるが、これらに限定されない)と異なるか矛盾する事象では、本発明に従う。
【0020】
(定義)
他で記載しない限り、本明細書中で使用する場合、以下の用語および句は、以下の意味を有することが意図される。
【0021】
用語「グライコーム」は、細胞中または生物中の炭水化物全体の集合体(collective identity)を意味する。
【0022】
用語「糖」、「グリカン」、「ポリサッカリド」、「オリゴサッカリド」、および「炭水化物」を、本明細書中で交換可能に使用する。炭水化物は、酸素、水素、および炭素原子を含む化合物である。炭水化物は、種々の鎖長のモノサッカリドからなり、一般化学式Cn(H2O)nを有するか、その誘導体である。
【0023】
用語「グリコシル化」は、タンパク質および脂質へのサッカリドの付加の過程または結果を意味する。この過程は、膜タンパク質および分泌タンパク質合成における4つの主な翻訳にともなう修飾工程および翻訳後修飾工程の1つであり、粗面小胞体中で合成されたタンパク質の大部分がグリコシル化を受ける。これは、酵素に管理された部位特異的過程であり、グリコシル化の非酵素的化学反応とは対照的である。N結合グリコシル化は、アスパラギン側鎖のアミド窒素で起こり、O結合グリコシル化はセリン側鎖およびトレオニン側鎖の水酸基の酸素で起こり得る。
【0024】
「マイクロ波」は、一般に、遠赤外と高周波との間(すなわち、約1mmと約30cmとの間)の波長(λ)(対応周波数は約1〜100ギガヘルツ(GHz)の範囲)を有する電子スペクトルの一部を説明するために使用される。マイクロ波形態のエネルギーを、マイクロ波照射のビームライン中に存在する物質に移行することができる。双極分子が回転して双極分子自体が変動する照射の電場成分と整列する場合またはイオンが同一の現象によって行き来して発熱する場合にエネルギーの吸収が起こる(Mavandadi,F.,Lidstroem,P.(2004)Current Topics in Medicinal Chemistry 4(7):773−792)。所与の反応混合物による発熱量は、その誘電特性、体積、形状、濃度、粘度、および温度の複合関数である(Galema,S.A.(1997)Chem.Soc.Rev.26:233−238)。マイクロ波リアクターでは、マイクロ波をマグネトロンによって発生させ、導波管を介して反応室の空洞に入れる。研究用の市販のマイクロ波リアクターを利用可能であり、変動可能且つ正確に出力、時間、および温度を調節して種々の混合物を確実に加熱することができる。
【0025】
本明細書中の用語「抗体」は、最も広い意味で使用し、具体的には、所望の生物活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および抗体フラグメントを対象とする。抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、または他の種由来の抗体であり得る。
【0026】
抗体は、特定の抗体を認識して結合することができる免疫系によって生成されるタンパク質である(Janeway,et al(2001)"Immunobiology",5th Ed.,Garland Publishing,New York)。標的抗原は、一般に、複数の抗体上のCDRによって認識されるエピトープとも呼ばれる多数の結合部位を有する。異なるエピトープに特異的に結合する各抗体は、異なる構造を有する。したがって、1つの抗原は、1つを超える対応する抗体を有することができる。
【0027】
本明細書中で使用する場合、用語「抗体」はまた、全長免疫グロブリン分子または全長免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分をいう(すなわち、目的の標的の抗原またはその一部に免疫特異的に結合する抗原結合部位を含む分子であり、かかる標的には、自己免疫疾患に関連する自己免疫抗体を産生する癌細胞が含まれるが、これらに限定されない)。本明細書中に開示される免疫グロブリンは、免疫グロブリン分子の任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、およびIgA)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)、またはサブクラスに由来し得る。免疫グロブリンは、任意の種に由来し得る。しかし、1つの態様では、免疫グロブリンは、ヒト、マウス、またはウサギに由来し得る。
【0028】
「抗体フラグメント」は、全長抗体の一部、一般に、その抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント、二特異性抗体、線状抗体(linear antibodies)、Fab発現ライブラリーによって産生されたフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、CDR(相補性決定領域)、ECD(細胞外ドメイン)、癌細胞抗原、ウイルス抗原、または微生物抗原に免疫特異的に結合する上記のいずれかのエピトープ結合フラグメント、単鎖抗体分子、ならびに抗体フラグメントから形成した多重特異性抗体が含まれる。
【0029】
本明細書中の「インタクトな抗体」は、VLおよびVHドメインならびに完全な軽鎖および重鎖の定常領域を含む抗体である。
【0030】
本明細書中で使用する場合、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均一な抗体集団から得た抗体をいう。すなわち、集団を含む各抗体は、少量で存在し得る可能性のある天然に存在する変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、特異性が高く、単一の抗原部位に指向する。さらに、異なる決定基(エピトープ)に指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に指向する。その特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体によって夾雑することなく合成することができるという点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法によって抗体が産生される必要があると解釈されるべきではない。例えば、本発明で使用されるモノクローナル抗体を、Kohler et al(1975)Nature 256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製することができるか、組換えDNA法によって作製することができる(米国特許第4816567号)。「モノクローナル抗体」を、例えば、Clackson et al(1991)Nature,352:624−628;Marks et al(1991)J.Mol Biol.,222:581−597に記載の技術を使用してファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
【0031】
本明細書中のモノクローナル抗体には、具体的には、重鎖および/または軽鎖の一部が特定の種に由来するか特定の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるか相同する一方で、残りの鎖が別の種に由来するか別の抗体クラスまたはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるか相同する「キメラ」抗体およびかかる抗体のフラグメント(所望の生物活性を示す限り)が含まれる(米国特許第4816567号およびMorrison et al(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851−6855)。本明細書中の目的のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、類人猿など)由来の可変ドメイン抗体結合配列およびヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体が含まれる。
【0032】
「抗体フラグメント」は、インタクトな抗体の一部(例えば、その抗原結合領域または可変領域を含む)を含む。抗体フラグメントの例には、Fab、Fab’、F(ab’)2、およびFvフラグメント、二特異性抗体、線状抗体、単鎖抗体分子、ならびに抗体フラグメントから形成した多重特異性抗体が含まれる。
【0033】
「インタクトな」抗体は、抗原結合可変領域、軽鎖定常ドメイン(CL)、重鎖定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を含む抗体である。定常ドメインは、未変性配列定常ドメイン(例えば、ヒト未変性配列定常ドメイン)またはそのアミノ酸配列変異型であり得る。
【0034】
インタクトな抗体は、抗体のFc領域(未変性配列Fc領域またはアミノ酸変異Fc領域)に起因する生物活性をいう1つまたは複数の「エフェクター機能」を有することができる。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合、補体依存性細胞傷害性、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方制御などが含まれる。
【0035】
その重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、インタクトな抗体を異なる「クラス」に割り当てることができる。インタクトな抗体には5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMが存在し、これらのうちのいくつかを、「サブクラス」(アイソタイプ)(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、およびIgA2)にさらに分類することができる。抗体の異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインを、それぞれ、α、δ、ε、γ、およびμと呼ぶ。免疫グロブリンの異なるクラスのサブユニット構造および三次元立体配置は周知である。
