説明

走査プローブ顕微鏡およびこれを用いた試料観察方法およびデバイス製造方法

【課題】高スループットで試料にダメージを与えずに、試料の正確な立体形状情報を計測でき、垂直な側壁やオーバーハングを含む試料の正確な立体形状情報を計測できる走査プローブ顕微鏡を提供する。
【解決手段】探針を測定点のみで接触させて次の測定点に向かうときには探針をいったん引き上げて退避させてから次の測定点に移動してから、探針を接近させることによって試料にダメージを与えずに正確な立体形状を用いる方法において、高周波・微小振幅カンチレバー励振と振動検出を行い、さらに、急傾斜部での接触力検知感度を上げるために、横方向励振あるいは、縦横2方向励振をおこなう。探針を測定対象の傾斜に合わせて傾斜させる手段と、探針と試料の接触状態を検知する光のカンチレバーでの反射後の向きが、探針の傾きによって大きく変わることを吸収または調整できる構造をもつ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査プローブ顕微鏡技術および、これを用いた試料観察方法とデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細立体形状の計測技術として走査プローブ顕微鏡(SPM:Scanning Probe Microscope)が知られている。これは先端のとがった探針を制御しながら、接触力を非常に小さな値に保ちながら試料を走査する技術で、原子オーダの微細立体形状が計測できる技術として、広く用いられている。
【0003】
一方、現在、LSIの微細パターン形成プロセスではCD−SEM(測長SEM)を用いた寸法管理を行っているが、パターンの微細化に伴い、下記の限界がきている。(1)測定精度の問題。2007年に主流になるとされる、65nmノードLSIのゲート幅は25nmであり、許容ばらつきを10%、測定精度をその20%とすると、必要とされる測定精度は0.5nmとなる。(2)プロファイル計測の要請。線幅の高精度制御のためにAPC(Advanced Process Control)化の必要性が高まっているが、このために、パターン線幅だけでなく、電気特性に大きく影響する断面形状の計測技術が必要とされている。(3)測定対象の問題。DUV(深紫外光)用レジスト、low−k(低誘電率)膜材料等、電子線耐性の弱い材質に対する測定ニーズが増大している。
【0004】
上記の問題及び要請に対しては、現状のCD−SEMでは対応が難しい。このために、走査プローブ顕微鏡技術が有望と思われる。この場合に必要となるのが、アスペクト比の大きく、段差部の傾斜が90度に近いパターンに対応した、走査プローブ顕微鏡技術である。
【0005】
これに対して、特許文献1では、試料または探針を一定の振幅で振動させて探針を周期的に試料にぶつけながら走査し、軟脆試料および探針のダメージ軽減をはかる方法が開示されている。また、特許文献2では、飛び飛びの測定点のみで探針のサーボをかけて高さを測り、探針を引き上げた状態で次の測定点に向かう走査方法が開示されているが、この方法はさらに接触回数が小さく、軟脆試料および探針へのダメージが少ない。また、探針を引きずらないために段差部での形状を忠実に計測できるという利点がある。さらに、特許文献3には、両者の動作を組み合わせた方法も開示されている。
【特許文献1】特開平11−352135号公報
【特許文献2】特開2001−33373号公報
【特許文献3】特開2002−206999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した方法を用いても、急傾斜部では若干の探針の滑りが生じ、測定された形状がひずむという問題があった。また、探針の滑りおよび探針の振動のために探針が摩耗するという問題があった。
【0007】
言い換えれば、上記の特許文献に開示された技術ではアスペクト比の高い試料に対しては急傾斜部では若干の探針の滑りが生じ、測定された形状が歪んでしまい、正確な形状を計測することは困難であった。また、探針の滑りおよび振動のために探針が摩耗し、安定に精度よく形状を計測することが困難であった。
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、測定点ごとに探針の退避・接近を繰り返す測定方法を用いることによって試料にダメージを与えず、しかも高精度の形状計測を高速で行うことを目的とする。また、半導体試料のパターンを計測しプロセス条件にフィードバックすることで、安定で高精度なデバイスの製造を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の走査プローブ顕微鏡では、上記課題を解決するために、試料にダメージを与えない高精度計測をおこなえるよう、測定点ごとに探針の退避・接近を繰り返す測定方法をもちいるとともに、探針を原子オーダの振幅で高周波微小振動させることにより、接触を高速・高感度に検知し接触時の探針の滑りが無い測定を行うことを特徴とする。また、半導体試料のパターンを計測しプロセス条件にフィードバックすることで、安定で高精度なパターンを形成し、傾斜の急な試料段差部に対して、探針を傾斜させて走査を行うことによって段差部の正確な形状を計測し、オーバーハングした段差形状に対しても、正確な形状を計測することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高感度な近接センサを具備することによって、試料と探針の高速な接近を実現でき、計測のスループットを向上できるという効果を奏する。
【0011】
また、プローブを間欠的に試料に接触させて探針を試料上で引きずらないようにして、軟脆材料や段差の急なパターンに対して高精度な計測を実現しながら、高速な試料のスキャンを実現でき、傾斜の急な試料段差部に対して、探針を傾斜させて走査を行うことによって段差部の正確な形状の計測を実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明の実施例1の走査プローブ顕微鏡の構成図を示す。X、Y、Zに駆動が可能な試料ステージ302上に試料501が載せられており、走査制御部201によって制御されている。探針103を取り付けた探針移動機構252はXYZ走査駆動部203からの信号によってX、Y、Z方向に駆動され、これによって走査プローブ顕微鏡のプローブ走査を行う。
【0014】
探針駆動部202からの信号により、探針103自身あるいは、探針の根元に配置された圧電素子などで構成されたアクチュエータに微小振動を生じることが出来る。あるいは、別の実施例として、探針駆動部202からの信号はXYZ走査駆動部203からの信号に重畳されて、探針移動機構に微小振動を起こすことで取り付けられた探針103に振動を励起してもよい。あるいは後述のように、探針に直接振動励起光を照射することで微小振動を探針103に励起してもよい。
【0015】
図1において、101は探針・試料観察レンズであり、上方からの試料・探針の観察、振動の測定、振動の励起、試料の高さ測定をこのレンズを通しておこなう。このレンズは探針の移動中つねに探針上にフォーカスを合せて追従するため、探針移動機構252によって探針と一体的に駆動されることが望ましい。
【0016】
探針103と試料501との接近は、試料ステージ302のZ方向への駆動制御あるいは、探針移動機構252に持たせたZ方向粗動機能によってもよい。走査制御部201は、接触状態検出器205によって検知された探針103と試料501の接触状態をもちいて、探針103と試料501との接近を制御する。
【0017】
近接センサ204は探針の先端付近の高さを高感度で計測するためのセンサであり、接触状態検出器からの情報に加えてこれを用いた場合は、探針の試料への接触を事前に検出して接近速度を制御することで、探針を試料にぶつけることなく高速な試料への接近を実現できる。近接センサ204には後述するように光を用いてもいいが、検出範囲が数十マイクロメートル以上あり、1マイクロメートル程度の感度で試料との距離を検出できるセンサであればほかのセンサを用いてもよい。
