説明

走行状況記録装置

【課題】発生した異常状態に関する情報だけを保存するようにし、情報を保存するために用意される記憶領域を効率的に利用する走行状況記録装置を提供すること。
【解決手段】走行状況記録装置100は、車載機器30〜36が出力する車両情報を取得する車両情報取得手段10と、車両情報取得手段10が取得した車両情報を保存する車両情報保存手段11と、車両情報取得手段10が取得した車両情報に基づいて所定の異常状態を検出する異常状態検出手段12と、異常状態検出手段12が検出した異常状態に応じて車両情報取得手段10が取得した車両情報のうち車両情報保存手段11が保存する車両情報の種類を選択する保存内容選択手段13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行状況を事後的に確認するために各種車載機器が出力する車両情報を保存する走行状況記録装置に関し、特に、衝突事故等の所定の出来事が発生した場合に、発生前を含む所定期間における車両情報を過不足なく効率的に保存する走行状況記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の走行に関する情報を保存しておき、事故の発生状況を事後的に再現できるようにした運行状態記録装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この運行状態記録装置は、周辺監視装置、GPS(Global Positioning System)、ジャイロセンサ、操舵角センサ、車輪速センサ、ブレーキセンサ、ABS−ECU(Antilock Brake System Electronic Control Unit)等の各種車載機器の出力を所定のサンプリング間隔で記録し、スピードオーバー、急ブレーキ、車輪ロック、車間距離減少、急ハンドル、蛇行、又は、車線逸脱等のような事故に繋がる可能性の高い異常な状態の発生を検知した場合にそのサンプリング間隔を短縮させる。
【0004】
このように、この運行状態記録装置は、事故に繋がる可能性の高い異常な状態が発生した場合、各種車載機器の出力を通常走行時よりも詳細に記録するので、事故後、事故の発生状況をより詳細に再現させることができる。
【特許文献1】特開2002−42288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の運行状態記録装置は、事故に繋がる可能性の高い異常な状態が発生してから詳細な記録方式に切り替えるので、異常状態に至った原因の究明にはデータが不足することが考えられる。
【0006】
また、記録する情報の種類が常に一定であるので、発生した事故の種類によっては不必要なデータを記録してしまうこととなり、記憶領域を効率的に利用できず、より大きな記憶容量を有する記憶媒体を備える必要があり、製造コストを増大させてしまう。
【0007】
上述の点に鑑み、本発明は、発生した異常状態に関する情報だけを保存するようにし、情報を保存するために用意される記憶領域を効率的に利用する走行状況記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、第一の発明に係る走行状況記録装置は、車載機器が出力する車両情報を取得する車両情報取得手段と、前記車両情報取得手段が取得した車両情報を保存する車両情報保存手段と、前記車両情報取得手段が取得した車両情報に基づいて所定の異常状態を検出する異常状態検出手段と、前記異常状態検出手段が検出した異常状態に応じて前記車両情報取得手段が取得した車両情報のうち前記車両情報保存手段が保存する車両情報の種類を選択する保存内容選択手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、第二の発明に係る走行状況記録装置は、車載機器が出力する車両情報を取得する車両情報取得手段と、前記車両情報取得手段が取得した車両情報を保存する車両情報保存手段と、前記車両情報取得手段が取得した車両情報に基づいて所定の異常状態を検出する異常状態検出手段と、前記異常状態検出手段が検出した異常状態に応じて前記車両情報取得手段が取得した車両情報のうち前記車両情報保存手段が保存する車両情報の範囲を選択する保存範囲選択手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、第三の発明に係る走行状況記録装置は、車載機器が出力する車両情報を取得する車両情報取得手段と、前記車両情報取得手段が取得した車両情報を保存する車両情報保存手段と、前記車両情報取得手段が取得した車両情報に基づいて所定の異常状態を検出する異常状態検出手段と、前記異常状態検出手段が検出した異常状態に応じて、前記車両情報取得手段が取得した車両情報のうち、前記車両情報保存手段が保存する車両情報の種類、及び、前記車両情報保存手段が保存する車両情報の範囲をそれぞれ選択する保存態様選択手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、第四の発明は、第一乃至第三の何れかの発明に係る走行状況記録装置であって、前記車両情報保存手段は、不揮発性記憶媒体に車両情報を保存し、前記車両情報取得手段は、前記不揮発性記憶媒体より高速に情報を記録可能な揮発性記憶媒体に車両情報を一時的に記録することを特徴とする。
