説明

走査プローブ顕微鏡及びこれを用いた局所的電気特性測定方法

【課題】 凹凸のある試料であっても局所的電気特性を高い精度で測定できる走査プローブ顕微鏡を提供する。
【解決手段】 先端部に針状のプローブ23を設けたカンチレバー22を振動させて試料表面の高さ情報を情報取得し、前記カンチレバー22の振動及び走査を停止したときに、前記試料表面の高さ情報に基づいて、プローブ23の先端を試料表面から一定の距離に保つようにカンチレバー22の位置を制御し、そのカンチレバー22の高さを保った状態からカンチレバー22を湾曲させ、プローブ23の先端を試料51に押し込む。プローブ23の先端と試料表面とは一定の距離に保たれているため、カンチレバー22を一定量湾曲させるだけで、凹凸のある試料51に対してもプローブ23の押し込み深さを一定とすることができる。これにより、凹凸のある試料51であっても局所的電気特性を高い精度で測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の導電率や誘電率といった電気的特性を局所的に測定できる走査プローブ顕微鏡及びこれを用いた局所的電気特性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSI等の半導体装置の高集積化にともない、半導体装置を構成するトランジスタ等の素子が微細化している。従来、半導体装置の評価を行うため、プローバを用いて個々の素子に電極を接続し、測定信号を印加して素子の電気的特性の測定をおこなっていた。しかし、微細化の進展にともない、プローバによる素子の電気的特性の評価が困難になりつつある。
【0003】
素子の微細化にあたっては、局所的な不純物の分布が素子の特性に大きな影響を及ぼすため、素子全体の電気的特性のみならず素子内の電気的特性を局所的に測定することが求められている。このような電気的特性の測定は、素子の微細化に伴う製造プロセス(製造条件)の複雑化及び高度化に伴い、不良発生原因の解明のためにも重要である。
【0004】
半導体装置の局所的電気特性を測定する方法としてAFM(Atomic Force Microscope:原子間力顕微鏡)等のプローブ(探針)を用いた測定方法がある。この方法は、AFMのプローブを試料に接触または接近させて走査しながら、プローブと試料との間に所定の電圧を印加することにより試料の電気的特性を局所的に測定することができる(例えば特許文献1)。また、自然酸化膜等の絶縁膜が形成された試料についての局所的電気特性の測定には、プローブの走査の途中で、プローブの先端を試料中に押し込むことにより、試料表面の自然酸化膜を突き破ってプローブと試料内部とを電気的に接触させて電気的特性を測定する方法がある。
【特許文献1】特開2005−64061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の走査プローブを用いた試料の測定では、プローブを試料に接触させた状態で走査をおこなうコンタクトモードで試料表面の形状を測定し、電気的特性の測定は、カンチレバーの湾曲量を圧電素子などで検出しながら湾曲量が一定となるようにプローブを押し付けて行っていた。しかし、この方法では、試料表面の状態により測定誤差が大きくなる場合がある。図1及び図2に従来の問題点を示す。ここで、図1において101は試料105を構成する半導体基板であり、102はその表面の自然酸化膜である。また、図2において、104はプローブ103を支持するカンチレバーである。
【0006】
例えば、図1に示すような表面を有する試料105について測定を行う場合には、試料表面が比較的平坦な領域Iの部分と、傾斜を有する領域IIとの間では摩擦力が異なり、カンチレバー104の湾曲量を一定に保つ制御のみでは、プローブ103の接触圧を一定に保つことができない。また、カンチレバー104の湾曲量によって押し込み量を制御した場合には、試料表面との摩擦が少ない部分(領域I)では図2(a)に示すような押し込み量d1が得られるのに対し、試料表面との摩擦力が大きい領域(領域II)では、図2(b)のような押し込み量d2となり、試料表面で均一な押し込み量とすることができない。このため、プローブ103と試料105との間の接触面積等が変化し、測定結果に試料表面の形状に起因する誤差が入ってしまい、凹凸の有る試料では、試料自体の有する電気的特性を高い精度で測定を行うことができなかった。
【0007】
したがって、従来の方法では高精度で試料の電気的特性を測定するには、測定前に試料を研磨して試料表面の二乗平均面粗さ(RMS)を0.2nm以下にする必要があった。しかしながら、RMSが0.2nm以下といった試料を調整するのは非常に手間がかかるという問題があった。さらに、鏡面研磨に適さない構造を有する試料については、精度の高い局所的電気特性の測定ができない。
【0008】
