説明

走査形レーザ距離センサ装置

【課題】対象物の反射率が低い場合でも、確実にはみ出しを検知する走査形レーザ距離センサ装置を提供する。
【解決手段】パレットまでの距離をあらかじめRAM11に記憶する。車両を入庫し、入庫ボタン36を押すことにより、制御回路10は走査形レーザ装置を起動して反射物体までの距離を測定する。車両があるときの測定結果と、RAM11の記憶した距離とを比較し、異なる場合、検知信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、立体駐車場において、パレットからミラーや給油口の蓋などの車両、および充電ケーブルなどのはみ出しを検知する走査形レーザ距離センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
効率良く車を駐車するために立体形駐車場が利用されている。立体形駐車場の一形態として、車載用のパレットに車を入庫し、車が入庫したパレットを上または下に移動させ、上階または地下などにある車格納スペースに運んで保管をするものなどがある。
かかる場合、車を入れたときにパレットより外側に車の一部がはみ出ていると、パレット移動時にはみ出た部分が立体形駐車場を構成する部材の一部や他の車両に接触し損傷する可能性がある。
このような事態を回避するために車の一部がパレットからはみ出た場合に、これを検知して警告したり、パレットの駆動を停止したりするなどの処理が行われる。
【0003】
特許文献1,2はこのような車のはみ出しを検知する方法または装置を開示するものである。特許文献1は、入庫動作中に入庫可能範囲からはみ出し部を検知して利用者に知らせるようにしたもので、機械式駐車装置の建屋12(特許文献1で用いている符号を使用、以下、特許文献2についても同様)の前側壁12aに設けた乗入れ口13から建屋12内のケージ17上のパレット18上に車両20を乗り入れるようにしている。パレット18の左右両側部外方位置となる入庫可能範囲の境界部の上方位置をレーザ光16が通るように検知センサ15を建屋12の後側壁12aに設置し、検知センサ15は垂直方向に平らな面となるようなレーザ光16を照射するようにしたものとして、車両20の左右両側部の外方にレーザ光16が平行に照射されるようにし、レーザ光16の面の範囲ではみ出し部を検知するようになっている。
はみ出しを検知すると、表示装置に信号が送られてアラームが発せられるとともに目視できる「はみ出し」の文字表示がなされる。
【0004】
特許文献2は、入庫車両のドアやドアミラーのパレットからのはみ出しを速やかに検知するもので、下部乗入方式の垂直循環式駐車装置の車両格納スペース2にて主務チェーン9の長手方向における上下の各スプロケット6と8の間で上下方向に配置された部分に沿って各ケージ13が垂直方向に移動するケージ垂直移動経路16aの下端部の左右両側に位置する下部フレーム7と、建屋1の左右両側の梁21に、通過するパレット12の近傍まで突出するブラケット19,22を設け、各突出端部に、透過型光電管センサ17の発光部17aと受光部17bを前後方向に対面させて取り付ける。入出庫口3の内側に配したケージ13のパレット12上へ乗入れた車両のドアやドアミラーがパレット12よりはみ出している場合は、このはみ出たドアやドアミラーが透過式光電管センサ17の照射光18を遮ることで検知するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−255377号公報
【特許文献2】特開2009−97195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1は、はみ出し部分を検知する構造としてレーザ光を垂直方向に走査してパレットの幅広い側面をスキャンしており、はみ出し部がある場合、はみ出し部にレーザが当たって反射し、レーザ照射位置付近にある検知センサが反射光を検知することにより行われる。しかしながら、はみ出し部分からの反射光が弱い場合、検知できない可能性があり、かかる場合、どのように処理してはみ出し部分を確実に検知しているかが不明である。
【0007】
ところで、車のはみ出し部となる対象物を検知する方法として、対象物からのその反射光を受光するまでの時間を計測する距離センサを用いることが考えられる。この距離センサは反射率が低い、例えば黒色の対象物や鏡などの正反射する対象物では、対象物で反射して距離センサに戻ってくる光強度が非常に弱くなり対象物までの距離を測定することが不可能となる。
