説明

赤外染料組成物

約700nmと2000nmの間の赤外スペクトル域に少なくとも1つの吸収極大を有し、赤外吸収剤として有用であり、アニオンホウ酸塩部分が式[BXaYb]-[式中、aおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4であり;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくはペルフルオロアルキル基などの電子求引性置換基、または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されており、更に置換されることもある)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である]を有する新規のアミニウム、ジイモニウム、およびポリメチンホウ酸塩染料が開示される。かかる染料は、フィルムまたはバルク材料に組み込まれ、レーザー放射を含む電磁放射のための光フィルターを形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルターおよびセンシング材料に使用するための蛍光性および非蛍光性の赤外線吸収染料、より詳細には、アミニウム、ジイモニウム、または約700nmと2000nmの間に少なくとも1つの吸収極大を有するポリメチンカチオン性発色団およびホウ酸塩対イオンを含む、熱的に安定で高度に可溶性な染料に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線吸収染料を含む染料を、ホストの液体、固体またはゲルに溶解または分散させた場合、光吸収、場合によっては、蛍光性またはリン光性光放出を提供する多くの用途がある。例えば、非発光性または発光性が低い赤外染料が、光フィルターに使用される(発光は、それが蛍光、リン光、または未決定の放出機構によるものであろうとも、全ての光放出を包含すると理解される)。赤外線フィルターは、固体検出器、フォトダイオードアレイ、電荷結合素子(CCD)または相補型金属酸化物半導体(CMOS)アレイなどの画像センサー、および他の画像装置を含むセンサーに使用され、例えば不可視光線の吸収によって幅広い感光素子の感度曲線を形成し、目の感度曲線と類似のセンサー感度曲線を提供する。かかる赤外吸収染料を含むフィルターは、センサーまたは目を赤外照射、例えばレーザー放射、または溶接作業などの他の赤外線源から保護するためにも使用される。
【0003】
赤外波長フィルターは、太陽、照明光源、陰極線管(CRT)を含む情報ディスプレイ、液晶およびプラズマディスプレイ、発光ダイオード、および有機発光ダイオード(OLED)など他の放射性技術から放出される赤外線エネルギーの強度を減少するために、特にかかる赤外線源がセンサーの動作を妨げるかもしれない場合に、使用することもできる。赤外吸収体は、例えば、可視的に部分的に透明なプラスチックに商用上または安全上の特性を備える、銀行またはクレジットカードなど、赤外線に対して透明なまたは部分的に透明な他のプラスチック物品中に赤外線ブロックを提供するために使用することもできる。また赤外染料は、細胞生物学用途、インク、または熱によって活性化される組成物において使用することもできる。
【0004】
これらおよび他の非放射性赤外染料の用途に加えて、放射性赤外染料は、例えば、レーザー装置およびレーザー用途、安全インク、センサー、生物学的および医療分析などに用いられる。赤外放射性染料は、インクおよび加熱すると活性化する組成物においても使用することもできる。
【0005】
赤外吸収および赤外放射染料は、長い歴史を有し何千もの組成物が知られている。多くの場合、発色団の蛍光ポリメチンの種類が、最初の赤外染料であった。赤外吸収体は、特に、フタロシアニンおよびそれらの金属錯体、ナフタロシアニンおよびそれらの金属錯体、アントラキノン誘導体、ジチオレン(金属錯体染料としても知られている)、アミニウム塩、およびジイモニウム塩を含む、化学化合物の他の幾つかの種類に分類することもできる。これらのうち、一般的にポリメチン一部、フタロシアニンの一部、およびナフタロシアニンの一部が赤外放射を有している。また、ポリメチンおよび非置換フタロシアニンならびにナフタロシアニンは、ジチオレン、アントラキノン誘導体、アミニウム塩またはジイモニウム塩より相対的に狭い吸収スペクトルを有している。狭いバンドおよび広いバンド吸収体の両方が、それぞれがある用途において有利な性能を有しているので、有用である。
【0006】
赤外線吸収アミニウム染料のスペクトル特性の最初の報告は、Otto NeunhoefferおよびPeter Heitmannによってなされた(Neunhoeffer他、Chemische Berichte 92、245〜251頁(1959)を参照されたい)。これら染料のAmerican Cyanamid CompanYof Stamford(米国コネチカット州)におけるその後の研究は、Peter Susiおよび同僚によって、特許文献(Susi他に対する米国特許第3,341,464号、第3,440,257号、第3,484,467号、第3,575,871号、および第3,631,147号、Milionis他に対する米国特許第3,400,156号、Grossoに対する米国特許第3,962,290号)において報告されている。様々な他の特許が、中間生成物の調製方法およびかかるアミニウム塩の光フィルターの赤外吸収化合物としての使用を開示している。
【0007】
アミニウムおよび関連するジイモニウム塩の熱的安定性に限界のあることが直ちに理解された。研究は、Susi他に対する米国特許第3,341,464号から取った以下の表1に示すように、ヘキサフルオロアンチモン酸塩(SbF6-)、および幾分程度は低いが、アミニウムイオンのヘキサフルオロヒ酸塩(AsF6-)が最も安定している、すなわち、これらの塩が、高温に曝された場合最大の光学密度を保持していたことを示した。
【0008】
【表1】

【0009】
したがって、最も熱的に安定なアミニウムおよびジイモニウム発色団両方のヘキサフルオロアンチモン酸塩が、赤外吸収成分として広く使用されてきたのは驚くべきことではない。しかしながら、あるジイモニウム塩の熱分解が、場合によっては、ある用途に有用であることに留意されたい。例えば、Cohenに対する米国特許第5,686,639号は、エポキシ硬化剤としてのキノンジイモニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩の使用について開示している。ジイモニウム染料は、アミニウム化合物より、一層熱的に安定ではない。
【0010】
ヘキサフルオロアンチモン酸塩、ヘキサフルオロヒ酸塩、過塩素酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、トシラートなどの対イオンを含むポリメチン、アミニウムおよびジイモニウム塩の制限された溶解性は、低極性ホスト中で高い光学密度を必要とする用途において最も明らかである。例えば、市販されている赤外染料IR-140は、その過塩素酸塩およびトシラート塩の場合、トルエンおよびポリスチレン中の溶解性が非常に制限される。別の例は、ソフトコンタクトレンズ中のトリス(4-ジエチルアミノフェニル)アミニウムSbF6-の低溶解性である。これは、部品、すなわちコンタクトレンズの要求される厚さが、その用途によってたった100マイクロメートル程度に制限されるのに、赤外線防護のための光学密度の要求が高い例である。したがって、高い溶解性が必要である。
【0011】
American Cyanamid Companyにおける研究報告後20年以上経ってから、赤外染料とは無関係な用途の研究を行っていたFrederic Castellanosおよび彼の同僚(以後「Castellanos」と称する)は、一連の紫外線吸収光合成開始剤について記述した。この開始剤は、電子不足ホウ酸塩アニオンとペアを組んだもので、彼らはこれを「オニウムホウ酸塩(onium borate)」と称した。具体的には、全て「Onium Borates/Borates of Organometallic Complexes and Cationic Initiation of Polymerization Therewith」と題する、Castellanos他に対する米国特許第5,468,902号、第5,550,265号、第5,668,192号、および第6,147,184号において、カチオン重合開始剤としてのUV-吸収オニウムホウ酸塩の組成物および使用が記載されている。本明細書において記載する赤外染料とは異なる電磁スペクトルの部分における吸収に加えて、Castellanosによって記載されるオニウム溶液およびポリマー化学は、アミニウム、ジイモニウムおよびポリメチン染料の化学とは著しく異なる。CastellanosのUV-吸収オニウム塩は、記述されているように、カチオン重合開始剤であるのに対して、アミニウムラジカル塩を含む多くの赤外染料は、重合抑制剤である。
【0012】
Castellanosの基本的な発見は、特定のホウ酸塩アニオンから成るオニウム塩が、ヘキサフルオロアンチモン酸塩アニオンの対応するオニウム塩として少なくともカチオン重合の触媒作用において有効であり、例えばヘキサフルオロリン酸塩アニオンなどのオニウム塩より有効な触媒であるということであった。しかしながらCastellanosは、彼のオニウムホウ酸塩の熱的安定性および溶解性については記載しなかった。
【0013】
光フィルターでの使用に関し、最も所望されるプラスチックまたはポリマーの1つが、ポリカーボネートである。ポリカーボネートは、しばしばGeneral Electric Companyの商標Lexan(登録商標)によって呼称されるが、配合し高温プロセスにおいて様々な形状に成形することができる。ポリカーボネートの光学的および機械的特性の組合せによって、しばしばこの材料が、眼科用ならびに他の用途のために選択されるポリマーになる。アミニウム赤外吸収剤を、ポリカーボネートへと成形する難しさは良く知られており、これはポリカーボネートの成形に必要とされる比較的高温におけるこれら染料の分解に関係する。耐衝撃性の無い品位のポリカーボネートならば、比較的低い温度で成形することもでき、ここではアミニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩は比較的ゆっくりと分解する。しかし耐衝撃性のあるポリカーボネートの成形は、通常約500°F超のバレル温度を必要とする。これらの温度においては、最も熱的に安定なアミニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩であっても比較的急速に分解し、首尾一貫した成形結果を得ることは困難である。
【0014】
更に、これらの熱的安定性に限界があり、それ故高温における低メルトフローインデックス品位のポリカーボネートなど、高性能透明樹脂における利用が限られているにもかかわらず、アミニウム塩の熱的安定性における改良は、35年を超えて報告されなかった。恐らく研究者達は、最も安定なヘキサフルオロアンチモン酸塩アミニウム染料の熱的安定性は、アニオンの性質によってではなくて、カチオン自体の安定性、すなわち溶融処理温度におけるカチオンとホスト液体またはポリマーとの反応によって制限されると信じていた。