【0012】
また、第五の発明は、第一乃至第四の何れかの発明に係る走行状況記録装置であって、前記車両情報保存手段は、前記不揮発性記憶媒体の空き容量に応じて、保存する車両情報の種類、又は、保存する車両情報の範囲をそれぞれ選択することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
上述の手段により、本発明は、発生した異常状態に関する情報だけを保存するようにし、情報を保存するために用意される記憶領域を効率的に利用する走行状況記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明に係る走行状況記録装置(ドライブレコーダ)の構成例を示すブロック図である。
【0016】
ドライブレコーダ100は、事故発生前後の所定期間にわたる車両情報を記録するための装置であり、制御部1、各種車載機器30乃至36、リングバッファメモリ40及び不揮発性メモリ41から構成される。
【0017】
「車両情報」とは、車両の運転に関する情報であり、例えば、各種車載機器30乃至36によって収集される情報であって、各種センサが出力する数値データ、車載カメラが出力する画像データ、車室内マイクが出力する音声データ等が含まれる。
【0018】
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)2等を備えたコンピュータであり、各種手段10乃至14のそれぞれに対応するプログラムをROM2に記憶し、各手段に対応する処理をCPUに実行させる。
【0019】
なお、ROM2は、読み取り専用の記憶媒体であり、例えば、保存する車両情報の種類又は保存する車両情報の時期的範囲等を異常状態毎に決定するための保存パラメータを予め登録した保存パラメータテーブル20を記憶する。
【0020】
「異常状態」とは、車両情報に基づいて識別することができる車両の状態のうち事故に繋がる可能性の高い異常な状態をいい、例えば、所定の走行速度以上で所定の操舵角以上の操舵を行った状態、所定の加速度以上で車両を加速させた状態、アンチロックブレーキシステム(ABS)が作動した状態、又は、エアバッグが作動した状態等がある。
【0021】
各種車載機器30乃至36は、車両情報を収集するための機器であり、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)等の車載LAN(Local Area Network)を介して制御部1に接続され、収集した情報を制御部1に出力する。
【0022】
また、各種車載機器30乃至36の全部又は一部の機器は、制御部1に一体的に内蔵されていてもよく、シリアルケーブル又はパラレルケーブル等で制御部1に直接的に接続されていてもよい。
【0023】
車外モニターカメラ30は、車両周辺を撮影するためのカメラであり、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラであって、被写体までの距離を測定できるステレオカメラや夜間での撮影を可能とする赤外線カメラであってもよい。
【0024】
また、車外モニターカメラ30は、車室内のルームミラー付近に設置され車両前方を撮影するものであってもよく、リヤガラス付近やサイドウィンドウ付近に設置され車両後方や車両側方を撮影するものであってもよい。また、車両の周囲全体を撮影できるよう複数のカメラから構成されるカメラセットであってもよい。
【0025】
ドライバモニターカメラ31は、ドライバを撮影するためのカメラであり、例えば、車外モニターカメラ30と同様、CCDカメラやCMOSカメラであって、ステアリングコラムやインストルメントパネル上部に設置され、ドライバの脇見や居眠り等を監視する。
【0026】
