走査電子顕微鏡
【課題】本発明は、電子顕微鏡のレンズ条件を変化させることなく、予備帯電によってもたらされる電位勾配を抑制する走査型電子顕微鏡の提供を目的とする。
【解決手段】上記目的を達成するための一態様として、試料表面を帯電させる第1のビームを試料上に走査した後に、試料より放出される電子を検出するための第2のビームを走査するように、走査偏向器を制御すると共に、第1のビームの走査領域の中心部に対して相対的に、第1のビームの走査領域の周辺部の電荷密度を高めるように、前記第1のビームを走査することを特徴とする走査電子顕微鏡を提案する。
【解決手段】上記目的を達成するための一態様として、試料表面を帯電させる第1のビームを試料上に走査した後に、試料より放出される電子を検出するための第2のビームを走査するように、走査偏向器を制御すると共に、第1のビームの走査領域の中心部に対して相対的に、第1のビームの走査領域の周辺部の電荷密度を高めるように、前記第1のビームを走査することを特徴とする走査電子顕微鏡を提案する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型電子線装置に係り、特に、電子ビームの走査によって試料を帯電させる予備帯電法、及び予備帯電を試料に付着させる走査電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)は、電子ビーム(以後、1次ビームとも呼ぶ)を試料上照射することによって、試料から放出される2次電子(Secondary Electron:SE)や反射電子(Backscattered Electron:BSE)を検出する装置である。その検出信号を、画像やラインプロファイルに変換することによって、試料の観察,検査、或いは測定を行うことができる。電子顕微鏡は半導体デバイスの計測に広く応用されており、半導体デバイスの微細化に伴って、その計測技術が多種多彩なパターンの計測に適用していかなければならない。
【0003】
最近は特に、コンタクトホールと呼ばれる高アスペクト比の穴構造の観測・計測のニーズがある。アスペクト比とは穴の深さと穴径の比であり、アスペクト比が30超えるコンタクトホールも珍しくない。高アスペクト比のコンタクトホールの底を観測するために、ホール底に1次ビームを照射してから、底から放出される2次電子を検出しなければならない。しかし、アスペクト比の高いホールの場合、底からの2次電子がホールの側壁に衝突してしまい、ホールから脱出できない場合があり、ホール底の観測が困難になる。
【0004】
ホール底から放出される電子を試料上に導くために、試料表面を正に帯電させる手法が知られている。
【0005】
特許文献1乃至5には、試料表面を帯電させるビーム(第1のビーム)を照射した後に、コンタクトホール等の画像、或いはラインプロファイル等を形成する電子を検出するためのビーム(第2のビーム)を走査する手法が開示されている。第1のビームは、第2のビームに対し、二次電子放出効率ηや照射領域等が大きいビームであるため、試料表面は正に帯電する。第2の電子ビームは、試料が正帯電した状態で照射されるため、ホール底から放出された電子を、ホール外に導くことができ、電子の高効率検出が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−208085号公報(対応米国特許USP6,344,750)
【特許文献2】特表2002−524827号公報(対応米国特許USP6,570,154)
【特許文献3】特開平05−151927号公報(対応米国特許USP6,412,209)
【特許文献4】特開2000−331635号公報
【特許文献5】特開2000−200579号公報(対応米国特許USP6,635,873)
【特許文献6】特開2009−99540号公報(対応米国特許US2009/0084954)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1乃至5に開示された予備帯電法(以下、プリドーズ、或いはプリチャージ法と称することもある)によれば、ホール底等から放出される電子を高効率に検出することができるが、第1のビームによって試料上に付着した帯電が、第2のビームの走査範囲(視野(Field Of View:FOV))内で均一ではないため、視野ずれ,フォーカスずれ、或いは像歪み等が発生する可能性のあることが、発明者らの検討によって明らかになった。
【0008】
電子ビームの走査範囲中心は、走査範囲の縁部と比べると、高い電位を持つことになるため、第2の電子ビームの走査範囲内で、帯電電位が勾配を持つことになり、これが像歪み等の原因となる可能性がある。
【0009】
このような電位勾配を抑制すべく、特許文献6には第1に二次電子放出効率(η1)>1のビームを用いて、試料上を走査し、第2に異なる二次電子放出効率(η2)のビームを走査することによって、η1のビームによって形成された電位勾配を平坦化する手法が開示されているが、二次電子放出効率ηを変化すべく、試料に印加する負電圧を変化させているため、当該負電圧印加によって形成される静電レンズを変化させてしまうことになる。このように電子顕微鏡の光学条件を変化させてしまう手法では、レンズ条件の調整に時間を要する。また、第2のビームを照射する前に、2回の光学条件調整を行う必要があるため、相応の時間を要することになる。
【0010】
更に、帯電は徐々に緩和するため、上述のような時間経過も勘案した上で、帯電条件を決定する必要があり、且つその条件は試料を形成する材料によって異なるため、設定すべき装置条件が複雑になる可能性がある。
【0011】
以下に、電子顕微鏡のレンズ条件を変化させることなく、第2のビームの走査領域内の電位勾配を抑制することを目的とする走査型電子顕微鏡について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための一態様として、走査電子顕微鏡において、電子ビームの走査領域内の内側領域の単位面積当たりの電荷密度が、当該走査領域内の外側領域の電荷密度より低くなるように、前記電子ビームを走査し、その後、前記内側領域を含む領域に、前記検出器によって電子を検出するための電子ビーム走査を行うように、前記走査偏向器の制御を行う走査電子顕微鏡を提案する。
【発明の効果】
【0013】
上記態様によれば、電子顕微鏡のレンズ条件等を変化させることなく、観察,検査、或いは測定のための電子ビーム走査領域について、予備帯電照射によって付着する表面帯電の電位勾配を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】走査型電子顕微鏡の概要を示す図。
【図2】プリドーズ領域を一定の速度でスキャンした場合の電位分布。
【図3】プリドーズ領域の内側と外側の電荷密度を変えた場合の帯電電位分布。
【図4】レクタングルスキャンのスキャン信号。
【図5】プリドーズ領域の中心部を除くレクタングルスキャン。
【図6】スキャン速度を変えながらレクタングルスキャン。
【図7】スキャン速度を変えながら円形スキャン。
【図8】スキャン速度を変えながら円形予備照射実施の例。予備照射中のスキャン信号と予備照射で形成される帯電電位分布。
【図9】プリドーズ領域の中心部を除く円形スキャン。
【図10】予備照射領域が離散的に分布するようなプリドーズ方式。
【図11】プリドーズ領域の中心部にビームを照射しないラスタスキャン。
【図12】プリドーズ領域の中心部にビームを照射しないラスタスキャン信号とブランキング信号。
【図13】プリドーズ領域の中心部へのドーズ量を少なくするラスタスキャン。
【図14】プリドーズ領域の中心部へのドーズ量を少なくするラスタスキャン信号。
【図15】縦と横ラスタスキャンの組み合わせで中心部にビームを照射しないプリドーズ。
【図16】縦と横ラスタスキャンの組み合わせで周囲部の電荷密度を高くするプリドーズ。
【図17】ラスタスキャンとラスターローテーションの組み合わせで中心部に照射しないプリドーズ。
【図18】ラスタスキャンとラスターローテーションの組み合わせで中心部に照射量を少なくするプリドーズ。
【図19】走査電子顕微鏡の概略構成図。
【図20】複数のパターンが存在する領域にプリドーズを施す例を示す図。
【図21】複数のパターンが存在する領域にプリドーズを施す例を示す図。
【図22】複数の走査電子顕微鏡を含む試料の検査、或いは測定システムの一例を示す図。
【図23】プリドーズ条件を設定するGUI画面の一例を示す図。
【図24】プリドーズから測定に至るまでの工程を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
SEMによる電子ビームの走査領域は、二次元的な拡がりを持ち、当該電子ビームが試料を帯電させるビームである場合、走査領域中心に蓄積する電荷(帯電)は、走査領域縁部に蓄積する電荷と比較すると、相対的に高い傾向にある。すなわち、試料表面に積極的に帯電を付着するプリドーズ法、或いはプリチャージ法を適用すると、観察領域内に電位勾配が形成されることになる。このような電位勾配は、電子ビームに対し偏向作用を持つため、視野ずれ,フォーカスずれや像歪み等がおき、正確な観測・計測ができない場合があると考えられる。
【0016】
通常の走査法(例えばラスタスキャン等)は、ある一定の領域で一定のスキャン速度で走査を行うため、付着する帯電電位が勾配を持つことになる。このような走査法をプリドーズやプリチャージに適用した場合、観測時のビームは、電位勾配によって形成されるレンズ作用で、その軌道が偏向される。その理由を以下に説明する。プリドーズ時のスキャン速度が一定の場合、試料に蓄積される電荷がプリドーズ領域に一様に分布すると考えられる。有限な領域に一様な電荷分布が存在するときの電位分布を図2に示す。
【0017】
図2(a)に示すように、プリドーズ領域が半径Rの円で、蓄積する電荷密度がその領域にある一定値σである場合を考える。円の中心から試料上の任意の点の距離r及び試料からの距離zの関数として求めた電位値を図2(b)に示す。この図で縦軸は電位Φをσ/4πεoで規格化した量で、単位はmである。また、横軸はrをRで規格化した無次元量である。この図から、電位分布がプリドーズ領域の中心部(r=0)に一番大きく、周囲部に小さいことが分かる。
【0018】
従って、電位分布がr方向に勾配を持ち、レンズ作用が生じる。その結果、プリドーズ領域の中心から離れた位置を観測する際、1次ビームが横方向にずれてしまい、視野ずれや像の歪みを起こす。このようにして、従来のプリドーズの手法では、コンタクトホールの底部からの2次電子が検出しやすくなる一方、帯電の影響で観測時に視野ずれや像の歪みが生じ、正確な測定ができない場合があると考えられる。
【0019】
上述のように一般的な走査法によるプリドーズでは、プリドーズ照射によって試料に蓄積される電荷密度がほぼ一様に分布するため、帯電電位分布が横勾配を持ち、レンズ作用で観測時1次ビームを曲げてしまう場合がある。そこで、本実施例では、プリドーズ領域の周囲部(図2でrがRに近い領域)の電荷密度を高くし、中心部(図2でrが0に近い領域)の電荷密度を低くすることで、帯電電位分布を一様にする走査電子顕微鏡について説明する。具体的には、プリドーズ領域を、電子ビームを照射する領域と照射しない領域に分割して所望の電荷分布にすることが考えられる。また、プリドーズ領域の周囲部に照射量が多く、中心部に照射量が少なくなるように、プリドーズ照射のとき1次ビームのスキャン速度を調整することでも所望の電荷分布を得ても良い。
【0020】
以上のような構成によれば、特に次世代の半導体デバイスの観測と正確な計測が可能となる。
【0021】
図1に走査型電子顕微鏡の概略図を示す。電子銃1で発生した電子ビーム2をコンデンサーレンズ3で収束させ、最後に対物レンズ5で試料上に収束させる。偏向器4で電子ビーム2を試料のビーム走査領域7の上を走査(以後、スキャンとも呼ぶ)させる。1次ビーム照射によって試料内で励起され、試料から放出される2次電子8を検出器9で検出し、電子の信号を画像に変換することで、試料の観測・計測を行う。
【0022】
図19は、より詳細な走査電子顕微鏡の概略構成図である。電子源1901から引出電極1902によって引き出され、図示しない加速電極によって加速された電子ビーム1903は、集束レンズの一形態であるコンデンサーレンズ1904によって、絞られた後に、走査偏向器1905により、試料1909上を一次元的、或いは二次元的に走査される。電子ビーム1903は試料台1908に内蔵された電極に印加された負電圧により減速されると共に、対物レンズ1906のレンズ作用によって集束されて試料1909上に照射される。
【0023】