【0015】
ポリカーボネート光フィルターを製作する場合に、従来報告されているアミニウム染料の熱分解を低減させる解決策の1つの道は、アミニウムSbF6-染料が比較的ゆっくりと分解する温度において処理することのできるポリカーボネートのブレンドの開発であった。かかるポリマー組成物またはブレンドは、例えばL.P. Fontana他に対する米国特許第5,210,122号および第5,326,799号、ならびにL.A. Cohenに対する米国特許第5,434,197号において開示されている。しかしながら、このアプローチの不利な点の1つは、例えばGeneral Electric CompanyのXylex(登録商標)X7200などの材料の少なくとも1つのヘーズが、ブレンドしていない眼科用または「OQ」品位のポリカーボネートのヘーズより高いことである。したがって、このポリマーブレンドアプローチは、光学的フィルター用途における耐衝撃性フィルターに関して限度がある。
【0016】
最近になって、吸収性の染料は、例えばルゲート、誘電スタック、ホログラム、および例えば非常に効果的な光学フィルターを製作するために波長または波長域の補足的または補助的ろ過を提供する他の種類のコーティングなどの反射または回折素子と組み合わせられるようになった。これらコーティングの堆積は、非耐衝撃品位のポリカーボネートの歪曲温度を超える基材の温度をもたらすこともある。したがって、染料とコーティングの両方を使用する用途には、高温品位のポリカーボネート中の吸収基材を提供することが望ましい。
【特許文献1】米国特許第3,341,464号
【特許文献2】米国特許第3,440,257号
【特許文献3】米国特許第3,484,467号
【特許文献4】米国特許第3,575,871号
【特許文献5】米国特許第3,631,147号
【特許文献6】米国特許第3,400,156号
【特許文献7】米国特許第3,962,290号
【特許文献8】米国特許第5,686,639号
【特許文献9】米国特許第5,468,902号
【特許文献10】米国特許第5,550,265号
【特許文献11】米国特許第5,668,192号
【特許文献12】米国特許第6,147,184号
【特許文献13】米国特許第5,210,122号
【特許文献14】米国特許第5,326,799号
【特許文献15】米国特許第5,434,197号
【非特許文献1】Neunhoeffer他、Chemische Berichte 92、245〜251頁(1959)
【非特許文献2】Fabian他、「Near Infrared Absorbing Dyes」Chemical Reviews 92(6), 1197 (1992)
【非特許文献3】M. Matsuoka、「Absorption Spectra of Dyes for Diode Lasers」、Bunshin Publishing Co, Tokyo (1990)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の一目的は、約700〜2000nmの範囲の光を吸収できる赤外線吸収染料を提供することである。
【0018】
本発明の別の目的は、赤外線吸収および光放射光フィルター、材料、フィルム、溶液、コーティング、またはインクを提供することである。
【0019】
本発明の別の目的は、例えばポリカーボネート成形作業において、高温で処理することのできる赤外線吸収染料を提供することである。
【0020】
本発明の別の目的は、非極性または低極性の溶媒またはポリマーに可溶性の赤外線吸収染料を提供することである。
【0021】
本発明の別の目的は、約700〜2000nmの範囲の光を吸収できる、光フィルター、材料、フィルム、溶液、コーティングまたはインクを提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、可視波長における光の実質的部分を透過できる、光フィルター、材料、フィルム、溶液、コーティングまたはインクを提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、ヘキサフルオロアンチモン酸塩アニオンから成る染料より大きな熱的安定性を有するアミニウムおよびジイモニウム染料を提供することである。
【0024】
本発明の別の目的は、ヘキサフルオロアンチモン酸塩アニオンより成る染料より、非極性ホスト中で大きな溶解性を有するアミニウムおよびジイモニウム染料を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、過塩素酸塩またはトシラートアニオンより成る染料より非極性ホスト中で大きな溶解性を有するポリメチン染料を提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、過塩素酸塩または有毒な重原子(例えばアンチモンまたはヒ素)など潜在的な有毒アニオンを含まない対イオンを有する赤外線吸収カチオン染料を調製することである。
【0027】
本発明の別の目的は、所望しない、有害な、あるいは危険な赤外線の波長を除去することができる光フィルターを提供することである。
【0028】
本発明の別の目的は、熱的に安定な赤外吸収染料単独から成る、または他の吸収染料、安定剤、あるいはUV吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、もしくは遊離基捕獲剤など他の非または弱い可視光線吸収添加剤との組合せから成る、レーザー放射を含む電磁放射のためのフィルターを調製することである。
【0029】
本発明の別の目的は、高度に有機可溶性の赤外吸収染料単独から成る、または他の吸収染料、安定剤、あるいはUV吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、もしくは遊離基捕獲剤など他の非または弱い可視光線吸収添加剤との組合せから成る、レーザー放射を含む電磁放射のためのフィルターを調製することである。
【0030】
本発明の別の目的は、眼鏡、サンバイザー、コンタクトレンズなどの形態の、電磁放射のためのフィルターを調製することである。
【0031】
本発明の別の目的は、光学フィルター、材料、フィルム、溶液、コーティングまたはインク製造プロセスと、もしあれば、その後のコーティングの堆積プロセスに、化学的、熱的、および光化学的に適合し得る染料を調製することである。かかるプロセスには、成形、鋳造、吸水膨潤、熱硬化、および特に放射またはUV硬化を含むこともできる。
【0032】
本発明の別の目的は、赤外吸収染料を含有するフィルター、材料、フィルム、溶液、コーティングまたはインクの、透過率および光学密度の再現性と一貫性の製造関連数的指標を改良することである。
【0033】
本発明の別の目的は、熱的安定性が低い赤外吸収染料の分解による損失を補うためにしばしば要求される染料の追加量を最少化することによって、赤外吸収フィルターの製造コストを低減することである。
【0034】
本発明の別の目的は、熱的に敏感な赤外吸収染料の分解を低減することによって、赤外吸収フィルター、材料、フィルム、溶液、コーティングまたはインクの光透過を増加させることである。
【0035】
本発明の別の目的は、ポリマー基材上に堆積被覆するのに使用されるプロセスに適合できるプラスチック樹脂から、赤外吸収染料を含むフィルター、材料、フィルム、溶液、コーティングまたはインクを提供することである。
【0036】
本発明の別の目的は、場合により耐衝撃性のプラスチック樹脂からのフィルターを提供することである。かかるプラスチック樹脂およびフィルターは、場合によりポリカーボネートである。かかるプラスチック樹脂およびフィルターは、場合により眼科用品質である。かかるプラスチック樹脂およびフィルターは、場合により衝突または衝撃保護を提供する。このフィルター、フィルム、または基材は、それらの最終目的に対して有用な、例えば目の保護のための湾曲したレンズもしくはサンバイザー、または視覚システムのための平板など、任意の形状とすることもできる。
【0037】
本発明の別の目的は、コンタクトレンズの形態のフィルターを提供しまたはそのための方法を開発することである。かかるコンタクトレンズ樹脂には、ポリメチルメタクリル酸塩(PMMA)、ポリ(β-ヒドロキシエチルメチルメタクリル酸塩)、または任意の高酸素透過性ポリマーを含むこともできる。このフィルター、フィルム、または基材は、それらの最終目的に対して有用な、すなわち、角膜を保護するための標準直径またはオーバーサイズの、および個別の要求に応じてスクリプトされた、任意の形状とすることもできる。
【0038】
本発明の別の目的は、既知の赤外吸収染料を、本明細書において開示されている少なくとも1つの染料と、場合によっては吸収性および/または回折性および/または反射性コーティングおよびコーティングプロセスに適合し得る基材中へまたは基材上で置換することによって、光学フィルターで使用するための、ノッチ、ロングパス、ショートパス、およびバンドパスフィルターを、調製することである。
【0039】
本発明の別の目的は、ポリスチレンおよび細胞生物学的用途に使用される他の低極性材料を含む材料のための赤外吸収および/または赤外放射生産物を提供することである。
【0040】
本発明は、成形においてより大きな熱的安定性を有し、非極性溶媒およびホストにおいて最も明瞭となる、より大きな溶解性を有するポリメチン、アミニウム、またはジイモニウムホウ酸塩、および関連組成物を含む赤外染料組成物を提供することによって、これらの目的を達成し、従来提唱された赤外染料の弱点および欠点に取り組むものである。これらの組成物は、多くの可視光線スペクトルにわたって高い透過率を有し、赤外線のある波長において低い透過率を有することが要求される場合を含む、様々な用途において有用である。例えば、この組成物は、ホログラフィックディスプレイなどの情報ディスプレイにおいて、レーザー放射のフィルターとして、照明光源のフィルターとして、写真用プロセスのためのフィルターとして、および有機発光ダイオーを含む発光ダイオーのためのフィルターとして、安全インクにおいて、コンタクトレンズを含む目の保護において、および全ての種類の赤外蛍光センサーを含むセンサーに使用することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明の一実施形態において、式Iの赤外線吸収アミニウムホウ酸塩を含む赤外染料組成物が提供される。
【0042】
I. [(R1)m][(R2)n][(R3)3-(m+n)]N+・[BXaYb]-
【0043】