【0036】
用語「アミノ酸配列変異型(variant)」は、未変性配列のポリペプチドといくらか異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドをいう。通常、アミノ酸配列変異型は、未変性抗体の少なくとも1つの受容体ドメインまたは未変性受容体の少なくとも1つのリガンド結合ドメインと少なくとも70%の配列が同一であり、好ましくは、かかる受容体またはリガンド結合ドメインと少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%の配列が相同である。アミノ酸配列変異型は、未変性アミノ酸配列のアミノ酸配列内の一定の位置に置換、欠失、および/または挿入を含む。アミノ酸を、従来の名称(一文字表記および三文字表記)で示す。
【0037】
「配列同一性」は、必要に応じて、最大の配列同一率を達成するために配列を整列させ、ギャップを導入したのちに同一であるアミノ酸配列変異型中の残基の比率と定義する。アラインメントの方法およびコンピュータプログラムは、当該分野で周知である。1つのかかるコンピュータプログラムは、1991年12月10日に米国著作権局(Washington,DC20559)にユーザー文書と共に申請されたGenentech,Inc.によって記された「Align2」である。
【0038】
有用なモノクローナル抗体は、特定の抗原決定基(例えば、癌細胞抗原、ウイルス抗原、微生物抗原、タンパク質、ペプチド、炭水化物、化学物質、核酸、またはそのフラグメント)に対する均一な抗体集団である。目的の抗原に対するモノクローナル抗体(MAb)を、培養物中の連続継代細胞系によって抗体分子が産生される当該分野で公知の任意の技術の使用によって調製することができる。これらには、Kohler and Milstein(1975)Nature 256:495−497によって最初に記載されたハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al(1983)Immunology Today 4:72)、およびEBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al(1985)in Monoclonal Antiboies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77−96)が含まれるが、これらに限定されない。かかる抗体は、任意の免疫グロブリンクラス(IgG、IgM、IgE、IgA、およびIgD)およびその任意のサブクラスに由来し得る。本発明で使用されるMAbを産生するハイブリドーマを、インビトロまたはインビボで培養することができる。
【0039】
有用なモノクローナル抗体には、ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体、抗体フラグメント、またはキメラヒト−マウス(または他の種)モノクローナル抗体が含まれるが、これらに限定されない。ヒトモノクローナル抗体を、当該分野で公知の多数の技術のいずれかによって作製することができる(例えば、Teng et al(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:7308−7312;Kozbor et al(1983)Immunology Today 4:72−79;およびOlsson et al(1982)Methods in Enzymology 92:3−16)。
【0040】
抗体はまた、二重特異性抗体であり得る。二重特異性抗体は、一方のアーム中に第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖および他方のアーム中にハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性が得られる)を有することができる。二重特異性分子の半分のみの免疫グロブリン軽鎖の存在によって容易な分離方法が得られるので、この非対称構造により、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異性化合物の分離が容易になる(国際公開第94/04690号パンフレット;Suresh et al(1986)Methods in Enzymology,121:210;Rodrigues et al(1993)J.of Immunology 151:6954−6961;Carter et al(1992)Bio/Technology 10:163−167;Carter et al(1995)J.of Hematotherapy 4:463−470;Merchant et al(1998)Nature Biotechnology 16:677−681)。二重特異性抗体の作製方法は、当該分野で公知である(Milstein et al(1983)Nature 305:537−539;国際公開第93/08829号パンフレット;Traunecker et al(1991)EMBO J.10:3655−3659)。かかる技術を使用して、本明細書中に定義の疾患の治療または防止におけるADCとしての結合のために二重特異性抗体を調製することができる。
【0041】
異なるアプローチにしたがって、所望の結合特異性を有する抗体可変ドメイン(抗体−抗原組み合わせ部位)を、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合する。ヒンジ、CH2、およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインと融合することができる。第1の重鎖定常領域(CH1)は、融合物の少なくとも1つに存在する軽鎖結合に必要な部位を含むことができる。免疫グロブリン重鎖融合物および、必要に応じて、免疫グロブリン軽鎖をコードする配列を有する核酸を、個別の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に同時トランスフェクトした。これにより、構築で使用した異なる比の3つのポリペプチド鎖が最適に得られる実施形態で3つのポリペプチドフラグメントの相互の比率の調整が非常に柔軟になる。しかし、等しい比の少なくとも2つのポリペプチドの発現によって収率が高くなる場合、または比が特に有意でない場合に、1つの発現ベクター中の2つまたは3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を挿入することが可能である。
【0042】
ハイブリッドまたは二官能性抗体を、生物学的(すなわち、細胞融合技術)または特に架橋剤またはジスルフィド結合形成試薬を使用して化学的に誘導することができ、これらの抗体は、全抗体またはそのフラグメントを含むことができる(欧州特許第105360号明細書;国際公開第83/03679号パンフレット;欧州特許第217577号明細書)。
【0043】
抗体は、癌細胞抗原、ウイルス抗原、または微生物抗原に免疫特異的に結合する抗体または腫瘍細胞もしくはマトリックスに結合する他の抗体の機能的に活性なフラグメント、誘導体、またはアナログであり得る。これに関して、「機能的に活性な」は、フラグメント、誘導体、またはアナログが、フラグメント、誘導体、またはアナログが由来する抗体が認識する同一の抗原を認識する抗抗イディオタイプ抗体を誘発することができることを意味する。具体的には、例示的実施形態では、免疫グロブリン分子のイディオタイプの抗原性を、抗原を特異的に認識するCDRに対してC末端側にあるCDRフレームワークおよびCDR配列の欠失によって増強することができる。CDR配列が抗原に結合することを決定するために、CDR配列を含む合成ペプチドを、当該分野で公知の任意の結合アッセイ方法(例えば、BIAコアアッセイ)による抗原を使用した結合アッセイで使用することができる(例えば、Kabat et al,(1991)in Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,National Institute of Health,Bethesda,Md;Kabat et al(1980)J.of Immunology 125(3):961−969を参照のこと)。
【0044】
他の有用な抗体には、抗体のフラグメント(抗体分子のペプシン消化によって産生することができる、可変領域、軽鎖定常領域、および重鎖のCH1ドメインを含むF(ab’)2フラグメントおよびF(ab’)2フラグメントのジスルフィド結合の還元によって生成することができるFabフラグメントなどであるが、これに限定されない)が含まれる。他の有用な抗体は、抗体の重鎖および軽鎖二量体、またはその任意の最小フラグメント(Fvまたは単鎖抗体(SCA)など)(例えば、米国特許第4946778号明細書;Bird(1988)Science 242:423−42;Huston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883;およびWard et al(1989)Nature 334:544−54に記載)、または抗体と同一の特異性を有する任意の他の分子である。
【0045】
