説明

質量分析計用イオンガイド

質量分析計(30)のためのイオンガイド(24)は、質量/電荷比が異なるイオンを該イオンガイドから検出器又は他の対象物若しくは装置に向けて放出する手段を包含する。かかる放出手段は、該イオンを所望とするシーケンスで放出させる。該イオンは、それぞれの質量/電荷比に従って異なる速度で運動・移動するため、所望とする空間内の一点に所望とするシーケンスで、例えば質量分析計の検出器(56)内に実質的に同時に到達することになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2004年5月5日に出願された、「飛行時間型質量分析計」なる名称の、 米国仮特許出願Ser.No.60/567,817−この明細書の内容全体をここに参考文献として合体する−の恩恵を請求するものである。
【0002】
本発明は全体として、 質量分析計に係わり、またより具体的には質量分析計に使用するイオンガイドに係わる。
【背景技術】
【0003】
質量分析計としては多くの種類が知られており、微量分析及びイオン構造の決定に広く使用されている。かかる質量分析計は通常は、イオンをその質量対電荷比(“m/z”)に基いて分離するものである。このような質量分析計には、RF/DCイオンガイドを用いてm/z値の狭い範囲でイオンを透過させる、四重極質量分析器部を含むもの;巨大な磁場によって運動するイオンの運動方向に垂直な力をかけて、当該イオンをそのm/zに従って偏向させる磁気セクター分析器部を含むもの;またある一つのイオンについて既知経路上の飛行時間を測定してその質量対電荷比を決定する、飛行時間(“TOF”)型分析器部を含むものがある。
【0004】
四重極質量分析計とは異なって、TOF分析器部は、マスフィルターのパラメータを走査する必要がなく完全な質量スペクトルを記録することが出来るため、より高い稼働率(duty cycle)が可能となり、また試料の利用度が改善される。幾つかの質量分析計においては、RFイオンガイドが、直交型TOF質量分析計と結合されているが、この場合当該イオンガイドは、イオンをTOF分析器部にまで透過させることを目的として使用するのか又はプロダクトイオンを生成させ且つこのプロダクトイオン(残留するあらゆる前駆体イオン以外に)をTOF分析器部に導入するためのコリジョンセルとして使用されるのかの何れかである。イオンガイドを直交型TOFと結合・組み合わせることは、イオンをTOF分析器に導入して分析するための好便な方法である。
【0005】
現在イオンガイドを用いたTOF質量分析計については、少なくとも二つの操作法を用いることが知られている。
第一の操作法においては、イオンの連続ストリームが、ラジオ周波数のみの四重極イオンガイドから出ると、TOF分析器の引出し領域に向けて誘導される。このイオンストリームは、TOF引出しパルスによってサンプル採取されて、通常のTOFの態様において検出される。このような操作法は、例えばthe Journal of Mass Spectrometry,v.36,pp.849−865,2001におけるチェルヌシェヴィッチら(Chernushevich et al.)(以下“チェルヌシェヴィッチら“と略記する)による論文において記載報告されているように稼働率ロスを伴う。
【0006】
第二の操作法は、チェルヌシェヴィッチらにおいて記載報告されておりまたアメリカ特許第5,689,111号(US Patent 5,689,111)及びアメリカ特許第6,285,027号(US Patent 6,285,027)において記載されている通りである。この方法は、二次元イオンガイドからイオンをパルス化して、特定のm/z値(即ち、狭幅に規定された範囲内に収まるm/z値)を有するイオン類を集群して該TOFの引出し領域内に導入するのである。この操作法は、該イオンガイドとTOFとの間における透過ロスを低減させるものの、イオン速度がm/z比に依存するため、狭いm/z範囲からのイオンしか適正にシンクロナイズさせることが出来るに過ぎず、その結果m/zの範囲が狭くなって(典型的には(m/z)max/(m/z)min〜2である)、TOF分析器部によって効率的に検出することが出来ることになる。即ち、幅広の質量範囲のイオンを記録する必要がある場合は、全スペクトルを記録するために、m/zの重なる範囲に特異的なパラメータを有する多重パルスを透過させることが必要となる。その結果、透過ウインドー外のイオンは、抑制されるか又は喪失されるため、非効率な事態が生じることになる。このようなロスを回避するための一つの方法が、本発明者が共同して譲渡したアメリカ特許第6,744,043号(commonly assigned US patent 6,744,043)において提案されている。この特許においては、イオン移動度ステージが、TOF分析器部の上流で使用される。当該イオンの移動度による移動・運動時間は、ある程度当該イオンのm/z比と相関関係を有しているので、パルス化されたモードにおいては、イオン移動度ステージから抜け出るイオンのm/zに常に同調するようにTOFウインドーの調節が可能となる。しかしながら、かかる移動度ステージを質量分析計に付加・増設することは、当該質量分析計装置の構造を一層複雑にしまたコストを増大させる。そのうえ、パルス化放出を採用すると共にこれに相応してTOFウインドーの連続的調節を行えば、質量分析計のサイクルタイム(cycle time)、即ちプロセス回転(process turnaround)の最適効率化が阻まれ、実現出来ないことになる。
【特許文献1】アメリカ特許第5,689,111号
