説明

走行支援装置及び走行支援システム

【課題】車間通信によって追従走行用の情報を送信する場合に、追従走行用の情報を送信する頻度を必要に応じた頻度に抑えることで輻輳の発生を回避することを可能にする。
【解決手段】予測用情報を新たに取得した場合に、既に送信した過去の予測用情報をもとに求められた現在時点における予測到達点と、新たに取得した予測用情報に含まれている現在位置との乖離の度合いを求め、求めた乖離の度合いが所定値以上であるか否かを判定する。そして、乖離の度合いが所定値以上と判定した場合には、新たに取得した予測用情報を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援装置及びこの走行支援装置を含む走行支援システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車車間通信で先行車両から送信される情報を用いて、先行車両の後方に位置する後続車両が、先行車両と所定の車間距離を保って追従走行を行うことで、隊列走行を行う技術が知られている。例えば、特許文献1には、隊列走行中は、最後尾以外の車両は先行車両となる可能性があることから、各車両は、自車位置、操作量(ハンドル、アクセル、ブレーキ)、運動量(速度、加速度、ヨーレート)に関する追従走行用の情報を後続車両に定期的に送信し、後続車両が、受信した追従走行用の情報に基づいて追従走行を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−348300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術には、輻輳が生じる可能性が高いという問題点があった。詳しくは、以下の通りである。特許文献1に開示の技術では、各車両から車車間通信によって追従走行用の情報が定期的に送信されるので、隊列に含まれる車両が多く存在すると、追従走行用の情報が通信帯域を占有する確率が上昇し、輻輳が生じる可能性が高くなる。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、車車間通信によって追従走行用の情報を送信する場合に、追従走行用の情報を送信する頻度を必要に応じた頻度に抑えることで輻輳の発生を回避することを可能にする走行支援装置及び走行支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の走行支援装置においては、予測用情報取得手段で予測用情報を新たに取得した場合に、既に送信した過去の予測用情報をもとに到達点予測手段で求められた現在時点における予測到達点と、新たに取得した予測用情報に含まれている現在位置との乖離の度合いを求め、求めた乖離の度合いが所定値以上であるか否かを乖離判定手段で判定する。
【0007】
ここで、当該現在時点における予測到達点と当該現在位置との乖離の度合いが小さい場合には、送信した過去の予測用情報を他車両が受信して、その受信した予測用情報に基づいて現在位置を予測した場合には、その他車両は自車両の現在位置を精度良く推定できることになる。一方、当該予測到達点と当該現在位置との乖離の度合いが大きい場合には、送信した過去の予測用情報を受信した他車両においても、自車両の現在位置を精度良く推定できないことになる。
【0008】
そこで、請求項1の構成においては、送信決定手段が、乖離判定手段で乖離の度合いが所定値以上と判定した場合に、予測用情報取得手段で新たに取得した予測用情報を送信すると決定する一方、乖離の度合いが所定値以上でないと判定した場合に、当該新たに取得した予測用情報を送信しないと決定している。
【0009】
これにより、送信した過去の予測用情報が、自車両の現在位置を精度良く推定できるものでなくなっている場合には新たに取得した予測用情報を送信する一方、送信した過去の予測用情報が、自車両の現在位置を精度良く推定できるものである場合には新たに取得した予測用情報を送信しないようにすることができる。予測用情報は、後続車両にとっては先行車両の将来の到達地点である予測到達点を求めることができる情報であるため、追従走行用の情報として用いることができる。
【0010】
従って、請求項1の構成によれば、車間通信によって追従走行用の情報を送信する場合に、追従走行用の情報を送信する頻度を必要に応じた頻度に抑えることで輻輳の発生を回避することが可能になる。
【0011】
また、請求項2のように、他車両に搭載されて情報を送信する通信装置との間で、無線通信を行うことが可能である態様としてもよい。
【0012】
請求項2のようにする場合には、請求項3のように、自装置から予測用情報を送信した後に、自装置と通信可能な状態にある通信装置が通信可能対象特定手段で新たに特定された場合には、送信決定手段で予測用情報を送信しないと決定したときであっても、予測用情報取得手段で新たに取得した予測用情報を送信する態様としてもよい。
【0013】
これによれば、自車両の車車間通信の範囲内に新たな他車両が加わった場合に、この他車両に対して、新たに取得した予測用情報を送信することができる。自車両の車車間通信の範囲内に新たに加わった他車両は、自車両の走行支援装置から送信された予測用情報を未受信である筈なので、以上の構成によれば、当該他車両が自車両の車車間通信の範囲内に新たに加わったときに、自車両の走行支援装置から送信される予測用情報をより迅速に受信することが可能になる。
【0014】
請求項4の構成のように、自車両の直近の先行車両の走行支援装置から送信される予測用情報を受信した場合に、この予測用情報をもとに自車両を当該先行車両に追従走行させる態様としてもよい。これによれば、走行支援装置を搭載した複数の車両が前後に並んだ場合に、各車両が1台前の車両に追従走行する車群を成すことが可能になる。
【0015】
請求項4のように、自車両の直近の先行車両の走行支援装置から送信される予測用情報をもとに自車両を当該先行車両に追従走行させる場合には、請求項5のようにしてもよい。請求項5の構成においては、到達点予測手段で求められる自車両の予測到達点から自車両の進行軌跡を予測する進行軌跡予測手段と、複数の先行車両の予測用情報に含まれる当該先行車両の現在位置と、進行軌跡予測手段で予測した自車両の進行軌跡とをもとに、先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点を探索する逸脱点探索手段と、先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点が逸脱点探索手段で探索された場合に、その地点をもとにして、自装置から送信する予測用情報を予測到達点を求めるのに用いるとした場合の有効範囲を決定する有効範囲決定手段とを備える。そして、自装置から予測用情報を送信する場合に、有効範囲決定手段で決定した当該予測用情報についての有効範囲も送信することになる。
