説明

赤外線光学系、赤外線撮像装置

【課題】遠赤外線領域で良好な光学特性を有し、なおかつ低コストで実現可能な赤外線光学系及び赤外線撮像装置を提供する。
【解決手段】物体側より順に配された第1レンズ10、第2レンズ11、第3レンズ12の3枚のレンズで構成し、第1レンズ10と第3レンズ12は無機材料からなる正のパワーをもつ球面レンズとし、第2レンズ11は樹脂材料からなるメニスカス形状の両面非球面レンズとし、第1レンズ10から前記第3レンズ12の間に開口絞り13を設ける。無機材料からなる第1,第3レンズについては球面レンズを用い、第2レンズに樹脂材料による非球面レンズ用いることによって、加工コストを抑えながら収差補正している。また、樹脂材料によれば、第2レンズの薄型化も容易であり、従って高透過率(対赤外光)の実現も容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、例えばサーモグラフィやナイトビジョン等のように赤外線についての撮像画像を得るシステムにおいて用いられる赤外線光学系と、当該赤外線光学系を用いた赤外線撮像装置とに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2010−39243号公報
【特許文献2】特開2009−63942号公報
【特許文献3】特開2008−128913号公報
【背景技術】
【0003】
遠赤外光は、8μm〜12μmの波長帯の光であり、人間や動物などから熱、すなわち赤外線として発せられる。このことから、暗所での撮影や温度分布の観測などに用いられている。
【0004】
遠赤外光を集光する光学系には、通常の可視光に用いられるようなガラスレンズはその透過率の低さから使用することができず、赤外光をよく通す材料としてゲルマニウム(Ge)が用いられることが多い。ゲルマニウムは、屈折率が4程度と高いため、表面反射率は高いものの、吸収がほとんどないことから、適当な反射防止膜をコーティングすることによって90%以上の透過率を得ることができる。
【0005】
しかしながら、ゲルマニウムは希少鉱物のため極めて高価である。
そこで、ゲルマニウムに比して透過率は低下するものの、比較的安価なレンズ材料として、例えばシリコン(Si)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、さらにはカルコゲンとゲルマニウムなどを化合したカルコゲナイドガラスといった無機結晶性材料が用いられている。
【0006】
但し、これらの材料は安価ではあるが、Geと同様に硬度が高いという難点を有する。すなわち、高硬度であるがゆえ、その加工に長時間を要するなどして、コストの削減が困難となる場合がある。特に、非球面形状に研磨する場合には、精密な設備を用いた長時間の作業が必要であり、高コスト化は避けられないものとなる。
硫化亜鉛(ZnS)とカルコゲナイドガラスはプレス成形も検討されているが、遠赤外用レンズおよび光学系の低価格供給には至っていないのが現状である。
【0007】
なお、赤外線光学系の前例としては、例えば上記特許文献1〜3を挙げることができる。
例えば上記特許文献1には、Geレンズ3枚を用いた光学系が開示されている。当該光学系では、画角30度以上で非常によい光学特性を示している。
また、特許文献1ではレンズ形状を球面にすることで、加工コストも抑制している。
しかしながら、材料であるGeが非常に高価なものであり、安価なデバイスには結びつかない。
【0008】
また、特許文献2,3では、Geと比較して材料コストが安価なZnSを用いているが、Geより屈折率が低いことで増加する収差を抑制するために、非球面形状を採用している。このため、加工の難度や加工時間の面で、低コスト化が困難となる。
さらに、ZnSは色収差が比較的大きいため、特許文献2,3では回折構造を用いて色補正を行っているが、この点でも加工の難度や加工時間を要するものとなり、低コスト化が困難となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本技術は上記のような問題点に鑑み為されたもので、遠赤外線領域である8μm〜12μmで良好な光学特性を有し、なおかつ低コストで実現可能な赤外線光学系及び赤外線撮像装置を提供することをその課題とする。
このとき、遠赤外線デバイスの用途を広げていくためには、広画角化が望まれ、また撮像の感度を考慮すると光学系は少ない枚数のレンズで構成されていることが望ましい。具体的に、画角については少なくも25度を超えることが望ましく、また光学系のレンズ枚数は少なくとも3枚に抑えることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本技術では上記課題の解決のため、赤外線光学系として以下のように構成することとした。
つまり、本技術の赤外線光学系は、物体側から像面側にかけて配置された第1レンズ、第2レンズ、第3レンズの3枚のレンズで構成される。
そして、前記第1レンズ及び前記第3レンズが、無機材料で構成された正の屈折力を有する球面レンズとされる。
また、前記第2レンズが、樹脂材料で構成されたメニスカス形状の両面非球面レンズとされる。
さらに、前記第1レンズから前記第3レンズの間に開口絞りが設けられているものである。
【0011】
また本技術では赤外線撮像装置として以下のように構成することとした。
すなわち、本技術の赤外線撮像装置は、前記本技術の赤外線光学系を備えると共に、前記赤外線光学系により集光された赤外光を検出する赤外線検出部と、前記赤外線検出部により得られた赤外線検出信号に基づき赤外線撮像画像信号を得る画像信号取得部とを備えるものである。
【0012】
ここで、低コスト化を実現するには、使用するレンズ枚数を減らし、加工の難しい非球面形状を有する面を削減することが有効である。
また一方で、透過光量を確保するためには、前述のように使用レンズ枚数の削減や、レンズ厚を薄くすることが望ましい。
また、良好な光学特性の実現のためには、各種収差が適正に抑制される必要がある。収差補正にあたっては非球面を用いることが有効である。
上記のように本技術の光学系は、物体側より順に配された第1レンズ、第2レンズ、第3レンズの3枚のレンズで構成され、第1レンズと第3レンズは無機材料からなる正のパワーをもつ球面レンズであり、第2レンズは樹脂材料からなるメニスカス形状の両面非球面レンズとされる。
ここで、第1,第3レンズを構成する無機材料は、硝種によらず、非球面形状にする場合に加工コストがかかる。このため本技術では、これら第1,第3レンズについては、凸レンズとして機能させるための面形状に球面形状のみを使用する球面レンズを用い、それにより加工コストを抑えるものとしている。
但し、球面レンズ2枚のみでは、Fナンバーが小さく、画角が広くなるような光学系では収差を補正しきれない。そこで、第2レンズに樹脂材料による非球面レンズ用いることによって、収差を補正している。樹脂レンズであれば、射出成型やプレス成形などを使用することにより、低コストで非球面形状を実現することが可能となる。
また、樹脂材料によれば、第2レンズの薄型化も容易であり、従って高透過率(対遠赤外光)の実現も容易である。
【発明の効果】
【0013】
本技術によれば、遠赤外線領域で良好な光学特性を有し、なおかつ低コストで実現可能な赤外線光学系及び赤外線撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施の形態の赤外線撮像装置の内部構成を示したブロック図である。
【図2】実施の形態の赤外線光学系の構成概要について説明するための図である。
【図3】イメージャに結像する赤外線量の概念図である。
【図4】レンズからイメージャに入射する赤外線量の概念図である。
【図5】ポリエチレンの赤外線透過率の板厚依存性(図5A)、及び最大光線長(h)に対するレンズ全体の透過率の変化特性(図5B)を示した図である。
【図6】実施例1としての赤外線光学系の構成を示した図である。
【図7】実施例1の赤外線光学系におけるレンズの形状(及び絞り)についての係数及び面間隔を示した図である。
【図8】実施例1の赤外線光学系についての各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)における分解能特性(MTF)を示した図である。
【図9】実施例2としての赤外線光学系の構成を示した図である。
【図10】実施例2の赤外線光学系におけるレンズの形状(及び絞り)についての係数及び面間隔を示した図である。
【図11】実施例2の赤外線光学系についての各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)における分解能特性(MTF)を示した図である。
【図12】実施例3としての赤外線光学系の構成を示した図である。
【図13】実施例3の赤外線光学系におけるレンズの形状(及び絞り)についての係数及び面間隔を示した図である。
【図14】実施例3の赤外線光学系についての各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)における分解能特性(MTF)を示した図である。
【図15】実施例4としての赤外線光学系の構成を示した図である。
【図16】実施例4の赤外線光学系におけるレンズの形状(及び絞り)についての係数及び面間隔を示した図である。
【図17】実施例4の赤外線光学系についての各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)における分解能特性(MTF)を示した図である。
【図18】実施例5としての赤外線光学系の構成を示した図である。
【図19】実施例5の赤外線光学系におけるレンズの形状(及び絞り)についての係数及び面間隔を示した図である。
【図20】実施例5の赤外線光学系についての各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)における分解能特性(MTF)を示した図である。
【図21】実施例6としての赤外線光学系の構成を示した図である。
【図22】実施例6の赤外線光学系におけるレンズの形状(及び絞り)についての係数及び面間隔を示した図である。
【図23】実施例6の赤外線光学系についての各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)における分解能特性(MTF)を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術に係る実施形態について説明していく。
なお、説明は以下の順で行う。