【0018】
たとえば、図示しない試料501の直上に設けたセンサヘッドあるいは探針103と試料501との間に交流電圧をかけることによって、静電容量を測り、距離を検出する静電容量式センサや、図示しない試料501の直上に設けたセンサヘッドと試料501との間にセンサヘッドからの空気を流して圧力を検出するエアマイクロセンサを用いてもよい。
【0019】
走査制御部201は、探針の接触状態検出器205、近接センサ204、探針ホルダ駆動部203、探針駆動部202試料ステージ302を制御して探針の近接、試料の走査等を実現する。このとき、試料の走査時の信号をSPM像形成装置208に送ることによって、試料の表面形状像を得る。また、信号印加装置207は探針を高周波数で加振して応答を接触状態検出器205で検出し表面の弾性などを計測したり、探針と試料の間に交流あるいは直流電圧をかけて電流を測定し、容量あるいは抵抗を計測したりする。
【0020】
これを探針のスキャンと同時に行うことによってSPM像形成装置207に表面形状像のほかに、付加的性質の分布像を得ることが出来る。
【0021】
装置全体の動作は全体制御装置250によって制御され、表示・入力装置251によって、操作者の指示を受けたり、光学像やSPM像を提示したりすることが出来る。
【0022】
図1の接触状態検出器205で検出された光強度信号A(t)の交流成分はcos2π(Δft+2Z/λ)となる。ここで、Zは探針103の振動による変位、λはレーザの波長、tは時間である。従って、この信号の位相を検出することによって探針103の変位を求めることが出来る。位相の検出には2周波光発生器701中の音響光学素子に与えた周波数Δfの信号か、または、2周波光発生器701から発生する2本のビームの一部分を分岐して探針に当てないで直接干渉させることによって得られる周波数Δfの信号を基準として用いて、A(t)と共に位相検出回路に入力すればよい。
【0023】
あるいは、光強度信号A(t)自身とこれをΔtだけ遅延させた信号A(t―Δt)の位相差を検出すれば、この位相差の変化成分は2(Z(t)−Z(t−Δt))/λとなるので、Δtの間のZの変化すなわち、Zの速度を検出できることとなる。
【0024】
ここで、探針の振動の周波数をg、振幅をBとすると、Z(t)=Bsin2πgtとあらわされる。すると、ΔZ=Z(t)−Z(t−Δt)=(2πgBΔt)cos(2πgt)となり、探針の振動周波数gを上げれば振動の検出感度が向上することとなるため、A(t)自身を遅延させた信号との位相差を検出することがより望ましい。
【0025】
このようにして検出した探針103の振動は信号発生器207に与えられ、バンドパスフィルターで発振させたい周波数帯の信号を選択し、適当な位相差とゲインをあたえてから、探針駆動部202を介して探針103にフィードバックされ探針103を加振する。あるいは、振動励起用光源702に与えられ、探針103に照射される光強度を変調しこれによって探針103を直接加振する。位相差とゲインが適切に設定されると、探針が必要な振幅で振動を起こす。
【0026】
図2は、探針の軌跡を示す図である。通常これまでに用いられてきた方式は探針と試料との接触を保ちながら、探針を横方向に移動させて、試料の表面をなぞる方式である。これでは、急斜面部では探針に横方向の力が掛かり、探針がねじれてしまったり、探針の振動が止まってしまって、探針の接触状態を正確に検出できなかったりという問題があった。
【0027】
これに対して、本発明の実施例1では、図2に示すように探針を試料に向けて降下させていき、一定の接触状態になったところで探針の高さを記録し、探針を引き上げ、水平方向に探針を移動して次の測定点に移り、再度探針の降下を行う。これを繰り返して、試料の表面形状を測定する。このような方法を用いることにより、図3に示すような急斜面部でも、正確に試料の表面形状を計測することが可能となる。
【0028】
しかし、たとえ、このような方法を用いても、探針に若干の滑りを生じわずかに表面形状がひずむという問題がある。また、これに対して、特許文献3に開示されているように探針の振動を組み合わせる方法もあるが、探針と試料の接触時に多数回の衝突が起こるために探針および試料の摩耗・ダメージが起こり、また、多数回の衝突が起こらないと探針の振動状態が変化しないために、探針・試料間の接触の検知の応答性が悪く高速な表面形状測定を行おうとすると、形状精度が悪化し、探針の摩耗も大きくなるという問題があった。
【0029】
本発明では、探針を原子オーダの微小振幅で高速に微小振動させることで、探針の摩耗を減じ、接触検知の応答性と感度を向上させ、高速で正確な表面形状測定を実現する。
【0030】
図4は、探針の接触状態検出の原理を示す図である。上の図のように横軸に探針先端と試料との距離、縦軸に原子間力を、斥力を正としてとると、距離が減少していくと少しずつ引力が増加して行くが、ある距離Rより近くなると引力が減少を始め、急激に斥力に転じて斥力が増大する。
【0031】
図4の真ん中の図のように、縦軸を力勾配としてプロットしなおすと、力勾配はRを境にこれより距離が近くなると急激に増加する。この力の場の中で探針を振動させると、探針を振動子としてみた場合のバネ定数が探針の振動方向の原子間力の勾配に応じて変化することとなり、図4の下段の図のように斥力増大領域ではバネ定数の増加により共振周波数が上がり、引力増大領域ではバネ定数の減少により共振周波数が下がることとなる。
【0032】
図4のように共振周波数foと若干ずらしたf点で振動を励起しておくことで、探針が置かれた力勾配の大きさに応じて振動振幅が変化するように設定できる。これを利用して力勾配を検出することが出来る。
【0033】
従来は探針を安定に振動させるため、および、探針の接触を十分な信号として検出するために、探針を引力領域から斥力領域に渡るような数ナノメートルから十数ナノメートルと言った大振幅で振動させていた、このために、振動の下端では急激に斥力が増大していた。
【0034】
これに対して、本発明の実施例1では、振動の振幅を原子オーダの1ナノメートル以下に抑えることで、接触力を小さく抑える。振幅を小さくすると一般的には検出S/N比(信号対ノイズ比)が悪化するが、振動周波数を増加させることで信号を増強することが可能となる。すなわち、振動が振幅をA、周波数をgとしてAsin2πgtで表されるとすると、変位速度はこれを微分して2πAgcos2πgtとなり、変位速度の振幅は周波数に比例して大きくなるためである。変位速度は後述するように、レーザドップラー計測によって高感度で検出が可能である。
【0035】
あるいは、別に後述する探針の撓みを探針に照射したレーザの反射角で検出する光てこ信号の微分によっても求められる。また、振幅のほかに、位相や周波数も接触状態によって変化するので、これを検出するようにしてもよい。あるいは、探針に歪ゲージなど探針の変形によって信号を発生するセンサを組み込んで、これによって探針の振動状態を検知することが可能となる。
【0036】
もうひとつの問題は、接触検知の応答速度である。振動の鋭さを表すQ値は振動周波数fと振動の振幅が半分となる幅wから、Q=f/wとして表されるが、探針が接触を検知して振動状態が変化するのに、Q回のオーダの振動を繰り返す必要がある。すなわち応答の時定数としてT=Q/f程度要する。Qは一般に数100のオーダで、fは、一般に100〜300kHz程度であり、このため、T=1ms前後を要する。また、バネ定数はk=10〜50N/m程度であり、高速に図2に示した探針の接近動作を行わせようとして、v=10nm/ms程度の速度で探針を接近させた場合には、Tの間にvT=10nm程度進んでしまうため、kvT=100〜500nN程度の接触力を発生してしまい、探針の滑りと探針と試料のダメージを生じる。
【0037】
