説明

走査型顕微鏡

【課題】より簡単に、より明るく鮮明な観察画像を得ることができるようにする。
【解決手段】試料13への照明光の照射により生じた蛍光のうち、対物レンズ27に入射した蛍光は光検出器31により受光され、コンデンサレンズ32に入射した蛍光は、光検出器36に受光されて、それらの光検出器の出力から1つの観察画像が生成される。コンピュータ11は、ステージ28を上下方向に移動させて、試料13の複数の観察面を観察する場合、ステージ28の上下方向の位置に応じて光検出器31と光検出器36の受光感度を変化させる。このとき、ステージ28の各位置に対して定められた受光感度を示す光検出器36の受光感度テーブルは、光検出器31の受光感度テーブルを位置方向に反転することにより生成される。本発明は、走査型顕微鏡に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の蛍光観察時において、より簡単に、より明るく鮮明な観察画像を得ることができるようにした走査型顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スキャナを利用して試料の観察面を励起光で走査し、走査により生じた蛍光を受光して、試料を蛍光観察する走査型顕微鏡が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような走査型顕微鏡では、ステージ上に載置された試料に対して、試料と対向する対物レンズから励起光が照射される。そして、試料から対物レンズに入射した蛍光と、試料からステージの対物レンズ側とは反対に出射した蛍光とが、それぞれ異なる光検出器により受光されて、1つの観察画像が生成される。
【0003】
このような蛍光観察では、対物レンズの光軸方向(以下、z方向と称する)に並ぶ、試料の複数の断面が観察面とされて、各観察面の観察画像が生成されることが多い。
【0004】
ところが、試料にある程度の厚みがある場合、試料表面から遠い位置にある観察面で生じた蛍光は、その観察面から試料表面に到達するまでに、試料に吸収されてしまい、蛍光が弱まってしまうことがある。そうすると、光検出器では充分な光量の蛍光を受光することができず、観察画像が暗く不鮮明なものとなってしまう。
【0005】
そこで走査型顕微鏡では、観察面の位置によらず、明るく鮮明な観察画像が得られるように、各観察面の走査時に、蛍光を受光する2つの光検出器の受光感度が、ステージのz方向の位置に応じて変化するように制御される。このような制御を行なえば、ステージのz方向の位置、すなわちどの観察面を観察するかによらず、一定の明るさの観察画像を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−62694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した技術では、ユーザは、ステージを動かしながら観察面を実際に観察し、光検出器ごとに、手作業で各観察面に対する受光感度の設定を行なうという、煩雑な操作が必要であった。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、より簡単に、より明るく鮮明な観察画像を得ることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の走査型顕微鏡は、照明光で試料の観察面を走査して前記観察面の画像を取得する走査型顕微鏡であって、前記照明光を前記観察面に照射する照明光学系と、前記試料が載置され、前記照明光学系の光軸方向に移動するステージと、前記照明光の照射により生じた観察光のうち、前記照明光学系の方向である第1の方向に射出された観察光を第1の光検出器に導く第1の集光光学系と、前記観察光のうち、前記第1の方向と反対方向に射出された前記観察光を第2の光検出器に導く第2の集光光学系と、前記第1の光検出器が前記観察光を受光して得られたデータ、および前記第2の光検出器が前記観察光を受光して得られたデータから、前記画像を生成する画像生成手段と、前記ステージの前記光軸方向の各位置に対して定められた前記第1の光検出器の受光感度を示す第1の受光感度テーブルに基づいて、前記第1の光検出器の受光感度を変更するとともに、前記第1の受光感度テーブルの各位置の受光感度を位置方向に反転させて、前記ステージの前記光軸方向の各位置に対する前記第2の光検出器の受光感度を示す第2の受光感度テーブルを生成し、前記第2の受光感度テーブルに基づいて、前記第2の光検出器の受光感度を変更するテーブル生成手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、より簡単に、より明るく鮮明な観察画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した観察システムの一実施の形態の構成例を示す図である。
