説明

赤外線検出装置

【課題】被検知体から放射される赤外線を精度良く感度良く検出する赤外線検出装置を提供すること。
【解決手段】外部端子と導体回路パターンが形成されたプリント配線板と、該プリント配線板の前記導体回路パターンに接続された赤外線センサと、被検知体から放射された赤外線を前記赤外線センサの受光窓面に入射させる導光部とを備えたホルダとからなり、前記ホルダがセラミック粉末を混合した樹脂で成形されていることを特徴とする赤外線検出装置によって解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤外線検出装置に関し、特に冷凍冷蔵庫に備えられた製氷器や電磁調理器の温度検知に用いられる赤外線検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍冷蔵庫に備えられた製氷装置の一例としては、例えば特開平2−146481号公報等に開示された構造のものがある。この例では、冷凍室に設けられた製氷コーナ内に製氷皿の真上になるように配設された赤外線センサと、この赤外線センサを保持する円筒ホルダと、円筒ホルダを固定した冷凍室天井と、赤外線センサからの電気信号を処理する製氷検知回路が用意された製氷装置が公知である。
【0003】
このような製氷装置においては、製氷皿の中の水が持つ熱エネルギを赤外線の放射量として赤外線センサが検知する。この赤外線センサが検知した赤外線の放射量の検知結果は電気信号として送出され電気信号の処理回路で処理され、判定比較回路によって製氷が完了したか否かが判定され、製氷が完了した場合には、表示回路によって完了を表示するようになっている。
【特許文献1】特開平2−146481号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来例に示したような製氷装置では、冷凍室天井に固定された円筒ホルダ内に赤外線センサが設置された構造であり、赤外線センサが円筒ホルダ内に正確に位置決めされていないために、視野角にバラツキが生じ製氷皿内の水の温度を正確に検知することができない欠点があった。
【0005】
また上記従来例には明記されていないが、円筒ホルダとして金属製のホルダを使用した場合、赤外線センサが製氷判定回路に接続されている関係で、電気的な絶縁性を保持しなければならないことが家電製品の関連法令で規制されているために、円筒ホルダに絶縁を施さなければならず、これによる作業効率の低下や検知精度が低下する欠点があった。
【0006】
また、円筒ホルダを樹脂製とした場合には、円筒ホルダの熱伝導性が金属製に比べて悪いために周囲雰囲気の変化に追従できなくなり、温度測定結果に誤差が生じる欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を達成するためになされたものであり、請求項1の発明は、外部出力用端子と導体回路パターンが形成されたプリント配線板と、該プリント配線板の前記導体回路パターンに接続された赤外線センサと、被検知体から放射された赤外線を前記赤外線センサの受光窓面に入射させる導光部とを備えたホルダとからなり、前記ホルダがセラミック粉末を混合した樹脂で成形されていることを特徴とする赤外線検出装置である。
【0008】
また、請求項2の発明は、前記セラミック粉末としてアルミナ粉末、マグネシア粉末あるいは窒化アルミニウム粉末の何れか一種を前記ホルダを構成する樹脂に混合したことを特徴とする請求項1に記載の赤外線検出装置である。
【0009】
また、請求項3の発明は、前記表面を酸化処理した金属粉末としてアルミ粉末、銅粉末、マグネシウム粉末の何れか一種を前記ホルダを構成する樹脂に混合したことを特徴とする請求項1に記載の赤外線検出装置である。
【0010】
また、請求項4の発明は、前記赤外線センサが、前記プリント配線板と熱絶縁するように取り付けたことを特徴とする請求項1乃至3に記載の赤外線検出装置である。
【0011】
また、請求項5の発明は、前記赤外線センサと前記プリント配線板との間に断熱材を介して熱絶縁することを特徴とする請求項1乃至4に記載の赤外線検出装置である。
【0012】
また、請求項6の発明は、前記ホルダの前記導光部の表面を金型や化学的処理によって形成されたしぼ加工することを特徴とする請求項1乃至5に記載の赤外線検出装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の赤外線検出装置は、外部端子と導体回路パターンとを備えたプリント配線板と、赤外線センサと、この赤外線センサの受光窓面に同軸に位置決めして被検知体から放射された赤外線を入射させる導光部を備えたホルダが一体化されて組み立てられているために、製氷器への組み込みが簡単であるとともに、前記プリント配線板上に赤外線検知回路等、その目的に合った回路部品を搭載することによって、さらに家電製品への組み入れが容易になる。
【0014】
また、視野角を調整するための導光部を有するホルダに使用する樹脂として、電気的な絶縁性を維持しながら、熱伝導性の良好なセラミック粉末を分散させた材料を使用することによって、赤外線検出装置としての性能を低下させることなく家電製品に関する各種法令で求められる絶縁性能を満足させることができる。
【0015】