電子ビーム1903が試料1909に照射されると、当該照射個所から二次電子、及び後方散乱電子のような電子1910が放出される。放出された電子1910は、試料に印加される負電圧に基づく加速作用によって、電子源方向に加速され、変換電極1912に衝突し、二次電子1911を生じさせる。変換電極1912から放出された二次電子1911は、検出器1913によって捕捉され、捕捉された二次電子量によって、検出器1913の出力が変化する。この出力に応じて図示しない表示装置の輝度が変化する。例えば二次元像を形成する場合には、走査偏向器1905への偏向信号と、検出器1913の出力との同期をとることで、走査領域の画像を形成する。また、図19に例示する走査電子顕微鏡には、電子ビームの走査領域を移動する偏向器(図示せず)が備えられている。この偏向器は異なる位置に存在する同一形状のパターンの画像等を形成するために用いられる。この偏向器はイメージシフト偏向器とも呼ばれ、試料ステージによる試料移動等を行うことなく、電子顕微鏡の視野(Field Of View:FOV)位置の移動を可能とする。
【0024】
なお、図19の例では試料から放出された電子を変換電極にて一端変換して検出する例について説明しているが、無論このような構成に限られることはなく、例えば加速された電子の軌道上に、電子倍像管や検出器の検出面を配置するような構成とすることも可能である。また、図19に例示する走査電子顕微鏡には、ブランカー(図示せず)と呼ばれる電子ビームをブランキングする電極、或いは磁極が搭載される。ブランカーは、電子ビームを電子ビームの理想光軸から離脱させるように偏向することで、走査電子顕微鏡のその他の条件に因らず、試料に対する電子ビームの非照射状態を作り出すものである。
【0025】
制御装置1914は、走査電子顕微鏡の各構成を制御すると共に、検出された電子に基づいて画像を形成する機能や、ラインプロファイルと呼ばれる検出電子の強度分布に基づいて、試料上に形成されたパターンのパターン幅を測定する機能を備えている。また、走査偏向器1905は高速偏向が可能な静電偏向器を採用することが望ましいが、高速性が確保できるのであれば、電磁偏向器を採用するようにしても良い。
【0026】
高アスペクト比のコンタクトホールを観察するのに必要な帯電を形成した上で、観察を行う工程は以下の通りである。制御装置1914は、図24に例示するような工程に従って、SEMの各構成要素を制御する。まず、試料室内に試料(半導体ウェハ等)を導入(ステップ2401)し、試料ステージの駆動やイメージシフトによって、ビームの照射位置に測定点を移動する(ステップ2402)。次に予め登録されたレシピに記憶された走査パターンを読み出して、プリドーズを実行する(ステップ2403,2404)。そしてプリドーズによる帯電領域に対し、レシピに記憶された走査条件を読み出して、測定のためのビーム走査を実行する(ステップ2405,2406)。
【0027】
以下に電子ビームを偏向する偏向システムに関し、観察領域に一様な帯電を形成することが可能な走査電子顕微鏡について、図面を用いて説明する。
【0028】
図2(b)で示すように、プリドーズ照射領域の電荷分布が一様であれば、帯電電位分布が横勾配を持つ。一方、プリドーズ領域を図3(a)のように分割し、周囲部(領域B)に一様に電荷が存在し、中心部(領域A)に電荷が存在しない場合の帯電電位分布を図3(b)に示す。
【0029】
この場合、中心の電位値が、プリドーズ領域を分割しないとき(図2(b))と比べて小さくなる。図3(b)に例示するような電位分布によれば、図2(b)に例示する電位分布と比較して、相対的に中心部の電位勾配を緩和できる。また、蓄積された電荷は、時間の経過に従って、周囲に拡散するため、第2のビーム(観察,測長,検査のために走査されるビーム)を走査するときに、中心部にも電位が拡散し、中心部と周囲部の電位差が緩和され、第2のビームの走査領域の電位勾配を緩和することができる。
【0030】
一方、第1のビーム(プリドーズのためのビーム)の走査時点では、試料付近では(試料からの高さzの小さい位置)、プリドーズ領域の周囲部における電位が中心部における電位より高くなる傾向が現れ、結果的に一様な電位分布にならないことがある。
【0031】
そこで、図3(c)のように、プリドーズ領域の中心部の電荷をゼロではなく、周囲部より少ないとして求めた電位分布を図3(d)に示す。この場合は、領域Aにおいて電位が図3(b)の場合と比べてより平らな分布になっている。
【0032】
図3(a)や図3(c)に例示するように、プリドーズ領域の中心部の電荷密度より周囲部の電荷密度が高いような電荷分布を実現すれば、一様な帯電電位を形成することができる。
【0033】
以下、観察領域に対し、一様な帯電を形成するための種々の走査法をより具体的に説明する。
【実施例1】
【0034】
一様な帯電を試料に付着させるためには、電子ビームの走査領域内の内側領域の単位面積当たりの電荷密度が、走査領域内の外側領域の電荷密度より低くなるように、走査すると良い。このような走査法の一例として、図4に例示するような走査法がある。
【0035】
1次ビームが試料上に図4(a)のように四角を描くようなスキャンを行うと、四角の枠状の照射領域ができる。本実施例では、このような走査法を試料の予備走査に適用する例について説明する。図4(a)は、(1)から(7)に例示されるように、走査領域の外側から内側に向かって、順に走査する走査順序を例示しているが、走査領域の内側から外側に向かって順に走査するようにしても良い。また、スキャン速度が速いほど照射電子数(以後ドーズ量)が少なくなる。
【0036】
図4(a)に例示する走査を行う際の走査信号を、図4(b)に例示する。図4(b)では、時間t[sec]を横軸としたときの図4(a)の1から7番目のビーム照射線のそれぞれに対応するxスキャン信号とyスキャン信号の推移を示している。この図で、Vはx又はy方向への最大偏向電圧、Npはプリドーズ照射領域の一方向のピクセル数、tiは(i=1,2,・・・)一本の線のスキャン時間、tscanは1ピクセル当たりのスキャン時間である。スキャン速度が一定の場合、
tscan=tn−tn-1 (数1)
が成立ち、且つ、xとy信号の傾きがスキャン時間と共に変化せず一定値(図4(b)のα)である。
【0037】
図4(a)に例示するような枠状走査を行う場合、内側の走査線の方が外側の走査線より短い。図4(c)では、スキャン速度が内側に向かうほど速くなる場合のスキャン信号の例を示している。ここで、スキャンする線の長さが短いほどスキャン速度が速い。従って、図4(c)に示すように、xとyスキャン信号の傾きの値がスキャンする線が短いほど大きくなる(図4(c)でα1<α2<α3 ・・・)。
【0038】
内側から外側に向かう枠状走査のスキャン信号は、図4(b)と図4(c)の信号を時間tについて逆に辿ったものになる。上述したような走査法、及び当該走査法の応用例によれば、一様な電位分布を形成できる。
【0039】
一定速度の枠状走査の場合、プリドーズ領域を分割してビーム照射を行う。1つの具体例を図5(a)に示す。中心部Aに1次ビームを照射せず、周囲部Bだけにレクタングルスキャンで照射するプリドーズを行う。ビームを照射してから観測を行う間に、ビーム照射によって試料に蓄積する電荷が広がらない場合は、観測時に領域Aにおける電荷密度がゼロになる。しかし、蓄積電荷が、観測を実施するまでに何らかの理由で広がってしまうような材料では、領域Aの電荷密度が低くて領域Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。従って、中心部Aにおける電位の横勾配を小さくでき、観測時の視野ずれを防止することができる。
【実施例2】
【0040】
実施例1に例示した走査法に基づくプリドーズにおいて、図5(a)の中心部Aの面積をゼロにすると、図6(a)のような四角形の照射領域ができる。本実施例では、外側から内側に向かって走査を継続すると共に、中心部Aに近いほどスキャン速度が速くなるようにスキャン信号を制御する。この場合、単位面積当たりの電荷量は、外側から内側に向かって徐々に小さくなっていくため、図6(b)に示すように、中心部Aの電荷密度が低くて周囲部Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。その結果、図3(d)に示すような、中心部Aでほぼ均一な電位分布ができ、観測時の視野ずれを防止できる。
【実施例3】
【0041】
プリドーズ後観測を始めるまでに試料に蓄積された電荷があまり広がらない場合は、図5(a)の中心部Aに近い程スキャン速度を速くし、その逆に外部Cに近いほどスキャン速度を遅くするプリドーズ方式にも応用できる。この場合、領域Aと領域Bの面積を任意に調整することが可能な調整装置を設けておき、試料の種類や電子顕微鏡の光学条件に応じて、調整可能にしておくことが望ましい。この方式で、中心部Aにおける電荷密度をゼロ、周囲部Bにおける密度を領域Aから領域Cに向かって緩やかに高くすることで、電位分布をより均一にすることができる。その結果、観測時1次ビームの横ずれを防ぐことができ、観測時の視野ずれ防止が可能になる。
【実施例4】
【0042】
図7(a)に例示するように、1次ビームが試料上に螺旋を描くようなスキャンを行うと円形の照射領域ができる。以後、このようなスキャンを円形スキャンと呼ぶ。円形スキャンは、1次ビームが試料上に描く螺旋の外側Aから内側Bに向かう場合と内側Bから外側Aに向かう場合を含む。2次元x−y面上の円形スキャンのスキャン信号は以下の式で表される。
【0043】
x(t)=V(t)cos(ωt) (数2)
y(t)=V(t)sin(ωt) (数3)
但し、x=y=0を中心とする。
【0044】
V(t)は中心から照射位置の距離に比例する電圧、ω(t)は円形スキャンの回転速度、tはスキャン時間である。円形のプリドーズ領域の半径をRとする。1次ビームを中心から半径Rの距離まで偏向させるために偏向電圧Voが必要とし、プリドーズ領域全体を一回スキャン(1フレームのスキャン)するための必要時間をTframeとする。
【0045】
円形スキャンを内側から外側に行う場合、V(t)がスキャン時間0からTframeの間に0からVoの間に変化し、その逆に外側から内側に向かって行う場合は、Voから0の間に変化する。
【0046】
次に円形スキャン信号について説明する。一定のプローブ電流で照射する場合、単位面積当たりのドーズ量は1/(V(t)ω(t))に比例する。従って、ドーズ量を一定にする場合はV(t)ω(t)を一定にし、ドーズ量を大きくするためにはV(t)ω(t)を小さくすればよい。
【0047】
プリドーズ領域の電荷密度を連続的に変化させる場合ω(t)を次のように変えればよい。但し、以後は内側から外側に向かう円形スキャンについて説明する。プリドーズ領域の外側ほどVが大きくなるので、外側の電荷密度を高くするためには、ωをVの増大より速い割合で減少させなければならない。例えば、V(t)がスキャン時間tに比例する場合、ωがt−(1+α)(但し、α>0)に比例させれば、外側ほどドーズ量が大きくなる。
【0048】
次に、プリドーズ領域で電荷密度を不連続に変化させる場合のωの制御について図8の具体例を用いて説明する。図8(a)に示すように、半径Rの円形のプリドーズ領域を中心部Aから外側に向かって半径2:3:4の割合で分割し、それぞれをA,B,Cと呼ぶ。A,BとCのそれぞれにドーズ量が1:2:3になる場合を説明する。
【0049】
内側から外側に向かう円形スキャンで、V(t)がtに比例するとする。各領域におけるωが1/tに比例し、A,B,Cでの比例係数をそれぞれκA,κB,κCとする。κA:κB:κC=3:2:1になるように調整すれば、A,B,Cでのドーズ量が1:2:3になり、プリドーズ領域における電荷分布が図8(a)のようになる。この場合のV(t)とω(t)を図8(b)に示す。但し、横軸の時間を1フレームのスキャン時間Tframeで規格化し、縦軸のωをln(ω/κ)として表し、電圧VをVoで規格化して表示する。
【0050】
図8(a)の電荷分布で形成される帯電電位を数値計算で求め、その結果を図8(d)に示す。電荷密度がプリドーズ全領域に渡って一定であるような場合(V(t)ω(t)=一定)の電位分布を図8(c)に示す。但し、縦軸は電位Φをσ/4πεoで規格化した量で、単位はmである。また、横軸は、rをRで規格化した無次元量である。試料からの高さz=0.2Rと0.5Rの2つの面で求めた電位分布を示す。図8(c)と図8(d)を比べると、電荷密度をプリドーズ領域の内側を低くして、外側を高くすることで、プリドーズ領域の内側半分(領域A)で、帯電電位の横勾配が緩和されることが分かる。z=0.2R面で、r=0とr=0.5Rの間の勾配を直線で近似すると、観測時1次ビームに作用する横方向の力が、図8(b)のように分割した場合は、分割しない場合の1/4.5程度になる。
【0051】
このように、プリドーズ領域における電荷分布に勾配をつけることで、一様な帯電電位を実現し、観測時1次ビームの軌道の曲げを防ぎ、視野ずれ,フォーカスボケや像歪み等を防止することができる。
【0052】