本発明の目的は、凹凸がある試料であっても高い精度で電気的特性を測定することのできる走査プローブ顕微鏡及びこれを用いた局所的電気特性の測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一観点によれば、先端部に針状のプローブを設けたカンチレバーを振動させて試料表面の高さ情報を取得する試料高さ情報取得手段と、前記カンチレバーの振動及び走査を停止したときに、前記試料表面の高さ情報に基づいて、プローブの先端を試料表面から一定の距離に保つようにカンチレバーの位置を制御するカンチレバー高さ制御手段と、前記一定の距離に保った状態から前記カンチレバーを湾曲させることにより、前記プローブの先端を前記試料に押し込むカンチレバー湾曲手段と、前記プローブが試料に押し込まれたときに前記試料に測定信号を印加して前記プローブを介して前記試料の局所的な電気特性を測定する電気特性測定装置と、前記試料の高さ情報及び局所的な電気特性の分布を測定するため、前記プローブを前記試料表面に沿って走査させるプローブ走査機構と、を備えたことを特徴とする走査プローブ顕微鏡が提供される。
【0010】
上記観点によれば、カンチレバーを振動(タッピング)させて試料の高さ情報を取得する。これにより従来のコンタクトモードに比べて凹凸のある試料表面へのプローブの追随性が向上する。さらに、カンチレバーの押し込み動作を行う際に、カンチレバーの振動及び走査を停止して、カンチレバー高さ制御手段によりプローブ先端を試料表面から一定の距離となるようにカンチレバーの高さを制御する。これにより、試料表面状態(傾斜や凹凸)に影響されること無く、カンチレバー押し込み直前の条件を常に等しくすることができる。ここで、“一定の距離”には、プローブ先端と試料表面との距離が零である場合、すなわち、プローブ先端が試料表面に接触している状態を含むものとする。
【0011】
プローブの押し込み動作は、カンチレバー高さ制御手段によりカンチレバーの高さを一定に保ったまま、カンチレバー湾曲手段によりカンチレバーのみを湾曲させることによりプローブの先端を試料内に押し込むことにより行われる。このように、プローブに近接したカンチレバーの湾曲によりプローブを押し込むため、カンチレバー全体の高さを押し下げてプローブを押し込む場合と比較して、試料表面状態に影響されること無く、制御性良く確実にプローブを試料内に押し込むことができる。したがって、上記観点の走査プローブ顕微鏡によれば、試料表面に凹凸を有する試料であってもプローブの押し込み量を一定とすることができ、局所的な電気特性を高い精度で測定することができる。
【0012】
さらに、本発明によれば、上述のカンチレバー湾曲手段を、カンチレバーに設けた圧電素子で構成した走査プローブ顕微鏡が提供される。圧電素子を用いることにより、プローブの自由端をnmオーダといった高い精度で制御することができる。
【0013】
尚、カンチレバー湾曲手段を圧電素子で構成する場合には、一端がカンチレバーの先端側の上面又は下面に接続され、他端がカンチレバーを保持するホルダーに固定された圧電素子であって、電圧の印加により前記カンチレバーを押し下げる方向の力を与える圧電素子によって構成できる。このような構成とすれば、複数の圧電体を積層した積層型を用いることができる。また、前記カンチレバー湾曲手段を、前記カンチレバー上面及び下面に設けられた複数の圧電体膜であって、上面及び下面に設けられた圧電体膜に差動的な電圧を印加することにより前記カンチレバーの上面側に伸張する方向の力を与え、前記カンチレバーの下面側に収縮する方向の力を与える複数の圧電体膜によって構成してもよい。この場合には、圧電体膜及びその電極を成膜プロセス及びエッチング等の半導体製造プロセスを用いて作製することができる。
【0014】
さらに、本発明の上記観点では、押し込みを行う直前のカンチレバーの高さが、プローブ先端が試料表面から一定の距離となるように保たれている。このため、前記カンチレバー湾曲手段によるカンチレバーの湾曲量を一定にするだけで、プローブの押し込み深さを一定とすることができる。このように、カンチレバー湾曲手段の制御は一定量の湾曲を行わせるだけであり、制御装置の構成を簡単にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0016】
図3は、本発明の一実施形態に係わる走査プローブ顕微鏡を示すブロック図である。図4(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係わる走査プローブ顕微鏡に使用するカンチレバーを示す側面図である。以下の説明において、X−Y方向とは、試料ステージ52及び試料51の表面と平行な方向を指し、Z方向とは試料51の表面と垂直な方向を意味する。
【0017】
図3に示す本発明の一実施形態に係わる走査プローブ顕微鏡10において、試料高さ情報取得手段は、光センサ62、振幅検出回路42、全体制御回路41、及びZ方向送り制御回路44からなるフィードバックループによって構成され、カンチレバー高さ制御手段は、全体制御回路41及びZ方向送り制御回路44で構成され、カンチレバー湾曲手段はカンチレバー湾曲部材70で構成され、電気特性測定装置は、電気特性測定回路45及び測定電圧制御回路47で構成され、プローブ走査機構はX−Y方向送り機構31で構成されている。以下、本実施形態に係わる走査プローブ顕微鏡10の各部の構成について更に詳細に説明する。
