説明

走査ファイバ装置における歪みの低減

走査ファイバ装置における歪みを低減する方法を開示する。1つの態様では、方法が、走査ファイバ装置(130)の片持ち式光ファイバ(134)を透過する光の強度を変化させるステップを含む。この方法はまた、光の強度の変化に少なくとも部分的に基づいて走査ファイバ装置のための設定点温度を変更するステップも含む。その他の方法、装置、システム、及び機械可読媒体も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、走査ファイバ装置に関する。詳細には、本発明の実施形態は、走査ファイバ装置を透過する光の強度の変化に少なくとも部分的に基づいて走査ファイバ装置の設定点温度を変更することにより走査ファイバ装置における画像歪みを低減することに関する。
【背景技術】
【0002】
当業では走査ファイバ装置がよく知られている。走査ファイバ装置は、走査パターンにおいて1次元又は2次元で振動及び走査して目標領域の画像を取得することができる単一の片持ち式光ファイバを含むことができる。
【0003】
目標領域の画像を取得する際に、走査ファイバ装置は、光学レンズ系を通して、及び走査パターン内の目標領域にわたって照射スポットを走査することができる。例えば光センサにより、後方散乱光を時系列で捕捉することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第20060072843号
【特許文献2】米国特許出願公開第20060138238号
【特許文献3】米国特許第7,159,782号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像を取得する際には、一般に1つ1つの走査点に関して光ファイバの位置を正確に知ることが望ましい。位置が不正確であると、取得した画像に歪みが生じる傾向となり得る。
【0006】
本発明の実施形態を示すために用いる以下の説明及び添付図面を参照することにより、本発明を最も良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態による例示的な走査ファイバシステムのブロック図である。
【図2】本発明の実施形態による走査ファイバ装置の特定例の断面側面図である。
【図3】第1の共振モードで動作する片持ち式光ファイバの例示的な共振ゲイン特性のグラフである。
【図4】本発明の実施形態による、走査ファイバ装置の片持ち式光ファイバを透過する光の強度の変化に少なくとも部分的に基づいて走査ファイバ装置の設定点温度を変更することにより、走査ファイバ装置を使用して取得される画像内の歪みを低減する方法のブロックフロー図である。
【図5】本発明の1又はそれ以上の実施形態による、所定の関係を使用して設定点温度の変更を決定できることを示すグラフである。
【図6】本発明の実施形態による走査ファイバ装置を較正する方法のブロックフロー図である。
【図7】本発明の実施形態による、所定の光の強度に対して設定点温度を決定する方法の詳細例のブロックフロー図である。
【図8】本発明の実施形態による、走査ファイバ画像取得システムのためのベースステーションのブロック図である。
【図9】本発明の実施形態を機械に行わせるための命令を記憶した機械可読媒体を含む製造の物品のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明では、数多くの特定の詳細を記載する。しかしながら、これらの特定の詳細を伴わずに本発明の実施形態を実施できることを理解されたい。その他の場合、本説明の理解をあいまいにしないように、公知の回路、構造、及び技術については詳細に示していない。
【0009】
図1は、本発明の実施形態による例示的な走査ファイバシステム100のブロック図である。本発明の様々な実施形態では、走査ファイバシステムは、走査ファイバ内視鏡、走査ファイバボロスコープ、走査ファイバ顕微鏡、その他の種類の走査ファイバスコープ、走査ファイババーコードリーダ、或いは当業で公知のその他の走査ファイバ画像取得装置の形をとることができる。
【0010】
周知のように、内視鏡とは、患者の体内に挿入して体腔、管腔内部の画像を取得し、或いは別様に患者の内部を調べるための機器又は装置のことを表す。ほんのいくつか例を挙げれば、以下に限定されるわけではないが、適当な種類の内視鏡の例として、気管支鏡、大腸鏡、胃鏡、十二指腸鏡、S字結腸鏡、胸腔鏡、尿管鏡、上顎洞鏡、ボロスコープ、及び胸腔鏡が挙げられる。
【0011】
走査ファイバシステムは、ベースステーション102と走査ファイバ装置130とを含む2つの部分に分かれた形成要素を有するが、このような2つの部分に分かれた形成要素は必須ではない。走査ファイバ装置は、1又はそれ以上のケーブル118を介してベースステーションと電気的及び光学的に結合される。詳細には、走査ファイバ装置は、ベースステーションの対応するコネクタインターフェイス114に接続、嵌合、又は別様に結合されるコネクタ116を含む。コネクタインターフェイスを介して、ベースステーションと走査ファイバ装置との間で電気及び光信号を交換することができる。本発明の範囲は、いずれの特定の種類のコネクタ又はコネクタインターフェイスにも限定されるものではない。
【0012】
以下の説明及び特許請求の範囲では、「結合された」及び「接続された」という用語をこれらの派生語とともに使用することがある。これらの用語は、互いに同意語として意図されるものではないことを理解すべきである。より正確に言えば、特定の実施形態では、「接続された」は、2又はそれ以上の要素が互いに直接的に物理的又は電気的な接触状態にあることを示すために使用することができる。「結合された」は、2又はそれ以上の要素が直接的に物理的又は電気的な接触状態にあることを意味することができる。しかしながら、「結合された」は、2又はそれ以上の要素が互いに直接的な接触状態にはないが、なおも互いに協動又は相互作用することを意味することもできる。
【0013】
ベースステーションは1又はそれ以上の光源104を含む。この1又はそれ以上の光源は、コネクタインターフェイス及び光路122を介して走査ファイバ装置に光を提供することができる。適当な光源の例として、以下に限定されるわけではないが、レーザ、レーザダイオード、垂直空洞表面放射レーザ(VCSEL)、発光ダイオード(LED)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。本発明の様々な実施形態例では、1又はそれ以上の光源として、赤色光源、青色光源、緑色光源、赤色−緑色−青色(RGB)光源、白色光源、赤外光源、紫外光源、高強度治療用レーザ光源、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。特定の実施構成に応じて、1又はそれ以上の光源は、連続する光の流れ、変調光、又は光パルスの流れを放射することができる。以下でさらに説明するように、本発明の実施形態では、1又はそれ以上の光源から走査ファイバ装置に異なる光の強度を提供することができる。
【0014】