このような場合、従来の方法では、対象物がないと判断し、検知信号を出力しないのが一般的である。したがって、車載用のパレットからのはみ出しを検出するものに使用すれば、はみ出しを見逃すことになる。
【0008】
これを回避するために安全を考慮するならば、上記の場合、対象物があると判断し、検知信号を出力するようにすることもできる。しかしながら、パレット上の付着物などでパレットからの反射強度が弱いときには、常に検知信号が出力されてしまう。
【0009】
また、対象物からの反射光強度が十分ある場合でも、距離センサの受光窓が汚れていた場合、反射光強度が弱いと判断してしまうことがあるため、頻繁に受光窓を清掃しなければならない。立体形駐車場においては、はみ出し検出用センサは高所や奥まった場所に取り付けられているため、頻繁に清掃するのは非常に手間がかかる。
【0010】
特許文献2は車のはみ出し部分を検知する構造として透過型光電管センサを用いている。これは発光部と受光部を有し、発光部と受光部の間に検出対象が入って照射光を遮ることで検知する方法である。しかしながら、この方法は、入庫動作を終了して、利用者が駐車装置の乗り入れ口ドアから退出した後に、機械が動いている過程で車両のドアミラー等のはみ出し部を検知し機械を非常停止させるようにするものであり、利用者が退出する前の入庫動作中にはみ出しを検知するものではない。また非常停止からの復旧には専門係員が必要であり、時間がかかる上、作業中は他の車両の入出庫が出来ないという不便が生じる。
本発明は上記状況に鑑みなしたもので、その目的は、立体形駐車場の車載用のパレットから車の一部のはみ出しを検出するセンサ装置において、パレットの検知状態の確実性を向上させることができる走査形レーザ距離センサ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために本発明の請求項1は、機械式駐車場における入庫可能範囲からのはみ出し部を検出するセンサ装置において、パレットの上方,前方または後方に設けられ、パレットの端部に沿って所定範囲を走査する走査形レーザ装置と、前記走査形レーザ装置が発光したレーザ光の反射を検出する受光部と、記憶手段と、前記走査形レーザ装置の動作により前記所定範囲のパレットまでの距離を計測し、計測した距離データを前記記憶手段に格納する背景距離データ取得手段と、前記パレットに車両が入庫した場合、前記走査形レーザ装置の動作で反射物体までの距離を測定し、前記記憶手段に格納された距離データと比較し、距離データが異なるとき、入庫可能範囲から車両のはみ出し部分が存在することを示す検知信号を出力する車はみ出し検知部とを備えたことを特徴とする。
本発明の請求項2は、機械式駐車場における入庫可能範囲からのはみ出し部を検出するセンサ装置において、パレットの上方,前方または後方に設けられ、パレットの端部に沿って所定範囲を走査する走査形レーザ装置と、前記走査形レーザ装置が発光したレーザ光の反射を検出する受光部と、記憶手段と、前記走査形レーザ装置の動作により前記所定範囲のパレットまでの距離を計測し、所定の反射強度のパレットの各位置までの距離データおよび、所定の反射強度より反射強度が小さいパレットの位置が存在する場合、その距離データを、前記記憶手段に格納する背景距離データ取得手段と、前記パレットに車両が入庫した場合、前記走査形レーザ装置の動作で反射物体までの距離を測定し、反射物体がパレットより近い距離で反射する位置にあるとき、または、反射物体が前記反射強度が小さいパレットの位置以外に存在しかつ所定の反射強度より小さい反射強度であるとき、前記入庫可能範囲から車両のはみ出し部分が存在することを示す検知信号を出力し、反射物体が前記反射強度が小さいパレットの位置の中にあり、所定の反射強度より小さい反射強度であるとき、または、前記反射強度が小さいパレットの位置を含む記憶手段の距離データと変わらないとき、入庫可能範囲から車両のはみ出し部分が存在する可能性があることを示す注意信号を出力する車はみ出し検知部とを備えたことを特徴とする。