上の例でスキャン領域を3分割する例を示したが、分割数を任意に変え、各領域のドーズ量も任意に調整し、試料の材料に応じて帯電電位が一様になる最適な条件を選ぶことができる。
【実施例5】
【0053】
プリドーズ照射で試料に蓄積する電荷が、プリドーズ後観測を開始する間に、試料内を移動し、広がってしまうような材料の場合、実施例4で述べたプリドーズ方式において、プリドーズ領域の中心に1次ビームを照射しない方式にする。これは図9(a)に示すように中心部Aに1次ビームを照射せず、周囲部Bだけに照射するプリドーズ方式になる。領域Aと領域Bの面積は任意に調整できる。図9(b)に示すように、蓄積電荷が広がってしまうような材料の場合は、中心部Aの電荷密度が低くて(ゼロではない)周囲部Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。従って、プリドーズで試料に蓄積される電荷が広がる材料の場合は、電位分布が図8(d)のようになり、中心部Aにおける電位の横勾配が小さくなる。その結果、観測中1次ビームの横ずれが小さくなり、視野ずれも小さくなる。
【実施例6】
【0054】
試料に蓄積された電荷が、プリドーズ後観測を開始する間に試料内に広がらない場合は、実施例5において予備照射のドーズ量を可変にする。つまり、中心部Aに近いほどドーズ量を減らし、外部Cに近いほどドーズ量を増やすプリドーズ方式である。この方式で、中心部Aにおける電荷密度をゼロで、周囲部Bにおける密度を領域Aから領域Cに向かって緩やかに高くすることで、電位分布を均一にすることができる。その結果、観測時1次ビームの横ずれを防ぐことができ、観測時の視野ずれ防止が可能になる。
【実施例7】
【0055】
上述した実施例によれば、プリドーズ領域の中心部への予備照射を少なく(又は照射しないように)し、中心部の電荷密度を低く、周囲部の電荷密度を高くすることで一様な帯電電位を形成する方式を説明した。次に、プリドーズ中1次ビームを照射しない領域を中心部に限らず、離散的にすることで一様な対電電位分布を形成できることを説明する。この方式は枠状走査又は円形スキャン方式で実現できる。図10に枠状走査方式の例を示す。図10(a)のように1次ビームを離散的に照射すると図10(b)のように離散的電荷分布ができる。照射領域間に非照射領域を作るために高速ブランキングを採用する。
【0056】
プリドーズ領域を分割して照射する具体例を以下に述べる。例えば、図10(c)に示すように円形のプリドーズ領域を10分割し、プリドーズ領域の内側から外側に向かってそれぞれの領域をA,B,C,D,E,F,G,H,I,Jと称する。図10(c)には全ての分割を明記せず、周囲部のI,Jと中心部のA,Bのみを表示する。プリドーズ中に、A,B,D,F,H,Jのみに1次ビームを照射する。その際、各予備照射領域の電荷密度がJ:H:F:D:B:A=4:3:2:1:1:1になるようにスキャン速度を調整する。この場合の帯電電位を数値計算で求めた結果を図10(d)に示す。この図から、プリドーズ領域の内側半分の領域に一様な帯電電位が形成されることが分かる。上の例は、試料に蓄積した電荷が広がらない場合であるが、蓄積電荷が広がってしまう場合もこの方式を応用できる。例えば、プリドーズ後観測までの時間に試料に蓄積する電荷が広がってしまい、JからAに向かって電荷密度が4:0.5:3:0.5:2:0.5:1:0.5:1:1になったとする。この場合の帯電電位を数値計算で求めた結果を図10(e)に示す。図10(d)と図10(e)を比較して、上の離散的1次ビーム照射の場合、プリドーズ中蓄積電荷の広がる影響が少なく、いずれの場合も一様な帯電電位を形成できると言える。
【実施例8】
【0057】
走査電子顕微鏡等の走査型電子線装置においてよく使われるスキャン方式はラスタスキャンである。円形スキャン等を使わずに、ラスタスキャンを使って図5(b)と図6(b)のような電荷分布を形成することが可能である。その実施例を以下に図を用いて述べる。
【0058】
本実施例では、ラスタスキャンと高速ブランキングの組み合わせで図5(b)と図6(b)のような電荷分布を形成する例について説明する。
【0059】
図11に示すように、中心部Aを除き、周囲部Bのみラスタ方式でスキャンするプリドーズ方式を採用する。領域Aと領域Bの面積は任意に調整することができる。中心部Aに1次ビームのスキャンを防ぐために、一本の線のスキャン時間より十分速く動作するブランキングを採用する必要がある。このとき、中心部Aにおけるxスキャン信号とブランキング信号の関係を図12に示す。ここで、tblankはブランキングを行う時間、tlineは1本の線をスキャンする時間、tcはブランキングの応答遅れである。プリドーズ領域の中心部Aのx方向の長さをLだとすると、
tblank=L・ts/Np (数4)
となる。但し、ts=1ピクセルスキャンする時間、Np=x方向のピクセル数である。使用するブランキングの仕様はtc≪tblankである必要がある。
【0060】
上述したプリドーズ方式で、プリドーズで蓄積される電荷が広がるような材料の場合、領域Aの電荷密度が低く、領域Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。従って、図6(b)と同様な電荷分布ができ、電位分布は図8(d)のようになる。結果として、中心部Aにおける電位の横勾配を小さくすることで、観測時の視野ずれを防止することができる。
【実施例9】
【0061】
予備照射によって試料に蓄積される電荷が、プリドーズ後観測を開始する間に試料内に広がらない場合は、図13のように、ラスタスキャンと、スキャン速度を変える手法を組み合わせることで、図6(b)と同様な電荷分布が形成できる。本実施例の中心部Aにおけるxスキャン信号を図14に示す。xスキャン速度を可変にし、高速スキャンを実施する時間がtfastである場合、その間xスキャン信号の傾きαfastは、その前後の傾きαより大きい。tfastは、
tfast=ts′・np (数5)
となり、ts′は、高速スキャン部における1ピクセル当たりの照射時間であり、npは、高速スキャンを行う領域Aのx方向のピクセル数である。
【0062】
図9で線幅の太い部分は、スキャン速度が遅いことを示し、線幅の細い部分はその逆である。図13ではスキャン速度の一段変化の例を示したが、同様に多段変化のスキャン信号も作れる。このようなプリドーズ方式で図6(b)のように、中心部Aの電荷密度が低く、周囲部Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。その結果、図8(d)に示すような、中心部Aでほぼ均一な電位分布ができ、観測時の視野ずれを防止できる。
【実施例10】
【0063】
実施例8にて適用した高速ブランキングや、実施例9の可変速度ラスタスキャンのような複雑な制御を行うことなく、プリドーズ領域の帯電の均一化を実現するビーム走査法を説明する。本実施例では、図15に示すように、同じ領域において、予備照射部分を変えながら縦ラスタスキャンと横ラスタスキャンを実施することで、中心部Aに1次ビームを照射せず、周囲部Bのみに照射する。領域Aと領域Bの面積を任意に調整することができる。図15(a)のスキャン後(b)を行う間に、予備照射によって試料に蓄積される電荷が広がる場合と広がらない場合が考えられる。蓄積電荷が広がるような材料において、領域Aの電荷密度が低く、領域Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。従って、図8(d)と同様な電位分布ができ、中心部Aにおける電位の横勾配を小さくすることで、観測時の視野ずれを防止することができる。
【実施例11】
【0064】
予備照射によって試料に蓄積される電荷が、プリドーズ後観測を開始する間に試料内に広がらない場合には、図16に例示するようなスキャン法を適用することが考えられる。これは、同じ領域において、予備照射部分を変えながら、縦ラスタスキャンと横ラスタスキャンを組み合わせることで、図16(d)のように中心部Aへの予備照射量が少なく、周囲部Bへの予備照射量が多くなるプリドーズ方式である。領域Aと領域Bの面積を任意に調整することができる。また、図16では、3段スキャンを組み合わせた例を示したが、さらに多段のプリドーズも考えられる。例えば、図16(d)の次に再び周囲部をスキャンすることで、周囲部の電荷密度をさらに高くすることができる。この方式で領域Aの電荷密度が低く、領域Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。結果として、図8(d)と同様な電位分布ができ、中心部Aにおける電位分布の横勾配を小さくすることで、観測時の視野ずれを防止することができる。
【実施例12】
【0065】
従来の走査型電子顕微鏡はラスタスキャンと像回転(ラスターローテーション)の機能を備えており、ラスタスキャンと像回転の組み合わせで円形のプリドーズ領域を形成することができる。図17(a)に示すように、像表示画面の半分以下の領域に1次ビームをラスタスキャンしながら360°の像回転を施す。その結果、図17(b)のように、1次ビームが中心部Aに照射されず、周囲部のBのみに照射される。プリドーズで試料に蓄積する電荷が広がらないような材料の場合はAにおける電荷密度がゼロになるが、何らかの理由で蓄積された電荷が広がってしまうような材料の場合は、Aにおける電荷密度がゼロでなく、図7(b)のように、中心部Aの電荷密度低く、周囲部Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。従って、プリドーズで試料に蓄積される電荷が広がる材料の場合は、電位分布が図8(b)のようになり、中心部Aにおける電位分布の横勾配が小さくなる。その結果、観測時1次ビームの横ずれが小さくなり、視野ずれも小さくなる。
【実施例13】
【0066】
予備照射によって試料に蓄積される電荷が、プリドーズ後観測を開始する間に試料内に広がらない場合は、ラスタスキャンと像回転の組み合わせで図17(b)のような円形の電荷分布を実現するために、次のプリドーズ方式が考えられる。
【0067】
ひとつ目は、可変速度ラスタスキャンと像回転(ラスターローテーション)の組み合わせによるプリドーズである。図18(a)に示すように、像表示画面の半分の領域に1次ビームをラスタスキャンしながら360°の像回転を施す。図18(a)で太い線はスキャン速度が遅く、細い線はスキャン速度が速い。結果として、図18(b)のように、中心部Aの電荷密度が低く、周囲部Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。
【0068】
また、もうひとつのプリドーズ方式は、図18(a)のラスタスキャンを一定の速度にて行った直後に、同じ領域で実施例12の予備照射を行う方法である。いずれの場合も、プリドーズで試料に蓄積される電荷が広がらない材料では、電位分布が図8(d)のようになり、中心部Aにおける電位分布の横勾配が小さくなる。その結果、観測時1次ビームの横ずれが小さくなり、視野ずれも小さくなる。
【0069】
また、図17に例示するように、領域Aにビームが照射されないように、ブランキングを行いつつ、ラスターローテーションを行うことによって、帯電が拡がる試料に対して、適正なプリドーズを行うことが可能となる。
【0070】
上述のようにローテーションを行いつつ、プリドーズを行うことによって、複雑な走査パターンを適用することなく、回転中心に対して軸対称に帯電を形成することが可能となる。
【0071】
以上の説明では、プリドーズ中のドーズ量を変える手段としてスキャン速度を変える方法を説明したが、1次ビーム電流を変えることでドーズ量を変えることも可能である。しかし、ビーム電流を変えるためには、コンデンサーレンズ等の励磁を変える必要があり、高速のプリドーズスキャン中にそれを実施することは困難であると考えられる。
【0072】
実際にプリドーズ照射後試料に蓄積する電荷の分布が短時間で変化してしまう場合が多く、上述した全ての予備照射方式をその時間より速く実施できることが重要である。そのために図1の偏向器4の動作速度を速くすることが必要不可欠である。一般に磁場コイルの応答が遅いため、プリドーズを適正に行うためには、応答が速い静電偏向器が必要であると考えられる。
【実施例14】
【0073】
次に、複数の測定対象がプリドーズ領域に含まれる場合に、適用可能なプリドーズ法について説明する。図20は複数の測定対象(ホールパターン2001〜2004)がプリドーズ領域2005に含まれる例を説明する図である。図20の例では、4つのホールパターン2001〜2004が存在し、プリドーズ領域2005に一様に帯電を付着させると、プリドーズ領域2005中心にピークが位置するような電位勾配が形成され、各ホールパターンの画像が、その位置に応じて歪む可能性がある。また、帯電のピーク位置とホールの中心が離間しているため、ホール底から放出された電子が偏向され、ホールの側壁に衝突することによって、電子の検出効率が低下する可能性もある。