【0016】
自車両の直近の先行車両の走行支援装置から送信される予測用情報をもとに自車両を当該先行車両に追従走行させる場合には、前述したように、各車両が1台前の車両に追従走行する車群を成すことが可能になる。この車群においては、各車両が1台前の車両に追従走行するので、先行車両の現在位置は、自車両の将来の到達点である可能性が非常に高い。従って、進行軌跡予測手段で予測した自車両の進行軌跡から先行車両が最初に逸脱する地点は、自車両で取得した予測用情報をもとに求める予測到達点の精度が大きく低下する可能性の高い地点である。
【0017】
これに対して、請求項5の構成によれば、先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点をもとにして、自装置から送信する予測用情報を予測到達点を求めるのに用いるとした場合の有効範囲を決定するので、当該予測用情報をもとに求める予測到達点の精度が大きく低下する可能性の高い地点に到達するまでの有効範囲を求めることが可能となっている。そして、自装置から予測用情報を送信する場合に、当該予測用情報についてのこの有効範囲も送信するので、後続車両において、予測用情報をもとに求める予測到達点の精度が大きく低下する可能性の高い地点に到達するまでの有効範囲を考慮した対応を行うことが可能となる。
【0018】
請求項5のようにする場合には、請求項6のように、自装置から予測用情報を送信した後、当該予測用情報について有効範囲決定手段で決定する有効範囲が所定値以上変化した場合には、送信決定手段で予測用情報を送信しないと決定したときであっても、予測用情報取得手段で新たに取得した予測用情報を送信する態様としてもよい。これによれば、既に送信済みの予測用情報についての有効範囲が所定値以上変化した場合に、新たな予測用情報を送信するとともに新たな有効範囲を送信することで、より正確な有効範囲を考慮した対応を後続車両において行うことを可能にする。
【0019】
請求項7のように、自車両の直近の先行車両に搭載される走行支援装置から、予測用情報に加えて当該予測用情報についての有効範囲も受信した場合は、この予測用情報をもとに自車両を当該先行車両に追従走行させるとともに、この有効範囲を超えるまでの間隔が所定値以下となったときは当該先行車両との車間距離をより長めに設定して追従走行させる態様としてもよい。
【0020】
これによれば、当該予測用情報を当該先行車両の予測到達点を求めるのに用いるとした場合の有効範囲を考慮して、自車両を当該先行車両に追従走行させることが可能になる。有効範囲は、先行車両から受信した予測用情報を当該先行車両の予測到達点を求めるのに用いるとした場合の有効範囲であるので、この有効範囲を超えたときには当該先行車両の予測到達点の精度が落ちる可能性が高い。これに対して、請求項7の構成によれば、有効範囲を超えるまでの間隔が所定値以下となったときは当該先行車両との車間距離をより長めに設定して追従走行させることになる。よって、当該先行車両の予測到達点の精度が落ちる前に、当該先行車両との車間距離をより長めに設定することで、車間距離に余裕を持たせることができる。
【0021】
請求項8のように、有効範囲決定手段では、先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点が逸脱点探索手段で探索された場合に、その地点に自車両が到達するまでの時間を推測し、推測した時間を有効範囲として決定する態様としてもよい。
【0022】
また、請求項9のように、有効範囲決定手段では、先行車両が車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点が逸脱点探索手段で探索された場合に、その地点を示す位置情報を有効範囲として決定する態様としてもよい。
【0023】
請求項4のように自車両の先行車両に追従走行させる場合には、請求項10のように、到達点予測手段は、予測用情報取得手段で取得した予測用情報と当該予測用情報を取得してからの経過時間とだけでなく、1または複数の先行車両の走行支援装置から受信した情報に含まれる当該先行車両の現在位置ももとにして、自車両の予測到達点を求める構成が好ましい。自車両が先行車両に追従走行する場合には、先行車両の現在位置は自車両が将来に到達する地点となる可能性が非常に高い。請求項10の構成によれば、実際に自車両に先行している先行車両の現在位置も予測到達点を求めるのに用いるので、自車両の予測到達点をより正確に求めることが可能になる。
【0024】
また、請求項10のようにする場合には、請求項11のようにすることが好ましい。請求項11においては、到達点予測手段で逐次求められる自車両の予測到達点から自車両の進行軌跡を予測する進行軌跡予測手段と、複数の先行車両の予測用情報に含まれる当該先行車両の現在位置と、進行軌跡予測手段で予測した自車両の進行軌跡とをもとに、先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点を探索する逸脱点探索手段とを備える。そして、先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点よりも自車両寄りの領域については、予測用情報取得手段で取得した予測用情報をもとに自車両の予測到達点を求める一方、先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点以降の領域については、先行車両の走行支援装置から受信した情報に含まれる当該先行車両の現在位置を自車両の予測到達点とすることになる。
【0025】
前述したように、自車両が先行車両に追従走行する場合には、先行車両の現在位置は自車両が将来に到達する地点となる可能性が非常に高い。請求項11の構成によれば、先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点以降の領域については、先行車両の現在位置を自車両の予測到達点とするので、自車両の予測到達点をより正確に求めることができる。
【0026】