【特許文献2】アメリカ特許第6,285,027号
【特許文献1】アメリカ特許第6,744,043号
【非特許文献1】チェルヌシェヴィッチら:The Journal of Mass Spectrometry,v.36,pp.849−865,2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術に係わる上記した不都合・欠点を回避するか又は軽減する、新規のイオンガイド及びかかるガイドを組み込んだ質量分析計のための装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、例えば広いm/z範囲においても、実質的に透過ロスを伴うことなくイオンの分析を可能とする装置及び方法を提供するものである。イオンガイドからのイオンの放出は、全てのイオンが(そのm/zの如何に拘らず)、所望とするシーケンスで又は所望とする時間において而もおおよそ同一のエネルギーによって、例えばTOF質量分析の引出し領域など,ある空間内の指定された一点に到達せしめることが出来る条件を造出することによって行われるのである。このようにして集群されたイオンは、次に例えばTOF抽出パルスを用いて引出し、次いでTOF検出器上の同一スポットに同時に到達するよう所望とする経路に沿って推進させることによって、一つの群として取扱いすることが出来ることになる。
【0009】
より重いイオンとより軽いイオンとを同一のエネルギーを用いて、例えば質量分析計の引出し領域など空間のある一点において実質的に同時に会合させるためには、より重いイオンをより軽いイオンに先立って当該イオンガイドから放出させればよい。一定の電荷を有するより重いイオンは、同一電荷のより軽いイオンよりも一定の電磁場内をより緩徐に移動するので、 所望とするシーケンスで一定電界内において放出させた場合は、より軽いイオンと同時に又はより軽いイオンを基準として選択された間隔で当該引出し領域又はその他の点に到達させることが出来る。本発明は、当該イオンガイドから所望とするシーケンスで質量に関連させてイオンを放出させることが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明は一つの局面において、 質量分析計のためのイオンガイドを提供する。このイオンガイドは、一つのガイド軸を郭成し且つ当該ガイド内でのイオンが該ガイド軸に直角な方向での運動をしないよう抑制し且つ該ガイド軸に対して平行となるイオンの運動を制御するために有用なイオン制御電界を発生するように適合される。例えば、当該電界は、イオンをそのm/z値に応じて当該ガイドの軸に沿って分布させるために有用である。即ち、当該電界は例えば、質量対電荷比が異なるイオンを所望とするシーケンスに従ってガイド軸に平行な経路に沿って当該ガイドから選択的に放出させることが出来るように適合される。このシーケンスは、例えば一群の所望とする質量対電荷比の内の如何なる又は全ての質量/電荷比を有するイオンを、例えばTOF質量分析計内において該ガイド軸の沿って配置された、一つの選択された引出し領域に所望とするシーケンスで例えば実質的に同時に到達させることが出来るように構成することが可能である。該電界は、例えば質量対電荷比が相対的に高いイオンを質量対電荷比が相対的に低いイオンの放出に先立って放出させて、その結果一定の電磁場においても質量対電荷比が相対的に低いイオンよりも運動・移動速度が遅い,質量対電荷比が相対的に高いイオンを、該イオンガイドの軸に沿って所望とする一点に実質的に同時に又は所望とするシーケンスで導入することが出来るように適合させることが可能である。
【0011】
本発明に従ったイオン制御電界は、本明細書において開示された諸目的を達成するために有用な態様であれば如何なる態様においても、例えば電流及び/又は磁場を操作することによって及び/又はガス圧力を利用することによって生成させればよい。例えば、本発明に従ったイオンガイドは、複数の電極を含んで成っていればよく、かかる実施態様のイオン制御電界は、これらの電極に電圧を印加することによって生成させた電磁界から成る。このような電圧としては、例えば通常無線伝送・通信に関連した周波数(“RF”周波数)における交互電圧など交流電圧及び/又は直流電圧の適当な組み合わせの如何なるものであってもよい。又はその代わりに、本発明に従ったイオンガイドは、相対的に低い圧力領域及び相対的に高い圧力領域を形成させて且つこれを操作し、また圧力勾配を利用してイオン運動を制御するように適合させることが出来る。
【0012】
本発明は更に、 かかるイオンガイドを含んで成る質量分析計及びその他の装置・機器、及び例えば質量又はイオンのm/z比を分析するのに使用するためなどの、イオンを操作するためにかかるイオンガイドを使用する方法を提供する。
【0013】
例えば本発明が提供するのは、質量対電荷比が異なるイオンをガイドする方法であって、ガイド軸を郭成するイオンガイドにイオン制御電界を形成・付与すること―なお、該イオン制御電界は、該ガイド軸に垂直な方向へのイオンの運動を抑制するコンポーネントを含んで成るー;及び該イオン制御電界を操作して該ガイド軸に沿ったイオンの運動を制御することから成る方法である。例えば、該イオン制御電界は、例えばイオンを該イオンガイド内の制限されたある空間内に集積させるのに使用するための一つ又はそれ以上の集積ポテンシャルプロファイル;及び/又は例えば質量対電荷比が異なるイオンをイオンの質量対電荷比に応じて且つガイド軸に平行な経路に沿って該ガイドから逐次的にシーケンスに従って放出させて、かくして例えば放出されたイオンの全てが実質的に該ガイド軸に沿って配置された引出し領域に所望とするシーケンスで、例えば実質的に同時に到達させるために有用な一つ又はそれ以上の放出ポテンシャルプロファイル;とを形成・付与するように適合させることが出来る。