【0018】
X−Y方向送り機構31は、後述するホルダー33及びこれに取り付けられたプローブ(探針)23をX−Y方向に送るための機構であり、所定の走査領域内にわたって、プローブ23を試料51の表面と平行に走査させることができる。X−Y方向送り機構31は例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などの圧電体を用いた駆動素子によって構成することができ、カンチレバー22及びその先端に形成されているプローブ23を、1nm以下のステップで移動させることができる。
【0019】
Z方向送り機構32は、X−Y方向送り機構31の可動部分に取り付けられ、カンチレバー22及びその先端に取り付けられたプローブ23をZ方向に例えば0.05nm程度(光てこ方式の最小解像度)のステップで送ることができる。Z方向送り機構32は、例えばPZT等の圧電体を用いた駆動素子によって構成される。Z方向送り機構32は、更にカンチレバー22にその共振周波数(例えば300kHz)付近であって、Z方向の振幅を有する振動を与えることができる。Z方向送り機構32の送りの量は後述するZ方向送り制御回路44からの制御出力によって定められる。
【0020】
ホルダー33は、カンチレバー22を保持するための部材であり、Z方向送り機構32の可動部に取り付けられている。ホルダー33には、カンチレバー22が脱着可能に取り付けられている。
【0021】
カンチレバー22は、一端がホルダー33に固定され、他方の一端が自由端となっており、その自由端には、プローブ23が形成されている。カンチレバー22は、例えば中抜きの三角形状又は矩形状の薄板であって、その厚さは0.1〜5μm程度、長さは数十μm程度とすることができる。カンチレバー22は、例えば、Si又はSiN単結晶の薄板を用いることができる。カンチレバー22には、カンチレバー湾曲制御回路46によって駆動されるカンチレバー湾曲部材70が設けられている。このカンチレバー湾曲部材70によりZ方向送り機構32と独立してカンチレバー22をZ方向に湾曲させることができ、カンチレバー22の自由端側に取り付けられたプローブ23を、試料表面に押し付けることができる。カンチレバー22の湾曲量は、カンチレバー湾曲部材70に印加する制御電圧によって調整することができる。例えば、試料51が半導体装置(Si単結晶)について測定を行う場合には、自然酸化膜の厚さは1〜3nm程度なので、カンチレバー22を湾曲させる直前のプローブ23と試料51の表面との間隔に加えて、プローブ23が半導体等の自然酸化膜を突き破るのに必要な1〜3nmのプローブ押し下げ量が得られるようにカンチレバー22を湾曲させる。
【0022】
プローブ23は、カンチレバー22の自由端側の一面から突出して形成されている。プローブ23は、先端にかけて細くなるように形成されその先端部は、例えば、1〜50nm程度の曲率半径を有する。本実施形態のプローブ23は、自然酸化膜を突き破って試料内部と電気的に接触するため、機械的な強度の高い材料を用いることが好ましく、例えば、CVD法等によって形成された導電性を有するDLC(Diamond Like Carbon)等を用いることができる。また、プローブ23の導電性を良くするため、スパッタ法等により金属薄膜(例えばPtIr等)をその表面に形成しても良い。その他、プローブ23には硬度の高いPtIr又はNiSi等を用いることができる。
【0023】
以下図4(a)及び(b)を参照しつつ、本実施形態のカンチレバー湾曲部材70の構成例について説明する。
【0024】
図4(a)に示すように、本実施形態のカンチレバー湾曲部材70の第1の構成例は、カンチレバー22に取り付けられた圧電素子71によって構成される。圧電素子71の一端は接合部材73によってカンチレバー22に取り付けられ、他方の端は、例えば、スペーサ74及び支持板72等の構造物を介してホルダー33に固定されている。この圧電素子71は、多数の圧電体膜を重ねて棒状に形成した積層型の圧電素子を使用でき、電圧の変化により厚み方向(図中I方向)に伸縮する。この構成例のカンチレバー22では、圧電素子71に電圧を印加することにより、圧電素子71が紙面の上下方向(矢印I方向)に収縮し、カンチレバー22の自由端を矢印A方向に押し下げることができる。尚、圧電素子71をカンチレバー22の上方に取り付けて、圧電素子71を伸張させることによりカンチレバー22を押し下げる構成としても良い。
【0025】