<1.実施の形態としての赤外線光学系及び赤外線撮像装置>
[1-1.赤外線撮像装置の構成]
[1-2.実施の形態の赤外線光学系の概要]
<2.具体的な実施例>
[2-1.実施例1]
[2-2.実施例2]
[2-3.実施例3]
[2-4.実施例4]
[2-5.実施例5]
[2-6.実施例6]
<3.変形例>
【0016】
<1.実施の形態としての赤外線光学系及び赤外線撮像装置>
[1-1.赤外線撮像装置の構成]

図1は、本技術の赤外線撮像装置の一実施形態としての、赤外線撮像装置1の内部構成を示したブロック図である。
この図1に示すように、赤外線撮像装置1は、光学ブロック2、イメージセンサ(イメージャ)3、画像信号取得部4、及び画像信号処理部5を有して構成される。
【0017】
光学ブロック2は、後述する実施の形態としての赤外線光学系を包括的に表している。光学ブロック2は、図中に入射光Liと示す被写体(物体)からの赤外光(赤外線)をイメージセンサ3の撮像面(像面)に集光する。
【0018】
イメージセンサ3は、光学ブロック2により集光された赤外線を検出し、上記被写体からの赤外線に応じた赤外線検出信号を得る。
赤外線検出信号を得るにあたってイメージセンサ3が備えるべき赤外線検出素子としては、例えば焦電素子を用いたものを挙げることができる。或いは、ゼーベック効果を生じさせる熱電対を接続したサーモパイル型、温度上昇による抵抗値の変化を利用したボロメータ型などの赤外線検出素子を用いることもできる。
なお、赤外線検出素子についてはこれらに限定されるべきものでなく、赤外線を検出できるものであればその種類は問わない。
【0019】
ここで、本実施の形態では、赤外線検出素子として焦電素子を用いたものが備えられているとする。
焦電素子による赤外線検出素子が設けられる場合、イメージセンサ3に入射する赤外光を周期的に遮蔽するためのシャッタを設けることになる。これは、焦電素子が、温度自体に応じた値を出力するものではなく、温度差(温度変化)に応じた値を出力する素子とされることに対応させるためである。すなわち、上記シャッタにより赤外光の周期的な照射状態/遮蔽状態を作り出すことにより意図的に温度差を発生させ、それにより、静止状態の物体についても、適正な温度分布画像(赤外線撮像画像)が得られるようにするものである。
なお、上記シャッタの具体的な形成位置については後述する。
【0020】
画像信号取得部4は、イメージセンサ3により得られる赤外線検出信号(上記赤外線検出素子ごとに得られる検出信号)を入力して、赤外線撮像画像信号を得る。
【0021】
画像信号処理部5は、画像信号取得部4で得られた撮像画像信号について各種の画像信号処理を施す。例えば、黒レベル補正、画素欠陥補完、収差補正、光学シェーディング補正、レンズディストーション補正、温度調整、距離変化量の算出、コーディング等を行う。
画像信号処理部5からの出力は、図示しないがインターフェース等を介して、撮像装置の外部のディスプレイ(画像表示装置)等に送られる。
【0022】
[1-2.実施の形態の赤外線光学系の概要]