さらに、標準的な組換えDNA技術を使用して作製することができるヒトおよび非ヒト部分を含む組換え抗体(キメラおよびヒト化モノクローナル抗体など)は、有用な抗体である。キメラ抗体は、異なる部分が異なる動物種に由来する分子(マウスモノクローナルおよびヒト免疫グロブリン定常領域由来の可変領域を有する分子など)である(米国特許第4816567号明細書および米国特許第4816397号明細書(その全体が本明細書中で参考として援用される))。キメラおよびヒト化モノクローナル抗体を、当該分野で公知の組換えDNA技術(例えば、国際公開第87/02671号パンフレット;欧州特許第184,187号明細書;欧州特許第171496号明細書;欧州特許第173494号明細書;国際公開第86/01533号パンフレット;米国特許第4816567号明細書;欧州特許第12023号明細書;Better et al(1988)Science 240:1041−1043;Liu et al(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:3439−3443;Liu et al(1987)J.Immunol.139:3521−3526;Sun et al(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:214−218;Nishimura et al(1987)Cancer.Res.47:999−1005;Wood et al(1985)Nature 314:446−449;およびShaw et al(1988)J.Natl.Cancer Inst.80:1553−1559;Morrison(1985)Science 229:1202−1207;Oi et al(1986)BioTechniques 4:214;米国特許第5225539号明細書;Jones et al(1986)Nature 321:552−525;Verhoeyan et al(1988)Science 239:1534;およびBeidler et al(1988)J.Immunol.141:4053−4060(それぞれその全体が本明細書中で参考として援用される)に記載の方法を使用する)によって産生することができる。
【0046】
内因性免疫グロブリンの重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができないが、ヒトの重鎖および軽鎖遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを使用して、完全なヒト抗体を産生することができる。トランスジェニックマウスを、選択した抗原(例えば、本発明のポリペプチドの全部または一部)を使用して、通常の様式で免疫化する。従来のハイブリドーマテクノロジーを使用して、抗原に指向するモノクローナル抗体を得ることができる。トランスジェニックマウスが保有するヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化時に再編成され、その後にクラススイッチングおよび体細胞変異を受ける。したがって、かかる技術を使用して、治療的に有用なIgG、IgA、IgM、およびIgE抗体を産生することが可能である。このヒト抗体産生テクノロジーの概説については、Lonberg and Huszar(1995)Int.Rev.Immunol.13:65−93)を参照のこと。このヒト抗体およびヒトモノクローナル抗体の産生テクノロジーおよびかかる抗体の産生プロトコールの詳細な考察については、例えば、米国特許第5625126号明細書;同第5633425号明細書;同第5569825号明細書;同第5661016号明細書;同第5545806号明細書(それぞれその全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。他のヒト抗体は、例えば、Abgenix,Inc.(Freemont,CA)およびGenpharm(San Jose,CA)から購入することができる。
【0047】
選択されたエピトープを認識する完全なヒト抗体を、「ガイド選択(guided selection)」と呼ばれる技術を使用して生成することができる。このアプローチでは、選択した非ヒトモノクローナル抗体(例えば、マウス抗体)を使用して、同一のエピトープを認識する完全なヒト抗体の選択をガイドする(Jespers et al(1994)Biotechnology 12:899−903)。当該分野で公知の種々の技術(ファージディスプレイライブラリーが含まれる)を使用して、ヒト抗体を産生することもできる(Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.227:381(1991);Marks et al(1991)J.Mol.Biol.222:581)。
【0048】
抗体は、例えば、抗体が共有結合(例えば、ペプチド結合)を介して、この抗体でない別の抗体のアミノ酸配列(またはその一部(タンパク質の少なくとも10、20、または50アミノ酸部分など))のN末端またはC末端のいずれかに融合する抗体の融合タンパク質またはその機能的に活性なフラグメントであり得る。抗体またはそのフラグメントを、他のタンパク質の定常ドメインのN末端に共有結合することができる。
【0049】
抗体には、修飾される(すなわち、共有結合によって抗体のその抗原結合免疫特異性が保持される場合に限り、任意の分子型の共有結合によって)アナログおよび誘導体が含まれる。例えば、制限されないが、抗体の誘導体およびアナログには、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、公知の保護基/封鎖基による誘導体化、タンパク質分解性の切断、細胞抗体単位または他のタンパク質への結合などによってさらに修飾された誘導体およびアナログが含まれる。多数の化学修飾のうちのいずれかを、公知の技術(特異的な化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの存在下での代謝的合成などが含まれるが、これらに限定されない)によって行うことができる。さらに、アナログまたは誘導体は、1つまたは複数の非天然アミノ酸を含むことができる。
【0050】
用語「受容体」には、細胞表面上に固有に発現するか過剰発現し、循環ターゲティング因子(circulating targeting agent)(抗体−薬物結合体など)と相互作用可能な様式で細胞表面上に曝露される任意のペプチド、タンパク質、糖タンパク質(グリコシル化タンパク質)、ポリ炭水化物(polycarbohydrate)、または脂質が含まれる。受容体を保有する細胞には、腫瘍細胞が含まれる。
【0051】
用語「標識」は、抗体に共有結合することができ、(i)検出可能なシグナルを生成し、(ii)第1および第2の標識によって得られる検出可能なシグナル(例えば、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移))を修飾するために第2の標識と相互作用するか、(iii)抗原またはリガンドとの相互作用を安定化するか、結合親和性を増加させるか、(iv)電荷、疎水性、形状、または他の物理的パラメーターによって、移動度(例えば、電気泳動移動度)または細胞透過性に影響を及ぼすか、(v)リガンド親和性、抗体/抗原結合、またはイオン錯体化を調整するための捕捉部分を提供するように機能する任意の部分を意味する。
【0052】
「反応性官能基」には、オレフィン、アセチレン、アルコール、フェノール、エーテル、オキシド、ハライド、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、カーボネート、アミド、シアナート、イソシアナート、チオシアナート、イソチオシアナート、アミン、ヒドラジン、ヒドラゾン、ヒドラジド、ジアゾ、ジアゾニウム、ニトロ、ニトリル、メルカプタン(チオール)、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸、硫酸、アセタール、ケタール、アンヒドリド、スルフェート、スルフェン酸、イソニトリル、アミジン、イミド、イミダート、ニトロン、ヒドロキシルアミン、オキシム、ヒドロキサム酸、チオヒドロキサム酸、アレン、オルソエステル、スルファイト、エナミン、イナミン(ynamine)、尿素、プソイド尿素、セミカルバジド、カルボジイミド、カルバマート、イミン、アジド、アゾ化合物、アゾキシ化合物、およびニトロソ化合物が含まれるが、これらに限定されない。例示的な反応性官能基には、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、パラ−ニトロフェニル(PNP)カルボナート、ペンタフルオロフェニル(PFP)カルボナート、およびマレイミドが含まれる。Sandler and Karo,Eds.in Organic Functional Group Preparations,Academic Press,San Diego,1989を参照のこと。
【0053】
「リンカー」、「リンカー単位」、または「リンク」は、共有結合または抗体が薬物部分に共有結合する原子の鎖を含む化学的部分を意味する。種々の実施形態では、リンカーをLと指定する。リンカーには、アルキレン、アリールジイル、ヘテロアリールジイルなどの2価のラジカル、−(CR2)nO(CR2)n−(アルキルオキシ(例えば、ポリエチレンオキシ、PEG、ポリメチレンオキシの反復単位)およびアルキルアミノ(例えば、ポリエチレンアミノ、Jeffamine(商標))などの部分、ならびに二価酸のエステルおよびアミド(スクシナート、スクシンアミド、ジグリコラート、マロナート、およびカプロアミドが含まれる)が含まれる。
【0054】
例示的なリンカーの略語には、以下が含まれる:MC=6−マレイミドカプロイル、MP=マレイミドプロパノイル、val−cit=バリン−シトルリン(プロテアーゼ切断リンカー中のジペプチド部位)、ala−phe=アラニン−フェニルアラニン(プロテアーゼ切断リンカー中のジペプチド部位)、PAB=p−アミノベンジルオキシカルボニル(リンカーの「自壊的(self immolative)」部分)、SPP=N−スクシニミジル4−(2−ピリジルチオ)ペンタノアート、SMCC=N−スクシニミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1カルボキシラート、SIAB=N−スクシニミジル(4−ヨード−アセチル)ベンゾアート。
【0055】
