説明

赤外光反射板並びに合わせガラス用積層中間膜シート及び合わせガラスとそれらの製造方法

【課題】斜め方向の反射光の色味変化を抑制でき、遮熱性の高い赤外光反射層積層体及び赤外光反射板の提供。
【解決手段】それぞれコレステリック液晶相を固定してなる光反射層X1、光反射層X2、光反射層X3、光反射層X4および光反射層X5を有し;前記光反射層X1と前記光反射層X2が互いに逆方向の円偏光を反射し、前記光反射層X1の反射中心波長λ1と前記光反射層X2の反射中心波長λ1’が実質的に等しく、且ついずれも1190〜1290nmの範囲にあり;前記光反射層X3と前記光反射層X4が互いに逆方向の円偏光を反射し、前記光反射層X3の反射中心波長λ2と前記光反射層X4の反射中心波長λ2’が実質的に等しく、且ついずれも1010〜1070nmの範囲にあり;前記光反射層X5の反射中心波長λ3が、850〜900nmの範囲にあり;波長790nmでの反射率が15%以下であり、かつ、赤外線を反射する赤外光反射層積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコレステリック液晶相を固定してなる光反射層を複数有する赤外光反射板であって、主に建造物及び車両等の窓の遮熱に利用される赤外光反射板に関する。また、本発明は、前記赤外光反射板から基板を除いた赤外光反射層積層体、前記赤外光反射層積層体または前記赤外光反射板を利用した赤外光反射性合わせガラス用の積層中間膜シート、前記ガラス用積層中間膜シートを用いた合わせガラス、およびそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境・エネルギーへの関心の高まりから省エネに関する工業製品へのニーズは高く、その一つとして住宅及び自動車等の窓ガラスの遮熱、つまり日光による熱負荷を減少させるのに効果のある、ガラス及びフィルムが求められている。日光による熱負荷を減少させるのには、太陽光スペクトルの可視光領域または赤外領域のいずれかの太陽光線の透過を防ぐことが必要である。
【0003】
断熱・遮熱性の高いエコガラスとしてよく用いられるのがLow−Eペアガラスと呼ばれる熱放射を遮断する特殊な金属膜をコーティングした複層ガラスである。特殊な金属膜は、例えば特許文献1に開示された真空成膜法により複数層を積層することで作製できる。真空成膜によって作製される、これらの特殊な金属膜のコーティングは反射性能に非常に優れるものの、真空プロセスは生産性が低く、生産コストが高い。また、金属膜を使うと、電磁波を同時に遮蔽してしまうために携帯電話等の使用では、電波障害を引き起こしたり、自動車に使用した場合にはETCが使えなくなったりするなどの問題がある。
特許文献2には、金属微粒子を含有する層を有する熱線反射性透明基材が提案されている。金属微粒子を含有する膜は、可視光の透過性能に優れるものの、遮熱に大きく関与する波長700〜1200nmの範囲の光に対する反射率が低く、遮熱性能を高くできないという問題がある。
また、特許文献3には、赤外線吸収色素を含む層を有する熱線遮断シートが開示されている。赤外線吸収色素を利用すると、日射透過率を下げることができるものの、日射の吸収による膜面温度上昇と、その熱の再放出によって遮熱性能が低下するという問題がある。
【0004】
また、特許文献4には、所定の特性の位相差フィルムと反射型円偏光板とを有する、赤外線に対する反射能を有する積層光学フィルムが開示され、該位相差フィルムとして、コレステリック液晶相を利用した例が開示されている。
また、特許文献5には、可視光透過性サブストレートと赤外光反射性コレステリック液晶層とを備えた赤外光反射性物品が開示されている。
また、特許文献6には、複数のコレステリック液晶層を備えた偏光素子が開示されているが、この様な、コレステリック液晶層を積層してなる積層体は、主には、可視光領域の光を効率的に反射させる用途に供せられるものである。
また、特許文献7には、液晶分子のヘリカル軸の方向が実質的に一致するとともに、その液晶分子の旋回方向が同一な液晶層を複数積層してなる円偏光抽出光学素子が開示されている。
【0005】
実際に、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層を有する光反射膜を利用して、特定の波長の光を完全に反射することは困難であり、通常は、λ/2板という、特殊な位相差板を利用するのが一般的である。例えば、特許文献4及び5では、同一の方向の旋光性を有し、且つ同一の螺旋ピッチを有する、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層を、λ/2板の両面にそれぞれ形成することで、所定の波長の右円偏光及び左円偏光を反射する試みがなされている。
【0006】
しかし、上記した通りλ/2板は特殊な位相差板であり、その作製が困難であり、作製コストが上昇する。また、材料が特殊のものに制限され、その結果、用途が制限される場合がある。さらに、通常、λ/2板は、層面に対して法線方向から入射する光に対しては、λ/2板として作用するものの、斜めから入射する光に対しては、厳密にはλ/2板として機能しない。そのため、上記λ/2板を組合せた構成では、斜め方向から入射する光を完全に反射できないという問題がある。
【0007】
また、コレステリック液晶層は、入射光の角度により反射する波長帯域が変化する(入射角が斜めになると、反射帯域が短波長側にシフトする)特徴があるため、赤外光反射を目的としたコレステリック液晶層でも斜め方向では可視光反射性となってしまい、反射光が赤〜黄色味を帯びてしまうことがある。このようなコレステリック液晶層の赤外光反射性物品を例えば住宅や自動車等の窓ガラスに使用した場合、窓ガラスとしての視認性の低下や外観デザイン上の制約などの問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−263486号公報
【特許文献2】特開2002−131531号公報
【特許文献3】特開平6−194517号公報
【特許文献4】特許第4109914号公報
【特許文献5】特表2009−514022号公報
【特許文献6】特許第3500127号公報
【特許文献7】特許第3745221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層を複数有する赤外光反射板について、λ/2板の使用を必須とせずに、反射特性を改善すること、並びに、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層を複数有する赤外光反射板の選択反射特性を改善することが求められていた。
以上より、本発明が解決しようとする課題は、斜め方向の反射光の色味を抑制でき、遮熱性の高い赤外光反射層積層体および赤外光反射板を提供することである。さらに、そのような特性を満たす赤外光反射層積層体および赤外光反射板を安価に製造することができる、赤外光反射層積層体および赤外光反射板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明者が鋭意検討した結果、互いに逆の旋光性(即ち右又は左旋光性)のコレステリック液晶相を固定してなる光反射層を2組以上、基板上に配置すれば、当該波長域の左円偏光及び右円偏光のいずれをも反射でき、さらに、それぞれの組の選択反射の中心波長を、所定の範囲とすることで、より高い遮熱性能が得られることがわかった。さらに、短波長側の光反射層として、反射帯域の短波側波長位置を790nm以上とすることにより、斜め方向の反射光の色味を抑制できることがわかった。この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0011】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] それぞれコレステリック液晶相を固定してなる光反射層X1、光反射層X2、光反射層X3、光反射層X4および光反射層X5を有し; 前記光反射層X1と前記光反射層X2が互いに逆方向の円偏光を反射し、前記光反射層X1の反射中心波長λ1(nm)と前記光反射層X2の反射中心波長λ1’(nm)が、実質的に等しく、且ついずれも1190〜1290nmの範囲にあり; 前記光反射層X3と前記光反射層X4が互いに逆方向の円偏光を反射し、前記光反射層X3の反射中心波長λ2(nm)と前記光反射層X4の反射中心波長λ2’(nm)が、実質的に等しく、且ついずれも1010〜1070nmの範囲にあり; 前記光反射層X5の反射中心波長λ3(nm)が、850〜900nmの範囲にあり; 波長790nmでの反射率が15%以下であり、かつ、赤外線を反射することを特徴とする赤外光反射層積層体。
[2] 波長800nmでの反射率が15〜50%の範囲である、[1]に記載の赤外光反射層積層体。
[3] 前記光反射層の内の少なくとも1つの光反射層が、下層の光反射層の表面に塗布された液晶組成物をコレステリック液晶相とし、該コレステリック液晶相を固定することで形成された層である、[1]または[2]に記載の赤外光反射層積層体。
[4] 前記光反射層X1と前記光反射層X2が隣接しておらず、かつ、前記光反射層X3と前記光反射層X4が隣接していない、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の赤外光反射層積層体。
[5] それぞれコレステリック液晶相を固定してなる光反射層X1、光反射層X2、光反射層X3、光反射層X4、光反射層X5および光反射層X6を有し; 前記光反射層X1と前記光反射層X2が互いに逆方向の円偏光を反射し、前記光反射層X1の反射中心波長λ1(nm)と前記光反射層X2の反射中心波長λ1’(nm)が、実質的に等しく、且ついずれも1190〜1290nmの範囲にあり; 前記光反射層X3と前記光反射層X4が互いに逆方向の円偏光を反射し、前記光反射層X3の反射中心波長λ2(nm)と前記光反射層X4の反射中心波長λ2’(nm)が、実質的に等しく、且ついずれも1010〜1070nmの範囲にあり; 前記光反射層X5と前記光反射層X6が互いに逆方向の円偏光を反射し、前記光反射層X5の反射中心波長λ3(nm)と前記光反射層X6の反射中心波長λ3’(nm)が、実質的に等しく、いずれも850〜900nmの範囲にあり; 波長790nmでの反射率が15%以下であり、かつ、赤外線を反射することを特徴とする赤外光反射層積層体。
[6] 波長800nmでの反射率が15〜50%の範囲である、[5]に記載の赤外光反射層積層体。
[7] 前記光反射層の少なくとも1つが、下層の光反射層の表面に塗布された液晶組成物をコレステリック液晶相とし、該コレステリック液晶相を固定することで形成された層である、[5]または[6]に記載の赤外光反射層積層体。
[8] 前記光反射層X1と前記光反射層X2とが隣接しており、前記光反射層X5と前記光反射層X6とが間に少なくとも2つの光反射層を介して積層されている、[5]〜[7]のいずれか1項に記載の赤外光反射層積層体。
[9] 基板と、該基板上に配置された[1]〜[8]のいずれか1項に記載の前記赤外光反射層積層体を含む、赤外光反射板。
[10] 前記基板が、ポリマーフィルムである、[9]に記載の赤外光反射板。
[11] [1]〜[8]のいずれか1項に記載の赤外光反射層積層体、または[9]もしくは[10]に記載の赤外光反射板と、前記赤外光反射層積層体もしくは前記赤外光反射板の少なくとも一方の最外層上に配置された中間膜シートと、を含む、ガラス用積層中間膜シート。
[12] 前記赤外光反射層積層体もしくは前記赤外光反射板の双方の最外層上に、中間膜シートをそれぞれ有する、[11]に記載のガラス用積層中間膜シート。
[13] 2枚のガラスと、前記2枚のガラスの間に含まれる[11]または[12]に記載のガラス用積層中間膜シートとを含む、合わせガラス。
[14] 前記2枚のガラスのうち、少なくとも1枚は熱線吸収ガラスであり、該熱線吸収ガラスが、標準A光源での可視光透過率が80〜90%の範囲にあり、かつ、標準A光源を用いて測定した主波長が495〜560nmの範囲にある、[13]に記載の合わせガラス。
[15] [9]または[10]に記載の赤外光反射板の一方の表面に、第1の中間膜シートを貼合して第1の積層体を得る第1の工程、及び、前記第1の積層体の前記第1の中間膜シートが貼合されている表面の反対の側の表面に、第2の中間膜シートを貼合する第2の工程を含む、合わせガラス用積層中間膜シートの製造方法。
[16] 前記第1の工程において、前記赤外光反射板と前記第1の中間膜シートとを貼合する工程と同時またはその後に、前記赤外光反射板に含まれる基板を前記第1の積層体から剥離する工程と、前記第2の工程において、前記第2の中間膜シートを、前記第1の積層体の前記基板を剥離した面に貼合する工程を含む、[15]に記載のガラス用積層中間膜シートの製造方法。
[17] [11]または[12]に記載の合わせガラス用積層中間膜シートを2枚のガラス板の間に挟み込んでガラス板に挟持された積層体を製造する工程と、前記ガラス板に挟持された積層体を加熱しながら圧着する工程を含む、合わせガラスの製造方法。
[18] [1]〜[8]のいずれか1項に記載の赤外光反射層積層体、[9]もしくは[10]に記載の赤外光反射板、[11]もしくは[12]に記載のガラス用積層中間膜シート、または[13]もしくは[14]のいずれか1項に記載の合わせガラスを用いた、建造物用もしくは車両用の窓用部材。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、斜め方向の反射光の色味変化を抑制でき、遮熱性の高い赤外光反射層積層体および赤外光反射板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の赤外光反射板の一例の断面図である。
【図2】本発明の赤外光反射板の一例の断面図である。
【図3】本発明の合わせガラス用積層中間膜シートの一例の断面図である。
【図4】本発明の合わせガラス用積層中間膜シートの一例の断面図である。
【図5】本発明の合わせガラス用積層中間膜シートの一例の断面図である。
【図6】本発明の合わせガラスの一例の断面図である。
【図7】本発明の合わせガラスの一例の断面図である。
【図8】本発明の合わせガラスの一例の断面図である。
【図9】太陽光エネルギーの強度分布を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。なお、本明細書中、ガラス板に挟持された積層体とは、ガラス板/中間膜/赤外光反射層積層体(または赤外光反射板)/中間膜/ガラス板の順に積層されたものであり、かつ、加熱しながら圧着される前のもののことを言う。また、合わせガラスとは、前記ガラス板に挟持された積層体を加熱しながら圧着したもののことを言う。
【0015】
また、本明細書において、コレステリック液晶相を固定してなる層の屈折率異方性Δnは、以下の通り定義される。
本明細書においては、コレステリック液晶相を固定して形成される層の屈折率異方性Δnは、選択反射特性を示す波長(具体的には、波長1000nm近傍)でのΔnを意味する。具体的には、まず、サンプルとして、螺旋軸を膜面に対して均一に配向させたコレステリック液晶相を固定した層を配向処理した、若しくは配向膜を付与した基板(ガラス、フィルム)上に形成する。当該層の選択反射を測定し、そのピーク幅Hwを求める。また、サンプルの螺旋ピッチpを別途測定する。螺旋ピッチは、断面TEM観察することによって測定可能である。これらの値を以下の式に代入することで、サンプルの屈折率異方性Δnを求めることができる。
Δn=Hw/p
【0016】
また、本明細書中、「反射中心波長」とは、正面方向(実質は、正面から5°以内の方向)から測定した反射スペクトルの最大のピークを示す波長のことを言う。
また、本明細書中、各層の「反射中心波長が(互いに)実質的に等しい」については、本発明が属する技術分野において一般的に許容される誤差も考慮されることは勿論である。一般的には、反射中心波長については±30nm程度の差があっても実質的に等しいとみなされ、±20nm以内の差であることが好ましく、±10nm以内の差であることがより好ましい。
【0017】
[赤外光反射層積層体、赤外光反射板]
本発明の赤外光反射層積層体は、それぞれコレステリック液晶相を固定してなる光反射層X1、光反射層X2、光反射層X3、光反射層X4および光反射層X5を有し; 前記光反射層X1と前記光反射層X2が互いに逆方向の円偏光を反射し、前記光反射層X1の反射中心波長λ1(nm)と前記光反射層X2の反射中心波長λ1’(nm)が、実質的に等しく、且ついずれも1190〜1290nmの範囲にあり; 前記光反射層X3と前記光反射層X4が互いに逆方向の円偏光を反射し、前記光反射層X3の反射中心波長λ2(nm)と前記光反射層X4の反射中心波長λ2’(nm)が、実質的に等しく、且ついずれも1010〜1070nmの範囲にあり; 前記光反射層X5の反射中心波長λ3(nm)が、850〜900nmの範囲にあり; 波長790nmでの反射率が15%以下であり、かつ、赤外線を反射することを特徴とする。
また、本発明の赤外光反射板は、基板と、該基板上に配置された本発明の赤外光反射層積層体を含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の赤外光反射板は、合わせガラス等の他の支持部材に一体化させて用いられてもよい。その際に、光反射層とともに基板も、他の支持部材と一体化してもよいし、基板を剥離して、光反射層を支持部材と一体化してもよい。すなわち、本発明の赤外光反射層積層体は、基板を含んでいても、含んでいなくてもよく、例えば合わせガラスの間に、2枚の合わせガラス用中間膜で挟まれた、基板を含まない赤外光反射層積層体も、本発明に含まれる。
以下、本発明の好ましい態様について説明する。なお、本発明の赤外光反射板と本発明の赤外光反射層積層体に共通する点については、本発明の赤外光反射板の説明に記載する。
【0019】
<赤外光反射層積層体、赤外光反射板の構成>
以下、図面を用いて、本発明の赤外光反射層積層体および赤外光反射板の好ましい実施形態について説明する。
【0020】
(5層の光反射層を有する態様)
図1に示す赤外光反射板は、基板12の一方の表面に、それぞれ、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層X1(以下、光反射層14aとも言う)、光反射層X2(以下、光反射層14bとも言う)、光反射層X3(以下、光反射層16aとも言う)、光反射層X4(以下、光反射層16bとも言う)及び光反射層X5(以下、光反射層18または光反射層18aとも言う)を有する。ただし、本発明においては、光反射層14a、14b、16a、16b及び18の基板12からの積層順は、特に限定されるものではなく、図1の記載される順番以外の積層順の赤外光反射板も本発明に含まれる。本発明の赤外光反射板は、その中でも、図1のように光反射層14aと14bとが隣接しており、かつ光反射層16aと16bとが隣接していることが、特に遮熱性能を重視して高める場合に好ましい。また、5つの光反射層が、基板の一方の表面に積層されている必要はなく、基板の双方の表面に1以上の光反射層を有する態様であってもよい。