【0074】
そこで、本実施例では、各ホールパターンを包囲するように、複数(本実施例の場合、走査パターン2006,2007)の走査パターンを配列する手法を提案する。図20に例示するように、同じ走査パターンを、ホール中心に対し、軸対称に配置することによって、各ホールパターン画像の歪みを抑制しつつ、高い検出効率を維持することが可能となる。
【0075】
また、このような走査法を適用してもなお、プリドーズ領域2005を中心とした電位勾配による歪みの影響が懸念されるような場合は、非照射領域2008の大きさを大きくする、或いは外側に位置する走査パターンによる帯電を、内側の走査パターンによる帯電に対し、相対的に大きくするような走査条件にて、ビーム走査を行うことによって、プリドーズ領域2005内の電位分布の平坦化を実現するようにしても良い。
【0076】
更に、図21に例示するように、横方向の走査パターン2101と縦方向の走査パターン2102を格子状に組み合わせることによって、電位分布を平坦化するようにしても良い。この場合、走査パターン2101と走査パターン2102の交差部分と、それ以外の走査領域との間で電位差が生じる可能性があるが、その電位差が許容できる範囲であれば、このような走査パターンの組み合わせを採用するようにしても良い。図21の走査パターンの組み合わせは、図20のそれと比較すると簡単であるため、制御が容易になるという効果がある。
【実施例15】
【0077】
図22は、複数の走査電子顕微鏡を含む試料の検査、或いは測定システムの一例を示す図である。図22に例示するコンピュータネットワーク上には、走査電子顕微鏡2203,2204の制御装置1914、走査電子顕微鏡の動作条件を記憶した動作プログラムであるレシピを作成するレシピ作成装置2201、及び半導体デバイス等の設計データを記憶する設計データの記憶媒体2202が接続されている。
【0078】
記憶媒体2202に記憶されている設計データは、例えばGDSフォーマットやOASISフォーマットなどで表現されており、所定の形式にて記憶されている。なお、設計データは、設計データを表示するソフトウェアがそのフォーマット形式を表示でき、図形データとして取り扱うことができれば、その種類は問わない。レシピ作成装置2201では、設計データ,パターンの輪郭線データ、或いはシミュレーションが施された設計データ上で所望の測定点,オートフォーカス,オートスティグマ,アドレッシング点等のSEMにとって必要な処理を行うための位置等を設定し、当該設定に基づいて、SEMの試料ステージや偏向器等を自動制御するためのプログラムを作成する。更に、レシピにはプリドーズ条件も併せて登録され、当該登録された条件に基づいて、制御装置1914は走査電子顕微鏡2203,2204を制御する。
【0079】
レシピ設定装置2201には、記憶部2212と演算処理部2213が内蔵されており、プリドーズ条件を決定するのに必要な処理を行う。例えば、図23に例示するようなGUI(Graphical User Interface:GUI)画面上にて、設定された条件に基づいて、プリドーズ条件を設定する。なお、図23に例示するGUI画面上では、プリドーズ条件の多彩な設定を可能とすべく、試料へのビームの到達エネルギー(Landing Energy),電子ビームの加速電圧(Vacc),試料への印加電圧(Wafer Voltage),ビーム電流(Beam Current)が設定可能となっている。しかしながら上述したように、これらの条件を変化させてしまうと、相応の処理時間を要することになるため、可能な限りこれらの条件は固定的に適用することが望ましい。
【0080】
図23に例示するGUI画面上では、一般的な矩形(Rectangle)走査ではなく、走査パターンを選択するモード(Choose Scan Pattern)が選択されている。このような選択に基づいて、ウィンドウ2301にて、記憶部2212に記憶された走査パターンの読み出しが可能となっている。選択可能な走査パターンは、例えば実施例1〜14に例示したような走査パターンである。このような走査パターンの選択と、走査領域の大きさ(FOV size),ビームの照射時間(Exposure Time),プリドーズ領域の外側領域の走査速度(Scan Speed1),プリドーズ領域の内側領域の走査速度(Scan Speed2),ビームの非走査領域の大きさ(Size of Unirradiated Region)等の設定を行うことによって、適正なプリドーズ領域の設定を行う。
【0081】
FOV size以下のパラメータは、走査偏向器やブランキング電極(ブランカー)の制御によって調整することができるため、レンズ条件等の光学条件を変化させることなく、プリドーズ条件を変化させることができる。すなわち、装置のスループットを高い状態に維持可能な条件設定が可能となる。
【0082】
なお、ビームの走査条件を直接入力するのではなく、帯電量(Amount of Charge)や電位分布の平坦度(Flatness of Charge)の設定に基づいて、走査条件を設定するようにしても良い。すなわち、ホールが深い程、大きな帯電量が必要になり、一方で過度な帯電の付着は、他の測定対象を測定する際にビームを偏向してしまう等の影響を残すことになる可能性があるため、必要十分な帯電量を付着させることが望ましい。他方、帯電量が変化すると、帯電分布の平坦度も変化するため、こちらも帯電量に応じた適正な状態を設定可能とすることが望ましい。
【0083】
そこで、ビームの照射条件と帯電量(例えば帯電量のピーク値、或いは帯電量に応じて変化するパラメータ)を関連付けて記憶するテーブルを、予め記憶部2212に記憶しておき、帯電量の設定に応じて、ビームの照射条件を読み出し、レシピとして設定する。このテーブルは、例えば設定帯電量に応じて、照射時間が変化(帯電量が大きい程、照射時間が増加する)、或いは走査時間が変化(帯電量が大きい程、走査時間が遅くなる)するようなデータが記録されている。また、テーブルには、平坦度の設定に応じて、プリドーズ領域中央の非照射領域(Unirradiated Region)の大きさを変化させる、或いはプリドーズ領域内の外側領域の走査速度(Scan Speed1)や中央領域の走査速度(Scan Speed2)を変化させることによって、プリドーズ領域内の電位変化を平坦化するようなデータが記録されている。記憶部2212に記憶されているテーブルに、電子顕微鏡の光学条件,試料条件に応じて、FOV size以下のビーム走査条件を記憶しておくようにすると良い。試料情報の入力は、例えば記憶媒体2202に記憶された設計データを参照するようにしても良いし、入力装置2205より試料情報を入力するようにしても良い。
【0084】
また、走査条件と他の条件との関係をテーブル化しておくのではなく、入力される数値情報、或いは図23に例示するスライダを用いた設定によって入力される情報に基づいて、未入力情報を算出する演算式を記憶部2212に記憶させておき、その結果をGUI上に表示させるようにしても良い。
【0085】
レシピ設定装置2201内の帯電量演算部2207では、選択された走査パターン情報等に基づいて、帯電量、或いは帯電量の大きさを示す他のパラメータを算出する。また、平坦度演算部2208では、設定された走査パターン情報等に基づいて、プリドーズ領域内の電位勾配、或いは平坦度を求める。閾値判定部2209では、平坦度演算部2208によって求められた電位勾配、或いは平坦度が所定の条件を満たしているか否か(例えば勾配が所定条件より大きい、或いは平坦度が所定条件より低い)を判定する。警報発生部2210は、閾値判定部2209にて所定の条件を満たさないと判断された装置条件が設定されたときに、その旨をメッセージとして表示装置2206に表示させる。走査パターン生成部2211は、入力装置2205によって入力された条件に基づいて、上記テーブル等を参照しつつ、走査パターンを生成する。
【0086】
以上のような構成を備えたレシピ設定装置によれば、所望の帯電量や電位の平坦度に鑑みて、適正なプリドーズ条件を設定することが可能となる。
【0087】
なお、本実施例では、レシピ設定装置2201と、SEMの制御装置1914が別体のものとして説明したが、制御装置1914にレシピ設定部を内蔵するようにしても良く、レシピ設定を他の演算装置を備えたコンピュータにて行い、設定されたレシピ(動作プログラム)を、制御装置1914に内蔵される演算装置にて実行するようにしても良い。
【符号の説明】
【0088】
1 電子銃
2 電子ビーム
3 コンデンサーレンズ
4 偏向器
5 対物レンズ
6 試料
7 ビーム走査領域
8 2次電子
9 検出器
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型電子線装置に係り、特に、電子ビームの走査によって試料を帯電させる予備帯電法、及び予備帯電を試料に付着させる走査電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)は、電子ビーム(以後、1次ビームとも呼ぶ)を試料上照射することによって、試料から放出される2次電子(Secondary Electron:SE)や反射電子(Backscattered Electron:BSE)を検出する装置である。その検出信号を、画像やラインプロファイルに変換することによって、試料の観察,検査、或いは測定を行うことができる。電子顕微鏡は半導体デバイスの計測に広く応用されており、半導体デバイスの微細化に伴って、その計測技術が多種多彩なパターンの計測に適用していかなければならない。
【0003】
最近は特に、コンタクトホールと呼ばれる高アスペクト比の穴構造の観測・計測のニーズがある。アスペクト比とは穴の深さと穴径の比であり、アスペクト比が30超えるコンタクトホールも珍しくない。高アスペクト比のコンタクトホールの底を観測するために、ホール底に1次ビームを照射してから、底から放出される2次電子を検出しなければならない。しかし、アスペクト比の高いホールの場合、底からの2次電子がホールの側壁に衝突してしまい、ホールから脱出できない場合があり、ホール底の観測が困難になる。
【0004】
ホール底から放出される電子を試料上に導くために、試料表面を正に帯電させる手法が知られている。
【0005】
特許文献1乃至5には、試料表面を帯電させるビーム(第1のビーム)を照射した後に、コンタクトホール等の画像、或いはラインプロファイル等を形成する電子を検出するためのビーム(第2のビーム)を走査する手法が開示されている。第1のビームは、第2のビームに対し、二次電子放出効率ηや照射領域等が大きいビームであるため、試料表面は正に帯電する。第2の電子ビームは、試料が正帯電した状態で照射されるため、ホール底から放出された電子を、ホール外に導くことができ、電子の高効率検出が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−208085号公報(対応米国特許USP6,344,750)
【特許文献2】特表2002−524827号公報(対応米国特許USP6,570,154)
【特許文献3】特開平05−151927号公報(対応米国特許USP6,412,209)
【特許文献4】特開2000−331635号公報
【特許文献5】特開2000−200579号公報(対応米国特許USP6,635,873)
【特許文献6】特開2009−99540号公報(対応米国特許US2009/0084954)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1乃至5に開示された予備帯電法(以下、プリドーズ、或いはプリチャージ法と称することもある)によれば、ホール底等から放出される電子を高効率に検出することができるが、第1のビームによって試料上に付着した帯電が、第2のビームの走査範囲(視野(Field Of View:FOV))内で均一ではないため、視野ずれ,フォーカスずれ、或いは像歪み等が発生する可能性のあることが、発明者らの検討によって明らかになった。
【0008】
電子ビームの走査範囲中心は、走査範囲の縁部と比べると、高い電位を持つことになるため、第2の電子ビームの走査範囲内で、帯電電位が勾配を持つことになり、これが像歪み等の原因となる可能性がある。
【0009】
このような電位勾配を抑制すべく、特許文献6には第1に二次電子放出効率(η1)>1のビームを用いて、試料上を走査し、第2に異なる二次電子放出効率(η2)のビームを走査することによって、η1のビームによって形成された電位勾配を平坦化する手法が開示されているが、二次電子放出効率ηを変化すべく、試料に印加する負電圧を変化させているため、当該負電圧印加によって形成される静電レンズを変化させてしまうことになる。このように電子顕微鏡の光学条件を変化させてしまう手法では、レンズ条件の調整に時間を要する。また、第2のビームを照射する前に、2回の光学条件調整を行う必要があるため、相応の時間を要することになる。