ベースステーションはまた、アクチュエータドライバ106も含む。アクチュエータドライバ106は、電圧、又は本明細書ではアクチュエータ駆動信号と呼ぶその他の電気信号を、コネクタインターフェイス及び1又はそれ以上のアクチュエータ駆動信号経路120を介して走査ファイバ装置に提供することができる。一例として、本発明の1又はそれ以上の実施形態では、アクチュエータドライバは、アクチュエータ駆動信号値を供給することができる、メモリに記憶された1又はそれ以上の参照テーブル又はその他のデータ構造を含むことができる。このアクチュエータ駆動信号値は、例えばRichard S.Johnstonによる「画像内の歪みを低減するための再マッピング法」という名称の米国特許出願第20060072843号に記載されるように、較正に基づいて調節できる可能性がある。別の例として、アクチュエータドライバは、コンピュータ、プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、又はアクチュエータ駆動信号値をリアルタイムで生成するためのその他の回路を含むことができる。これらの値はデジタルであってもよく、この値をアクチュエータドライバのデジタル−アナログ変換器に供給することができる。アクチュエータドライバの1又はそれ以上の増幅器が、アナログバージョンのアクチュエータ駆動信号を増幅することができる。これらは、適当なアクチュエータドライバのほんのいくつかの具体例に過ぎない。
【0015】
走査ファイバ装置130は、単一の光ファイバの片持ち状の自由端部134及び圧電アクチュエータ132を含む。アクチュエータは、ベースステーションからアクチュエータ駆動信号を受け取ることができる。アクチュエータは、受け取ったアクチュエータ駆動信号に基づき、及びこれに応答して片持ち式光ファイバを振動させ、動かし、或いは別様に作動させることができる。本発明の実施形態では、アクチュエータ駆動信号により、アクチュエータが片持ち式光ファイバを2次元走査パターンで動かすようにすることができる。適当な2次元走査パターンの例として、以下に限定されるわけではないが、渦巻き走査パターン、プロペラ走査パターン、リサージュ走査パターン、円形走査パターン、楕円形走査パターン、ラスター走査パターンなどが挙げられる。
【0016】
片持ち式光ファイバは、1又はそれ以上の光源から光を受光することができる。光ファイバが走査されている間に片持ち式光ファイバの遠位端すなわち先端136から光を放射することができる。この放射光を1又はそれ以上のレンズ138を通過させて、走査中の面144を横切って動かすことができる収束ビーム又は照明スポットを生成することができる。例図には渦巻き走査パターンを示しており、点は特定の時点における照明スポットの位置を示している。
【0017】
走査ファイバシステムを使用して、表面の画像を取得することができる。表面の画像を取得する際には、走査ファイバ装置が、レンズ系を通じて走査中の面全体にわたって照明スポットを走査することができる。走査中の異なる時点において面からの後方散乱光を取り込み、これを使用して画像を構築することができる。
【0018】
後方散乱光を捕捉又は収集する様々な方法が考えられる。後方散乱光を集光し、ベースステーションの1又はそれ以上の任意の光検出器110に逆搬送するために、1又はそれ以上の光ファイバ又はその他の後方散乱光路124を任意に含むことができる。或いは、走査ファイバ装置が、その遠位端近くに任意に光検出器を含むことができる。図示のように、光検出器によって検出された光に基づいて画像を生成するために、ベースステーションは任意の画像処理及び表示システム112を含むことができる。ベースステーションにディスプレイを含め、或いはこれをベースステーションに外部接続することができる。
【0019】
画像を構成する際には、一般に1つ1つの走査点に関して片持ち式光ファイバ及び/又は照射ビームの位置を正確に知ることが望ましい。位置が不正確であると、構成した画像に歪みが生じる傾向となり得る。片持ち式光ファイバの走査に使用するアクチュエータ駆動信号を知ることにより、走査パターン中に個々のピクセルポイントごとに照射スポットの位置を推定できるようになる。
【0020】
しかしながら、実際には、環境変数、製造変数、共振周波数付近における走査ファイバ装置の感度、及び/又はその他の要因により、このような推定の精度が制限される傾向となり得る。必要であれば、Johnston他による米国特許出願公開第20060138238号に記載されているような較正及び再マッピングを行って、このような要因のいくつかに起因する画像の歪みを低減する役に立てることができる。しかしながら、一般にこの較正及び再マッピング方法は、考えられる環境変数の変化にもかかわらず全く歪みのない画像を生み出すということはない。
【0021】
温度は、走査ファイバ装置の動作に影響を及ぼす可能性がある1つの環境変数である。これについて考慮しなければ、温度変化が片持ち式光ファイバ及び/又は照射ビームの位置の不正確さを増大させる傾向となる可能性がある。限定的な意味ではないが、このことは、片持ち式光ファイバの特性に対する温度変化の影響及び/又は片持ち式光ファイバの動きに関連する材料の特性に対する温度変化の影響に少なくとも部分的に起因する可能性がある。このような位置の不正確さは、走査ビーム装置を使用して取得する画像に歪みを加える傾向となる可能性があり、一般に望ましくない。従って、本発明の実施形態では、走査ファイバ装置内部の温度を調節することができる。Johnston他による、__年__月__日に出願された米国特許出願第_______号は、走査ビーム装置内の温度調節を開示している。
【0022】
再び図1を参照すると、走査型ビーム装置が任意のセンサ装置140を含む。センサ装置は、走査ファイバ装置のハウジング内に内包される。このセンサ装置は、ハウジング内の状態を感知又は測定することができる。通常、センサ装置は、例えば、熱電対、抵抗性温度装置(RTD)、又はサーミスタなどの温度センサを含むことができる。
【0023】
センサ装置は、ベースステーションの温度コントローラ108に電気的に結合される。温度コントローラ108は、走査ファイバ装置のための設定点温度109を有する。センサ装置は、感知した状態を温度コントローラに提供することができる。温度コントローラは、この感知した状態及び設定点温度を使用して走査ファイバ装置内部の温度を制御することができる。温度コントローラは、走査ファイバ装置の温度調節装置142と電気的に結合され、又は別様に連通する。温度コントローラは、インターフェイスを介して1又はそれ以上の温度制御信号を温度調節装置に提供することができる。
【0024】
通常、温度調節装置は、例えば電気抵抗ヒータなどのヒータを含むことができる。適当な電気抵抗ヒータの例として、以下に限定されるわけではないが、コイル抵抗ヒータ、薄膜抵抗ヒータ、カートリッジ抵抗ヒータ、正の温度係数(PCT)抵抗ヒータ、当業で公知のその他の抵抗ヒータ、及びこれらの組合せが挙げられる。これとは別に、温度調節装置は冷却器を含むことができる。適当な冷却器の例として、ペルチェ装置、当業で公知のその他の熱電冷却装置、及びヒートパイプが挙げられる。
【0025】
温度調節装置は、ハウジング内の温度を調節することができ、又は温度制御信号に基づいて片持ち式光ファイバの温度を別様に調節することができる。多くの場合、位置の不正確さ及び/又は画像の歪みを低減するために、この温度の調節を使用してハウジング内を実質的に一定の温度に調整又は維持することができるが、本発明の範囲はこの点に限定されるものではない。
【0026】