【0021】
光反射層14a、14b、16a、16b及び18は、コレステリック液晶相を固定してなる層であるので、当該コレステリック液晶相の螺旋ピッチに基づいて、特定の波長の光を反射する光選択反射性を示す。本発明の1つの実施形態では、隣接する光反射層14aと14bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに、それらの反射中心波長λ1とλ1’が実質的に等しい(以下、λ1とλ1’が実質的に等しいとき、λ1とλ1’をまとめてλ14とも言う。)。また、同様に、隣接する光反射層16aと16bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに、それらの反射中心波長λ2とλ2’が実質的に等しい(以下、λ2とλ2’が実質的に等しいとき、λ2とλ2’をまとめてλ16とも言う。)。光反射層18は反射中心波長としてλ18であり、螺旋方向は右螺旋でも左螺旋でもどちらでも構わない。本実施形態では、λ14、λ16及びλ18はそれぞれ異なるので、光反射層14aと14bによって所定の波長λ14の左円偏光及右円偏光を選択反射するとともに、光反射層16aと16bによって、波長λ14とは異なる波長λ16の左円偏光及び右円偏光を選択反射しており、さらに光反射層18で左円偏光或いは右円偏光のどちらかを選択反射しており、全体として、反射特性の広帯域化が図れている。
【0022】
本発明の赤外光反射層積層体および赤外光反射板は、波長790nmでの反射率が15%以下であり、かつ、赤外線を反射することも特徴とする。
図1に示す赤外光反射板10は、光反射層14aと14bによる選択反射の中心波長λ14が、1190〜1290nmの範囲にあり、光反射層16aと16bによる選択反射の中心波長λ16が、1010〜1070nmの範囲にあり、光反射層18による選択反射の中心波長λ18が、850〜900nmの範囲にある。本発明では、選択反射波長がそれぞれ前記範囲である5つの光反射層を利用することで、赤外線の反射効率を改善している。その結果、同一の構成の赤外光反射板と比較して、遮熱性がさらに改善されている。図9に示す通り、太陽光エネルギー強度のスペクトル分布は、短波長であるほど高エネルギーであるという一般的傾向を示すが、赤外光波長域のスペクトル分布には、波長950〜1130nm、及び波長1130〜1350nmに、2つのエネルギー強度のピークが存在する。本発明者が鋭意検討した結果、選択反射の中心波長が、1010〜1070nm(より好ましくは1020〜1060nm)の範囲にある少なくとも一組の光反射層と、選択反射の中心波長が、1190〜1290nm(より好ましくは1200〜1280nm)の範囲にある少なくとも一組の光反射層とを利用することにより、該2つのピークに相当する光をより効率的に反射することができ、その結果、遮熱性をより改善することができることがわかった。
また、波長950nm以下の領域に対しては、反射波長帯域が短波長寄りであればある程遮熱性は向上することが認められるが、反射波長帯域が可視光領域にかかると反射光に色味が生じてしまい、問題である。本発明では、斜めからの観察(通常の観察条件として、法線方向から約60°まで傾けた場合を想定している)までを考慮し、短波側の反射波長位置を790nm以上とする(詳しくは、波長790nmでの反射率が15%以下に制御する)ことで、反射光の色味を抑制している。本発明の赤外光反射層積層体および赤外光反射板は、波長790nmでの反射率が10%以下であることがより好ましく、8%以下であることが特に好ましい。
さらに、本発明の赤外光反射層積層体および赤外光反射板は、波長800nmでの反射率が15〜50%の範囲であることが、より本発明の赤外光反射層積層体および赤外光反射板の色味変化を抑制する観点から好ましく、20〜50%の範囲であることがより好ましく、30〜50%の範囲であることが特に好ましい。
反射光の色味抑制と遮熱性向上とを両立させるために、光反射層18の選択反射の中心波長λ18は850〜900nm(より好ましくは850〜880nm)の範囲にあることが好ましい。
【0023】
上記反射中心波長を示すコレステリック液晶相の螺旋ピッチは、一般的には、波長λ14で760nm〜840nm程度、波長λ16で650〜690nm程度、波長λ18で550〜580nm程度である。
また、各光反射層の厚みは、1μm〜8μm程度(好ましくは3〜7μm程度)である。但し、これらの範囲に限定されるものではない。層の形成に用いる材料(主には液晶材料及びキラル剤)の種類及びその濃度等を調整することで、所望の螺旋ピッチの光反射層を形成することができる。また層の厚みは、塗布量を調整することで所望の範囲とすることができる。
【0024】
上記した通り、隣接する光反射層14aと14bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であり、同様に、隣接する光反射層16aと16bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆である。この様に、逆向きのコレステリック液晶相からなり、選択反射の中心波長が実質的に等しい光反射層を近くに配置することで、同波長の左円偏光及び右円偏光の双方を反射することができる。この作用は、基板12の光学特性とは無関係であり、基板12の光学特性には影響されずに得られる作用である。
例えば、光反射層16bを通過した光(波長λ16の右円偏光が反射され、左円偏光のみが透過した光)が、次に通過するのが16bではなく14aや14bのように、選択反射の中心波長がλ16ではない場合、波長λ16の左円偏光成分は螺旋ピッチのサイズが異なるコレステリック液晶層を通過することになる。この場合、波長λ16の左円偏光成分は、他の光反射層中のコレステッリク液晶相の旋光性の影響を僅かではあるが受けることになり、左円偏光成分の波長がシフトするなどの変化が生じる。当然のことながら、この現象は、「波長λ16の左円偏光成分」に限って起こるわけではなく、ある波長のある円偏光が、異なる螺旋ピッチのコレステリック液晶相を通過する場合に生じる変化である。本発明者が種々検討した結果、経験則的なデータではあるが、所定の螺旋ピッチのコレステリック液晶層によって反射されなかった一方の円偏光成分が、反射されないまま、螺旋ピッチが異なる他のコレステリック液晶層を通過する場合、通過する当該層の数が3以上になると、通過する円偏光成分への悪影響が顕著になり、その後に、当該円偏光を反射可能なコレステリック液晶層に到達しても、当該層による反射率が顕著に低下することがわかった。本発明では、選択反射の中心波長が互いに実質的に等しく、且つ螺旋方向が互いに異なる一組の光反射層は、隣接させて配置しなくても、本発明の効果が得られるが、遮熱性能をより向上させるためには、当該一組の光反射層の間に配置される、他の光反射層(螺旋ピッチが異なるコレステリック液晶相を固定して形成された、選択反射の中心波長が異なる光反射層)は、2以下であるのが好ましい。特に、遮熱性能をより向上させるためには反射波長帯域が長波長側になる光反射層14aと14b、16aと16bは、当該一組の光反射層が隣接しているのが好ましい。
他方、反射光色味の調整のためには、遮熱性能の向上を抑えるようにした方がよく、光反射層14aと14b、16aと16bは、それぞれ隣接していない方が好ましい。
なお、本発明では、互いに逆の旋光性(即ち右又は左旋光性)のコレステリック液晶相を固定してなる対をなす2つの光反射層は、隣接している場合には斜め方向でも高い遮熱性能を維持するため、長波長側の光反射層は隣接させておくことが好ましい。他方、短波長側の光反射層は、対にせずに1層のみとするか、あるいは対にして2層を用いるにしても隣接しないように設置し、反射率を抑えて反射光の色味の調整を行うことが好ましい。すなわち、前記光反射層X1と前記光反射層X2が隣接しておらず、かつ、前記光反射層X3と前記光反射層X4が隣接していないことが、より好ましい。
【0025】
(6層の光反射層を有する態様)
図2に、本発明の他の実施態様の赤外光反射板の断面図を示す。図2に示す赤外光反射板10’は、基板12の一方の表面に、光反射層X1(光反射層14a)、光反射層X2(光反射層14b)、光反射層X3(光反射層16a)、光反射層X4(光反射層16b)、光反射層X5(光反射層18a)及び光反射層X6(以下、光反射層18bとも言う)を有する。ここで、光反射層18aと18bは、それぞれのコレステリック液晶相の螺旋方向が互いに逆であるとともに、それらの中心反射波長λ3とλ3’が実質的に等しい(以下、λ3とλ3’が実質的に等しいとき、λ3とλ3’をまとめてλ18とも言う)。光反射層14aと14bは、遮熱性能をより向上させるために隣接しているのが好ましい。他方、光反射層18aと18bは、遮熱性能を向上させるよりも反射光色味の調整のために設置位置を考え、間に2つ以上の層を配置するのが好ましい。光反射層16aと16bは、赤外光反射板として遮熱性能をより重視する場合には隣接させ、反射光色味抑制をより重視する場合には隣接させないように配置するのが好ましい。これらの中でも、前記光反射層X1と前記光反射層X2とが隣接しており、前記光反射層X5と前記光反射層X6とが間に少なくとも2つの光反射層を介して積層されていることが、より好ましい。
なお、その他の反射率や遮熱性能の好ましい態様については、5層の光反射層を有する態様と好ましい範囲と同様である。
【0026】
(その他の態様)
本発明の赤外光反射板のコレステリック液晶層の態様は、図1及び図2に示す態様に限定されるものではない。基板の一方の表面上に、7層以上光反射層積層した構成であってもよいし、また、基板の双方の表面上に、1組以上ずつ(合計で7層以上)光反射層積層した構成であってもよい。また、実質的に等しい反射中心波長を示す2組以上の光反射層を有する態様であってもよい。
【0027】
また、本発明の赤外光反射板は、反射波長をより広帯域化することを目的として、他の赤外光反射板と組み合わせて用いても勿論よい。また、コレステリック液晶相の選択反射特性以外の原理により所定の波長の光を反射する光反射層を有していてもよい。組合せ可能な部材としては、特表平4−504555号公報に記載の複合膜及びそれを構成している各層、並びに特表2008−545556号公報に記載の多層ラミネート等が挙げられる。
【0028】
また、本発明の赤外線反射板は、勿論、上記2山のピークスペクトル以外の赤外線波長領域(例えば、1400〜2500nm)に対しても、それぞれの波長域に合わせた選択反射特性を有していてもよい。例えば、コレステリック液晶相を固定してなる光反射層を、特には、互いに逆の旋光性(即ち右又は左旋光性)のコレステリック液晶相を固定してなる光反射層の1組をさらに積層することにより、選択反射波長域を広帯域化し、遮熱性能をより向上させることができる。
【0029】
<各層の材料>
次に、本発明の赤外光反射板の作製に用いられる材料など好ましい例について詳細に説明する。
1.光反射層形成用材料
本発明の赤外光反射板では、各光反射層の形成に、硬化性の液晶組成物を用いるのが好ましい。前記液晶組成物の好ましい一例は、棒状液晶化合物、光学活性化合物(キラル剤)、及び重合開始剤を少なくとも含有する。各成分を2種以上含んでいてもよい。例えば、重合性の液晶化合物と非重合性の液晶化合物との併用が可能である。また、低分子液晶化合物と高分子液晶化合物との併用も可能である。更に、配向の均一性や塗布適性、膜強度を向上させるために、水平配向剤、ムラ防止剤、ハジキ防止剤、及び重合性モノマー等の種々の添加剤から選ばれる少なくとも1種を含有していてもよい。また、前記液晶組成物中には、必要に応じて、さらに重合禁止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、金属酸化物微粒子等を、光学的性能を低下させない範囲で添加することができる。
【0030】
(1) 液晶化合物
本発明に使用可能な液晶化合物は、いわゆる棒状液晶化合物であっても、円盤状液晶化合物であってもよく、特に限定されない。その中でも、棒状液晶化合物であることが好ましい。
本発明に使用可能な棒状液晶化合物の例は、棒状ネマチック液晶化合物である。前記棒状ネマチック液晶化合物の例には、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類及びアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0031】
本発明に利用する棒状液晶化合物は、重合性であっても非重合性であってもよい。重合性基を有しない棒状液晶化合物については、様々な文献(例えば、Y. Goto et.al., Mol.Cryst. Liq. Cryst. 1995, Vol. 260, pp.23−28)に記載がある。
重合性棒状液晶化合物は、重合性基を棒状液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、及びアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、棒状液晶化合物の分子中に導入できる。重合性棒状液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性棒状液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、及び特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性棒状液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0032】
(2) 光学活性化合物(キラル剤)
前記液晶組成物は、コレステリック液晶相を示すものであり、そのためには、光学活性化合物を含有しているのが好ましい。但し、上記棒状液晶化合物が不斉炭素原子を有する分子である場合には、光学活性化合物を添加しなくても、コレステリック液晶相を安定的に形成可能である場合もある。前記光学活性化合物は、公知の種々のキラル剤(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN、STN用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)から選択することができる。光学活性化合物は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もカイラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。光学活性化合物(キラル剤)は、重合性基を有していてもよい。光学活性化合物が重合性基を有するとともに、併用する棒状液晶化合物も重合性基を有する場合は、重合性光学活性化合物と重合性棒状液晶合物との重合反応により、棒状液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、光学活性化合物から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性光学活性化合物が有する重合性基は、重合性棒状液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、光学活性化合物の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基又はアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、光学活性化合物は、液晶化合物であってもよい。
【0033】
前記液晶組成物中の光学活性化合物は、併用される液晶化合物に対して、1〜30モル%であることが好ましい。光学活性化合物の使用量は、より少なくした方が液晶性に影響を及ぼさないことが多いため好まれる。従って、キラル剤として用いられる光学活性化合物は、少量でも所望の螺旋ピッチの捩れ配向を達成可能なように、強い捩り力のある化合物が好ましい。この様な、強い捩れ力を示すキラル剤としては、例えば、特開2003−287623号公報に記載のキラル剤が挙げられ、本発明に好ましく用いることができる。
【0034】
(3) 重合開始剤
前記光反射層の形成に用いる液晶組成物は、重合性液晶組成物であるのが好ましく、そのためには、重合開始剤を含有しているのが好ましい。本発明では、紫外線照射により硬化反応を進行させるので、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジン及びフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)及びオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
【0035】
光重合開始剤の使用量は、液晶組成物(塗布液の場合は固形分)の0.1〜20質量%であることが好ましく、1〜8質量%であることがさらに好ましい。
【0036】
(4) 配向制御剤
前記液晶組成物中に、安定的に又は迅速にコレステリック液晶相となるのに寄与する配向制御剤を添加してもよい。配向制御剤の例には、含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマー、及び下記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物が含まれる。これらから選択される2種以上を含有していてもよい。これらの化合物は、層の空気界面において、液晶化合物の分子のチルト角を低減若しくは実質的に水平配向させることができる。尚、本明細書で「水平配向」とは、液晶分子長軸と膜面が平行であることをいうが、厳密に平行であることを要求するものではなく、本明細書では、水平面とのなす傾斜角が20度未満の配向を意味するものとする。液晶化合物が空気界面付近で水平配向する場合、配向欠陥が生じ難いため、可視光領域での透明性が高くなり、また赤外領域での反射率が増大する。一方、液晶化合物の分子が大きなチルト角で配向すると、コレステリック液晶相の螺旋軸が膜面法線からずれるため、反射率が低下したり、フィンガープリントパターンが発生し、ヘイズの増大や回折性を示したりするため好ましくない。
配向制御剤として利用可能な前記含フッ素(メタ)アクリレート系ポリマーの例は、特開2007−272185号公報の[0018]〜[0043]等に記載がある。
【0037】
以下、配向制御剤として利用可能な、下記一般式(X1)〜(X3)について、順に説明する。
【0038】
【化1】