図4(b)は、本実施形態のカンチレバー湾曲部材70の第2の構成例であり、カンチレバー22の上下の両面に、圧電素子75及び76が積層された、バイモルフ構造となっている。圧電素子75及び76には、例えばSi単結晶薄板のカンチレバー22の表面にスパッタ法やCVD法等によって形成されたPZT膜等を使用できる。また、圧電素子75及び76の電極は公知の半導体製造プロセスにより作製できる。本構成例のカンチレバー湾曲部材70は、圧電素子75及び76にそれぞれ差動的な(符合の異なる)電圧を印加することにより、圧電素子75を矢印II方向に収縮させるとともに、圧電素子76を矢印III方向に伸張させることができる。圧電素子75及び76の伸縮によりカンチレバー22に反りが生じ、その自由端側が矢印A方向に押し下げられる。尚、図示の例では、カンチレバー22の表面の一部にのみ圧電素子75及び76を形成したが、これらをカンチレバー22の全面に形成しても良い。
【0026】
上記の構成例では、カンチレバー22に圧電素子を設けて反りを生じさせる構成であるが、本実施形態はこれらに限られず、カンチレバー22の自由端側を試料51の方に変位させるための各種構成を用いることができ、例えば、熱膨張率の異なる金属を張り合わせたバイメタルをカンチレバー22に取り付け、電流による発熱によってカンチレバー22を押し下げる方向の力を与えてカンチレバー22を湾曲させる構成や、磁気若しくは静電気による吸引力又は反発力を用いた構成とすることができる。
【0027】
以上の本実施形態では、プローブ23を試料51に押し付けるための部材として、カンチレバー22にカンチレバー湾曲部材70が形成されている。これにより、Z方向送り制御手段を用いてプローブ23の押し込み動作をする場合と比較して、より強い力で制御性良くプローブ23を試料51に押し込むことができる。
【0028】
図3に戻り、走査プローブ顕微鏡10の他の構成について説明する。
【0029】
レーザ光源61と光センサ62は、カンチレバー22のZ方向の変移を検出するセンサを構成する。レーザ光源61からの光は、カンチレバー22の自由端付近の上面に照射され、反射したレーザ光は光センサ62上に所定の像を形成するように構成されている。光センサ62は例えば4分割したフォトダイオードによって構成できる。カンチレバー22のZ方向の変位に応じて、光センサ62に形成される反射光の像が変化し、光センサ62を構成するそれぞれのフォトダイオードの出力が変化する。この光センサ62からの出力は振動状態検出回路42に送られる。
【0030】
試料51は、図8に示すように、例えば、半導体装置を切断したものであり、測定電圧を印加するための電極114が形成されている。この電極114には測定信号制御回路47が接続され、電気的特性の測定時に所定の直流電圧又は交流電圧(測定電圧)が試料51に印加される。尚、図8において110はゲート、111及び112は不純物拡散領域、113はシリコン基板を示している。本実施形態の走査プローブ顕微鏡10によれば、例えばZ方向送り機構32を構成する圧電素子に5000nmの伸張幅を有する素子を用いたときには、二乗平均面粗さ(RMS)が2500nm程度までの試料について局所的な電気特性を測定することができる。試料ステージ52は、試料51を保持するものであり、特に図示しないが、測定領域付近までの大まかな送り運動を与える粗動機構が設けられている。
【0031】
次に本実施形態の走査プローブ顕微鏡10の制御部について説明する。本実施形態の制御部は、振動状態検出回路42、X−Y方向送り制御回路43、Z方向送り制御回路44、電気特性測定回路45、カンチレバー湾曲制御回路46、測定信号制御回路47、及びこれらの制御回路全体を制御する全体制御回路41によって構成される。
【0032】
振動状態検出回路42は、光センサ62からの検出信号に基づいて、カンチレバー22の振動の振幅を計測する。カンチレバー22の振動運動によりプローブ23が試料51と接近または接触すると、試料51の表面の原子とプローブ23との間で原子間力が働き、カンチレバー22の振幅に変化が生ずる。この振幅値が所定の基準値を超えたとき又は所定の基準値を下まわった場合には、検出された振幅値と基準値との差に応じた出力を有するエラー信号が全体制御回路41に送出される。全体制御回路41は、このエラー信号がゼロとなるように、すなわちプローブ23と試料51との間隔を一定に保ってカンチレバー22の振幅が一定となるように、Z方向送り制御回路44に制御信号を出力する。振動状態検出回路42からのエラー信号がゼロとなった時点でのZ方向送り制御回路44への制御出力は、試料51の高さ情報を与える。このように、本実施形態に係わる走査プローブ顕微鏡10では、振動状態検出回路42、全体制御回路41、及びZ方向送り制御回路44によって、フィードバックループが形成され、プローブ23と試料51との間隔は一定に保たれる。
【0033】
X−Y方向送り制御回路43は全体制御回路41からの制御信号に基づいて、X−Y方向送り機構31に制御出力を送出する。この制御出力に基づいてX−Y方向送り機構31はプローブ23(カンチレバー22)を試料51の表面に沿って走査させる。
【0034】