式中、mおよびnは0〜3の整数であり、m+nは0〜3であり;基R1、R2およびR3は同一であるかまたは異なっており、場合によっては結合して環を形成し、場合によってはオリゴマーまたはポリマーに結合し、それぞれ、C6〜C20の複素環式または炭素環式アリール基であり、前記基R1、R2およびR3は、少なくとも1つのC1〜C25アルコキシ、C1〜C25アルキル、ハロ、C1〜C25メルカプト、またはアミノ基によって場合によっては置換されており、このアミノ基は、炭素環式または複素環式環に更に組み込まれているかまたは少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基、少なくとも1つのC6〜C20複素環式または炭素環式アリール基、あるいは少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基およびC6〜C20複素環式または炭素環式アリール基によって置換されており、このアリール基は、上記の定義に適合するR1基によって場合によっては更に置換されており;
【0044】
式中、aおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4であり;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくはペルフルオロアルキル基などの電子求引性置換基または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されており、電子求引性置換基によって場合によっては更に置換されている)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である。
【0045】
典型的な一実施形態において、R1=R2=R3=4-ジブチルアミノフェニルであり、対イオン、すなわち[BXaYb]-は、(C6F5)4B-であり、トリス(4-ジブチルアミノフェニル)アミニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩を提供する。
【0046】
別の実施形態において、式Iの赤外線吸収アミニウムホウ酸塩は、例えば光を濾光することのできる光学フィルターなどの形成に関連するホストを更に含むこともできる。ホストは一般に、液体、ゲルまたは固体のいずれでもよい。
【0047】
典型的な一実施形態において、R1=R2=R3=4-ジブチルアミノフェニルであり、対イオン、すなわち[BXaYb]-は、(C6F5)4B-であり、ホストはポリカーボネートである。得られたフィルターは、ポリカーボネート中、赤外におけるピーク吸収を約1005nmにおいて有している。別の典型的実施形態において、R1=R2=R3=4-ジエチルアミノフェニルであり、対イオン、すなわち[BXaYb]-は、(C6F5)4B-であり、ホストはポリカーボネートである。得られたフィルターは、赤外におけるピーク吸収を約990nmにおいて有している。更に別の典型的実施形態において、R1=R2=R3=4-ジエチルアミノフェニルであり、対イオン、すなわち[BXaYb]-は、(C6F5)4B-であり、ホストはソフトコンタクトレンズである。得られたレンズは、赤外におけるピーク吸収を約985nmにおいて有している。
【0048】
本発明の別の実施形態において、式IIの赤外線吸収アミニウムホウ酸塩を含む赤外染料組成物が提供される。
【0049】
II. [(R1R2)N=C6H4=N(R3R4)]+・[BXaYb]-
【0050】
式中、R1からR4は同一であるかまたは異なっており、場合によっては結合して環を形成し、場合によってはオリゴマーまたはポリマーに結合し、それぞれ、C6〜C20の複素環式または炭素環式アリール基であり、前記基R1からR4は、少なくとも1つのC1〜C25アルコキシ、C1〜C25アルキル、ハロ、C1〜C25メルカプト、またはアミノ基によって場合によっては置換されており、このアミノ基は、炭素環式または複素環式環に更に組み込まれているかまたは少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基、少なくとも1つのC6〜C20複素環式または炭素環式アリール基、あるいは少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基およびC6〜C20複素環式または炭素環式アリール基によって置換されており、このアリール基は、上記の定義に適合するR1基によって場合によっては更に置換されており;
【0051】
式中、aおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4であり;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくはペルフルオロアルキル基などの電子求引性置換基または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されており、電子求引性置換基によって場合によっては更に置換されている)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である。
【0052】
典型的な一実施形態において、R1からR4=ジ(n-ブチル)アミノフェニルであり、対イオン、すなわち[BXaYb]-は、(C6F5)4B-であり、ビス(p-ジブチルアミノフェニル)[N,N-ビス(p-ジブチルアミノフェニル)-4'-アミノビフェニリル]アミニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩を提供する。
【0053】
別の実施形態において、式IIの赤外線吸収アミニウムホウ酸塩は、例えば光を除去することのできる光学フィルターなどの形成に関連するホストを更に含むこともできる。ホストは一般に、液体、ゲルまたは固体のいずれでもよい。
【0054】
典型的な一実施形態において、R1からR4=ジ(n-ブチル)ジイモノフェニルであり、対イオン、すなわち[BXaYb]-は、(C6F5)4B-であり、ホストはトルエンである。
【0055】
更に本発明の別の実施形態において、式IIIの赤外線吸収ジイモニウムホウ酸塩を含む赤外染料組成物が提供される。
【0056】
III. [(R1R2)N=Ar=N(R3R4)]2+[Z1]-[Z2]-
【0057】
式中、Arは置換または非置換のキノイダルフェニルであり、R1からR4は同一であるかまたは異なっており、場合によっては結合して環を形成し、場合によってはオリゴマーまたはポリマーに結合し、それぞれ、C1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基あるいはC6〜C20複素環式または炭素環式アリール基のいずれかであり、前記基R1からR4は、少なくとも1つのC1〜C25アルコキシ、C1〜C25アルキル、ハロ、C1〜C25メルカプト、またはアミノ基によって場合によっては置換されており、このアミノ基は、炭素環式または複素環式環に更に組み込まれているかまたは少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基、少なくとも1つのC6〜C20複素環式または炭素環式アリール基、あるいは少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基およびC6〜C20複素環式または炭素環式アリール基によって置換されており、このアリール基は、上記の定義に適合するR1基によって場合によっては更に置換されており;
【0058】
[Z1]-および[Z2]-の一方は、SbF6-、ClO4-、AsF6-、PF6-、CF3SO3-、BF4-、および[BXaYb]-から選択され、[Z1]-および[Z2]-の他方は[BXaYb]-の形態であり、[Z1]-および[Z2]-がそれぞれ[BXaYb]-の形態の場合、それぞれ同一であるかまたは異なっており、[BXaYb]-のaおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4である;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくはペルフルオロアルキル基などの電子求引性置換基または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されており、電子求引性置換基によって場合によっては更に置換されている)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である。
【0059】
典型的な一実施形態において、Ar=C6H4、R1からR4=ジ(n-ブチル)アミノフェニルであり、対イオンすなわち、[Z1]-および[Z2]-は、両方とも(C6F5)4B-であり、N,N,N',N'-テトラキス(p-ジブチルアミノフェニル)ジフェノキノンビス[イモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩]を提供する。
【0060】
別の実施形態において、式IIIの赤外線吸収ジイモニウムホウ酸塩は、例えば光を除去することのできる光学フィルターなどの形成に関連するホストを更に含むこともできる。ホストは一般に、液体、ゲルまたは固体のいずれでもよい。
【0061】
典型的な一実施形態において、Ar=C6H4、R1からR4=ジ(n-ブチル)アミノフェニルであり、対イオン、すなわち、[Z1]-および[Z2]-は、両方とも(C6F5)4B-であり、ホストはソフトコンタクトレンズである。
【0062】
更に本発明の別の実施形態において、式IVのホウ酸塩対イオンを有する赤外線吸収ポリメチン発色団から成る赤外染料組成物が提供される。
【0063】
IV. [ポリメチン]+[BXaYb]-
【0064】
式中、aおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4であり;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくはペルフルオロアルキル基などの電子求引性置換基または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されており、電子求引性置換基によって場合によっては更に置換されている)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である。
【0065】
[ポリメチン]+で表されるカチオンポリメチン発色団は、約700nmと2000nmの間にその吸収スペクトルのピークを有し、場合によってはオリゴマーまたはポリマーに結合する。カチオンポリメチン発色団は、赤外染料の当業者に良く知られている。適切なカチオンポリメチン発色団を有するポリメチン染料の例には、トリメチン、ペンタメチン、ヘプタメチン、カコゲノピリリウム、ヘミシアニン、およびストレプトシアニン染料が含まれる。
【0066】
典型的な一実施形態において、カチオンポリメチン発色団は、IR-140発色団であり、ホウ酸塩対イオン、すなわち[BXaYb]-は、(C6F5)4B-である。
【0067】
本発明の別の実施形態において、赤外線吸収ポリメチン発色団および式IVのホウ酸塩対イオンは、例えば光を除去することのできる光学フィルターなどの光吸収ポリメチン塩の形成に関連するホストを更に含むこともできる。ホストは一般に、液体、ゲルまたは固体のいずれでもよい。