【0014】
本発明に従った装置の具体的な例としては、イオンガイド及び飛行時間型質量分析器部とを使用した質量分析計であって、該イオンガイドが、質量が異なるイオンを異なる時間で放出させて、而も放出された該イオンがそれぞれの質量に基いて異なる速度で運動・移動し、実質的に同時に該質量分析器部に到達するものとする要素を含む、前記質量分析計を包含する。
【0015】
本発明に従った方法の例としては更には、例えば(a)蓄積ポテンシャルプロファイルを用いてイオンガイド内にイオンを蓄積せしめること;(b)質量の異なるイオンが異なる時間に放出されるように、放出ポテンシャルプロファイルを用いてイオンガイドからイオンを放出させること;及び(c)イオンガイドの下流に位置する一点に実質的に同時に該イオンを受容して検出すること;とによって質量が異なるイオンを検出することから成るのである。本発明に従った方法は、例えば事前放出ポテンシャルプロファイルを用いてイオンガイド内における更なるイオンの蓄積を防止する付加工程を含んで成っていてもよい。
【0016】
本発明の更なる幾つかの局面は、下記する記載に鑑みて明らかとなるであろう。
【0017】
本発明は、添付する図面の図において図示されているが、これらは、例示であって制限するものでないことが意図されるものであり、また図面においては同一の参照符号は、同一の又は対応する部品を意味するものとする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1に言及して述べると、本発明に従った装置は、全体として30で示す。図1に示す実施態様においては、装置30は、イオンソース20、イオンガイド24及び質量分析器部28を含む質量分析計から成る。
【0019】
イオンソース20は、本明細書において記載された諸目的に適合・合致するイオンソースであれば如何なる型式のものでよく、例えばエレクトロスプレー(ESI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI),イオンボンバードメント、静電界の印加(例えば、電界イオン化や電界脱着)、化学イオン化などによってイオンを生成・発生させる種々の供給源を含む。適当なイオンソースの選択は、例えば分析する試料の種類に依存して異なり得る。適当なイオンソースの選択及び本発明に従った装置への組み込みは、本発明の開示に準じて製作されている限り、当業者を煩わすことはないであろう。
【0020】
イオンソース20からのイオンは、イオン操作領域22内に導入され、ここでイオンは、イオンビーム集束、イオン選択、イオン放出、イオンフラグメント化、イオントラッピング(例えばアメリカ特許第 6,177,668号に示されている通り)、又は他の如何なる公知の形式のイオン分析、イオン化学反応、イオントラッピング若しくはイオン透過に供すればよい。このようにして操作されたイオンは、イオン操作領域22を離れ、24で示すイオンガイド内に移行する。
【0021】
イオンガイド24は、軸174を郭成し、入口38、出口42及び出口開口部46を含んで成る。イオンガイド24は、ガイド軸と直角方向へのイオンの運動を抑制するコンポーネント及びイオンガイドに平行なイオンの運動を制御するコンポーネントとを含んで成るイオン制御電界を生成するか又はその他の態様で形成・付与するように適合される。例えば、RF電圧を公知の態様でイオンガイド24に印加し、かくして半径方向においてイオン閉じ込めを行い、他方ではガイド軸に沿ったイオンの運動を制御するために、電圧及び/又は本明細書において記載した他のポテンシャル電界を利用して、種々の異なるポテンシャルプロファイルをイオンガイド内で重畳させる。
【0022】
イオンガイド24は、図2に示す複数・多段のセクション又は構成部分32a、34b及び34c及び/又は図8に示す補助電極50を含んでもよい。以下において更に詳細に記載するように、 質量分析計30のイオンガイド24は、質量及び/又はm/z比が異なるイオンを出口から放出させるが、この際軸174に沿った半径方向の閉じ込めを当該イオンガイド24の内外に保持し、かくして当該イオンが、実質的にイオンガイド24軸に沿った所望とする点又は、例えばプッシュプレート54に隣接した、質量分析器部28の引出し領域56内など、所望とする近傍点に実質的に同時に又は所望とするシーケンスで到達することになる。
【0023】
イオンガイド24から放出されたイオンは、集束させ及び/又は例えば静電界レンズ26(ガイド24の一部と考えてもよい)及び/又は質量分析器部28など更なる装置によって別の態様で処理すればよい。 質量分析計30はまた、例えばプッシュプレート54及び加速カラム55などの装置を含んでいてもよく、これらは例えば、質量分析器部28の引出し機構の一部であってもよい。
【0024】
質量分析計30の理解を助けるために、図3には本発明に従ったイオン放出及び検出を行うための一方法200を図示する。この方法を説明するのを支援するために、該方法200は、例えば図1の装置30などの質量分析計を使用して操作・実施することを想定すればよいであろう。しかしながら、装置30及び/又は方法200は、変更することが可能であって、相互に組み合わせて本明細書で記載した通りに正確に動作する必要はないこと、及び従ってかかる変更も本発明の範囲に属することが了解されるべきである。