図2は、光学ブロック2の内部構成の概要について説明するための図である。
なお図2では光学ブロック2内部の概要と共にイメージセンサ3も併せて示している。
【0023】
図示するように、実施の形態の光学ブロック2には、物体側から像面側にかけて第1レンズ10、第2レンズ11、第3レンズ12の3つのレンズが設けられている。
また、光学ブロック2には、第1レンズ10〜第3レンズ12の何れかの間に、開口絞り13が設けられる。図2では一例として、第1レンズ10と第2レンズ11との間に開口絞り13が形成される場合を示している。これは、後述する実施例1,4,5,6に対応するものである。
【0024】
また本実施の形態の光学ブロック2において、第1レンズ10、第2レンズ11、第3レンズ12、及び開口絞り13は、同一鏡筒内に配置されたものとなる。
【0025】
実施の形態では、このように少なくとも第1レンズ10、第2レンズ11、開口絞り12、第3レンズ12、開口絞り13を有する光学ブロック2について、主に遠赤外線領域(8μm〜12μm)で良好な光学特性を有し、なおかつ低コストでの製造を可能とすることを目的として、以下のような構成を採るものとしている。
【0026】
先ず、第1レンズ10及び第3レンズ12としては、共に正の屈折力(パワー)を有する球面レンズを用いる。なおかつ、これら第1レンズ10及び第2レンズ12については、無機材料で構成された球面レンズとする。具体的に本例の場合、これら第1レンズ、第3レンズ12についてはシリコン(Si)による球面レンズを用いる。
【0027】
ここで、無機材料レンズは、硝種によらず、非球面形状にする場合に加工コストがかかる。このため本実施の形態では、第1レンズ10,第3レンズ12については、球面レンズ、すなわち凸レンズとして機能させるための(つまり上記正の屈折力を得るための)面形状に球面形状のみを使用するレンズを用いるものとし、それにより加工コストを抑えることとしている。
また、シリコンは、ゲルマニウムに比して赤外光透過率は低下するものの、比較的安価なレンズ材料であり、この点でもコスト削減が図られる。
【0028】
なお、後の実施例にて説明するように、第1レンズ10,第3レンズ12の具体的な形状としては平凸形状又はメニスカス形状とすることができる。
【0029】
また、本実施の形態の光学ブロック2において、第2レンズ11としては、樹脂材料による両面非球面レンズを用いる。
ここで、第1レンズ10及び第3レンズ12としての球面レンズ2枚のみでは、Fナンバーが小さく、画角が広くなるような光学系では収差を補正しきれない。そこで、第2レンズ11に樹脂材料による非球面レンズ用いることによって、収差を補正している。樹脂レンズであれば、射出成型やプレス成形などを使用することにより、低コストで非球面形状を実現することができる。
また、樹脂材料はゲルマニウム等に比して非常に安価であり、この点でもコスト削減が図られる。
また、樹脂材料によれば、第2レンズの薄型化も容易であり、従って高透過率(対赤外光)の実現も容易である。
【0030】
後述する各実施例で例示するように、第2レンズ11としてはメニスカス形状レンズを用いることができる。メニスカス形状レンズはレンズ厚の薄型化に有利であり、従って赤外線透過率の向上の点で有利とできる。
【0031】
ところで、樹脂製のレンズは、紫外線に依る性能劣化が不可避となる。
この点に鑑み本実施の形態では、樹脂製の第2レンズ11を、前述のように無機材料で構成された第1レンズ10及び第3レンズ12により挟み込むように配置し、なおかつ、これら第1レンズ10〜第3レンズ12を同一鏡筒内に収めるものとしている。
該構成によれば、鏡筒の端部に位置する第1レンズ10・第3レンズ12以外のレンズは、可視光の直接的な照射を受けることはなくなる。このため、第1レンズ10・第3レンズ12として例えば前述のシリコン等の可視光領域の透過率が低い結晶質材料を用いることで、樹脂製の第2レンズ10を可視光から有効に保護することができる。
この結果、経時的な性能劣化の防止が図られ、より安定な赤外線光学系を実現することができる。
【0032】
なお、樹脂製のレンズに対しては、一般に耐光性(主に紫外線に対する)を改善するためにカーボンブラックを混練することがあるが、遠赤外線の透過率の低下につながり、赤外線レンズ用途に用いることができない点に留意すべきである。
【0033】
また、各レンズを同一鏡筒内に収めるにあたっては、各レンズの外径を揃えることが有効である。すなわち、各レンズの外径を同じとすれば、一つの内径をもつ鏡筒内に各レンズを設置することができるようになり、レンズ間の偏芯を抑制しつつ、組み立てることが容易となる。
このとき、樹脂製の第2レンズ11について、そのフランジ(外周部)を物体側・像面側の双方で平面を有する形状に作成すれば、当該フランジの平面を利用して、スペーサを介して3枚のレンズを所定間隔で鏡筒内に収めることができる(実施例2〜実施例6の構成)。
【0034】
また、全てのレンズを鏡筒に収めた構成とすれば、剛性の比較的強いシリコン等による第1レンズ10・第3レンズ12により鏡筒を支持することができるため、剛性の弱い樹脂製の第2レンズ11を割れ等の破壊から適切に保護できる。
【0035】
ここで、前述のように本実施の形態では、開口絞り13を第1レンズ10〜第3レンズ12の何れかの間に挿入するものである。
このように第1レンズ10〜第3レンズ12の何れかの間に開口絞り13を設けることで、例えば25°以上など比較的画角の広い構成とした場合に、第1レンズ10と第3レンズ12における、光線が通過する有効径がほぼ同じとなるようにできる。結果、第1レンズ10又は第3レンズ12の何れかが大口径レンズとなることを防ぐことができる。
【0036】
また、前述のように本実施の形態では、第1レンズ10及び第3レンズ12としてシリコン製のレンズを用いるものとしているが、シリコンレンズは、他の無機材料レンズと比較すると、色分散が小さいものとなる。波長8μm、10μm、12μmに対する屈折率を用いて擬似的なアッベ数を求めると、色分散の逆数であるアッベ数は、Si(シリコン)=1510、Ge(ゲルマニウム)=940、ZnS(硫化亜鉛)=23となり、この結果からもシリコンの色分散が小さいことが分かる。
ここで、色分散による影響は、レンズの焦点距離が短いほど小となる。
このとき、使用するイメージャのサイズが一定であるとすれば、広画角化にあたっては、焦点距離を短く設定すればよいことになる。このことによれば、例えば画角=25°以上としての比較的広画角を設定する本実施の形態の光学系では、その分短い焦点距離が設定されることとなる。具体的に本例の場合、焦点距離は18mm程度以下である。
この点、及び上記のように色分散が小であるシリコンレンズを用いている点より、本実施の形態の光学系では、特段、色収差補正機構(例えば回折構造)を設けずとも、波長8μm〜12μmの遠赤外線光を色分散の影響少なく適正に集光することができる。
【0037】
また、図2では図示を省略しているが、赤外線検出素子として焦電素子を用いる本例の場合は、光学ブロック2内にシャッタが挿入されることになる。
本例の場合、当該シャッタは、開口絞り13の形成位置に配置するものとしている。
このようにシャッタ位置を開口絞り位置とすることで、物体から発せられる各画角の光線を同時に遮光(遮蔽)することができ、シャッタの開閉に伴うイメージセンサ3上での光量ムラ(つまり赤外線撮像画像における輝度ムラ)を効果的に抑えることができる。
【0038】
また、上記シャッタは、より好ましくは、図2に示すように開口絞り13を第1レンズ10と第2レンズ11との間に形成するものとし、当該開口絞り13の位置に配置する。このようにすることで、光学系のS/N(信号対雑音比)の低下防止を図ることができる。
ここで、樹脂製による第2レンズ11は、一般的に赤外線吸収率が高く、また吸収率=放射率とみなせることから、第2レンズ11からは多くの熱量が放射されることになる。赤外線撮像装置において、光学系からイメージャに熱が発せられることは、S/Nを悪化させることを意味するが、上記のように開口絞り13を第1レンズ10と第2レンズ11との間に設け、そこにシャッタを設置すると、第2レンズ11から発せられる熱量は当該シャッタによって遮蔽されることがなくなり、結果、イメージセンサ3の出力に影響を与えなくなる。つまり、第2レンズ11として樹脂レンズを使用しても、当該第2レンズ11より物体側にシャッタを設置することによって、その放熱に伴うS/Nへの影響を抑えることができるというものである。
この結果、物体からイメージセンサ3に入る信号と、樹脂製の第2レンズ11からイメージセンサ3に入るノイズの大きさがほぼ等しいような構成となっていても、十分出力を得ることが可能となる。
【0039】
ここで、上記もしているように、樹脂レンズは、赤外光に対する吸収率が高く、従って赤外光透過率が低いものとなる。
このため本例では、第2レンズ11の材料として、樹脂の中では比較的赤外線透過率の高いポリエチレン(PE)を使用することとしている。
このとき、耐熱性・耐衝撃性を考慮すると、高分子量ポリエチレンを使用することが望ましいものとなる。
【0040】
また、樹脂材料の透過率が低い点を考慮すると、第2レンズ11については、その厚さを薄くすることが望ましい。
ここで、透過率は、レンズ内を透過する光の光線長が大となるほど低くなると言える。このため、透過率を高めるにあたっては、レンズ内を透過する赤外光の最大光線長(レンズ内を透過する光のうち光線長が最大となる光の光線長)が小となるように、レンズの厚さを設定すべきである。換言すれば、樹脂製の第2レンズ11については、その内部を透過し結像に寄与する光線の最大光線長が小となるように構成すべきである。
具体的に、上記最大光線長としては、2.0mm以下とすることが望ましいことが判明した。
【0041】
以下、第2レンズ11の最大光線長を2.0mm以下に抑えるべき根拠について説明しておく。
先ず、赤外線光学系で考慮すべき性能としては、解像力と温度分解能とがある。
解像力は、対象物体の構造をどれだけ細かい部分まで結像できるかという性能であり、指標としてMTF(Modulation Transfer Function)値がよく用いられる。光学系のMTFは、収差等に起因する集光性能の劣化により値が決まるが、イメージャを含めた赤外線撮像装置として性能を評価するには、イメージャの画素ピッチや感度も重要な要素となる。光学系でいかに収差なく集光しても、感知できるだけの光線又は電磁波がイメージャに到達しなければ、温度分布を検知することはできないからである。これはつまり、光学系の透過率も、装置全体のMTFには影響を与えることを意味する。
【0042】
一方、温度分解能は、対象物体にある温度差をどれだけ細かく測定できるかという性能であり、赤外線光学系特有の指標と言える。赤外線イメージャの性能指標として、イメージャ内部ノイズと同等な測定温度差を表すNETD(Noise Equivalent Temperature Difference)があるが、装置全体で同様な値を求めると、光学系の透過率が異なる場合には、イメージャに入射する光量又は電磁波のエネルギー量が異なるものとなり、従ってNETDの値が変化することとなる。
【0043】
以上から明らかなように、赤外線撮像装置の性能に、光学系の透過率が大きく影響するものである。
【0044】
以下に、各レンズに要求される透過率の下限の見積りを行う。
先ず、図3に示すように、温度Tの物体を、温度Sのレンズを介して、イメージャ上に集光することを考える。レンズの焦点距離をf、物体−レンズ間の距離をM×f(Mは倍率)、レンズ半径をrとする。
図3より、物体上の微小面積からレンズを臨む立体角SAsigは、その円錐の半頂角をθとして、


