赤外分光分析用加圧セル
【課題】赤外分光分析計で分析する試料を平坦に圧延するための赤外分光分析用加圧セルに関する。
【解決手段】
赤外分光分析計で分析する試料をプレス板とプレスロールで平坦に圧延する赤外分光分析用加圧セルであって、前記プレス板を載置する底面板と、前記プレスロールは両端面に加圧するための軸を設け、前記底面板の上側面の両端に、プレスロールの軸が挿入され、ガイドする長孔が施されている側面板と、前記側面板の上側面を接続する天面板と、を具備することを特徴とする赤外分光分析用加圧セル。
【解決手段】
赤外分光分析計で分析する試料をプレス板とプレスロールで平坦に圧延する赤外分光分析用加圧セルであって、前記プレス板を載置する底面板と、前記プレスロールは両端面に加圧するための軸を設け、前記底面板の上側面の両端に、プレスロールの軸が挿入され、ガイドする長孔が施されている側面板と、前記側面板の上側面を接続する天面板と、を具備することを特徴とする赤外分光分析用加圧セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、赤外分光分析計で分析する試料を平坦に圧延するための赤外分光分析用加圧セルに関する。
【背景技術】
【０００２】
物質の光透過性は、厚みに依存することが知られている。そして、赤外分光分析計で試料を分析する際に、厚みの調整が必要となっている。
【０００３】
また、一般的なプラスチック素材では、良好な透過光の赤外吸収スペクトルを得ようとすると、試料は数ミクロン以下であることが必要である。
【０００４】
さらに、通常の物質は、光の表面反射があることも知られている。そして、より平坦な面が良好なスペクトルを得るのに適している。
【０００５】
このような事から、通常、赤外分光分析計で試料を分析する際には、試料を圧延（プレス）等により平坦化と薄膜化が計られている。
【０００６】
前記試料を平坦化と薄膜化する方法として、従来、人工ダイヤモンドをセル枠に接着し、加圧する機構を備えたダイヤモンドセルが販売されている。
【０００７】
前記販売されているダイヤモンドセルとして、例えば、図５に示すように、２枚１組になったセル板（１０１、１０２）に試料（１０４）をはさんで手回しネジ（１０３）で締め付け押しつぶすダイヤモンドセル構造（１００）が知られている。
【０００８】
また、図６に示すような組立てセル（例えば、非特許文献１参照。）も知られている。
【０００９】
この組立てセルは図６に示すように、組立てセルで１枚の窓の上に試料とスペーサー（通常水銀でアマルガム化した鉛などがもちいられる。）を置き別の窓をその上に重ねてサンドイッチ状にして全体を締め付ける。
【００１０】
以下に先行技術文献を示す。
【非特許文献１】機器分析とその実験 昭和５６年４月２９日初版発行 出版…三共出版株式会社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１１】
しかし、従来のダイヤモンドセルは、ダイヤモンドがセル枠に固定されているために、裏側面が洗浄し難いという問題があった。
【００１２】
さらに、洗浄不備により、裏側面に付着した物質の吸収を拾ってしまうという問題点もあった。
【００１３】
また、試料を薄く圧延（プレス）し過ぎてしまうという問題がある。そして、赤外吸収スペクトルの強度が大きくないという問題点があった。
【００１４】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、プレス板がセル枠からの脱着が容易で、洗浄し易く、且つ、簡便に良好な厚みに試料が圧延
（プレス）される赤外分析用加圧セルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１５】
上記問題点を解決するために、本発明の請求項１に係る発明は、
赤外分光分析計で分析する試料を平坦に圧延する赤外分光分析用加圧セルにおいて、該赤外分光分析用加圧セルがプレス板と、該プレス板を載置する底面板と、プレスロールを具備することを特徴とする赤外分光分析用加圧セルである。
【００１６】
次に、本発明の請求項２に係る発明は、
前記プレスロールが両端に軸を有し、前記底面板の上側側面にプレスロールの軸が挿入されガイドする側面板が設けられていることを特徴とする請求項１記載の赤外分光分析用加圧セルである。