探針の滑りと探針と試料のダメージを生じないためには、少なくとも5nN以下、できれば、1nN以下の接触力に抑える必要がある。これを抑えるためには、Tを低くする必要がある。このためにカンチレバーや励振制御の工夫によってQを抑えることは接触状態の検出感度を悪くするので、せいぜい20前後までしか落とすことが出来ない。よって、探針の接近速度はv=1nm/ms程度に落とさないと、1nN前後の接触力で接近接触動作を起こすことが出来ない。
【0038】
退避・接近距離は試料と探針の間の表面張力などによる吸着力を脱する必要性と、試料の凹凸への対応のため10nm程度は確保する必要があり、従って、探針の接近に要する時間が10ms程度掛かることになり、探針の退避と横移動を高速化しても、退避・移動・接近のトータルで最短でも10ms強の時間が掛かることとなり、計測速度を十分上げることが出来ない。
【0039】
接触力を更に小さくするためには更に接近速度を下げる必要があり、測定時間の増大につながる。この問題を解決するために、本発明では振動の周波数をあげる。これにより応答の時定数T=Q/fが周波数に反比例して短くなるため、接触状態の変化を高速に検出できるようになることとなる。例えばfを400kHz以上に上げれば、100kHzの場合に比べて接触力を1/4に下げるか、計測速度を4倍に上げることが可能となる。
【0040】
例えばfを1MHz以上に上げれば、100kHzの場合に比べて接触力を1/10に下げるか、計測速度を10倍に上げることが可能となる。例えば、後者の場合は接近速度を10nm/msの接近速度で、1nNの接触力で計測が可能となり、退避距離を10nmとすると1点あたり1〜2ms程度の速度で計測が可能となる。さらにfを10MHzに上げれば接触力を同じ計測速度で0.1nNまで接触力を下げることが可能となる。
【0041】
高速・高精度化するための別の実施例として、接触状態を示す信号が設定閾値を横切った瞬間の探針の高さをサンプリングすることにより、同じ接近速度であっても更に接触力の小さい状態での測定点試料高さを計測することが可能となる。
この理由を以下に示す。探針を試料に向けて降下させていき、一定の接触状態になったところで探針の高さを記録する方法では、接触状態検知の遅れのために、探針が試料斜面部ですべって探針が変形した後の高さを計測してしまう場合がある。しかし、最終接触状態とは別の微小な接触状態閾値を設定し、この閾値を横切った瞬間にサンプリングすることによって、探針が試料斜面部ですべって探針が変形する前の正確な高さを計測することが可能となる。
【0042】
3つめの問題は、微細パターンへの対応である。微細パターンの急峻な谷の形状を計測する場合には、探針を振動させながら安定に谷底まで移動させる必要がある。このときに振幅が大きいと両側に迫る側壁に捉えられて谷底まで探針をとどかせることが困難にある、半導体のパターンは2007年に65nmで、その後35nmとさらに狭くなる。このため、探針の振動は1nmのオーダにする必要がある。
【0043】
探針の共振周波数を上げるためには、様々な方法が考えられる。一つ目は高調波の周波数に合わせて振動を励起する方法、二つ目は探針の曲げ振動ではなく、ねじり振動など別のモードの共振周波数に合わせて振動を励起する方法、3つめは探針の基本共振周波数を上げる方法である。3つめの方法については単純に探針のカンチレバー部の厚みを厚くすると共振周波数は上がるが、バネ定数も大きくなってしまう。カンチレバー部の形状を短冊状として、幅をb、厚みをh、長さをL、ヤング率をEとすると、バネ定数k=Ebh^3/(4L^3)となる。一方共振周波数はカンチレバーの密度をρとすると、f=0.56(h/L^2)√(E/12ρ)となる。
【0044】
よって、たとえば、幅bを一定に保ちながら、長さLと厚みhを同じ割合で小さくするとバネ定数kを一定に保ったまま、共振周波数を長さLに反比例して増加させることができる。これによって、接触状態検知感度と応答性を向上することが可能となる。
【0045】
更に、図5に示すように、本方式を用いることにより、試料の帯電の影響をへらすことが可能である。帯電によって生じる静電力は原子間力の変化の仕方と比較すると遠距離からゆっくりと増えていく。そのため、斥力と距離の関係は大きくずれるが、静電力の変化は緩やかなので、力勾配に変換すると図5の下のグラフのようにわずかなオフセットにとどまる。このため、バネ定数の小さいカンチレバーで探針―試料間のスタティックな変形を検出する方法では大きく探針が変形して接触力の測定精度が悪化するが、探針を振動させて接触状態を検知する本発明の方法を用いれば、静電力の影響を小さく抑えることができる。
【実施例2】
【0046】
図6は、本発明の実施例2の走査型プローブ顕微鏡の光学系を示す図である。光源111から出射した光はレンズ112で平行光に変えられてミラー113で反射され、レンズ101に入射し、試料上501上に焦点を結ぶ。光源111に組み込む開口の形状によって、スポットあるいはスリットなど、任意の形状の像を形成できる。試料で反射した光は再び対物レンズを通り、ミラー114で反射され、結像レンズ115で検出器116上に像を結ぶ。像の位置は試料501の高さによって移動する。移動量は試料への検出項110の入射角をθ、レンズ115による結像倍率をm、試料の高さをZとすると、2mZtanθとなるので、この移動量を計測すれば試料の高さZが検出できる。
【0047】
検出器116は像の位置が検出できればいいので、PSD(ポジションセンシティブデバイス)・分割型ホトダイオード・リニアイメージセンサなど何でもよい。また、上記説明は検出光110が対物レンズを通るという構成での説明であったが、検出光110が対物レンズの外部を通りもう一枚の図示されていないミラーで折り曲げられて、試料上に結像される構成も考えられる。このとき、レンズ112および115はそれぞれ光源111およびセンサ116を試料501と結像関係になるように調整される。この場合のセンサ116上の像の移動量は2mZsinθとなる。
【0048】
以下探針の接触状態検出について説明する。2周波光発生器701からは周波数f1と周波数f1+Δfと周波数がわずかにずれた2本のビーム(791と792)が発生する。2本のビームはたとえば、レーザからの光をビームスプリッタで分けて一方を音響光学素子に通すことで周波数をΔfだけずらすことによって発生する。あるいは、互いに偏波面の直交した2本のビームを発生する2周波レーザも市販されている。第一のビーム791は偏光ビームスプリッタ722で反射される方向に偏光して、2周波光発生器701から出射する。偏光ビームスプリッタ722で反射した光は4分の1波長板725を通って円偏光に変換され、途中必要に応じてビームスプリッタ134、ダイクロイックミラー712を通って後、検出光130として、レンズ101を通り、探針103の背面に照射される。
【0049】
ここで反射された光はもと来た光路を戻り、4分の1波長板725を通って2周波光発生器から出射したビーム791とは直交した方向の直線偏光に変換される。このため、この光は偏光ビームスプリッタ722を透過し、その次の偏光ビームスプリッタ723も透過する。ここで、2周波光発生器701から出たもう一方の周波数f1+Δfのビーム792を偏光方向が偏光ビームスプリッタ723で反射する方向に調整しておくと、723で反射されるため、ここで、探針103から反射してきた光と合流し、偏光板721を通過してフォトダイオード720に到達する。
【0050】
ビーム791と792の偏光板721通過時の偏光方向は直行しているが、偏光板721を両ビームの偏光方向の中間の角度に傾けることで、両ビームは干渉を起こし、周波数Δfの光強度変化を発生するので、これをフォトダイオード720で検出する。なお、フォトダイオード720の前に受光面上にレーザを集光するためのレンズ729を置いてもよい。
【0051】