本発明の請求項3は、請求項1記載の発明において、前記車はみ出し検知部が出力する検知信号は、前記記憶手段に格納したパレットまでの距離データより、車両が入庫したときの測定距離が小さい場合、第1の検知信号を出力し、前記記憶手段に格納したパレットまでの距離データが所定の反射強度による距離データである場合、反射物体の反射強度が所定の反射強度より小さいとき、第2の検知信号を出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1によれば、パレットからの反射強度が十分得られているとき、反射強度の弱い車両も確実に検知できる。
請求項2によれば、パレットからの反射強度が弱い部分があっても車両からの反射強度が十分得られれば正しく検知と判断できる。したがって、はみ出しの見逃し、あるいは、はみ出していないときのはみ出し判定を無くすことができる。さらに、パレットからの反射強度が弱い位置と、反射強度が弱い車両部分が重なったときには注意信号を出力することにより、使用者に確認を促すことができる。
請求項3によれば、上記検知判断に加え、適切な反射率を持った試料を検知させることでセンサ窓の汚れを確認でき、適切な時期に清掃することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係る走査形レーザ距離センサ1のブロック図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る走査形レーザ距離センサ1のブロック図である。
【図3】本発明の第3実施形態に係る走査形レーザ距離センサ1のブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態の処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態の処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第3実施形態の処理を示すフローチャートである。
【図7】立体駐車場のパレット2に対して走査形レーザ距離センサ1を設置したイメージ図で、車両がないときを示す図である。
【図8】本発明の第1実施形態において、走査形レーザ距離センサ1から出射されるレーザ光が車両4のドアミラー5にかかっている場合のイメージ図である。
【図9】本発明の第1実施形態において、走査形レーザ距離センサ1から出射されるレーザ光が車両4にかからない場合のイメージ図である。
【図10】本発明の第2実施形態において、パレット2のA点からD点の走査範囲の内、E点からF点まで反射強度が弱い場合で、車両がないときのイメージ図である。
【図11】本発明の第2実施形態において、走査形レーザ距離センサ1から出射されるレーザ光が車両4のドアミラー5にかかっている場合のイメージ図である。
【図12】本発明の第2実施形態において、図10の状態に車両4が入り、E点からF点以外の部分G点からH点で走査形レーザ距離センサのレーザ光がドアミラー5にかかった場合のイメージ図である。
【図13】本発明の第2実施形態において、図10の状態に車両4が入り、走査形レーザ距離センサ1のレーザ光にかからない場合のイメージ図である。
【図14】本発明の第3実施形態において、試料6をパレット2より走査形レーザ距離センサ1に近いところに設置した状態のイメージ図である。
【図15】図7における、パレット2のA点からD点の反射強度が十分ある場合の、走査角度と距離のチャート図である。
【図16】図8における、ドアミラー5からの反射光量が弱い(小さい)ときの、走査角度と距離のチャート図である。
【図17】図8における、ドアミラー5からの反射光量が強い(大きい)ときの、走査角度と距離のチャート図である。
【図18】図9における、走査形レーザ距離センサ1から出射されるレーザ光が車両4にかからないときの、走査角度と距離のチャート図である。
【図19】図10における、パレット2のA点からD点の走査範囲の内、E点からF点まで反射強度が弱い場合で、車両がないときの、走査角度と距離のチャート図である。
【図20】図11における、ドアミラー5からの反射光量が弱いときの、走査角度と距離のチャート図である。
【図21】図11における、ドアミラー5からの反射光量が強いときの、走査角度と距離のチャート図である。
【図22】図12における、ドアミラー5からの反射光量が弱いときの、走査角度と距離のチャート図である。