Z方向送り制御回路44は、全体制御回路41からの制御信号に基づいて、カンチレバー22のZ方向の送り運動を与えるべく、直流成分の制御電圧をZ方向送り制御機構32に与える。また、Z方向送り制御回路44は、Z方向送り制御機構32に一定振幅の交流成分の制御電圧を、上述の直流成分の制御電圧に重畳して印加する。この交流成分の制御電圧の周波数は、カンチレバー22の共振周波数付近の周波数であり、これによりカンチレバー22を共振周波数(例えば300kHz)付近でZ方向に振動させる。尚、後述するプローブ23の押し込み動作時には、交流成分の制御電圧の印加は停止され、直流成分の制御電圧のみがZ方向送り機構32に印加される。
【0035】
電気特性測定回路45は、プローブ23と電気的に接続され、試料51に所定の測定信号を印加したときに、プローブ23に流れる電流値や、信号レベルを検出する。例えば、試料51の局所的な容量CやdC/dVの分布測定をおこなう場合には、容量計等を用いることができ、試料51の局所的な抵抗値RやdI/dVの分布測定をおこなう場合には、電流計を用いることができる。また、電気特性測定回路45は、容量計及び電流計の両方を備え測定目的に応じて切り替えて使用するものであっても良い。電気特性測定回路45の測定結果は全体制御回路41に送出される。
【0036】
カンチレバー湾曲制御回路46は、全体制御回路41からの制御信号に基づいて、カンチレバー湾曲部材70に所定の制御電圧を印加する。例えば、カンチレバー湾曲部材70に積層型圧電素子を用いる図4(a)の構成例では、一定の制御電圧を圧電素子71に印加することによりカンチレバー22の自由端側に取り付けられたプローブ23を一定量押し下げる。また、図4(b)に示す構成例のように、カンチレバー湾曲部材70を圧電素子75及び76を積層したバイモルフ構造とした場合には、圧電素子75と圧電素子76にそれぞれ差動的な(符号の異なる)制御電圧を印加する。上述のフィードバックループによりプローブ23と試料51の表面との間隔は常に一定値に制御されているため、カンチレバー湾曲制御回路46から圧電素子71、又は圧電素子75及び76に印加する電圧を一定値としておけば、プローブ23の先端の押し下げ量(試料51への押し込み量)は、試料51の表面の凹凸の状態によらずに常に一定値に保たれる。
【0037】
測定電圧制御回路47は、試料51に取り付けられた電極と接続されており、全体制御回路41からの制御信号に基づいて試料51に各種の測定信号を印加する。例えば、I−V特性の測定の場合は、定電圧電源により試料51に一定電圧を印加する。dI/dV特性の測定時には印加電圧を一定速度で変化する電圧を印加する。また、容量C測定の場合には、試料51に所定振幅の交流電圧を、必要に応じて所定の直流電圧に重畳させながら、印加する。
【0038】
全体制御回路41は、上述の各種制御回路42〜47に制御信号を送信して制御を行うと共に、振動状態検出回路42及び電気特性測定回路45からの検出信号を受信する。この外特に図示しないが、外部のインターフェースを介して測定データの出力及び各種動作指令の受信を行う。
【0039】
次に本実施形態の走査プローブ顕微鏡10の動作について、図5乃至図7を参照しつつ説明する。ここで、図5は、本発明の一実施形態に係わる走査プローブ顕微鏡の測定手順の一例を示すフローチャートであり、図6(a)は、本発明の一実施形態に係わる走査プローブ顕微鏡の測定時におけるプローブの動作を示す模式図であり、図6(b)は、押し込み動作時のカンチレバーの湾曲の様子を示す側面図であり、図7は、本発明の一実施形態に係わる走査プローブ顕微鏡の測定時の制御信号の波形の一例を示す図である。図8は、本発明の一実施形態に係わる走査プローブ顕微鏡の測定の様子を示す斜視図である。
【0040】
以下、本実施形態の走査プローブ顕微鏡10の動作を図6(a)に示すような凹凸を有する試料51の表面に沿ってプローブ23を走査しながら局所的電気特性を測定する場合を例に説明する。
【0041】
先ず、試料ステージ52の粗動機構(不図示)を使って測定領域付近をプローブ23の付近に接近させる。その後、Z方向送り機構32により、カンチレバー22を共振周波数付近で振動させながらプローブ23を試料51の表面に接近させる(ステップS10)。
【0042】
次に、振動状態検出回路42、全体制御回路41及びZ方向送り制御回路44のフィードバックループによりプローブ23を試料51の表面から一定の距離に保ちつつ、X−Y方向送り機構31によりプローブ23を試料51の表面に沿って一定速度で一定時間(例えばt0〜t1)移動(走査)させる(ステップS20)。このとき、プローブ23は、図6(a)で、矢印t0〜t1の部分を振動(タッピング)しながら移動していく。時間t1の直前において、プローブ23は、破線23b及び23cに示す位置で振動している。また、時間t0〜t1の間、Z方向送り制御回路44からの制御電圧は、例えば、図7の波形(B)に示すように変化する。ここで、波形(B)において横軸は時間を表し、縦軸は制御電圧を示す。t0〜t1にかけて、カンチレバー22を振動させるため、交流成分の制御電圧がZ方向送り機構32に印加されている。さらに、カンチレバー22の振幅が一定となるように、上述のフィードバックループによって制御された直流成分の制御電圧が印加されている。図6(a)に示すように、t0〜t1にかけてプローブ23が移動する部分では試料51の高さが一定であるため、Z方向送り制御回路44からの直流成分の制御電圧も図7の波形(B)に示すように一定値である。一方、プローブ23のZ方向の位置(高さは)は、図7の波形(A)に示すように変化する。ここで、波形(A)の横軸は時間を示し、縦軸はプローブ23の先端部分のZ方向の位置(高さ)を表す。図7の波形(A)に示すように、時間t0〜t1にかけてプローブ23の先端はカンチレバー22の振動によりZ方向に一定の振幅で振動している。