Bocは、N−(t−ブトキシカルボニル)である。citは、シトルリン(2−アミノ−5−ウレイドペンタン酸)である。dapは、ドラプロインである。DCCは、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミドである。DCMは、ジクロロメタンである。DEAは、ジエチルアミンである。DEADは、ジエチルアゾジカルボキシラートである。DEPCは、ジエチルホスホリルシアニダートである。DIADは、ジイソプロピルアゾジカルボキシラートである。DIEAは、N,N−ジイソプロピルエチルアミンである。dilは、ドライソロイインである。DMAPは、4−ジメチルアミノピリジンである。DMEは、エチレングリコールジメチルエーテル(または1,2−ジメトキシエタン)である。DMFは、N,N−ジメチルホルムアミドである。DMSOは、ジメチルスルホキシドである。doeは、ドラフェニンである。dovは、N,N−ジメチルバリンである。DTNBは、5,5’−ジチオビス(2−ニトロ安息香酸)である。DTPAは、ジエチレントリアミン五酢酸である。DTTは、ジチオスレイトールである。EDCIは、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩である。EDTAは、エチレンジアミン五酢酸である。EEDQは、2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリンである。ES−MSは、エレクトロスプレー質量分析である。EtOAcは、酢酸エチルである。Fmocは、N−(9−フルオレニルメトキシカルボニル)である。glyは、グリシンである。HATUは、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートである。HOBtは、1−ヒドロキシベンゾトリアゾールである。HPLCは、高速液体クロマトグラフィである。ileは、イソロイシンである。lysは、リジンである。MeCN(CH3CN)は、アセトニトリルである。LC/MSは、液体クロマトグラフィおよび質量分析である。MAAHは、マイクロ波支援酸加水分解(microwave assisted acid hydrolysis)である。MeOHは、メタノールである。MQは、Milli−Q水である。Mtrは、4−アニシルジフェニルメチル(または4−メトキシトリチル)である。norは、(1S,2R)−(+)−ノルフェドリンである。PBSは、リン酸緩衝化生理食塩水(Ph7.4)である。PEGは、ポリエチレングリコールである。Phは、フェニルである。PNGアーゼFは、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカムから最初に単離されたN−グリコシダーゼFである。PNGアーゼAは、アーモンドから単離されたN−グリコシダーゼである。Pnpは、p−ニトロフェニルである。PTMは、翻訳後修飾である。PVDFは、ポリビニリデンフルオリドである。PyBropは、ブロモトリス−ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファートである。SDS−PAGEは、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動である。SECは、サイズ排除クロマトグラフィである。Suは、スクシンイミドである。TFAは、トリフルオロ酢酸である。TFMSAは、トリフルオロメタンスルホン酸である。TLCは、薄層クロマトグラフィである。TOFは、飛行時間である。UVは、紫外線である。valは、バリンである。
タンパク質のマイクロ波支援脱グリコシル化
タンパク質同定前の糖タンパク質(グリコシル化タンパク質)からの炭水化物基の除去が通常好ましい。研究者は、しばしば、さらなるC末端リジンの存在を評価し、修飾残基をマッピングし、薬物結合体での誘導体化レベルを評価する(すなわち、平均薬物抗体比を確立する)ための抗体の正確な分子量決定を容易にするために脱グリコシル化を必要とする。PNGアーゼFは、しばしば、ゲルまたは溶液中で糖タンパク質からN結合グリカンを放出するのに有効な酵素である。しかし、未変性糖タンパク質のタンパク質分解性消化は、しばしば、オリゴサッカリドによる立体障害のために不完全である。本発明の方法を、任意のPNGアーゼ型(未変性または組換えが含まれ、PNGアーゼFおよびPNGアーゼAが含まれる)を使用して行うことができる。本発明の方法を、基質グリコシル化タンパク質に対して触媒量のPNGアーゼを使用して行うことができる。PNGアーゼのグリコシル化タンパク質に対するモル比は、1:10〜1:1000であり得る。
【0056】
タンパク質の脱グリコシル化を、溶液中または電気泳動後のゲルスライス中で行うことができる。インゲル法(in−gel method)は、電気泳動後に目的のグリコシル化タンパク質を、ゲルスライスとして切り出し、脱色溶液中で脱色する工程を含む。抽出したタンパク質を有するゲルスライスを、典型的には、本発明の方法によって乾燥させ、PNGアーゼF溶液中に再懸濁し、マイクロ波照射した。グリカン含有上清を除去し、廃棄する。脱グリコシル化タンパク質を含むゲルスライスを、洗浄し、乾燥させた。脱グリコシル化タンパク質を、ゲルスライスまたは消化インゲル(例えば、トリプシン)から溶離する。
【0057】
本発明は、一般に、試薬(グリコシル化タンパク質および酵素が含まれる)とマイクロ波範囲で電磁波照射に熱的反応性を示す少なくとも1つの試薬との温度モニタリング混合物への十分なマイクロ波照射によって化学反応速度を増大させる一方で温度上昇を制御する方法を含む。
脱グリコシル化タンパク質の質量分析
質量分析は、質量(すなわち、分子量)によるタンパク質の迅速な同定のために広く使用されている。糖ペプチドは、しばしば、結合したグリカンの微小不均一性により、その脱グリコシル化形態と比較して、不十分にイオン化され、シグナルが抑制される。不完全に脱グリコシル化されたタンパク質のサンプルは、そのマススペクトルをデコンボリューションするには比較的より複雑である。測定したタンパク質の質量は平均質量であり、最大エンベロープは多数の各質量に及ぶ。例えば、質量10kDaのタンパク質は、約20質量単位幅である最大エンベロープを有するであろう(最も多いピークの1%を超える強度を有するピークを含む全同位体を計数(Anal.Chem.(1983)55:353−356))。質量分析の多くの型(例えば、MALDI−TOF)では、グリコシル化タンパク質のスペクトルは、より高い質量範囲の幅が広すぎて正確に検出するのに十分な分解能が得られないピークを示す(Evershed et al(2005)Rapid Commun.in Mass Spec.7(10):882−886)。ピーク幅は、同位体エンベロープおよび装置の分解能を反映する。他の質量分析技術(例えば、Q−TOF−MSまたは三連四重極分析)について、糖タンパク質由来の複雑なデータは、デコンボリューションして正確な質量を決定するのに困難であり得る。
【0058】
抗体のマイクロ波支援脱グリコシル化を、還元するか還元しないで37℃〜60℃の温度範囲および2〜60分の種々の測定点にて触媒量のPNGアーゼFの存在下で行った。脱グリコシル化後、インタクトなサンプル塊を、Q−TOFまたは三連四重極質量分析法によって分析し、複雑な高度に負荷されたデータを、MaxEnt(登録商標)(Waters Corp.)またはProMass Deconvolution(商標)(Novatia,LLC)プログラムをそれぞれ使用してデコンボリューションした。
【0059】
図1aは、ジチオスレイトール(DTT)での還元前のインタクトな抗体ベバシズマブ(アバスチン(登録商標),Genentech,Inc.,South San Francisco,CA)のスペクトルを示す。出発抗体ベバシズマブは、それぞれ1445Daの2つの炭水化物の付加物(各重鎖上に2100 G1−GalGlcNAc残基(149183Da[M+H+2890]+での主ピーク)を示す)を含む。図1bで、PNGアーゼFおよび37℃のマイクロ波照射で5分間の処理後、1つ(147767Da[M+H+1445]+)および2つ(146333Da[M+H]+)の糖の喪失が認められた。マイクロ波における10分後、脱グリコシル化が完了する(図1c)。ベバシズマブおよびPNGアーゼF反応物を含む同一混合物をマイクロ波照射を行わずに37℃で反応させた場合、マイクロ波照射による脱グリコシル化の促進が認められた(図2a〜c)。5分後(図2a)、10分後(図2b)、および60分後(図2c)の時点での混合物由来のアリコートのサンプルを、質量分析によって分析した。マイクロ波で10分後の脱グリコシル化(図1c)は、マイクロ波照射を行わない10分後の脱グリコシル化(図2b)よりもさらに進行し、事実上完了することが認められる。比較してみると、同温の水浴中での抗体の完全な脱グリコシル化は、1時間のインキュベーション後に認められた(図1g)。
【0060】
脱グリコシル化前に、抗体の重鎖および軽鎖を、システインジスルフィド残基の還元的切断によって分離することができる。ベバシズマブ(10μg、アバスチン(登録商標)、Genentech,South San Francisco,CA)を、脱グリコシル化前に50mM DTTを含む0.1M Tris−HClで処理した。
【0061】
マイクロ波における還元抗体重鎖の脱グリコシル化も、マイクロ波照射を行わない場合(すなわち、水浴中)よりもかなり速く起こった。図3aは、ベバシズマブ(51162Da[M+H+1445]+)のグリコシル化重鎖を示す。37℃でのマイクロ波照射下で、重鎖は、5分後に約75%が脱グリコシル化され(図3b)、10分後に完全に脱グリコシル化された(49721Da[M+H]+)(図3c)。対照的に、37℃でマイクロ波照射を用いない場合、重鎖は、5分後に不完全に脱グリコシル化され(図4a)、10分(図4b)〜60分(図4c)でのみそのうちに完全に脱グリコシル化される。
【0062】