【図2】スポット形成領域の位置と蛍光の光量について説明する図である。
【図3】受光感度テーブルの一例を示す図である。
【図4】他の受光感度テーブルを反転して得られる受光感度テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明を適用した実施の形態について説明する。
【0013】
[観察システムの構成]
図1は、本発明を適用した観察システムの一実施の形態の構成例を示す図である。なお、図1において、横方向、奥行き方向、および縦方向は、互いに直交するx方向、y方向、およびz方向を示している。
【0014】
観察システムは、コンピュータ11と、走査型顕微鏡12とからなり、観察対象の試料13のxy方向と平行な断面が観察面とされて、z方向に並ぶ複数の観察面が蛍光観察される。
【0015】
試料13の観察時において、光源21から射出された励起光としての照明光の光束は、照明用レンズ22および励起フィルタ23を通り、ダイクロイックミラー24で反射されてガルバノミラー25に入射する。ガルバノミラー25は、入射した照明光を偏向させることで、照明光を試料13の観察面上で走査させる。
【0016】
また、ガルバノミラー25から出射した照明光は、蛍光導入用ダイクロイックミラー26を透過し、対物レンズ27により集光されて、ステージ28上に載置された試料13に照射される。これにより、試料13の観察面には、照明光のスポットが形成される。なお、以下、試料13の観察面におけるスポットが形成された領域を、スポット形成領域とも呼ぶこととする。
【0017】
観察面に励起光としての照明光が照射されると、観察面のスポット形成領域からは、蛍光が生じ、この蛍光(以下、観察光とも称する)は図中、上下方向、すなわち対物レンズ27の光軸方向と平行な方向に射出される。
【0018】
スポット形成領域から図中、上方向に向かう観察光は、試料13から対物レンズ27を通って蛍光導入用ダイクロイックミラー26で反射される。ここで、蛍光導入用ダイクロイックミラー26の反射面は、照明光の波長帯域の光を透過させ、観察光の波長帯域の光を反射する特性を有している。
【0019】
蛍光導入用ダイクロイックミラー26で反射された観察光は、蛍光フィルタ29を通り、集光レンズ30により集光されて、光検出器31に入射する。そして、光検出器31に入射した観察光は光電変換されてデジタルデータとされ、光検出器31からコンピュータ11に供給される。
【0020】
一方、スポット形成領域から図中、下方向に向かう観察光は、コンデンサレンズ32を通って、蛍光導入用ダイクロイックミラー33で反射される。さらに、蛍光導入用ダイクロイックミラー33で反射された観察光は、蛍光フィルタ34を通って集光レンズ35により集光され、光検出器36に入射する。そして、光検出器36に入射した観察光は光電変換されてデジタルデータとされ、光検出器36からコンピュータ11に供給される。
【0021】
このように、走査型顕微鏡12では、照明用レンズ22乃至対物レンズ27からなる照明光学系により、照明光が試料13に照射される。また、対物レンズ27乃至集光レンズ30からなる第1の集光光学系と、コンデンサレンズ32乃至集光レンズ35からなる第2の集光光学系のそれぞれにより、観察光が光検出器31および光検出器36に導かれる。
【0022】
ここで、光検出器31と光検出器36に入射した観察光は、試料13の同じスポット形成領域から射出された同じ蛍光である。そこで、コンピュータ11は、光検出器31と光検出器36のそれぞれで観察光を受光して得られたデジタルデータから、観察画像の1画素分の画素データを生成し、記録する。コンピュータ11は、このようにして得られた各画素データを、ガルバノミラー25による観察面の走査のタイミングと同期させて並べることで観察画像を構築し、得られた観察画像を表示する。この観察画像は、照明光で走査された1つの観察面が表示される画像である。
【0023】
さらに、試料13の観察時において、コンピュータ11は、電動zステージ37を制御して、ステージ28をz方向、つまり対物レンズ27の光軸方向に移動させることで、試料13におけるスポット形成領域の位置をz方向に変化させることができる。コンピュータ11は、ステージ28のz方向への移動を制御することで、観察画像の構築のタイミングと同期させて、z方向に並ぶ観察面のうちの所望の観察面にスポットを形成させることができる。
【0024】
[観察システムの動作の説明]
ところで、図2に示すように、試料13はz方向に厚みがあるため、スポット形成領域61から、図中、上方向に向かう観察光は、スポット形成領域61と対物レンズ27との間にある試料13の部位に吸収されて、光量が弱まってしまう。なお、図2において、縦方向および横方向は、z方向およびx方向を示している。
【0025】