【0025】
図3の210において、蓄積ポテンシャルプロファイルが、イオンガイド24内に形成・付与される。代表的な蓄積ポテンシャルプロファイルを図4に示す。図4の蓄積ポテンシャルプロファイル58は、例えば電圧又は圧力など、イオンガイド24の軸174に沿って形成・付与される相対的ポテンシャル値を示す。イオンガイド24の構成部分34aにおけるかかる相対的ポテンシャルは、90で示し、また構成部分34bおよび34cにおいて形成・付与されるポテンシャルは、91で示し、またイオンガイドの構成部分34c及び出口42の開口部46の全体に亘って形成・付与されるポテンシャル勾配は,92で示す。図示していないが、一定のRF電圧をイオンガイド24に印加して、半径方向におけるイオンの閉じ込めを行うのである。即ち、ガイド軸に直角な方向におけるイオンの運動を抑制するためのコンポーネントおよびガイド軸に平行であるイオン運動を制御するためのコンポーネントとから成るイオン制御電界が、イオンガイド24内に形成・付与されるのである。
【0026】
例えば、イオンガイド24は、一つ又はそれ以上の電極を含んで成るのであって、これらの電極全体に亘って電圧を印加し、かくして当該イオンガイド内に電磁界を発生させることによって、イオン制御電界が形成・付与される。図4に示す実施例においては、イオンガイド24の構成部分34a、34b及び34cは、別々の電極から成っていてもよく、印加した電圧によって、例えばほぼ100kHzと30MHzとの間の周波数において、また好ましくは大半の質量分析計向け用途についてはほぼ2.5乃至3.6MHzの周波数において適当なRF電界を発生させて、ガイド軸に直角な方向におけるイオンの運動を抑制するのである。ほぼ−0.1と−100ボルトとの間、好ましくはほぼ−1と−5との間のDC電圧を、電極34b及び34cに印加して、ポテンシャル91を確立し、同時に開口部46における勾配92の外側端部における電圧をほぼ0.1と1000ボルトとの間、好ましくは1と10ボルトとの間に設定すればよい。イオンガイドの電極34a、b、cは、例えば対抗対の四重極、六重極又は他の電極セットから成っていてもよい。
【0027】
イオンガイド内に例えば図4において示したと同様に蓄積ポテンシャル58を形成・付与することによって、巨大イオン62(例えば、m/z値が大きいイオン)と小イオン66(例えば、m/z値が小さいイオン)とが、イオンガイド24を軸174に平行する方向で通過して、91における低ポテンシャルによって形成・付与された電極34b及び34cに近接した優先領域内に定置させることが可能となるが、より高いポテンシャルを開口部46に供与することによって、これらのイオンがイオンガイド24から流出するのは防止するのである。当業者には精通しているように、上記したDC電圧に付加して、DCオフセット電圧をイオンガイドに印加することが状況の如何によっては有益となる可能性がある。そのような場合、全体のポテンシャルプロファイル58は、相当するDCオフセット電圧によって高くなるであろう。
【0028】
図3における220においては、事前放出ポテンシャルプロファイルが、イオンガイド24内に形成・付与される。代表的な事前放出プロファイルは、図5に示す。図5の事前放出ポテンシャルプロファイル70は、イオンガイド24の軸174に沿って形成・付与される、例えばボルト又は圧力などの相対的なポテンシャル値を表す。図5に示す実施例において、事前放出プロファイル70は、蓄積ポテンシャルプロファイル58について記載したプロファイルと類似しているが、ポテンシャル91は、イオンガイドの構成部分34bにおけるポテンシャル96に代替しておりまたポテンシャル勾配92においても相応した変化を加えている。即ち、ガイド軸に垂直な方向におけるイオンの運動を制約するためのコンポーネントとガイド軸に平行であるイオンの運動を制御するためのコンポーネントとから成る、変更修正したイオン制御電界が、イオンガイド24において形成・付与される。
【0029】
例えば、図4に関連して記載した実施態様おいては、イオン制御電界は、電流を電極に通電してイオンガイド内部に電磁界を発生させることによって形成・付与されるのであるが、かかる実施態様においては、一定のRF電圧がイオンガイド24において維持され、かくしてイオンの半径方向での閉じ込めを確保する同時に、イオンガイドの構成部分34bにおけるDC電圧を例えばほぼ0.5と50ボルトとの間に、又はより実際的にはほぼ1と5ボルトとの間にまで引き上げることも可能である;構成部分34cにおける電圧は、より低い電圧、例えば0ボルトに設定することも出来る;そして開口部46における電圧は、より高いポテンシャル、例えばほぼ1と10ボルトとの間に保持してもよい。
【0030】
例えば図5において示すような事前放出プロファイル70を形成・付与することは、例えば相対的にm/zの大きいイオン82と相対的にm/zの小さいイオン66とを軸174に平行な方向にイオンガイド24内で運動させ且つイオンガイド24の領域内において該ガイドの構成部分34bと開口部46との間で定置させるために使用することが出来る。96におけるポテンシャルはまた、イオンガイド24内の構成部分34bを超えた地点にまで余分のイオンが侵入するのを防止することが出来る。必須ではないのであるが、緩衝ガス分子との衝突によるイオンエネルギー分布減少を促進するために、この時点において一定の時間遅延を実施することも有利であり得る。
【0031】