抗体およびPNGアーゼFへのより高い温度(例えば、60℃)でのマイクロ波照射も好ましかった。急速な脱グリコシル化が起こったが(2分未満)、シグナルの有意な喪失が認められた。これはおそらく抗体および/または酵素の分解を示す。ベバシズマブおよびトラスツズマブの両方については、温度が高いほど、PNGアーゼF酵素活性の低下および全抗体ピーク強度の減少が得られる時点が頻繁になった。
【0063】
トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)、Genentech,South San Francisco,CA)を、本発明のマイクロ波条件によって脱グリコシル化した。トラスツズマブは、主に、重鎖のAsn297に糖部分を有するG0グリコフォームとして存在する。図8および9はまた、ベバシズマブと同一の実験を示し、この場合、トラスツズマブ抗体の軽鎖(図8aおよび9a)および重鎖(図8bおよび9b)を分析している。同一の所見が得られた(すなわち、60℃で同一の喪失を受け、37℃および45℃のより低い温度では、全タンパク質物質は、脱グリコシル化反応中に影響を受けなかった)。さらに、トラスツズマブは、5分間で部分的に脱グリコシル化され、10分後で完全に脱グリコシル化され得る。マイクロ波照射を行わない同一の条件下では、トラスツズマブの完全な脱グリコシル化には、約12〜24時間を必要とする。
【0064】
治療用の毒素結合抗体と共に、抗体を二官能性キレート剤(BCA)と結合し、それにより、放射線画像化によって動物モデル中の治療抗体の分布を追跡することができる。BCAは、生物学的ターゲティングベクター(この場合、抗体)にキレート化部分を結合して、生体分布決定のための放射性同位体を組み込む(Gansow O.A.(1991)Int.J.Appl.Instrum.Part B Nucl.Med.Biol.18:369−382)。DOTA(1,4,7,10テトラアザシクロドデカン−N,N’,N’’,N’’’−四酢酸)は、3価の放射性金属と生理学的に安定な錯体を精製する能力を好む十分に特徴づけられた二官能性結合リンカーである。DOTAは、金属錯体化キレートリガンドである。DOTA標識試薬を、標準的技術およびタンパク質の反応官能性の使用によってタンパク質と反応して、安定な結合を介して共有結合することができる。タンパク質上のDOTA金属錯化リンカーは、安定なイオン結合を介して、一定の金属イオンと錯体を形成する。反応性DOTA標識試薬は、市販されている(DOTA−NHSエステルなど)。タンパク質が、典型的には、活性エステル標識試薬と反応することができる多数のアミンを含むので(例えば、リジン側鎖)、得られた生成物は、タンパク質分子上の種々の部位でのDOTAリンカーとのタンパク質の不均一の混合物である。DOTA標識タンパク質は、0、1、2、3、またはそれを超えるDOTA基、および種々のアミノ酸残基が分布し得る。抗体上のDOTAリンカーの不均一性のために、これらの抗体のマススペクトルのデコンボリューションは、通常の「裸の」抗体よりもいくらか扱いにくく、しばしば解読できない。これに加えて、不均一な結合体と組み合わせて存在するより多数のグリコフォームの1つを有することにより、抗体の正確な分子量を得ることは極めて困難であり得る。
【0065】
本発明は、DOTA結合抗体のマイクロ波支援脱グリコシル化法を含む。グリコシル化抗CD4−DOTA結合体由来のデータを、デコンボリューションすることができなかった。図5aは、還元したグリコシル化抗CD4のデコンボリューションしたマススペクトルの重鎖質量領域を示す。図5bは、37℃で60分間のマイクロ波照射後の還元抗CD4−DOTAおよびPNGアーゼFのデコンボリューションしたマススペクトルの重鎖質量領域を示す。脱グリコシル化前に、スペクトルは複雑すぎて良好にデコンボリューションされず、それにより、正確な質量を決定できなかった。糖の除去により、デコンボリューションを容易にし、脱グリコシル化重鎖により、質量49043、49430、49816で認められたDOTA結合抗体の3つの変異型の存在が明らかとなった。図5cは、マイクロ波照射を行わずに37℃の水浴中で一晩後の還元抗CD4−DOTAおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルの重鎖質量領域を示す。質量分光学的同定により、結合体はマイクロ波照射中で安定であることが確認され、マイクロ波支援脱グリコシル化を使用し、従来の水浴または従来の加熱装置を使用したサーモサイクラーも使用して測定点を再度取った。
【0066】
糖タンパク質標準RNアーゼBは、Asn−60を介して結合した高マンノースN結合オリゴサッカリドである。図6aは、PNGアーゼFへの任意の曝露前の還元RNアーゼBの典型的なデコンボリューションした質量スペクトルを示す。40℃でのマイクロ波照射を用いたPNGアーゼFでのRNアーゼBの脱グリコシル化の質量分析を、5分間(図6b)、10分間(図6c)、および60分間(図6d)行った。マイクロ波照射を行わずに、37℃の水浴中で5分間(図7a)、1時間(図7b)、および一晩(図7c)の時点での同一のRNアーゼBの脱グリコシル化実験を行った。
【0067】
マイクロ波中で1時間後にRNアーゼBの完全な脱グリコシル化が認められる(図6d)。水浴中での同一時点(図7b)と比較して、マイクロ波エネルギーの存在下で行った場合にさらに迅速に脱グリコシル化が起こった。実際、37℃の水浴中での一晩のインキュベーション後でさえ、完全な脱グリコシル化は依然として認められない(図7c)。
【0068】
マイクロ波デバイスを使用して本発明の方法を行う場合、その効率を最大にするための有用な技術は、単一の比較的大きな共鳴器にて個別のコンテナ(「容器」)中で複数の脱グリコシル化反応を同時に行うことである。コンテナは、典型的には、適切なプラスチック、ガラス、またはセラミックなどのマイクロ波透過材料でできている。一般に、2つまたはそれを超える複数の、時折50個ものコンテナを、研究用マイクロ波オーブンの空洞部に入れ、マイクロ波で照射する。典型的な環境下で、容器の1つを、圧力、温度、色の変化、または単一容器中の反応の進行を測定するか示すいくつかの他のパラメーターをモニタリングする。残りのモニタリングしていない容器は、モニタリングした容器と同一の挙動をしたと見なすことができる。
標識タンパク質
本発明のタンパク質を、システインチオールまたはリジンアミノなどの反応性官能基を介してタンパク質に共有結合することができる任意の標識部分と結合することができる(Singh et al(2002)Anal.Biochem.304:147−15;Harlow E.and Lane,D.(1999)in Using Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Springs Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Lundblad R.L.(1991)in Chemical Reagents for Protein Modification,2nd ed.CRC Press,Boca Raton,FL)。結合した標識は、(i)検出可能なシグナルを提供するか、(ii)第1または第2の標識によって得られる検出可能なシグナルを修飾するための第2の標識と相互作用し、例えば、FRET(蛍光共鳴エネルギー転移)が得られるか、(iii)抗原またはリガンドとの相互作用を安定化するか結合親和性を増加させるか、(iv)電荷、疎水性、形状、または他の物理的パラメーターによって移動度(例えば、電気泳動移動度または細胞透過性)に影響を及ぼすか、(v)リガンド親和性、抗体/抗原結合、またはイオン結合型錯化を調整するための捕捉部分が得られるように機能することができる。
【0069】
診断に適用するために、タンパク質を、典型的には、検出可能な部分で標識する。一般に以下のカテゴリーに分類することができる多数の標識が利用可能である。
【0070】
(a)放射性同位体(35S、14C、125I、3H、および131Iなど)。Current Protocols in Immunology,Volumes 1 and 2,Coligen et al.,Ed.Wiley−Interscience,New York,New York,Pubs.(1991)に記載の技術を使用して、タンパク質を、放射性同位体を含む試薬で標識することができるか、試薬が抗体の操作されたシステインチオールと反応性を示す場合に放射性同位体を錯化することができる試薬で標識することができる。
【0071】
(b)蛍光標識(希土類キレート(ユウロピウムキレート)またはフルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリトリン、テキサスレッドを利用可能である。Current Protocols in Immunology(上記)に開示の技術および例えば、Molecular Probes(Eugene,OR)の蛍光標識試薬を使用して、蛍光標識をポリペプチド変異型に結合することができる。
【0072】
(c)キレート試薬(金属イオンと錯化することができるDOTAまたはクラウンエーテルなど)(米国特許出願公開第2002/0006379号明細書)。
【0073】