【0010】
更に、帯電は徐々に緩和するため、上述のような時間経過も勘案した上で、帯電条件を決定する必要があり、且つその条件は試料を形成する材料によって異なるため、設定すべき装置条件が複雑になる可能性がある。
【0011】
以下に、電子顕微鏡のレンズ条件を変化させることなく、第2のビームの走査領域内の電位勾配を抑制することを目的とする走査型電子顕微鏡について説明する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための一態様として、走査電子顕微鏡において、電子ビームの走査領域内の内側領域の単位面積当たりの電荷密度が、当該走査領域内の外側領域の電荷密度より低くなるように、前記電子ビームを走査し、その後、前記内側領域を含む領域に、前記検出器によって電子を検出するための電子ビーム走査を行うように、前記走査偏向器の制御を行う走査電子顕微鏡を提案する。
【発明の効果】
【0013】
上記態様によれば、電子顕微鏡のレンズ条件等を変化させることなく、観察,検査、或いは測定のための電子ビーム走査領域について、予備帯電照射によって付着する表面帯電の電位勾配を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】走査型電子顕微鏡の概要を示す図。
【図2】プリドーズ領域を一定の速度でスキャンした場合の電位分布。
【図3】プリドーズ領域の内側と外側の電荷密度を変えた場合の帯電電位分布。
【図4】レクタングルスキャンのスキャン信号。
【図5】プリドーズ領域の中心部を除くレクタングルスキャン。
【図6】スキャン速度を変えながらレクタングルスキャン。
【図7】スキャン速度を変えながら円形スキャン。
【図8】スキャン速度を変えながら円形予備照射実施の例。予備照射中のスキャン信号と予備照射で形成される帯電電位分布。
【図9】プリドーズ領域の中心部を除く円形スキャン。
【図10】予備照射領域が離散的に分布するようなプリドーズ方式。
【図11】プリドーズ領域の中心部にビームを照射しないラスタスキャン。
【図12】プリドーズ領域の中心部にビームを照射しないラスタスキャン信号とブランキング信号。
【図13】プリドーズ領域の中心部へのドーズ量を少なくするラスタスキャン。
【図14】プリドーズ領域の中心部へのドーズ量を少なくするラスタスキャン信号。
【図15】縦と横ラスタスキャンの組み合わせで中心部にビームを照射しないプリドーズ。
【図16】縦と横ラスタスキャンの組み合わせで周囲部の電荷密度を高くするプリドーズ。
【図17】ラスタスキャンとラスターローテーションの組み合わせで中心部に照射しないプリドーズ。
【図18】ラスタスキャンとラスターローテーションの組み合わせで中心部に照射量を少なくするプリドーズ。
【図19】走査電子顕微鏡の概略構成図。
【図20】複数のパターンが存在する領域にプリドーズを施す例を示す図。
【図21】複数のパターンが存在する領域にプリドーズを施す例を示す図。
【図22】複数の走査電子顕微鏡を含む試料の検査、或いは測定システムの一例を示す図。
【図23】プリドーズ条件を設定するGUI画面の一例を示す図。
【図24】プリドーズから測定に至るまでの工程を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
SEMによる電子ビームの走査領域は、二次元的な拡がりを持ち、当該電子ビームが試料を帯電させるビームである場合、走査領域中心に蓄積する電荷(帯電)は、走査領域縁部に蓄積する電荷と比較すると、相対的に高い傾向にある。すなわち、試料表面に積極的に帯電を付着するプリドーズ法、或いはプリチャージ法を適用すると、観察領域内に電位勾配が形成されることになる。このような電位勾配は、電子ビームに対し偏向作用を持つため、視野ずれ,フォーカスずれや像歪み等がおき、正確な観測・計測ができない場合があると考えられる。
【0016】
通常の走査法(例えばラスタスキャン等)は、ある一定の領域で一定のスキャン速度で走査を行うため、付着する帯電電位が勾配を持つことになる。このような走査法をプリドーズやプリチャージに適用した場合、観測時のビームは、電位勾配によって形成されるレンズ作用で、その軌道が偏向される。その理由を以下に説明する。プリドーズ時のスキャン速度が一定の場合、試料に蓄積される電荷がプリドーズ領域に一様に分布すると考えられる。有限な領域に一様な電荷分布が存在するときの電位分布を図2に示す。
【0017】
図2(a)に示すように、プリドーズ領域が半径Rの円で、蓄積する電荷密度がその領域にある一定値σである場合を考える。円の中心から試料上の任意の点の距離r及び試料からの距離zの関数として求めた電位値を図2(b)に示す。この図で縦軸は電位Φをσ/4πεoで規格化した量で、単位はmである。また、横軸はrをRで規格化した無次元量である。この図から、電位分布がプリドーズ領域の中心部(r=0)に一番大きく、周囲部に小さいことが分かる。
【0018】
従って、電位分布がr方向に勾配を持ち、レンズ作用が生じる。その結果、プリドーズ領域の中心から離れた位置を観測する際、1次ビームが横方向にずれてしまい、視野ずれや像の歪みを起こす。このようにして、従来のプリドーズの手法では、コンタクトホールの底部からの2次電子が検出しやすくなる一方、帯電の影響で観測時に視野ずれや像の歪みが生じ、正確な測定ができない場合があると考えられる。
【0019】
上述のように一般的な走査法によるプリドーズでは、プリドーズ照射によって試料に蓄積される電荷密度がほぼ一様に分布するため、帯電電位分布が横勾配を持ち、レンズ作用で観測時1次ビームを曲げてしまう場合がある。そこで、本実施例では、プリドーズ領域の周囲部(図2でrがRに近い領域)の電荷密度を高くし、中心部(図2でrが0に近い領域)の電荷密度を低くすることで、帯電電位分布を一様にする走査電子顕微鏡について説明する。具体的には、プリドーズ領域を、電子ビームを照射する領域と照射しない領域に分割して所望の電荷分布にすることが考えられる。また、プリドーズ領域の周囲部に照射量が多く、中心部に照射量が少なくなるように、プリドーズ照射のとき1次ビームのスキャン速度を調整することでも所望の電荷分布を得ても良い。
【0020】
以上のような構成によれば、特に次世代の半導体デバイスの観測と正確な計測が可能となる。
【0021】
図1に走査型電子顕微鏡の概略図を示す。電子銃1で発生した電子ビーム2をコンデンサーレンズ3で収束させ、最後に対物レンズ5で試料上に収束させる。偏向器4で電子ビーム2を試料のビーム走査領域7の上を走査(以後、スキャンとも呼ぶ)させる。1次ビーム照射によって試料内で励起され、試料から放出される2次電子8を検出器9で検出し、電子の信号を画像に変換することで、試料の観測・計測を行う。
【0022】
図19は、より詳細な走査電子顕微鏡の概略構成図である。電子源1901から引出電極1902によって引き出され、図示しない加速電極によって加速された電子ビーム1903は、集束レンズの一形態であるコンデンサーレンズ1904によって、絞られた後に、走査偏向器1905により、試料1909上を一次元的、或いは二次元的に走査される。電子ビーム1903は試料台1908に内蔵された電極に印加された負電圧により減速されると共に、対物レンズ1906のレンズ作用によって集束されて試料1909上に照射される。
【0023】
電子ビーム1903が試料1909に照射されると、当該照射個所から二次電子、及び後方散乱電子のような電子1910が放出される。放出された電子1910は、試料に印加される負電圧に基づく加速作用によって、電子源方向に加速され、変換電極1912に衝突し、二次電子1911を生じさせる。変換電極1912から放出された二次電子1911は、検出器1913によって捕捉され、捕捉された二次電子量によって、検出器1913の出力が変化する。この出力に応じて図示しない表示装置の輝度が変化する。例えば二次元像を形成する場合には、走査偏向器1905への偏向信号と、検出器1913の出力との同期をとることで、走査領域の画像を形成する。また、図19に例示する走査電子顕微鏡には、電子ビームの走査領域を移動する偏向器(図示せず)が備えられている。この偏向器は異なる位置に存在する同一形状のパターンの画像等を形成するために用いられる。この偏向器はイメージシフト偏向器とも呼ばれ、試料ステージによる試料移動等を行うことなく、電子顕微鏡の視野(Field Of View:FOV)位置の移動を可能とする。
【0024】
なお、図19の例では試料から放出された電子を変換電極にて一端変換して検出する例について説明しているが、無論このような構成に限られることはなく、例えば加速された電子の軌道上に、電子倍像管や検出器の検出面を配置するような構成とすることも可能である。また、図19に例示する走査電子顕微鏡には、ブランカー(図示せず)と呼ばれる電子ビームをブランキングする電極、或いは磁極が搭載される。ブランカーは、電子ビームを電子ビームの理想光軸から離脱させるように偏向することで、走査電子顕微鏡のその他の条件に因らず、試料に対する電子ビームの非照射状態を作り出すものである。
【0025】
制御装置1914は、走査電子顕微鏡の各構成を制御すると共に、検出された電子に基づいて画像を形成する機能や、ラインプロファイルと呼ばれる検出電子の強度分布に基づいて、試料上に形成されたパターンのパターン幅を測定する機能を備えている。また、走査偏向器1905は高速偏向が可能な静電偏向器を採用することが望ましいが、高速性が確保できるのであれば、電磁偏向器を採用するようにしても良い。
【0026】
高アスペクト比のコンタクトホールを観察するのに必要な帯電を形成した上で、観察を行う工程は以下の通りである。制御装置1914は、図24に例示するような工程に従って、SEMの各構成要素を制御する。まず、試料室内に試料(半導体ウェハ等)を導入(ステップ2401)し、試料ステージの駆動やイメージシフトによって、ビームの照射位置に測定点を移動する(ステップ2402)。次に予め登録されたレシピに記憶された走査パターンを読み出して、プリドーズを実行する(ステップ2403,2404)。そしてプリドーズによる帯電領域に対し、レシピに記憶された走査条件を読み出して、測定のためのビーム走査を実行する(ステップ2405,2406)。
【0027】
以下に電子ビームを偏向する偏向システムに関し、観察領域に一様な帯電を形成することが可能な走査電子顕微鏡について、図面を用いて説明する。
【0028】
図2(b)で示すように、プリドーズ照射領域の電荷分布が一様であれば、帯電電位分布が横勾配を持つ。一方、プリドーズ領域を図3(a)のように分割し、周囲部(領域B)に一様に電荷が存在し、中心部(領域A)に電荷が存在しない場合の帯電電位分布を図3(b)に示す。
【0029】
この場合、中心の電位値が、プリドーズ領域を分割しないとき(図2(b))と比べて小さくなる。図3(b)に例示するような電位分布によれば、図2(b)に例示する電位分布と比較して、相対的に中心部の電位勾配を緩和できる。また、蓄積された電荷は、時間の経過に従って、周囲に拡散するため、第2のビーム(観察,測長,検査のために走査されるビーム)を走査するときに、中心部にも電位が拡散し、中心部と周囲部の電位差が緩和され、第2のビームの走査領域の電位勾配を緩和することができる。
【0030】
一方、第1のビーム(プリドーズのためのビーム)の走査時点では、試料付近では(試料からの高さzの小さい位置)、プリドーズ領域の周囲部における電位が中心部における電位より高くなる傾向が現れ、結果的に一様な電位分布にならないことがある。
【0031】
そこで、図3(c)のように、プリドーズ領域の中心部の電荷をゼロではなく、周囲部より少ないとして求めた電位分布を図3(d)に示す。この場合は、領域Aにおいて電位が図3(b)の場合と比べてより平らな分布になっている。
【0032】
図3(a)や図3(c)に例示するように、プリドーズ領域の中心部の電荷密度より周囲部の電荷密度が高いような電荷分布を実現すれば、一様な帯電電位を形成することができる。
【0033】
以下、観察領域に対し、一様な帯電を形成するための種々の走査法をより具体的に説明する。
【実施例1】
【0034】
一様な帯電を試料に付着させるためには、電子ビームの走査領域内の内側領域の単位面積当たりの電荷密度が、走査領域内の外側領域の電荷密度より低くなるように、走査すると良い。このような走査法の一例として、図4に例示するような走査法がある。
【0035】
1次ビームが試料上に図4(a)のように四角を描くようなスキャンを行うと、四角の枠状の照射領域ができる。本実施例では、このような走査法を試料の予備走査に適用する例について説明する。図4(a)は、(1)から(7)に例示されるように、走査領域の外側から内側に向かって、順に走査する走査順序を例示しているが、走査領域の内側から外側に向かって順に走査するようにしても良い。また、スキャン速度が速いほど照射電子数(以後ドーズ量)が少なくなる。