説明をあいまいにしないために、簡略化したベースステーションを示し、これについて説明した。ベースステーションに含めることができる可能性のあるその他の代表的な構成要素として、以下に限定されるわけではないが、電源、ユーザインターフェイス、メモリなどが挙げられる。さらに、ベースステーションは、時計、波形発生器、増幅器、デジタル−アナログ変換器、アナログ−デジタル変換器などの補助構成要素を含むこともできる。
【0027】
図2は、本発明の実施形態による走査ファイバ装置230の特定例の断面側面図である。この特定の走査ファイバ装置は、内視鏡又はその他の比較的小型の装置としての使用に非常に適する。その他の実施構成では、設計及び動作が大きく異なってもよい。従って、この特定の走査ファイバ装置は例示的なものに過ぎないと理解されたい。
【0028】
走査ファイバ装置はハウジング250を含む。1又はそれ以上の実施形態では、ハウジングを比較的小さな密閉されたものとすることができる。例えば、ハウジングは概ね管状であってもよく、約5ミリメートル(mm)以下の直径、及び約20mm以下の長さを有することができる。いくつかの実施形態では、直径を約1.5mm以下、長さを約12mm以下とすることができる。多くの場合、ハウジングは1又はそれ以上のレンズ238を含む。適当なレンズの例としてPentax社製のものが挙げられるが、その他のレンズを任意に使用してもよい。
【0029】
1つの考えられる種類のアクチュエータを代表する圧電チューブ232がハウジング内に含まれる。本発明の1又はそれ以上の実施形態では、圧電チューブがPZT 5A材料を含むことができるが、これは必須ではない。適当な圧電チューブが、以下に限定されるわけではないが、米国ニュージャージー州フェアフィールドのMorgan Technical Ceramics Sales社、カナダ、オンタリオ州コリングウッドのSensor Technology社、米国マサチューセッツ州オーバーンのPI(Physik Instrumente)L.P.社を含むいくつかの供給元から市販されている。圧電チューブをハウジングに取り付けるためにアタッチメントカラー252を使用することができる。ぴったりと一致する概ね円筒形の取付環の開口部を通じて圧電チューブを挿入することができる。その他の圧電チューブ及びハウジングの構成もまた可能である。
【0030】
光ファイバ222の一部が、圧電チューブ内の概ね円筒形の開口部を通じて挿入される。光ファイバの片持ち状の自由端部234が、ハウジング内で圧電チューブの端部を超えて延びる。接着剤256を使用して、光ファイバを圧電チューブに拘束し、接着し、或いは別様に結合することができる。適当な接着剤の例として、以下に限定されるわけではないないが、カリフォルニア州ランチョクカモンガのSuper Glue社から市販されているCopper−Bondという商標のエポキシ樹脂、マサチューセッツ州ベッドフォードのTRA−CON社から市販されているTRA−BOND F123という商標の接着剤、イリノイ州グレンビューのDevcon社から市販されている5Minute(登録商標)Epoxyという商標のエポキシ樹脂、及びSuper Glue社から市販されているSuperGlueという商標のシアノアクリレートが挙げられる。これらの材料の機械的特性は、温度により異なって変化する傾向となり得る。その他の圧電チューブ及び片持ち式光ファイバの構成もまた可能である。片持ち式光ファイバは撓みやすく、これを圧電チューブにより作動させることができる。
【0031】
走査ファイバ装置は、ハウジング内の温度を感知するための温度センサ装置240を含む。適切なサーミスタの1つの特定例として、ニュージャージー州セコーカスのPanasonic社から市販されている多層NTC PanasonicERTJシリーズ0201サイズ(約2mm×1mm)のサーミスタが挙げられる。このサーミスタは約10kWの抵抗を有する。本発明の1又はそれ以上の実施形態では、サーミスタのサイズをさらに縮小させるために、サーミスタを任意で約半分だけ削ることができるが、これは必須ではない。削った場合、抵抗が変化する可能性があり、サーミスタを再較正する必要がある。
【0032】
走査型ビーム装置は、ハウジング内の温度を上昇させるためのヒータ242を含む。このヒータはコイル抵抗ヒータを含むことができる。小径のワイヤを巻き付けてコイルにすることにより、コイル抵抗ヒータを形成することができる。任意にワイヤ自体を折り重ね、或いは折り返して巻き付け、バイファイラコイルにすることができる。これにより、ワイヤの両端部が同じ側に存在できるようになる。単位長さ当たりのさらなる巻線を任意で端部に設けて、ヒータの長さ全体にわたって均一な温度を促すことができる。適当なワイヤの例として、Wilbur B.Driver社から市販されている、約400W/ftの抵抗を有する36mmEVANOHM(登録商標)ニッケル−クロム抵抗ワイヤがあるが、本発明の範囲はこの特定の種類のワイヤに限定されるものではない。図示のように、ハウジングの内壁の内側にコイル抵抗ヒータを配置することができる。図示のように、コイルは、光ファイバの自由端部を取り囲むとともに、実質的にその長さに及ぶことができる。本発明の1つの特定の実施形態では、ヒータは、約300個のループ、約6mmの長さ及び約0.9mmの直径を有する、ワイヤ自体に折り重ねられた、或いは折り返された36mmEVANOHM(登録商標)ニッケル−クロム抵抗ワイヤのバイファイラコイルを含むが、この特定のヒータは必須ではない。このようなヒータは、平均で約30ミリワットの熱を生成できる可能性がある。
【0033】
図示のように、本発明の1又はそれ以上の実施形態では、温度センサ装置を接着剤に近接して配置することができる。温度は接着剤の特性に影響を及ぼし(例えば、接着剤をより剛直に又はより柔軟にし)、この結果、光ファイバの自由端部の動きに影響を及ぼす可能性がある。接着剤に近接してサーミスタ又はその他の温度センサ装置を配置することにより、接着剤の温度の正確な測定を促すことができる。一例として、このような患者に挿入される小型の装置では、サーミスタが接着剤の約2mm以内に存在し、いくつかの実施形態では、接着剤の約0.5mm以内に存在することができるが、本発明の範囲はこのように限定されるものではない。さらに図示のように、1又はそれ以上の実施形態では、サーミスタをヒータのコイルの内面に接着することができる。
【0034】
ベースステーション(図示せず)から走査ファイバ装置の近位端へいくつかの導電路220が引かれている。この導電路は、圧電チューブ、温度センサ装置及びヒータへ電気信号を運ぶことができる。一例として、4つの導電路の各々を圧電チューブ上の4つの象限電極のそれぞれに半田付けし、或いは別の方法で電気的に結合することができる。これらの4つの経路は、圧電チューブに駆動信号を運んで光ファイバを走査できるようにする。圧電チューブ内の接地電極に1つの導電路を設けることができるが、これは必須ではない。2つのセンサワイヤ219を温度センサと電気的に結合することができる。2つのヒータワイヤ221をヒータと電気的に結合することができる。ハウジングの内面に沿って、センサワイヤ及びヒータワイヤを引くことができる。これらのワイヤの通路を収容するために、ハウジングの内面に隣接する境界面における取付環内に1又はそれ以上の切欠を設けることができる。
【0035】
図示のように、照明スポットからの後方散乱光を集光し、例えばベースステーション内に位置する1又はそれ以上の光検出器へ逆搬送するために、ハウジングの外部周辺に1又はそれ以上の光ファイバ254を任意に含めることができる。或いは、走査ファイバ装置の遠位端又はその近くに1又はそれ以上の光検出器を含めるか、或いはこれを完全に省くことができる。