また、請求項12の走行支援システムにおいては、複数の車両にそれぞれ搭載された前記のいずれかの走行支援装置を含むので、車間通信によって追従走行用の情報を送信する場合に、追従走行用の情報を必要最低限に抑えることで輻輳の発生を回避することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】走行支援システム100の概略的な構成を示すブロック図である。
【図2】走行支援装置1の概略的な構成を示すブロック図である。
【図3】走行支援装置1の制御部12での送信関連処理のフローを示すフローチャートである。
【図4】逸脱点の説明を行うための模式図である。
【図5】変形例1における走行支援装置1の制御部12での有効範囲決定関連処理のフローを示すフローチャートである。
【図6】変形例1における走行支援装置1の制御部12での有効範囲考慮処理のフローを示すフローチャートである。
【図7】先行車両の現在位置ももとにして、自車両の予測到達点を求める場合の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用された走行支援システム100の概略的な構成を示すブロック図である。図1に示す走行支援システム100は、複数の車両(車両A、車両B、車両C)の各々に1つずつ搭載された3つの走行支援装置1を含んでいる。
【0029】
走行支援装置1は、自動車等の車両に搭載されるものであって、本実施形態では、自動車としての車両A〜Cに搭載されるものとする。なお、図1では、走行支援システム100に3つの走行支援装置1を含む構成を示したが、必ずしもこれに限らない。各車両に搭載された走行支援装置1が走行支援システム100に複数含まれる構成であれば、3つ以外の数が含まれる構成としてもよい。しかしながら、以降では便宜上、走行支援システム100には、車両A〜Cの各々に1つずつ搭載された3つの走行支援装置1が含まれるものとして説明を続ける。
【0030】
ここで、図2を用いて走行支援装置1の概略的な構成について説明を行う。図2は、走行支援装置1の概略的な構成を示すブロック図である。図2に示すように走行支援装置1は、無線通信部11及び制御部12を備えている。また、走行支援装置1は、ナビECU2、自律センサ3、ブレーキECU4、EPS_ECU5と電子情報のやり取り可能に接続されており、走行支援装置1、ナビECU2、自律センサ3、ブレーキECU4、及びEPS_ECU5は、CAN(controller area network)などの通信プロトコルに準拠した車内LAN6で各々接続されている。
【0031】
ナビECU2は、車載ナビゲーション装置の制御装置であって、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等よりなる公知のマイクロコンピュータを主体として構成される。ナビECU2は、後述する位置方向検出器21が検出した車両の現在位置及び進行方向や後述する地図データ入力器22から読み出した地図データに基づいて、ナビゲーション機能としての各種処理を実行する。
【0032】
位置方向検出器21は、地磁気を検出する地磁気センサ、自車両の鉛直方向周りの角速度を検出するジャイロスコープ、自車両の移動距離を検出する距離センサ、及び衛星からの電波に基づいて車両の現在位置を検出するGPS(global positioning system)のためのGPS受信機といった各センサから得られる情報をもとに、車両の現在位置及び進行方向の検出を逐次行う。これらのセンサは、各々が性質の異なる誤差を持っているため、複数のセンサにより各々補完しながら使用するように構成されている。なお、各センサの精度によっては位置方向検出器21を上述した内の一部で構成してもよいし、上述した以外のセンサを用いる構成としてもよい。
【0033】
また、現在位置は、座標(緯度・経度)で表すものとすればよい。また、進行方向は、北を基準とした方位角として表してもよいし、後述するリンク方向として表してもよい。本実施形態では、現在位置は座標として表し、進行方向は北を基準とした方位角として表すものとして説明を行う。
【0034】
地図データ入力器22は、記憶媒体(図示せず)が装着され、その記憶媒体に格納されている地図データを入力するための装置である。地図データには、道路を示すリンクデータとノードデータとが含まれる。リンクデータは、リンクを特定する固有番号(リンクID)、リンクの長さを示すリンク長、リンク方向、リンク方位、リンクの始端及び終端ノード座標(緯度・経度)、道路名称、道路種別、一方通行属性、道路幅員、車線数、右折・左折専用車線の有無とその専用車線の数、及び速度規制値等の各データから構成される。一方、ノードデータは、地図上の各道路が交差、合流、分岐するノード毎に固有の番号を付したノードID、ノード座標、ノード名称、ノードに接続するリンクのリンクIDが記述される接続リンクID、及び交差点種類等の各データから構成される。
【0035】
なお、地図データは、地図データ入力器22に装着される記憶媒体に格納されているものを利用する構成に限らず、サーバ装置に格納されているものを、図示しないサーバ通信部を介して利用する構成としてもよい。
【0036】
自律センサ3は、走行支援装置1を搭載している車両の前方の他車両の存在及びその他車両との間の距離を検出するセンサである。なお、本実施形態では、前方の他車両の存在及びその他車両との間の距離を検出するセンサを示したが、後方の他車両の存在及びその他車両との間の距離を検出するセンサも備えている構成としてもよい。自律センサ3としては、レーザレーダ、ミリ波レーダ、カメラ等を用いることができる。
【0037】
ブレーキECU4は、CPU、ROM、RAM、バックアップRAM等よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され、例えば車速センサの信号から検出される車速、加速度センサの信号から検出される前後加速度や横加速度、ブレーキ圧センサの信号から検出されるブレーキフルード圧等の車両情報をもとに、ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで自車両の制動に関する各種の処理を実行する。
【0038】
EPS_ECU5は、車速センサの信号から検出される車速、トルクセンサの信号から検出される操舵トルク、舵角センサの信号から検出されるステアリングの操舵角、加速度センサの信号から検出される横加速度等の車両情報をもとに、ステアリングの操舵アシストに関する処理やステアリングの操舵角の制御に関する処理等を実行する。