【数1】



となる。
1辺aのイメージャ単画素に入射するフォトン数Psigは、物体上の1辺Ma(M×a)の領域から飛来することになるので、放射量が物体温度T[K]の4乗に比例するというプランクの法則を使い、物体の放射率をR、レンズの平均透過率をpとすると、


【数2】



と求められる。
【0045】
次に、図4により、レンズ上の各点よりイメージャに入射するフォトン数Plensを求める。レンズ上微小面積からイメージャ単画素を臨む立体角(2φ)は、その半頂角をφとして、


【数3】



となる。
また、レンズの放射率は(1−p)となるので、


【数4】



となる。
【0046】
上記の[式2]及び[式4]より、物体からのフォトン数がレンズからのフォトン数を上回る条件は、


【数5】



と求められる。
【0047】
ここで、レンズの温度Sを23度(296K)、対象物体温度Tを35度(308K)とし、放射率は、人間の皮膚が0.98程度、非金属材料の多くが0.8〜1.0であることから、R=0.9を代入するものとする。該条件によると、レンズに求められる透過率は、[式5]から42.7%と求まる。
なおこの[式5]から明らかなように、測定する対象の温度Tが高温になるほど、レンズに求められる透過率の下限は低くなるものである。
【0048】
図5Aに、赤外線光学系でよく使用されるポリエチレンの赤外線(波長9.7μmで測定)透過率の、板厚依存性を示す。
指数関数によりフィッティングすると、ポリエチレンの透過率t(d)は以下の[式6]で表される。
ここで、dはポリエチレンの厚さ[mm]である。


【数6】


【0049】
ここで、第2レンズ11の中心厚を、製造の制約による下限である0.3mmとし、第2レンズ11の最外周辺光のレンズ内の光路長(つまり第2レンズ11を透過し結像に寄与する光の最大光線長)をhとすると、結像作用を有するレンズの基本的な物理的性質が、『レンズを透過する光路長が、レンズ中心から半径方向の距離rの2次関数になること』であることから、レンズ中心からの半径方向の距離rでレンズに入射する光線の、レンズ内光路長opd(r)は、


【数7】



となる。
ここで、rは最外周で規格化し、0〜1の値を取るとする。
【0050】
レンズ全体の透過率tallは、[式7]のopd(r)を[式6]のdに代入し、全半径領域において積分すればよい。
【0051】
半径rにおける微小半径drの幅をもつ輪帯の透過率が、


【数8】



となるので、


【数9】



となる。
【0052】
最外周辺光のレンズ内光路長(つまり前述の最大光線長)hを変化させたときの、レンズ全体の透過率を図5Bに示す。
最大光線長hが2.0mmとなるとき、レンズ全体の透過率は42.7%となる。
ここで、この値は、先の[式5]で求めた、物体からの信号がレンズからのノイズより大きな出力を得る透過率の値と一致するものである。
この点より、最大光線長hを2.0mm以下に抑えるべきであるということが分かる。
【0053】
なお、第2レンズ11の最大光線長hについては、透過率の面ではこれを小とすることが望ましいものとなるが、最大光線長hが過小であると、レンズの強度確保が困難となったり、また収差補正能力の確保も困難となる。
この点を考慮すると、最大光線長hについては少なくとも0.3mm以上とすることが望ましい。すなわち、最大光線長hは0.3mm以上2.0mm以下であることが望ましい。
【0054】
ところで、実際において赤外線光学系を設計するにあたっては、上記により説明してきた点と共に、以下の点も留意すべきである。
ここで、近年では温度センサや人感センサとして、遠赤外線を利用したデバイスが用いられるようになってきたが、解像度が低い構成であり、サーモビュワーやナイトビジョンシステムのように撮像対象の形状まで結像するような光学系を有するデバイスは、限られている。今後、遠赤外デバイスの用途を広げていくためには、光学系の広画角化が必要である。具体的には、少なくとも画角25°を越えるものが望ましい。
後述する具体的な実施例においては、この点を考慮して光学系の設計を行っている。
【0055】
また、遠赤外光はエネルギーが低いため、可視光で使用している撮像素子は使用できず、より多くの光量を集光するためにもFナンバー=1.8以下の構成することが必要である。
また、温度分布測定等の解像度の必要な用途においては、集光量を上げ分解能をあげるためにFナンバー=1.3以下とすることが望ましい。
以下の各実施例においては、このようなFナンバーに係る要請についても考慮して光学系の設計を行った。
【0056】
<2.具体的な実施例>
[2-1.実施例1]

図6は、実施例1としての光学ブロック2の構成を示している。
なお図6において、図中の面Simgは、図1(及び図2)に示したイメージセンサ3の撮像面を表す。
また図6では赤外光の光線も併せて示している。
図中の短破線で示す光線は像高0mmに集光する光線を表し、丸破線で示す光線は像高1.5mmに集光する光線を表している。
また実線で示す光線は像高3.5mmに、長破線で示す光線は像高5.0mmにそれぞれ集光する光線を表す。
【0057】
本実施例において、第1レンズ10と第3レンズ12はSi製とされ、第2レンズ11は高分子量ポリエチレン製とされる。
ここで、本例では、イメージセンサ3の直前位置に平坦な部材によるカバーガラス14を設けることとしている。このカバーガラス14は、イメージセンサ3の撮像面保護のために設けられるものである。
当該カバーガラス14としても、Si製とする(赤外光を透過させるため)。
【0058】
本実施例の場合、第1レンズ10は、物体側に球面形状、像面側に平面形状をもつ平凸レンズとされ、正の屈折力を有する。
第2レンズ11は、両面とも非球面形状をもち、像面側に凸となるメニスカス形状レンズである。
また第3レンズ12は、物体面側に球面形状、像面側に平面形状を有する平凸レンズとされ、正の屈折力を有する。
【0059】
また本実施例において、開口絞り13は第1レンズ10と第2レンズ11との間に配置される。すなわち、このように第1レンズ10〜第3レンズ12の間に開口絞り13を設けることで、第1レンズ10又は第3レンズ12の有効径が大きくならないようにしている。
【0060】
さらにこの場合、シャッタ(図示は省略)は開口絞り13の位置に配される。このように開口絞り位置にシャッタが配されることで、赤外線検出素子に焦電素子を用いた構成において、光量ムラの発生の防止が図られる。
また、第1レンズ10と第2レンズ11との間に開口絞り13が設けられた上で、開口絞り位置にシャッタが配置された構成とされていることで、樹脂製の第2レンズ11に吸収された熱に起因するS/Nの悪化の防止が図られる。
【0061】
実施例1における各レンズの形状(及び開口絞り13)についての係数、及び面間隔を図7に示す。
ここで、非球面レンズに関して、レンズ面の凹凸は、半径rを用いて次のように表される。