同様に、スポット形成領域61から、図中、下方向に向かう観察光は、スポット形成領域61とコンデンサレンズ32との間にある試料13の部位に吸収されて、光量が弱まってしまう。
【0026】
そこで、コンピュータ11はステージ28のz方向の位置Sz、つまり試料13におけるスポット形成領域61が形成される位置に応じて、光検出器31と光検出器36の受光感度を設定し、ステージ28の各位置Szに対する受光感度を示す受光感度テーブルを生成する。
【0027】
例えば、光検出器31の受光感度テーブルは、試料13の図中、上側の表面から、スポット形成領域61までの距離が長くなるほど、光検出器31の受光感度が高くなるように生成される。逆に、光検出器36の受光感度テーブルは、試料13の図中、下側の表面から、スポット形成領域61までの距離が長くなるほど、光検出器36の受光感度が高くなるように生成される。
【0028】
このような受光感度テーブルを用いて試料13を蛍光観察すれば、スポット形成領域61が試料13のどの位置にある場合でも、一定の明るさ(輝度)の観察画像を得ることができる。なお、光検出器31と光検出器36の受光感度とは、光検出器31や光検出器36を構成するPMT(Photomultiplier Tube)などの受光素子自体の感度をいう。
【0029】
次に、試料13の観察時に用いられる受光感度テーブルの生成について説明する。
【0030】
例えば、試料13の観察時において、コンピュータ11が、ステージ28のz方向の位置Sz、すなわちステージ28のz座標を−40から40まで変化させながら、複数の観察面の観察画像を取得するとする。なお、以下では図1中、上方向が+z方向であるとし、図1中、下方向が−z方向であるとする。つまり、ステージ28を+z方向に移動させると、スポット形成領域61は、試料13の図1中、下側の表面により近い位置に移動することになる。
【0031】
このような場合、コンピュータ11は、ユーザの操作に従って電動zステージ37を制御し、ステージ28の位置がSz=−40となるようにステージ28を移動させる。そして、コンピュータ11は、光源21から照明光を射出させるとともに、ガルバノミラー25の動作を制御し、照明光での観察面の走査を開始させる。
【0032】
このようにして試料13の蛍光観察が開始されると、コンピュータ11は、光検出器31から供給されたデジタルデータに基づいて観察画像を生成し、表示する。ユーザは、表示された観察画像を見ながら、光検出器31の受光感度を設定する。例えば、ユーザは、位置Sz=−40に対する光検出器31の受光感度「82」を入力する。すると、コンピュータ11は、ユーザの入力に応じて、光検出器31の受光感度テーブルにおける、位置Sz=−40に対する受光感度を数値「82」とする。
【0033】
次に、コンピュータ11は、ユーザの操作に従って電動zステージ37を制御し、ステージ28の位置がSz=0となるようにステージ28を移動させ、位置Sz=0における観察画像を取得して表示する。
【0034】
ユーザは、表示された観察画像を見ながら、位置Sz=0における観察画像が、位置Sz=−40における観察画像と同じ明るさになるように、光検出器31の受光感度を設定する。このとき、例えば、位置Sz=0に対する光検出器31の受光感度「118」が入力される。そして、コンピュータ11は、ユーザの入力に応じて、光検出器31の受光感度テーブルにおける、位置Sz=0に対する受光感度を数値「118」とする。
【0035】
さらに、コンピュータ11はユーザの操作に従って、ステージ28の位置がSz=40となるようにステージ28を移動させ、位置Sz=40における観察画像を取得して表示する。また、コンピュータ11は、ユーザにより入力された受光感度に基づいて、光検出器31の受光感度テーブルにおける、位置Sz=40に対する受光感度を定める。例えば、位置Sz=40に対する受光感度は、ユーザにより入力された数値「220」とされる。
【0036】
このように、コンピュータ11は、ステージ28を移動させながら、ステージ28のいくつかの位置Szにおける観察画像を表示し、ユーザによる受光感度の入力を受け付ける。そして、コンピュータ11は、ステージ28の位置Szにおける光検出器31の受光感度を、ユーザにより入力された値とする。
【0037】
さらに、コンピュータ11は、ユーザにより入力された受光感度に基づいて、ステージ28の各位置Szにおける光検出器31の受光感度を、補間処理により求める。
【0038】
例えば、上述の例では、位置Sz=−40から位置Sz=0までの間におけるステージ28の各位置Szの受光感度が、位置Sz=−40の受光感度「82」と、位置Sz=0の受光感度「118」とを用いた多項式補間等の補間処理により求められる。同様にして、位置Sz=0から位置Sz=40までの間における、ステージ28の各位置Szの受光感度も補間処理により求められる。
【0039】
