説明

赤外線異常検知装置

【課題】装置自身が単純な引き算処理のみで複雑な演算処理装置を必要とせず、低価格で信頼性の高い監視を行うことができる赤外線異常検知装置を提供することを目的とする。
【解決手段】2次元に配置された多素子の赤外線検出素子アレイを持ち、異常と判断していない間、ある間隔で更新される各素子から読み出した赤外線出力を背景データとして記憶しておく記憶装置と、随時出力される赤外線検知アレイからの出力からメモリに記憶した背景データの引き算をする演算装置を持ち、引き算をした結果を差分データとして出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線を利用した検知装置に関し、必要最低限システムにおいて低価格な装置にて確実に異常を検知することができる赤外線異常検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の赤外線を利用した浸入者等の異常を検知する異常検知装置として例えば焦電型赤外線センサを利用し、監視領域に異常が発生した場合、発生する熱変化を焦電型赤外線センサにより検知する異常検知装置が市場で広く使用されている。
【0003】
より信頼性を上げる目的で、特開2000−76521号公報に公開されているように焦電型赤外センサと光学式カメラを併用し異常検知装置として焦電型赤外線センサで赤外線を放出する人間等の侵入者等の異常を検知したときに可視カメラを動作させ、録画する異常検知装置が知られている。
【0004】
さらに、特開平10−336630号公報に公開されている様な赤外線カメラを用いて監視領域の熱画像を監視する異常検知装置も知られている。
また、特開平7−37064号公報に開示されているように、監視カメラより時間差をおいて入力した2枚の画像の差を演算処理しその差画像を画像処理することによって異常を判断する異常検知装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−76521号
【特許文献2】特開平10−336630号
【特許文献3】特開平7−37064号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の技術いずれをとっても、可視であろうが赤外であろうが、カメラからの画像データをリアルタイムで複雑な演算処理を行う必要がありカメラ1台に対し別途専用の高機能で高速な演算処理装置を必要とし非常に高価な装置となってしまっていた。また、広い範囲を監視するためには多くの装置を設置した監視システムを構築する必要がありよりコストがかかってしまう問題があった。
【0007】
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたものであり、本装置自身が単純な引き算処理のみで複雑な演算処理装置を必要とせず、低価格で信頼性の高い監視を行うことができる赤外線異常検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明に係わる異常検知装置は、2次元に配置された多素子の赤外線検出素子アレイを持ち、異常と判断していない間、ある間隔で更新される各素子から読み出した赤外線出力を背景データとして記憶しておく記憶装置と、随時出力される赤外線検知アレイからの出力からメモリに記憶した背景データの引き算をする演算装置を持ち、引き算をした結果を差分データとして出力し、引き算をした結果が設定された閾値を超えたとき異常と検知し、異常信号を発生するものである。
【0009】
請求項2の発明にかかわる赤外線異常検知装置において、背景データ更新のために赤外線検知アレイの出力を読み込む間隔は、異常を検知する対象物によって可変できるものである。
【0010】
請求項3の発明に係わる赤外線異常検知装置において、異常検知時、センサ素子全面をシャッターでマスクし、背景データとして記憶、その後シャッターをオープンにし、赤外線センサ素子の出力を随時読み込んでいく赤外線検知素子アレイの出力から背景データを引き算し、異常時の赤外線画像を得ることができるものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、異常と判断されていない時の背景データを記憶し、随時読み込む赤外線出力から引き算をするため、監視エリア内で発生する赤外線に変化がない場合、差分出力データは0しか出力されない。しかし、監視エリア内に人体等の赤外線を発する者が浸入した場合、または、監視エリア内で火災等が発生した場合、赤外線信号に大きな差分が発生し、その差分データが出力され、その差が閾値を超えた場合異常と検知し異常検知信号を出力するため、赤外線検知素子アレイと簡単な演算処理装置のみで低価格な異常検知装置を構成することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、正常時、随時背景データとして読み込むタイミングは検知する対象物、背景の条件によって、たとえば、緩やかな温度変化異常を検知する場合は間隔を長くすることにより失報を、浸入者などの異常を検知する場合は間隔を短くすることによって、背景温度の緩やかな変化による誤報を防ぐことができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、異常を検知したときシャッターを閉じ、背景データとして赤外線検知素子アレイからの出力データを読み込み、シャッターオープン後の赤外線検知素子アレイからの出力データから引き算をおこなえば、シャッター面の温度分布は一定で温度差は無いため、引き算した値は監視エリア内の温度の差を表す背景画像も含めた詳細赤外線画像となる。その画像データの画像処理を行うことにより、より信頼性の高いシステムを構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係わる赤外線異常検知装置の概略構成を示す図。