【数10】



ただし、Z(r)は光軸を中心としたときの半径rの点におけるレンズ面の高さを示す。面の高さは、物体側を負、像面側を正としている。Rは曲率半径、kは離心率、A4、A6、A8、A10、・・・は非球面係数である。
【0062】
図7において、面S0は物体面を表し、本例では最も対物側に配置される第1レンズ10から9000mm離れた位置に設定している。
面S1、面S2は、第1レンズ10の物体側の面、像面側の面をそれぞれ表す。面S3は開口絞り13の面を表し、面S4、面S5はそれぞれ第2レンズ11の物体側の面、像面側の面を表す。また、面S6、面S7は第3レンズ12の物体側の面、像面側の面である。さらに面S8、面S9はカバーガラス(CG)14の物体側の面、像面側の面である。これら面S8,S9は共に平坦面となる。
また、面S10=面Simgである。
【0063】
実施例1において、第1レンズ10及び第3レンズ12で用いるSiの屈折率は3.4212、第2レンズ11で用いるポリエチレンの屈折率は1.54である。
また、開口絞り13の直径は12.98mm、焦点距離は14.9mmとし、Fナンバー=1.09、水平画角30.1°を実現している。
【0064】
図8は、実施例1の光学ブロック2についての各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)における分解能特性(MTF)を示している。
具体的にこの図では、各像高における特性を横軸を空間周波数(lines/mm)、縦軸をOTF(Optical Transfer Function)として表している。
なおこの図においても像高0mmが短破線、像高1.5mmが丸破線、像高3.5mmが実線、像高5.0mmが長破線である。また、図中「T」の表記はタンジェンシャル値を意味し、「S」の表記はサジタル値を意味する。
【0065】
ここで、像高5.0mmを10割とした場合、0割にあたる像高0mmと、3割にあたる像高1.5mmとで、20lines/mmにおけるMTF値(OTF値)が0.3以上となり、且つ、7割にあたる像高3.5mmで10lines/mmにおけるMTF値が0.3以上となることが望ましい。
【0066】
本実施例の赤外線光学系では、像高0mmにおける20lines/mmでのMTF値が0.457、像高1.5mmにおける20lines/mmでのMTFのタンジェンシャル値0.496、サジタル値0.544、像高3.5mmにおける10lines/mmにおけるMTFのタンジェンシャル値0.434、サジタル値0.619と、高い分解能が得られている。
【0067】
このような実施例1としての光学系では、比較的安価な材料であるシリコンを用いて、加工コストの抑えられる平面または球面形状をもつ第1レンズ10及び第3レンズ12を作成して光学系のパワーを担当させ、加工が容易なポリエチレンを用いて、非球面形状の第2レンズ11を作成して収差を補正している。
ポリエチレンは、シリコンに比べ透過率が低い材質ではあるが、ポリエチレンレンズの使用を1枚に抑え、第2レンズ11の最大光線長を1.17mm(つまり2.0mm以下)に抑えることにより、透過率の低下を抑制している。さらに焦点距離を14.9mmと短くすることにより、色収差の影響を抑えつつ、波長8〜12μm帯において十分な分解能性能を得ることができている。
【0068】
また、開口絞り位置にシャッタを置くことで、第2レンズ11からイメージセンサ3に入る放射熱量は変化せず、入射熱量の変化量を検知する焦電素子を使用した場合、第2レンズ11からの放射熱量が検知されないようにできる。ポリエチレンは通常赤外線の吸収がシリコン等に比べると多く、それはつまり放射熱量が多いことになるが、本実施例の構成を採ることにより、光学系のS/Nの悪化を効果的に抑制できる。
【0069】
以上のように本実施例によれば、コストアップを抑えつつ、画角30°近い広画角を図りながら、十分な分解能性能を得ることができる。
【0070】
[2-2.実施例2]

図9は、実施例2としての光学ブロック2の構成を示している。
なお、図9においても各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)に集光する赤外光の光線を併せて示している。この場合も像高0mm=短破線、像高1.5mm=丸破線、像高3.5mm=実線、像高5.0mm=長破線となる。
【0071】
図9において、実施例2においても、物体側よりシリコン製の第1レンズ10、高分子量ポリエチレン製の第2レンズ11、シリコン製の第3レンズ12、及びシリコン製のカバーガラス14を配置している。
但し実施例2では、開口絞り13の位置を、第2レンズ11と第3レンズ12との間としている。
この場合も、開口絞り13の位置が第1レンズ10〜第3レンズ12の何れかの間とされていることで、第1レンズ10又は第3レンズ12の有効径が大きくならないようにしている。
【0072】
この場合、第1レンズ10は両面に球面をもち、物体側に凸となるメニスカス形状レンズとされる。
また第3レンズ12は両面に球面をもち、像面側に凸となるメニスカス形状レンズとされる。
なお、第1レンズ10及び第3レンズ12は共に正の屈折力を有する。
また第2レンズ11は、この場合も両面非球面形状であり、像面側に凸となるメニスカスレンズである。
【0073】
ここで、実施例2では、樹脂レンズである第2レンズ11のフランジ(外周部)を物体側・像面側共に平面に加工するものとしている。その上で、図示するように3枚のレンズの外径は揃えるものとし、上記フランジの平面部を利用して、スペーサを介して3枚のレンズを所定間隔で同一鏡筒内に設置するものとしている。
このように各レンズの外径を揃え、スペーサを用いた収納とすることで、レンズ間の偏芯を抑えた組立てを容易に実現することができる。
なお、この点については、以降で説明する実施例3〜実施例6においても同様である。
【0074】
また、本実施例においても、シャッタ(図示は省略)は開口絞り13の位置に配される。このように開口絞り位置にシャッタが配されることで、赤外線検出素子に焦電素子を用いた構成において、光量ムラの発生の防止が図られる。
【0075】
実施例2の場合の各レンズの形状(及び開口絞り13)についての係数及び面間隔を図10に示す。
なお、面番号の定義は、実施例1の場合との比較で以下のように変更となる。
すなわち本実施例の場合、面S3、面S4がそれぞれ第2レンズ11の物体側面、像面側面となり、面S5が開口絞り13の面となる。
【0076】
図10において、この場合も物体面である面S0から面S1までの距離は9000mmとしている。
なおこの場合としても、第1レンズ10及び第3レンズ12で用いるシリコンの屈折率、及び第2レンズ11で用いるポリエチレンの屈折率については実施例1の場合と同様となる。また焦点距離も実施例1の場合と同様である。
この場合、開口絞り13の直径は13.24mmであり、Fナンバーは1.11である。水平画角については実施例1の場合と同様の30.1°である。
【0077】
図11は、実施例2の光学ブロック2についての各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)における分解能特性(MTF)を示している。
なおこの図においても横軸=空間周波数(lines/mm)、縦軸=OTFである。
【0078】
実施例2の光学系では、像高0mmにおける20lines/mmでのMTF値が0.631、像高1.5mmにおける20lines/mmでのMTFのタンジェンシャル値0.609、サジタル値0.637、像高3.5mmにおける10lines/mmにおけるMTFのタンジェンシャル値0.667、サジタル値0.776と、高い分解能が得られている。
【0079】
上記による実施例2の光学系においても、比較的安価な材料であるシリコンを用いて、加工コストの抑えられる平面または球面形状をもつ第1レンズ10及び第3レンズ12を作成して光学系のパワーを担当させ、加工が容易なポリエチレンを用いて、非球面形状の第2レンズ11を作成して収差を補正している。
そしてこの場合も、ポリエチレンレンズの使用を1枚に抑え、第2レンズ11の最大光線長は1.96mmに抑えることにより、透過率の低下を抑制している。さらに焦点距離を14.9mmと短くすることにより、色収差の影響を抑えつつ、波長8〜12μm帯において十分な分解能性能を得ることができている。
【0080】
また実施例2では、第1レンズ10、第3レンズ12はメニスカスレンズであるが、平板状のシリコンから研磨して凹面側(つまりそれぞれ第2レンズ11と向き合う側)を作成することで、凹面側の外周に平面部分を確保することができる。第1レンズ10の凸面を物体側に、第3レンズ12の凸面を像面側に向けることにより、上記凹面側の平面部分が向き合う形となる。これにより、前述のスペーサを用いたレンズ間隔の調整を行う場合により好適となる。
【0081】
以上のように実施例2の構成によっても、コストアップを抑えつつ、画角30°近い広画角を図りながら、十分な分解能性能を得ることができる。
【0082】
[2-3.実施例3]