【図23】図13における、走査形レーザ距離センサ1から出射されるレーザ光が車両4にかからないときの、走査角度と距離のチャート図である。
【図24】図14における、走査形レーザ距離センサ1の受光窓がきれいな状態のときの、走査角度と距離のチャート図である。
【図25】図14における、走査形レーザ距離センサ1の受光窓が汚れているときの、走査角度と距離のチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面等を参照して本発明の実施の形態を詳しく説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1の実施形態に係る走査形レーザ距離センサ1のブロック図、図4は本発明の第1の実施形態の処理を示すフローチャート、図7は立体駐車場のパレット2に対して走査形レーザ距離センサ1を設置したイメージ図で、車両がないときを示す図である。
図1において、走査形レーザ距離センサ1はCPU43,EEPROM13,レーザダイオード駆動回路14,レーザダイオード15,レゾナントスキャナ16,ミラー17,受光素子18,増幅器19,検知信号出力回路28,記憶信号入力回路30および入庫信号入力回路31を含み構成されている。CPU43は制御回路10,RAM11,ROM12,距離演算部20,近距離比較部21,遠距離比較部22,検知信号出力部23,記憶信号入力部25および入庫信号入力部26を含み構成されている。車両が入庫したことを指示し、走査形レーザ距離センサ1のはみ出し検出処理の動作を開始させるための入庫ボタン36,車が入庫する前にレーザスキャン範囲のパレットまでの距離を予め記憶させておくための記憶ボタン35,車両の一部のはみ出しを検知した場合、検知信号を示す音を発生する音声発生器33および該音声発生器33の音を出力するスピーカ34が、パレット枠または操作コンソールに装備されている。
走査形レーザ装置は、制御回路10,レーザダイオード駆動回路14,レーザダイオード15,レゾナントスキャナ16およびミラー17よりなる部分に対応する。走査形レーザ装置が発光したレーザ光の反射を検出する受光部は受光素子18および増幅器19よりなる部分に対応する。記憶手段は、RAM11に対応する。背景距離データ取得手段は、増幅器19の出力,距離演算部20および制御回路10よりなる部分に対応する。車はみ出し検知部は、増幅器19の出力,距離演算部20,近距離比較部21,遠距離比較部22,制御回路10,検知信号出力部23および検知信号出力回路28よりなる部分に対応する。
【0015】
走査形レーザ距離センサ1のレーザダイオード15から出射されたレーザ光は、レゾナントスキャナ16に取り付けられ往復運動するミラー17で反射し、図7に示すように角度θの範囲で出射され、パレット2のA点からD点の間を走査する。記憶ボタン35を押すと、記憶信号は記憶信号入力回路30,記憶信号入力部25を介して制御回路10に送られ、制御回路10は記憶用距離測定を開始する(図4のステップ(以下、「S」という)1)。パレット2で反射したレーザ光はミラー17で反射し、受光素子18で受光される。増幅器19で増幅された光は、距離演算部20においてレーザ光の出射と受光信号との時間差から距離に変換される(S2)。
パレット2のA点からD点の反射強度が十分ある場合の、走査角度(0〜90°)と距離(0〜5m)のチャートが図15である。この距離はd1のようになり、制御回路10の制御の下にRAM11に記憶される(S3)。
この背景より若干小さい距離をt1、若干大きい距離をt2としこれらもRAM11に記憶される。t1、t2は、対象物の距離がt1より小さいとき、またはt2より大きいとき検知信号を出力するための判定基準値である。
その後、入庫ゲート3が開き、車両4がパレット2上に入る(S4)。
車両4が所定の位置に停止し、入庫ボタン36が押される(S5)と、入庫信号は入庫信号入力回路31,入庫信号入力部26を介して制御回路10に送られ、制御回路10は検知機能を開始する(S6)。
【0016】
図8は、走査形レーザ距離センサ1から出射されるレーザ光が車両4のドアミラー5にかかっている場合である。
図8において、ドアミラー5からの反射光量が弱いとき、距離演算部20での演算結果は図16のd2となる。d2のx2部分は反射光量が弱いため距離が測定できず、そこは背景がない、すなわち非常に大きい距離であると判断する。