【００１７】
また、本発明の請求項３に係る発明は、
前記底面板が覗き窓を有し、且つ、プレス板が赤外透過性部材からなることを特徴とする請求項１または請求項２記載の赤外分光分析用加圧セルである。
【００１８】
次に、本発明の請求項４に係る発明は、
前記プレスロールが、赤外透過性部材からなる事を特徴とする請求項１乃至３のいずれかに記載の赤外分光分析用加圧セルである。
【００１９】
また、本発明の請求項５に係る発明は、
前記底面板の上面に、前記プレス板の移動を防ぐための固定柱が設けられていることを特徴とする請求項１乃至請求項４のいずれかに記載の赤外分光分析用加圧セルである。
【００２０】
また、本発明の請求項６に係る発明は、
前記プレスロールのプレス部の表面が最大深さ０．１〜１０μｍの凹みを有することを特徴とする請求項１乃至５のいずれかに記載の赤外分光分析用加圧セルである。
【発明の効果】
【００２１】
本発明において、一方にプレスロールを用いた赤外分光分析用加圧セルとすることにより、加圧した際に試料を圧延しすぎることなく、試料を良好な厚さに容易にプレスすることが可能となり、良好な赤外分光スペクトルを得ることができた。
【００２２】
また、プレスロールが両端に軸を有し、前記底面板の上側側面にプレスロールの軸が挿入され、ガイドする側面版が設けられている底面版を有する赤外分光分析用加圧セルを用いることにより、試料の圧延時にロールがずれることなく良好に試料を圧延することが可能となり、良好な赤外分光スペクトルを得ることができた。
【００２３】
また、底面板が覗き窓を有し、プレス板が赤外透過性部材からなる赤外分光分析用加圧セルを用いることにより、赤外光をセル内を通過させることが可能となり、プレス板状の圧延された試料に対して良好な透過赤外分光スペクトルを得ることができた。
【００２４】
また、プレスロールが赤外透過性部材からなる赤外分光分析用加圧セルを用いることにより、プレスロール上にある圧延された試料に対して良好な透過赤外分光スペクトルを得ることができた。
【００２５】
また、前記底面板の上面に、前記プレス板の移動を防ぐための固定柱を設けることにより、加圧時にプレス板がずれることがなく、試料を容易にプレスすることが可能となり、また、プレス板が底面版から容易に取り外し可能となるため、プレス板を完璧に洗浄する
ことが可能となり、ノイズ（試料由来で無い物質の赤外吸収）の無い良好な赤外分光スペクトルを得ることができた。
【００２６】
また、前記プレスロールのプレス部の表面に最大深さ０．１〜１０μｍの凹みを設けることにより、加圧時に試料の厚みが溝の深さ以上に薄くなることがなくなるため、試料を良好な厚さに圧延することが可能となり、良好な赤外分光スペクトルを得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２７】
本発明の赤外分析用加圧セルを実施の形態に沿って以下に図面を参照にしながら詳細に説明する。図１〜図２は本発明の一実施例を示す。
【００２８】
図１は、本発明の赤外分析用加圧セルの構成の一実施例の平面を示す概略図である。また、図２は本発明の赤外分析用加圧セルの構成の一実施例の正面を示す概略図である。
【００２９】
図１又は図２に示すように、本発明の赤外分析用加圧セルはプレス板（５）が載置される底面板（１）と、底面板（１）の上面の左右両端に設けられている左右の側面板（３、４）と、左右の側面版（３、４）の上面を接続する天面板（２）と、試料をプレス版（５）上面で圧延（プレス）するプレスロール（６）から構成されている。
【００３０】
前記底面板（１）は図３（ａ）及び（ｂ）に示すように中央位置に覗き窓が設けられている。そして、覗き窓（１１）の外側方向にプレス板が移動しないようにプレス板の外縁前後、及び、左右にプレス板の厚さより僅かに低いプレス板移動止めピン（７）が垂設されている。
【００３１】
さらに、底面板（１）の左右方向端縁に側面板を定着させるための嵌合孔（８）が複数箇所に設けられている。そして、底面板（１）の前方方向と後方方向の左右端縁近傍に天面板（２）を固定する支柱（９）が設けられている。
【００３２】
前記支柱（９）の先端方向は天面板（２）が載置された後、天面板（２）を圧着するためのネジ部（１１）が施されている。
【００３３】