【0036】
図4(a)に例示する走査を行う際の走査信号を、図4(b)に例示する。図4(b)では、時間t[sec]を横軸としたときの図4(a)の1から7番目のビーム照射線のそれぞれに対応するxスキャン信号とyスキャン信号の推移を示している。この図で、Vはx又はy方向への最大偏向電圧、Npはプリドーズ照射領域の一方向のピクセル数、tiは(i=1,2,・・・)一本の線のスキャン時間、tscanは1ピクセル当たりのスキャン時間である。スキャン速度が一定の場合、
tscan=tn−tn-1 (数1)
が成立ち、且つ、xとy信号の傾きがスキャン時間と共に変化せず一定値(図4(b)のα)である。
【0037】
図4(a)に例示するような枠状走査を行う場合、内側の走査線の方が外側の走査線より短い。図4(c)では、スキャン速度が内側に向かうほど速くなる場合のスキャン信号の例を示している。ここで、スキャンする線の長さが短いほどスキャン速度が速い。従って、図4(c)に示すように、xとyスキャン信号の傾きの値がスキャンする線が短いほど大きくなる(図4(c)でα1<α2<α3 ・・・)。
【0038】
内側から外側に向かう枠状走査のスキャン信号は、図4(b)と図4(c)の信号を時間tについて逆に辿ったものになる。上述したような走査法、及び当該走査法の応用例によれば、一様な電位分布を形成できる。
【0039】
一定速度の枠状走査の場合、プリドーズ領域を分割してビーム照射を行う。1つの具体例を図5(a)に示す。中心部Aに1次ビームを照射せず、周囲部Bだけにレクタングルスキャンで照射するプリドーズを行う。ビームを照射してから観測を行う間に、ビーム照射によって試料に蓄積する電荷が広がらない場合は、観測時に領域Aにおける電荷密度がゼロになる。しかし、蓄積電荷が、観測を実施するまでに何らかの理由で広がってしまうような材料では、領域Aの電荷密度が低くて領域Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。従って、中心部Aにおける電位の横勾配を小さくでき、観測時の視野ずれを防止することができる。
【実施例2】
【0040】
実施例1に例示した走査法に基づくプリドーズにおいて、図5(a)の中心部Aの面積をゼロにすると、図6(a)のような四角形の照射領域ができる。本実施例では、外側から内側に向かって走査を継続すると共に、中心部Aに近いほどスキャン速度が速くなるようにスキャン信号を制御する。この場合、単位面積当たりの電荷量は、外側から内側に向かって徐々に小さくなっていくため、図6(b)に示すように、中心部Aの電荷密度が低くて周囲部Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。その結果、図3(d)に示すような、中心部Aでほぼ均一な電位分布ができ、観測時の視野ずれを防止できる。
【実施例3】
【0041】
プリドーズ後観測を始めるまでに試料に蓄積された電荷があまり広がらない場合は、図5(a)の中心部Aに近い程スキャン速度を速くし、その逆に外部Cに近いほどスキャン速度を遅くするプリドーズ方式にも応用できる。この場合、領域Aと領域Bの面積を任意に調整することが可能な調整装置を設けておき、試料の種類や電子顕微鏡の光学条件に応じて、調整可能にしておくことが望ましい。この方式で、中心部Aにおける電荷密度をゼロ、周囲部Bにおける密度を領域Aから領域Cに向かって緩やかに高くすることで、電位分布をより均一にすることができる。その結果、観測時1次ビームの横ずれを防ぐことができ、観測時の視野ずれ防止が可能になる。
【実施例4】
【0042】
図7(a)に例示するように、1次ビームが試料上に螺旋を描くようなスキャンを行うと円形の照射領域ができる。以後、このようなスキャンを円形スキャンと呼ぶ。円形スキャンは、1次ビームが試料上に描く螺旋の外側Aから内側Bに向かう場合と内側Bから外側Aに向かう場合を含む。2次元x−y面上の円形スキャンのスキャン信号は以下の式で表される。
【0043】
x(t)=V(t)cos(ωt) (数2)
y(t)=V(t)sin(ωt) (数3)
但し、x=y=0を中心とする。
【0044】
V(t)は中心から照射位置の距離に比例する電圧、ω(t)は円形スキャンの回転速度、tはスキャン時間である。円形のプリドーズ領域の半径をRとする。1次ビームを中心から半径Rの距離まで偏向させるために偏向電圧Voが必要とし、プリドーズ領域全体を一回スキャン(1フレームのスキャン)するための必要時間をTframeとする。
【0045】
円形スキャンを内側から外側に行う場合、V(t)がスキャン時間0からTframeの間に0からVoの間に変化し、その逆に外側から内側に向かって行う場合は、Voから0の間に変化する。
【0046】
次に円形スキャン信号について説明する。一定のプローブ電流で照射する場合、単位面積当たりのドーズ量は1/(V(t)ω(t))に比例する。従って、ドーズ量を一定にする場合はV(t)ω(t)を一定にし、ドーズ量を大きくするためにはV(t)ω(t)を小さくすればよい。
【0047】
プリドーズ領域の電荷密度を連続的に変化させる場合ω(t)を次のように変えればよい。但し、以後は内側から外側に向かう円形スキャンについて説明する。プリドーズ領域の外側ほどVが大きくなるので、外側の電荷密度を高くするためには、ωをVの増大より速い割合で減少させなければならない。例えば、V(t)がスキャン時間tに比例する場合、ωがt−(1+α)(但し、α>0)に比例させれば、外側ほどドーズ量が大きくなる。
【0048】
次に、プリドーズ領域で電荷密度を不連続に変化させる場合のωの制御について図8の具体例を用いて説明する。図8(a)に示すように、半径Rの円形のプリドーズ領域を中心部Aから外側に向かって半径2:3:4の割合で分割し、それぞれをA,B,Cと呼ぶ。A,BとCのそれぞれにドーズ量が1:2:3になる場合を説明する。
【0049】
内側から外側に向かう円形スキャンで、V(t)がtに比例するとする。各領域におけるωが1/tに比例し、A,B,Cでの比例係数をそれぞれκA,κB,κCとする。κA:κB:κC=3:2:1になるように調整すれば、A,B,Cでのドーズ量が1:2:3になり、プリドーズ領域における電荷分布が図8(a)のようになる。この場合のV(t)とω(t)を図8(b)に示す。但し、横軸の時間を1フレームのスキャン時間Tframeで規格化し、縦軸のωをln(ω/κ)として表し、電圧VをVoで規格化して表示する。
【0050】
図8(a)の電荷分布で形成される帯電電位を数値計算で求め、その結果を図8(d)に示す。電荷密度がプリドーズ全領域に渡って一定であるような場合(V(t)ω(t)=一定)の電位分布を図8(c)に示す。但し、縦軸は電位Φをσ/4πεoで規格化した量で、単位はmである。また、横軸は、rをRで規格化した無次元量である。試料からの高さz=0.2Rと0.5Rの2つの面で求めた電位分布を示す。図8(c)と図8(d)を比べると、電荷密度をプリドーズ領域の内側を低くして、外側を高くすることで、プリドーズ領域の内側半分(領域A)で、帯電電位の横勾配が緩和されることが分かる。z=0.2R面で、r=0とr=0.5Rの間の勾配を直線で近似すると、観測時1次ビームに作用する横方向の力が、図8(b)のように分割した場合は、分割しない場合の1/4.5程度になる。
【0051】
このように、プリドーズ領域における電荷分布に勾配をつけることで、一様な帯電電位を実現し、観測時1次ビームの軌道の曲げを防ぎ、視野ずれ,フォーカスボケや像歪み等を防止することができる。
【0052】
上の例でスキャン領域を3分割する例を示したが、分割数を任意に変え、各領域のドーズ量も任意に調整し、試料の材料に応じて帯電電位が一様になる最適な条件を選ぶことができる。
【実施例5】
【0053】
プリドーズ照射で試料に蓄積する電荷が、プリドーズ後観測を開始する間に、試料内を移動し、広がってしまうような材料の場合、実施例4で述べたプリドーズ方式において、プリドーズ領域の中心に1次ビームを照射しない方式にする。これは図9(a)に示すように中心部Aに1次ビームを照射せず、周囲部Bだけに照射するプリドーズ方式になる。領域Aと領域Bの面積は任意に調整できる。図9(b)に示すように、蓄積電荷が広がってしまうような材料の場合は、中心部Aの電荷密度が低くて(ゼロではない)周囲部Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。従って、プリドーズで試料に蓄積される電荷が広がる材料の場合は、電位分布が図8(d)のようになり、中心部Aにおける電位の横勾配が小さくなる。その結果、観測中1次ビームの横ずれが小さくなり、視野ずれも小さくなる。
【実施例6】
【0054】
試料に蓄積された電荷が、プリドーズ後観測を開始する間に試料内に広がらない場合は、実施例5において予備照射のドーズ量を可変にする。つまり、中心部Aに近いほどドーズ量を減らし、外部Cに近いほどドーズ量を増やすプリドーズ方式である。この方式で、中心部Aにおける電荷密度をゼロで、周囲部Bにおける密度を領域Aから領域Cに向かって緩やかに高くすることで、電位分布を均一にすることができる。その結果、観測時1次ビームの横ずれを防ぐことができ、観測時の視野ずれ防止が可能になる。
【実施例7】
【0055】
上述した実施例によれば、プリドーズ領域の中心部への予備照射を少なく(又は照射しないように)し、中心部の電荷密度を低く、周囲部の電荷密度を高くすることで一様な帯電電位を形成する方式を説明した。次に、プリドーズ中1次ビームを照射しない領域を中心部に限らず、離散的にすることで一様な対電電位分布を形成できることを説明する。この方式は枠状走査又は円形スキャン方式で実現できる。図10に枠状走査方式の例を示す。図10(a)のように1次ビームを離散的に照射すると図10(b)のように離散的電荷分布ができる。照射領域間に非照射領域を作るために高速ブランキングを採用する。
【0056】
プリドーズ領域を分割して照射する具体例を以下に述べる。例えば、図10(c)に示すように円形のプリドーズ領域を10分割し、プリドーズ領域の内側から外側に向かってそれぞれの領域をA,B,C,D,E,F,G,H,I,Jと称する。図10(c)には全ての分割を明記せず、周囲部のI,Jと中心部のA,Bのみを表示する。プリドーズ中に、A,B,D,F,H,Jのみに1次ビームを照射する。その際、各予備照射領域の電荷密度がJ:H:F:D:B:A=4:3:2:1:1:1になるようにスキャン速度を調整する。この場合の帯電電位を数値計算で求めた結果を図10(d)に示す。この図から、プリドーズ領域の内側半分の領域に一様な帯電電位が形成されることが分かる。上の例は、試料に蓄積した電荷が広がらない場合であるが、蓄積電荷が広がってしまう場合もこの方式を応用できる。例えば、プリドーズ後観測までの時間に試料に蓄積する電荷が広がってしまい、JからAに向かって電荷密度が4:0.5:3:0.5:2:0.5:1:0.5:1:1になったとする。この場合の帯電電位を数値計算で求めた結果を図10(e)に示す。図10(d)と図10(e)を比較して、上の離散的1次ビーム照射の場合、プリドーズ中蓄積電荷の広がる影響が少なく、いずれの場合も一様な帯電電位を形成できると言える。
【実施例8】
【0057】
走査電子顕微鏡等の走査型電子線装置においてよく使われるスキャン方式はラスタスキャンである。円形スキャン等を使わずに、ラスタスキャンを使って図5(b)と図6(b)のような電荷分布を形成することが可能である。その実施例を以下に図を用いて述べる。
【0058】
本実施例では、ラスタスキャンと高速ブランキングの組み合わせで図5(b)と図6(b)のような電荷分布を形成する例について説明する。
【0059】
図11に示すように、中心部Aを除き、周囲部Bのみラスタ方式でスキャンするプリドーズ方式を採用する。領域Aと領域Bの面積は任意に調整することができる。中心部Aに1次ビームのスキャンを防ぐために、一本の線のスキャン時間より十分速く動作するブランキングを採用する必要がある。このとき、中心部Aにおけるxスキャン信号とブランキング信号の関係を図12に示す。ここで、tblankはブランキングを行う時間、tlineは1本の線をスキャンする時間、tcはブランキングの応答遅れである。プリドーズ領域の中心部Aのx方向の長さをLだとすると、
tblank=L・ts/Np (数4)
となる。但し、ts=1ピクセルスキャンする時間、Np=x方向のピクセル数である。使用するブランキングの仕様はtc≪tblankである必要がある。
【0060】