(d)種々の酵素−基質標識を利用可能であるか、開示されている(米国特許第4275149号明細書)。酵素は、一般に、種々の技術を使用して測定することができる呈色基質の化学変化を触媒する。例えば、酵素は、分光光度法で測定することができる基質の呈色を触媒することができる。あるいは、酵素は、基質の蛍光または化学発光を変化させることができる。蛍光の変化を定量する技術は、上に記載されている。化学発光基質は、化学反応によって電子的に励起されるようになり、それによって発光し、これを、測定することができるか(例えば、化学照度計を使用)、エネルギーを蛍光アクセプターに供与することができる。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼなど;米国特許第4737456号明細書)、ルシフェリン、2,3−ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ(西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)など)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、サッカリドオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(ウリカーゼおよびキサンテンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、およびミクロペルオキシダーゼ(microperoxidase)などが含まれる。酵素の抗体への結合技術は、O’Sullivan et al(1981)"Methods for the Preparation of Enzyme−Antibody Conjugates for use in Enzyme Immunoassay," in Methods in Enzym.(ed J.Langone & H.Van Vunakis),Academic Press,New York,73:147−166に記載されている。
【0074】
酵素−基質組み合わせの例には、例えば、以下が含まれる:
(i)西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)と基質としての水素ペルオキシダーゼとの組み合わせ(水素ペルオキシダーゼは、色素前駆体(例えば、オルソフェニレンジアミン(OPD)または3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン塩酸塩(TMB))を酸化する)
(ii)アルカリホスファターゼ(AP)と呈色基質としてのパラ−ニトロフェニルホスファートとの組み合わせ、および
(iii)β−D−ガラクトシダーゼ(β−D−Gal)と呈色基質(例えば、p−ニトロフェニル−β−D−ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトシダーゼとの組み合わせ。
【0075】
当業者は、多数の他の酵素−基質組み合わせを利用可能である。これらの一般的概説については、米国特許第4275149号明細書および米国特許第4318980号明細書を参照のこと。
【0076】
しばしば、標識は、タンパク質と非直接的に結合する。タンパク質をビオチンと結合することができ、且つ上記の標識の部類のいずれかをアビジンと結合することができるか、その逆を行うことができる。ビオチンは、アビジンと選択的に結合することができるので、この間接的様式で、標識をタンパク質と結合させることができる。あるいは、標識をタンパク質と間接的に結合させるために、タンパク質を、小ハプテン(例えば、ジゴキシン)と結合させ、上記の異なる標識型の1つを抗ハプテンタンパク質(例えば、抗ジゴキシン抗体)と結合させる。したがって、標識をタンパク質と間接的に結合させることができる(Hermanson,G.(1996)in Bioconjugate Techniques Academic Press,San Diego)。
【0077】
タンパク質およびペプチドの標識方法は、周知である。Haugland(2003)in Molecular Probes Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals,Molecular Probes,Inc.;Brinkley(1992)Bioconjugate Chem.3:2;Garman(1997)in Non−Radioactive Labelling:A Practical Approach,Academic Press,London;Means(1990)Bioconjugate Chem.1:2;Glazer et al(1975)in Chemical Modification of Proteins.Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology(T.S.Work and E.Work,Eds.)American Elsevier Publishing Co.,New York;Lundblad,R.L.and Noyes,C.M.(1984)in Chemical Reagents for Protein Modification,Vols.I and II,CRC Press,New York;Pfleiderer,G.(1985)“Chemical Modification of Proteins” in Modern Methods in Protein Chemistry,H.Tschesche,Ed.,Walter DeGryter,Berlin and New York;および Wong(1991)in Chemistry of Protein Conjugation and Cross−linking,CRC Press,Boca Raton,Fla.を参照のこと。
【0078】
十分に接近した2つの部分(蛍光レポーターおよびクエンチャー)で標識したタンパク質は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を受ける。レポーター基は、典型的には、一定の波長の光によって励起され、最大輝度で発光する適切なストークスシフトでエネルギーがアクセプター(すなわち、クエンチャー基)に移行する。蛍光色素には、広い芳香族性を有する分子(フルオレセインおよびローダミンなど)およびその誘導体が含まれる。蛍光レポーターを、インタクトなタンパク質中のクエンチャー部分によって部分的または有意に消光することができる。ペプチダーゼまたはプロテアーゼによるタンパク質切断の際に、蛍光の検出可能な増加を測定することができる(Knight,C.(1995)"Fluorimetric Assays of Proteolytic Enzymes",in Methods in Enzymology,Academic Press,248:18−34)。
【0079】
標識試薬は、典型的には、(i)抗体の反応性官能基(例えば、システインチオール)と直接反応して標識タンパク質を形成することができるか、(ii)リンカー試薬と反応してリンカー標識中間体を形成することができるか、(iii)リンカー抗体と反応して標識抗体を形成することができる反応性官能基(reactive functionality)を有する。標識試薬の反応官能性には、マレイミド、ハロアセチル、ヨードアセトアミドスクシニミジルエステル(例えば、NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド))、イソチオシアナート、スルホニルクロリド、2,6−ジクロロトリアジニル、ペンタフルオロフェニルエステル、およびホスホルアミダイトが含まれるが、他の官能基も使用することができる。
【0080】
例示的反応性官能基は、検出可能な標識(例えば、ビオチンまたは蛍光色素)のカルボキシル置換基のN−ヒドロキシスクシニミジルエステル(NHS)である。標識のNHSエステルを、予め形成し、単離し、精製し、そして/または特徴づけることができるか、in situで形成し、タンパク質の求核基と反応させることができる。典型的には、カルボジイミド試薬(例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド)またはウロニウム試薬(例えば、TSTU(O−(N−スクシニミジル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート、HBTU(O−ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)、またはHATU(O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート))、アクチベーター(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)およびN−ヒドロキシスクシンイミドなど)のいくつかの組み合わせと反応させて、標識のNHSエステルを得ることによって標識のカルボキシル形成を活性化する。いくつかの場合、標識およびタンパク質を、標識のin situ活性化および抗体との反応によってカップリングして、標識−抗体結合体を1工程で形成することができる。他の活性化試薬およびカップリング試薬には、TBTU(2−(1H−ベンゾトリアゾ−1−イル)−1−1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート)、TFFH(N,N’,N’’,N’’’−テトラメチルウロニウム2−フルオロ−ヘキサフルオロホスファート)、PyBOP(ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスファート、EEDQ(2−エトキシ−1−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロ−キノリン)、DCC(ジシクロヘキシルカルボジイミド);DIPCDI(ジイソプロピルカルボジイミド)、MSNT(1−(メシチレン−2−スルホニル)−3−ニトロ−1H−1,2,4−トリアゾール、およびアリールスルホニルハライド(例えば、トイイソプロピルベンゼンスルホニルクロリド)が含まれる。
【実施例】
【0081】
(実施例)
本発明を例証するために、以下の実施例を含む。しかし、これらの実施例は本発明を制限せず、本発明の実施方法を提案することのみを意味すると理解すべきである。当業者は、記載の例示的方法、プロトコール、プロセス、試薬、および装置を、本発明の範囲内と見なされる本発明の他の方法を実施するために容易に適合させることができると認識するであろう。
【0082】
(実施例1)DOTA結合