【0068】
典型的な一実施形態において、カチオンポリメチン発色団は、IR-140発色団であり、ホウ酸塩対イオン、すなわち[BXaYb]-は、(C6F5)4B-であり、ホストはポリスチレンである。
【0069】
本発明の赤外染料組成物は、赤外フィルターまたはセンサー素子の処理および成形などにおいて、以前に説明した現在知られているアニオンを含む赤外染料よりも、予想外に高い温度および予想外に大きな光学密度を保持して使用することができる。またこの赤外染料組成物は、赤外フィルターまたはセンサー素子の処理および成形などで、低極性または低い分極性ホストにおいて、以前に説明した現在知られているアニオンを含む赤外染料よりも、予想外に高い溶解性および光学密度において使用することができる。
【0070】
前述により、化学的、熱的および光化学的に、既知の製造方法、ならびにコーティングおよびインクとして堆積させる既知の方法に適合できる赤外染料組成物を提供する。本発明のこれらおよびその他の目的および利点は、付属の図面およびその説明により明らかとなる。
【0071】
本明細書に組み込まれて本明細書の一部を構成する付属の図面は、本発明の実施形態を図解し、上で示した一般的説明および以下に示す詳細説明と一緒になって、本発明の原理を説明する働きをする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0072】
本発明は、ポリメチン、アミニウム、またはジイモニウムカチオン発色団、およびホウ酸塩アニオン、すなわち塩を規定するための対イオンを有する赤外染料組成物を含む。この赤外染料組成物は、従来報告されている組成物よりもより大きな熱的安定性およびより大きな溶解性を含み、例えば、ホログラフィックディスプレイなどの情報ディスプレイにおいて、レーザー放射のフィルターとして、照明光源のフィルターとして、写真用プロセスのためのフィルターとして、および有機発光ダイオードを含む発光ダイオードのためのフィルターとして、安全インクにおいて、コンタクトレンズを含む目の保護において、および全ての種類の赤外蛍光センサーを含むセンサーなど、様々な用途に有用である。
【0073】
以前に述べたように、上記の表Iは、その全てが参照により本明細書に組み込まれているSusi他に対する米国特許第3,341,464号に報告されているように、対イオンの関数としてのアミニウム塩の全ての熱的安定性をリストアップしている。観察された安定性の順序の理由は分からない。過去において、かかる組成物は、「強酸」のアニオンを有するアミニウムカチオンの組成物として説明された。しかしながら、アミニウム塩の熱的安定性は、酸の強度に追尾しないので、かかる記述はアミニウム塩の熱的安定性を予測するのに使用することができない。
【0074】
加えて、特許文献にはアミニウム塩に対する対イオンとしての「ホウ酸塩」アニオンが説明されているが、「ホウ酸塩」については更に定義されておらす、したがってホウ酸の塩または、テトラフルオロ-、テトラクロロ-、または潜在的にはテトラフェニルホウ酸塩、を指すこともある。第二に、かかる「ホウ酸塩」の熱的安定性データは、テトラフルオロホウ酸塩以外には報告されていない。更にホウ酸塩という用語が使用されるときに、電子不足フェニルホウ酸塩の多くは報告されていない。したがって「ホウ酸塩」という用語は、American Cyanamid CompanyにおけるPeter Susiおよび同僚達によって使用される場合、本明細書で開示されるホウ酸塩の種類に言及していない。
【0075】
本発明の一実施形態により、式Iの赤外線吸収アミニウムホウ酸塩を含む赤外染料組成物が提供される。
【0076】
I.[(R1)m][(R2)n][(R3)3-(m+n)]N+・[BXaYb]-
【0077】
アミニウムラジカルカチオンは、[(R1)m][(R2)n][(R3)3-(m+n)]N+・で表され、式中、mおよびnは0〜3の整数であり、m+nは0〜3であり;基R1、R2およびR3は同一であるかまたは異なっており、場合によっては結合して環を形成し、場合によってはオリゴマーまたはポリマーに結合し、それぞれ、C6〜C20の複素環式または炭素環式アリール基であり、前記基R1、R2およびR3は、少なくとも1つのC1〜C25アルコキシ、C1〜C25アルキル、ハロ、C1〜C25メルカプト、またはアミノ基によって場合によっては置換されており、このアミノ基は、炭素環式または複素環式環に更に組み込まれているかまたは少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基、少なくとも1つのC6〜C20複素環式または炭素環式アリール基、あるいは少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基およびC6〜C20複素環式または炭素環式アリール基によって置換されており、このアリール基は、上記の定義に適合するR1基によって場合によっては更に置換されており;
【0078】
アニオンホウ酸塩部分は、[BXaYb]-で表され、式中、aおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4であり;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくはペルフルオロアルキル基、NO2、スルホニル、またはCNなどの電子求引性置換基または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されており、電子求引性置換基によって場合によっては更に置換されている)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である。
【0079】
典型的な一実施形態において、R1=R2=R3=4-G2N-C6H4であり、式中、Gは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチル、エチルヘキシル、デシル、ドデシル、およびベンジルから成る群から選択され、対イオン、すなわち[BXaYb]-は(C6F5)4B-であり、例えば図1に示すようにG=ブチルの場合、トリス(4-ジブチルアミノフェニル)アミニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩を提供する。このアミニウム染料は、約1000nmにおいて明確な赤外吸収域を示す。他の典型的実施形態において、[3,5-(CF3)2C6H3]4B-、[(CF3)C6H4]4B-、[(C6F5)3BF]-、[(C6F5)2BF2]-、[(C6F5)BF3]-、または[(CF3)C6H2F2]4B-を含むこともできる。
【0080】
別の実施形態において、式Iの赤外線吸収アミニウムホウ酸塩は、例えば光を除去することのできる光学フィルターなどの形成に関連するホストを更に含むこともできる。典型的な一実施形態において、R1=R2=R3=4-ジブチルアミノフェニルであり、対イオン、すなわち[BXaYb]-は(C6F5)4B-であり、ホストはポリカーボネートである。得られたフィルターは、ポリカーボネート中で、約1005nmにおいて赤外線中のピーク吸収を有している。別の典型的実施形態において、R1=R2=R3=4-ジエチルアミノフェニルであり、対イオン、すなわち[BXaYb]-は(C6F5)4B-であり、ホストはポリカーボネートである。得られたフィルターは、約990nmにおいて赤外線中のピーク吸収を有している。更に別の典型的実施形態において、R1=R2=R3=4-ジエチルアミノフェニルであり、対イオン、すなわち[BXaYb]-は(C6F5)4B-であり、ホストはソフトコンタクトレンズである。得られたレンズは、約985nmにおいて赤外線中のピーク吸収を有している。
【0081】
本発明の別の実施形態において、式IIの赤外線吸収アミニウムホウ酸塩を含む赤外染料組成物が提供される。
【0082】
II. [(R1R2)N=C6H4=N(R3R4)]+・[BXaYb]-
【0083】
アミニウムラジカルカチオンは、[(R1R2)N=C6H4=N(R3R4)]+・で表され、式中、R1からR4は同一であるかまたは異なっており、場合によっては結合して環を形成し、場合によってはオリゴマーまたはポリマーに結合し、それぞれ、C6〜C20の複素環式または炭素環式アリール基であり、前記基R1からR4は、少なくとも1つのC1〜C25アルコキシ、C1〜C25アルキル、ハロ、C1〜C25メルカプト、またはアミノ基によって場合によっては置換されており、このアミノ基は、炭素環式または複素環式環に更に組み込まれているかまたは少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基、少なくとも1つのC6〜C20複素環式または炭素環式アリール基、あるいは少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基およびC6〜C20複素環式または炭素環式アリール基によって置換されており、このアリール基は、上記の定義に適合するR1基によって場合によっては更に置換されており;
【0084】
アニオンホウ酸塩部分は[BXaYb]-で表され、式中、aおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4であり;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくはペルフルオロアルキル基、NO2、スルホニル、またはCNなどの電子求引性置換基または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されており、電子求引性置換基によって場合によっては更に置換されている)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である。
【0085】
典型的な一実施形態において、R1からR4=4-G2N-C6H4であり、式中、Gは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチル、エチルヘキシル、デシル、ドデシル、およびベンジルから成る群から選択され、対イオン、すなわち[BXaYb]-は(C6F5)4B-であり、例えば図2に示すようにG=ブチルの場合、ビス(p-ジブチルアミノフェニル)[N,N-ビス(p-ジブチルアミノフェニル)-4'-アミノビフェニリル]アミニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩を提供する。このアミニウム染料は、赤外線に深く延びている明確な広い赤外吸収域を示す。他の典型的実施形態において、対イオンには、[3,5-(CF3)2C6H3]4B-、[(CF3)C6H4]4B-、[(C6F5)3BF]-、[(C6F5)2BF2]-、[(C6F5)BF3]-、または[(CF3)C6H2F2]4B-を含むこともできる。
【0086】