【0039】
走行支援装置1の無線通信部11は、送受信アンテナを備え、例えば自車両位置の周囲数百メートルの範囲に存在する他車両との間で、電話網を介さずに無線通信によって自車両の情報の配信や相手車両の情報の受信(つまり、車車間通信)を行う。例えば、無線通信部11は、700MHz帯の電波を用いた単方向の同報通信によって車車間通信を行うものとする。本実施形態では、無線通信部11は、700MHz帯の電波を用いた無線通信によって車車間通信を行う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、5.9GHz帯の電波を用いた無線通信によって車車間通信を行うなどの構成としてもよい。
【0040】
走行支援装置1の制御部12は、通常のコンピュータとして構成されており、内部には周知のCPU、ROMやRAMやEEPROMなどのメモリ、I/O、及びこれらの構成を接続するバスライン(いずれも図示せず)などが備えられている。制御部12は無線通信部11、ナビECU2、自律センサ3、ブレーキECU4、EPS_ECU5から入力された各種情報に基づき、各種の処理を実行する。
【0041】
例えば制御部12は、自車両の将来の到達地点である予測到達点を求めることができる予測用情報を逐次取得する。予測用情報としては、自車両の現在位置、自車両の進行方向、自車両の旋回半径、自車両の車速、自車両の加減速度などがある。例えば、自車両の現在位置や進行方向の情報については、位置方向検出器21で逐次検出される現在位置や進行方向の情報が入力されるナビECU2から得るものとする。よって、制御部12が請求項の予測用情報取得手段に相当する。なお、制御部12が、ナビECU2を介さずに、自車両の現在位置や進行方向の情報を位置方向検出器21から得る構成としてもよい。
【0042】
また、例えば自車両の旋回半径については、舵角センサで逐次検出されるステアリングの操舵角の情報が入力されるEPS_ECU5から操舵角の情報を得て、この操舵角をもとに旋回半径を算出することで得るものとする。一例としては、実測やデータ補間によって得られた操舵角と旋回半径との対応関係が予め制御部12のROM等のメモリに格納されており、この対応関係をもとに操舵角から旋回半径を算出する構成とすればよい。
【0043】
さらに、例えば自車両の車速や加減速度については、車速センサで逐次検出される車速の情報や加速度センサで逐次検出される加減速度の情報が入力されるブレーキECU4やEPS_ECU5から得るものとする。よって、ナビECU2、ブレーキECU4、EPS_ECU5、車速センサ、加速度センサ、舵角センサ等が請求項の情報検出部に相当する。なお、予測用情報として、前述したものの一部を用いる構成としてもよいし、前述したもの以外の情報も用いる構成としてもよい。
【0044】
制御部12は、例えば一定の時間ごとにこれらの予測用情報を取得し、無線通信部11から送信させるか否かを判定する。そして、送信を行うと決定した場合にこれらの予測用情報を無線通信部11から送信させる。なお、予測用情報を無線通信部11から送信させるか否かの判定の処理については後に詳述する。
【0045】
制御部12は、予測用情報を送信させる場合には、予測用情報を取得したGPS時刻を付加して送信させてもよい。本実施形態では、自車両の現在位置や進行方向を送信させる場合に、当該現在位置や進行方向を検出したGPS時刻を付加して送信させるものとして説明を続ける。
【0046】
また、制御部12は、他車両に搭載されている走行支援装置1から送信される予測用情報を受信する。そして、受信した予測用情報に含まれる他車両の現在位置及び進行方向と自車両の現在位置及び進行方向とをもとにして、自車両と他車両との走行軌跡を求めることで個々の他車両の特定(つまり、個々の走行支援装置1の特定)を可能にするとともに、個々の他車両の自車両に対する相対位置を求める。さらに、制御部12は、例えばこの相対位置と地図データとをもとに、自車両の先行車両(つまり、自車両と同一車線を走行中の1台前の他車両)を特定する。ここで言うところの先行車両には、直近の先行車両(自車両と同一車線を走行中の1台前の他車両)もその直近の先行車両よりも前方を走行する先行車両も含むものとする。例えば、本実施形態の例では、車両Bの走行支援装置1では、車両Aを先行車両とし、車両Cの走行支援装置1では車両A及び車両Bを先行車両と特定する。
【0047】
ここで、同時点における自車両と他車両との現在位置及び進行方向の対応付けは、現在位置及び進行方向を検出した時点のGPS時刻を用いて行うものとする。他車両の現在位置及び進行方向の検出時点のGPS時刻は、予測用情報に付加して送信されたものを利用するものとする。また、自車両で検出された現在位置及び進行方向については、検出した時点のGPS時刻と対応付けて制御部12のRAM等のメモリに逐次格納されているものとする。
【0048】
また、制御部12は、自車両の走行支援装置1(以下、自装置)と通信可能な状態にある他車両の走行支援装置1を特定し、その情報を保持するものとする。詳しくは、自装置で予測用情報を受信することができた走行支援装置1を、自装置と通信可能な状態にある他車両の走行支援装置1とする。よって、制御部12が請求項の通信可能対象特定手段に相当する。個々の走行支援装置1の特定は、前述したようにして走行軌跡をもとに特定し、特定した走行支援装置1には一時的な仮のIDを割り当てる構成とすればよい。なお、走行支援装置1が搭載された車両に固有の識別子(例えば車両IDとする)を各走行支援装置1から送信する構成とする場合には、この車両IDをもとに走行支援装置1を特定する構成としてもよい。
【0049】
制御部12は、前述したようにして特定した走行支援装置1のIDの例えばリストをRAM等のメモリに保持するものとすればよい。また、特定してから一定時間以上経過した走行支援装置1のIDについては消去する一方、新たに特定した走行支援装置1のIDについてはリストに追加するものとする。本実施形態では、前述したようにして特定した走行支援装置1のIDのリスト(以下、通信可能対象リスト)をメモリに保持するものとして以降の説明を行う。
【0050】