【図2】警戒時の差分データ出力部からの出力データを画像化したものである。
【図3】異常検知時の差分データ出力部からの出力データを画像化したものである。
【図4】異常検知時の差分データ出力部からの詳細出力データを画像化したものである。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
実施の形態1、以下、本発明の実施の形態1を図に基づいて説明する。図1は本発明の実施の形態に係わる赤外線異常検知装置の構成図である。図1において、赤外線を検出する2次元の赤外線検出素子アレイ10、赤外線検出素子アレイ10から読み込んだ背景データを記憶するメモリ11、随時読み込んだ赤外線検出素子アレイからの出力から記憶した値を引き算し閾値を超えているかどうか判断する演算処理部12と、その結果、設定された閾値を超えた場合異常検知信号を出力する異常検知出力部分13、背景データとの差分データ出力部14、赤外線検出素子アレイ10の全面をマスクするシャッター及びコントロール部15を持つ赤外線異常検知装置である。
【0016】
次に、本発明の赤外線異常検知装置の実施形態を説明する。まず、本発明の赤外線異常検知装置に異常監視命令が入力されると、背景データとして赤外線検知素子アレイ10からの各出力を読み込みメモリ11に記憶する。次に、随時読み込まれていく赤外線検知素子アレイ10の各出力から各赤外線素子アレイに対応する記憶したデータを演算処理部12で引き算し、差分データを画像出力部14より出力する。異常監視命令が入力された直後であれば、引き算した結果は0となり、画像出力部14から出力される差分データも0となる。図2はこの差分データを画像化したものであるが差分が0であるため何も表示されない。その後、監視エリア内で人体等の侵入者、火災等で発生する赤外線に変化があれば、赤外線検知素子アレイ内の人体、火災を検知した部分の引き算した結果は0とはならないで差分が発生する。この差分が演算処理部12に設定されている閾値を超えた場合異常と判断して異常検知出力部13は異常信号を出力すると同時に、差分データ出力部出力部14より差分データが出力される。図3はこのときの差分データを画像化したものであるが、検知した人体のみが差分として表示される。
【0017】
しかし、監視命令が入力されてから時間がたつと、監視エリア内の温度変化、赤外線検知素子アレイ10の温度ドリフトにより、異常ではなくても最初取り込みメモリ12に記憶する背景データと随時得られる赤外線検知素子アレイ10の各出力データに差が発生し、演算処理部12で引き算した結果は0にならなくなる。背景温度の変化により発生した差が閾値を超えてしまうと誤検知となる為、差が閾値を超えることがなく異常と判断していない間にメモリ11に記憶する背景データを随時更新してやる必要があり、この時の更新間隔は検知対象によって決定される。例えば浸入者を異常として検知する場合、更新間隔は数秒以内とすることで、この間で背景温度が環境変化により変化してもごくわずかであり、わずかな背景温度の変化内で更新することが出来、結果、誤検知を起こすことはない。また、火災等の異常を検知する場合、少しずつ温度が上昇していく場合も想定され更新間隔を数分以上とする必要があり、環境温度変化と時間的に重なってしまう。しかし、対象赤外線エネルギーが環境温度では数十度の範囲に対し、火災等では数百度となる為、閾値の幅を大きく設定することができ、環境温度変化での差分の発生では閾値を超えることはない。
【0018】
以上、本発明の赤外線異常検知装置であれば、単体でも監視可能であり、赤外線異常検知装置数十台と異常検知時赤外線異常検知装置から出力される赤外線画像データを読み込み画像処理、高度な判定を行うことが出来る演算処理装置1台とネットワークを組むことにより、安価でより信頼性の高い監視システムを構築することが可能となる。
【符号の説明】
【0019】
10 赤外線検知素子アレイ
11 記憶メモリ
12 演算処理部
13 検知信号出力部
14 差分データ出力部
15 シャッター及びコントロール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元に配置された多素子の赤外線検出素子アレイを持ち、異常と判断していない間、ある間隔で赤外線検知素子アレイから読み出した赤外線出力を背景データとして記憶するメモリを持ち、記憶した後随時読み込んでいく赤外線検知素子アレイからの出力からメモリしたデータを引き算する演算装置を持ち、引き算をしたデータを出力し、引き算した結果が設定された閾値を超えたとき異常と検知し、異常信号を発生することを特徴とする赤外線異常検知器。
【請求項2】
背景データ更新のための赤外線検知素子アレイの出力を読み込む間隔は、異常を検知する対象物によって可変であることを特徴とする赤外線異常検知器。
【請求項3】
異常を検知したとき、赤外線検知素子アレイ全面を一定の表面温度を持つシャッターでマスクし、マスクしたときの赤外線検知素子アレイの出力を記憶し、シャッターオープン後随時読み込んでいく赤外線出力から引き算した結果を差分データとして出力することを特徴とした赤外線異常検知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−262422(P2010−262422A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111691(P2009−111691)
【出願日】平成21年5月1日(2009.5.1)
【出願人】(000229081)日本セラミック株式会社 (129)
【Fターム(参考)】