【0043】
次に、Z方向送り制御回路44からの交流成分の制御電圧の印加を停止して、Z方向送り機構32の振動を止めるとともに、X−Y方向の送り運動を停止して、プローブ23の走査を停止する(ステップS30)。これにより、図6(a)の破線23cに示すように、試料51の表面から所定の間隔を置いた位置で停止する。このとき、Z方向送り制御回路44からの制御電圧及びプローブ23のZ方向の位置(高さ)は、図7の時間t1におけるそれぞれの値をとる。
【0044】
次に時間t1〜t2にかけて、カンチレバー22を湾曲させてプローブ23を試料51の表面に接触させ、又は試料51の内部に押し込む(ステップS40)。例えば、試料51が半導体等のように自然酸化膜51bを形成する試料についてdI/dV(I/V)特性の測定を行う場合には、プローブ23の先端を、図6(a)に示すように、試料51の内部に押し込む。尚、容量Cの測定をおこなう場合には、プローブ23を試料内部に押し込まず、試料表面と接触する程度にカンチレバー22を湾曲させる。
【0045】
このとき、Z方向送り制御回路44からの制御電圧は、図7の波形(B)で交流成分の制御電圧の印加を停止する直前(時刻t1)の直流成分の制御電圧に保たれる。一方、カンチレバー湾曲制御回路46からは時間t1〜t2にかけて、例えば、図7の波形(C)に示す制御電圧がカンチレバー湾曲部材70の圧電素子71に印加される。ここに、波形(C)の横軸は時間であり、縦軸はカンチレバー湾曲回路46からの制御電圧を示す。これによりカンチレバー22が湾曲し、自由端側が試料表面方向に下がり、プローブ23が試料内に押し込まれる。時間t1〜t2にかけてプローブ23の先端のZ方向の位置は、図7の波形(A)に示すように変化する。
【0046】
また、時間t1〜t2にかけて、例えば、測定電圧制御回路47から試料51に図7の波形(D)に示すような測定電圧を印加して試料51の局所的電気特性の測定をおこなう(ステップS50)。尚、図7の波形はdI/dV測定をおこなうときの一例であり、抵抗測定のみをおこなう場合にはt1〜t2にかけて電圧値を一定値に保った直流電圧の測定信号を印加する。また、容量測定の場合には直流電圧に交流信号を重畳した測定電圧を印加する。t1〜t2にかけての電気的特性の測定は数ミリ秒の間行われる。
【0047】
次に時間t2に、カンチレバー22の湾曲を戻し、プローブ23の先端を試料表面又は試料内部から引き上げる(ステップS60)。これにより、図6(a)の破線23cに示すように、プローブ23は試料表面から所定の高さに移動する。
【0048】
次に、カンチレバー22を振動させる(ステップS70)。同時に振動状態検出回路42、全体制御回路41、Z方向送り制御回路44のフィードバックループを作動させて、プローブ23と試料51の表面との間隔を一定に保つようにZ方向送り機構32の制御を行う。
【0049】
以降、上述のステップS20に戻り、プローブ23の走査が終了するまで、ステップS20〜S70までの処理を繰り返しながら、試料51の局所的電気特性の測定をおこなっていく。この間、プローブ23は、例えば、図6(a)に示すように、紙面の右から左へ移動して行き、一定の間隔毎にプローブ23を試料51に押し込んで局所的電気特性を測定する。局所的電気特性の測定位置の間隔(ピッチ)は、測定範囲や測定時間の観点から適宜設定することができるが、最も高い空間的解像度で測定を行う場合には1nmピッチで行うこともできる。このような、プローブ23の押し込み動作において、プローブ23が押し込まれる直前のプローブ23と試料51の表面との間隔は、試料表面の高さや摩擦に影響されること無く一定に保たれる。これにより、図6(b)に示すように、押し込み直前のカンチレバー22b及び押し込み動作時の撓んだカンチレバー22aでのプローブ23の押し込み量Dは試料表面の状態(摩擦や傾斜)によらず一定となる。
【0050】
以上のように、本実施形態の走査プローブ顕微鏡10によれば、プローブ23と試料51の表面との間隔は、フィードバックループによって一定に保たれるとともに、カンチレバー22のカンチレバー湾曲部材に一定の制御電圧を与えるだけで、試料の凹凸によらずにプローブ23を試料内部に一定量押し込むことができる。これにより凹凸のある試料であっても局所的電気特性を精度良く測定することができる。このため、試料の鏡面研磨を行う必要が無く、測定結果を得るまでの作業工数を削減できる。また、研磨に適さない表面構造を有する試料についても局所的電気特性を精度良く測定できる。
【0051】