他にも、制御部12は、直近の先行車両から送信された予測用情報を受信した場合には、この予測用情報をもとに直近の先行車両の走行位置を予測することで、この先行車両に対しての車間距離を設定された値に保つように自車両を追従走行させる。追従走行については公知の方法と同様にして行う構成とすればよい。例えば、ブレーキECU4や図示しないエンジンECUに指示を行うことで自車両の加減速を行ったり、操舵車輪を転舵するアクチュエータを駆動制御する図示しないECUに指示を行うことで自車両の操舵車輪の転舵を行ったりして、追従走行を行う構成とすればよい。これによれば、走行支援装置1を搭載した複数の車両が前後に並んだ場合に、各車両が1台前の車両に追従走行する車群を成すことが可能になる。
【0051】
なお、直近の先行車両の特定は、前述したようにして走行軌跡をもとに特定する構成とすればよい。車間距離については、例えば車速に応じて設定される構成としてもよいし、一定値が設定される構成としてもよい。また、車間距離制御は、自律センサ3の検出結果も用いて行う構成とすればよい。
【0052】
ここで、図3を用いて、制御部12での予測用情報の送信に関連する処理(以下、送信関連処理)についての説明を行う。図3は、走行支援装置1の制御部12での送信関連処理のフローを示すフローチャートである。本フローは、例えば自車両のイグニッション電源がオンになり、自車両が走行を開始ときに開始される。
【0053】
まず、ステップS1では、予測用情報を取得してステップS2に移る。ステップS2では、ステップS1で取得した予測用情報を無線通信部11から送信させてステップS3に移る。ステップS3では、直近の過去に予測用情報を取得してから一定の時間が経過したところで新たな予測用情報を取得し、ステップS4に移る。
【0054】
ステップS4では、既に送信済みの過去の予測用情報をもとに、現在時点における自車両の予測到達点を求めて、ステップS5に移る。例えば、送信済みの過去の予測用情報としては、直近に送信した過去の予測用情報がより好ましいが、必ずしもこれに限らず、例えば2〜3回前に送信した過去の予測用情報を用いる構成とするなどしてもよい。よって、制御部12が請求項の到達点予測手段に相当する。なお、本実施形態では、直近に送信した過去の予測用情報を用いるものとして以降の説明を続ける。
【0055】
ステップS4では、現在時点における自車両の予測到達点は、直近に送信した過去の予測用情報と、その予測用情報を取得してからの現在時点までの経過時間とをもとに求める構成とすればよい。経過時間については、図示しないタイマー回路等で計測する構成とすればよい。
【0056】
ステップS5では、乖離判定処理を行ってステップS6に移る。乖離判定処理では、ステップS3で新たに取得した予測用情報に含まれている自車両の現在位置とステップS4で求めた予測到達点との乖離の度合いを求める。例えば、本実施形態では、乖離の度合いとして、ステップS3で新たに取得した予測用情報に含まれている自車両の現在位置の座標とステップS4で求めた予測到達点の座標との距離を算出するものとする。よって、制御部12が請求項の乖離判定手段に相当する。
【0057】
そして、算出した距離(つまり、乖離の度合い)が所定値以上か否かを判定する。ここで言うところの所定値とは、位置方向検出器21での現在位置の誤差により生じる両者の距離よりも大きい値に設定しさえすれば任意に設定可能な値である。
【0058】
ステップS6では、乖離判定処理で乖離の度合いが所定値以上と判定した場合(ステップS6でYES)には、新たに取得した予測用情報を送信すると決定してステップS7に移る。また、乖離判定処理で乖離の度合いが所定値以上でない判定した場合(ステップS6でNO)には、新たに取得した予測用情報を送信しないと決定してステップS8に移る。よって、制御部12が請求項の送信決定手段に相当する。
【0059】
ステップS7では、ステップS3で新たに取得した予測用情報を無線通信部11から送信させてステップS10に移る。ステップS8では、リスト追加判定処理を行ってステップS9に移る。リスト追加判定処理では、ステップS2で予測用情報が送信された後(つまり、予測用情報の直近の送信後)に、通信可能対象リストに新たな走行支援装置1のIDが追加されたか否かを判定する。
【0060】
そして、ステップS9では、通信可能対象リストに新たな走行支援装置1のIDが追加されたと判定した場合(ステップS9でYES)には、ステップS6で予測用情報を送信しないと決定していたときであっても、新たに取得した予測用情報を送信するものとしてステップS7に移る。また、通信可能対象リストに新たな走行支援装置1のIDが追加されていないと判定した場合(ステップS9でNO)には、ステップS10に移る。
【0061】
ステップS10では、自車両のイグニッション電源がオフになった場合(ステップS10でYES)には、フローを終了する。また、自車両のイグニッション電源がオフになっていない場合(ステップS10でNO)には、ステップS3に戻ってフローを繰り返す。
【0062】
現在時点における予測到達点と新たに取得した予測用情報に含まれている自車両の現在位置との乖離の度合いが小さい場合には、直近に送信した過去の予測用情報を他車両が受信して、その受信した予測用情報に基づいて現在位置を予測した場合には、その他車両は自車両の現在位置を精度良く推定できることになる。一方、当該予測到達点と当該現在位置との乖離の度合いが大きい場合には、直近に送信した過去の予測用情報を受信した他車両においても、自車両の現在位置を精度良く推定できないことになる。
【0063】
よって、本実施形態の構成によれば、直近に送信した過去の予測用情報が、自車両の現在位置を精度良く推定できるものでなくなっている場合には新たに取得した予測用情報を送信する一方、直近に送信した過去の予測用情報が、自車両の現在位置を精度良く推定できるものである場合には新たに取得した予測用情報を送信しないようにすることができる。予測用情報は、前述したように、後続車両にとっては追従走行用の情報として用いることができるので、本実施形態の構成によれば、車間通信によって追従走行用の情報を送信する場合に、追従走行用の情報を送信する頻度を必要に応じた頻度に抑えることで輻輳の発生を回避することが可能になる。
【0064】
また、本実施形態の構成によれば、自車両の車車間通信の範囲内に走行支援装置1を搭載した新たな他車両が加わった場合に、この他車両に対して、新たに取得した予測用情報を送信することができる。自車両の車車間通信の範囲内に新たに加わった他車両の走行支援装置1は、自装置から送信された予測用情報を未受信である筈なので、以上の構成によれば、当該他車両が自車両の車車間通信の範囲内に新たに加わったときに、自装置から送信される予測用情報を走行支援装置1でより迅速に受信することが可能になる。