d2は近距離比較部21において判定基準値t1と比較される。d2は判定基準値t1より大きいので近距離比較部21の判定結果は非検知となる(S7)。
次にd2は、遠距離比較部22において判定基準値t2と比較される(S8)。
対象物のx2部分が判定基準値t2より距離が大きいので、車両がはみ出していると制御回路10は判断し、検知信号出力部23を経て、検知信号出力回路28から検知信号を出力する(S9)。検知信号は、音声発生器33に入力され、スピーカ34にて再入庫のアナウンスを行う(S10)。
【0017】
ドアミラー5からの反射光量が十分なとき、距離演算部20での演算結果は図17のd3となる。d3は近距離比較部21において判定基準値t1と比較される(S7)。
ここでd3のx1部分は判定基準値t1より対象物の距離が小さいので、車両がはみ出していると制御回路10は判断し、検知信号出力部23を経て、検知信号出力回路28から検知信号を出力する(S9)。
検知信号は、音声発生器33に入力され、スピーカ34にて再入庫のアナウンスを行う(S10)。
【0018】
図9は、走査形レーザ距離センサ1から出射されるレーザ光が車両4にかからない場合である。この状態での、距離演算部20での演算結果は図18のd4となる。d4は近距離比較部21において判定基準値t1と比較される。
d4は判定基準値t1より大きいので近距離比較部21の判定結果は非検知となる(S7)。
次にd4は、遠距離比較部22において判定基準値t2と比較される(S8)。
d4は判定基準値t2より小さいので遠距離比較部22の判定結果は非検知となる(S8)。したがって、制御回路10はd4とd1は一致と判定し、検知信号は出力されず入庫が終了する。測定された距離が図17のd3のような場合、従来例でも検知できるが、図16のd2のような場合、従来例では判定基準がt1のみであり、近くに対象物がないと判断し非検知となってしまう。
【0019】
(第2実施形態)
図2は本発明の第2の実施形態に係る走査形レーザ距離センサ1のブロック図、図5は本発明の第2の実施形態の処理を示すフローチャート、図10はパレット2のA点からD点の走査範囲の内、E点からF点まで反射強度が弱い場合で、車両がないときの状態を示す図である。
図2における走査形レーザ距離センサ1は、図1の走査形レーザ距離センサの各構成と同じ符号は同じ機能を有し、これらの構成に注意信号出力回路29および確認信号入力回路32を加えたものである。また、図2におけるCPU43は、図1のCPUの各構成と同じ符号は同じ機能を有し、これらの構成に、注意信号出力部24および確認信号入力部27を加えたものである。パレット枠または操作コンソールに、入庫ボタン36,記憶ボタン35,音声発生器33およびスピーカ34に加えて、確認ボタン37が設けられている。
走査形レーザ装置,受光部,記憶手段および背景距離データ取得手段は、図1と同様に対応し、車はみ出し検知部は、増幅器19の出力,距離演算部20,近距離比較部21,遠距離比較部22,制御回路10,検知信号出力部23,検知信号出力回路28,注意信号出力部24および注意信号出力回路29よりなる部分に対応する。
【0020】
記憶ボタン35を押すと、記憶用距離測定を開始する(図5のS101)。
パレット2で反射したレーザ光はミラー17で反射し、受光素子18で受光される。増幅器19で増幅された光は、距離演算部20においてレーザ光の出射と受光信号との時間差から距離に変換される(S102)。
この場合の、走査角度と距離のチャートが図19である。x3部分はE点からF点の範囲では距離測定ができずに大きい距離となるため測定結果はd5のようになる。この距離はRAM11に記憶される(S103)。
背景より若干小さい距離である判定基準値t3はt1と同じである。背景より若干大きい距離の判定基準値t4はx3部分以外ではt2と同じであるが、x3部分は判定から除外する。このとき、パレット2の反射強度に弱い部分x3があるので注意信号フラグがセットされる(S104、S105)。
その後、入庫ゲート3が開き、車両4がパレット2上に入る(S106)。
車両4が所定の位置に停止し、入庫ボタン36が押される(S107)と、入庫信号は入庫信号入力回路31,入庫信号入力部26を介して制御回路10に送られ、制御回路10は検知機能を開始する(S108)。