【0039】
式中、R1、R2及びR3は各々独立して、水素原子又は置換基を表し、X1、X2及びX3は単結合又は二価の連結基を表す。R1〜R3で各々表される置換基としては、好ましくは置換もしくは無置換の、アルキル基(中でも、無置換のアルキル基又はフッ素置換アルキル基がより好ましい)、アリール基(中でもフッ素置換アルキル基を有するアリール基が好ましい)、置換もしくは無置換のアミノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子である。X1、X2及びX3で各々表される二価の連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、二価の芳香族基、二価のヘテロ環残基、−CO−、―NRa−(Raは炭素原子数が1〜5のアルキル基又は水素原子)、−O−、−S−、−SO−、−SO2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。二価の連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−CO−、−NRa−、−O−、−S−及び−SO2−からなる群より選ばれる二価の連結基又は該群より選ばれる基を少なくとも二つ組み合わせた二価の連結基であることがより好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましい。二価の芳香族基の炭素原子数は、6〜10であることが好ましい。
【0040】
【化2】

【0041】
式中、Rは置換基を表し、mは0〜5の整数を表す。mが2以上の整数を表す場合、複数個のRは同一でも異なっていてもよい。Rとして好ましい置換基は、R1、R2、及びR3で表される置換基の好ましい範囲として挙げたものと同様である。mは、好ましくは1〜3の整数を表し、特に好ましくは2又は3である。
【0042】
【化3】