次に、図４（ａ）は天面板（２）の一実施例の平面を示す概略図である。また、（ｂ）は図４（ａ）の正面を示す概略図である。
【００３４】
図４（ａ）又は（ｂ）に示すように、天面板（２）は中央に覗き窓（１１）が設けられている。そして、左右方向端縁に側面板（３、４）を定着させるための嵌合孔（８）が複数箇所に設けられている。
【００３５】
さらに、天面板（２）の前方方向と後方方向の左右端縁近傍に支柱が挿入し、固定される支柱孔（１２）が設けられている。
【００３６】
次に、図５（ａ）は側面板の一実施例の側面を示す概略図である。また、（ｂ）は図５（ａ）の正面を示す概略図である。
【００３７】
図５（ａ）又は（ｂ）に示すように、側面板（３、４）の側面はプレスロールが前後に移動ガイドを行う為にブレス軸が挿入される為の長孔（１３）が中央に施されている。そして、側面板（３、４）の側面の上方方向と下方方向に複数個の固定ピン（１４）が設けられている。
【００３８】
前記複数個の固定ピン（１４）は側面板（３、４）が定着される底面板（１）の嵌合孔（８）と天面板（２）の嵌合孔（８）にそれぞれ嵌合される。
【００３９】
次に、プレス板（５）はダイヤモンド、Ｇｅなどの単一素材、または、ＫＣｌ、ＮａＣｌ、ＺｎＳｅ、ＫＲＳ−５などの塩、あるいは、プラスチックやガラスに金メッキを施したものなどが使用できる。そして、好ましくはダイヤモンドである。
【００４０】
また、プレスローラー（６）は、プレス板（５）とどうように、ダイヤモンド、Ｇｅなどの単一素材、または、ＫＣｌ、ＮａＣｌ、ＺｎＳｅ、ＫＲＳ−５などの塩、あるいは、プラスチックやガラスに金メッキを施したものなどが使用できる。そして、好ましくはＧｅかダイヤモンドである。
【００４１】
前記プレスローラー（６）は、溝が形成されている。前記溝は、１〜数本を並列することが望ましい。そして、その深さは、最大０．１〜１０μｍ、好ましくは０．３〜５μｍである。また、この溝の断面は出来る限り台形に近いことが望ましい。
【実施例】
【００４２】
上記の発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
（実施例）
縦１０ｍｍ×横１０ｍｍ×厚さ１ｍｍのダイヤモンドのプレス板と、ＢａＦ２を用いて直径５ｍｍの円柱状製のプレスロールを作製した。
【００４３】
前記プレスロールの表面に深さ０．３μｍの溝を設けた。そして、プレスロールの両端面にステンレス製の軸を接着した。
【００４４】
また、底面板と天面板と側面板と支柱をエポキシ樹脂で一体成形した。そして、底面板の移動止めピンの中にプレス板を載置した。さらに、側面板の長孔にプレスロールの軸を挿入し赤外分析用加圧セルを作製した。
【００４５】
前記作製した赤外分析用加圧セルを比較する為にＰｅｒｋｉｎ Ｅｌｍｅｒ社製ダイヤモンドＥＸ加圧セル1)とＴｈｅｒｍｏ社製Ｍｉｃｒｏ Ｓａｍｐｌｅ Ｐｌａｎ ｗ／Ｄｉａｍｏｎｄ Ｗｉｎｄｏｗｓ加圧セル2)を用いた。そして、各加圧セルをＩＲスペクトル取得用に１００回連続使用し、性能を評価した。
【００４６】
評価した結果を表１に示す。
【００４７】
【表１】
【００４８】
また、比較するために用いた加圧セルは、何れともプレス板の裏側面の洗浄が容易でない。特に試料が端の方に付着したものは、綿棒などが届かず、圧縮空気などでようやく除去る状態であった。
【００４９】
また、本発明の赤外分析用加圧セルは、プレス板の裏側面等の洗浄が完璧にでき、且つ、容易にできる。そして、汚染を最大限防げることにより、分析する成分以外の共雑成分の赤外スペクトルへの影響を限りなく排除できる。
【００５０】
さらに、本発明の赤外分析用加圧セルは、良好なＩＲスペクトルの吸光度を確保でき、スペクトルの解析などが容易にできる。
【産業上の利用可能性】
【００５１】
本発明の赤外分析用加圧セルは試料を圧延（プレス）して分析する赤外分析用加圧として優れていることはもとより、精密部材あるいは医療・医薬分野等にも使用できる素晴らしい発明である。
【図面の簡単な説明】
【００５２】
【図１】（ａ）は本発明の赤外分析用加圧セルの構成の一実施例の平面を示す概略図である。（ｂ）は図１（ａ）の正面を示す概略図である。
【図２】（ａ）は本発明の赤外分析用加圧セルを構成する底面板の平面を示す概略図である。（ｂ）は本発明の赤外分析用加圧セルを構成する底面板の正面を示す概略図である。