別の実施形態において、式IIの赤外線吸収アミニウムホウ酸塩は、例えば光を除去することのできる光学フィルターなどの形成に関連するホストを更に含むこともできる。典型的な一実施形態において、R1からR4=ジ(n-ブチル)アミノフェニルであり、対イオン、すなわち[BXaYb]-は(C6F5)4B-であり、ホストはトルエンである。
【0087】
更に本発明の別の実施形態において、式IIIの赤外線吸収ジイモニウムホウ酸塩を含む赤外染料組成物が提供される。
【0088】
III. [(R1R2)N=Ar=N(R3R4)]2+[Z1]-[Z2]-
【0089】
ジイモニウムジカチオンは、[(R1R2)N=Ar=N(R3R4)]2+で表され、式中、Arは置換または非置換のキノイダルフェニルであり、R1からR4は同一であるかまたは異なっており、場合によっては結合して環を形成し、場合によってはオリゴマーまたはポリマーに結合し、それぞれ、C1〜C20アルキル、脂環式、もしくはアリールアルキル基またはC6〜C20複素環式もしくは炭素環式アリール基のいずれかであり、前記基R1からR4は、少なくとも1つのC1〜C25アルコキシ、C1〜C25アルキル、ハロ、C1〜C25メルカプト、またはアミノ基によって場合によっては置換されており、このアミノ基は、炭素環式または複素環式環に更に組み込まれているかまたは少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基、少なくとも1つのC6〜C20複素環式または炭素環式アリール基、あるいは少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基およびC6〜C20複素環式または炭素環式アリール基によって置換されており、このアリール基は、上記の定義に適合するR1基によって場合によっては更に置換されており;
【0090】
第1および第2のアニオン部分が[Z1]-および[Z2]-で表され、[Z1]-および[Z2]-の一方は、SbF6-、ClO4-、AsF6-、PF6-、CF3SO3-、BF4-、および[BXaYb]-から選択され、[Z1]-および[Z2]-の他方は[BXaYb]-の形態であり、[Z1]-および[Z2]-がそれぞれ[BXaYb]-の形態の場合、それぞれ同一であるかまたは異なっており、[BXaYb]-のaおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4であり;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくはペルフルオロアルキル基、NO2、スルホニル、またはCNなどの電子求引性置換基または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されており、電子求引性置換基によって場合によっては更に置換されている)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である。
【0091】
典型的な一実施形態において、Ar=C6H4であり、R1からR4=4-G2N-C6H4であり、式中、Gは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチル、エチルヘキシル、デシル、ドデシル、およびベンジルから成る群から選択され、対イオン、すなわち[Z1]-および[Z2]-は、共に(C6F5)4B-であり、例えば図3に示すようにG=ブチルの場合、N,N,N',N'-テトラキス(p-ジブチルアミノフェニル)ジフェノキノンビス[イモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩]を提供する。このジイモニウム染料は、可視範囲に比較的小さな吸収の広範囲で明瞭な赤外吸収を有している。他の典型的実施形態において、Ar=C6H4であり、R1およびR2=4-ジブチルアミノフェニルであり、R3およびR4=ブチルであり、対イオンは共に(C6F5)4B-である。他の典型的な実施形態において対イオンは、[3,5-(CF3)2C6H3]4B-、[(CF3)C6H4]4B-、[(C6F5)3BF]-、[(C6F5)2BF2]-、[(C6F5)BF3]-、または[(CF3)C6H2F2]4B-を含むこともできる。
【0092】
別の実施形態において、式IIIの赤外線吸収ジイモニウムホウ酸塩は、例えば光を除去することのできる光学フィルターなどの形成に関連するホストを更に含むこともできる。典型的な一実施形態において、Ar=C6H4であり、R1からR4=ジ(n-ブチル)アミノフェニルであり、対イオン、すなわち[Z1]-および[Z2]-は共には(C6F5)4B-であり、ホストはソフトコンタクトレンズである。
【0093】
上記で検討した赤外染料組成物のための適切な他のアミニウムおよび/またはジイモニウムイオンは、全てが、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Susi他に対する米国特許第3,440,257号および第3,484,467号、Milionis他に対する米国特許第3,400,156号およびCohenに対する米国特許第5,686,639号において見出すこともできる。更なる対イオンは、その全体が参照により本明細書に完全に組み込まれている、Castellanos他に対する米国特許第5,468,902,号、第5,550,265号、第5,668,192号および第6,147,184号において見出すこともできる。
【0094】
更に本発明の別の実施形態において、式IVのホウ酸塩対イオンを有する赤外線吸収ポリメチン発色団から成る赤外染料組成物が提供される。
【0095】
IV. [ポリメチン]+[BXaYb]-
【0096】
ホウ酸塩対イオン、すなわちホウ酸塩アニオン部分は、[BXaYb]-で表され、式中、aおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4であり;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくはペルフルオロアルキル基、NO2、スルホニル、またはCNなどの電子求引性置換基または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されており、電子求引性置換基によって場合によっては更に置換されている)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である。
【0097】
[ポリメチン]+で表されるカチオンポリメチン発色団は、その吸収スペクトルにおけるピークを、約700nmと2000nmの間に有し、場合によってはオリゴマーまたはポリマーに結合する。カチオンポリメチン発色団は、赤外染料分野の技術者に良く知られている。適切なカチオンポリメチン発色団を有するポリメチン染料の例には、トリメチン、ペンタメチン、ヘプタメチン、カコゲノピリリウム、ヘミシアニン、およびストレプトシアニン染料が含まれる。適切なポリメチン染料の非包括的なリストは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Chemical Reviews 92(6), 1197 (1992)において発表された、Fabian他による「Near Infrared Absorbing Dyes」と題する概説において見出すこともできる。更に、多くの適切なポリメチン染料のスペクトルは、その全体が参照により本明細書に組み込まれている、Bunshin Publishing Co, Tokyo (1990)発行のM. Matsuokaによる「Absorption Spectra of Dyes for Diode Lasers」と題する書籍において見出すこともできる。適切な対イオンは、その全体が参照により本明細書に完全に組み込まれている、Castellanos他に対する米国特許第5,468,902号、第5,550,265号、第5,668,192号および第6,147,184号において見出すこともできる。
【0098】
典型的な一実施形態において、カチオンポリメチン発色団は、IR-140発色団であり、ホウ酸塩対イオン、すなわち[BXaYb]-は、(C6F5)4B-であり、図4に示すようなポリメチン染料を提供する。他の典型的な実施形態において、対イオンは[3,5-(CF3)2C6H3]4B-、[(CF3)C6H4]4B-、[(C6F5)3BF]-、[(C6F5)2BF2]-、[(C6F5)BF3]-、または[(CF3)C6H2F2]4B-を含むこともできる。
【0099】
本発明の別の実施形態において、式IVのホウ酸塩対イオンを有する赤外線吸収ポリメチン発色団は、例えば、光を除去する光フィルターなどを形成するための光吸収ポリメチン塩に関連するホストを更に含むこともできる。典型的な一実施形態において、カチオンポリメチン発色団は、IR-140発色団であり、ホウ酸塩対イオン、すなわち[BXaYb]-は、(C6F5)4B-であり、ホストはポリスチレンである。赤外吸収および蛍光発生ポリメチン(シアニン)染料であるIR-140発色団は、その過塩素酸塩またはトシラート塩としてのトルエンへの溶解性が非常に制限され、効率的にポリスチレンに組み込むことができない。しかしながら、(C6F5)4B-とペアを組むと、この発色団はトルエンに可溶性であり、効率的にポリスチレンに組み込むことができる。
【0100】
光吸収アミニウム、ジイモニウムおよびポリメチレン塩、すなわち赤外染料組成物は、一般に広い波長の範囲にわたり赤外線を吸収し、様々な光フィルターおよびセンサーの用途に有用である。この組成物は、複数の光吸収化合物を更に含むこともできる。また追加の光吸収化合物は、アミニウム塩、ジイモニウム塩、ポリメチン、ポルフィリン、アザポルフィリン、フタロシアニン、スクアリリウム化合物、ジチオレンなどであってもよい。また赤外染料組成物は、紫外波長から赤外波長までの光放射を除去および/または伝達できる反射性、屈折性および/または回折性要素を含むこともできる。更に、他の染料、光安定剤、UV-吸収剤、酸化防止剤、抑制剤などを組成物中に含めることもできる。
【0101】
ホストと組み合わさった場合、赤外線吸収組成物は、例えば、コンタクトレンズを含む光フィルターなど、有用な光除去または光感受要素または装置を提供する。これらは、化合物を様々なホストの内部またはその上に組み込むのに、射出成形などの従来の幾つかの方法の1つによって製作することができる。この場合も、赤外素子は、ホストを少なくとも1つの新規の染料組成物と組み合わせて含んでいる。ホストは、一般的に液体、ゲル、または固体である。例えば、ホストはマトリックスもしくは薄い層状材料またはフィルムとすることもでき、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸塩、ポリウレタン、エポキシ、ポリメチルメタクリレート、シリコーン、シリコンベースポリマー、ガラス、ゾル-ゲル、ヒドロゲル、多結晶材料、プラスチック、セルロース誘導体およびこれらの組合せから選択される材料とすることもできる。染料組成物は、限定はされないが、ホスト材料上への被覆、内部分散、またはレンズもしくはコンタクトレンズを画定するレンズボタンなど、ホスト材料の一体部分とすることもできる。