【0036】
図3は、第1の共振モードで動作する片持ち式光ファイバの例示的な共振ゲイン特性のグラフである。片持ち式光ファイバの振動周波数を水平軸上に示しているのに対し、片持ち式光ファイバの変位を垂直軸上に示している。
【0037】
変位は、機械的共振周波数又は振動共振周波数の前後で増加し、この周波数でピークに達する。このことは、片持ち式光ファイバの共振ゲインの増加に起因する。例図では、変位は比較的周波数にガウス依存し、共振周波数において最大変位が生じる。実際には、このようなガウス依存から著しく逸脱する場合もあるが、通常、変位はやはり共振周波数においてピークに達する。
【0038】
光ファイバを様々な周波数で振動させることができるが、本発明の実施形態では、光ファイバを、その共振周波数又は共振周波数の調波において、或いはこれらの周波数の前後、例えばQ係数内において振動させることができる。周知のように、Q係数とは、共振ゲイン曲線の幅に対する曲線の高さの比率のことである。共振ゲインが高いことにより、光ファイバを共振周波数又はその周辺で振動させることにより、所定の変位を達成して所定の走査を行うのに必要なエネルギー量又はアクチュエータ駆動信号の大きさを低減させるのに役立てることができる。
【0039】
しかしながら、共振周波数又はその前後で走査を行うことにより、光ファイバの位置がアクチュエータ駆動信号に対して約90°位相ずれする可能性がある。この位相シフトは、共振周波数近くの周波数に比較的敏感である。片持ち式光ファイバの温度の変化が、対応する共振周波数の変化を引き起こす可能性がある。これらの共振周波数の変化は、走査ファイバ装置を使用して取得される画像に位相シフト歪みを引き起こす可能性がある。これらの歪みは、画像全体を回転させる形をとる可能性がある。片持ち式光ファイバの温度の変化から他の歪みが生じる可能性もがある。アクチュエータ駆動信号の振幅とともに共振周波数も変化する可能性があり、その量は異なる温度において異なる可能性がある。
【0040】
片持ち式光ファイバをアクチュエータチューブに付着させるのに使用する接着剤の温度の変化も歪みを引き起こし得る。より高い温度は、接着剤をより柔軟にする傾向となる可能性があるのに対し、より低い温度は接着剤をより剛直にする傾向となる可能性がある。このような接着剤の剛性の変化は、片持ち式光ファイバが所定の作動のために動く道筋を変化させる可能性がある。さらに、本発明の1又はそれ以上の実施形態では、例えばRichard S.Johonston他による「高フレームレートを達成するように走査ビーム装置を駆動させる方法」という名称の米国特許第7,159,782号に記載されるように、画像フレームの取得後に、アクチュエータチューブに駆動信号を印加して片持ち式光ファイバからエネルギーを除去し、片持ち式光ファイバの動きを止め、又は少なくとも遅くすることができる。高温において増加した接着剤の柔軟性は、片持ち式光ファイバのエネルギーの除去を異なるものにする傾向となり得る。1つの追加要因として、接着剤の温度の変化が、接着剤を膨張又は収縮させる傾向となり得る。これにより、片持ち式光ファイバの長さが潜在的に変化する可能性があり、これに応じて共振周波数に影響が及ぶ可能性がある。
【0041】
本発明の実施形態では、走査ファイバ装置の片持ち式光ファイバを透過する光の強度が変化し得る。強度が変化するための様々な理由が考えられる。いくつかの走査ファイバシステムは、光の強度を変化させて、例えば収集した後方散乱光の一定の強度を維持しようとすることができる自動ゲイン制御(AGC)ユニット又は回路を含むことができる。いくつかの走査ファイバシステムは、ユーザ又はシステムが、例えば複数の異なる強度、又は異なる強度の連続スペクトルから特定の強度を選択できるようにすることができる。一例として、この能力は、ユーザが、所定の周囲輝度に適した強度、又は特定の実施構成に別様に適した強度を選択するための柔軟性を可能にすることができる。いくつかの走査ファイバシステムは、(RGBなどの)フルカラー画像又は(白黒画像、ブルーオンリー画像などの)モノクロ画像のいずれも構成できるようにすることができる。フルカラー画像に使用される強度は、モノクロ画像に使用される強度よりも高いものとなり得る。内視鏡などのいくつかの走査ファイバシステムは、異なる動作モード間で切り換えを行う能力を有することができる。例えば、内視鏡は、フルカラー画像取得モード及び赤外線、紫外線、又は蛍光モードの間で切り換えを行う能力を有することができる。これらのモードの強度は異なり得る。別の例として、内視鏡は、画像取得モードと、例えばレーザ切断を行うのに適するような高出力治療光モードとの間で切り換えを行う能力を有することができる。高出力治療光モードの強度は、画像取得モードの強度よりも一般にかなり高い。これらはほんのわずかな具体例に過ぎない。
【0042】
1つの関連課題は、片持ち式光ファイバを透過する光の強度が、走査ファイバ装置を使用して取得した画像内の歪みに影響を及ぼすことが認められたことである。現在のところ、この強度が、片持ち式光ファイバの温度及び/又は片持ち式光ファイバの動きに関連する1又はそれ以上の材料の温度に影響を及ぼし得ると考えられている。理論に縛られることを望むわけではないが、さらに現在のところ、片持ち式光ファイバを透過した光の一部が、片持ち式光ファイバの遠位端から反射される可能性があると考えられている。この反射光の少なくとも一部が片持ち式光ファイバのクラッディングに入り込み、クラッディングに熱を与える可能性がある。片持ち式光ファイバの遠位端の分裂角が90°から偏差することにより、クラッディングに入り込む反射光の量が増加する傾向となり得る。やはり理論に縛られることを望むわけではないが、片持ち式光ファイバが圧電チューブに接着剤で接着されているという特定のケースでは、クラッディング内の反射光の少なくとも一部が接着剤に入り込み、接着剤に熱を与える可能性がある。このような加熱は、接着剤及び/又は片持ち式光ファイバの温度を高める傾向となり得る。一般に、光の強度が高まるほど温度の上昇も高くなる。
【0043】
たとえ温度制御システムが温度センサを一定の設定点温度に制御しようと試みたとしても、この温度の上昇は生じる可能性がある。温度センサは、高まった光の強度に起因する接着剤及び/又は片持ち式光ファイバからの余分な熱の一部を反映した温度を感知することができる。この感知した温度を温度コントローラに伝えることができる。これに応じて、温度コントローラは、温度センサの温度を一定の設定点温度に維持する試みにおいて、ヒータから出力される熱量のわずかな低下を制御することができる。しかしながら、通常、温度センサは、片持ち式光ファイバ及び/又は接着剤から少なくとも短い距離離れている。このような短い距離の隔たりでさえも、温度センサと片持ち式光ファイバ及び/又は接着剤との間に実にわずかな温度勾配をもたらす可能性がある。この結果、たとえ温度制御システムが温度センサを一定の設定点温度に維持しようと試みたとしても、片持ち式光ファイバ及び/又は接着剤の温度は、高まった光の強度から生じる加熱に起因してわずかに上昇する傾向となり得る。
【0044】