【0065】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、次の実施形態(以下、変形例1)も本発明の技術的範囲に含まれる。以下では、この変形例1について図面を用いて説明を行う。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0066】
変形例1では、先行車両の現在位置をもとに、自装置で取得した予測用情報により自車両の予測到達点を求める場合に精度良く推定することができる範囲(以下、有効範囲)を決定し、予測用情報を送信する場合に、この予測用情報についての有効範囲についても送信する。
【0067】
また、変形例1において、制御部12では、複数の他車両の走行支援装置1から送信された予測用情報を受信し、その予測用情報に含まれる現在位置を前述したようにして特定した車両ごと(詳しくは走行支援装置1ごと)に格納するものとする。本実施形態では、一例として、走行支援装置1を搭載する車両が、図4に示すように車両A、車両B、車両C、車両D、車両E、車両Fの順に並び、車両Aを除く各車が1台前の車両に追従走行をしながら車群を成している場合を例に挙げて以降の説明を行う。
【0068】
ここで、図5を用いて、変形例1において制御部12での有効範囲の決定に関連する処理(以下、有効範囲決定関連処理)についての説明を行う。図5は、変形例1における走行支援装置1の制御部12での有効範囲決定関連処理のフローを示すフローチャートである。本フローは、例えば自車両の予測用情報を取得したときに開始される。本フローでは、先行車両の走行支援装置1から予測用情報を受信済みであるものとして説明を行う。
【0069】
まず、ステップS31では、取得した自車両の予測用情報をもとに、自車両の予測進行軌跡を求める。よって、制御部12が請求項の進行軌跡予測手段に相当する。詳しくは、自車両の予測進行軌跡は、予測用情報をもとに複数の時点における予測到達点を求め、これらの予測到達点を結ぶことで求めることができる。なお、補間も利用してよいのは言うまでもない。
【0070】
ステップS32では、逸脱点探索処理を行ってステップS33に移る。逸脱点探索処理では、ステップS31で求めた予測進行軌跡と先行車両から受信していた予測用情報に含まれる先行車両の現在位置とを比較することで、先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点(以下、逸脱点)を探索する。よって、制御部12が請求項の逸脱点探索手段に相当する。本実施形態では、図4のGで示す車両Gが自車両、図4のA〜Eで示す車両A〜車両Eが先行車両であるものとする。
【0071】
逸脱点については、図4に示すように、予測進行軌跡(図4のG)から最初に逸脱した先行車両(本例では車両B)の位置の座標から直近の予測進行軌跡上の位置座標を逸脱点とすればよい。他にも、先行車両の位置を結んだ軌跡と予測進行軌跡とが最初に別れる位置を逸脱点とする構成としてもよい。
【0072】
ステップS33では、逸脱点探索処理で逸脱点が探索された場合(ステップS33でYES)には、ステップS34に移る。また、逸脱点探索処理で逸脱点が探索されなかった場合(ステップS33でNO)には、フローを終了する。
【0073】
ステップS34では、探索された逸脱点をもとに取得した予測用情報についての有効範囲を決定し、フローを終了する。よって、制御部12が請求項の有効範囲決定手段に相当する。例えば、逸脱点の座標を有効範囲と決定する構成とすればよい。他にも、自車両の車速や加速度から、予測用情報を取得した地点から逸脱点までの走行時間を推測し、この推測した時間を有効範囲と決定する構成としてもよい。本実施形態では、逸脱点の座標を有効範囲と決定する場合を例に挙げて以降の説明を行う。ステップS34で決定した有効範囲は、取得した予測用情報が自装置から送信されることになった場合に、この予測用情報に付加して送信される。
【0074】
自車両の直近の先行車両の走行支援装置1から送信される予測用情報をもとに自車両を当該先行車両に追従走行させる場合には、各車両が1台前の車両に追従走行する車群を成すことが可能になる。この車群においては、各車両が1台前の車両に追従走行するので、先行車両の現在位置は、自車両の将来の到達点である可能性が非常に高い。従って、自車両の予測進行軌跡から先行車両が最初に逸脱する地点は、自装置で取得した予測用情報をもとに求める予測到達点の精度が大きく低下する可能性の高い地点である。
【0075】
これに対して、以上の構成によれば、先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点をもとにして、有効範囲を決定するので、当該予測用情報をもとに求める予測到達点の精度が大きく低下する可能性の高い地点に到達するまでの有効範囲を求めることが可能となっている。そして、自装置から予測用情報を送信する場合に、当該予測用情報についてのこの有効範囲も送信するので、後続車両において、予測用情報をもとに求める予測到達点の精度が大きく低下する可能性の高い地点に到達するまでの有効範囲を考慮した対応を行うことが可能となる。
【0076】
続いて、図6を用いて、変形例1において直近の先行車両の走行支援装置1から有効範囲が付加された予測用情報を受信した場合の制御部12での有効範囲を考慮した処理(以下、有効範囲考慮処理)についての説明を行う。図6は、変形例1における走行支援装置1の制御部12での有効範囲考慮処理のフローを示すフローチャートである。本フローは、直近の先行車両の走行支援装置1から有効範囲が付加された予測用情報を受信したときに開始される。
【0077】
まず、ステップS51では、前述したようにして、受信した予測用情報をもとに追従走行を開始させ、ステップS52に移る。ステップS52では、有効範囲判定処理を行って、ステップS53に移る。有効範囲判定処理では、有効範囲を超えるまでの間隔が所定値以下となったか否かを判定する。例えば、本実施形態の例では、有効範囲に示されている逸脱点の座標と自車両の現在位置の座標との距離が所定値以下となったか否かを判定する。ここで言うところの所定値とは、自車両が逸脱点に十分に近付いたと推定できる程度の値であって、任意に設定可能な値である。
【0078】