【0102】
更に、赤外素子を用いて使用するための染料組成物は、例えば、UV安定化または調整されたスペクトル曲線を提供するために、他の添加物または染料を含むこともできる。また染料組成物は、赤外素子において、紫外から赤外までの光放射に関する他の吸収性、反射性、屈折性、または回折性要素と組み合わせることが有用であり、オリゴマーまたはポリマーに化学的に結合することもできる。そして、蛍光組成物は、センサー用途に関する可視または非可視光線干渉マーカーとして有用である。
【0103】
前述の通り、この染料組成物は、フィルター要素の処理または成形などで、現在知られている赤外染料よりも、予想外に高い温度および予想外に大きな光学密度を保持して使用することができる。また染料組成物は、赤外フィルターまたはセンサー要素の処理および成形などで、低極性または低い分極性ホストにおいて、現在知られている赤外染料よりも、予想外に高い溶解性および光学密度において使用することができる。ヘキサフルオロアンチモン酸塩、ヘキサフルオロヒ酸塩、過塩素酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、トシラートなどのような対イオンから成るポリメチン、アミニウムおよびジイモニウム塩の制限された溶解性は、低極性ホスト中で高い光学密度を必要とする用途において最も明らかである(以下の実施例1〜4参照)。
【0104】
本発明の様々な実施形態の製造の非限定的な例は、以下の通りである。
【0105】
(実施例)
(実施例1)
アミニウムホウ酸塩(4-Et2NC6H4)3N+・(C6F5)4B-、すなわちトリス(p-ジエチルアミノフェニル)アミニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩を、エーテル中1当量のAg+(C6F5)4B-溶液をアセトン中の(4-Et2NC6H4)3N溶液へ約-80〜約0°Cで加えることによって調製した。室温へ温め、沈澱をろ過し、ろ液を塩化メチレン溶離液を用いてシリカゲル上でクロマトグラフィーにより精製した。溶媒を蒸発した後に得られたオイルを、フッ素化溶媒、FC-80を用いて処理し、固体生成物を得た。
【0106】
(実施例2)
実施例1からのアミニウムホウ酸塩(4-Et2NC6H4)3N+・(C6F5)4B-の1.00gの一連のブレンドおよび3.00ポンドのポリカーボネート樹脂ペレットを、別個に450、485、525、および565°Fで成形し、赤外吸収フィルターを準備した。ショット数約40で定常状態に達した。部品の光学密度を測定し図5にグラフ化した。具体的に言うと、約450と525°Fの間の光学密度の保持を観察した。565°Fにおける光学密度の保持は、トリス(4-ジブチルアミノフェニル)アミニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩を用いた約480〜500°Fにおいて観察された光学密度の保持に類似していた。したがって、アミニウムホウ酸塩(4-Et2NC6H4)3N+・(C6F5)4B-は、同様の成形条件の下、対応する現在知られているアミニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩(グラフには示されていない)よりも約60〜80°F高い熱的安定性を示した。この実験を、対応するPh4B-を用いて525°Fで繰り返した場合、染料は完全に分解した。
【0107】
(実施例3)
ソフトコンタクトAccuvue(登録商標)2レンズをアセトンに浸し、次いで約5mLのアセトン中の約20mgの(Et2NC6H4)3N+・(C6F5)4B-溶液に数分間浸した。次いでレンズをアセトン中で素早く洗い、コンタクトレンズ湿潤性溶液に再浸漬した。得られたレンズは、赤外線中約985nmにおいて約1.5のピーク光学密度を有していた。この実験を対応するSbF6-塩を用いて繰り返したとき、ピーク光学密度はわずかに約0.4であった。この実験を類似のPh4B-塩を用いて繰り返したとき、ピーク光学密度はわずかに約0.5であった。
【0108】
(実施例4)
ソフトコンタクトAccuvue(登録商標)2レンズをアセトンに浸し、次いで約5mLのアセトン中の約20mgの[(Bu2NC6H4)2N=C6H4=N(C6H4NBu2)2]2+[(C6F5)4B-]2溶液に数分間浸した。次いでレンズをアセトン中で素早く洗い、コンタクトレンズ湿潤性溶液に再浸漬した。得られたレンズは、赤外線中約1100nmにおいて約2.5のピーク光学密度を有していた。このレンズのスペクトルを図6に示す。スペクトル中のノイズは、高光学密度がコンタクトレンズのスペクトルの測定に使用した小さな開口部と組み合わさったことによるものである。
【0109】
上記の実施例1〜4に加えて、他のアミニウムホウ酸塩の典型的実施形態も、例えば、(4-Bu2NC6H4)3NおよびAg+(C6F5)4B-から、(4-Et2NC6H4)3NおよびAg+[3,5-(CF3)2C6H3]4B-から、または(4-Bu2NC6H4)3NおよびAg+[3,5-(CF3)2C6H3]4B-からなど、適切な溶媒中でアミニウムカチオンの合成に有用であることが知られている条件の下で、同様に調製することもできる。ジイモニウムホウ酸塩の典型的実施形態も、例えば、[(4-Bu2NCH6H4)2N=C6H4=N(4-Bu2NCH6H4)2]および硝酸銅に、次に例えばアセトンなどの適切な溶媒中の約2当量のLi[(C6F5)4B-]を加えることにより、ジイモニウムカチオンの合成に有用であることが知られている条件の下で、同様に調製することもできる。適切な合成条件は、参照により本明細書に完全に組み込まれているGrossoに対する米国特許第3,962,290号において見出すこともできる。また、ポリメチンホウ酸塩の典型的実施形態も、例えばIR-140トシラートおよび90:10のCH2Cl2:MeOHまたは他の適切な溶媒中の1当量のLiB(C6F5)4をイオン交換しリチウムトシラートを水で抽出することによって同様に調製することもできる。それにより、全ての得られた生成物は、抽出、結晶化、およびクロマトグラフィー分離など、一般的に知られている技術によって分離し精製することもできる。
【0110】
当業者は、例えばヘキサフルオロアンチモン酸塩、ヘキサフルオロヒ酸塩、過塩素酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、テトラフルオロホウ酸塩、またはトシラートなどの対イオンを、本明細書で説明したホウ酸塩アニオンにより交換することで、可視スペクトル領域において吸収または蛍光を発する他のカチオン染料に関して実施できることを理解するであろう。かかる染料には、シアニン、キサチリウム(ローダミン)、オキサジン、スチリル、およびピリジン染料が含まれる。また当業者は、ホウ酸塩アニオンを有するかかる染料が、近赤外線吸収染料に関して本明細書で教示されたのと同様の向上した熱的安定性および非極性ホストにおける改善された溶解性が期待されることを理解するであろう。
【0111】
加えて、ホウ酸塩染料の溶液スペクトルは、極性溶媒およびホスト中のヘキサフルオロアンチモン酸塩または他の対イオン染料の溶液スペクトルに類似していると思われ、したがって、本発明の塩は、多くの用途における既知の組成物に直接取って代わることもできる。加えて新規の組成物は、新規ホウ酸塩組成物の熱的安定性が、得られたフィルターまたはフィルター要素がより大きな光学密度の保持をもたらす用途において使用することもできる。
【0112】
更に、新規の組成物は、新規ホウ酸塩組成物の溶解性が、得られたフィルターまたはフィルター要素の小さなイオン対および/またはより大きな光学密度をもたらす用途において使用することもできる。
【0113】
アミニウム、ジイモニウム、およびポリメチン染料の熱的安定性とアニオンの性質の間の相関関係は以前には理解されていなかったので、本発明の赤外吸収染料組成物に関して観察された予想外の結果の非限定的リストを以下に示す。
【0114】
アミニウムSbF6-染料が急速に分解する成形温度525°Fにおいて、新規トリス(ジ(n-アルキル)フェニル)アミニウムカチオンラジカルホウ酸塩染料は、60〜80°F低い処理温度で得られたのと、実験誤差内で、同じポリカーボネート中の光学密度を提供した。
【0115】
アミニウムSbF6-染料が分解される成形温度565°Fにおいて、新規トリス(ジ(n-アルキル)フェニル)アミニウムカチオンラジカル染料は、約525°Fにおいて成形したポリカーボネート中で得られた値の約70%より大きなポリカーボネート中の光学密度を提供した。
【0116】
これら観察に基づき、本発明のアミニウムホウ酸塩の熱的安定性は、ポリカーボネート成形条件の下で、現行のアミニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩の熱的安定性よりも、予想外に約60〜80°F高い。
【0117】
加えて、アミニウム、ジイモニウム、およびポリメチン染料の有機溶媒溶解性とアニオンの性質の間の相関関係は以前には理解されていなかったので、本発明の赤外吸収染料組成物に関して観察された以下の予想外の結果の非限定的リストを以下に示す。
【0118】
カチオン染料が一般的に不溶解性である非極性溶媒において、本発明のアミニウム、ジイモニウム、およびポリメチンホウ酸塩は、自由に溶解する。
【0119】
アルミニウムSbF6-染料が非常に低い溶解性しか示さない市販のAccuvue(登録商標)ソフトコンタクトレンズにおいて、対応する本発明のアミニウム(C6F5)4B-染料は、少なくとも約4倍大きな溶解性を示す。
【0120】
市販のAccuvue(登録商標)ソフトコンタクトレンズにおいて、本発明のテトラキス(ジ-n-ブチルアミノフェニル)ジイルモニウム2[(C6F5)4B-]染料は、赤外線におけるピークで2より大きな光学密度を生ずる。
【0121】
したがって、全体的として、従来報告されている組成物の熱的安定性および溶解性の改善を上回る本発明の赤外吸収ホウ酸塩の熱的安定性および溶解性の改善は、予想外のものである。
【0122】
前述の様に、既知の製造方法、およびコーティングまたはインクなどの既知の堆積方法に、化学的に、熱的におよび光化学的に適合できる赤外線吸収染料を含む新規の組成物が提供される。
【0123】
本発明は、その実施形態の説明によって例示され、実施形態はかなりの詳しさで説明されたが、これは添付の特許請求の範囲をかかる詳細説明に限定し、決して制限することを意図するものではない。更なる利点および修正形態が当業者にとっては容易に明らかとなろう。したがって、本発明は、その広範囲な態様において、特定の詳細説明、代表的装置および方法、および説明された例示の実施例に限定されるものではない。したがって、出願者の発明概念の範囲または趣旨から逸脱して、かかる詳細説明からの逸脱がなされることもある。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明による光吸収アミニウム染料の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明による光吸収アミニウム染料の別の実施形態を示す図である。