【0043】
式中、R4、R5、R6、R7、R8及びR9は各々独立して、水素原子又は置換基を表す。R4、R5、R6、R7、R8及びR9でそれぞれ表される置換基は、好ましくは一般式(XI)におけるR1、R2及びR3で表される置換基の好ましいものとして挙げたものと同様である。
【0044】
本発明において配向制御剤として使用可能な、前記式(X1)〜(X3)で表される化合物の例には、特開2005−99248号公報に記載の化合物が含まれる。
なお、本発明では、配向制御剤として、前記一般式(X1)〜(X3)で表される化合物の一種を単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0045】
前記液晶組成物中における、一般式(X1)〜(X3)のいずれかで表される化合物の添加量は、液晶化合物の質量の0.01〜10質量%が好ましく、0.01〜5質量%がより好ましく、0.02〜1質量%が特に好ましい。
【0046】
2. 基板
本発明の赤外光反射板は、基板を有する。但し、本発明の赤外光反射板は、その使用態様により、基板を含まない本発明の赤外光反射層積層体として用いてもよい。
当該基板は自己支持性があり、上記光反射層を支持するものであれば、材料及び光学的特性についてなんら限定はない。用途によっては、紫外光に対する高い透明性が要求されるであろう。
【0047】
前記基板(図1や図2などにおける基板12)は、例えば、ポリマーフィルムであり、その光学特性については特に制限はない。本発明の赤外光反射板は、前記基板が、ポリマーフィルムであることが好ましい。本発明では、特に、面内レターデーションReについてバラツキのある部材を基板として用いてもよい。この点で、基板としてλ/2板を用い、その光学特性を光反射特性の改善に積極的に利用している従来技術とは区別される。但し、基板12としてλ/2板等の正確に位相差が調整されている位相差板を利用することを妨げるものではない。
【0048】
具体的には、基板12の光学特性については特に制限はなく、位相差を示す位相差板であっても、又は光学的に等方性の基板であってもよい。即ち、基板12は、その光学特性が厳密に調整された、λ/2板等の位相差板である必要はない。本発明においては、基板12の波長1000nmにおける面内レターデーションRe(1000)のバラツキが、20nm以上であるポリマーフィルム等からなっていてもよい。さらに、Re(1000)のバラツキが100nm以上であるポリマーフィルム等からなっていてもよい。また基板の面内レターデーションについても特に制限はなく、例えば、波長1000nmの面内レターデーションRe(1000)が、800〜13000nmである位相差板等を用いることができる。
【0049】
前記基板は、所定の光学特性を満足するように、生産工程を管理して製造される、λ/2板等の特殊の位相差板であってもよいし、所定の位相差板としては使用不可能なポリマーフィルム等であってもよい。
【0050】
可視光に対する透過性が高いポリマーフィルムとしては、液晶表示装置等の表示装置の部材として用いられる種々の光学フィルム用のポリマーフィルムが挙げられる。前記基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステルフィルム;ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリメチルメタクリレートフィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム;ポリイミドフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、などが挙げられる。ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロースが好ましい。
【0051】
3.非光反射性の層
また、本発明の赤外光反射板は、有機材料及び/又は無機材料を含む非光反射性の層を有していてもよい。本発明に利用可能な前記非光反射性の層の一例には、他の部材(例えば、中間膜シート等)と密着するのを容易とするための易接着層が含まれる。易接着層は、一方又は双方の最外層として配置されているのが好ましい。例えば、少なくとも5つの光反射層を基板の一方の表面に配置した態様では、最上層の光反射層の上に、易接着層を配置することができる。及び/又は、基板の裏面(光反射層が配置されていない側の基板の面)に、易接着層を配置することもできる。易接着層の形成に利用される材料は、当該易接着層を光反射層に隣接して形成するか、もしくは基板に隣接して形成するかによって、又は接着する他の部材の材質等によって、種々の材料から選択される。また、本発明に利用可能な前記非光反射性の層の他の例には、コレステリック液晶相の光反射層と、基板との密着力を上げる下塗り層、及び光反射層を形成する際に利用される、液晶化合物の配向方向をより精密に規定する配向層が含まれる。下塗り層及び配向層は、前記少なくとも1つの光反射層と基板との間に配置されるのが好ましい。また配向層を、光反射層間に配置してもよい。
【0052】
(易接着層)
本発明の赤外光反射体は、一方又は双方の最外層として、易接着層を有していてもよい。易接着層は、例えば、合わせガラス用中間膜との接着性を改善する機能を有する。より具体的には、易接着層は、コレステリック液晶相の光反射層及び/又は基板と、合わせガラス用中間膜との接着性を改善する機能を有する。易接着層の形成に利用可能な材料としては、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂が挙げられる。ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコール(PVA)とブチルアルデヒドを酸触媒で反応させて生成するポリビニルアセタールの一種であり、下記構造の繰り返し単位を有する樹脂である。
【0053】
【化4】