このような温度上昇は、片持ち式光ファイバ及び/又は接着剤をより柔軟にし、又はこれらの機械的特性を別様に変化させる傾向となり得る。このため、片持ち式光ファイバが所定のアクチュエータ駆動信号に関して作動し又は動く道筋が変化する傾向となり得る。これが、位置の不正確さを招く可能性があり、この不正確さが、取得した画像の歪みを生じさせる傾向となり得る。従って、これについて考慮しなければ、取得した画像内の歪みが強度の変化により助長される可能性がある。
【0045】
必要であれば、Johnstone他による米国特許出願公開第20060138238号に記載されるものと同様の較正及び再マッピングを行って、このような強度の変化に起因する画像の歪みを低減する役に立てることができる。しかしながら、数多くの強度値が考えられるときには、これらの数多くの強度値に関するデータを収集することに比較的多くの時間がかかる可能性があり、及び/又は関連する較正データを記憶するために比較的大量のメモリが使用されることになるので、この較正及び再マッピング方法は完全な解決策ではない。
【0046】
図4は、本発明の実施形態による、走査ファイバ装置を使用して取得した画像内の歪みを低減させる方法460のブロックフロー図である。この方法は、ブロック462において、走査ファイバ装置の片持ち式光ファイバを透過する光の強度を変化させるステップを含む。強度は、上述した理由のいずれかにより、又は全く他の理由により変化し得る。
【0047】
この方法はまた、ブロック464において、光の強度の変化に少なくとも部分的に基づいて走査ファイバ装置のための設定点温度を変更するステップも含む。設定点温度は、例えばベースステーション内などに位置する温度コントローラが走査ファイバ装置内で制御又は達成しようと試みることができる目標温度であってもよい。様々な実施形態では、強度の変化前、これと同時、又はこの後のいずれかにおいて設定点温度を変更することができる。
【0048】
本発明の実施形態では、設定点温度の変更により、片持ち式光ファイバ及び/又は片持ち式光ファイバに付着した接着剤の温度を強度の変化とは無関係に実質的に一定に維持することができる。本明細書で使用する場合、変化が、設定点温度を変更しなかったとした場合に変化するであろう温度の50%未満であれば、温度は「実質的に一定」に維持される。本発明の実施形態では、設定点温度の変更により、強度の変化に少なくとも部分的に起因して生じるであろうはずの、走査ファイバ装置を使用して取得した画像内の歪みを実質的に除去し、又は少なくとも実質的に低減することができる。本明細書で使用する場合、歪みは、少なくとも50%低減されたときに「実質的に低減され」、少なくとも80%低減されたときに「実質的に除去される」。
【0049】
歪みを低減するために、設定点温度の変更を強度の変化と逆方向にすることができる。例えば、強度の変化が強度を高めることを含み得る場合、設定点温度の変更は設定点温度を下げることを含み得る。別の例として、強度の変化が強度を下げることを含み得る場合、設定点温度の変更は設定点温度を上げることを含み得る。設定点温度を強度の変化と逆方向に変更することは、強度の変化に少なくとも部分的に起因して生じる傾向となるであろうはずの、片持ち式光ファイバ及び/又は(存在する場合には接着剤などの)片持ち式光ファイバの動作に関連する1又はそれ以上の材料の温度の変化を相殺又は低減することにより、歪みを低減させる役に立つことができる。
【0050】
理論に縛られることを望むわけではないが、1つの例が特定の概念をさらに説明する役に立つことができる。図2の走査ファイバ装置230を考慮されたい。片持ち式光ファイバ234を透過する光の強度が高まっていると仮定されたい。上述したように、この強度の増加は、片持ち式光ファイバ及び/又は接着剤256の温度の上昇を招く傾向となり得る。このことは、画像の取得中に片持ち式光ファイバが動く道筋を変化させる傾向となる可能性があり、これが画像歪みを生じさせる傾向となる可能性がある。しかしながら、上述した温度の上昇の相殺に役立てるために、ベースステーションの温度コントローラが温度センサ装置240を制御しようと試みる設定点温度109を低下させることができる。この結果、温度コントローラは、ヒータ242により生成される熱量の減少を制御することができる。これにより、ヒータによって加熱される片持ち式光ファイバの周囲領域の温度がわずかに低下し得る。この温度の低下により、この領域と片持ち式光ファイバ及び/又は接着剤との間にわずかに大きな温度差を生じることができる。この増加した温度差により、この領域よりも温度の高い片持ち式光ファイバ及び/又は接着剤から離れる熱移動の速度が高まる傾向となる可能性がある。この高まった熱移動の速度が、片持ち式光ファイバ及び/又は接着剤の温度を冷却又は低下させる役に立つことができる。要約すれば、設定点温度の変更は、強度の変化に少なくとも部分的に起因して生じるであろうはずの、片持ち式光ファイバ及び/又は接着剤の温度の変化を低減又は相殺する役に立つことができる。
【0051】
一般には、片持ち式光ファイバ及び/又は接着剤の温度の変化は急速に生じることが予想される。しかしながら、本発明の1又はそれ以上の実施形態では、強度が変化した後数秒以内に設定点温度を任意に増分的に変更し、又は別様に徐々に変更することができる。
【0052】
本発明の実施形態は、設定点温度の変更を決定するステップを含む。1又はそれ以上の実施形態では、動作中にユーザ又はシステムが設定点温度の変更を手動によりリアルタイムで決定することができる。一例として、強度の変化後、歪みが最小化又は別様に十分に低減されるまで、ユーザ又はシステムが設定点温度を強度の変更とは逆方向に比較的少量ずつ増分的に変更することができる。しかしながら、強度が頻繁に変化する場合、及び/又は考えられる強度値が多く存在する場合、このような方法は面倒であり、及び/又は時間がかかる傾向となる可能性がある。
【0053】
別の選択肢として、1又はそれ以上の実施形態では、ユーザ又はシステムが、所定の関係を使用して設定点温度の決定又は設定点温度の変更を行うことができる。この所定の関係は、片持ち式光ファイバを透過する様々な光の強度を、画像内の歪みを低減させる対応する設定点温度に関連付けたものとすることができる。適当な所定の関係の例として、以下に限定されるわけではないが、較正データ、較正データに少なくとも部分的に基づく回帰方程式、(熱伝導方程式などの)理論方程式、(熱伝導モデルなどの)数学モデル、数学的及び/又は論理的アルゴリズム、及びこれらの組み合わせが挙げられる。較正データは少なくとも2対のデータを含み、個々のデータの対は、異なる光の強度及びこれに応じて経験的に定められた異なる設定点温度を含む。
【0054】
図5は、本発明の1又はそれ以上の実施形態による設定点温度の変更を決定するのに使用する所定の関係を示すグラフである。このグラフは、設定点温度を垂直軸上に示しているのに対し、光の強度を水平軸に示している。所定の関係565は、片持ち式光ファイバを透過する光の強度を、走査ファイバ装置を使用して取得した画像内の歪みを実質的に低減する対応する設定点温度に関連付ける。図示の関係は直線、例えば線形回帰であるが、より高度な方程式を任意に使用することができる。変更前は、最初の強度(Ii)及び最初の温度(Ti)を使用する。その後、強度が最終強度(If)に増加する。強度の増加により生じるであろうはずの歪みの低減を促進するために温度を最終温度(Tf)に低下させる。
【0055】