上述したプリドーズ方式で、プリドーズで蓄積される電荷が広がるような材料の場合、領域Aの電荷密度が低く、領域Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。従って、図6(b)と同様な電荷分布ができ、電位分布は図8(d)のようになる。結果として、中心部Aにおける電位の横勾配を小さくすることで、観測時の視野ずれを防止することができる。
【実施例9】
【0061】
予備照射によって試料に蓄積される電荷が、プリドーズ後観測を開始する間に試料内に広がらない場合は、図13のように、ラスタスキャンと、スキャン速度を変える手法を組み合わせることで、図6(b)と同様な電荷分布が形成できる。本実施例の中心部Aにおけるxスキャン信号を図14に示す。xスキャン速度を可変にし、高速スキャンを実施する時間がtfastである場合、その間xスキャン信号の傾きαfastは、その前後の傾きαより大きい。tfastは、
tfast=ts′・np (数5)
となり、ts′は、高速スキャン部における1ピクセル当たりの照射時間であり、npは、高速スキャンを行う領域Aのx方向のピクセル数である。
【0062】
図9で線幅の太い部分は、スキャン速度が遅いことを示し、線幅の細い部分はその逆である。図13ではスキャン速度の一段変化の例を示したが、同様に多段変化のスキャン信号も作れる。このようなプリドーズ方式で図6(b)のように、中心部Aの電荷密度が低く、周囲部Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。その結果、図8(d)に示すような、中心部Aでほぼ均一な電位分布ができ、観測時の視野ずれを防止できる。
【実施例10】
【0063】
実施例8にて適用した高速ブランキングや、実施例9の可変速度ラスタスキャンのような複雑な制御を行うことなく、プリドーズ領域の帯電の均一化を実現するビーム走査法を説明する。本実施例では、図15に示すように、同じ領域において、予備照射部分を変えながら縦ラスタスキャンと横ラスタスキャンを実施することで、中心部Aに1次ビームを照射せず、周囲部Bのみに照射する。領域Aと領域Bの面積を任意に調整することができる。図15(a)のスキャン後(b)を行う間に、予備照射によって試料に蓄積される電荷が広がる場合と広がらない場合が考えられる。蓄積電荷が広がるような材料において、領域Aの電荷密度が低く、領域Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。従って、図8(d)と同様な電位分布ができ、中心部Aにおける電位の横勾配を小さくすることで、観測時の視野ずれを防止することができる。
【実施例11】
【0064】
予備照射によって試料に蓄積される電荷が、プリドーズ後観測を開始する間に試料内に広がらない場合には、図16に例示するようなスキャン法を適用することが考えられる。これは、同じ領域において、予備照射部分を変えながら、縦ラスタスキャンと横ラスタスキャンを組み合わせることで、図16(d)のように中心部Aへの予備照射量が少なく、周囲部Bへの予備照射量が多くなるプリドーズ方式である。領域Aと領域Bの面積を任意に調整することができる。また、図16では、3段スキャンを組み合わせた例を示したが、さらに多段のプリドーズも考えられる。例えば、図16(d)の次に再び周囲部をスキャンすることで、周囲部の電荷密度をさらに高くすることができる。この方式で領域Aの電荷密度が低く、領域Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。結果として、図8(d)と同様な電位分布ができ、中心部Aにおける電位分布の横勾配を小さくすることで、観測時の視野ずれを防止することができる。
【実施例12】
【0065】
従来の走査型電子顕微鏡はラスタスキャンと像回転(ラスターローテーション)の機能を備えており、ラスタスキャンと像回転の組み合わせで円形のプリドーズ領域を形成することができる。図17(a)に示すように、像表示画面の半分以下の領域に1次ビームをラスタスキャンしながら360°の像回転を施す。その結果、図17(b)のように、1次ビームが中心部Aに照射されず、周囲部のBのみに照射される。プリドーズで試料に蓄積する電荷が広がらないような材料の場合はAにおける電荷密度がゼロになるが、何らかの理由で蓄積された電荷が広がってしまうような材料の場合は、Aにおける電荷密度がゼロでなく、図7(b)のように、中心部Aの電荷密度低く、周囲部Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。従って、プリドーズで試料に蓄積される電荷が広がる材料の場合は、電位分布が図8(b)のようになり、中心部Aにおける電位分布の横勾配が小さくなる。その結果、観測時1次ビームの横ずれが小さくなり、視野ずれも小さくなる。
【実施例13】
【0066】
予備照射によって試料に蓄積される電荷が、プリドーズ後観測を開始する間に試料内に広がらない場合は、ラスタスキャンと像回転の組み合わせで図17(b)のような円形の電荷分布を実現するために、次のプリドーズ方式が考えられる。
【0067】
ひとつ目は、可変速度ラスタスキャンと像回転(ラスターローテーション)の組み合わせによるプリドーズである。図18(a)に示すように、像表示画面の半分の領域に1次ビームをラスタスキャンしながら360°の像回転を施す。図18(a)で太い線はスキャン速度が遅く、細い線はスキャン速度が速い。結果として、図18(b)のように、中心部Aの電荷密度が低く、周囲部Bの電荷密度が高い電荷分布ができる。
【0068】
また、もうひとつのプリドーズ方式は、図18(a)のラスタスキャンを一定の速度にて行った直後に、同じ領域で実施例12の予備照射を行う方法である。いずれの場合も、プリドーズで試料に蓄積される電荷が広がらない材料では、電位分布が図8(d)のようになり、中心部Aにおける電位分布の横勾配が小さくなる。その結果、観測時1次ビームの横ずれが小さくなり、視野ずれも小さくなる。
【0069】
また、図17に例示するように、領域Aにビームが照射されないように、ブランキングを行いつつ、ラスターローテーションを行うことによって、帯電が拡がる試料に対して、適正なプリドーズを行うことが可能となる。
【0070】
上述のようにローテーションを行いつつ、プリドーズを行うことによって、複雑な走査パターンを適用することなく、回転中心に対して軸対称に帯電を形成することが可能となる。
【0071】
以上の説明では、プリドーズ中のドーズ量を変える手段としてスキャン速度を変える方法を説明したが、1次ビーム電流を変えることでドーズ量を変えることも可能である。しかし、ビーム電流を変えるためには、コンデンサーレンズ等の励磁を変える必要があり、高速のプリドーズスキャン中にそれを実施することは困難であると考えられる。
【0072】
実際にプリドーズ照射後試料に蓄積する電荷の分布が短時間で変化してしまう場合が多く、上述した全ての予備照射方式をその時間より速く実施できることが重要である。そのために図1の偏向器4の動作速度を速くすることが必要不可欠である。一般に磁場コイルの応答が遅いため、プリドーズを適正に行うためには、応答が速い静電偏向器が必要であると考えられる。
【実施例14】
【0073】
次に、複数の測定対象がプリドーズ領域に含まれる場合に、適用可能なプリドーズ法について説明する。図20は複数の測定対象(ホールパターン2001〜2004)がプリドーズ領域2005に含まれる例を説明する図である。図20の例では、4つのホールパターン2001〜2004が存在し、プリドーズ領域2005に一様に帯電を付着させると、プリドーズ領域2005中心にピークが位置するような電位勾配が形成され、各ホールパターンの画像が、その位置に応じて歪む可能性がある。また、帯電のピーク位置とホールの中心が離間しているため、ホール底から放出された電子が偏向され、ホールの側壁に衝突することによって、電子の検出効率が低下する可能性もある。
【0074】
そこで、本実施例では、各ホールパターンを包囲するように、複数(本実施例の場合、走査パターン2006,2007)の走査パターンを配列する手法を提案する。図20に例示するように、同じ走査パターンを、ホール中心に対し、軸対称に配置することによって、各ホールパターン画像の歪みを抑制しつつ、高い検出効率を維持することが可能となる。
【0075】
また、このような走査法を適用してもなお、プリドーズ領域2005を中心とした電位勾配による歪みの影響が懸念されるような場合は、非照射領域2008の大きさを大きくする、或いは外側に位置する走査パターンによる帯電を、内側の走査パターンによる帯電に対し、相対的に大きくするような走査条件にて、ビーム走査を行うことによって、プリドーズ領域2005内の電位分布の平坦化を実現するようにしても良い。
【0076】
更に、図21に例示するように、横方向の走査パターン2101と縦方向の走査パターン2102を格子状に組み合わせることによって、電位分布を平坦化するようにしても良い。この場合、走査パターン2101と走査パターン2102の交差部分と、それ以外の走査領域との間で電位差が生じる可能性があるが、その電位差が許容できる範囲であれば、このような走査パターンの組み合わせを採用するようにしても良い。図21の走査パターンの組み合わせは、図20のそれと比較すると簡単であるため、制御が容易になるという効果がある。
【実施例15】
【0077】
図22は、複数の走査電子顕微鏡を含む試料の検査、或いは測定システムの一例を示す図である。図22に例示するコンピュータネットワーク上には、走査電子顕微鏡2203,2204の制御装置1914、走査電子顕微鏡の動作条件を記憶した動作プログラムであるレシピを作成するレシピ作成装置2201、及び半導体デバイス等の設計データを記憶する設計データの記憶媒体2202が接続されている。
【0078】
記憶媒体2202に記憶されている設計データは、例えばGDSフォーマットやOASISフォーマットなどで表現されており、所定の形式にて記憶されている。なお、設計データは、設計データを表示するソフトウェアがそのフォーマット形式を表示でき、図形データとして取り扱うことができれば、その種類は問わない。レシピ作成装置2201では、設計データ,パターンの輪郭線データ、或いはシミュレーションが施された設計データ上で所望の測定点,オートフォーカス,オートスティグマ,アドレッシング点等のSEMにとって必要な処理を行うための位置等を設定し、当該設定に基づいて、SEMの試料ステージや偏向器等を自動制御するためのプログラムを作成する。更に、レシピにはプリドーズ条件も併せて登録され、当該登録された条件に基づいて、制御装置1914は走査電子顕微鏡2203,2204を制御する。
【0079】
レシピ設定装置2201には、記憶部2212と演算処理部2213が内蔵されており、プリドーズ条件を決定するのに必要な処理を行う。例えば、図23に例示するようなGUI(Graphical User Interface:GUI)画面上にて、設定された条件に基づいて、プリドーズ条件を設定する。なお、図23に例示するGUI画面上では、プリドーズ条件の多彩な設定を可能とすべく、試料へのビームの到達エネルギー(Landing Energy),電子ビームの加速電圧(Vacc),試料への印加電圧(Wafer Voltage),ビーム電流(Beam Current)が設定可能となっている。しかしながら上述したように、これらの条件を変化させてしまうと、相応の処理時間を要することになるため、可能な限りこれらの条件は固定的に適用することが望ましい。
【0080】
図23に例示するGUI画面上では、一般的な矩形(Rectangle)走査ではなく、走査パターンを選択するモード(Choose Scan Pattern)が選択されている。このような選択に基づいて、ウィンドウ2301にて、記憶部2212に記憶された走査パターンの読み出しが可能となっている。選択可能な走査パターンは、例えば実施例1〜14に例示したような走査パターンである。このような走査パターンの選択と、走査領域の大きさ(FOV size),ビームの照射時間(Exposure Time),プリドーズ領域の外側領域の走査速度(Scan Speed1),プリドーズ領域の内側領域の走査速度(Scan Speed2),ビームの非走査領域の大きさ(Size of Unirradiated Region)等の設定を行うことによって、適正なプリドーズ領域の設定を行う。
【0081】
FOV size以下のパラメータは、走査偏向器やブランキング電極(ブランカー)の制御によって調整することができるため、レンズ条件等の光学条件を変化させることなく、プリドーズ条件を変化させることができる。すなわち、装置のスループットを高い状態に維持可能な条件設定が可能となる。
【0082】