さらに、プリント配線板上に取り付けた赤外線センサのステム部分を前記プリント配線板から離して取り付けるか、プリント配線板と赤外線センサのステム間にスポンジや発泡スチロール等の断熱材を介することによって、プリント配線板と赤外線センサとを熱的に絶縁し、プリント配線板の温度変化の影響を赤外線センサに及ぼさないようにして、正確な温度検知を可能にした。
【0016】
また、被検知体から放射された赤外線を入射させる導光部を備えたホルダの表面を金型や公知の化学的処理によってしぼ加工することによって、温度検知しようとする被検知体以外の部分から入射する赤外線を適切に制限することができるので被検知体から放射される赤外線の温度を正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に関して添付図面に基づき説明する。図1は本実施形態を示す赤外線検出装置の概観斜視図、図2は図1のX−Yで切断される断面図である。図1および図2において、Sは赤外線検出装置、21は赤外線を透過させる受光窓21aを備えたサーモパイル等からなる赤外線センサ、22は赤外線センサ21を取り付けるためのプリント配線板、23は赤外線センサ21を保持し、被検知体から放射された赤外線を入射させる導光部23bを備えたホルダである。赤外線センサ21の引出線21bは、プリント配線板22にはんだ付などの方法で接続されプリント配線板22の外部端子22aに電気的に接続されている。ホルダ23は、センサ保持部23aに赤外線センサ21を嵌合することにより、位置決めされ導光部23bと受光窓21aが同軸に配置する構造となっている。ホルダとプリント配線板は接着剤などによって固定される。
【0018】
赤外線センサ21は、シリコン基板上に形成された多数の熱電対で構成されたサーモパイルからなり、前記シリコン基板はステム21c上に接着剤などにより固定され、受光窓21aに赤外線透過フィルタが取り付けられたキャップにより封止されている。さらに、赤外線センサ21は、プリント配線板の温度変化の影響を直接受けないようにプリント配線板22から離されて設置されているが、この空間にスポンジや発泡スチロール等の断熱材を配設することによっても同様の効果を得ることができる。
【0019】
前記プリント配線板22上に設置した赤外線センサ21を覆うように固定されたホルダ23は、樹脂成形体で形成されており、センサ保持部23aに嵌合された赤外線センサ21の受光窓面21aの直径に一致するか、やや小さめの径を有する導光部23bが形成されている。前記樹脂成形体は、PPSや液晶ポリマーなどの樹脂を用い、これに熱伝導性に優れ、電気的絶縁性の良好なアルミナ粉末、マグネシア粉末あるいは窒化アルミニウム粉末などのセラミック粉末を分散させた成型体である。樹脂と添加するセラミック粉末の比率は、重量比で約2:8〜3:7である。このように熱伝導性の良好なセラミック粉末を分散させた樹脂を用いて成型されたホルダ23は、熱伝導性が良好であり、例えば、アルミニウム製ホルダの熱伝導率を1とした場合、0.8程度の熱伝導率を持ち、絶縁性能についても、500ボルト絶縁抵抗計で測定した絶縁抵抗は1メグオーム以上あり、家電製品に関する各種法令で求められる絶縁性能を満足させることができる。なお、表面を酸化処理した金属粉末としてアルミ粉末、銅粉末、マグネシウム粉末などを樹脂に混合しても良く、電気絶縁性が保たれ、さらに熱伝導率が向上し検出感度が向上する。
【0020】
なお、導光部23bの形状は、被検知体の大きさや形状、被検知体までの距離等の諸条件を考慮して適切な形状に設計される。このように適切な形状とすることによって、被検知体から放射される赤外線の集光が良好となり、検出感度を高めることができる。
【0021】
また、導光部23bの表面は、しぼ加工することによって、被検知体以外の部分から入射する赤外線を適切に制限することができるので被検知体から放射される赤外線の温度を正確に測定することができる。
【0022】
また図示していないが、プリント配線板上に形成された導体回路パターンには、赤外線検知回路、判定回路等、赤外線検出装置の目的に合った回路パターンを形成して必要な回路部品を搭載し赤外線検出回路を形成することができる。
【0023】
次に本発明の赤外線検出装置を冷凍庫の製氷検知装置に使用した例について説明する。図3は本発明赤外線検出装置の一実施形態を示す冷凍庫内の製氷検知装置の要部断面図を示す。
【0024】
図3において、11は冷凍庫内の製氷室の一部を示し、Sは本発明の赤外線検出装置、12はファングリル、13は製氷皿、14は水、15は冷凍庫の扉、16は断熱材である。同図において、製氷室内11のファングリル12から庫内に冷気が吹き出し、製氷皿13の中の水14が冷却される。製氷室内11の天井部分には断熱材16が配設されており、製氷皿13の上方の断熱材16内に、本発明の赤外線検出装置Sが配置されている。赤外線センサ21を覆うホルダ23の導光部23bをとおして、赤外線センサ21の受光窓面21aに入射する製氷皿内の水から放射される赤外線は、導光部23bによって規制される視野角が約50度になるように設定されている。この視野角は製氷皿の領域を十分にカバーできるために、製氷皿以外の部分の温度を検知することが無く製氷皿内の水の温度を正確に検知することができる。赤外線センサ21は、製氷皿内の水が冷却されて氷に変化するときの熱エネルギの変化を捕らえて、プリント配線板上に形成された回路で製氷完了を判定して冷凍庫の冷却動作を終了させ製氷完了の表示を行うことができる。
【0025】