DOTA−NHS−エステルを、ジメチルアセトアミド(DMA,FlukaChemika,Switzerland)に溶解し、濃度60〜100mg/mLに調製した。典型的な手順は、MAbの2mM EDTA(pH7.2)を含むPBSへの緩衝液交換を含んでいた。反応を、MAb1分子に対してDOTA4分子の比(1:4)で反応を行い、Thermomixerプレート(Eppendorf,Westbury,NY)で穏やかに撹拌しながら25℃で反応させた。
【0083】
(実施例2)N結合脱グリコシル化
個別の実験では、ハーセプチン(登録商標)(トラスツズマブ、Genentech,South SanFrancisco,CA)、アバスチン(登録商標)(ベバシズマブ、Genentech,South San Francisco,CA)、RNアーゼ、およびDOTA標識抗体(10μg)を、それぞれ、50mMジチオトレイトール−DTT(Promega,Madison,WI)を含む0.1M Tris(MQ water,Millipore Corp,Billerica,MA)中で最終体積20μLに希釈した。室温で30分間還元させた。1単位のPNGアーゼF(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)をサンプルに添加し、種々の温度および時間条件下でDiscover Microwave装置(CEM Corp.,Newark,CA)を使用してマイクロ波照射に曝露するか、コントロールについては水浴中でインキュベートした非マイクロ波支援実験を行った。1〜20Wのマイクロ波電力設定を使用した37〜60℃の範囲の温度で2〜60分の間隔で測定点を取った。全ての場合、5%TFA(2μL)で反応を直ちに停止させ、質量分析によって直接分析するか、分析するまで冷蔵した。
【0084】
(実施例3)質量分析
インタクトな質量測定を、Q−TOF質量分析計(Micromass,Manchester,UK)またはTSQ Quantum三連四重極質量分析計(Thermo Electron,San Jose,CA)を使用して行った。三連四重極MSによる分析のために、サンプルを、0.1%TFA(溶媒A)で2倍希釈し、10μL(約25pmol)を、オートサンプラーによってPLRP−S 300A逆相微小孔(micro−bore)カラム(50×2.1mm,Polymer Laboratories,Shropshire,UK)にロードした。化合物を、0〜60%のB(溶媒A:0.05%TFAの水溶液および溶媒B:0.05%TFAのアセトニトリル溶液)の12分間の勾配で分離し、エレクトロスプレー源を使用してイオン化した。Xcalibur(商標)ソフトウェア(Thermo Electron Corp.,Waltham MA)を使用してデータを収集し、ProMassを使用してデコンボリューションを行った。あるいは、5μL(25pmol)のサンプルを、0.1%ギ酸で40μLに希釈し、脱塩カラムを通過させた。タンパク質を溶離し、エレクトロスプレーイオン化を使用してイオン化し、その後にイオンをQ−TOF質量分析計を使用してフルMSモードで分析した。データを、MassLynx(商標)ソフトウェア(Waters Corp.,Milford MA)を使用したデコンボリューション後に解釈し、脱グリコシル化レベルを評価した。
【0085】
上記説明は、本発明の原理のみを説明していると見なされる。さらに、多数の修正形態および変更形態が当業者に明らかであるので、本発明を上記の構造および過程に厳密に制限することを望んでいない。したがって、全ての適切な修正形態および等価物は、以下の特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲内に含まれると見なすことができる。
【0086】
用語「comprise」、「comprising」、「include」、「including」、および「includes」は、本明細書および以下の特許請求の範囲で使用する場合、記載の特徴、整数、成分、または工程の存在を特定することを意図するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、成分、工程、または群の存在または付加を排除しない。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1a】図1aは、インタクトな非還元グリコシル化ベバシズマブ(アバスチン(登録商標),Genentech,South San Francisco CA)のデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図1b】図1bは、37℃で5分間のマイクロ波照射後のインタクトな非還元グリコシル化ベバシズマブおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図1c】図1cは、37℃で10分間のマイクロ波照射後のインタクトな非還元グリコシル化ベバシズマブおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図2a】図2aは、マイクロ波照射を行わずに37℃の水浴中で5分後のインタクトな非還元グリコシル化ベバシズマブおよびPNGアーゼF(酵素:基質/1:10)のデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図2b】図2bは、マイクロ波照射を行わずに37℃の水浴中で10分後のインタクトな非還元グリコシル化ベバシズマブおよびPNGアーゼF(酵素:基質/1:10)のデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図2c】図2cは、マイクロ波照射を行わずに37℃の水浴中で60分後のインタクトな非還元グリコシル化ベバシズマブおよびPNGアーゼF(酵素:基質/1:10)のデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図3a】図3aは、DTTでの還元後のベバシズマブ重鎖のデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図3b】図3bは、37℃で5分間のマイクロ波照射後の還元ベバシズマブ重鎖およびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図3c】図3cは、37℃で10分間のマイクロ波照射後の還元ベバシズマブ重鎖およびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図4a】図4aは、マイクロ波照射を行わずに37℃の水浴中で5分後の還元ベバシズマブ重鎖およびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図4b】図4bは、マイクロ波照射を行わずに37℃の水浴中で10分後の還元ベバシズマブ重鎖およびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図4c】図4cは、マイクロ波照射を行わずに37℃の水浴中で60分後の還元ベバシズマブ重鎖およびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図5a】図5aは、還元グリコシル化抗CD4のデコンボリューションした質量スペクトルの重鎖質量領域を示す。
【図5b】図5bは、37℃で60分間のマイクロ波照射後の還元抗CD4−DOTAおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルの重鎖質量領域を示す。
【図5c】図5cは、マイクロ波照射を行わずに37℃の水浴中で一晩後の還元抗CD4−DOTAおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルの重鎖質量領域を示す。
【図6a】図6aは、還元RNアーゼBのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図6b】図6bは、40℃で5分間のマイクロ波照射後の還元RNアーゼBおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図6c】図6cは、40℃で10分間のマイクロ波照射後の還元RNアーゼBおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図6d】図6dは、40℃で60分間のマイクロ波照射後の還元RNアーゼBおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図7a】図7aは、マイクロ波照射を行わずに40℃の水浴中で5分後の還元RNアーゼBおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図7b】図7bは、マイクロ波照射を行わずに40℃の水浴中で1時間後の還元RNアーゼBおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図7c】図7cは、マイクロ波照射を行わずに40℃の水浴中で一晩後の還元RNアーゼBおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルを示す。
【図8a】図8aは、還元トラスツズマブのデコンボリューションした質量スペクトルの軽鎖質量領域を示す。
【図8b】図8bは、還元トラスツズマブのデコンボリューションした質量スペクトルの重鎖質量領域を示す。
【図9a】図9aは、45℃で10分間のマイクロ波照射後の還元トラスツズマブおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルの軽鎖質量領域を示す。
【図9b】図9bは、45℃で10分間のマイクロ波照射後の還元トラスツズマブおよびPNGアーゼFのデコンボリューションした質量スペクトルの重鎖質量領域を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波条件下にてグリコシル化タンパク質を酵素で処理し、それにより、脱グリコシル化タンパク質を形成する工程を含む、タンパク質の脱グリコシル化方法。