【0021】
図11は、走査形レーザ距離センサ1から出射されるレーザ光が車両4のドアミラー5にかかっている場合である。
ドアミラー5からの反射光量が弱いとき、距離演算部20での演算結果は図20のd6となる。d6は近距離比較部21において判定基準値t3と比較される。d6は判定基準値t3より大きいので近距離比較部21の判定結果は非検知となる(S109)。
次にd6は遠距離比較部22において判定基準値t4と比較される。
ここでd6のB点からC点はE点からF点に含まれ、x3部分は判定基準値t4から除外されているので、制御回路10はd6はt4より小さいと判断し判定結果は非検知となる(S112)。ここで、注意信号フラグがセットされているので、注意信号出力部24を経て、注意信号出力回路29から注意信号を出力する(S113、S114)。
注意信号は、音声発生器33に入力され、スピーカ34にて注意のアナウンスを行う(S115)。
ここで、運転者がはみ出しを目視にて確認し、確認ボタン37を押下すると、確認信号は確認信号入力回路32,確認信号入力部27を介して制御回路10に送られ、制御回路10は注意アナウンスを停止し入庫が終了する(S116、S117)。
【0022】
図11において、ドアミラー5からの反射光量が十分なとき、距離演算部20での演算結果は図21のd7となる。d7は近距離比較部21において判定基準値t3と比較される(S109)。
ここでd7のx4部分は判定基準値t3より対象物の距離が小さいので、制御回路10は車両がはみ出していると判断し検知信号出力部23を経て、検知信号出力回路28から検知信号を出力する(S110)。
検知信号は、音声発生器33に入力され、スピーカ34にて再入庫のアナウンスを行う(S111)。
【0023】
図12は図10の状態に車両4が入り、E点からF点以外の部分G点からH点で走査形レーザ距離センサのレーザ光がドアミラー5にかかった場合のものである。
ドアミラー5の反射光量が弱いとき、距離演算部20での演算結果は図22のd8となる(S108)。
d8は近距離比較部21において判定基準値t3と比較される。d8は判定基準値t3より大きいので近距離比較部21の判定結果は非検知となる(S109)。
次にd8は、遠距離比較部22において判定基準値t4と比較される(S112)。
対象物のx5部分が判定基準値t4より距離が大きいので、制御回路10は車両がはみ出していると判断し、検知信号出力部23を経て、検知信号出力回路28から検知信号を出力する(S110)。
検知信号は、音声発生器33に入力され、スピーカ34にて再入庫のアナウンスを行う(S111)。
【0024】
図13は図10の状態に車両4が入り、走査形レーザ距離センサ1のレーザ光にかからない場合のものである。
距離演算部20での演算結果は図23のd9となる。
d9は近距離比較部21において判定基準値t3と比較される。d9は判定基準値t3より大きいので近距離比較部21の判定結果は非検知となる(S109)。
次にd9は、遠距離比較部22において判定基準値t4と比較される。このときx3部分は判定基準値t4から除外されているので、d9は判定基準値t4より小さいと判断し、遠距離比較部22の判定結果は非検知となる(S112)。
このとき、注意信号フラグがセットされているので、制御回路10は注意信号出力部24を経て、注意信号出力回路29から注意信号を出力する(S113、S114)。
注意信号は、音声発生器33に入力され、スピーカ34にて注意のアナウンスを行う(S115)。
ここで、運転者がはみ出しを目視にて確認し、確認ボタン37を押下すると、確認信号は確認信号入力回路32,確認信号入力部27を介して制御回路10に送られ、制御回路10は注意アナウンスを停止し入庫が終了する(S116、S117)。
【0025】
以上の検知状態を従来例と比較してまとめると表1、表2のようになる。
【表1】

【表2】

【0026】
(第3実施形態)
図3は本発明の第3の実施形態に係る走査形レーザ距離センサ1のブロック図、図6は本発明の第3の実施形態の処理を示すフローチャートである。
第3の実施形態は第1実施形態において、記憶した距離より車両があるときの測定距離が小さい場合に検知信号1を出力し、記憶した距離より車両があるときの測定距離が大きい場合に検知信号2を出力する。制御回路10の検知信号出力に検知信号2出力部39,検知信号2出力回路41を接続し、検知信号2表示器42を設けたものである。