補間処理が行われると、コンピュータ11は、補間により得られた受光感度と、ユーザにより入力された受光感度とから、光検出器31の受光感度テーブルを生成する。
【0040】
これにより、例えば、図3に示す光検出器31の受光感度テーブルが得られる。なお、図3において、縦軸および横軸は、光検出器31の受光感度、およびステージ28のz方向の位置Szを示している。
【0041】
図3の受光感度テーブルでは、+z方向にあるステージ28の位置Szほど、その位置Szにおける受光感度が高くなっている。これは、位置Szを示すz座標が大きくなるほど、つまりステージ28を+z方向に移動させるほど、試料13の対物レンズ27側の表面から、スポット形成領域61までの試料13の厚みが増すためである。
【0042】
ステージ28の各位置Szに対する受光感度を示す曲線は、試料13の対物レンズ27側の表面から、スポット形成領域61までの距離と、試料13による蛍光の吸収率の関係から、非線形となることが多い。
【0043】
コンピュータ11は、以上の処理により得られた光検出器31の受光感度テーブルを記録する。なお、以上においては、光検出器31の受光感度がユーザにより設定されると説明したが、ユーザの操作によらず受光感度テーブルが生成されるようにしてもよい。
【0044】
そのような場合、コンピュータ11は、ステージ28をz方向に移動させながら、ステージ28の各位置Szでの観察画像に基づいて、位置Szに対する光検出器31の受光感度を定める。例えば、コンピュータ11は、観察画像における輝度値が所定の閾値以上である画素からなる領域を抽出し、抽出された領域を構成する画素の輝度値の平均値を算出する。そして、コンピュータ11は、得られた平均値に対して、予め定められた値を光検出器31の受光感度として設定する。
【0045】
この場合、コンピュータ11が補間処理を行わずに、ステージ28のz方向の各位置について、観察画像から光検出器31の受光感度を求めてもよい。また、コンピュータ11が、ステージ28のいくつかの位置について、観察画像から光検出器31の受光感度を求め、求めた受光感度を用いて、ステージ28の他の位置における光検出器31の受光感度を補間処理により求めるようにしてもよい。
【0046】
コンピュータ11は、光検出器31の受光感度テーブルを生成すると、次に、得られた光検出器31の受光感度テーブルを用いて、光検出器36の受光感度テーブルを生成する。
【0047】
例えば、ステージ28を+z方向に移動させていくと、照明光のスポットから、試料13の対物レンズ27側の表面までの距離は長くなっていくが、逆に、スポットから試料13のコンデンサレンズ32側の表面までの距離は短くなっていく。
【0048】
このとき、スポットからコンデンサレンズ32側の表面までの試料13の厚みは、スポットから対物レンズ27側の試料13の厚みが厚くなっていくのと同じ分だけ薄くなっていく。そのため、ステージ28の各位置Szに対する光検出器36の受光感度は、図4に示すように、各位置Szに対する光検出器31の受光感度を位置Sz方向に反転させたものとなると推定される。
【0049】
なお、図4において、縦軸および横軸は、光検出器31または光検出器36の受光感度、およびステージ28のz方向の位置Szを示している。また、図4において、実線の曲線は、各位置Szに対する光検出器31の受光感度を示しており、点線の曲線は、各位置Szに対する光検出器36の受光感度を示している。
【0050】
図4において、光検出器36の受光感度テーブルでは、+z方向にあるステージ28の位置Szほど、その位置Szにおける受光感度が低くなっている。
【0051】
ここで、光検出器36の受光感度テーブルは、位置Sz方向に反転された光検出器31の受光感度テーブルに、オフセット値が加算されたものとされている。
【0052】
このオフセット値は、主に、スポット形成領域61から光検出器31までの間にある走査型顕微鏡12の第1の集光光学系と、スポット形成領域61から光検出器36までの間にある走査型顕微鏡12の第2の集光光学系との差により予め定められている。
【0053】
すなわち、対物レンズ27等からなる対物レンズ27側の第1の集光光学系と、コンデンサレンズ32等からなるコンデンサレンズ32側の第2の集光光学系とでは、レンズ等の明るさが異なる。そのため、試料13表面から射出された観察光の光量が同じであっても、光検出器31と光検出器36とでは、設定すべき受光感度には差が生じることになる。オフセット値は、このような受光感度の差分を補正するために、予め算出された補正値である。
【0054】
このように、コンピュータ11は、ステージ28の位置Szを反転させた、光検出器31の受光感度テーブルと、予め用意されたオフセット値とを用いて、光検出器36の受光感度テーブルを生成し、記録する。
【0055】
例えば、光検出器31の受光感度テーブルにおいて、ステージ28の位置Szが「−40」、「0」、および「40」のそれぞれにおける受光感度が、「100」、「110」、および「150」であったとする。