230においては、一定の放出ポテンシャルプロファイルが、イオンガイド24内に形成・付与される。代表的な放出ポテンシャルプロファイルを図6に示す。図6の放出ポテンシャルプロファイル74は、例えば当該イオンガイド24に対して別の態様で印加した電圧に重畳させて、イオンガイド24の構成部分34c内において及び/又は出口開口部46において交流(“AC”)電圧を印加することによって生成させることが出来る。例えば、適当なRFポテンシャル及びDCポテンシャルをイオンガイド24内の対向対の電極に印加し、上記したようにまた本発明者らが共同して保有するアメリカ特許第6,111,250号において記載するように、同時に適当なDCオフセット電圧を異なる電極セットに印加するのである。AC電圧は、例えば該RF電圧に重畳させることが出来、かくして構成部分34cにおけるポテンシャルと出口開口部46におけるポテンシャルとの間の差を減少させるのである。
【0032】
ガイド24の軸に沿った放出ポテンシャルプロファイル74は、例えば図6において参照番号78において破線によって示したような擬似ポテンシャル(pseudopotential)を使用することによって形成・付与することが出来る。擬似ポテンシャルに関する基礎的情報は、 “The Encyclopedia of Mass Spectroscopy” Vol.1、 182−194 (2003)におけるGerlich、Rf Ion Guidesにおいて見出すことが可能であり、この文献の内容を参考文献として本明細書に合体させる。擬似ポテンシャル78の大きさ又は深度は、イオン62及び66について予期される質量及び/又は電荷に従って決定するのが有利であり、またm/z比がより小さいイオンの制御を行うためにより大きな値に設定することが有利になり得る。
【0033】
本発明に従った蓄積ポテンシャルプロファイル、事前放出ポテンシャルプロファイル及び放出ポテンシャルにおいて形成・付与される種々に異なるポテンシャルの相対的な大きさは、様々な静的且つ動的なレベルにおいて決定し且つ設定して、かかるイオンを処理する上で所望とする目的を達成することが出来るのであって、例えば所望とするシーケンスに従ってイオンガイド24からイオンの放出を行わせることが出来る。例えば、このようなポテンシャルを選択し、適当なプロファイルを実行し、かくして質量対電荷比に従って所望とするシーケンスで質量対電荷比の異なるイオンを放出させてもよい。このことは、例えば異なる速度で運動・移動して、その結果所望とする点に同時に又は所望とするシーケンスで到達させることが出来るようにイオンを放出することが希求される場合などにおいては、特に有利となり得る。
【0034】
例えば図6において示すサイクルのように放出サイクルの初期において、擬似ポテンシャル78の大きさ又は深さは、m/z比が大きいイオンがまず最初に出口42から流出するように選択すればよい。m/z比がより大きいイオン62が放出されるのに応じて、AC電圧の振幅を漸次減少させて、かくしてかかる擬似電圧の大きさ・深さをも変化させてもよく、また所望とする時間遅延の経過後、m/z比が小さいイオン66をイオンガイド24から流出させるようにしてもよい。かかる時間遅延は、AC振幅の変化速度を制御することによって決定してもよく、また例えば所望した時間遅延を実施出来るようにイオン62及び66の質量とm/z比に基いて選択してもよい。 図6に示した状況では、m/z比が小さいイオン66が、m/z比が大きいイオン62よりもより急速に運動・移動するので、勾配78はそれに応じて設定される。
【0035】
図3の240においては、イオンは、ガイド軸174上又は実質的にガイド軸に沿って配置された空間内の一点、例えば当業界において公知である方法を用いた検出及び質量分析ためのTOF分析器部内の引出し領域などに供される。このことは、図6の右側構成部分に示してあるが、ここではイオン62と66との移動・運動速度が異なる結果、イオン62及び66が、プッシュプレート54の直前の直交型引出し領域56に実質的に同時に到達することになるのである。この点において、引出しパルス82をプッシュプレート54に印加して、加速カラム55を経由してイオン62、66をパルス化してもよい。
【0036】
当業者にとっては明白であるように、一旦本発明の開示に精通すれば、使用する電圧プロファイルを相違させ且つ使用するイオンガイドのセクション又は構成部分34a、b、c及びこれらの要素の数と形式を異ならせることによって、本明細書において記載した諸目的を達成することが出来る。例えば図7について言及すれば、電磁気蓄積ポテンシャルプロファイルを形成・付与するのに適した電極から成る、イオンガイド24のまた別の一つの実施態様が示されている。イオンガイド24によって生成せしめられた蓄積ポテンシャルプロファイル58aは、図4の蓄積ポテンシャルプロファイル58の代わりに又はこれと共に使用することが出来る。 図7の質量分析計30aは、全体として質量分析計30に類似しており、また質量分析計30aの要素は、 質量分析計30における要素と類似しており、同じ参照番号・文字を付してある。プロファイル58の機能に類似しているため、イオン62,66はかくして、イオンガイド24を通過して、イオンガイド構成部分34cによって形成・付与された、91における低いポテンシャルにより郭成された優先領域に定置・定着することが可能となる。34dで示す付加したイオンガイドセクション及びイオンガイド34に印加された電圧とによって、相対的により高いポテンシャル98が生成され、イオンが当該イオンガイド24から流出するのを防止する。ガイド34dと100で示される開口部46との間においてポテンシャル差があるため、蓄積設定過程においてガイド34dの下流に存在する可能性があった如何なるイオンも逸出することが可能となる。