以下、本発明の諸態様を、付記としてまとめて記載する。
【0052】
(付記1) 先端部に針状のプローブを設けたカンチレバーを振動させて試料表面の高さ情報を取得する試料高さ情報取得手段と、前記カンチレバーの振動及び走査を停止したときに、前記試料表面の高さ情報に基づいて、プローブの先端を試料表面から一定の距離に保つようにカンチレバーの位置を制御するカンチレバー高さ制御手段と、前記一定の距離に保った状態から前記カンチレバーを湾曲させることにより、前記プローブの先端を前記試料に押し込むカンチレバー湾曲手段と、前記プローブが試料に押し込まれたときに前記試料に測定信号を印加して前記プローブを介して前記試料の局所的な電気特性を測定する電気特性測定装置と、前記試料の高さ情報及び局所的な電気特性の分布を測定するため、前記プローブを前記試料表面に沿って走査させるプローブ走査機構と、を備えたことを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【0053】
(付記2) 前記カンチレバー湾曲手段は、前記カンチレバーに取り付けられた圧電素子からなることを特徴とする付記1に記載の走査プローブ顕微鏡。
【0054】
(付記3) 前記カンチレバー湾曲手段は、一端が前記カンチレバーの先端側の上面又は下面に接続され、他端が前記カンチレバーを保持するホルダーに固定された圧電素子であって、電圧の印加により前記カンチレバーを押し下げる方向の力を与える圧電素子からなることを特徴とする付記1に記載の走査プローブ顕微鏡。
【0055】
(付記4) 前記カンチレバー湾曲手段は、前記カンチレバーの上面及び下面にそれぞれ設けられた複数の圧電体膜により構成され、上面に設けられた圧電体膜と下面に設けられた圧電体膜とに差動的な電圧を印加することにより、前記カンチレバーの上面側に伸張する方向の力を与えると共に前記カンチレバーの下面側に収縮する方向の力を与えることを特徴とする付記1に記載の走査プローブ顕微鏡。
【0056】
(付記5) 前記カンチレバー湾曲手段は、前記カンチレバーの上面又は下面に設けられた異なる熱膨張率を有する金属を積層した金属積層膜によって構成され、電流による発熱により前記カンチレバーに押し下げる方向の力を与えることを特徴とする付記1に記載の走査プローブ顕微鏡。
【0057】
(付記6) 前記電気特性測定装置は、前記試料に直流電圧を測定信号として印加して、前記試料の局所的な電流・電圧特性を測定することを特徴とする付記1に記載の走査プローブ顕微鏡。
【0058】
(付記7) 前記電気特性測定装置は、前記試料と前記プローブとの間に、直流電圧に重畳した交流電圧を測定信号として印加して、前記試料の局所的な容量・電圧(dC/dV)特性を測定することを特徴とする付記1に記載の走査プローブ顕微鏡。
【0059】
(付記8) 前記カンチレバー湾曲手段による前記カンチレバーの湾曲量が一定値であることを特徴とする付記1に記載の走査プローブ顕微鏡。
【0060】
(付記9) 先端に針状のプローブが形成されたカンチレバーを振動させて試料の高さ情報を取得するステップと、前記プローブの走査を停止すると共に前記カンチレバーの振動を停止し、前記試料の高さ情報に基づいて前記プローブの先端を前記試料表面から一定の距離に保つようにカンチレバーの高さを制御するステップと、前記カンチレバーの高さを保持しつつ前記カンチレバーを湾曲させて前記プローブを前記試料内に押し込むステップと、前記プローブを前記試料内に押し込んだ状態で前記試料に測定信号を印加し、前記プローブから測定信号を検出することにより、前記試料の局所的な電気特性を測定するステップと、を備えたことを特徴とする局所的電気特性の測定方法。
【0061】
(付記10) 前記カンチレバーの湾曲量を一定値にすることにより、プローブ押し込み深さを一定とすることを特徴とする付記9に記載の局所的電気特性の測定方法。
【0062】
(付記11) 前記電気特性を測定するステップは、前記試料に直流電圧を測定信号として印加して、前記試料の局所的な電流・電圧特性を測定することを特徴とする付記9に記載の局所的電気特性の測定方法。
【0063】
(付記12) 前記電気特性を測定するステップは、前記試料に直流電圧に重畳した交流電圧を測定信号として印加して、前記試料の局所的な容量・電圧(dC/dV)特性を測定することを特徴とする付記1に記載の走査プローブ顕微鏡。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は、従来の走査プローブ顕微鏡による局所的な電気特性測定時の問題点を示す模式図である(その1)。
【図2】図2は、従来の走査プローブ顕微鏡による局所的な電気的特性の測定時の問題点を示す模式図である(その2)。
【図3】図3は、本発明の一実施形態に係わる走査プローブ顕微鏡を示すブロック図である。
【図4】図4(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係わる走査プローブ顕微鏡に使用するカンチレバーを示す側面図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に係わる走査プローブ顕微鏡の測定手順の一例を示すフローチャートである。