図12は、実施例3としての光学ブロック2の構成を示している。
なお、図12においても、各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)に集光する赤外光の光線を併せて示している。この場合も像高0mm=短破線、像高1.5mm=丸破線、像高3.5mm=実線、像高5.0mm=長破線である。
【0083】
先ず、この場合の各レンズ、開口絞り13、及びカバーガラス14の配置関係は実施例2の場合と同様となる。また、各レンズの構成材料としても先の実施例2の場合と同様である。
【0084】
この場合、第1レンズ10、第3レンズ12は共に正のパワーを有し、第1レンズ10は物体側に球面形状、像面側に平面をもつ平凸レンズとされ、第3レンズ12は物体側に平面、像面側に球面形状をもつ平凸レンズとされる。
また第2レンズ11は、先の実施例2の場合と同様に両面とも非球面形状をもち、像面側に凸となるメニスカスレンズとされ、そのフランジには物体側・像面側共に平面を有する。
【0085】
この場合も実施例2と同様に第1レンズ10〜第3レンズ12の間に開口絞り13が設けられることで、第1レンズ10又は第3レンズ12の有効径が大きくならないように図られている。
【0086】
またこの場合、シャッタ(図示は省略)は開口絞り13の位置に配される。このように開口絞り位置にシャッタが配されることで、赤外線検出素子に焦電素子を用いた構成において、光量ムラの発生の防止が図られる。
【0087】
実施例3の場合の各レンズの形状(及び開口絞り13)についての係数及び面間隔を図13に示す。
なお、面番号の定義は実施例2の場合と同様である。
またこの場合、面S0としての物体面は、第1レンズ10から9000mm離れた位置に設定している。
【0088】
ここで、この場合としても、第1レンズ10及び第3レンズ12で用いるシリコンの屈折率、第2レンズ11で用いるポリエチレンの屈折率、焦点距離については実施例1,2の場合と同様となる。
本実施例の場合、開口絞り13の直径は13.75mmであり、Fナンバー1.06、水平画角については実施例1,2と同様に30.1°を実現している。
【0089】
図14は、実施例3の光学ブロック2についての各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)における分解能特性(MTF)を示している。
なおこの図においても横軸=空間周波数(lines/mm)、縦軸=OTFである。
【0090】
実施例3の光学系では、像高0mmにおける20lines/mmでのMTF値が0.640、像高1.5mmにおける20lines/mmでのMTFのタンジェンシャル値0.661、サジタル値0.679、像高3.5mmにおける10lines/mmでのMTFのタンジェンシャル値0.676、サジタル値0.700と、高い分解能が得られている。
【0091】
上記による実施例3の光学系においても、比較的安価な材料であるシリコンを用いて、加工コストの抑えられる平面または球面形状をもつ第1レンズ10及び第3レンズ12を作成して光学系のパワーを担当させ、加工が容易なポリエチレンを用いて、非球面形状の第2レンズ11を作成して収差を補正している。
この場合もポリエチレンレンズの使用を1枚に抑え、第2レンズ11の最大光線長については1.68mmに抑えることにより、透過率の低下を抑制している。
さらに焦点距離を14.9mmと短くすることにより、色収差の影響を抑えつつ、波長8〜12μm帯において十分な分解能性能を得ることができている。
【0092】
以上のように実施例3によっても、コストアップを抑えつつ、画角30°近い広画角を図りながら、十分な分解能性能を得ることができる。
【0093】
[2-4.実施例4]

図15は、実施例4としての光学ブロック2の構成を示している。
なお、図15においても、各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)に集光する赤外光の光線を併せて示している。この場合も像高0mm=短破線、像高1.5mm=丸破線、像高3.5mm=実線、像高5.0mm=長破線である。
【0094】
先ず、この場合の各レンズ、開口絞り13、及びカバーガラス14の配置関係は実施例1の場合と同様となる。また、各レンズの構成材料としても先の実施例1の場合と同様である。
【0095】
この場合、第1レンズ10、第3レンズ12は共に正のパワーを有し、第1レンズ10は両面に球面を有しかつ物体側に凸となるメニスカス形状レンズ、第3レンズ12は同様に両面に球面を有するが像面側に凸となるメニスカス形状レンズとされる。
また第2レンズ11は、先の実施例2の場合と同様に両面とも非球面形状を有するが、この場合は物体側に凸となるメニスカスレンズとされる。なおこの場合も、第2レンズ11のフランジは、実施例2の場合と同様に物体側・像面側共に平面を有するように加工されている。
【0096】
本実施例においても、実施例1の場合と同様、第1レンズ10〜第3レンズ12の間に開口絞り13が設けられることで、第1レンズ10又は第3レンズ12の有効径が大きくならないように図られている。
【0097】
またこの場合も、シャッタ(図示は省略)は開口絞り13の位置に配される。このように開口絞り位置にシャッタが配されることで、赤外線検出素子に焦電素子を用いた構成において、光量ムラの発生の防止が図られる。
また、第1レンズ10と第2レンズ11との間に開口絞り13が設けられた上で、開口絞り位置にシャッタが配置された構成とされていることで、樹脂製の第2レンズ11に吸収された熱に起因するS/Nの悪化の防止が図られる。
【0098】
実施例4の場合の各レンズの形状(及び開口絞り13)についての係数及び面間隔を図16に示す。
なお、面番号の定義は実施例1の場合と同様である。
またこの場合、面S0としての物体面は、実施例1の場合と同様に第1レンズ10から9000mm離れた位置に設定している。
【0099】
ここで、この場合としても、第1レンズ10及び第3レンズ12で用いるシリコンの屈折率、第2レンズ11で用いるポリエチレンの屈折率、焦点距離については実施例1の場合と同様となる。
本実施例の場合、開口絞り13の直径は12.24mmであり、Fナンバーは1.06である。水平画角については30.1°と、実施例1,2と同様の数値を実現している。
【0100】
図17は、実施例4の光学ブロック2についての各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)における分解能特性(MTF)を示している。
なおこの図においても横軸=空間周波数(lines/mm)、縦軸=OTFである。
【0101】
実施例4の光学系では、像高0mmにおける20lines/mmでのMTF値が0.621、像高1.5mmにおける20lines/mmでのMTFのタンジェンシャル値0.566、サジタル値0.534、像高3.5mmにおける10lines/mmでのMTFのタンジェンシャル値0.677、サジタル値0.654と、高い分解能が得られている。
【0102】
上記による実施例4の光学系においても、比較的安価な材料であるシリコンを用いて、加工コストの抑えられる平面または球面形状をもつ第1レンズ10及び第3レンズ12を作成して光学系のパワーを担当させ、加工が容易なポリエチレンを用いて、非球面形状の第2レンズ11を作成して収差を補正している。
この場合もポリエチレンレンズの使用を1枚に抑え、第2レンズ11の最大光線長については1.70mmに抑えることにより、透過率の低下を抑制している。
さらに焦点距離を14.9mmと短くすることにより、色収差の影響を抑えつつ、波長8〜12μm帯において十分な分解能性能を得ることができている。
【0103】
また実施例4では、第1レンズ10、第3レンズ12はメニスカスレンズであるが、先の実施例2と同様、平板状のシリコンから研磨して凹面側(それぞれ第2レンズ11と向き合う側)を作成することで、凹面側の外周に平面部分を確保することができる。第1レンズ10の凸面を物体側に、第3レンズ12の凸面を像面側に向けることにより、上記凹面側の平面部分が向き合う形となる。すなわち、前述のスペーサを用いたレンズ間隔の調整を行う場合により好適となる。
【0104】
以上のように実施例4によっても、コストアップを抑えつつ、画角30°近い広画角を図りながら、十分な分解能性能を得ることができる。
【0105】
[2-5.実施例5]