【0037】
図7においても図示されている例えばプロファイル74aなどの代替放出ポテンシャルプロファイルは、放出ポテンシャルプロファイル74に代えて又はこれと共に併せて使用することが出来る。イオンガイド24aによって形成・付与される図7のプロファイル74aは、プロファイル74に類似しているが、イオンガイド34d及び開口部46に印加された適当な電圧の存在によって設定されたポテンシャル勾配102が付加される。イオン62,66は、擬似ポテンシャル78によって放出され、出口42を経由して全体として阻害されることなくイオンガイド構成部34dの全長を通過することが可能となる。ポテンシャル勾配102は、通過するイオン62,66が、開口部46を経由して流出するに際してエネルギー増加を蒙らないように選択すればよい。
【0038】
次に図8に言及すると、本発明の別の実施態様に従った質量分析計を全体として30bで示す。 質量分析計30bは、全体として質量分析計30に類似しており、また質量分析計30bの要素は、質量分析計30における要素と類似しており、同一の参照文字・番号を付してある。質量分析計30bのイオンガイド24bは、全体としてイオンガイド24の電極34a,b,c,dの機能に類似した機能を有する一セットの補助電極を含む。電極50は、該イオンガイド24の外側に配置されればよく、例えば公知の態様でDC電圧を付与して、図6及び7の事前放出ポテンシャルプロファイル96及び放出ポテンシャルプロファイル74、74aをそれぞれ確立すればよい。イオンガイド124の軸長さに沿った電極50の位置は、固定してもよく、又は例えば放出ポテンシャルプロファイル74を生成させるに先立って、蓄積させたイオン62、66についてイオンガイド24a内におけるその蓄積、放出及び/又は事前放出プロファイル並びに配置と数を変動させるように、電極を移動可能なものとすることが出来る。例えば状況如何によっては、放出ポテンシャルプロファイル74を発生させながら、蓄積したイオンの組分け群に接近して擬似ポテンシャル78を形成・付与してイオン放出効率を高度化することが、好ましい場合もあり得る。
【0039】
次に図9に言及すると、本発明の別の実施態様に従った質量分析計は、全体として30cで示す。 この質量分析計30cは、全体として質量分析計30に類似しており、また質量分析計30cの要素は、質量分析計30における要素と類似しており、同一の参照文字・番号を付してある。質量分析計30cは状況によっては、ポテンシャルプロファイルの数を減じて使用することによって、所望とするシーケンスに従ったイオン放出に特に適合させることが出来る。例えば、図9のイオンガイド24cは、僅かに二つのポテンシャルプロファイルのみ、即ち一つの蓄積プロファイル58c及び一つの放出プロファイル74cを使用するように適合させればよい。蓄積プロファイル58cは、上記において詳述したプロファイル58の機能に類似した態様で機能することが出来る。このような変更・修正実施態様においては、放出プロファイル74cを使用した場合、入口38においてイオンガイド24、24cに進入するイオンは、イオンガイドセクション34cを超えて通過することが防止されなくなり、一方分析対象のイオンは放出される。このような進入イオンは、有意な質量相関を伴うことなく放出され、引出し領域56に到達する前に逸失する。逸失イオンの数を最小限にするために、適当な稼働率(duty cycle)を選択すればよく、この際例えば蓄積期間の比率を放出期間の比率よりも実質的に大きくするのである。又はその代わりに、イオントラップ装置、例えば104で示す線形四重極イオントラップ又は3Dイオントラップをイオンガイド24、24cの上流に配置して、イオンをトラップし且つパルス処理して該イオンガイド24内に進入させてもよい。例えば図3の放出工程などの操作の過程で、上流イオントラップ104は、イオンがイオンガイド24c内に進入するのを防止し、他方イオン62,66は、放出ポテンシャルプロファイルに従ってイオンガイド24cから放出されるのである。
【0040】
本発明が有する種々の特徴及びコンポーネントについての具体的な組み合わせを本明細書のおいて詳述してきたが、一旦当業者が本願の開示に精通すれば、開示された特長及びコンポーネントについての所望とする組み合わせのサブセット及び/又はこれに代わる、かかる特徴と構成部分との組合わせを所望に応じて活用して、本明細書において開示された諸目的を達成出来ることは、かかる当業者にとっては明白であろう。例えば、イオンガイド24及びその変更・修正イオンガイド24a、b及びcとは構造が異なり、例えば、多重極イオンガイド(四重極、六重極など)、リングガイド、及び/又は二重ラセンイオンガイドから成っていてもよい。イオンガイドセクション34a,34b,34cなどは、寸法及び特性が同一又は異なっていてもよく、それぞれが印加した電圧に応じて最適化されて、最も効率的な又はそれ以外に所望されるポテンシャルプロファイルを実現するようにしてもよい。例えば電極50などの付加した更なる電極及び/又はイオンガイドセクションは、当該イオンガイドの内部又は外部、例えば多重イオンガイドの隣接するロッドの間、又はRFイオンガイドの隣接するリングの間などに配置すればよい。電極の形状は、変更修正して、当該イオンガイドの内部又はその周囲での好都合な又はその他の望ましい設置を容易・簡便化してもよいので、これらは、例えば20040011956として公告された同時継続アメリカ特許出願第10/449,912号において記載されている通りであり、この特許の記載内容を参考文献として本明細書に合体させる。