【0056】
このとき、受光感度テーブルを位置Sz方向に反転させると、反転後の位置Sz「−40」、「0」、および「40」のそれぞれにおける受光感度は、「150」、「110」、および「100」となる。コンピュータ11は、これらの反転後の各位置Szの受光感度に、オフセット値として、例えば「20」を加算し、光検出器36の受光感度テーブルとする。
【0057】
この場合、光検出器36の受光感度テーブルにおいて、ステージ28の位置Szが「−40」、「0」、および「40」のそれぞれにおける受光感度は、「170」、「130」、および「120」となる。
【0058】
このように、反転後の光検出器31の受光感度テーブルにオフセット値を加算して、光検出器36の受光感度テーブルとすることで、簡単に光検出器36の受光感度テーブルを得ることができる。この場合、反転前後の受光感度テーブルにおいて、位置Szの変化に対する受光感度の変化量が同じとなる。
【0059】
なお、反転前後の受光感度テーブルにおいて、位置Szの変化に対する受光感度の変化率が同じとなるように、受光感度テーブルが生成されてもよい。
【0060】
そのような場合、コンピュータ11は、例えば、光検出器36の受光感度テーブルの注目する位置Szの受光感度を次のようにして求める。すなわち、これから得ようとする光検出器36の受光感度テーブルの注目する位置Szを位置Szcとする。また、反転後の光検出器31の受光感度テーブルにおいて、基準となる位置Sz、その基準となる位置Szの受光感度、および位置Szcの受光感度を、それぞれSO、f(O)、およびf(zc)とする。
【0061】
このとき、コンピュータ11は、受光感度f(O)にオフセット値を加算して得られた値に、さらに受光感度f(zc)と受光感度f(O)の比を乗算し、その結果得られた値を、得ようとする光検出器36の受光感度テーブルの位置Szcに対する受光感度F(zc)とする。
【0062】
例えば、光検出器31の受光感度テーブルにおいて、ステージ28の位置Szが「−40」、「0」、および「40」のそれぞれにおける受光感度が、「100」、「110」、および「150」であり、オフセット値が「20」であったとする。
【0063】
この受光感度テーブルを位置方向に反転させると、反転後の受光感度テーブルにおいて、位置Szが「−40」、「0」、および「40」のそれぞれにおける受光感度は、「150」、「110」、および「100」となる。
【0064】
そして、反転後の位置Sz=40を基準となる位置SOとすると、位置SOに対する位置Sz=0と、位置Sz=−40における受光感度の変化率は、それぞれ「1.1」(1.1=110/100)および「1.5」(1.5=150/100)となる。したがって、得ようとする光検出器36の受光感度テーブルにおいて、位置Szが「−40」、「0」、および「40」のそれぞれにおける受光感度は、「180」(180=(100+20)×1.5)、「132」(132=(100+20)×1.1)、および「120」(120=(100+20)×1.0)となる。
【0065】
このように、受光感度の変化率に基づいて、光検出器36の受光感度テーブルを生成する場合においても、光検出器31の受光感度テーブルから、光検出器36の受光感度テーブルを簡単に得ることができる。
【0066】
なお、光検出器36の受光感度テーブルが生成されると、コンピュータ11が、得られた受光感度テーブルをそのまま記録するようにしてもよいし、ユーザの操作に応じて、光検出器36の受光感度テーブルが微調整されるようにしてもよい。
【0067】
受光感度テーブルの微調整が行なわれる場合、例えばコンピュータ11は、光検出器36の受光感度テーブルを表示し、ユーザは、表示された受光感度テーブルを見ながら、位置Szに対する受光感度の値を変更させる。ユーザにより受光感度の変更後の値が指定されると、コンピュータ11は、ユーザの指定に応じて位置Szの受光感度を変更し、最終的に得られた受光感度テーブルを、光検出器36の受光感度テーブルとして記録する。
【0068】
以上のようにして、受光感度テーブルが得られると、コンピュータ11は、試料13の観察時に、受光感度テーブルを用いて光検出器31と光検出器36の受光感度を変化させながら、各観察面の観察画像を取得する。
【0069】
すなわち、コンピュータ11は、光源21から照明光を射出させるとともに、ガルバノミラー25の動作を制御する。光源21からの照明光は、照明用レンズ22乃至対物レンズ27を通って試料13の観察面に照射される。このとき、ガルバノミラー25は、照明光を偏向させることにより、照明光で観察面を走査する。
【0070】