図6は、本発明の実施形態による走査ファイバ装置を較正する方法670のブロックフロー図である。ブロック672において、複数の異なる強度の光が片持ち式光ファイバを透過することができる。ブロック674において、異なる強度ごとに、走査ファイバ装置のための設定点温度を決定することができる。強度ごとに決定された設定点温度により、個々の強度に少なくとも部分的に起因して生じるであろうはずの、走査ファイバ装置を使用して取得される画像内の歪みを実質的に低減させることができる。
【0056】
図7は、本発明の実施形態による、所定の光の強度に関して設定点温度を決定する方法774の詳細例のブロックフロー図である。1又はそれ以上の実施形態では、図6のブロック674における異なる強度の各々に対してこの方法を使用することができる。
【0057】
ブロック776において、走査ファイバ装置の設定点温度を調節することができる。1つの例では、設定点温度を、最近の強度の変化の方向とは逆の方向に比較的少量ずつ又は増分的な量ずつ変更することができる。次に、ブロック778において、所定の強度を使用しながら、及び走査ファイバ装置を設定点温度に制御しながら、走査ファイバ装置を使用して画像を取得することができる。次に、ブロック780において、取得した画像を歪みに関して試験することができる。この試験は、手動で、又は画像比較ソフトウェアを活用して行うことができる。
【0058】
ブロック782において、温度の調節により歪みが十分に低減されたかどうかの判定を行うことができる。歪みが十分に低減されていない(すなわち、判定が「いいえ」である)場合、方法はブロック776へ戻る。これとは別に、歪みが十分に低減されている(すなわち、判定が「はい」である)場合、所定の強度に関する設定点温度を、現在調節済みの設定点温度として決定することができる。設定点温度の調節、歪みに関する試験、及び歪みが十分に低減されたかどうかの判定という作業は、ユーザが手動で、コントローラにより自動で、或いはこれらの作業の一部をユーザが手動で行い、その他をコントローラにより自動で行うことができる。
【0059】
図8は、本発明の実施形態による、走査ファイバ画像取得システムのためのベースステーション802のブロック図である。ベースステーション802は、任意に図1のベースステーション102の特徴の一部又は全てを有することができる。説明をあいまいにしないために、以下の説明は主にベースステーション802の異なる又は追加の特徴に焦点を当てる傾向となる。
【0060】
ベースステーションは、走査ファイバ装置と接続又は別様に結合するためのインターフェイス814を有する。ベースステーションは、インターフェイスと光学的に結合されて、このインターフェイスを介して走査ファイバ装置に光を提供する1又はそれ以上の光源804を有する。ベースステーションは、インターフェイスに電気的に結合されて、このインターフェイスを介して走査ファイバ装置にアクチュエータ駆動信号を提供するアクチュエータドライバ806を有する。アクチュエータ駆動信号は、片持ち式光ファイバの動き又は走査を促進することができる。
【0061】
ベースステーションは、走査ファイバ装置からベースステーションへ戻る後方散乱光を検出するための1又はそれ以上の光検出器810を任意に含むことができる。或いは、光検出器はベースステーションの外部に位置することができる。図示のように、ベースステーションは、検出された光に基づいて画像を生成するための任意の画像処理及び表示システム812を含むことができる。ベースステーション内にディスプレイを含むことができ、或いはこれをベースステーションに外部接続することができる。ベースステーションは、前述したようなその他の構成要素890を含むことができる。
【0062】
ベースステーションは、任意に強度選択装置888を含むことができる。強度選択装置は、1又はそれ以上の光源804から出力される光の強度を選択することができる。図示のように、強度選択装置を1又はそれ以上の光源と電気的に接続し又は別様に連通させて、選択した強度を提供することができる。
【0063】
適当な強度選択装置の1つの例として、自動ゲイン制御(AGC)回路又はその他のユニットがある。走査ファイバ装置により検出される後方散乱光の量は、走査ファイバ装置の遠位端の表面に対する近接性を変化させるような要因などに起因して変化する傾向となり得る。AGCユニットは、後方散乱光の強度を一定レベルに制御しようと試みることができる。図示のように、AGCユニットは、走査ファイバ装置により検出された後方散乱光の強度の表示を、例えば画像処理及び表示システムから受け取ることができる。AGCユニットは、検出された後方散乱光の強度に少なくとも部分的に基づいて、1又はそれ以上の光源804により出力される光の強度を選択することができる。一例として、検出された後方散乱光の強度が低下した場合、AGCユニットは1又はそれ以上の光源により出力される光の強度を高めることができる。適当な強度選択装置の他の例として、以下に限定されるわけではないが、ダイアル、スイッチ、ボタン、キーボード、マウス、タッチスクリーン、及びユーザが光の強度を選択するために使用できる当業で公知のその他の種類のユーザインターフェイスが挙げられる。
【0064】
ベースステーションは、設定点温度決定ユニット886を有する。図示のように、設定点温度決定ユニットは、強度選択装置と電気的に結合又は別様に連通して、選択された強度を受け取ることができる。或いは、設定点温度決定ユニットは、光検出器を使用して又は別様に光の強度を決定することができる。設定点温度決定ユニットは、インターフェイスを介して走査ファイバ装置に提供される光の強度に少なくとも部分的に基づいて、走査ファイバ装置のための設定点温度809を決定することができる。
【0065】
ベースステーションはまた、温度コントローラ808も含む。温度コントローラは、設定点温度決定ユニットと電気的に結合され、或いは別様に連通する。温度コントローラは、決定された設定点温度809を受け取り、記憶し、これを温度制御に使用することができる。温度コントローラはまた、インターフェイスにも電気的に結合される。温度コントローラは、決定された設定点温度に少なくとも部分的に基づく1又はそれ以上の温度制御信号をインターフェイスを介して走査ファイバ装置に提供することができる。図示のように、温度コントローラはまた、任意にインターフェイスと電気的に結合して、温度制御にも使用できる感知又は測定した状態を受け取ることもできる。本発明の1又はそれ以上の実施形態では、温度コントローラが、決定した設定点温度及び測定した状態に少なくとも部分的に基づいて制御信号を決定するための、例えば、比例−積分−微分(PID)アルゴリズムなどのアルゴリズムを含むことができる。
【0066】
設定点温度決定ユニット及び温度コントローラの各々は、(機械可読媒体に記憶された命令などの)ソフトウェア、ファームウェア、(回路などの)ハードウェア、又はこれらの組み合わせで実現することができる。さらに、説明図では設定点温度決定ユニットと温度コントローラとを分離しているが、代わりにこれらを任意に組み合わせて、同じ物理的構成要素、ソフトウェアプログラム、又はその他のユニットにすることができることを理解されたい。
【0067】