なお、ビームの走査条件を直接入力するのではなく、帯電量(Amount of Charge)や電位分布の平坦度(Flatness of Charge)の設定に基づいて、走査条件を設定するようにしても良い。すなわち、ホールが深い程、大きな帯電量が必要になり、一方で過度な帯電の付着は、他の測定対象を測定する際にビームを偏向してしまう等の影響を残すことになる可能性があるため、必要十分な帯電量を付着させることが望ましい。他方、帯電量が変化すると、帯電分布の平坦度も変化するため、こちらも帯電量に応じた適正な状態を設定可能とすることが望ましい。
【0083】
そこで、ビームの照射条件と帯電量(例えば帯電量のピーク値、或いは帯電量に応じて変化するパラメータ)を関連付けて記憶するテーブルを、予め記憶部2212に記憶しておき、帯電量の設定に応じて、ビームの照射条件を読み出し、レシピとして設定する。このテーブルは、例えば設定帯電量に応じて、照射時間が変化(帯電量が大きい程、照射時間が増加する)、或いは走査時間が変化(帯電量が大きい程、走査時間が遅くなる)するようなデータが記録されている。また、テーブルには、平坦度の設定に応じて、プリドーズ領域中央の非照射領域(Unirradiated Region)の大きさを変化させる、或いはプリドーズ領域内の外側領域の走査速度(Scan Speed1)や中央領域の走査速度(Scan Speed2)を変化させることによって、プリドーズ領域内の電位変化を平坦化するようなデータが記録されている。記憶部2212に記憶されているテーブルに、電子顕微鏡の光学条件,試料条件に応じて、FOV size以下のビーム走査条件を記憶しておくようにすると良い。試料情報の入力は、例えば記憶媒体2202に記憶された設計データを参照するようにしても良いし、入力装置2205より試料情報を入力するようにしても良い。
【0084】
また、走査条件と他の条件との関係をテーブル化しておくのではなく、入力される数値情報、或いは図23に例示するスライダを用いた設定によって入力される情報に基づいて、未入力情報を算出する演算式を記憶部2212に記憶させておき、その結果をGUI上に表示させるようにしても良い。
【0085】
レシピ設定装置2201内の帯電量演算部2207では、選択された走査パターン情報等に基づいて、帯電量、或いは帯電量の大きさを示す他のパラメータを算出する。また、平坦度演算部2208では、設定された走査パターン情報等に基づいて、プリドーズ領域内の電位勾配、或いは平坦度を求める。閾値判定部2209では、平坦度演算部2208によって求められた電位勾配、或いは平坦度が所定の条件を満たしているか否か(例えば勾配が所定条件より大きい、或いは平坦度が所定条件より低い)を判定する。警報発生部2210は、閾値判定部2209にて所定の条件を満たさないと判断された装置条件が設定されたときに、その旨をメッセージとして表示装置2206に表示させる。走査パターン生成部2211は、入力装置2205によって入力された条件に基づいて、上記テーブル等を参照しつつ、走査パターンを生成する。
【0086】
以上のような構成を備えたレシピ設定装置によれば、所望の帯電量や電位の平坦度に鑑みて、適正なプリドーズ条件を設定することが可能となる。
【0087】
なお、本実施例では、レシピ設定装置2201と、SEMの制御装置1914が別体のものとして説明したが、制御装置1914にレシピ設定部を内蔵するようにしても良く、レシピ設定を他の演算装置を備えたコンピュータにて行い、設定されたレシピ(動作プログラム)を、制御装置1914に内蔵される演算装置にて実行するようにしても良い。
【符号の説明】
【0088】
1 電子銃
2 電子ビーム
3 コンデンサーレンズ
4 偏向器
5 対物レンズ
6 試料
7 ビーム走査領域
8 2次電子
9 検出器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子源と、
当該電子源から放出された電子ビームを試料上で走査するための走査偏向器と、前記試料から放出される電子を検出する検出器と、前記走査偏向器の制御を行う制御装置を備えた走査電子顕微鏡において、
前記制御装置は、前記電子ビームの走査領域内の内側領域の単位面積当たりの電荷密度が、当該走査領域内の外側領域の電荷密度より低くなるように、前記電子ビームを走査し、その後、前記内側領域を含む領域に、前記検出器によって電子を検出するための電子ビーム走査を行うように、前記走査偏向器の制御を行うことを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1において、
前記電子ビームをブランキングするブランカーを備え、
前記制御装置は、前記電子ビームが内側領域に走査されるときに、前記電子ビームをブランキングするように、前記ブランカーを制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項1において、
前記制御装置は、前記内側領域の前記電子ビームの走査時間が、前記外側領域の電子ビームの走査時間より短くなるように、前記走査偏向器を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項4】
請求項1において、
前記制御装置は、前記内側領域の電子ビームの走査速度が、前記外側領域の電子ビームの走査速度より速くなるように、前記走査偏向器を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項5】
請求項1において、
前記制御装置は、異なる方向に走査線方向を持つ複数の走査パターンを組み合わせて、前記外側領域に対する走査を行うように、前記走査偏向器を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項6】
請求項5において、
前記制御装置は、前記内側領域を外して前記走査領域が設定されるような走査パターンの組み合わせによって、前記外側領域に対する走査を行うように、前記走査偏向器を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項7】
請求項5において、
前記制御装置は、前記内側領域に対する走査速度が、前記外側領域の走査速度より速い走査パターンの組み合わせによって、前記電子ビームの走査を行うように前記走査偏向器を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項8】
請求項1において、
前記制御装置は、前記電子ビームを渦巻き状に走査するように、前記走査偏向器を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項9】
請求項8において、
前記制御装置は、前記外側領域に選択的に前記電子ビームが走査されるように、前記走査偏向器を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項10】
請求項8において、
前記制御装置は、前記内側領域に対する走査速度が、前記外側領域の走査速度より速くなるように、前記走査偏向器を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項11】
走査電子顕微鏡を用いて半導体パターンを測定するためのレシピを作成するレシピ作成装置において、
前記走査電子顕微鏡の電子ビームの走査領域内の内側領域の単位面積当たりの電荷密度が、当該走査領域内の外側領域の電荷密度より低くなるように、前記電子ビームを走査し、その後、前記内側領域を含む領域に、前記検出器によって電子を検出するための電子ビーム走査を行うような走査パターンを生成する走査パターン生成部を備えたことを特徴とするレシピ作成装置。
【請求項12】
走査電子顕微鏡を自動的に動作させる動作プログラムをコンピュータに作成させるコンピュータプログラムにおいて、
当該プログラムは、コンピュータに、
前記走査電子顕微鏡の電子ビームの走査領域内の内側領域の単位面積当たりの電荷密度が、当該走査領域内の外側領域の電荷密度より低くなるように、前記電子ビームを走査し、その後、前記内側領域を含む領域に、前記検出器によって電子を検出するための電子ビーム走査を行うような走査パターンを生成させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項1】
電子源と、
当該電子源から放出された電子ビームを試料上で走査するための走査偏向器と、前記試料から放出される電子を検出する検出器と、前記走査偏向器の制御を行う制御装置を備えた走査電子顕微鏡において、
前記制御装置は、前記電子ビームの走査領域内の内側領域の単位面積当たりの電荷密度が、当該走査領域内の外側領域の電荷密度より低くなるように、前記電子ビームを走査し、その後、前記内側領域を含む領域に、前記検出器によって電子を検出するための電子ビーム走査を行うように、前記走査偏向器の制御を行うことを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1において、
前記電子ビームをブランキングするブランカーを備え、
前記制御装置は、前記電子ビームが内側領域に走査されるときに、前記電子ビームをブランキングするように、前記ブランカーを制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項1において、
前記制御装置は、前記内側領域の前記電子ビームの走査時間が、前記外側領域の電子ビームの走査時間より短くなるように、前記走査偏向器を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項4】
請求項1において、
前記制御装置は、前記内側領域の電子ビームの走査速度が、前記外側領域の電子ビームの走査速度より速くなるように、前記走査偏向器を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項5】
請求項1において、
前記制御装置は、異なる方向に走査線方向を持つ複数の走査パターンを組み合わせて、前記外側領域に対する走査を行うように、前記走査偏向器を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項6】
請求項5において、
前記制御装置は、前記内側領域を外して前記走査領域が設定されるような走査パターンの組み合わせによって、前記外側領域に対する走査を行うように、前記走査偏向器を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項7】
請求項5において、
前記制御装置は、前記内側領域に対する走査速度が、前記外側領域の走査速度より速い走査パターンの組み合わせによって、前記電子ビームの走査を行うように前記走査偏向器を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項8】
請求項1において、
前記制御装置は、前記電子ビームを渦巻き状に走査するように、前記走査偏向器を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項9】
請求項8において、
前記制御装置は、前記外側領域に選択的に前記電子ビームが走査されるように、前記走査偏向器を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項10】
請求項8において、
前記制御装置は、前記内側領域に対する走査速度が、前記外側領域の走査速度より速くなるように、前記走査偏向器を制御することを特徴とする走査電子顕微鏡。
【請求項11】
走査電子顕微鏡を用いて半導体パターンを測定するためのレシピを作成するレシピ作成装置において、
前記走査電子顕微鏡の電子ビームの走査領域内の内側領域の単位面積当たりの電荷密度が、当該走査領域内の外側領域の電荷密度より低くなるように、前記電子ビームを走査し、その後、前記内側領域を含む領域に、前記検出器によって電子を検出するための電子ビーム走査を行うような走査パターンを生成する走査パターン生成部を備えたことを特徴とするレシピ作成装置。
【請求項12】
走査電子顕微鏡を自動的に動作させる動作プログラムをコンピュータに作成させるコンピュータプログラムにおいて、
当該プログラムは、コンピュータに、
前記走査電子顕微鏡の電子ビームの走査領域内の内側領域の単位面積当たりの電荷密度が、当該走査領域内の外側領域の電荷密度より低くなるように、前記電子ビームを走査し、その後、前記内側領域を含む領域に、前記検出器によって電子を検出するための電子ビーム走査を行うような走査パターンを生成させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−156076(P2012−156076A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−15903(P2011−15903)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
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