【図6】図6(a)は、本発明の一実施形態に係わる走査プローブ顕微鏡の測定時におけるプローブの動作を示す模式図である。図6(b)は、押し込み動作時のカンチレバーの湾曲の様子を示す側面図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態に係わる走査プローブ顕微鏡の測定時の制御信号の波形の一例を示す図である。
【図8】図8は、本発明の一実施形態に係わる走査プローブ顕微鏡による測定に使用する試料の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0065】
10…走査プローブ顕微鏡、22…カンチレバー、23…プローブ、31…X−Y方向送り機構、32…Z方向送り機構、33…ホルダー、41…全体制御回路、42…振動状態検出回路、43…X−Y方向送り制御回路、44…Z方向送り制御回路、45…電気特性測定回路、46…カンチレバー湾曲制御回路、47…測定電圧制御回路、51…試料、52…試料ステージ、61…レーザ光源、62…光センサ、70…カンチレバー湾曲部材、71…圧電素子、72…支持板、73…接合部材、74…スペーサ、75、76…電素子、101…半導体基板、102…自然酸化膜、103…プローブ23、104…カンチレバー、105…試料、110…ゲート、111、112…不純物拡散領域、113…シリコン基板、114…電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に針状のプローブを設けたカンチレバーを振動させて試料表面の高さ情報を取得する試料高さ情報取得手段と、
前記カンチレバーの振動及び走査を停止したときに、前記試料表面の高さ情報に基づいて、プローブの先端を試料表面から一定の距離に保つようにカンチレバーの位置を制御するカンチレバー高さ制御手段と、
前記一定の距離に保った状態から前記カンチレバーを湾曲させることにより、前記プローブの先端を前記試料に押し込むカンチレバー湾曲手段と、
前記プローブが試料に押し込まれたときに前記試料に測定信号を印加して前記プローブを介して前記試料の局所的な電気特性を測定する電気特性測定装置と、
前記試料の高さ情報及び局所的な電気特性の分布を測定するため、前記プローブを前記試料表面に沿って走査させるプローブ走査機構と、を備えたことを特徴とする走査プローブ顕微鏡。
【請求項2】
前記カンチレバー湾曲手段は、前記カンチレバーに取り付けられた圧電素子からなることを特徴とする請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡。
【請求項3】
前記カンチレバー湾曲手段は、一端が前記カンチレバーの先端側の上面又は下面に接続され、他端が前記カンチレバーを保持するホルダーに固定された圧電素子であって、電圧の印加により前記カンチレバーを押し下げる方向の力を与える圧電素子からなることを特徴とする請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡。
【請求項4】
前記カンチレバー湾曲手段は、前記カンチレバーの上面及び下面にそれぞれ設けられた複数の圧電体膜により構成され、上面に設けられた圧電体膜と下面に設けられた圧電体膜とに差動的な電圧を印加することにより、前記カンチレバーの上面側に伸張する方向の力を与えると共に前記カンチレバーの下面側に収縮する方向の力を与えることを特徴とする請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡。
【請求項5】
前記カンチレバー湾曲手段によるカンチレバーの湾曲量が一定値であることを特徴とする請求項1に記載の走査プローブ顕微鏡。
【請求項6】
先端に針状のプローブが形成されたカンチレバーを振動させて試料の高さ情報を取得するステップと、
前記プローブの走査を停止すると共に前記カンチレバーの振動を停止し、前記試料の高さ情報に基づいて前記プローブの先端を前記試料の表面から一定の距離に保つようにカンチレバーの高さを制御するステップと、
前記カンチレバーの高さを保持しつつ前記カンチレバーを湾曲させて前記プローブを前記試料内に押し込むステップと、
前記プローブを前記試料内に押し込んだ状態で前記試料に測定信号を印加し、前記プローブから測定信号を検出することにより、前記試料の局所的な電気特性を測定するステップと、を備えたことを特徴とする局所的電気特性の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−53017(P2009−53017A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219567(P2007−219567)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】