図9は、本発明の実施形態による製造の物品992のブロックフロー図である。この製造の物品は機械可読媒体994を含む。適当な種類の機械可読媒体の例として、以下に限定されるわけではないが、光記憶媒体、光ディスク、CD−ROM、磁気ディスク、光磁気ディスク、読み取り専用メモリ(ROM)、プログラム可能ROM(PROM)、消去及びプログラム可能ROM(EPROM)、電気消去及びプログラム可能ROM(EEPROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、スタティックRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)、フラッシュメモリ、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0068】
機械可読媒体は、機械による読み取りが可能である。ほんの数例を挙げると、以下に限定されるわけではないが、適当な機械の例として、ベースステーション、内視鏡ベースステーション、走査ファイバシステム、走査ファイバ画像取得システム、医療機器、コンピュータシステムが挙げられる。
【0069】
機械可読媒体内及び/又は機械可読媒体上には、命令996が記憶され又は別様に提供される。この命令は、機械により実行された場合、機械が走査ファイバ装置の片持ち式光ファイバを透過する光の強度に少なくとも部分的に基づいて走査ファイバ装置のための設定点温度を決定するようにする命令998を含む。この命令は、本明細書で説明したような1又はそれ以上のその他の動作を行うための命令を含むことができる。
【0070】
上記の説明では、本発明の実施形態を完全に理解できるようにするために、説明目的で数多くの特定の詳細について記載した。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細の一部を伴わずに1又はそれ以上の他の実施形態を実施できることが明白であろう。説明した特定の実施形態は、本発明を限定するためではなく、例示するために提供したものである。本発明の範囲は、上記に示した特定の例によってではなく、下記の特許請求の範囲によってのみ決定すべきである。その他の場合、本説明の理解をあいまいにしないように、周知の回路、構造、装置、及び動作についてはブロック図の形で、又は詳細を省いて示している。適当であると考えられる場合、図を通じて参照番号の末端部を繰り返して、任意に同様の特性を有する可能性がある対応又は類似する要素を示した。
【0071】
なお、本明細書を通じて、「1つの実施形態」、「実施形態」、又は「1又はそれ以上の実施形態」への言及は、例えば、本発明の実施に特定の特徴を含めることができることを意味するものであると理解されたい。同様に、本開示を簡略化し、様々な発明の態様の理解に役立てる目的で、説明には、様々な特徴を単一の実施形態、図又はその説明にまとめた部分があることを理解されたい。しかしながら、本開示方法について、本発明が、個々の請求項に明記したよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映したものであると解釈すべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が示すように、本発明の態様は、単一の開示した実施形態の全ての特徴よりも少ないものによって成立することができる。従って、詳細な説明に続く特許請求の範囲は、本明細書によりこの詳細な説明に明確に組み入れられ、個々の請求項は、それ自体が本発明の独立した実施形態として成立するものである。
【符号の説明】
【0072】
100 走査ファイバシステム
102 ベースステーション
104 光源
106 アクチュエータドライバ
108 温度コントローラ
109 設定点温度
110 光検出器(任意)
112 画像処理及び表示システム(任意)
114 コネクタインターフェイス
116 コネクタ
118 ケーブル
120 (単複の)アクチュエータ駆動信号経路
122 光路
124 (単複の)後方散乱光経路
130 走査ファイバ装置
132 アクチュエータ
134 自由端部
136 先端
138 (単複の)レンズ
140 センサ装置
142 温度調節装置(例えばヒータ)
144 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査ファイバ装置の片持ち式光ファイバを透過する光の強度を変化させるステップと、
前記光の強度の変化に少なくとも部分的に基づいて前記走査ファイバ装置のための設定点温度を変更するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記設定点温度の変更により、前記強度の変化に少なくとも部分的に基づいて生じるであろうはずの、前記走査ファイバ装置を使用して取得した画像内の歪みが実質的に低減される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記設定点温度の変更により、前記歪みが実質的に除去される、
ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記設定点温度の変更により、前記片持ち式光ファイバ、及び該片持ち式光ファイバに付着された接着剤の少なくとも一方の温度が、前記強度の変化にかかわらず実質的に一定に維持される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記強度を変化させるステップが前記強度を高めるステップを含み、前記設定点温度を変更するステップが前記設定点温度を下げるステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記強度を変化させるステップが前記強度を低下させるステップを含み、前記設定点温度を変更するステップが前記設定点温度を上昇させるステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記設定点温度の変更を、異なる設定点温度と、対応する前記片持ち式光ファイバを透過する前記光の強度との間の所定の関係に少なくとも部分的に基づいて決定するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記設定点温度の変更を前記所定の関係に少なくとも部分的に基づいて決定するステップが、少なくとも1つの方程式を評価することにより前記設定点温度の変更を決定するステップを含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記設定点温度の変更を前記所定の関係に少なくとも部分的に基づいて決定するステップが、各々が異なる光の強度と対応する設定点温度とを含む少なくとも2対のデータに少なくとも部分的に基づいて前記設定点温度の変更を決定するステップを含む、
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記設定点温度を変更するステップが、前記強度が変化した後数秒以内に前記設定点温度を徐々に複数回変更するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記走査ファイバ装置を使用して画像を取得するステップをさらに含み、該画像を取得するステップが、前記片持ち式光ファイバを共振周波数のQ係数内で振動させるステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記走査ファイバ装置が内視鏡を備え、前記方法が、前記内視鏡を患者に挿入するステップと、前記患者の内部の画像を取得するステップとをさらに含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