また、観察面に照明光が照射されると、照明光のスポット形成領域からは観察光が射出される。対物レンズ27側に射出された観察光は、対物レンズ27、蛍光導入用ダイクロイックミラー26、蛍光フィルタ29、および集光レンズ30を通って光検出器31に受光される。一方、コンデンサレンズ32側に射出された観察光は、コンデンサレンズ32乃至集光レンズ35を通って、光検出器36に受光される。
【0071】
すると、光検出器31と光検出器36からコンピュータ11には、観察光の受光強度に応じたデジタルデータが供給されるので、コンピュータ11は、供給されたこれらのデジタルデータから観察画像の各画素データを生成し、記録する。
【0072】
また、試料13の観察時において、コンピュータ11は、試料13の目的とする観察面上に照明光のスポットが形成されるように、電動zステージ37を制御してステージ28を移動させる。さらに、コンピュータ11は、記録している受光感度テーブルを参照し、ステージ28の移動と同期させて、光検出器31と光検出器36の受光感度を変更する。すなわち、コンピュータ11は、光検出器31と光検出器36の受光感度テーブルから、現時点のステージ28の位置Szに対する受光感度を読み出して、光検出器31と光検出器36の受光感度を、読み出した受光感度に変更する。
【0073】
以上のように、2つの光検出器のうちの一方の受光感度テーブルを反転させて、他方の光検出器の受光感度テーブルを生成することで、より簡単に受光感度テーブルを得ることができる。したがって、試料13の蛍光観察時に、この受光感度テーブルを用いて、光検出器の受光感度を変更すれば、より簡単に、より明るく鮮明な観察画像を得ることができるようになる。
【0074】
なお、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
11 コンピュータ, 12 走査型顕微鏡, 13 試料, 27 対物レンズ, 28 ステージ, 31 光検出器, 32 コンデンサレンズ, 36 光検出器, 37 電動zステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光で試料の観察面を走査して前記観察面の画像を取得する走査型顕微鏡であって、
前記照明光を前記観察面に照射する照明光学系と、
前記試料が載置され、前記照明光学系の光軸方向に移動するステージと、
前記照明光の照射により生じた観察光のうち、前記照明光学系の方向である第1の方向に射出された観察光を第1の光検出器に導く第1の集光光学系と、
前記観察光のうち、前記第1の方向と反対方向に射出された前記観察光を第2の光検出器に導く第2の集光光学系と、
前記第1の光検出器が前記観察光を受光して得られたデータ、および前記第2の光検出器が前記観察光を受光して得られたデータから、前記画像を生成する画像生成手段と、
前記ステージの前記光軸方向の各位置に対して定められた前記第1の光検出器の受光感度を示す第1の受光感度テーブルに基づいて、前記第1の光検出器の受光感度を変更するとともに、前記第1の受光感度テーブルの各位置の受光感度を位置方向に反転させて、前記ステージの前記光軸方向の各位置に対する前記第2の光検出器の受光感度を示す第2の受光感度テーブルを生成し、前記第2の受光感度テーブルに基づいて、前記第2の光検出器の受光感度を変更するテーブル生成手段と
を備えることを特徴とする走査型顕微鏡。
【請求項2】
前記テーブル生成手段は、前記光軸方向に並ぶ前記試料の複数の前記観察面のそれぞれの前記画像に基づいて、前記第1の受光感度テーブルを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の走査型顕微鏡。
【請求項3】
前記テーブル生成手段は、反転後の前記第1の受光感度テーブルが示す前記ステージの各位置の受光感度に、予め求められたオフセット値を加算することにより、前記第2の受光感度テーブルを生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の走査型顕微鏡。
【請求項4】
前記テーブル生成手段は、反転後の前記第1の受光感度テーブルが示す前記ステージの基準位置の受光感度と、所定の位置の受光感度との比を求め、反転後の前記第1の受光感度テーブルが示す前記基準位置の受光感度に予め求められたオフセット値を加算し、前記オフセット値が加算された受光感度に前記比を乗算することで、前記第2の受光感度テーブルが示す前記所定の位置の受光感度を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の走査型顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−2861(P2012−2861A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135110(P2010−135110)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】