【0054】
前記易接着層は、塗布により形成するのが好ましい。例えば、コレステリック液晶相の光反射層の表面及び/又は基板の裏面(光反射層が形成されていない側の面)に、塗布により形成してもよい。より具体的には、ポリビニルブチラール樹脂の1種を有機溶媒に溶解して塗布液を調製し、該塗布液を、コレステリック液晶相の光反射層の表面及び/又は基板の裏面に塗布して、所望により加熱して乾燥し、易接着層を形成することができる。塗布液の調製に用いる溶媒としては、例えば、メトキシプロピルアセテート(PGMEA)、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロパノール(IPA)等を用いることができる。塗布方法としては、従来公知の種々の方法を利用することができる。乾燥時の温度は、塗布液の調製に用いた材料によって好ましい範囲が異なるが、一般的には、140〜160℃程度であるのが好ましい。乾燥時間についても特に制限はないが、一般的には、5〜10分程度である。
【0055】
また、前記易接着層は、いわゆるアンダーコート層といわれる、アクリル樹脂、スチレン/アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等からなる層であってもよい。これらの材料からなる易接着層も塗布により形成することができる。なお、市販されているポリマーフィルムの中には、アンダーコート層が付与されているものもあるので、それらの市販品を基板として利用することもできる。
なお、易接着層の厚みは、0.1〜2.0μmが好ましい。
【0056】
(下塗り層)
本発明の赤外光反射体は、コレステリック液晶相の光反射層と基板との間に下塗り層を有していてもよい。コレステリック液晶相の光反射層と基板との密着力が弱いと、コレステリック液晶相の光反射層を積層して製造する際の工程で剥離故障が起き易くなったり、赤外光反射板として合わせガラスにした際の強度(耐衝撃性)低下を引き起こす。よって、下塗り層として、コレステリック液晶層と基板との接着性を向上させることができる層を利用することができる。一方で、基板、又は基板と下塗り層とを剥離して、中間膜シート等の部材と光反射層を一体化する場合は、基板と下塗り層、又は下塗り層とコレステリック液晶相の光反射層との界面には、剥離可能な程度の接着性の弱さが必要である。後工程で積層中間膜シートにすることを考えると、下塗り層と基板との界面で剥離する方が好ましい。
下塗り層の形成に利用可能な材料の例には、アクリル酸エステル共重合体、ポリ塩化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム(SBR)、水性ポリエステル等が含まれる。また、下塗り層の表面を中間膜と接着する態様では、下塗り層と中間膜との接着性が良好であるのが好ましく、その観点では、下塗り層は、ポリビニルブチラール樹脂も、前記材料とともに含有しているのが好ましい。また、下塗り層は、上記したように密着力を適度に調節する必要があるので、グルタルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサン等のジアルデヒド類またはホウ酸等の硬膜剤を適宜用いて硬膜させることが好ましい。硬膜剤の添加量は、下塗り層の乾燥質量の0.2〜3.0質量%が好ましい。
下塗り層の厚みは、0.05〜0.5μmが好ましい。
【0057】
(配向層)
本発明の赤外光反射体は、コレステリック液晶相の光反射層と基板との間に配向層を有していてもよい。配向層は、コレステリック液晶層中の液晶化合物の配向方向をより精密に規定する機能を有する。配向層は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成等の手段で設けることができる。さらには、電場の付与、磁場の付与、或いは光照射により配向機能が生じる配向層も知られている。配向層は、ポリマーの膜の表面に、ラビング処理により形成するのが好ましい。
配向層は、コレステリック液晶相の光反射層と隣接する必要があるので、コレステリック液晶相の光反射層と基板又は下塗り層との間に設けるのが好ましい。但し、下塗り層が配向層の機能を有していてもよい。また、光反射層の間に配向層を有していてもよい。
【0058】
配向層は、隣接する、コレステリック液晶相の光反射層、及び下塗り層又は基板のいずれに対しても、ある程度の密着力を有することが好ましい。ただし、後述する本発明の実施態様の一例である、コレステリック液晶相の光反射層から基板を剥離しながら積層中間膜シートを作製する場合には、コレステリック液晶相の光反射層/配向層/下塗り層/基板のいずれかの界面にて、剥離ができる程度の弱さが必要である。剥離する界面は、どの界面でも構わないが、後工程で積層中間膜シートにすることを考えると、配向層と下塗り層との界面で剥離する方が好ましい。
【0059】
配向層として用いられる材料としては、有機化合物のポリマーが好ましく、それ自体が架橋可能なポリマーか、或いは架橋剤により架橋されるポリマーがよく用いられる。当然、双方の機能を有するポリマーも用いられる。ポリマーの例としては、ポリメチルメタクリレ−ト、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、スチレン/マレインイミド共重合体、ポリビニルアルコ−ル及び変性ポリビニルアルコ−ル、ポリ(N−メチロ−ルアクリルアミド)、スチレン/ビニルトルエン共重合体、クロロスルホン化ポリエチレン、ニトロセルロース、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル/塩化ビニル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロ−ス、ゼラチン、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリカーボネート等のポリマー及びシランカップリング剤等の化合物を挙げることができる。好ましいポリマーの例としては、ポリ(N−メチロ−ルアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロ−ス、ゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマーであり、さらにゼラチン、ポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールが好ましく、特にポリビルアルコール及び変性ポリビニルアルコールを挙げることができる。また、配向層の表面を中間膜と接着する態様では、配向層と中間膜との接着性が良好であるのが好ましく、その観点では、配向層は、ポリビニルブチラール樹脂も、前記材料とともに含有しているのが好ましい。
前記配向層の厚みは、0.1〜2.0μmが好ましい。
【0060】
4.添加剤
また、本発明の赤外光反射層積層体および赤外光反射体の遮熱効果は、反射特性のみならず、材料の光吸収特性によって遮熱効果を改善することもできる。本発明の赤外光反射層積層体および赤外光反射体は、添加剤を任意の層に含んでいてもよい。
例えば、近赤外光域、好ましくは、780〜940nm程度の波長域範囲に吸収特性を示す色材を、基板もしくは少なくとも一つの光反射層に添加することによって、又は該色材を含有する層を別途配置することによって、近赤外域の光を吸収し、遮熱性をさらに改善することもできる。
【0061】
また、金属酸化物微粒子の中には、赤外域、具体的には1400nm〜2500nmに、吸収特性及び/又は反射特性を有する材料も存在する。本発明では、当該性質を示す金属酸化物微粒子を利用することもでき、例えば、当該金属酸化物微粒子を、基板もしくは少なくとも一つの光反射層に添加することによって、又は該金属酸化物微粒子を含有する層を別途配置することによって、1400〜2500nm程度の波長域範囲の光を吸収及び/又は反射し、遮熱性をさらに改善することもできる。
【0062】
この様に、色材及び/又は金属酸化物微粒子を利用して、遮熱性を改善した態様は、コレステリック液晶相を固定した光反射層をさらに積層することで広帯域化するよりも、製造適性及び製造コストの点で好ましい。
【0063】
また、コレステリック液晶相を固定して形成される各光反射層は、紫外光照射によって、劣化する傾向があり、特に、380nm以下の波長の紫外光に対する劣化が顕著であることが、本発明者の検討によりわかった。よって、本発明では、例えば、当該波長域の光を吸収する材料(紫外線吸収剤)を、基板もしくは少なくとも一つの光反射層に添加することによって、又は当該材料を含有する層を別途配置することによって、劣化を顕著に抑制することができるので好ましい。
【0064】
なお、色材、金属酸化物微粒子及び紫外線吸収剤等は、液晶の配向に影響する場合があるので、これらの材料は、基板もしくは光反射層以外の他の層中に添加する、又は光反射層が他の部材と一体化される場合は、当該部材中に添加することが好ましい。これらの材料は同一の層に添加されていてもよいし、互いに異なる層にそれぞれ添加されていてもよい。それぞれの材料の機能による効果をより効率的に得られるように、それぞれの材料を添加する部材(層、基板等)が決定されるであろう。また、これらの材料の種々の性質(ヘイズに与える影響、溶解性、溶融性、塗布性、溶融性)を考慮して、面状故障などが生じず、透明性を顕著に低下させないように、添加される部材が決定されるであろう。
例えば、紫外線吸収剤は、光反射層と比較して、より先に光が入射する部材に添加されるのが好ましい。当該部材に紫外線吸収剤を添加することにより、光反射層が紫外線によって劣化するのを抑制することができる。
また、色材や金属酸化物微粒子は、光反射層と比較して、より後に光が入射する部材に添加されるのが好ましい。
【0065】
図面には例示していないが、紫外線吸収剤、色材、金属酸化物微粒子などの添加剤は、本発明の態様において、本発明の赤外光反射層積層体および赤外光反射体の任意の層に含まれていてもよい。その中でも、前記添加剤は、前記基板または前記非光反射性の層に含まれていることが好ましく、例えば、易接着層、配向層、下塗り層、基板のいずれかに含有させるのが好ましい。いずれの層に添加するかは、コレステリック液晶相の光反射層と太陽光との位置関係に応じて、選択される。紫外線吸収剤は、コレステリック液晶相の光反射層よりも太陽光に近い側の層に含有させるのが好ましく、色材、金属酸化物微粒子は、コレステリック液晶相の光反射層よりも太陽光に遠い側の層に含有させるのが好ましい。実施態様により、紫外線吸収剤、色材、金属酸化物微粒子それぞれを含有させるのに好ましい層が入れ替わるため、各素材については、適宜、組成や溶媒、使用量などを調整し、最適と思われる含有方法をとることが必要とされる。
【0066】
(紫外線吸収剤)
本発明の赤外光反射体は、光反射層、易接着層、下塗り層、配向層、及び基板の少なくとも1つに、紫外線吸収剤を含有するのが好ましい。紫外線吸収剤の種類によっては、液晶の配向に影響を与えるため、光反射層以外の部材(層、基板等)に添加するのが好ましい。本発明の実施態様は、種々の形態をとり得るが、光反射層と比較して、より先に光が入射する部材中に添加することが好ましい。例えば、屋外側に配置されるガラス板と、コレステリック液晶相の光反射層との間に配置される層中に添加するのが好ましい。或いは、屋外側に配置されるガラス板に接着させられる中間膜や屋外側に配置されるガラス板そのものに含有させることも好ましい。
紫外線吸収剤として使用可能な化合物の例としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾジチオール系、クマリン系、ベンゾフェノン系、サリチル酸エステル系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤;酸化チタン、酸化亜鉛などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤の例には、Tinuvin326,328,479(いずれもチバ・ジャパン社製)等が含まれる。また、紫外線吸収剤の種類、配合量は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。特に、紫外線吸収剤を含有する部材が、波長380nm以下の紫外線の透過率を0.1%以下にする作用があると、光反射層の劣化を顕著に軽減でき、紫外線による黄変を格段に軽減できるので好ましい。よって、この特性を満足する様に、紫外線吸収剤の種類及び配合量を決定するのが好ましい。
【0067】
(色材)
本発明の赤外光反射体は、光反射層、易接着層、下塗り層、配向層、及び基板の少なくとも1つに、色材を含有するのが好ましい。色材の種類によっては、液晶の配向に影響を与えるため、光反射層以外の部材(層、基板等)に添加するのが好ましい。なお、色材を含有する部材を光が通過する際に生じる拡散や吸収等により、コレステリック液晶相の光反射層での赤外光反射の効率を低下させ、遮熱性能を低下させる場合がある。よって、本発明の実施態様は、種々の形態をとり得るが、光反射層と比較して、より後に光が入射する部材中に添加することが好ましい。より具体的には、室内側に配置されるガラス板と、コレステリック液晶相の光反射層との間に配置される層中に含有するのが好ましい。或いは、室内側に配置されるガラス板に接着させられる中間膜や室内側に配置されるガラス板そのものに含有されることも好ましい。
【0068】
色材としては、染料、顔料いずれも用いることができる。特に、780〜940nmの波長領域に対する吸収材特性を示す材料を用いると、遮熱性をより改善できるので好ましい。また、着色を軽減できる点でも好ましい。780〜940nmの波長領域に対する吸収材料としては、シアン染料、シアン顔料が好ましい。
シアン染料として用いられる染料の例としては、インドアニリン染料、インドフェノール染料のようなアゾメチン染料;シアニン染料、オキソノール染料、メロシアニン染料のようなポリメチン染料;ジフェニルメタン染料、トリフェニルメタン染料、キサンテン染料のようなカルボニウム染料;フタロシアニン染料;アントラキノン染料;例えばカップリング成分としてフェノール類、ナフトール類、アニリン類を有するアリールもしくはヘテリルアゾ染料、インジゴ・チオインジゴ染料を挙げることができる。これらの染料は、クロモフォアの一部が解離して初めてシアンを呈するものであってもよく、その場合のカウンターカチオンはアルカリ金属や、アンモニウムのような無機のカチオンであってもよいし、ピリジニウム、4級アンモニウム塩のような有機のカチオンであってもよく、さらにはそれらを部分構造に有するポリマーカチオンであってもよい。また、ポリアゾ染料などのブラック染料も使用することができる。
【0069】
シアン顔料として用いられる顔料の例としては、フタロシアニン顔料、アントラキノン系のインダントロン顔料(たとえばC. I. Pigment Blue 60など)、染め付けレーキ顔料系のトリアリールカルボニウム顔料が好ましく、特にフタロシアニン顔料(好ましい例としては、C. I. Pigment Blue 15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6などの銅フタロシアニン、モノクロロないし低塩素化銅フタロシアニン、アルニウムフタロシアニンでは欧州特許860475号に記載の顔料、C. I. Pigment Blue 16である無金属フタロシアニン、中心金属がZn、Ni、Tiであるフタロシアニンなど、中でも好ましいものはC. I. Pigment Blue 15:3、同15:4、アルミニウムフタロシアニン)が最も好ましい。
【0070】
上記した通り、光吸収素材である色材を利用すると、可視光線波長領域の透過率スペクトルに偏りが生じ、透過光に色味が生じる場合がある。用途によっては、この特性を積極的に利用して、所望の色となるように色材を選択することができる。一方、用途によっては(例えば、車のフロントガラス等)では、着色が好ましくない場合もある。本発明者が検討したところ、吸収極大波長が780〜940nmである吸収材料とともに、他の吸収特性を示す吸収材料を併用することで、色味をニュートラルに調整し得ることがわかった。例えば、赤外光反射板の透過光の色味をニュートラルな方向に調整するためには、上記シアン染料、及び/又はシアン顔料とともに、それ以外の色材(イエロー染料、イエロー顔料、マゼンタ染料、マゼンタ顔料等)を用いることが好ましい。これら色材は、各種文献に記載されている公知のものが利用できる。(染料は特開2005−105175号公報等に、顔料は特開2009−67956号公報等に記載されている。)
【0071】
(金属酸化物微粒子)
本発明の赤外光反射体は、光反射層、易接着層、下塗り層、配向層、及び基板の少なくとも1つに、1400〜2500nmの範囲に吸収及び/又は反射特性を有する金属酸化物微粒子を含有するのが好ましい。金属酸化微粒子の種類によっては、液晶の配向に影響を与えるため、光反射層以外の部材(層、基板等)に添加するのが好ましい。なお、金属酸化微粒子を含有する部材を光が通過する際に生じる拡散や吸収等により、コレステリック液晶相の光反射層での赤外光反射の効率を低下させ、遮熱性能を低下させる場合がある。よって、本発明の実施態様は、種々の形態をとり得るが、光反射層と比較して、より後に光が入射する部材中に添加することが好ましい。より具体的には、室内側に配置されるガラス板と、コレステリック液晶相の光反射層との間に配置される層中に含有するのが好ましい。或いは、室内側に配置されるガラス板に接着させられる中間膜や室内側に配置されるガラス板そのものに含有されることも好ましい。
【0072】
使用可能な金属酸化物微粒子の例としては、Zn、Ge、Ti、Zr、Hf、Si、Sn、Mn、Ga、Mo、In、Sb、Ta、V、Y、及びNbから選択される少なくとも1種の金属酸化物、又はこれらの金属の2種以上を組み合わせてなる複合金属酸化物を含有することが好ましい。
金属酸化物としては、例えば、ZnO、GeO2、TiO2、ZrO2、HfO2、SiO2、Sn23、Mn23、Ga23、Mo23、In23、Sb23、Ta25、V25、Y23、Nb25などが挙げられる。
前記複合金属酸化物としては、例えばチタンとジルコニウムの複合酸化物、チタンとジルコニアとハフニウムの複合酸化物、チタンとバリウムの複合酸化物、チタンとケイ素の複合酸化物、チタンとジルコニウムとケイ素の複合酸化物、チタンと錫の複合酸化物、チタンとジルコニアと錫の複合酸化物などが挙げられる。
【0073】