【図3】本発明による光吸収ジイモニウム染料の一実施形態を示す図である。
【図4】本発明による赤外吸収および蛍光ポリメチン染料の一実施形態を示す図である。
【図5】赤外染料組成物の熱的安定性を実証するための、(4-Et2NC6H4)3N+(C6F5)4B-を含むポリカーボネート光学フィルターの光学密度対成形プロセスにおけるショット数を示すグラフである。
【図6】[(Bu2NC6H4)2N=C6H4=N(C6H4NBu2)2]2+[(C6F5)4B-]2で着色したソフトコンタクトレンズの可視-近赤外スペクトルであって、赤外線における約2.5のピーク光学密度を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

[BXaYb]-
[式中、aおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4であり;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくは電子求引性置換基または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されている)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である]を有するアニオンホウ酸塩部分、および
約700nmと2000nmの間の近赤外波長域に少なくとも1つの吸収ピークを有し、式
[(R1)m][(R2)n][(R3)3-(m+n)]N+・
(式中、mおよびnは0〜3の整数であり、m+nは0〜3であり;基R1、R2およびR3は同一であるかまたは異なっており、場合によっては結合して環を形成し、それぞれ、C6〜C20の複素環式または炭素環式アリール基であり、前記基R1、R2およびR3は、少なくとも1つのC1〜C25アルコキシ、C1〜C25アルキル、ハロ、C1〜C25メルカプト、またはアミノ基によって場合によっては置換されており、前記アミノ基は、少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基によって更に置換されているかまたは炭素環式または複素環式環に組み込まれている)を有するアミニウムラジカルカチオン
を含む赤外染料組成物。
【請求項2】
[(R1)m][(R2)n][(R3)3-(m+n)]N+・=(4-G2N-C6H4)3N+・であり、式中、Gが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチル、エチルヘキシル、デシル、ドデシル、およびベンジルから成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
G=ブチルである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記電子求引性置換基が、ペルフルオロアルキル基、NO2、スルホニルおよびCNの1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記アニオンホウ酸塩部分が、[3,5-(CF3)2C6H3]4B-、[(CF3)C6H4]4B-、[(C6F5)3BF]-、[(C6F5)2BF2]-、[(C6F5)BF3]-、(C6F5)4B-、および[(CF3)C6H2F2]4B-の1つを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アミニウムラジカルカチオンおよびアニオンホウ酸塩部分の1つが、オリゴマーおよびポリマーの1つに結合している、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】

[BXaYb]-
[式中、aおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4であり;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくは電子求引性置換基または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されている)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である]を有するアニオンホウ酸塩部分を含む赤外染料組成物であって、
約700nmと2000nmの間の近赤外波長域に少なくとも1つの吸収ピークを有し、式
[(R1)m][(R2)n][(R3)3-(m+n)]N+・
(式中、mおよびnは0〜3の整数であり、m+nは0〜3であり;基R1、R2およびR3は同一であるかまたは異なっており、場合によっては結合して環を形成し、それぞれ、C6〜C20の複素環式または炭素環式アリール基であり、前記基R1、R2およびR3は、少なくとも1つのC1〜C25アルコキシ、C1〜C25アルキル、ハロ、C1〜C25メルカプト、またはアミノ基によって場合によっては置換されており、前記アミノ基は、少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基によって更に置換されているかまたは炭素環式または複素環式環に組み込まれている)を有するアミニウムラジカルカチオンを更に含む赤外染料組成物、および
赤外染料組成物に関連するホスト
を含む赤外素子。
【請求項8】
前記赤外染料組成物が、オリゴマーまたはポリマーに化学結合している、請求項7に記載の赤外素子。
【請求項9】
前記ホストが、液体、ゲル、および固体の1つであり、前記赤外染料組成物が前記ホスト中に分散している、請求項7に記載の赤外素子。
【請求項10】
前記ホストが、フィルムまたは薄層材料であり、前記赤外染料組成物が、前記フィルムまたは薄層材料中に分散している、請求項7に記載の赤外素子。
【請求項11】
前記ホストが、赤外素子がコンタクトレンズを画定するようなレンズおよびレンズボタンの1つである、請求項7に記載の赤外素子。
【請求項12】

[BXaYb]-
[式中、aおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4であり;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくは電子求引性置換基または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されている)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である]を有するアニオンホウ酸塩部分、および
約700nmと2000nmの間の近赤外波長域に少なくとも1つの吸収ピークを有し、式
[(R1R2)N=C6H4=N(R3R4)]+・
(式中、R1からR4は同一であるかまたは異なっており、場合によっては結合して環を形成し、それぞれ、C6〜C20の複素環式または炭素環式アリール基であり、前記基R1からR4は、少なくとも1つのC1〜C25アルコキシ、C1〜C25アルキル、ハロ、C1〜C25メルカプト、またはアミノ基によって場合によっては置換されており、前記アミノ基は、少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基によって更に置換されているかまたは炭素環式または複素環式環に組み込まれている)を有するアミニウムラジカルカチオン
を含む赤外染料組成物。
【請求項13】
[(R1R2)N=C6H4=N(R3R4)]+・=[(4-G2N-C6H4)2N=C6H4=N(4-G2N-C6H4)2]+・であり、式中、Gが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチル、エチルヘキシル、デシル、ドデシル、およびベンジルから成る群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
G=ブチルである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記電子求引性置換基が、ペルフルオロアルキル基、NO2、スルホニルおよびCNの1つを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項16】
前記アニオンホウ酸塩部分が、[3,5-(CF3)2C6H3]4B-、[(CF3)C6H4]4B-、[(C6F5)3BF]-、[(C6F5)2BF2]-、[(C6F5)BF3]-、(C6F5)4B-、および[(CF3)C6H2F2]4B-の1つを含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項17】
前記アミニウムラジカルカチオンおよびアニオンホウ酸塩部分の1つが、オリゴマーおよびポリマーの1つに結合している、請求項12に記載の組成物。
【請求項18】

[BXaYb]-
[式中、aおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4であり;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくは電子求引性置換基または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されている)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である]を有するアニオンホウ酸塩部分を含む赤外染料組成物であって、
約700nmと2000nmの間の近赤外波長域に少なくとも1つの吸収ピークを有し、式
[(R1R2)N=C6H4=N(R3R4)]+・
(式中、R1からR4は同一であるかまたは異なっており、場合によっては結合して環を形成し、それぞれ、C6〜C20の複素環式または炭素環式アリール基であり、前記基R1からR4は、少なくとも1つのC1〜C25アルコキシ、C1〜C25アルキル、ハロ、C1〜C25メルカプト、またはアミノ基によって場合によっては置換されており、前記アミノ基は、少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式、またはアリールアルキル基によって更に置換されているかまたは炭素環式または複素環式環に組み込まれている)を有するアミニウムラジカルカチオンを更に含む赤外染料組成物、および
赤外染料組成物に関連するホスト
を含む赤外素子。
【請求項19】
前記赤外染料組成物が、オリゴマーまたはポリマーに化学結合している、請求項18に記載の赤外素子。
【請求項20】
前記ホストが、液体、ゲル、および固体の1つであり、前記赤外染料組成物が前記ホスト中に分散している、請求項18に記載の赤外素子。
【請求項21】
前記ホストが、フィルムまたは薄層材料であり、前記赤外染料組成物が、前記フィルムまたは薄層材料中に分散している、請求項18に記載の赤外素子。
【請求項22】
前記ホストが、赤外素子がコンタクトレンズを画定するようなレンズおよびレンズボタンの1つである、請求項18に記載の赤外素子。