【図３】（ａ）は本発明の赤外分析用加圧セルを構成する天面板の平面を示す概略図である。（ｂ）は本発明の赤外分析用加圧セルを構成する天面板の正面を示す概略図である。
【図４】（ａ）は本発明の赤外分析用加圧セルを構成する側面板の正面を示す概略図である。（ｂ）は本発明の赤外分析用加圧セルを構成する側面板の平面を示す概略図である。
【図５】従来、市販されている赤外分析用加圧セルの概略を説明するための概略図である。
【図６】従来の赤外分析用加圧セルの概略を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【００５３】
１…底面板
２…天面板
３…側面板
４…側面板
５…プレス板
６…プレスロール
７…移動止めピン
８…嵌合孔
９…支柱
１０…ネジ部
１１…覗き窓
１２…支柱孔
１３…長穴
１４…固定ピン
１５…軸
２０…赤外分析用加圧セル
【技術分野】
【０００１】
本発明は、赤外分光分析計で分析する試料を平坦に圧延するための赤外分光分析用加圧セルに関する。
【背景技術】
【０００２】
物質の光透過性は、厚みに依存することが知られている。そして、赤外分光分析計で試料を分析する際に、厚みの調整が必要となっている。
【０００３】
また、一般的なプラスチック素材では、良好な透過光の赤外吸収スペクトルを得ようとすると、試料は数ミクロン以下であることが必要である。
【０００４】
さらに、通常の物質は、光の表面反射があることも知られている。そして、より平坦な面が良好なスペクトルを得るのに適している。
【０００５】
このような事から、通常、赤外分光分析計で試料を分析する際には、試料を圧延（プレス）等により平坦化と薄膜化が計られている。
【０００６】
前記試料を平坦化と薄膜化する方法として、従来、人工ダイヤモンドをセル枠に接着し、加圧する機構を備えたダイヤモンドセルが販売されている。
【０００７】
前記販売されているダイヤモンドセルとして、例えば、図５に示すように、２枚１組になったセル板（１０１、１０２）に試料（１０４）をはさんで手回しネジ（１０３）で締め付け押しつぶすダイヤモンドセル構造（１００）が知られている。
【０００８】
また、図６に示すような組立てセル（例えば、非特許文献１参照。）も知られている。
【０００９】
この組立てセルは図６に示すように、組立てセルで１枚の窓の上に試料とスペーサー（通常水銀でアマルガム化した鉛などがもちいられる。）を置き別の窓をその上に重ねてサンドイッチ状にして全体を締め付ける。
【００１０】
以下に先行技術文献を示す。
【非特許文献１】機器分析とその実験 昭和５６年４月２９日初版発行 出版…三共出版株式会社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【００１１】
しかし、従来のダイヤモンドセルは、ダイヤモンドがセル枠に固定されているために、裏側面が洗浄し難いという問題があった。
【００１２】
さらに、洗浄不備により、裏側面に付着した物質の吸収を拾ってしまうという問題点もあった。
【００１３】
また、試料を薄く圧延（プレス）し過ぎてしまうという問題がある。そして、赤外吸収スペクトルの強度が大きくないという問題点があった。
【００１４】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、プレス板がセル枠からの脱着が容易で、洗浄し易く、且つ、簡便に良好な厚みに試料が圧延
（プレス）される赤外分析用加圧セルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【００１５】
上記問題点を解決するために、本発明の請求項１に係る発明は、
赤外分光分析計で分析する試料を平坦に圧延する赤外分光分析用加圧セルにおいて、該赤外分光分析用加圧セルがプレス板と、該プレス板を載置する底面板と、プレスロールを具備することを特徴とする赤外分光分析用加圧セルである。
【００１６】
次に、本発明の請求項２に係る発明は、
前記プレスロールが両端に軸を有し、前記底面板の上側側面にプレスロールの軸が挿入されガイドする側面板が設けられていることを特徴とする請求項１記載の赤外分光分析用加圧セルである。
【００１７】
また、本発明の請求項３に係る発明は、