【0041】
本発明は、本明細書において開示された諸目的と合致する、イオン運動を制御する手段の如何なるものを使用しても実施することが出来る。例えば、電磁場をイオンガイド24内で使用するほか、ガス内において一つ又はそれ以上の相対的に低圧力である領域と一つ又はそれ以上の相対的に高圧力である領域を設け、かくしてイオン制御電界の一部として圧力勾配を利用するように適合せしめてもよい。例えば、緩衝ガスの一種又はそれ以上のストリームを使用してイオンガイドの所望とする構成部分に向けてイオンを優先的に移動させるか、及び/又は所望とする場合かかるイオンを当該イオンガイドから流出させてもよい。緩衝ガスのパルスを使用して、暫定的に当該イオンガイド内での圧力を上昇させて、トラップしたイオン間での衝突速度緩和を促進させてもよい。
【0042】
更には、 質量分析計 30、30a,30b,30cは、TOF 質量分析器部と共に併用することに限定される必要はない。本明細書において開示された諸目的と合致する質量分析計の如何なる型式のもの又は種々の型式の如何なる組み合わせにも有用であろう。例えば、図10に言及すると、質量分析計30dは、リング電極108とエンドキャップ電極110とを有する型式の3Dイオントラップから成るのである。典型的な操作においては、このトラップ106における電圧を調節して、イオンが特定の時間内にそのトラップ容積を充満させるようにすればよい。この時間の過程においては、例えば、より重たいイオンとより軽いイオンを同一のエネルギーでほぼ同時に注入して、広範なイオンをトラップすることが有利であり得る。このトラップ106は次に、該イオンを質量分析に供するか、又は公知の態様で該イオンを更なる下流の質量分析工程に送入するように機能するものでもよい。
【0043】
多くの他の変更及び修正が、一旦当業者が本開示に通暁すれば、当該当業者には明白となるであろう。例えば、必要な又は固有の程度を除いて、本明細書において記載された方法又はプロセスにおける種々の工程又は段階に対する特定の順序は、一切意図されることはなくまた意味されることはない。多くの場合、プロセス工程の順序は変更しても、上記に記載した方法の目的、効果又は重要性に変更をきたすものではない。本明細書において記載した本発明の実施態様、即ち装置、方法などは、本発明の一例として機能することを意図するものであり、多くの変更及び修正は、本明細書に添付する請求項によってのみ定義される本発明の範囲から逸脱することなくこれらに付加することが可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に従った装置の模式図である。
【図2】本発明に従った装置の模式図である。
【図3】本発明に従った装置を用いて質量が異なるイオンを検出するか又はその他の方法で分析する方法を図示するフローダイアグラムである。
【図4】本発明に従った装置の模式図であって、本発明に従ったイオンガイド軸に沿って形成・付与されてもよい電圧ポテンシャルを更に図示するものである。
【図5】本発明に従った装置の模式図であって、本発明に従ったイオンガイド軸に沿って形成・付与されてもよい電圧ポテンシャルを更に図示するものである。
【図6】本発明に従った装置の模式図であって、本発明に従ったイオンガイド軸に沿って形成・付与されてもよい電圧ポテンシャルを更に図示するものである。
【図7】本発明の幾つかの実施態様に従った装置の模式図であって、例示的操作での異なる工程においてイオンガイド軸に沿って形成・付与されてもよい電圧を図示するものである。
【図8】本発明の幾つかの実施態様に従った装置の模式図であって、例示的操作での異なる工程においてイオンガイド軸に沿って形成・付与されてもよい電圧を図示するものである。
【図9】本発明の幾つかの実施態様に従った装置の模式図であって、例示的操作での異なる工程においてイオンガイド軸に沿って形成・付与されてもよい電圧を図示するものである。
【図10】本発明の幾つかの実施態様に従った装置の模式図であって、例示的操作での異なる工程においてイオンガイド軸に沿って形成・付与されてもよい電圧を図示するものである。
【符号の説明】
【0045】
20:イオンソース
22:イオン操作領域
24、24a、24b,24c:イオンガイド
28:質量分析器部
30、30a、30b、30c:質量分析計
34、34a、34b,34c、34d:
イオンガイドセクション構成部分又は電極
38:入口
42:出口
46:出口開口部
50:補助電極
54:プッシュプレート
55:加速カラム
56:引出し領域、直交型引出し領域
58:蓄積ポテンシャル
62:m/z比の大きいイオン
66:m/z比の小さいイオン
70:事前放出ポテンシャル
74、74a、74c:放出ポテンシャルプロファイル
78:擬似ポテンシャル又は勾配
82:引出しパルス
91,96:ポテンシャル
92:ポテンシャル勾配
106:イオントラップ
108:リング電極
110:エンドキャップ電極
174:ガイド軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンガイドと質量分析器部と含んで成る質量分析計において、
ガイド軸を郭成し且つ制御電界を形成付与するように適合せしめられた該イオンガイドが、該ガイド軸に直角なイオンの運動を抑制する一つのコンポーネントを含んで成りまた該ガイド軸に平行であるイオンの運動を制御するための一つのコンポーネントを含んで成ること; ― なおここにおいて、