図4は本発明赤外線検出装置の他の実施形態を示す電磁調理器あるいはIH炊飯器の要部断面図を示す。図4(a)は、電磁調理器に本発明の赤外線検出装置を取り付けた状態を示す実施例である。Sは赤外線検出装置、31は加熱コイル、33は赤外線透過ガラスからなる天板、34は調理鍋である。加熱コイル31から発生される誘導磁界によって誘導加熱された調理鍋34によって調理物が加熱調理されるものである。赤外線検出装置Sは、天板33の下方に配置されており、調理鍋の底から放出される赤外線を天板を透過して検知するように配置されている。赤外線センサ21を覆うホルダ23に設けられた導光部23bを通して、赤外線センサ21の受光窓面21aに入射する調理鍋34の底部から放射される赤外線は、導光部23bによって規制される視野角が約50度になるように設定されている。この視野角は調理鍋34の底部の検知領域を十分にカバーできるために、調理鍋34の底部以外の部分の温度を検知することがなく調理鍋を通して調理物の温度を正確に検知することができる。赤外線センサ21は、調理鍋34の底部から放射される赤外線の変化を捕らえて、プリント配線板上に形成された調理判定回路で調理完了を判定して電磁調理器の加熱動作を終了させ調理完了の表示を行うことができる。
【0026】
図4(b)は、IH炊飯器に本発明の赤外線検出装置を取り付けた状態を示す実施例である。Sは赤外線検出装置、41は加熱コイル、43は底部に赤外線透過性フィルタ42を設置した外釜、44は内釜である。加熱コイル41から発生される誘導磁界によって誘導加熱された内釜44によって調理物が加熱調理されるものである。赤外線検出装置Sは、外釜43の赤外線透過フィルタ42が設置された下方に配置されており、内釜44の底部から放出される赤外線を赤外線透過フィルタ42を通して検知するように配置されている。赤外線センサ21を覆うホルダ23に設けられた導光部23bを通して、赤外線センサ21の受光窓面21aに入射する内釜44の底部から放射される赤外線は、導光部23bによって規制される視野角が約50度になるように設定されている。この視野角は内釜44の底部の検知領域を十分にカバーできるために、内釜44の底部以外の部分の温度を検知することがなく内釜を通して調理物の温度を正確に検知することができる。赤外線センサ21は、内釜44の底部から放射される赤外線の変化を捕らえて、赤外線検出装置Sのプリント配線板上に形成された調理判定回路で調理完了を判定してIH炊飯器の加熱動作を終了させ調理完了の表示を行うことができる。電磁調理器およびIH炊飯器は誘導磁界中に赤外線検出装置が配置されるために赤外線センサが誘導磁界の影響を受ける場合があるので、ホルダに電磁シールドを施すとよい。
【0027】
なお、上述したように、冷凍庫内の製氷器、電磁調理器あるいはIH炊飯器に本発明の赤外線検出装置を使用する例を開示したが、これに限定されるものではなく、電子レンジの調理物の温度検知、複写機などの加熱定着装置の温度検知等に利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態を示す赤外線検出装置の概観斜視図である。
【図2】本発明の実施形態を示す赤外線検出装置の断面図である。
【図3】本発明の実施形態を示す赤外線検出装置を冷凍庫内に実装した状態図である。
【図4】本発明の実施形態を示す赤外線検出装置をIH調理器と炊飯器に実装した状態図である。
【符号の説明】
【0029】
S 赤外線検出装置
21 赤外線センサ
21a 受光窓面
22 プリント配線板
23 ホルダ
23a センサ保持部
23b 導光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部端子と導体回路パターンが形成されたプリント配線板と、該プリント配線板の前記導体回路パターンに接続された赤外線センサと、被検知体から放射された赤外線を前記赤外線センサの受光窓面に入射させる導光部とを備えたホルダとからなり、前記ホルダがセラミック粉末、若しくは表面を酸化処理した金属粉末を混合した樹脂で成形されていることを特徴とする赤外線検出装置。
【請求項2】
前記セラミック粉末としてアルミナ粉末、マグネシア粉末あるいは窒化アルミニウム粉末の何れか一種を前記ホルダを構成する樹脂に混合したことを特徴とする請求項1に記載の赤外線検出装置。
【請求項3】
前記表面を酸化処理した金属粉末としてアルミ粉末、銅粉末、マグネシウム粉末の何れか一種を前記ホルダを構成する樹脂に混合したことを特徴とする請求項1に記載の赤外線検出装置。
【請求項4】
前記赤外線センサが、前記プリント配線板と熱絶縁するように取り付けたことを特徴とする請求項1乃至3に記載の赤外線検出装置。
【請求項5】
前記赤外線センサと前記プリント配線板との間に断熱材を介して熱絶縁することを特徴とする請求項1乃至4に記載の赤外線検出装置。
【請求項6】
前記ホルダの前記導光部の表面を金型や化学的処理によって形成されたしぼ加工することを特徴とする請求項1乃至5に記載の赤外線検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−308504(P2006−308504A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−133797(P2005−133797)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(390024729)石塚電子株式会社 (26)
【Fターム(参考)】