前記底面板が覗き窓を有し、且つ、プレス板が赤外透過性部材からなることを特徴とする請求項１または請求項２記載の赤外分光分析用加圧セルである。
【００１８】
次に、本発明の請求項４に係る発明は、
前記プレスロールが、赤外透過性部材からなる事を特徴とする請求項１乃至３のいずれかに記載の赤外分光分析用加圧セルである。
【００１９】
また、本発明の請求項５に係る発明は、
前記底面板の上面に、前記プレス板の移動を防ぐための固定柱が設けられていることを特徴とする請求項１乃至請求項４のいずれかに記載の赤外分光分析用加圧セルである。
【００２０】
また、本発明の請求項６に係る発明は、
前記プレスロールのプレス部の表面が最大深さ０．１〜１０μｍの凹みを有することを特徴とする請求項１乃至５のいずれかに記載の赤外分光分析用加圧セルである。
【発明の効果】
【００２１】
本発明において、一方にプレスロールを用いた赤外分光分析用加圧セルとすることにより、加圧した際に試料を圧延しすぎることなく、試料を良好な厚さに容易にプレスすることが可能となり、良好な赤外分光スペクトルを得ることができた。
【００２２】
また、プレスロールが両端に軸を有し、前記底面板の上側側面にプレスロールの軸が挿入され、ガイドする側面版が設けられている底面版を有する赤外分光分析用加圧セルを用いることにより、試料の圧延時にロールがずれることなく良好に試料を圧延することが可能となり、良好な赤外分光スペクトルを得ることができた。
【００２３】
また、底面板が覗き窓を有し、プレス板が赤外透過性部材からなる赤外分光分析用加圧セルを用いることにより、赤外光をセル内を通過させることが可能となり、プレス板状の圧延された試料に対して良好な透過赤外分光スペクトルを得ることができた。
【００２４】
また、プレスロールが赤外透過性部材からなる赤外分光分析用加圧セルを用いることにより、プレスロール上にある圧延された試料に対して良好な透過赤外分光スペクトルを得ることができた。
【００２５】
また、前記底面板の上面に、前記プレス板の移動を防ぐための固定柱を設けることにより、加圧時にプレス板がずれることがなく、試料を容易にプレスすることが可能となり、また、プレス板が底面版から容易に取り外し可能となるため、プレス板を完璧に洗浄する
ことが可能となり、ノイズ（試料由来で無い物質の赤外吸収）の無い良好な赤外分光スペクトルを得ることができた。
【００２６】
また、前記プレスロールのプレス部の表面に最大深さ０．１〜１０μｍの凹みを設けることにより、加圧時に試料の厚みが溝の深さ以上に薄くなることがなくなるため、試料を良好な厚さに圧延することが可能となり、良好な赤外分光スペクトルを得ることができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２７】
本発明の赤外分析用加圧セルを実施の形態に沿って以下に図面を参照にしながら詳細に説明する。図１〜図２は本発明の一実施例を示す。
【００２８】
図１は、本発明の赤外分析用加圧セルの構成の一実施例の平面を示す概略図である。また、図２は本発明の赤外分析用加圧セルの構成の一実施例の正面を示す概略図である。
【００２９】
図１又は図２に示すように、本発明の赤外分析用加圧セルはプレス板（５）が載置される底面板（１）と、底面板（１）の上面の左右両端に設けられている左右の側面板（３、４）と、左右の側面版（３、４）の上面を接続する天面板（２）と、試料をプレス版（５）上面で圧延（プレス）するプレスロール（６）から構成されている。
【００３０】
前記底面板（１）は図３（ａ）及び（ｂ）に示すように中央位置に覗き窓が設けられている。そして、覗き窓（１１）の外側方向にプレス板が移動しないようにプレス板の外縁前後、及び、左右にプレス板の厚さより僅かに低いプレス板移動止めピン（７）が垂設されている。
【００３１】
さらに、底面板（１）の左右方向端縁に側面板を定着させるための嵌合孔（８）が複数箇所に設けられている。そして、底面板（１）の前方方向と後方方向の左右端縁近傍に天面板（２）を固定する支柱（９）が設けられている。
【００３２】
前記支柱（９）の先端方向は天面板（２）が載置された後、天面板（２）を圧着するためのネジ部（１１）が施されている。
【００３３】
次に、図４（ａ）は天面板（２）の一実施例の平面を示す概略図である。また、（ｂ）は図４（ａ）の正面を示す概略図である。