図18は、実施例5としての光学ブロック2の構成を示している。
なお、図18においても各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)に集光する赤外光の光線を併せて示している。この場合も像高0mm=短破線、像高1.5mm=丸破線、像高3.5mm=実線、像高5.0mm=長破線である。
【0106】
この場合の各レンズ、開口絞り13、及びカバーガラス14の配置関係は実施例1の場合と同様となる。
この場合、第1レンズ10、第3レンズ12としてはゲルマニウム(Ge)製のレンズを用いる。
第2レンズ11については本実施例の場合も高分子量ポリエチレンレンズを用いる。またカバーガラス14も先の各実施例と同様のシリコン製のものを用いる。
【0107】
この場合、第1レンズ10、第3レンズ12は共に正のパワーを有し、第1レンズ10は物体側に凸となるメニスカス形状レンズ、第3レンズ12は物体側に平面、像面側に球面形状をもつ平凸レンズとされる。
また第2レンズ11は、両面とも非球面形状をもち、物体側に凸となるメニスカスレンズとされる。そしてそのフランジは、先の実施例2の場合と同様に物体側・像面側共に平面を有するように加工されている。
【0108】
先の各実施例の場合と同様、第1レンズ10〜第3レンズ12の間に開口絞り13が設けられることで、第1レンズ10又は第3レンズ12の有効径が大きくならないように図られている。
【0109】
またこの場合も、シャッタ(図示は省略)は開口絞り13の位置に配される。このように開口絞り位置にシャッタが配されることで、赤外線検出素子に焦電素子を用いた構成において、光量ムラの発生の防止が図られる。
また、第1レンズ10と第2レンズ11との間に開口絞り13が設けられた上で、開口絞り位置にシャッタが配置された構成とされていることで、樹脂製の第2レンズ11に吸収された熱に起因するS/Nの悪化の防止が図られる。
【0110】
実施例5の場合の各レンズの形状(及び開口絞り13)についての係数及び面間隔を図19に示す。
なお、面番号の定義は実施例1の場合と同様である。
またこの場合、面S0としての物体面は、第1レンズ10から80000mm離れた位置に設定している。
【0111】
ここで、実施例5において第1レンズ10及び第3レンズ12で用いるゲルマニウムの屈折率は4.0である。
なお、第2レンズ11で用いるポリエチレンの屈折率、及び焦点距離については先の各実施例の場合と同様となる。
また本実施例の場合、開口絞り13の直径は11.58mmであり、Fナンバーは1.06である。水平画角については先の各実施例と同様に30.1°を実現している。
【0112】
図20は、実施例5の光学ブロック2についての各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)における分解能特性(MTF)を示している。
なおこの図においても横軸=空間周波数(lines/mm)、縦軸=OTFである。
【0113】
実施例5の光学系では、像高0mmにおける20lines/mmでのMTF値が0.656、像高1.5mmにおける20lines/mmでのMTFのタンジェンシャル値0.713、サジタル値0.704、像高3.5mmにおける10lines/mmでのMTFのタンジェンシャル値0.592、サジタル値0.701と、高い分解能が得られている。
【0114】
上記による実施例5の光学系においては、加工コストの抑えられる平面または球面形状をもつ第1レンズ10及び第3レンズ12を作成して光学系のパワーを担当させ、加工が容易なポリエチレンを用いて、非球面形状の第2レンズ11を作成して収差を補正している。
この場合もポリエチレンレンズの使用を1枚に抑え、第2レンズ11の最大光線長については1.48mmに抑えることにより、透過率の低下を抑制している。
さらに焦点距離を14.9mmと短くすることにより、色収差の影響を抑えつつ、波長8〜12μm帯において十分な分解能性能を得ることができている。
【0115】
また実施例5では、第1レンズ10がメニスカスレンズであるが、先の実施例2と同様、平板状の母材(この場合はゲルマニウム)から研磨して凹面側(第2レンズ11と向き合う側)を作成することで、凹面側の外周に平面部分を確保することができる。これにより、前述のスペーサを用いたレンズ間隔の調整を行う場合により好適となる。
【0116】
以上のように実施例5によっても、コストアップを抑えつつ、画角30°近い広画角を図りながら、十分な分解能性能を得ることができる。
【0117】
[2-6.実施例6]