図6において、光源702は振動励起用の光源である。高速で変調が掛けられるように半導体レーザを用いるのが望ましい。ここから出射した光はレンズ711を通った後、光源702の波長を反射するように製造されたダイクロイックミラー712で反射されレンズ101に向かい、レンズ101で集光され探針103上に照射される。この光の強度が変調されることで、探針103に歪が生じ、振動を励起する。探針103で反射された励起光は再びもと来た光路を戻るが、ダイクロイックミラー712で反射されるため、検出用のレーザの光路には行かないようになっている。
【0052】
試料観察系の説明をする。照明光源154より観察用照明光は出射し、コンデンサレンズ153を通り、ビームスプリッタ155で反射し、ビームスプリッタ134、ダイクロイックミラー712を透過し、101のレンズを通って試料501および、探針103を照明する。反射光は再び対物レンズを透過し、ビームスプリッタ134と155を透過して結像レンズ152で結像され、イメージセンサ151で検出される。
【0053】
以上、図6を用いて説明したように、探針と試料観察系と試料高さセンサと探針振動検出光学系と探針振動励起光学系を同軸で構成することにより、SPM計測位置の同時観察、探針の調整の容易化、高速な探針と試料との接近が可能になる。また、探針たわみ検出光学系を同軸で構成したことによって、カンチレバー部の面積の小さい探針に対しても、検出光130および励起光710を照射できるようになり、より軽くて共振周波数の高い探針を用いることによって、走査の高速化と接触状態検知感度の向上を可能とする。また、すべて対物レンズを通して検出するようにしたことにより、対物レンズを探針と近づけることが可能になり、高解像度の試料の光学観察が可能となる。
【実施例3】
【0054】
図7は、本発明の実施例3の光学系を示す。実施例2では、2周波光を用いたいわゆるヘテロダイン検出を用いているが、代わりに単一の周波数の光をもちいたホモダイン検出を用いてもよい。この場合、参照光792として周波数f1の光を分岐して用い、フォトダイオード上で検出することには変りがないが、位相を検出するために、図7のように、ハーフミラー726でレーザを分岐して一方はミラー727で反射させ、λ/4板728で参照光と検出光の位相差を90度ずらしてから、偏光板721’で干渉させ、レンズ729’を通して第二のフォトダイオード720’で検出する。第1と第2にフォトダイオード720、720’からの信号がcosとsinに相当する信号となり、それぞれの信号の共振周波数に相当する成分の振幅を検出してから、2乗和の平方根を取れば、探針の振動振幅が検出できる。
【実施例4】
【0055】
図8は、本発明の実施例4の光学系を示す。別の実施例として、図8のように参照光792も探針の根元に導いて干渉させることにより、途中の光路の変動に影響されず探針の傾きを検出することが出来る。これによって、探針の振動検出だけでなく、静的な探針の撓みの検出を用いた探針走査制御も行うことも出来るようになる。この場合の参照光792はΔfの周波数変化を与えてヘテロダイン検出をしても、与えないでホモダイン検出をしてもよい。
【実施例5】
【0056】
図9は、本発明の実施例5の光学系を示す。図9において、探針接触状態検出をレーザ干渉ではなく光てこの原理を用いて行う方法である。光源131から出た光はレンズ132とビームスプリッタを通り、さらにビームスプリッタ134、ダイクロイックミラー712を通って対物レンズを通過して探針のカンチレバー部103に照射される。ここで反射した光は同じ道を戻ってビームスプリッタ133を通過し、レンズ135を介してセンサ136に照射される。
【0057】
レンズ135は対物レンズの射出瞳とセンサ136がほぼ結像関係になるように構成され、これによってカンチレバーの反射面の傾きに比例した位置変化がセンサ136上の光に生起される。これを136の位置に置いたPSD(ポジションセンシティブデバイス)・分割型ホトダイオード・リニアイメージセンサなどによって検出することによってカンチレバーの傾き(たわみ)を検出することが可能になる。
【0058】
また、二次元型のPSD、イメージセンサ、4分割フォトダイオードを用いることにより、たわみと同時にねじれを検出することも可能になる。この信号のうち共振周波数の振動を回路で検出すれば、探針103の接触状態が検出できる。本検出光130を試料観察系の光と分離するために光源131は単色のレーザとして、この光だけを通すようにレンズ135の前後に干渉フィルターを設けるのが望ましい。
【0059】
さらに効率を上げるためにビームスプリッタ134はダイクロイックミラーとしてもよい。また、ビームスプリッタ133を偏光ビームスプリッタとしてレーザ131の偏光方向を133によって反射されるS偏光とし、ビームスプリッタ133と134の間に1/4波長板(図示せず)を置くことによって、S偏光を円偏光に変換して探針103の反射面に当て、反射光を再び1/4波長板でP偏光に変えて偏光ビームスプリッタ133を透過させてもよい。
【0060】
また一方、作動距離の長い対物レンズを用いて、試料高さセンサと探針たわみセンサの少なくとも一方を対物レンズと試料の間の隙間を通して斜めから光を投影・検出するオフアクシス構成とする実施例ももちろん考えられる。図10をもちいてこれについては後述する。
【0061】
また、別の構成として、ヘテロダイン干渉法を用いて探針103のたわみを検出する方法について記述したが、具体的な光学系の構成としては、光源131の位置に周波数f1の点光源と周波数fで周波数シフトした周波数f1+Δfの点光源を配置する。点光源の配置のためにはレーザをレンズで絞っても、ファイバーの出射端をここに置いてもいい。この像を探針103の二点に形成するように光学系を調整する。
【0062】
例えば、図8に示すように、一方は探針のカンチレバー部の先端に、もう一方は根元に像を形成させる、この反射光は136の位置で交差するので136にフォトダイオードを置くと、二本の光は干渉して周波数Δfのビートを発生する。このビート信号を周波数シフタに与えた周波数Δfの信号を基準としてロックイン検出して位相を求めると、この位相の変化がすなわちカンチレバーの傾きの変化となる。
【0063】
これによって、カンチレバーのたわみを検出できる。あるいは、周波数シフタに与えた信号を用いる代わりに、レンズ132を通ってからビームスプリッタ133で反射されずに透過した光を二本のビームがクロスするところで別のフォトダイオード(図示せず)で検出して、周波数Δfの基準信号としてよい。
【0064】
また、別の構成として、ひずみゲージのようなひずみの変化を反映する信号を得られるものを探針に組み込んで、光学式たわみセンサの替わりとして用いてもよい。
【実施例6】
【0065】
図10は、光学系の実施例6を示す図である。光源111から出射した光はレンズ112で平行光に変えられてミラー113で反射され、ミラーでの反射を経てレンズ182に入射し、試料上501上に焦点を結ぶ。光源111に組み込む開口の形状によって、スポットあるいはスリットなど、任意の形状の像を形成できる。試料で反射した光はミラーでの反射を経てレンズ185を通り、結像レンズ115で検出器116上に像を結ぶ。像の位置は試料501の高さによって移動する。移動量は試料への検出項110の入射角をθ、レンズ115による結像倍率をm、試料の高さをZとすると、2mZsinθとなるので、この移動量を計測すれば試料の高さZが検出できる。検出器116は像の位置が検出できればいいので、PSD(ポジションセンシティブデバイス)・分割型ホトダイオード・リニアイメージセンサなど何でもよい。
【0066】
図10の実施例6における探針のたわみ検出系について説明する。光源131から出た光はレンズ132を通り、ミラーでの反射を経て、探針のカンチレバー部103に照射される。ここで反射したミラーでの反射を経てセンサ136に照射される。カンチレバー103のたわみは反射光の角度変化となり、これによってカンチレバーの反射面の傾きに比例した位置変化がセンサ136上の光に生起される。これを136の位置に置いたPSD(ポジションセンシティブデバイス)・分割型ホトダイオード・リニアイメージセンサなどによって検出することによってカンチレバーの傾き(たわみ)を検出することが可能になる。