ステップS53では、有効範囲を超えるまでの間隔が所定値以下となったと判定した場合には、自車両が逸脱点に十分に近付いたと推定(ステップS53でYES)には、ステップS54に移る。また、有効範囲を超えるまでの間隔が所定値以下となっていないと判定した場合には、自車両が逸脱点に十分に近付いていないと推定(ステップS53でNO)には、フローを終了する。ステップS54では、追従走行において既に設定されている車間距離(つまり、通常時の車間距離)よりも車間距離を長めに設定させ、フローを終了する。
【0079】
有効範囲は、先行車両から受信した予測用情報を当該先行車両の予測到達点を求めるのに用いるとした場合の有効範囲であるので、この有効範囲を超えたときには当該先行車両の予測到達点の精度が落ちる可能性が高い。これに対して、以上の構成によれば、有効範囲を超えるまでの間隔が所定値以下となったときは当該先行車両との車間距離をより長めに設定して追従走行させることになる。よって、当該先行車両の予測到達点の精度が落ちる前に、当該先行車両との車間距離をより長めに設定することで、車間距離に余裕を持たせることができる。
【0080】
なお、変形例1において、有効範囲を付加した予測用情報の送信後に、当該予測用情報について有効範囲決定関連処理を逐次行い、有効範囲決定関連処理で決定する有効範囲が、送信済みのもの比べて所定値以上変化した場合に、新たに取得した予測用情報を送信する構成としてもよい。ここで言うところの所定値とは、任意に設定可能な値である。この構成によれば、既に送信済みの予測用情報についての有効範囲が所定値以上変化した場合に、新たな予測用情報を送信するとともに新たな有効範囲を送信することで、より正確な有効範囲を考慮した対応を後続車両において行うことを可能にする。
【0081】
また、次の実施形態(以下、変形例2)も本発明の技術的範囲に含まれる。以下では、この変形例2について図面を用いて説明を行う。なお、説明の便宜上、前述の実施形態の説明に用いた図に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0082】
変形例2では、自装置で取得した予測用情報だけでなく、先行車両の走行支援装置1から受信した予測用情報に含まれる当該先行車両の現在位置ももとにして、自車両の予測到達点を求める。
【0083】
変形例2において、制御部12では、複数の先行車両の走行支援装置1から送信された予測用情報を受信し、その予測用情報に含まれる現在位置を前述したようにして特定した車両ごと(詳しくは走行支援装置1ごと)に格納するものとする。本実施形態では、一例として、走行支援装置1を搭載する車両が、図7に示すように車両A、車両B、車両C、車両D、車両E、車両Fの順に並び、車両Aを除く各車が1台前の車両に追従走行をしながら車群を成している場合を例に挙げて以降の説明を行う。なお、変形例2では、車両Fを自車両として説明を行う。
【0084】
例えば制御部12では、取得した自車両の予測用情報をもとに、自車両の予測進行軌跡を求める。自車両の予測進行軌跡は、前述のステップS31の処理と同様にして求める構成とすればよい。また、制御部12は、前述の逸脱点探索処理を行って、自車両の予測進行軌跡と先行車両から受信していた予測用情報に含まれる先行車両の現在位置とを比較することで、逸脱点を探索する。
【0085】
そして、逸脱点が探索された場合には、逸脱点よりも自車両寄りの領域については、自装置で取得した予測用情報をもとに自車両の予測到達点を求める一方、逸脱点以降の領域については、先行車両の走行支援装置1から受信した予測用情報に含まれる当該先行車両の現在位置を自車両の予測到達点とする。
【0086】
図7に示すように、先行車両の現在位置が自車両の予測進行軌跡(図7中のG)に沿っている場合には、自装置で取得した予測用情報をもとに自車両の予測到達点を求めても、自車両の予測到達点を正確に求めることができる。一方、先行車両の現在位置が自車両の予測進行軌跡に沿っていない場合には、先行車両の現在位置が結ぶ軌跡(図中のI)上に自車両が位置する可能性が高い。これは、自車両が先行車両に追従走行する場合には、先行車両の現在位置は自車両が将来に到達する地点となる可能性が非常に高いためである。これに対して、変形例2の構成によれば、先行車両が自車両の予想進行軌跡から最初に逸脱する地点(つまり、逸脱点)以降の領域については、先行車両の現在位置を自車両の予測到達点とするので、自車両の予測到達点をより正確に求めることができる。
【0087】
なお、先行車両の走行支援装置1から受信した予測用情報に含まれる当該先行車両の現在位置が存在する地点以降については、先行車両の走行支援装置1から受信した予測用情報に含まれる当該先行車両の現在位置を自車両の予測到達点とする構成としてもよい。
【0088】
前述の実施形態では、走行支援装置1が、車車間通信に関する機能と追従走行を行わせる機能の両方を担う構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、走行支援装置1以外の装置に追従走行を行わせる機能を担わせる構成としてもよい。
【0089】
また、前述の実施形態では、制御部12が、自装置と通信可能な状態にある他車両の走行支援装置1を特定し、特定した走行支援装置1の通信可能対象リストをメモリに保持する構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、自装置と通信可能な状態にある他車両の走行支援装置1だけでなく、自装置と通信可能な状態にある他車両の走行支援装置1以外の通信装置も特定し、通信可能対象リストをメモリに保持する構成としてもよい
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0090】
1 走行支援装置、2 ナビECU(情報検出部)、3 自律センサ、4 ブレーキECU(情報検出部)、5 EPS_ECU(情報検出部)、6 車内LAN、11 無線通信部、12 制御部(予測用情報取得手段、通信可能対象特定手段、到達点予測手段、乖離判定手段、送信決定手段、進行軌跡予測手段、逸脱点探索手段、有効範囲決定手段)、21 位置方向検出器、22 地図データ入力器、100 走行支援システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるとともに、
自車両の現在位置を少なくとも含む、自車両の将来の到達地点である予測到達点を求めることができる予測用情報を、自車両に搭載された情報検出部から逐次取得する予測用情報取得手段を備え、
前記予測用情報取得手段で取得した予測用情報を車車間通信によって送信する走行支援装置であって、