金属酸化物微粒子の製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、金属塩や金属アルコキシドを原料に用い、水を含有する反応系において加水分解することにより、所望の酸化物微粒子を得ることができる。
【0074】
また、水中で加水分解させる方法以外には有機溶媒中や熱可塑性樹脂が溶解した有機溶媒中で無機微粒子を作製してもよい。これらの方法に用いられる溶媒としては、例えばアセトン、2−ブタノン、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、アニソール等が例として挙げられる。これらは、1種類を単独で使用してもよく、また複数種を混合して使用してもよい。
【0075】
<赤外光反射板の製造方法>
本発明の赤外光反射板における、各光反射層は、種々の方法で形成することができる。一例は、後述する塗布により形成する方法であり、より具体的には、コレステリック液晶相を形成し得る硬化性液晶組成物を、基板、配向層、又は光反射層等の表面に塗布し、当該組成物をコレステリック液晶相とした後、硬化反応(例えば、重合反応や架橋反応等)を進行させることで硬化させて、形成することができる。
本発明の赤外光反射板は、塗布方法によって作製されるのが好ましい。製造方法の一例は、
(1) 基板等の表面に、硬化性の液晶組成物を塗布して、コレステリック液晶相の状態にすること、
(2) 前記硬化性の液晶組成物に紫外線を照射して硬化反応を進行させ、コレステリック液晶相を固定して光反射層を形成すること、
を少なくとも含む製造方法である。
(1)及び(2)の工程を、基板の一方の表面上で5回繰り返すことで図1に示す構成と同様の構成の赤外光反射板を作製することができる。また、(1)及び(2)の工程を、6回繰り返すことで、図2に示す構成と同様の構成の赤外光反射板を作製することができる。
なお、コレステリック液晶相の旋回の方向は、用いる液晶の種類又は添加されるキラル剤の種類によって調整でき、螺旋ピッチ(すなわち、中心反射波長)は、これらの材料の濃度によって任意に調整できる。また、光反射性フィルムの反射する特定の領域の波長は、製造方法のさまざまな要因によってシフトさせることができることが知られており、キラル剤などの添加濃度のほか、コレステリック液晶相を固定するときの温度や照度と照射時間などの条件などでシフトさせることができる。
【0076】
前記(1)工程では、まず、基板又は下層の光反射層の表面に、前記硬化性液晶組成物を塗布する。前記硬化性の液晶組成物は、溶媒に材料を溶解及び/又は分散した、塗布液として調製されるのが好ましい。前記塗布液の塗布は、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法等の種々の方法によって行うことができる。また、インクジェット装置を用いて、液晶組成物をノズルから吐出して、塗膜を形成することもできる。
【0077】
次に、表面に塗布され、塗膜となった硬化性液晶組成物を、コレステリック液晶相の状態にする。前記硬化性液晶組成物が、溶媒を含む塗布液として調製されている態様では、塗膜を乾燥し、溶媒を除去することで、コレステリック液晶相の状態にすることができる場合がある。また、コレステリック液晶相への転移温度とするために、所望により、前記塗膜を加熱してもよい。例えば、一旦等方性相の温度まで加熱し、その後、コレステリック液晶相転移温度まで冷却する等によって、安定的にコレステリック液晶相の状態にすることができる。前記硬化性液晶組成物の液晶相転移温度は、製造適性等の面から10〜250℃の範囲内であることが好ましく、10〜150℃の範囲内であることがより好ましい。10℃未満であると液晶相を呈する温度範囲にまで温度を下げるために冷却工程等が必要となることがある。また200℃を超えると、一旦液晶相を呈する温度範囲よりもさらに高温の等方性液体状態にするために高温を要し、熱エネルギーの浪費、基板の変形、変質等からも不利になる。
【0078】
次に、(2)の工程では、コレステリック液晶相の状態となった塗膜に、紫外線を照射して、硬化反応を進行させる。紫外線照射には、紫外線ランプ等の光源が利用される。この工程では、紫外線を照射することによって、前記液晶組成物の硬化反応が進行し、コレステリック液晶相が固定されて、光反射層が形成される。
紫外線の照射エネルギー量については特に制限はないが、一般的には、100mJ/cm2〜800mJ/cm2程度が好ましい。また、前記塗膜に紫外線を照射する時間については特に制限はないが、硬化膜の充分な強度及び生産性の双方の観点から決定されるであろう。
【0079】
硬化反応を促進するため、加熱条件下で紫外線照射を実施してもよい。また、紫外線照射時の温度は、コレステリック液晶相が乱れないように、コレステリック液晶相を呈する温度範囲に維持するのが好ましい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達せず、膜強度が不十分の場合には、窒素置換等の方法により、雰囲気中の酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下が最も好ましい。紫外線照射によって進行される硬化反応(例えば重合反応)の反応率は、層の機械的強度の保持等や未反応物が層から流出するのを抑える等の観点から、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがよりさらに好ましい。反応率を向上させるためには照射する紫外線の照射量を増大する方法や窒素雰囲気下あるいは加熱条件下での重合が効果的である。また、一旦重合させた後に、重合温度よりも高温状態で保持して熱重合反応によって反応をさらに推し進める方法や、再度紫外線を照射する(ただし、本発明の条件を満足する条件で照射する)方法を用いることもできる。反応率の測定は反応性基(例えば重合性基)の赤外振動スペクトルの吸収強度を、反応進行の前後で比較することによって行うことができる。
【0080】
上記工程では、コレステリック液晶相が固定されて、光反射層が形成される。ここで、液晶相を「固定化した」状態は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持された状態が最も典型的、且つ好ましい態様である。それだけには限定されず、具体的には、通常0℃〜50℃、より過酷な条件下では−30℃〜70℃の温度範囲において、該層に流動性が無く、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものとする。本発明では、紫外線照射によって進行する硬化反応により、コレステリック液晶相の配向状態を固定する。
なお、本発明においては、コレステリック液晶相の光学的性質が層中において保持されていれば十分であり、最終的に光反射層中の液晶組成物がもはや液晶性を示す必要はない。例えば、液晶組成物が、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
【0081】
[ガラス用積層中間膜シート]
本発明のガラス用積層中間膜シートは、本発明の赤外光反射層積層体または本発明の赤外光反射板と、前記赤外光反射層積層体または前記赤外光反射板の少なくとも一方の最外層上に配置された中間膜シートと、を含むことを特徴とする。
【0082】
(ガラス用積層中間膜シートの構成)
図3は、図1の赤外光反射板に対して、その両面にそれぞれ中間膜シート22と24とを貼合した合わせガラス用積層中間膜シートの一例の断面模式図である。図3の中間膜シートは、そのまま合わせガラス中に組み込むことができる。
図4は、図1の赤外光反射板に対して、基板12を剥離した場合の積層中間膜シートの例である。図4の中間膜シートは、そのまま合わせガラス中に組み込むことができる。
図5は、図2の赤外光反射板に対して、その両面にそれぞれ中間膜シート22と24とを貼合した合わせガラス用積層中間膜シートの一例の断面模式図である。図5の中間膜シートは、そのまま合わせガラス中に組み込むことができる。
【0083】
(ガラス用積層中間膜シートの特性)
本発明の赤外光反射体の一方及び/又は双方の表面に、中間膜シートを貼合することができる。中間膜シートを貼合することにより、合わせガラス用積層中間膜シートとして、合わせガラス中に容易に組み込むことができる。中間膜シートを貼合する際には、基板を残したまま貼合してもよいし、基板を剥離してから貼合してもよいが、後工程で合わせガラスに組み込まれることを考えると、厚みや柔軟性、圧縮耐性を考慮し、基板を剥離してから、中間膜シートと貼合することが好ましい。
中間膜シートとしては、合わせガラスの作製に用いられる一般的な中間膜シートを利用することができる。具体的な例としては、ポリビニルブチラール樹脂又はエチレン・酢酸ビニル共重合体を主原料として含有する組成物から作製されたシート等が挙げられる。
中間膜シートの厚みは、一般的には、380〜760μm程度である。
【0084】
[合わせガラス用積層中間膜シートの製造方法]
本発明の赤外光反射板は、両面を中間膜シートにて貼合されることにより、中間膜シートに挟まれた合わせガラス用積層中間膜シートとすることができる。
本発明の合わせガラス用積層中間膜シートの製造方法は、
(1) 赤外光反射板の一方の表面に、第1の中間膜シートを貼合して第1の積層体を得る第1の工程、及び、
(2) 前記第1の積層体の前記第1の中間膜シートが貼合されている表面の反対の側の表面に、第2の中間膜シートを貼合する第2の工程、
を少なくとも含む製造方法である。第1及び第2の工程は、順次行ってもよいし、同時に行ってもよい。また、一方の工程を実施した後、一旦保管・搬送等し、他方の工程を実施してもよい。
【0085】
中間膜シートとの貼合には、公知の貼合方法を用いることができるが、ラミネート処理を用いることが好ましい。赤外光反射板と中間膜シートとが加工後に剥離してしまわないように、ラミネート処理を実施する場合には、ある程度の加熱及び加圧条件下にて実施することが好ましい。
ラミネートを安定的に行なうには、中間膜シートの接着する側の膜面温度が50〜130℃であることが好ましく、70〜100℃であることがより好ましい。
ラミネート時には加圧することが好ましい。加圧条件は、2.0kg/cm2未満であることが好ましく、0.5〜1.8kg/cm2の範囲であることがより好ましく、0.5〜1.5kg/cm2の範囲であることがさらに好ましい。
【0086】
また、本発明では、ラミネートと同時に、又はその直後、もしくはその直前に、赤外光反射板から基板(又は少なくとも基板を含む積層体)を剥離してもよい。即ち、ラミネート後に得られる積層中間膜シートには、基板が無くてもよい。例えば、本発明の合わせガラス用積層中間膜シートの製造方法の一例は、
前記第1の工程において、前記赤外光反射板と前記第1の中間膜シートとを貼合する工程と同時またはその後に、前記赤外光反射板に含まれる基板を前記第1の積層体から剥離する工程と、
前記第2の工程において、前記第2の中間膜シートを、前記第1の積層体の前記基板を剥離した面に貼合する工程を含む、合わせガラス用積層中間膜シートの製造方法である。
この方法により、基板を含まない、合わせガラス用積層中間膜シートを製造することができ、該合わせガラス用積層中間膜シートを用いることで、基板を含まない、赤外反射性合わせガラスを容易に作製することができる。破損等無く、安定的に基板を剥離するためには、コレステリック液晶相の光反射層から基板を剥離する際の基板の温度が40℃以上であることが好ましく、40〜60℃であることがより好ましい。
【0087】
[合わせガラス]
本発明の合わせガラスは、2枚のガラスと、前記2枚のガラスの間に含まれる本発明のガラス用積層中間膜シートとを含むことを特徴とする。
【0088】
(合わせガラスの構成)
図6〜図8に、本発明の合わせガラスの実施態様の断面図を示す。
図6は、図3に示す合わせガラス用積層中間膜シートに対して、その両面にそれぞれガラス板32と34とを貼合した例である。
図7は、図4に示す合わせガラス用積層中間膜シートに対して、その両面にそれぞれガラス板32と34とを貼合した例である。
図8は、図5に示す合わせガラス用積層中間膜シートに対して、その両面にそれぞれガラス板32と34とを貼合した例である。
【0089】
本発明の合わせガラス用積層中間膜シートは、2枚のガラス板の間に挟んで合わせガラスとすることができる。ガラス板としては、一般的なガラス板を利用することができる。 本発明のコレステリック液晶相を用いた赤外光反射板と組み合わせて遮熱性能を向上させるためには、可視光領域に吸収を有する熱線吸収ガラスを利用することができる。可視光領域の吸収を調整することにより、ガラスとしての視認性(透過率)と遮熱性能とを調整することが可能である。熱線吸収ガラスは、特許第2544035号公報、特許第2617223号等に記載されているように、鉄、錫、ニッケル、コバルト、セレン等の金属酸化物を含有させることにより、可視光領域の吸収やその透過光としての色味を調整することができる。例えば、自動車用フロントガラスとして用いる場合には、合わせガラスとしてJIS−R−3211で規定される「可視光透過率(標準光源A)70%以上」を満たすように可視光領域の吸収を抑え、透過光色味を調整しながら、遮熱性能を高めることが好ましい。熱線吸収ガラスとしては、可視光透過率(標準光源A)が80〜95%の範囲にあり、標準A光源を用いて測定した主波長が495〜560nmの範囲にあるものが好ましい。
ガラス板の厚みについては特に制限はなく、用途に応じて好ましい範囲が変動する。例えば、輸送車両のフロントガラス(ウインドウシールド)の用途では、一般的には、2.0〜2.3mmの厚みのガラス板を用いるのが好ましい。また、家屋やビル等の建物用遮熱性窓材の用途では、一般的には、40〜300μm程度の厚みのガラス板を用いるのが好ましい。ただし、この範囲に限定されるものではない。
【0090】
[合わせガラスの製造方法]
本発明の合わせガラス用積層中間膜シートは、2枚のガラス板の間に挟んで合わせガラスとすることができる。
本発明の合わせガラスの製造方法は、合わせガラス用積層中間膜シートを2枚のガラス板の間に挟み込んでガラス板に挟持された積層体を製造する工程と、前記ガラス板に挟持された積層体を加熱しながら圧着する工程を含むことを特徴とする。
詳細な製造方法としては、公知の合わせガラス作製方法を適宜用いることができる。
一般的には、合わせガラス用積層中間膜シートを2枚のガラス板に挟んだ後、加熱処理と加圧処理(ゴムローラーでしごく等)とを数回繰り返し、最後にオートクレーブ等を利用して加圧条件下での加熱処理を行う、という方法がとられる。
【0091】
本発明の製造方法は、前記ガラス板に挟持された積層体を加熱しながら圧着する工程を含む。
本発明の製造方法では、前記2つの中間膜が互いに接していない前記ガラス板に挟持された積層体を、加熱しながら圧着することが好ましい。
前記ガラス板に挟持された積層体とガラス板との貼りあわせは、例えば、真空バッグなどで減圧下において、温度80〜120℃、時間30〜60分で予備圧着した後、オートクレーブ中、1.0〜1.5MPaの加圧下で120〜150℃の温度で貼り合せ、2枚のガラスに積層体が挟まれた合わせガラスとすることができる。また、粘着材等を用いて貼り合わせてもよい。
このとき、1.0〜1.5MPaの加圧下で120〜150℃の温度での加熱圧着の時間は、20〜90分であることが好ましい。
加熱圧着終了後、放冷の仕方については特に制限はなく、適宜圧力を開放しながら放冷して、合わせガラス体を得てもよい。本発明では、加熱圧着終了後、圧力を保持した状態で降温を行うことが、得られる合わせガラス体のシワや割れをさらに改善する観点から好ましい。ここで、圧力を保持した状態で降温するとは、加熱圧着時(好ましくは130℃)の装置内部圧力から、40℃のときの装置内部圧力が加熱圧着時の75%〜100%となるように降温することを意味する。圧力を保持した状態で降温する方法としては、40℃まで降温したときの圧力が上記範囲内であれば特に制限はないが、圧力装置内部圧力が温度減少に伴って自然と低下していくように装置内部から圧力を漏らさずに降温する態様や、装置内部圧力が温度減少に伴って減少しないように外部からさらに加圧しながら降温する態様が好ましい。圧力を保持した状態で降温する場合、120〜150℃で加熱圧着した後、40℃まで1〜5時間かけて放冷することが好ましい。
本発明では、圧力を保持した状態で降温を行った後、次いで圧力を開放する工程を含むことが好ましい。具体的には、圧力を保持した状態で降温を行った後、オートクレーブ内の温度が40℃以下になった後に圧力を開放して降温することが好ましい。
以上より、本発明の合わせガラス体の製造方法は、前記第一のガラス、前記第一の中間膜、前記赤外線反射層、前記第二の中間膜および前記第二のガラスをこの順で積層する工程と、その後1.0〜1.5MPaの加圧下で120〜150℃の温度で加熱圧着する工程と、圧力を保持した状態で降温を行う工程と、圧力を開放する工程を含むことが好ましい。
【0092】
前記赤外光反射層積層体(または赤外光反射板)と前記中間膜とを熱圧着させる範囲は、前記ガラス板の全面積にわたる範囲でもよいが、前記ガラス板の周縁部のみでもよく、周縁部の熱圧着はシワの発生をより抑制することもできる。
【0093】
[窓用部材]
本発明の赤外光反射板は、太陽光エネルギーのピークに対応する850〜900nm、1010〜1070nm、1190〜1290nmに反射ピークのある選択反射特性を示す。この様な特性の反射板は、住宅、オフィスビル等の建造物、又は自動車等の車両の窓に、日射の遮熱用の部材として貼付される。又は、本発明の赤外光反射板は、日射の遮熱用の部材そのもの(たとえば、遮熱用ガラス、遮熱用フィルム)として、その用途に供することができる。
【0094】
赤外光反射板としてその他の重要な性能は、可視光の透過率とヘイズである。材料の選択及び製造条件等を調整して、用途に応じて、好ましい可視光の透過率及びヘイズを示す赤外光反射板を提供できる。例えば可視光の透過率が高い用途に用いられる態様では、可視光の透過率が90%以上であり、且つ赤外の反射率が上記反応を満足する赤外光反射板とすることができる。
本発明の赤外光反射層積層体、本発明の赤外光反射板、本発明のガラス用積層中間膜シートおよび本発明の合わせガラスは、建造物用もしくは車両用の窓用部材として用いられることが好ましい。
【実施例】
【0095】
以下に実施例と比較例(なお比較例は公知技術というわけではない)を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0096】
[塗布液(液晶組成物)の調製]
下記表に示す組成の塗布液(R1)及び(L1)をそれぞれ調製した。
【表1】