【0067】
また、二次元型のPSD、イメージセンサ、4分割フォトダイオードを用いることにより、たわみと同時にねじれを検出することも可能になる。本検出光130を試料観察系の光と分離するために光源131は単色のレーザとして、この光だけを通すように検出器136の前に干渉フィルターを設けるのが望ましい。
【0068】
なお、109は試料観察系の対物レンズである。本光学系は検出器136の前に別系統で参照光を導いて136から得られたヘテロダインあるいはホモダイン干渉信号を処理して探針の変形あるいは振動状態を検出してもよい。
【実施例7】
【0069】
図11は、光学系のさらに別の実施例7を示す図である。図6で説明した実施例に比べて、観察光学系が別になっており、ハーフミラー902で横方向に折り曲げて、観察用レンズ901でカンチレバーおよび試料を照明観察する。図6の照明光源154と観察用イメージセンサ151の901の後方にセットされている。101は探針の振動励起、変形検出用のレンズとなり、収差に対する要求が甘いので、観察兼用のレンズに比べて小さいレンズで済む。レンズ101は探針103の移動と並行に駆動され常に、探針103上にレーザスポットを形成する。
【0070】
他の構成については、4分の1波長版725の位置がレンズ101の近くに来ていること以外は図6の構成と同一である。波長板725の位置はなるべく被比測定物に近いほうが途中の光路での散乱光の影響を除去できるのでこの場所に置かれている。また、本図では探針の変形の計測は光学干渉によっていたが、図9の実施例と同様に光テコ検出によってもよいことは言うまでもない。
【実施例8】
【0071】
図12は、光学系のさらに別の実施例8を示す図である。図11に比べて、振動励起光710と測定光130がいったんレンズ751で集光されて、偏波面保存ファイバ750に入射する。出射した光は4分の1波長版725を経てレンズ101で探針103上に像を結ぶ。探針103で反射された光は再度同じ光路で偏波面保存ファイバ750を戻り、レンズ751で平行光に変換される。このあとの動作は図11と同一である。
【実施例9】
【0072】
つぎに、半導体パターンのようなアスペクトが高いサンプルの計測に適した実施例について、図3を用いて説明する。このように、力の勾配はほぼ試料表面法線方向に生じる。前述のように力の勾配により共振周波数がずれることによって接触状態を検知するので、探針先端と試料の間に働く粘性力や摩擦力の影響が相対的に小さいとすれば、探針の振動と力勾配の方向がほぼ一致している場合に接触力検出感度が高くなる。このため、図3の右側の図のように急傾斜部を測定する場合は力の勾配が横方向なので、縦方向の探針振動では検出感度が小さいか、または、摩擦力が強い場合は探針および試料の摩耗が大きく問題となる。
【0073】
このような場合に、探針の振動方向を左右に切り替えてやれば、感度よく接触を検知でき探針および試料の摩耗も小さくなる。あるいは、縦方向と横方法の振動を同時に起こし、それぞれの振動モードの振動状態を検知することで、力の勾配の大きさと同時に力の方向を検知することも可能である。
【0074】
2方向の振動を同時に起こす方法は、両方の振動モードに相当する周波数の信号を重畳して振動励起光702あるいは探針駆動部202に与えてやればよく、振動状態検出にはフィルターでそれぞれの周波数の信号を選択してやればよい。また、2周波数の信号を重畳する代わりに、一方は振動励起光、もう一方は探針駆動部と別の励起方法で探針振動を励起してもよい。以上の実施例によって、高アスペクト比パターンの急傾斜部を滑りや摩耗なく正確に計測することが可能となる。
【実施例10】
【0075】
図13は、実施例10を示す。図13のように、傾斜部の形状を細かく計測するために、力の勾配の方向あるいは測定形状の局所的傾きによって、次の測定点を細かくとる実施例も考えられる。具体的には、たとえば、試料表面の局所的法線方向の角度θ(垂直方向を0とする)に応じて、水平面のスキャン間隔をΔxとしたときp+Δxcosθの間隔をもって次の測定点に移動する。
【0076】
なお、pは最小ピッチを示す補正項である。さらに別の実施例として、θが非常に大きい場合、たとえば80度以上の場合、探針の降下方向と斜面の方向が近すぎて安定に探針を降下できなくなる。このような場合に、下り傾斜の場合はpを少し大きめにとっておいて、探針を降下させ、前回の測定点よりΔxあるいはΔxsinθだけ降下した点で、探針の降下をとめて、ここで接触を検知するまで探針を左方向に移動させ、接触を検知した点の位置を計測する。逆に上り傾斜の場合は探針をpだけ左方向に移動させてから探針をΔxあるいはΔxsinθだけ引き上げ、ここで接触を検知するまで探針を右方向に移動させ、接触を検知した点の位置を計測する。
【0077】
このようにすれば、θが90度を超えて斜面がオーバーハングしている場合にも、正確に斜面形状の測定を行うことが可能となる。
【実施例11】
【0078】
さらに、探針の先端はあるテーパ角を持っており、これよりも切り立った段差部の形状は走査プローブ顕微鏡では従来正確には計測できなかったが、段差を検出した場合に探針を傾斜させてスキャンさせるようにする。探針を傾斜させる方法としては探針のホルダに微小回転機構を設ける方法もあるが、「T.R.Albrecht、S.Akamine、M.J.Zdeblick、C.F.Quate、J.Vac.Sci.Technol.A8(1)、317(Jan./Feb.、1990)」に開示されているような図14に示した圧電薄膜型カンチレバーを用いる方法もある。
【0079】
いわゆるバイモルフ構造になっており、中間電極Gの上下に圧電体が設けられ、その反対側に電極A、B、C、Dが形成されている。ここで、A−G、D−GとB−G、C−Gに逆方向の電圧変化を与えるとねじれ変形が生起され、探針を傾けることができる。探針のねじれは、探針のたわみ検出器136に4分割フォトダイオードを用いれば簡単に検出することが可能である。
【実施例12】
【0080】
また、近年カーボンナノチューブが細くて耐久性の高い探針材料として注目されている。これはナノメートルから10ナノメートルオーダーの円柱状のカーボン原子で構成された材料である。これを使えば、切り立った段差状の形状の走査プローブ顕微鏡による正確な計測の可能性があるが、90度以上のオーバーハングした段差は計測ができない、また、探針の角度と段差の角度が類似していると静電力によって探針が試料段差部に吸着されて曲がり正確な形状が計測できないという問題がある。
【0081】
これに対して、図15に示すようにカーボンナノチューブを静電力によって曲げて段差部を正確に計測する実施例を示す。195がカーボンナノチューブである。この左右に電極197と196を配し、この周りを絶縁体198で覆う。電極197と196の何れかに電圧を印加すると、カーボンナノチューブ198静電力によって吸着されて曲げられる。
【0082】
図15の例では196側に電圧が印加されている。これによって、切り立った段差部を正確に計測することが可能となる。また、オーバーハングしている探針向けに図16の様な先端部の拡がった探針を用いる構成も考えられる。
【実施例13】
【0083】
更に、別の実施例として、図17のように探針ホルダ部をリンク機構で構成することも考えられる。リンクの節は弾性ヒンジで構成しガタがないようにするのが望ましい。このとき、図17の右図のようにリンクを変形させると探針先端の位置を変えないで傾きだけ変化させることが可能である。
【実施例14】
【0084】
図18は、本発明の実施例14のレジストパターンを計測する例を示す。レジストパターンの計測では(a)のように垂直にパターンが切れているか、(b)のようにレジストが薄く残っているか、(c)のように溝あるいは穴の下部が狭まっているかを見分ける必要がある。本発明によれば、探針を加振しているので、振動の位相を検知することで、材質の違いを検知し、これらを見分けることが可能になる。