走査ファイバ装置に結合されたインターフェイスと、
前記インターフェイスと光学的に結合されて、前記インターフェイスを介して前記走査ファイバ装置に光を提供する1又はそれ以上の光源と、
前記インターフェイスと電気的に結合されて、前記インターフェイスを介して前記走査ファイバ装置にアクチュエータ駆動信号を提供する1又はそれ以上のアクチュエータドライバと、
前記インターフェイスを介して前記走査ファイバ装置に提供される前記光の強度に少なくとも部分的に基づいて、前記走査ファイバ装置のための設定点温度を決定するための設定点温度決定ユニットと、
前記設定点温度決定ユニットと連通して、前記決定された設定点温度を受け取る温度コントローラと、
を備え、前記温度コントローラが前記インターフェイスと電気的に結合されて、前記決定された設定点温度に少なくとも部分的に基づく1又はそれ以上の温度制御信号を前記インターフェイスを介して前記走査ファイバ装置に提供する、
ことを特徴とする装置。
【請求項14】
前記設定点温度決定ユニットが、前記光の強度に少なくとも部分的に基づいて生じるであろうはずの、前記走査ファイバ装置を使用して取得した画像内の歪みを実質的に低減する設定点温度を決定するようになっている、
ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記設定点温度決定ユニットが、前記歪みを実質的に除去する設定点温度を決定するようになっている、
ことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記設定点温度決定ユニットが、前記走査ファイバ装置の片持ち式光ファイバ及び前記片持ち式光ファイバに結合した接着剤の少なくとも一方の温度を、前記強度の変化にかかわらず実質的に一定に維持する設定点温度を決定するようになっている、
ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項17】
前記設定点温度決定ユニットが、前記強度の変化とは逆方向の前記設定点温度の変更を決定するようになっている、
ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項18】
前記設定点温度決定ユニットが、異なる光の強度と対応する設定点温度との間の所定の関係に少なくとも部分的に基づいて前記設定点温度を決定するようになっている、
ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項19】
前記所定の関係が、前記設定点温度を前記強度に関連付ける少なくとも1つの方程式を含む、
ことを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記所定の関係が、各々が異なる光の強度と対応する設定点温度とを含む少なくとも2対のデータを含む、
ことを特徴とする請求項18に記載の装置。
【請求項21】
前記アクチュエータ駆動信号が、前記走査ファイバ装置のアクチュエータに、前記走査ファイバ装置の片持ち式光ファイバを共振周波数のQ係数内で振動させるようにする、
ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項22】
前記走査ファイバ装置が走査ファイバ内視鏡を含む、
ことを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項23】
機械により実行されたときに、前記機械が、走査ファイバ装置の片持ち式光ファイバを透過する光の強度に少なくとも部分的に基づいて前記走査ファイバ装置のための設定点温度を決定するステップを含む動作を行うようにする命令を記憶した機械可読媒体を含む、
ことを特徴とする製造の物品。
【請求項24】
前記機械により実行されたときに前記機械が前記設定点温度を決定するようにする前記命令が、前記機械により実行されたときに、前記機械が、前記強度に少なくとも部分的に起因して生じるであろうはずの、前記走査ファイバ装置を使用して取得した画像内の歪みを実質的に低減する設定点温度を決定するステップを含む動作を行うようにする命令をさらに含む、
ことを特徴とする請求項23に記載の製造の物品。
【請求項25】
前記機械により実行されたときに前記機械が前記設定点温度を決定するようにする前記命令が、前記機械により実行されたときに、前記機械が、前記片持ち式光ファイバを透過する光の強度と対応する設定点温度との間の所定の関係に少なくとも部分的に基づいて前記設定点温度を決定するステップを含む動作を行うようにする命令をさらに含む、
ことを特徴とする請求項23に記載の製造の物品。
【請求項26】
走査ファイバ装置の片持ち式光ファイバに複数の異なる強度の光を透過させるステップと、
前記異なる強度ごとに、該異なる強度のそれぞれ1つに少なくとも部分的に起因して生じるであろうはずの、前記走査ファイバ装置を使用して取得した画像内の歪みを実質的に低減する走査ファイバ装置のための設定点温度を決定するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
前記設定点温度を決定するステップが、前記設定点温度を前記異なる強度ごとに1回又はそれ以上調節するステップを含む、
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記複数の強度うちの或る強度に対応する設定点温度を決定するステップが、
前記設定点温度を調節するステップと、
前記強度を使用しながら、及び前記走査ファイバ装置を前記設定点温度に制御しながら、前記走査ファイバ装置を使用して画像を取得するステップと、
前記画像を歪みに関して試験するステップと、
を含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記歪みが十分に低減されたかどうかを判定するステップと、
前記歪みが十分に低減されている場合、前記設定点温度を調節済み設定点温度として決定するステップ、又は、
前記歪みが十分に低減されていない場合、前記調節ステップ、前記取得ステップ、及び前記決定ステップを繰り返すステップと、
をさらに含むことを特徴とする請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記異なる強度ごとに前記設定点温度を決定するステップが、前記歪みを実質的に除去する設定点温度を決定するステップを含む、
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記異なる強度を前記それぞれの決定された設定点温度に関連付ける方程式を生成するステップをさらに含む、
ことを特徴とする請求項26に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−541017(P2010−541017A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527923(P2010−527923)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/021604
【国際公開番号】WO2009/045199
【国際公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【出願人】(502457803)ユニヴァーシティ オブ ワシントン (93)
【Fターム(参考)】