【００３４】
図４（ａ）又は（ｂ）に示すように、天面板（２）は中央に覗き窓（１１）が設けられている。そして、左右方向端縁に側面板（３、４）を定着させるための嵌合孔（８）が複数箇所に設けられている。
【００３５】
さらに、天面板（２）の前方方向と後方方向の左右端縁近傍に支柱が挿入し、固定される支柱孔（１２）が設けられている。
【００３６】
次に、図５（ａ）は側面板の一実施例の側面を示す概略図である。また、（ｂ）は図５（ａ）の正面を示す概略図である。
【００３７】
図５（ａ）又は（ｂ）に示すように、側面板（３、４）の側面はプレスロールが前後に移動ガイドを行う為にブレス軸が挿入される為の長孔（１３）が中央に施されている。そして、側面板（３、４）の側面の上方方向と下方方向に複数個の固定ピン（１４）が設けられている。
【００３８】
前記複数個の固定ピン（１４）は側面板（３、４）が定着される底面板（１）の嵌合孔（８）と天面板（２）の嵌合孔（８）にそれぞれ嵌合される。
【００３９】
次に、プレス板（５）はダイヤモンド、Ｇｅなどの単一素材、または、ＫＣｌ、ＮａＣｌ、ＺｎＳｅ、ＫＲＳ−５などの塩、あるいは、プラスチックやガラスに金メッキを施したものなどが使用できる。そして、好ましくはダイヤモンドである。
【００４０】
また、プレスローラー（６）は、プレス板（５）とどうように、ダイヤモンド、Ｇｅなどの単一素材、または、ＫＣｌ、ＮａＣｌ、ＺｎＳｅ、ＫＲＳ−５などの塩、あるいは、プラスチックやガラスに金メッキを施したものなどが使用できる。そして、好ましくはＧｅかダイヤモンドである。
【００４１】
前記プレスローラー（６）は、溝が形成されている。前記溝は、１〜数本を並列することが望ましい。そして、その深さは、最大０．１〜１０μｍ、好ましくは０．３〜５μｍである。また、この溝の断面は出来る限り台形に近いことが望ましい。
【実施例】
【００４２】
上記の発明について実施例を挙げてさらに具体的に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
（実施例）
縦１０ｍｍ×横１０ｍｍ×厚さ１ｍｍのダイヤモンドのプレス板と、ＢａＦ２を用いて直径５ｍｍの円柱状製のプレスロールを作製した。
【００４３】
前記プレスロールの表面に深さ０．３μｍの溝を設けた。そして、プレスロールの両端面にステンレス製の軸を接着した。
【００４４】
また、底面板と天面板と側面板と支柱をエポキシ樹脂で一体成形した。そして、底面板の移動止めピンの中にプレス板を載置した。さらに、側面板の長孔にプレスロールの軸を挿入し赤外分析用加圧セルを作製した。
【００４５】
前記作製した赤外分析用加圧セルを比較する為にＰｅｒｋｉｎ Ｅｌｍｅｒ社製ダイヤモンドＥＸ加圧セル1)とＴｈｅｒｍｏ社製Ｍｉｃｒｏ Ｓａｍｐｌｅ Ｐｌａｎ ｗ／Ｄｉａｍｏｎｄ Ｗｉｎｄｏｗｓ加圧セル2)を用いた。そして、各加圧セルをＩＲスペクトル取得用に１００回連続使用し、性能を評価した。
【００４６】
評価した結果を表１に示す。
【００４７】
【表１】
【００４８】
また、比較するために用いた加圧セルは、何れともプレス板の裏側面の洗浄が容易でない。特に試料が端の方に付着したものは、綿棒などが届かず、圧縮空気などでようやく除去る状態であった。
【００４９】
また、本発明の赤外分析用加圧セルは、プレス板の裏側面等の洗浄が完璧にでき、且つ、容易にできる。そして、汚染を最大限防げることにより、分析する成分以外の共雑成分の赤外スペクトルへの影響を限りなく排除できる。
【００５０】
さらに、本発明の赤外分析用加圧セルは、良好なＩＲスペクトルの吸光度を確保でき、スペクトルの解析などが容易にできる。
【産業上の利用可能性】
【００５１】
本発明の赤外分析用加圧セルは試料を圧延（プレス）して分析する赤外分析用加圧として優れていることはもとより、精密部材あるいは医療・医薬分野等にも使用できる素晴らしい発明である。
【図面の簡単な説明】
【００５２】
【図１】（ａ）は本発明の赤外分析用加圧セルの構成の一実施例の平面を示す概略図である。（ｂ）は図１（ａ）の正面を示す概略図である。
【図２】（ａ）は本発明の赤外分析用加圧セルを構成する底面板の平面を示す概略図である。（ｂ）は本発明の赤外分析用加圧セルを構成する底面板の正面を示す概略図である。