【実施例15】
【0085】
図19は、本発明の実施例15のデバイス製造方法について示す。ウェハ620をプロセス装置601、601’に流してデバイスを形成していく。プロセス装置601、601’は場合によってエッチャーであったり、CMP装置であったり、露光装置であったり、現像装置であったりする。これらの工程を経た抜き取りウェハあるいはダミーウェハ621をもちいて、本発明の走査プローブ顕微鏡603によってウェハ上に形成されたパターンを観察・計測する。あるいは、スループットが大きいので全ウェハを本発明の走査プローブ顕微鏡603で観察・計測してもよい。
【0086】
本発明の実施例15では、パターンの立体形状や表面の状態の分布を試料にダメージを与えることなく正確に観察・計測できるので、観察・計測結果をプロセス装置601、601’のプロセス条件にフィードバックすることで、安定に高精度なデバイスを製造できる。場合によってはフィードバックの経路610に専用のデータ処理サーバ(図示せず)を介してもよい。
【実施例16】
【0087】
図20は、本発明の実施例16である製造装置の全体構成を示す。313が対物レンズ109と探針103とその駆動系、検出系を含んだ検出ヘッド部である。ステージ302上に試料501を搭載して計測を行う。310は基板を搭載したカセットを載せる台で、ロボットアーム311はここから基板をとりだして、プリアライナ312で基板の回転角度を検出してから、所定の方向となるように基板をステージ302に搭載し計測を行う。装置全体の動作は全体制御装置250によって制御され、表示・入力装置251によって、操作者の指示を受けたり、光学像やSPM像を提示したりすることが出来る。また、全体制御装置250はLAN装置につながり、計測データなどをやり取りしてもよい。
【0088】
試料501が所定の方向となるように基板をステージ302に搭載された後、対物レンズ109で基板上の複数の位置だしマークを観察し、基板の位置・回転を精密に計測(アライメント)する。この情報を元に、既登録の計測位置に移動して、計測を開始する。まず、探針をおろして基板に接触させる。つぎに、ここで走査プローブ顕微鏡による走査(SPMスキャン)をおこない計測データを得る。探針を退避し、全指定計測点を計測完了するまで、次の測定位置に戻っては、上記動作を繰り返す。全指定計測点の計測が完了すると、アンロード位置にステージを移動して、ロボットアーム311がこれをとりだしてカセットに格納して、1枚の基板の計測が終わる。
【0089】
本発明では、探針のアプローチとSPMスキャンを高速に行えるようにしたため、全体の測定の所要時間の短縮が可能になった。
【実施例17】
【0090】
次に図2を用いて、探針の退避距離を可変にして、さらに高速な計測を実現する実施例17について示す。図2(a)のように、従来、試料の最大段差に対応してこれ以上の退避距離をとっては次の測定点に接近するようにすることが正確な段差の計測に必要であった。これに対して、半導体パターンのように、対象物の段差構造がある程度わかっている場合は、これを利用して図2(b)に示すように探針距離を小さくすることが可能である。
【0091】
このように探針が試料の高い面をスキャンしている間は、退避距離を探針と試料の吸着を離脱するのに最低限必要な距離にとどめ、探針が試料の低い面をスキャンしている間は、退避距離を試料の段差に対して少し余裕を持ってとるようにすることで、全体のスキャン時間を短くすることが可能である。
【実施例18】
【0092】
さらに、別の実施例18として、図2(c)に示すように、探針の退避距離をつねに吸着を離脱するのに最低限必要な距離に保っておき、段差部を検出した場合は、退避距離を一時的に増加する方法を提案する。この図2(c)のように、段差部の検出方法の実施例18として横応力を検出する方法を示す。
【0093】
探針の縦応力と横応力を同時に検出する構成は既述してある。これを利用して段差部で横応力を検出した場合に、段差に乗り上げていく個所をスキャンしていると判断して、退避量を大きくして再度接近を行う。精度は若干落ちるが、再測定は行わずに次の点の測定時に退避量を大きくして、再度同じ点の測定を行わない方法も考えられる。
【0094】
また、測定高さがある変化率以上高い方向に変化したら、段差部にさしかかったと判断して退避距離を増す方法を用いてもよい。吸着を離脱するのに最低限必要な距離は試料と探針の状態によって変るので、一定値をとらず、退避距離は吸着離脱時に探針の周りの力の場がなくなるので、探針の振動状態が回復する現象をもちいて、吸着離脱を検知してもよい。
【0095】
なお、本実施例18中では探針を駆動するように説明をしたが、ここで、重要なのは試料に対する探針の相対的な駆動であり、探針側にX、Y、Z軸をもつ構成を前提としていたわけではない。例えば、試料側にX、Y軸を持つ構成や、試料側にX、Y、Z軸を持つ構成でも、本実施例中の議論は成り立つことはいうまでもない。
【実施例19】
【0096】
つぎに、探針の傾斜による光路のずれを吸収する実施例19について以下に示す。探針を傾ける方法のうち、図15で示したような探針部分だけを曲げる方法ではなく、図14、図17に示したような、探針を取り付けているカンチレバー部自体を傾ける、あるいは、カンチレバー部の先端をねじるような構成では、カンチレバーの背面に照射する検出光の光路が傾いてしまい検出器に光が到達しなくなってしまう。このため、検出光の光路が傾いても検出光を検出器に到達できることが必要であった。このための実施例について、以下に説明する。図21は図6と同一の光学系の構成を示す図である。ただし、探針の傾きによる光路のずれを示すために途中の光学部品の縮尺を変更して描いている。カンチレバー103が角度θ傾くと、カンチレバー103に照射した検出光130の反射光130‘は2θ傾くことになる。この光は焦点距離fがレンズ101を透過した後、投影光130の光路に対して、略fθだけずれた光路130’をミラー712、134、722、721を通って、検出器720に向かうこととなる。このとき、レンズ729を検出器720の前に、729の焦点位置と検出器720の感光面が略一致するように配置することで、図示のように検出光と参照光が検出器720上で重なり、これによって、カンチレバー103を傾けて反射光が傾いても干渉を起こすことができる。たとえば5度の試料501上段差部のオーバーハングまで対応するために、探針をθ=10度まで傾けるとするとこれによる反射光130‘の傾きは2θ=20度となり、検出光の照射時の集光角を±α=3.5度とすると、検出光130’の辺縁光は2θ+α=23.5度まで傾くこととなり、レンズ101の開口数(NA)としてはsin(2θ+α)=0.4以上あればいい。また、このときカンチレバー103上の検出光のスポットサイズは、集光角αで決まり、検出光の波長をλ=0.63μmとすると、λ/2sinα=5.2μm程度まで絞ることが可能である。
【実施例20】
【0097】
次に図22をもちいて別の探針傾け対応の検出系の実施例を示す。カンチレバー103の傾けθに応じて、θfだけ鏡筒190を水平方向にずらす。ここで、fはレンズ101の焦点距離である。これによって、検出光130がレンズ101に入射する光路がfθずれるので、カンチレバー103への照射角がθだけ傾くこととなり、カンチレバー103の傾きと同じだけ照射角が傾くので、反射光は元来たθ傾いた光路を戻り、探針を傾ける前と略同じ光路を検出器720へ導かれることとなる。これによって、図21による実施例19に比べて、光路の最大傾きが2θ+αからθ+αと約半分になり、より、大きい探針方向けまで対応できるようになる。たとえば、レンズの開口数(NA)を0.4、検出光の集光角をα=3.5度とすると、θ=arcsin(NA)−α=20度まで探針を傾けることが可能となる。側壁の角度に対してさらに5度余裕をもって探針を当てるとすると、探針を20度傾けることによって対応できる側壁のオーバーハングとしては15度となる。この場合レンズ729はなくても、720上に検出光791と参照光792が重なるので、729をなくしてもいいが、探針のばらつきや探針の走査に伴う若干の光路のずれを吸収するためにレンズ729を役立てても良い。