なお、車外モニターカメラ30及びドライバモニターカメラ31は、画像データバッファ等のインターフェースを介して画像データを制御部1に出力するようにしてもよく、画像データバッファは、車外モニターカメラ30及びドライバモニターカメラ31が出力する画像データと他の車載機器が出力する車両情報とを同期させて制御部1に出力するようにしてもよい。制御部1の負荷を軽減させるためである。なお、他の車載機器が数値データバッファ等のインターフェースを介して数値データを制御部1に出力するようにしてもよい。
【0027】
ヨーレートセンサ32は、車両の鉛直軸周りの回転角速度を測定するためのセンサであり、例えば、振動子マスの上部に電極を形成してコリオリ力により発生する振動を検出することで回転角速度を導き出す振動型ジャイロスコープがある。
【0028】
加速度センサ33は、車両の前後左右方向の加速度を測定するためのセンサであり、例えば、半導体ひずみゲージを用いたセンサがある。
【0029】
ブレーキストロークセンサ34は、ブレーキペダルの踏み込み量を測定するためのセンサであり、例えば、ホール素子を用いてペダルの変位を電気信号に変換するセンサがある。
【0030】
ABS−ECU35は、急制動時等に車輪をロックさせないようブレーキ液圧を制御する装置であり、エアバッグECU36は、車両衝突時にインフレーター内のガスでエアバッグを瞬時に膨らませ乗員に加わる衝撃を緩和する装置である。
【0031】
なお、制御部1は、GPS、タイマ、ウィンカ、車室内マイク、操舵角センサ等の他の車載機器が収集した車両情報を取得するようにしてもよい。
【0032】
リングバッファメモリ40は、データ領域を環状に管理しながら有限長の領域を見かけ上無限長の領域として扱うデータ構造を有するメモリであり、例えば、制御部1が各種車載機器30乃至36から取得した車両情報を一時的に記録するための揮発性メモリである。
【0033】
不揮発性メモリ41は、電源を切っても記憶内容を保持可能なメモリであり、例えば、制御部1がリングバッファメモリ40に一時的に記録した車両情報をコピーして保存するための半導体メモリであって、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable ROM)等が利用される。
【0034】
なお、リングバッファメモリ40は、不揮発性メモリ41よりも高速で車両情報の読み書きが可能なものとする。多量のデータを遅滞なく記録できるようにするためである。
【0035】
次に、制御部1が有する各種手段について説明する。
【0036】
車両情報取得手段10は、車両情報を取得するための手段であり、例えば、各種車載機器30乃至36が出力する車両情報を低コストで大容量かつ高速な読み書きが可能なリングバッファメモリ40に一時的に記録する。各種車載機器30乃至36が出力する全ての車両情報を確実に取得できるようにするためである。
【0037】
また、車両情報取得手段10は、リングバッファメモリ40の空き容量が不足した場合には、既に車両情報が記録された領域に新たに取得した車両情報を順番に上書きし、古い車両情報を新しい車両情報で書き換えていくようにする。リングバッファメモリ40における有限の記憶領域を効率的に利用するためである。
【0038】
車両情報保存手段11は、車両情報を事後的に読み出すことができるよう車両情報を保存するための手段であり、例えば、リングバッファメモリ40に記録された車両情報のうち必要な部分を不揮発性メモリ41にコピーして退避させることによりその必要な部分の車両情報を保存する。
【0039】
不揮発性メモリ41にコピーしておかなければ、リングバッファメモリ40に記録された車両情報は、新たに取得する車両情報によって上書きされてしまうからであり、また、電源が切られた時点で消失してしまうからである。
【0040】
また、車両情報保存手段11は、リングバッファメモリ40に記録された車両情報をそのままの状態で不揮発性メモリ41にコピーするが、リングバッファメモリ40に記録された車両情報を加工した上で不揮発性メモリ41にコピーするようにしてもよい。必要な情報を喪失しない限りにおいて、不揮発性メモリ41における有限の記憶領域を効率的に利用するためである。
【0041】
車両情報保存手段11は、例えば、車外モニターカメラ30又はドライバモニターカメラ31が出力し車両情報取得手段10がリングバッファメモリ40に記録した画像データを、JPEG(Joint Photographic Experts Group)等の既存の圧縮技術を用いて圧縮したり、圧縮率を変更したり、色間引き処理等の既存のダウンサイジング技術を用いてデータサイズを低減させたり、或いは、1秒当たりのフレーム数を低減させたりした上で、不揮発性メモリ41に保存するようにしてもよい。
【0042】
また、車両情報保存手段11は、リングバッファメモリ40に記録されたカラー画像データを白黒画像データとして不揮発性メモリ41に保存するようにしてもよい。保存する画像のデータサイズを低減させるためである。