車両を検出する運用時には、第1実施形態と同様に、近距離比較部21において判定基準値t1と比較され、遠距離比較部22において判定基準値t2と比較される。
【0027】
第3の実施形態は点検時に有効である。
図7は立体駐車場のパレット2に対して走査形レーザ距離センサ1を設置したイメージ図で、車両がないときを示す図である。
図7の状態において、記憶ボタン35を押すと、記憶用距離測定を開始する(図6のS201)。パレット2のA点からD点の反射強度が十分ある場合の、走査角度と距離のチャートが図15である。この距離はd1のようになりRAM11に記憶される(S202,203)。
この背景より若干小さい距離をt1、若干大きい距離をt2としこれらもRAM11に記憶される。t1、t2は、対象物の距離がt1より小さいとき、またはt2より大きいとき検知信号を出力するための判定基準値である。
【0028】
図14は、試料6をパレット2より走査形レーザ距離センサ1に近いところに設置した状態である。
入庫ゲートを開き、走査形レーザ距離センサ1の受光窓がきれいな状態のときに、距離測定が出来るぎりぎりの反射率の試料6をパレット2より走査形レーザ距離センサ1に近いところに設置する(S204)。
入庫ボタン36を押す(S205)と、入庫信号は入庫信号入力回路31,入庫信号入力部26を介して制御回路10に送られ、制御回路10は検知機能を開始する(S206)。
図14の状態における、距離演算部20での演算結果は図24のd10となる。
d10は近距離比較部21において判定基準値t1と比較される。d10はx6部分で判定基準値t1より小さいので近距離比較部21の判定結果は検知となり、制御回路10は検知信号1出力部38を経て、検知信号1出力回路40から検知信号1が出力する(S207、S208)。 次に、d10は遠距離比較部22において判定基準値t2と比較される。d10は判定基準値t2より小さいので遠距離比較部22の判定結果は非検知となり制御回路10は検知信号2を出力しない(S209)。
このとき、検知信号1が出力されているので、制御回路10は音声発生器33、スピーカ34にて再入庫のアナウンスを行う(S210、S213)。
【0029】
走査形レーザ距離センサ1の受光窓が汚れている状態のときに、図14のように、入庫ゲートを開き、距離の測定が出来るぎりぎりの反射率の試料6をパレット2より走査形レーザ距離センサ1に近いところに設置する(S204)。
入庫ボタン36を押す(S205)と、入庫信号は入庫信号入力回路31,入庫信号入力部26を介して制御回路10に送られ、制御回路10は検知機能を開始する(S206)。
図14の状態における、距離演算部20での演算結果は図25のd11となる。
x8部分は走査形レーザ距離センサ1の受光窓の汚れにより受光信号が弱くなり、距離測定が出来ない場所である。
d11は近距離比較部21において判定基準値t1と比較される。d11はx7部分で判定基準値t1より小さいので近距離比較部21の判定結果は検知となり、検知信号1出力部38を経て、検知信号1出力回路40から検知信号1が出力される(S207、S208)。
【0030】
次に、d11は遠距離比較部22において判定基準値t2と比較される。d11はx8部分で判定基準値t2より大きいので遠距離比較部22の判定結果は検知となり、制御回路10は検知信号2出力部39を経て、検知信号2出力回路41から検知信号2を出力する(S209、S211)。
検知信号2により、検知信号2表示器42は点灯する(S212)。
検知信号2表示により走査形レーザ距離センサ1の受光窓が汚れていることが確認できる。なお、音声発生器33、スピーカ34による再入庫のアナウンスも行われる(S213)。
試料6を走査形レーザ距離センサ1の走査範囲θ、すなわちパレット2上のA点からD点まですべての範囲に設置することで走査形レーザ距離センサ1の受光窓全面の汚れを確認することが出来る。
以上の実施の形態では、走査形レーザ距離センサを車両の上方位置に設置する例について説明したが、該距離センサは、車両の前方位置または後方位置に設置しても、同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
立体形駐車場において車両はみ出しを検知する走査形レーザ距離センサ装置である。