【0098】
なお、図では側壁の右側を測るために、探針を右向けに傾ける場合で描いているが、左向きの側壁にたいしては探針を逆に左向きに傾け、これにあわせて、鏡筒190をθfだけ左方向にずらせばよい。
【実施例21】
【0099】
次に、図23を用いて、図22を用いて説明した実施例20を若干変更した実施例21を説明する。図22の実施例21では、鏡筒190全体を探針の傾きにあわせて左右に移動していたが、代わりに、プリズム134および712のみを左右に移動しても良い。プリズム134の移動によって検出光130の照射角を探針の傾きに合わせて左右に振ることができる。また、プリズム712の移動によって、励起光710の照射角を探針の傾きに合わせて左右に振ることができる。ただし、励起光710はカンチレバー103に照射後の反射光の検出が必要ないので、必ずしも探針の傾きに合わせて左右に振らなくても良いため、プリズム712は可動としなくてもよい。
【実施例22】
【0100】
次に、別の実施例22として図24を用いて、光テコによってカンチレバーの探針接触状態検出を行う方法について説明する。全体の構成は図9で既に説明したが、図23と同様にプリズム134および712を左右に移動すると、光源131から出射した検出光がカンチレバーに当るときの照射角をカンチレバーの傾きθにあわせて変化させることができる。プリズム134の移動により、センサ136上に検出光の位置も略一定に保たれる。このため、カンチレバーの傾きを変えても、センサ136の略動作中心に検出光の戻り位置を保つことができ、これによって、常に、光てこの原理によってカンチレバーの微小なたわみを検出することができるようになる。
【実施例23】
【0101】
次に別の実施例23として図25を用いて、図12で説明した偏波面保存ファイバを用いた場合の探針傾き対応の実施例23について示す。図25(a)は図21で説明した実施例と同様に探針の傾きθによる反射方向の傾き2θを、開口角(NA)の大きいレンズを用いて吸収する方法である。図25(b)は可撓性のある光ファイバの特徴を生かして、光ファイバ750の端部と波長板725、レンズ101、カンチレバー103を一体としてθだけ傾ける実施例である。これらの相対的な位置関係が変わらないので、常に光ファイバ端とカンチレバーの間の共役関係が保たれ、カンチレバーの傾きにかかわらず、カンチレバーに照射された光が、再び、光ファイバ750に戻る。また、この図25ではレンズ101が一枚だけであるが、2枚以上のレンズを用いて、波長板725をはさむ形にしてもよい。このようにすると波長板を透過する光線が略収束光となるようにできるので、波長板による偏光回転効果がより正確に得られて良い。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によれば、軟脆な材料や段差の急峻なパターン形状に対して近接センサを備えた探針を間欠的に接触させる、さらに、探針を傾斜させることによって形状を高精度に計測出来るようになる。この方式を半導体回路パターンの形状測定に用いることによって、微細回路を有する半導体製品を極めて安定的に生産することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の実施例1の走査プローブ顕微鏡の全体の構成を示す図である。
【図2】探針の動作を示す図であり、本発明の実施例17,18の探針の退避距離を制御する場合の探針の動作にも対応する。
【図3】探針と試料の傾きの関係を示す図であり、本発明の実施例9の半導体パターンのようなアスペクトが高いサンプルの計測に適した関係にも対応する。
【図4】振動による接触状態の検知の原理を示す図である。
【図5】振動による接触状態の検知への帯電の影響を示す図である。
【図6】本発明の実施例2の走査プローブ顕微鏡の光学系を示す図である。
【図7】本発明の実施例3の別の光学系を示す図である。
【図8】ヘテロダイン干渉によって、探針のたわみを計測する原理を示す図である。本発明の実施例4に対応する。
【図9】本発明の実施例5の別の光学系を示す図である。
【図10】本発明の実施例6の更に別の光学系を示す図である。
【図11】本発明の実施例7の更に別の光学系を示す図である。
【図12】本発明の実施例8の更に別の光学系を示す図である。
【図13】本発明の実施例10の、試料の傾きによって、探針の計測ステップを変化させる例を示す図である。
【図14】本発明の実施例11の傾きを制御可能な探針の別の構造例を示す図である。
【図15】本発明の実施例12の傾きを制御可能な探針の構造例を示す図である。
【図16】オーバーハングに対応できる探針の構造例を示す図である。
【図17】本発明の実施例13の傾きを制御可能な探針の別の構造例を示す図である。
【図18】本発明の実施例14のレジストパターンを判別できる例を示す図である。
【図19】本発明の実施例15の半導体のプロセスの条件制御を行う例を示す図である。
【図20】本発明の実施例16の半導体ウェハの計測を行う場合の装置構成のを示す図である。
【図21】本発明の実施例19のカンチレバーの傾きに対応した光学系を示す図である。
【図22】本発明の実施例20のカンチレバーの傾きに対応した光学系を示す図である。
【図23】本発明の実施例21のカンチレバーの傾きに対応した光学系を示す図である。
【図24】本発明の実施例22のカンチレバーの傾きに対応した光学系を示す図である。
【図25】本発明の実施例23のカンチレバーの傾きに対応した光学系を示す図である。
【符号の説明】
【0104】
101 レンズ
102 鏡筒
103 探針
111 光源
112 レンズ
113 ミラー
114 ミラー
115 レンズ
116 検出器
131 光源
132 レンズ
133 ビームスプリッタ
134 ビームスプリッタ
135 レンズ
136 検出器
154 照明光源
153 コンデンサレンズ
155 ビームスプリッタ
152 結像レンズ
151 イメージセンサ
170 光ファイバ
171 レンズ
172 検出器
182 レンズ
185 レンズ
195 カーボンナノチューブ
196 右側電極
197 左側電極
198 絶縁体
201 走査制御部
202 探針駆動部
203 探針ホルダ駆動部
204 近接センサ
205 接触状態検出器
206 光学像センサ
207 信号印加装置
208 SPM像形成装置
250 全体制御装置
251 入力・表示装置
252 探針移動機構
253 探針ホルダ上下機構
302 試料ステージ
311 ロボットアーム
312 プリアライメント手段
313 検出ヘッド部
314 LAN装置
501 試料
601 プロセス装置
603 走査プローブ顕微鏡
610 フィードバック情報
620 ウェハ
621 抜き取りあるいはダミーウェハ
701 2周波光発生装置
702 振動励起光源
712 ダイクロイックミラー
722 偏光ビームスプリッタ
723 偏光ビームスプリッタ
720 フォトダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を搭置した試料台と探針との相互の位置関係を制御する駆動機構と、前記探針の変形状態を計測するセンサとを備え、試料の立体表面形状を含む前記試料の表面分布を計測する走査プローブ顕微鏡において、
前記探針を微小振幅で高周波振動させる振動手段と、微小振幅で高周波振動させた前記探針と前記試料との接触状態を検知する検出手段とを備え、前記駆動機構により前記探針を前記試料の表面から引き離して次の測定点近傍に移動させた後、前記検出手段が前記試料表面に対して一定の接触状態を検知するまで、前記駆動機構により前記探針を前記試料に接近させる動作を連続させることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡において、