前記予測用情報取得手段で取得した予測用情報をもとに、自車両の予測到達点を求める到達点予測手段と、
前記予測用情報取得手段で予測用情報を新たに取得した場合に、既に送信した過去の予測用情報をもとに前記到達点予測手段で求められた現在時点における予測到達点と、新たに取得した予測用情報に含まれている現在位置との乖離の度合いを求め、求めた乖離の度合いが所定値以上であるか否かを判定する乖離判定手段と、
前記乖離判定手段で乖離の度合いが所定値以上と判定した場合に、前記予測用情報取得手段で新たに取得した予測用情報を送信すると決定する一方、前記乖離判定手段で乖離の度合いが所定値以上でないと判定した場合に、前記予測用情報取得手段で新たに取得した予測用情報を送信しないと決定する送信決定手段とを備えることを特徴とする走行支援装置。
【請求項2】
請求項1において、
他車両に搭載されて情報を送信する通信装置との間で、無線通信を行うことが可能であることを特徴とする走行支援装置。
【請求項3】
請求項2において、
自装置と通信可能な状態にある通信装置を、当該通信装置から情報を受信したことをもとにして特定する通信可能対象特定手段をさらに備え、
自装置から前記予測用情報を送信した後に、自装置と通信可能な状態にある通信装置が前記通信可能対象特定手段で新たに特定された場合には、前記送信決定手段で予測用情報を送信しないと決定したときであっても、前記予測用情報取得手段で新たに取得した予測用情報を送信することを特徴とする走行支援装置。
【請求項4】
請求項2または3において、
前記通信装置は、他車両に搭載される前記走行支援装置であって、
自車両の直近の先行車両に搭載される前記走行支援装置から送信される前記予測用情報を受信した場合に、この予測用情報をもとに自車両を当該先行車両に追従走行させることを特徴とする走行支援装置。
【請求項5】
請求項4において、
自車両の複数の先行車両に搭載される前記走行支援装置から送信される当該他車両の前記予測用情報を受信することが可能なものであって、
前記到達点予測手段で逐次求められる自車両の予測到達点から自車両の進行軌跡を予測する進行軌跡予測手段と、
複数の前記先行車両の前記予測用情報に含まれる当該先行車両の現在位置と、前記進行軌跡予測手段で予測した自車両の進行軌跡とをもとに、前記先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点を探索する逸脱点探索手段と、
前記先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点が前記逸脱点探索手段で探索された場合に、その地点をもとにして、自装置から送信する前記予測用情報を予測到達点を求めるのに用いるとした場合の有効範囲を決定する有効範囲決定手段とをさらに備え、
自装置から前記予測用情報を送信する場合に、前記有効範囲決定手段で決定した当該予測用情報についての前記有効範囲も送信することを特徴とする走行支援装置。
【請求項6】
請求項5において、
自装置から前記予測用情報を送信した後、当該予測用情報について前記有効範囲決定手段で決定する有効範囲が所定値以上変化した場合には、前記送信決定手段で予測用情報を送信しないと決定したときであっても、前記予測用情報取得手段で新たに取得した予測用情報を送信することを特徴とする走行支援装置。
【請求項7】
請求項5または6において、
自車両の直近の先行車両に搭載される前記走行支援装置から、前記予測用情報に加えて当該予測用情報についての前記有効範囲も受信した場合は、この予測用情報をもとに自車両を当該先行車両に追従走行させるとともに、この有効範囲を超えるまでの間隔が所定値以下となったときは当該先行車両との車間距離をより長めに設定して追従走行させることを特徴とする走行支援装置。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか1項において、
前記有効範囲決定手段では、前記先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点が前記逸脱点探索手段で探索された場合に、その地点に自車両が到達するまでの時間を推測し、推測した時間を前記有効範囲として決定することを特徴とする走行支援装置。
【請求項9】
請求項5〜7のいずれか1項において、
前記有効範囲決定手段では、前記先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点が前記逸脱点探索手段で探索された場合に、その地点を示す位置情報を前記有効範囲として決定することを特徴とする走行支援装置。
【請求項10】
請求項4において、
前記到達点予測手段は、前記予測用情報取得手段で取得した予測用情報だけでなく、1または複数の先行車両の前記走行支援装置から受信した情報に含まれる当該先行車両の現在位置ももとにして、自車両の予測到達点を求めることを特徴とする走行支援装置。
【請求項11】
請求項10において、
前記到達点予測手段で逐次求められる自車両の予測到達点から自車両の進行軌跡を予測する進行軌跡予測手段と、
複数の前記先行車両の前記予測用情報に含まれる当該先行車両の現在位置と、前記進行軌跡予測手段で予測した自車両の進行軌跡とをもとに、前記先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点を探索する逸脱点探索手段とを備え、
前記先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点よりも自車両寄りの領域については、前記予測用情報取得手段で取得した予測用情報をもとに自車両の予測到達点を求める一方、前記先行車両が自車両の進行軌跡から最初に逸脱する地点以降の領域については、先行車両の前記走行支援装置から受信した情報に含まれる当該先行車両の現在位置を自車両の予測到達点とすることを特徴とする走行支援装置。
【請求項12】
複数の車両にそれぞれ搭載された請求項1〜11のいずれか1項に記載の走行支援装置を含むことを特徴とする走行支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−3912(P2013−3912A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−135469(P2011−135469)
【出願日】平成23年6月17日(2011.6.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】