【請求項23】
[Z1]-および[Z2]-によってそれぞれ表される第1および第2のアニオン部分であって、[Z1]-および[Z2]-の一方は、SbF6-、ClO4-、AsF6-、CF3SO3-、PF6-、BF4-、および[BXaYb]-から選択され、[Z1]-および[Z2]-の他方は[BXaYb]-の形態であり、[Z1]-および[Z2]-がそれぞれ[BXaYb]-の形態の場合、それぞれ同一であるかまたは異なっており、[BXaYb]-のaおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4であり;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくは電子求引性置換基または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されている)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である、第1および第2のアニオン部分;および
約700nmと2000nmの間の近赤外波長域に少なくとも1つの吸収ピークを有し、式
[(R1R2)N=Ar=N(R3R4)]2+
(式中、Arはキノイダルフェニルであり、基R1からR4は同一であるかまたは異なっており、場合によっては結合して環を形成し、それぞれ、C1〜C20アルキル、脂環式、もしくはアリールアルキル基またはC6〜C20複素環式もしくは炭素環式アリール基のいずれかであり、前記基R1からR4は、少なくとも1つのC1〜C25アルコキシ、C1〜C25アルキル、ハロ、C1〜C25メルカプト、またはアミノ基によって場合によっては置換されており、前記アミノ基は、少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式またはアリールアルキル基によって更に置換されているか、または炭素環式または複素環式環に組み込まれている)を有するジイモニウムジカチオン
を含む赤外染料組成物。
【請求項24】
[(R1R2)N=Ar=N(R3R4)]2+=[(4-G2N-C6H4)2N=Ar=N(4-G2N-C6H4)2]+2であり、式中、Gが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチル、エチルヘキシル、デシル、ドデシル、およびベンジルから成る群から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
G=ブチルおよびAr=C6H4である、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
[(R1R2)N=Ar=N(R3R4)]2+=[(4-G2N-C6H4)2N=Ar=N(G2)]+2であり、式中、Gが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチル、エチルヘキシル、デシル、ドデシル、およびベンジルから成る群から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
G=ブチルおよびAr=C6H4である、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記電子求引性置換基が、ペルフルオロアルキル基、NO2、スルホニルおよびCNの1つを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項29】
[BXaYb]-が、[3,5-(CF3)2C6H3]4B-、[(CF3)C6H4]4B-、[(C6F5)3BF]-、[(C6F5)2BF2]-、[(C6F5)BF3]-、(C6F5)4B-、および[(CF3)C6H2F2]4B-の1つを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項30】
ジイモニウムジカチオンと第1および第2のアニオン部分の1つが、オリゴマーおよびポリマーの1つに結合している、請求項23に記載の組成物。
【請求項31】
[Z1]-および[Z2]-によってそれぞれ表される第1および第2のアニオン部分であって、[Z1]-および[Z2]-の一方は、SbF6-、ClO4-、AsF6-、PF6-、CF3SO3-、BF4-、および[BXaYb]-から選択され、[Z1]-および[Z2]-の他方は[BXaYb]-の形態であり、[Z1]-および[Z2]-がそれぞれ[BXaYb]-の形態の場合、それぞれ同一であるかまたは異なっており、[BXaYb]-のaおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4であり;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくは電子求引性置換基または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されている)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である、第1および第2のアニオン部分を含む赤外染料組成物であって、
約700nmと2000nmの間の近赤外波長域に少なくとも1つの吸収ピークを有し、式
[(R1R2)N=Ar=N(R3R4)]2+
(式中、Arはキノイダルフェニルであり、基R1からR4は同一であるかまたは異なっており、場合によっては結合して環を形成し、それぞれ、C1〜C20アルキル、脂環式、もしくはアリールアルキル基またはC6〜C20複素環式もしくは炭素環式アリール基のいずれかであり、前記基R1からR4は、少なくとも1つのC1〜C25アルコキシ、C1〜C25アルキル、ハロ、C1〜C25メルカプト、またはアミノ基によって場合によっては置換されており、前記アミノ基は、少なくとも1つのC1〜C20アルキル、脂環式またはアリールアルキル基によって更に置換されているか、または炭素環式または複素環式環に組み込まれている)を有するジイモニウムジカチオンを更に含む赤外染料組成物、および
赤外染料組成物に関連するホスト
を含む赤外フィルター素子。
【請求項32】
前記赤外染料組成物が、オリゴマーまたはポリマーに化学結合している、請求項31に記載の赤外素子。
【請求項33】
前記ホストが、液体、ゲル、および固体の1つであり、前記赤外染料組成物が前記ホスト中に分散している、請求項31に記載の赤外素子。
【請求項34】
前記ホストが、フィルムまたは薄層材料であり、前記赤外染料組成物が、前記フィルムまたは薄層材料中に分散している、請求項31に記載の赤外素子。
【請求項35】
前記ホストが、赤外素子がコンタクトレンズを画定するようなレンズおよびレンズボタンの1つである、請求項31に記載の赤外素子。
【請求項36】

[BXaYb]-
[式中、aおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4であり;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくは電子求引性置換基または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されている)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である]を有するアニオンホウ酸塩部分、および
約700nmと2000nmの間の近赤外波長域に少なくとも1つの吸収ピークを有するポリメチンカチオン
を含む赤外染料組成物。
【請求項37】
前記ポリメチンカチオンが、トリメチン、ペンタメチン、ヘプタメチン、カコゲノピリリウム、ヘミシアニン、およびストレプトシアニン染料の1つから選択されるカチオンを含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記ポリメチンカチオンが、IR-140である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記電子求引性置換基が、ペルフルオロアルキル基、NO2、スルホニルおよびCNの1つを含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項40】
前記アニオンホウ酸塩部分が、[3,5-(CF3)2C6H3]4B-、[(CF3)C6H4]4B-、[(C6F5)3BF]-、[(C6F5)2BF2]-、[(C6F5)BF3]-、(C6F5)4B-、および[(CF3)C6H2F2]4B-の1つを含む、請求項36に記載の組成物。
【請求項41】
前記ポリメチンカチオンおよびアニオンホウ酸塩部分の1つが、オリゴマーおよびポリマーの1つと結合している、請求項36に記載の組成物。
【請求項42】

[BXaYb]-
[式中、aおよびbは整数であり、aは0〜3であり、bは1〜4であり、a+b=4であり;Xは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、ハロゲン原子、OH官能基、またはC1〜C20アルキルもしくは脂環式基であり、Yは、同一でも異なっていてもよく、それぞれ、フェニル基(少なくとも1つのYが、少なくとも1つの元素もしくは電子求引性置換基または1つもしくは複数のハロゲン原子によって置換されている)、または少なくとも2つの芳香族環員を含んでいるアリール基である]を有するアニオンホウ酸塩部分を含む赤外染料組成物であって、約700nmと2000nmの間の近赤外波長域に少なくとも1つの吸収ピークを有するポリメチンカチオンを更に含む赤外染料組成物、および
赤外染料組成物に関連するホスト
を含む赤外素子。
【請求項43】
前記赤外染料組成物が、オリゴマーまたはポリマーに化学結合している、請求項42に記載の赤外素子。
【請求項44】
前記ホストが、液体、ゲル、および固体の1つであり、前記赤外染料組成物が前記ホスト中に分散している、請求項42に記載の赤外素子。
【請求項45】
前記ホストが、フィルムまたは薄層材料であり、前記赤外染料組成物が、前記フィルムまたは薄層材料中に分散している、請求項42に記載の赤外素子。
【請求項46】
前記ホストが、赤外素子がコンタクトレンズを画定するようなレンズおよびレンズボタンの1つである、請求項42に記載の赤外素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−531828(P2008−531828A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−558235(P2007−558235)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2006/007500
【国際公開番号】WO2006/096476
【国際公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(507293653)エクサイトン・インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】