前記探針と前記試料表面との接触状態を前記探針の振動信号を検出して解析することによって、前記探針の引き上げ量を最小限に制御する制御手段を備えていることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項3】
請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡において、
前記振動手段は前記探針を前記試料台の表面に対して略垂直及び略水平の方向に振動することを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項4】
請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡において、
前記振動手段は、前記探針に照射する光の強度変調によって前記探針の振動を励起することを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項5】
請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡において、
前記検出手段は、前記探針の振動を前記探針に照射したレーザ光の干渉を用いて検出することを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項6】
請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡において、
前記検出手段は、前記探針の振動が前記探針に照射した光の反射角度の変化を用いて前記探針の振動を検出することを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項7】
請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡において、
半導体回路素子を含む規則的な配線パターンに対して、前記パターンの段差の上部と下部を認識し、前記段差の上部を前記探針が走査しているとき前記探針の引き上げ量を前記探針が前記パターン表面からの吸着離脱に必要な最小距離にとどめ、前記段差の下部を前記探針が走査しているとき前記段差の側面に前記探針が接触しない距離にとどめる制御手段を備えていることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項8】
請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡において、
前記探針が前記試料の段差側面に接近あるいは接触したことを検知して前記探針の引き上げ量を増加させる、または前記探針を更に引き上げるように前記探針を制御する制御手段を備えていることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項9】
請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡において、
前記探針が前記試料の表面に接触する角度を前記試料表面の傾きに応じて変更する手段を備えていることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項10】
試料を搭置した試料台と探針との相互の位置関係を制御する駆動機構と、前記探針の変形状態を計測するセンサとを備え、試料の立体表面形状を計測する走査プローブ顕微鏡を用いた試料観察方法において、
微小振幅で高周波振動させた前記探針と前記試料との接触状態を高速・高精度に検出し、前記探針を前記試料の表面から引き離して次の測定点近傍に移動させた後、前記試料表面に対して一定の接触状態を検知するまで前記探針を前記試料に接近させる動作を連続させること特徴とする試料観察方法。
【請求項11】
半導体回路素子を含む規則的な配線パターンに対して、前記パターンの段差の上部と下部を認識し、前記段差の上部を前記探針が走査しているとき前記探針の引き上げ量を前記探針が前記パターン表面からの吸着離脱に必要な最小距離にとどめ、前記段差の下部を前記探針が走査しているとき前記段差の側面に前記探針が接触しない距離にとどめて、半導体回路素子を含む規則的な配線パターンを、走査プローブ顕微鏡を用いて観察する工程を備えていることを特徴とするデバイス製造方法。
【請求項12】
試料を搭置した試料台と探針との相互の位置関係を制御する駆動機構と、前記探針の変形状態を光学的に検出るセンサを備え、試料の立体表面形状を含む前記試料の表面分布を計測する走査プローブ顕微鏡であって、探針を傾斜させる機構を有し、探針の傾きによる検出用光学系の光路のずれを吸収できる構造を持つことを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項13】
請求項12に記載の走査プローブ顕微鏡において、
前記探針の傾きによる検出用光学系の光路のずれを吸収できる構造は集光角が探針の傾きよりも大きいレンズによることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項14】
請求項12に記載の走査プローブ顕微鏡において、
前記探針の傾きによる検出用光学系の光路のずれを吸収できる構造は集光角が探針の傾きの2倍よりも大きいレンズによることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項15】
請求項12に記載の走査プローブ顕微鏡において、
前記検出用光学系の光路のずれを吸収できる構造として、さらに、光量信号検出器が光路のずれに対して広い幅をもつこと特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項16】
請求項12に記載の走査プローブ顕微鏡において、
前記検出用光学系の光路のずれを吸収できる構造として、さらに、光量信号検出器の前に集光レンズを用いて、光路のずれに対しても光量信号検出器に対して略同じ位置に検出光が集光されること特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項17】
請求項12に記載の走査プローブ顕微鏡において、
前記検出用光学系の光路のずれを吸収できる構造として、カンチレバーに対して直接集光を行うレンズとそのほかの光学系の間の相対位置をずらすことによって吸収すること特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項18】
請求項12に記載の走査プローブ顕微鏡において、
前記検出用光学系の光路のずれを吸収できる構造として、カンチレバーに対して直接集光を行うレンズと、このレンズに対して照明系から光を導き更に、このレンズからの検出光を検出光学系に導く光ファイバをもち、上記カンチレバーと、上記レンズと、上記光ファイバの端部を同時に傾けることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項19】
請求項12に記載の走査プローブ顕微鏡において、
前記探針の変形状態を光学的に検出するセンサとして、カンチレバーに照射した光がカンチレバーの変形による反射光の方向の変化を検出することによるセンサを用いることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項20】
請求項12に記載の走査プローブ顕微鏡において、
前記探針の変形状態を光学的に検出するセンサとして、カンチレバーに照射したレーザ光のカンチレバーの変形による反射光の位相の変化を用いることを特徴とする走査プローブ顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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