【表2】

【0097】
【化5】

【化6】

【0098】
また、塗布液(R1)のキラル剤LC−756の処方量を下表に示す量に変更しただけで他は同様にして塗布液(R2)〜(R5)を調製した。
【0099】
【表3】

【0100】
また、塗布液(L1)のキラル剤(化合物2)の処方量を下表に示す量に変更しただけで他は同様にして塗布液(L2)〜(L5)を調製した。
【0101】
【表4】

【0102】
<赤外光反射板の製造1>
[実施例1]
調製した塗布液(R1)、(R2)、(R3)、(L1)、(L2)を用い、下記の手順にて赤外光反射板を作製した。基板としては、富士フイルム(株)製PETフィルム(下塗り層無し、厚み:188μm)を使用した。
(1)各塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜の厚みが6μmになるように、PETフィルム上に、室温にて塗布した。
(2)室温にて30秒間乾燥させて溶剤を除去した後、125℃の雰囲気で2分間加熱し、その後95℃でコレステリック液晶相とした。次いで、フージョンUVシステムズ(株)製無電極ランプ「Dバルブ」(90mW/cm2)にて、出力60%で6〜12秒間UV照射し、コレステリック液晶相を固定して、膜(光反射層)を作製した。
(3)室温まで冷却した後、上記工程(1)及び(2)を繰り返し、5層積層されたコレステリック液晶相の光反射層を有する赤外光反射板を作製した。
なお、塗布液は、(R3)、(R2)、(L2)、(R1)、(L1)の順番に塗布を行った。
【0103】
[実施例2]
塗布する塗布液のうち、(R3)を(R4)に変更した以外は実施例1と同様の手順にして実施例2の赤外光反射板を作製した。
[比較例1]
塗布する塗布液のうち、(R3)を(R5)に変更した以外は実施例1と同様の手順にして比較例1の赤外光反射板を作製した。
【0104】
[実施例3]
調製した塗布液(R1)、(R2)、(R3)、(L1)、(L2)、(L3)を用い、実施例1と同様の手順にして6層積層されたコレステリック液晶相の光反射層を有する赤外光反射板を作製した。
なお、塗布液は、(R3)、(L3)、(R2)、(L2)、(R1)、(L1)の順番に塗布を行った。
【0105】
[実施例4]
塗布する塗布液のうち、(R3)を(R4)に、(L3)を(L4)に変更した以外は実施例3と同様の手順にして実施例4の赤外光反射板を作製した。
[比較例2]
塗布する塗布液のうち、(R3)を(R5)に、(L3)を(L5)に変更した以外は実施例3と同様の手順にして比較例2の赤外光反射板を作製した。
【0106】
<赤外光反射板の評価1>
[反射率測定及び遮熱性能評価1]
作製した各赤外光反射板について、日本分光(株)製分光光度計「V−670」にて5°正反射スペクトルを測定して、790nmの反射率、800nmの反射率及びさらに正面透過スペクトルを測定して300〜2500nmの波長範囲の日射スペクトルに対する遮熱性能(透過率)を算出した。遮熱性能は、以下の基準に基づいて判定を行った。(日射スペクトル透過率は低い方が望ましい。)
◎:日射スペクトル透過率70%以下
○:日射スペクトル透過率70%より大、75%以下
△:日射スペクトル透過率75%より大、80%以下
×:日射スペクトル透過率80%より大
結果を、下表に示す。
【0107】
[斜め反射光色味評価1]
作製した各赤外光反射板について、日本分光(株)製分光光度計「V−670」にて60°正反射スペクトルを測定し、D65標準光源に対する色味を算出した後、xy色度図上での標準白色点(x=0.3127、y=0.3290)からの変動度Δxyを算出した。斜め反射光色味の抑制効果は、以下の基準に基づいて判定を行った。
◎:Δxy 0.04以下
○:Δxy 0.04より大、0.05以下
△:Δxy 0.05より大、0.06以下
×:Δxy 0.06より大
結果を、下表に示す。
【0108】
【表5】

【0109】
上記表に示す通り、反射波長帯域が短波長側になる光反射層の反射中心波長が850nm以上である実施例1〜4の赤外光反射板は、高い遮熱性能を示し、斜め反射光の色味が抑えられていた。特に、短波長側になる光反射層を対にして2層を用いている実施例3,4は、より高い遮熱性能を示した。ただし、斜め反射光の色味に関しては、可視光領域にちかい光反射層が2層になる分、やや悪化したが、実用上、僅かに不満が残るものの問題ない程度であった。
比較例1,2は、実施例1〜4と比較して、遮熱性能はやや高くなっていたが、斜め反射光の色味は大きく劣っていた。
【0110】
<赤外光反射板の製造2>
[実施例5]
塗布する塗布液の順番を、(R3)、(R2)、(R1)、(L1)、(L2)の順番に変更し、(R2)と(L2)とが隣接しないようにした以外は実施例1と同様の手順にして実施例5の赤外光反射板を作製した。
[実施例6]
塗布する塗布液の順番を、(R1)、(R2)、(R3)、(L2)、(L1)の順番に変更し、(R1)と(L1)及び(R2)と(L2)とが隣接しないようにした以外は実施例1と同様の手順にして実施例6の赤外光反射板を作製した。
【0111】
[実施例7]
塗布する塗布液の順番を、(R3)、(R2)、(L2)、(R1)、(L1)、(R3)の順番に変更し、(R3)と(L3)との間に4つの光反射層が入るようにした以外は実施例3と同様の手順にして実施例7の赤外光反射板を作製した。
[実施例8]
塗布する塗布液の順番を、(R3)、(R2)、(R1)、(L1)、(L2)、(L3)の順番に変更し、(R2)と(L2)とが隣接しないようにした以外は実施例7と同様の手順にして実施例8の赤外光反射板を作製した。
[実施例9]
塗布する塗布液の順番を、(R3)、(R2)、(R1)、(L3)、(L2)、(L1)の順番に変更し、(R1)と(L1)とが隣接しないようにした以外は実施例8と同様の手順にして実施例9の赤外光反射板を作製した。
【0112】
<赤外光反射板の評価2>
[反射率測定及び遮熱性能評価2]
作製した各赤外光反射板について、日本分光(株)製分光光度計「V−670」にて5°正反射スペクトルを測定して、790nmの反射率、800nmの反射率を算出した。また、日本分光(株)製分光光度計「V−670」にて60°正反射スペクトル及び60°透過スペクトルを測定して300〜2500nmの波長範囲の斜め60°日射スペクトルに対する遮熱性能(透過率)を算出した。遮熱性能は、以下の基準に基づいて判定を行った。(日射スペクトル透過率は低い方が望ましい。)
◎:日射スペクトル透過率70%以下
○:日射スペクトル透過率70%より大、75%以下
△:日射スペクトル透過率75%より大、80%以下
×:日射スペクトル透過率80%より大
結果を、下表に示す。
【0113】
[斜め反射光色味評価1]
作製した各赤外光反射板について、前記同様に、反射光色味評価1を行った。結果を、下表に示す。
【0114】
【表6】


【0115】
光反射層を塗布する順番を変更しても、正面方向での反射率や遮熱性能はほとんど変動しないので、実施例5〜9(及びその比較として実施例1,3)に対しては、斜め60°での遮熱性能を表6に記載した。なお、実施例5および6の正面方向での反射率は実施例1と同じであり、実施例7〜9の正面方向での反射率は実施例3と同じであった。
上表に示す通り、実施例1に対して、実施例5,6は、遮熱性能はやや低下するものの、斜め反射光の色味は抑えられていた。対になる光反射層(R2)と(L2)、さらには光反射層(R1)と(L1)とがそれぞれ隣接しないように塗布することの効果が確認された。
また、実施例3に対して、実施例7〜9も、同様に、遮熱性能やや低下するものの、斜め反射光の色味はより抑えられていた。特に、光反射層(R1)と(L1)の対のみが隣接し、光反射層(R3)と(L3)との間に4つの層が介在する実施例8は、高い遮熱性能と高い斜め反射光色味抑制効果が確認された。
【0116】
<赤外光反射板、合わせガラス用積層中間膜シート、合わせガラスの製造>
(易接着層用塗布液の調製)
下記に示す組成の易接着層用塗布液を調製した。
ポリビニルブチラール樹脂B1776(長春株式会社(台湾)製) 10質量部
メトキシプロピルアセテート(PGMEA) 100質量部
【0117】
(下塗り層用塗布液の調製)
下記に示す組成の下塗り層用塗布液を調製した。
アクリルエステル樹脂ジュリマーET−410
(東亞合成(株)製、固形分濃度30%) 50質量部
メタノール 50質量部
【0118】
(配向層用塗布液の調製)
下記に示す組成の配向層用塗布液を調製した。
変性ポリビニルアルコールPVA203(クラレ社製) 10質量部
グルタルアルデヒド 0.5質量部
水 371質量部
メタノール 119質量部
【0119】
(アンダーコート層用塗布液の調製)
下記に示す組成のアンダーコート層用塗布液を調製した。
スチレン−アクリル樹脂アロンS−1001
(東亞合成(株)製、固形分濃度50%) 20質量部
メトキシプロピルアセテート(PGMEA) 80質量部
【0120】
[実施例10]
(赤外光反射板の製造)
アンダーコート層用塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が0.5μmになるようにPETフィルム(富士フイルム(株)製、厚み:188μm)上に塗布した。その後、150℃で10分間加熱し、乾燥、固化し、易接着層(アンダーコート層)を形成した。
次いで、上記で作製したアンダーコート層付PETフィルムのアンダーコート層が塗布されていない側の表面上に、下塗り層用塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が0.25μmになるように塗布した。その後、150℃で10分間加熱し、乾燥、固化し、下塗り層を形成した。
次いで、形成した下塗り層の上に、配向層用塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が1.0μmになるように塗布した。その後、100℃で2分間加熱し、乾燥、固化し、配向層を形成した。配向層に対し、ラビング処理(レーヨン布、圧力:0.1kgf、回転数:1000rpm、搬送速度:10m/min、回数:1往復)を施した。
次いで、形成した配向層の上に、塗布液を(R3)、(R2)、(R1)、(L1)、(L2)、(L3)の順に実施例8の手順と同様にして、6層積層されたコレステリック液晶相の光反射層を形成した。
次いで、上記で形成したコレステリック液晶相の光反射層の最上層の表面に、易接着層用塗布液を、ワイヤーバーを用いて、乾燥後の膜厚が1.0μmになるように塗布した。その後、150℃で10分間加熱し、乾燥、固化し、易接着層を形成し、赤外光反射板を作製した。
【0121】
(合わせガラス用積層中間膜シート、合わせガラスの製造)
次いで、上記で作製した赤外光反射板と合わせガラス用ポリビニルブチラール中間膜シート(厚み:380μm)とを、ラミネーター(大成ラミネーター(株)製)を用いてラミネート処理(加熱温度:80℃、加圧力:1.5kg/cm2、搬送速度:0.1m/
min)することにより、合わせガラス用積層中間膜シートを作製した。
次いで、上記で作製した合わせガラス用積層中間膜シートを2枚のクリアガラス(厚さ:2mm)で挟み、ゴムバッグに入れ、真空ポンプで減圧した。その後、減圧下で90℃まで昇温し、30分間保持後、いったん常温常圧まで戻した。その後、オートクレーブ内にて圧力1.3MPa、温度130℃の条件で20分間保持した。これを常温常圧まで戻し、実施例10の赤外光反射機能付合わせガラスを作製した。
【0122】
[実施例11]
2枚のクリアガラスのうち、赤外光反射板のPETフィルム基板側のクリアガラスを熱線吸収ガラス(標準A光源での可視光透過率85%、主波長550nm)に変更した以外は、実施例10と同様の手順にして、実施例11の赤外光反射機能付合わせガラスを作製した。
【0123】
<合わせガラスの評価>
[可視光透過率]
作製した各赤外光反射機能付合わせガラスについて、JIS-R3211に準拠し、日本分光(株)製分光光度計「V−670」にて、コレステリック液晶相反射層側の正面透過スペクトルを測定し、標準光源Aに対する可視光透過率を算出した。可視光透過率は、以下の基準に基づいて判定を行った。
○:可視光透過率70%以上
×:可視光透過率70%未満
結果を、下表に示す。
【0124】
[遮熱性能評価3]
作製した各赤外光反射機能付合わせガラスについて、日本分光(株)製分光光度計「V−670」にて、コレステリック液晶相反射層側の5°正反射スペクトル及び正面透過スペクトルを測定して300〜2500nmの波長範囲の日射スペクトルに対する遮熱性能(透過率)を算出した。遮熱性能は、以下の基準に基づいて判定を行った。(日射スペクトル透過率は低い方が望ましい。)
◎:日射スペクトル透過率50%以下
○:日射スペクトル透過率50%より大、60%以下
△:日射スペクトル透過率60%より大、70%以下
×:日射スペクトル透過率70%より大
結果を、下表に示す。
【0125】
[斜め反射光色味評価2]
作製した各赤外光反射機能付合わせガラスについて、日本分光(株)製分光光度計「V−670」にてコレステリック液晶相反射層側の60°正反射スペクトルを測定し、D65標準光源に対する色味を算出した後、xy色度図上での標準白色点(x=0.3127、y=0.3290)からの変動度Δxyを算出した。斜め反射光色味の抑制効果は、以下の基準に基づいて判定を行った。
◎:Δxy 0.04以下
○:Δxy 0.04より大、0.05以下
△:Δxy 0.05より大、0.06以下
×:Δxy 0.06より大
結果を、下表に示す。
【0126】
【表7】