図21は、実施例6としての光学ブロック2の構成を示している。
なお、図21においても、各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)に集光する赤外光の光線を併せて示している。この場合も像高0mm=短破線、像高1.5mm=丸破線、像高3.5mm=実線、像高5.0mm=長破線である。
【0118】
先ず、この場合の各レンズ、開口絞り13、及びカバーガラス14の配置関係は実施例1の場合と同様となる。また、各レンズの構成材料としても先の実施例1の場合と同様である。
【0119】
この場合、第1レンズ10、第3レンズ12は共に正のパワーを有し、第1レンズ10は両面に非球面をもつ物体側に凸となるメニスカス形状レンズとされ、第3レンズ12は物体側に平面、像面側に球面形状をもつ平凸レンズとされる。
また第2レンズ11は、両面とも非球面形状をもち物体側に凸となるメニスカス形状レンズとされ、そのフランジには、先の実施例2と同様に物体側・像面側共に平面が形成される。
【0120】
先の各実施例の場合と同様、第1レンズ10〜第3レンズ12の間に開口絞り13が設けられることで、第1レンズ10又は第3レンズ12の有効径が大きくならないように図られている。
【0121】
またこの場合も、シャッタ(図示は省略)は開口絞り13の位置に配される。このように開口絞り位置にシャッタが配されることで、赤外線検出素子に焦電素子を用いた構成において、光量ムラの発生の防止が図られる。
また、第1レンズ10と第2レンズ11との間に開口絞り13が設けられた上で、開口絞り位置にシャッタが配置された構成とされていることで、樹脂製の第2レンズ11に吸収された熱に起因するS/Nの悪化の防止が図られる。
【0122】
実施例6の場合の各レンズの形状(及び開口絞り13)についての係数及び面間隔を図22に示す。
なお、面番号の定義は実施例1の場合と同様である。
またこの場合、面S0としての物体面は、第1レンズ10から80000mm離れた位置に設定している。
【0123】
ここで、この場合としても、第1レンズ10及び第3レンズ12で用いるシリコンの屈折率、第2レンズ11で用いるポリエチレンの屈折率、焦点距離については実施例1の場合と同様となる。
本実施例の場合、開口絞り13の直径は11.98mmであり、Fナンバー1.06、水平画角については各実施例と同様の30.1°を実現している。
【0124】
図23は、実施例6の光学ブロック2についての各像高(0mm、1.5mm、3.5mm、5.0mm)における分解能特性(MTF)を示している。
なおこの図においても横軸=空間周波数(lines/mm)、縦軸=OTFである。
【0125】
実施例6の光学系では、像高0mmにおける20lines/mmでのMTF値が0.684、像高1.5mmにおける20lines/mmでのMTFのタンジェンシャル値0.710、サジタル値0.713、像高3.5mmにおける10lines/mmでのMTFのタンジェンシャル値0.631、サジタル値0.615と、高い分解能が得られている。
【0126】
上記による実施例6の光学系においても、先の実施例1等と同様に比較的安価な材料であるシリコンを用いて、加工コストの抑えられる平面または球面形状をもつ第1レンズ10及び第3レンズ12を作成して光学系のパワーを担当させ、加工が容易なポリエチレンを用いて、非球面形状の第2レンズ11を作成して収差を補正している。
この場合もポリエチレンレンズの使用を1枚に抑え、第2レンズ11の最大光線長については1.55mmに抑えることにより、透過率の低下を抑制している。
さらに焦点距離を14.9mmと短くすることにより、色収差の影響を抑えつつ、波長8〜12μm帯において十分な分解能性能を得ることができている。
【0127】
また実施例6においても、第1レンズ10がメニスカスレンズとされるが、先の実施例5と同様、平板状のシリコンから研磨して凹面側を作成することで、凹面側の外周に平面部分を確保することができる。これにより、前述のスペーサを用いたレンズ間隔の調整を行う場合により好適となる。
【0128】
以上のように実施例6によっても、コストアップを抑えつつ、画角30°近い広画角を図りながら、十分な分解能性能を得ることができる。
【0129】
<3.変形例>

以上、本技術の赤外線光学系及び赤外線撮像装置の実施の形態について説明したが、本技術としてはこれまでで説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば、各実施例においては、第2レンズ11で用いる樹脂材料としてポリエチレンを例示したが、これに限るものではなく、遠赤外領域での透過率を改善した樹脂材料であれば他の樹脂材料を適用可能である。
具体的に、第2レンズ11として用いる樹脂材料としては、例えば厚さ2.0mmでの透過率(波長8μm〜12μm)が20%以上となるような比較的高透過率の特性によるものを用いればよい。
【0130】
また、第1レンズ10及び第3レンズ12を構成する無機材料として、それぞれに同一の材料を用いる場合を例示したが、それぞれに異なる材料を用いることもできる。
【0131】
また、これまでの説明では赤外線検出素子として焦電素子を備えたイメージセンサ3を用いる場合に対応して、光学系にシャッタを配置する例を挙げたが、例えばボロメータ型等の温度自体に応じた値を出力する素子を用いる場合には、シャッタが省略可能であることは言うまでも無い。
【0132】
また、本技術については以下に示す構成とすることもできる。
(1)
物体側から像面側にかけて配置された第1レンズ、第2レンズ、第3レンズの3枚のレンズで構成され、
前記第1レンズ及び前記第3レンズが、無機材料で構成された正の屈折力を有する球面レンズとされ、
前記第2レンズが、樹脂材料で構成されたメニスカス形状の両面非球面レンズとされると共に、
前記第1レンズから前記第3レンズの間に開口絞りが設けられている
赤外線光学系。
(2)
前記第2レンズは、その内部を透過し結像に寄与する光線の最大光線長が2.0mm以下となるように構成されている
前記(1)に記載の赤外線光学系。
(3)
前記第2レンズはポリエチレンで構成されている前記(1)又は(2)に記載の赤外線光学系。
(4)
前記開口絞り位置にシャッタが設けられている前記(1)〜(3)に記載の赤外線光学系。
(5)
前記開口絞りが前記第1レンズと前記第2レンズとの間に設けられ、且つ前記開口絞り位置にシャッタが設けられている
前記(1)〜(4)に記載の赤外線光学系。
(6)
前記第1レンズ、前記第3レンズは、平凸レンズ又はメニスカス形状レンズとされる前記(1)〜(5)に記載の赤外線光学系。
(7)
前記第1レンズと前記第3レンズが共に平凸レンズとされ、
前記第1レンズの凸面が物体側を向き、前記第3レンズの凸面が像面側を向いている
前記(1)〜(6)に記載の赤外線光学系。
(8)
前記第1レンズと前記第3レンズがシリコンで構成されている前記(1)〜(7)に記載の赤外線光学系。
(9)
前記(1)〜(8)の何れかに記載の赤外線光学系を備えると共に、
前記赤外線光学系により集光された赤外光を検出する赤外線検出部と、
前記赤外線検出部により得られた赤外線検出信号に基づき赤外線撮像画像信号を得る画像信号取得部と
を備える赤外線撮像装置。
【符号の説明】
【0133】
1 赤外線撮像装置、2 光学ブロック、3 イメージセンサ、4 画像信号取得部、5 画像信号処理部、10 第1レンズ、11 第2レンズ、12 第3レンズ、13 開口絞り、14 カバーガラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像面側にかけて配置された第1レンズ、第2レンズ、第3レンズの3枚のレンズで構成され、
前記第1レンズ及び前記第3レンズが、無機材料で構成された正の屈折力を有する球面レンズとされ、
前記第2レンズが、樹脂材料で構成されたメニスカス形状の両面非球面レンズとされると共に、
前記第1レンズから前記第3レンズの間に開口絞りが設けられている
赤外線光学系。
【請求項2】
前記第2レンズは、その内部を透過し結像に寄与する光線の最大光線長が2.0mm以下となるように構成されている
請求項1に記載の赤外線光学系。
【請求項3】
前記第2レンズはポリエチレンで構成されている請求項1に記載の赤外線光学系。
【請求項4】
前記開口絞り位置にシャッタが設けられている請求項1に記載の赤外線光学系。
【請求項5】
前記開口絞りが前記第1レンズと前記第2レンズとの間に設けられ、且つ前記開口絞り位置にシャッタが設けられている
請求項1に記載の赤外線光学系。
【請求項6】
前記第1レンズ、前記第3レンズは、平凸レンズ又はメニスカス形状レンズとされる請求項1に記載の赤外線光学系。
【請求項7】
前記第1レンズと前記第3レンズが共に平凸レンズとされ、
前記第1レンズの凸面が物体側を向き、前記第3レンズの凸面が像面側を向いている
請求項1に記載の赤外線光学系。
【請求項8】
前記第1レンズと前記第3レンズがシリコンで構成されている請求項1に記載の赤外線光学系。
【請求項9】
物体側から像面側にかけて配置された第1レンズ、第2レンズ、第3レンズの3枚のレンズで構成され、前記第1レンズ及び前記第3レンズが、無機材料で構成された正の屈折力を有する球面レンズとされ、前記第2レンズが、樹脂材料で構成されたメニスカス形状の両面非球面レンズとされると共に、前記第1レンズから前記第3レンズの間に開口絞りが設けられている赤外線光学系と、
前記赤外線光学系により集光された赤外光を検出する赤外線検出部と、
前記赤外線検出部により得られた赤外線検出信号に基づき赤外線撮像画像信号を得る画像信号取得部と
を備える赤外線撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2013−80130(P2013−80130A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220408(P2011−220408)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】