【請求項2】
前記脱グリコシル化タンパク質を脱塩媒体に適用する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱グリコシル化タンパク質を、水および有機溶媒を含む溶液中で脱塩媒体から溶離する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記脱グリコシル化タンパク質を質量分析によって分析する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記脱グリコシル化タンパク質を、エレクトロスプレーイオン化によって質量分析計中にイオン化する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記脱グリコシル化タンパク質を、MALDIによってイオン化する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記グリコシル化タンパク質を、マイクロ波条件下にて酵素と1時間以下処理する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロ波条件が、約0.1〜50ワットの電力である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記グリコシル化タンパク質が、N結合グリコシル化タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記グリコシル化タンパク質が、O結合グリコシル化タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酵素がPNGアーゼFである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
PNGアーゼFがグリコシル化タンパク質に対して触媒量で存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
PNGアーゼFのグリコシル化タンパク質に対するモル比が1:10と1:1000との間である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記酵素が、O−グリコシダーゼまたはエンドグリコシダーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記酵素が、シアリダーゼまたはノイラミニダーゼである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記グリコシル化タンパク質がリンタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記グリコシル化タンパク質が抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体がIgGである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体が、トラスツズマブまたはベバシズマブである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記IgGを検出標識に結合させる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体を金属錯化リンカー(metal complexing linker)に結合させる、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記金属錯化リンカーがDOTAから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体を、薬物部分に結合させる、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記グリコシル化タンパク質から除去した糖部分を分析する工程をさらに含み、該糖部分を質量分析によって分析する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記糖部分を高pH陰イオン交換クロマトグラフィによって単離する工程をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項1】
マイクロ波条件下にてグリコシル化タンパク質を酵素で処理し、それにより、脱グリコシル化タンパク質を形成する工程を含む、タンパク質の脱グリコシル化方法。
【請求項2】
前記脱グリコシル化タンパク質を脱塩媒体に適用する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脱グリコシル化タンパク質を、水および有機溶媒を含む溶液中で脱塩媒体から溶離する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記脱グリコシル化タンパク質を質量分析によって分析する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記脱グリコシル化タンパク質を、エレクトロスプレーイオン化によって質量分析計中にイオン化する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記脱グリコシル化タンパク質を、MALDIによってイオン化する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記グリコシル化タンパク質を、マイクロ波条件下にて酵素と1時間以下処理する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロ波条件が、約0.1〜50ワットの電力である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記グリコシル化タンパク質が、N結合グリコシル化タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記グリコシル化タンパク質が、O結合グリコシル化タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記酵素がPNGアーゼFである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
PNGアーゼFがグリコシル化タンパク質に対して触媒量で存在する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
PNGアーゼFのグリコシル化タンパク質に対するモル比が1:10と1:1000との間である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記酵素が、O−グリコシダーゼまたはエンドグリコシダーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記酵素が、シアリダーゼまたはノイラミニダーゼである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記グリコシル化タンパク質がリンタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記グリコシル化タンパク質が抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体がIgGである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体が、トラスツズマブまたはベバシズマブである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記IgGを検出標識に結合させる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体を金属錯化リンカー(metal complexing linker)に結合させる、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記金属錯化リンカーがDOTAから選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体を、薬物部分に結合させる、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記グリコシル化タンパク質から除去した糖部分を分析する工程をさらに含み、該糖部分を質量分析によって分析する、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記糖部分を高pH陰イオン交換クロマトグラフィによって単離する工程をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図6a】
【図6b】
【図6c】
【図6d】
【図7a】
【図7b】
【図7c】
【図8a】
【図8b】
【図9a】
【図9b】
【公表番号】特表2009−535646(P2009−535646A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509978(P2009−509978)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/067714
【国際公開番号】WO2007/130875
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/067714
【国際公開番号】WO2007/130875
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(596168317)ジェネンテック・インコーポレーテッド (372)
【氏名又は名称原語表記】GENENTECH,INC.
【Fターム(参考)】
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