【0127】
上表に示す通り、実施例10,11は、合わせガラス形態にすることにより、フィルム形態に比較して、より高い遮熱性能と斜め反射光色味抑制効果を示した。
特に、可視光領域に吸収を有する熱線吸収ガラスを用いて合わせガラスにした実施例11は、非常に高い遮熱性能を示した。
【0128】
上記の結果より、本発明の実施例によれば、遮熱性能に優れ、かつ、斜め方向の反射光の色味を抑制した赤外光反射板を得られることが示された。
また、合わせガラスにする場合に、可視光領域に吸収を有する熱線吸収ガラスを用いることにより、さらに遮熱性能が向上することも示された。
【0129】
[実施例100]
実施例10および11において、前記加熱圧着終了後、圧力を保持した状態でおよそ3時間かけて放冷し、オートクレーブ内の温度が40℃以下になったところで圧力を開放した。このとき、開放前の圧力は0.9MPaであった。
作成した合わせガラスについて、ポリビニルブチラール樹脂フィルムのシワと赤外線反射層の膜ワレを評価したところ、いずれも実施例10および11よりもさらに改善されていたことがわかった。また、この合わせガラス板の反射ムラを目視にて確認したところ、いずれも実施例10および11よりもさらに改善されていたことがわかった。
【0130】
[実施例200]
実施例10で製造した基板としてPETを含む赤外光反射板の最外層(空気界面側)の光反射層上に第一の中間膜であるPVBを重ね合わせ、120℃、0.2MPa、0.2m/minの条件でラミネートロールに通し、最外層の光反射層と第一の中間膜を貼り合わせた。このとき、ラミネートロールは第一の中間膜のエンボスをつぶさないよう、第一の中間膜側のラミネートロールは25℃、PET側のラミネートロールを120℃とした。ラミネートした積層体からPET支持体のみを剥がし、第一の中間膜と赤外線反射層積層体の積層体とした。さらにPETを剥がした側の最外層の光反射層の表面に第二の中間膜であるPVBを積層した。でき上がった赤外線反射層積層体と前記中間膜を含む積層体を、ガラス/第一の中間膜/赤外線反射層積層体/第二の中間膜/ガラスとなるように、重ね合わせてガラス板に挟持された積層体を製造した。
得られたガラス板に挟持された積層体を真空下、95℃で30分予備圧着をおこなった。予備圧着後、ガラス板に挟持された積層体をオートクレーブ内で1.3MPa、120℃の条件で加熱しながら圧着処理し、合わせガラスを作製した。合わせガラス化した後、ガラスからはみ出していた部分を裁断し、基板を含まない態様の合わせガラスを製造した。
得られた合わせガラスの性能評価を行ったところ、実施例10と同程度であった。
【符号の説明】
【0131】
12 基板
14a 光反射層(光反射層X1)
14b 光反射層(光反射層X2)
16a 光反射層(光反射層X3)
16b 光反射層(光反射層X4)
18および18a 光反射層(光反射層X5)
18b 光反射層(光反射層X6)
22、24 中間膜
32、34 ガラス板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれコレステリック液晶相を固定してなる光反射層X1、光反射層X2、光反射層X3、光反射層X4および光反射層X5を有し;
前記光反射層X1と前記光反射層X2が互いに逆方向の円偏光を反射し、前記光反射層X1の反射中心波長λ1(nm)と前記光反射層X2の反射中心波長λ1’(nm)が、実質的に等しく、且ついずれも1190〜1290nmの範囲にあり;
前記光反射層X3と前記光反射層X4が互いに逆方向の円偏光を反射し、前記光反射層X3の反射中心波長λ2(nm)と前記光反射層X4の反射中心波長λ2’(nm)が、実質的に等しく、且ついずれも1010〜1070nmの範囲にあり;
前記光反射層X5の反射中心波長λ3(nm)が、850〜900nmの範囲にあり;
波長790nmでの反射率が15%以下であり、かつ、赤外線を反射することを特徴とする赤外光反射層積層体。
【請求項2】
波長800nmでの反射率が15〜50%の範囲である、請求項1に記載の赤外光反射層積層体。
【請求項3】
前記光反射層の内の少なくとも1つの光反射層が、下層の光反射層の表面に塗布された液晶組成物をコレステリック液晶相とし、該コレステリック液晶相を固定することで形成された層である、請求項1または2に記載の赤外光反射層積層体。
【請求項4】
前記光反射層X1と前記光反射層X2が隣接しておらず、かつ、前記光反射層X3と前記光反射層X4が隣接していない、請求項1〜3のいずれか1項に記載の赤外光反射層積層体。
【請求項5】
それぞれコレステリック液晶相を固定してなる光反射層X1、光反射層X2、光反射層X3、光反射層X4、光反射層X5および光反射層X6を有し;
前記光反射層X1と前記光反射層X2が互いに逆方向の円偏光を反射し、前記光反射層X1の反射中心波長λ1(nm)と前記光反射層X2の反射中心波長λ1’(nm)が、実質的に等しく、且ついずれも1190〜1290nmの範囲にあり;
前記光反射層X3と前記光反射層X4が互いに逆方向の円偏光を反射し、前記光反射層X3の反射中心波長λ2(nm)と前記光反射層X4の反射中心波長λ2’(nm)が、実質的に等しく、且ついずれも1010〜1070nmの範囲にあり;
前記光反射層X5と前記光反射層X6が互いに逆方向の円偏光を反射し、前記光反射層X5の反射中心波長λ3(nm)と前記光反射層X6の反射中心波長λ3’(nm)が、実質的に等しく、いずれも850〜900nmの範囲にあり;
波長790nmでの反射率が15%以下であり、かつ、赤外線を反射することを特徴とする赤外光反射層積層体。
【請求項6】
波長800nmでの反射率が15〜50%の範囲である、請求項5に記載の赤外光反射層積層体。
【請求項7】
前記光反射層の少なくとも1つが、下層の光反射層の表面に塗布された液晶組成物をコレステリック液晶相とし、該コレステリック液晶相を固定することで形成された層である、請求項5または6に記載の赤外光反射層積層体。
【請求項8】
前記光反射層X1と前記光反射層X2とが隣接しており、前記光反射層X5と前記光反射層X6とが間に少なくとも2つの光反射層を介して積層されている、請求項5〜7のいずれか1項に記載の赤外光反射層積層体。
【請求項9】
基板と、該基板上に配置された請求項1〜8のいずれか1項に記載の前記赤外光反射層積層体を含む、赤外光反射板。
【請求項10】
前記基板が、ポリマーフィルムである、請求項9に記載の赤外光反射板。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の赤外光反射層積層体、または請求項9もしくは10に記載の赤外光反射板と、
前記赤外光反射層積層体もしくは前記赤外光反射板の少なくとも一方の最外層上に配置された中間膜シートと、を含む、ガラス用積層中間膜シート。
【請求項12】
前記赤外光反射層積層体もしくは前記赤外光反射板の双方の最外層上に、中間膜シートをそれぞれ有する、請求項11に記載のガラス用積層中間膜シート。
【請求項13】
2枚のガラスと、前記2枚のガラスの間に含まれる請求項11または12に記載のガラス用積層中間膜シートとを含む、合わせガラス。
【請求項14】
前記2枚のガラスのうち、少なくとも1枚は熱線吸収ガラスであり、
該熱線吸収ガラスが、標準A光源での可視光透過率が80〜90%の範囲にあり、かつ、標準A光源を用いて測定した主波長が495〜560nmの範囲にある、請求項13に記載の合わせガラス。
【請求項15】
請求項9または10に記載の赤外光反射板の一方の表面に、第1の中間膜シートを貼合して第1の積層体を得る第1の工程、及び、
前記第1の積層体の前記第1の中間膜シートが貼合されている表面の反対の側の表面に、第2の中間膜シートを貼合する第2の工程を含む、合わせガラス用積層中間膜シートの製造方法。
【請求項16】
前記第1の工程において、前記赤外光反射板と前記第1の中間膜シートとを貼合する工程と同時またはその後に、前記赤外光反射板に含まれる基板を前記第1の積層体から剥離する工程と、
前記第2の工程において、前記第2の中間膜シートを、前記第1の積層体の前記基板を剥離した面に貼合する工程を含む、請求項15に記載のガラス用積層中間膜シートの製造方法。
【請求項17】
請求項11または12に記載の合わせガラス用積層中間膜シートを2枚のガラス板の間に挟み込んでガラス板に挟持された積層体を製造する工程と、
前記ガラス板に挟持された積層体を加熱しながら圧着する工程を含む、合わせガラスの製造方法。
【請求項18】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の赤外光反射層積層体、請求項9もしくは10に記載の赤外光反射板、請求項11もしくは12に記載のガラス用積層中間膜シート、または請求項13もしくは14のいずれか1項に記載の合わせガラスを用いた、建造物用もしくは車両用の窓用部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−173421(P2012−173421A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33647(P2011−33647)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】