【図３】（ａ）は本発明の赤外分析用加圧セルを構成する天面板の平面を示す概略図である。（ｂ）は本発明の赤外分析用加圧セルを構成する天面板の正面を示す概略図である。
【図４】（ａ）は本発明の赤外分析用加圧セルを構成する側面板の正面を示す概略図である。（ｂ）は本発明の赤外分析用加圧セルを構成する側面板の平面を示す概略図である。
【図５】従来、市販されている赤外分析用加圧セルの概略を説明するための概略図である。
【図６】従来の赤外分析用加圧セルの概略を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【００５３】
１…底面板
２…天面板
３…側面板
４…側面板
５…プレス板
６…プレスロール
７…移動止めピン
８…嵌合孔
９…支柱
１０…ネジ部
１１…覗き窓
１２…支柱孔
１３…長穴
１４…固定ピン
１５…軸
２０…赤外分析用加圧セル
【特許請求の範囲】
【請求項１】
赤外分光分析計で分析する試料を平坦に圧延する赤外分光分析用加圧セルにおいて、
該赤外分光分析用加圧セルがプレス板と、該プレス板を載置する底面板と、プレスロールを具備することを特徴とする赤外分光分析用加圧セル。
【請求項２】
前記プレスロールが両端に軸を有し、前記底面板の上側側面にプレスロールの軸が挿入されガイドする側面板が設けられていることを特徴とする請求項１記載の赤外分光分析用加圧セル。
【請求項３】
前記底面板が覗き窓を有し、且つ、プレス板が赤外透過性部材からなることを特徴とする請求項１または請求項２記載の赤外分光分析用加圧セル。
【請求項４】
前記プレスロールが、赤外透過性部材からなる事を特徴とする請求項１乃至３のいずれかに記載の赤外分光分析用加圧セル。
【請求項５】
前記底面板の上面に、前記プレス板の移動を防ぐための固定柱が設けられていることを特徴とする請求項１乃至請求項４のいずれかに記載の赤外分光分析用加圧セル。
【請求項６】
前記プレスロールのプレス部の表面が最大深さ０．１〜１０μｍの凹みを有することを特徴とする請求項１乃至５のいずれかに記載の赤外分光分析用加圧セル。
【請求項１】
赤外分光分析計で分析する試料を平坦に圧延する赤外分光分析用加圧セルにおいて、
該赤外分光分析用加圧セルがプレス板と、該プレス板を載置する底面板と、プレスロールを具備することを特徴とする赤外分光分析用加圧セル。
【請求項２】
前記プレスロールが両端に軸を有し、前記底面板の上側側面にプレスロールの軸が挿入されガイドする側面板が設けられていることを特徴とする請求項１記載の赤外分光分析用加圧セル。
【請求項３】
前記底面板が覗き窓を有し、且つ、プレス板が赤外透過性部材からなることを特徴とする請求項１または請求項２記載の赤外分光分析用加圧セル。
【請求項４】
前記プレスロールが、赤外透過性部材からなる事を特徴とする請求項１乃至３のいずれかに記載の赤外分光分析用加圧セル。
【請求項５】
前記底面板の上面に、前記プレス板の移動を防ぐための固定柱が設けられていることを特徴とする請求項１乃至請求項４のいずれかに記載の赤外分光分析用加圧セル。
【請求項６】
前記プレスロールのプレス部の表面が最大深さ０．１〜１０μｍの凹みを有することを特徴とする請求項１乃至５のいずれかに記載の赤外分光分析用加圧セル。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２００７−１４７３５５（Ｐ２００７−１４７３５５Ａ）
【公開日】平成１９年６月１４日（２００７．６．１４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−３３９９９８（Ｐ２００５−３３９９９８）
【出願日】平成１７年１１月２５日（２００５．１１．２５）
【出願人】（０００００３１９３）凸版印刷株式会社 (10,630)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年６月１４日（２００７．６．１４）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年１１月２５日（２００５．１１．２５）
【出願人】（０００００３１９３）凸版印刷株式会社 (10,630)
【Ｆターム（参考）】
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