該電界が、イオンの質量対電荷比に従って且つガイド軸に平行な経路に沿って、該ガイドから質量対電荷比が変化するイオンをシーケンスにより逐次放出させるように適合され、また
該シーケンスが、放出された実質的に全ての質量対電荷比を有するイオンを実質的にガイド軸に沿って配置された質量分析器部の引出し領域内に実質的に同時に到達せしめるように適合される ― 及び
該質量分析器部が、質量対電荷比の異なるイオンを同時に分析するように適合されること、
とを特徴とする、前記質量分析計。
【請求項2】
該イオンガイド電界が、質量対電荷比が相対的に低いイオンの放出よりも先に質量対電荷比が相対的に高いイオンの放出を行わしめるように適合されることを特徴とする、請求項1に記載の質量分析計。
【請求項3】
該質量分析器部が、直交飛行時間型質量分析器部を含んで成ることを特徴とする、請求項1に記載の質量分析計。
【請求項4】
該イオンガイドが、複数の電極を含んで成ること、及びイオン制御電界が、一種またそれ以上の電圧を該電極に印加することによって生成させた電磁場を含んで成ることとを特徴とする、請求項1に記載の質量分析計。
【請求項5】
一種又はそれ以上の該電圧が、少なくとも一種の交流電圧と少なくとも一種の直流電圧とを含んで成ることを特徴とする、請求項4に記載の質量分析計。
【請求項6】
少なくとも一種の該交流電圧が、ラジオ周波数の交流電圧であることを特徴とする、請求項5に記載の質量分析計。
【請求項7】
該イオンガイドが、少なくとも一つの相対的に低い圧力領域及び少なくとも一つの相対的に高い圧力領域を一種のガス内において生成・供給するように適合されること、及び該イオン制御電界が、圧力勾配を含んで成ることを特徴とする、請求項1に記載の質量分析計。
【請求項8】
質量対電荷比が異なるイオンをガイドする方法であって、
− 該ガイド軸に直角のイオン運動を抑制するための一つのコンポーネントを含んで成るイオン制御電界をガイド軸を郭成するイオンガイド内に形成・付与すること;
− 該イオンガイド内部の閉じ込められた空間内にイオンを集積させるための集積ポテンシャルプロファイルを形成・付与すること;
− 放出イオンの全てが、実質的に該ガイド軸に沿って配置された引出し領域に実質的に同時に到達するように、イオンの質量対電荷比毎に且つ該ガイド軸に平行な経路に沿って質量対電荷比が異なるイオンを該ガイドからシーケンスにより逐次放出させるための放出ポテンシャルプロファイルを該イオン制御電界内に形成・付与すること;
から成ることを特徴とする、前記方法。
【請求項9】
該イオンガイド内にイオンが集積するのを防止するための事前放出プロファイルが、該イオン制御電界内に形成・付与されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
該引出し領域が、質量分析器部の引出し領域であること、及び該方法が、質量対電荷比が異なるイオンを同時に分析することから成ることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
質量分析計のためのイオンガイドであって、
該イオンガイドが、ガイド軸を郭成し、また該ガイド軸に直角のイオン運動を抑制し且つ該ガイド軸に平行なイオン運動を制御するための少なくとも一つのイオン制御電界を形成・付与するように適合されること;
該電界が、所望とする質量対電荷比のシーケンスに従って、該ガイド軸に平行な経路に沿って該ガイドから質量対電荷比の異なるイオンを選択的に放出させることが出来るように適合されること;及び
該シーケンスが、実質的に該ガイド軸に沿って配置された一つの選択された引出し領域に実質的に全ての質量対電荷比のイオンを実質的に同時に到達させることが出来るように選択可能であること;
を特徴とする、前記イオンガイド。
【請求項12】
該イオンガイド電界が、質量対電荷比が相対的に低いイオンの放出よりも先に質量対電荷比が相対的に高いイオンの放出を行わせることが、出来るように適合されることを特徴とする、請求項11に記載のイオンガイド。
【請求項13】
該制御電界が、複数の電圧を複数の電極に印加することによって生成させた電磁場から成ることを特徴とする、複数の電極を含んで成る請求項11に記載のイオンガイド。
【請求項14】
該電圧が、交流電圧及び直流電圧とから成ることを特徴とする、請求項13に記載のイオンガイド。
【請求項15】
該交流電圧が、ラジオ周波数交流電圧から成ることを特徴とする、請求項14に記載のイオンガイド。
【請求項16】
該イオンガイドが、少なくとも一つの相対的に低い圧力領域と少なくとも一つの相対的に高い圧力領域を一種のガス内部において形成・付与するように適合されること、及び該イオン制御電界が、複数の圧力勾配を含んで成ることを特徴とする、請求項11に記載のイオンガイド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−536714(P2007−536714A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511800(P2007−511800)
【出願日】平成17年5月5日(2005.5.5)
【国際出願番号】PCT/CA2005/000685
【国際公開番号】WO2005/106921
【国際公開日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(505377197)エムディーエス インコーポレイテッド ドゥーイング ビジネス スルー イッツ エムディーエス サイエックス ディヴィジョン (12)
【Fターム(参考)】