【符号の説明】
【0032】
1 走査形レーザ距離センサ
2 パレット
3 入庫ゲート
4 車両
5 ドアミラー
10 制御回路
11 RAM
12 ROM
13 EEPROM
14 レーザダイオード駆動回路
15 レーザダイオード
16 レゾナントスキャナ
17 ミラー
18 受光素子
19 増幅器
20 距離演算部
21 近距離比較部
22 遠距離比較部
23 検知信号出力部
24 注意信号出力部
25 記憶信号入力部
26 入庫信号入力部
27 確認信号入力部
28 検知信号出力回路
29 注意信号出力回路
30 記憶信号入力回路
31 入庫信号入力回路
32 確認信号入力回路
33 音声発生器
34 スピーカ
35 記憶ボタン
36 入庫ボタン
37 確認ボタン
38 検知信号1出力部
39 検知信号2出力部
40 検知信号1出力回路
41 検知信号2出力回路
42 検知信号2表示器
43 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械式駐車場における入庫可能範囲からのはみ出し部を検出するセンサ装置において、
パレットの上方,前方または後方に設けられ、パレットの端部に沿って所定範囲を走査する走査形レーザ装置と、
前記走査形レーザ装置が発光したレーザ光の反射を検出する受光部と、
記憶手段と、
前記走査形レーザ装置の動作により前記所定範囲のパレットまでの距離を計測し、計測した距離データを前記記憶手段に格納する背景距離データ取得手段と、
前記パレットに車両が入庫した場合、前記走査形レーザ装置の動作で反射物体までの距離を測定し、前記記憶手段に格納された距離データと比較し、距離データが異なるとき、入庫可能範囲から車両のはみ出し部分が存在することを示す検知信号を出力する車はみ出し検知部と、
を備えたことを特徴とする走査形レーザ距離センサ装置。
【請求項2】
機械式駐車場における入庫可能範囲からのはみ出し部を検出するセンサ装置において、
パレットの上方,前方または後方に設けられ、パレットの端部に沿って所定範囲を走査する走査形レーザ装置と、
前記走査形レーザ装置が発光したレーザ光の反射を検出する受光部と、
記憶手段と、
前記走査形レーザ装置の動作により前記所定範囲のパレットまでの距離を計測し、所定の反射強度のパレットの各位置までの距離データおよび、所定の反射強度より反射強度が小さいパレットの位置が存在する場合、その距離データを、前記記憶手段に格納する背景距離データ取得手段と、
前記パレットに車両が入庫した場合、前記走査形レーザ装置の動作で反射物体までの距離を測定し、
反射物体がパレットより近い距離で反射する位置にあるとき、または、反射物体が前記反射強度が小さいパレットの位置以外に存在しかつ所定の反射強度より小さい反射強度であるとき、前記入庫可能範囲から車両のはみ出し部分が存在することを示す検知信号を出力し、
反射物体が前記反射強度が小さいパレットの位置の中にあり、所定の反射強度より小さい反射強度であるとき、または、前記反射強度が小さいパレットの位置を含む記憶手段の距離データと変わらないとき、入庫可能範囲から車両のはみ出し部分が存在する可能性があることを示す注意信号を出力する車はみ出し検知部と、
を備えたことを特徴とする走査形レーザ距離センサ装置。
【請求項3】
請求項1記載の走査形レーザ距離センサ装置において、
前記車はみ出し検知部が出力する検知信号は、
前記記憶手段に格納したパレットまでの距離データより、車両が入庫したときの測定距離が小さい場合、第1の検知信号を出力し、
前記記憶手段に格納したパレットまでの距離データが所定の反射強度による距離データである場合、反射物体の反射強度が所定の反射強度より小さいとき、第2の検知信号を出力することを特徴とする走査形レーザ距離センサ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2013−14967(P2013−14967A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149267(P2011−149267)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(596020967)株式会社オプトロン (4)
【Fターム(参考)】