【0043】
異常状態検出手段12は、所定の異常状態を検出するための手段であり、例えば、車両情報取得手段10が取得した各種車載機器30乃至36からの車両情報に基づいて、所定の走行速度以上で所定の操舵角以上の操舵を行った状態、所定の加速度以上で車両を加速させた状態、アンチロックブレーキシステムが作動した状態、又は、エアバッグが作動した状態等を検出する。
【0044】
例えば、異常状態検出手段12は、ヨーレートセンサ32が出力した車両の鉛直軸周りの回転角速度、又は、操舵角センサが出力したステアリングホイールの回転角に基づいて急激なハンドル操作が発生した状態を検出したり、ブレーキストロークセンサ34が出力したブレーキペダルの踏み込み量に基づいて急激なブレーキ操作が発生した状態を検出したりする。
【0045】
保存内容選択手段13は、異常状態検出手段12が検出した所定の異常状態に応じて、車両情報保存手段11が不揮発性メモリ41に保存する車両情報の種類を選択するための手段である。
【0046】
図2は、保存パラメータテーブル20の構成例を示す図であり、保存内容選択手段13は、異常状態検出手段12によりアンチロックブレーキシステム(ABS)の作動が検出された場合、車両情報保存手段11によりリングバッファメモリ40に記録された、車輪速度、ブレーキストローク及びABS−ECU35の内部演算値(例えば、スリップ率である。)、並びに、車外モニターカメラ30及びドライバモニターカメラ31が撮影した画像(この場合、画質よりもフレーム数を優先させるので低解像度に圧縮される。)を、不揮発性メモリ41に保存すべき車両情報として選択する。
【0047】
また、保存内容選択手段13は、異常状態検出手段12によりエアバッグの作動が検出された場合、車両情報保存手段11によりリングバッファメモリ40に記録された、加速度センサ33が出力した前後左右方向の加速度及びエアバッグECU36の内部演算値、並びに、車外モニターカメラ30及びドライバモニターカメラ31が撮影した画像(この場合、フレーム数よりも画質を優先させるので高解像度が維持される。)を、不揮発性メモリ41に保存すべき車両情報として選択する。
【0048】
保存範囲選択手段14は、異常状態検出手段12が検出した所定の異常状態に応じて、車両情報保存手段11が不揮発性メモリ41に保存する車両情報の時期的範囲を選択するための手段である。
【0049】
保存範囲選択手段14は、例えば、ROM2に格納された保存パラメータテーブル20を参照して、異常状態検出手段12が検出した所定の異常状態に対応するプレトリガー時間T1及びポストトリガー時間T2を決定する。
【0050】
その後、保存範囲選択手段14は、異常状態検出手段12が所定の異常状態を検出した時点(以下、「トリガー時点」とする。)からプレトリガー時間T1だけ遡った時点と、トリガー時点からポストトリガー時間T2が経過した時点との間の期間にリングバッファメモリ40に記録された車両情報を不揮発性メモリ41にコピーする。
【0051】
このように、保存範囲選択手段14によって選択された時期的範囲(以下、「被保存範囲」とする。)における車両情報の容量は、異常状態検出手段12によって検出される所定の異常状態に応じて変化する。これは、異常状態毎にプレトリガー時間T1及びポストトリガー時間T2が異なるからであり、また、異常状態毎に保存する車両情報の種類も異なるからである。
【0052】
図3は、不揮発性メモリ41に保存する車両情報の被保存範囲を説明するための図であり、上段にリングバッファメモリ40、下段に不揮発性メモリ41を示し、リングバッファメモリ40では、図の左側から右側に向かって時間経過と共に車両情報が順番に記録されていくものとする。
【0053】
保存範囲選択手段14は、例えば、異常状態検出手段12によりエアバッグの作動が検出された場合、ROM2に格納された保存パラメータテーブル20(図2参照。)を参照して、プレトリガー時間T1(12秒)及びポストトリガー時間T2(8秒)を抽出し、リングバッファメモリ40から不揮発性メモリ41にコピーされる被保存範囲400を選択する。
【0054】
その後、車両情報保存手段11は、保存範囲選択手段14により選択された被保存範囲400に記録されている車両情報を、不揮発性メモリ41における保存範囲410にコピーして保存する。
【0055】
また、車両情報保存手段11は、ポストトリガー時間T2が経過した時点において、被保存範囲400に記録された車両情報を一括して保存範囲410にコピーする。
【0056】
なお、車両情報保存手段11は、トリガー時点において、被保存範囲400のうちプレトリガー時間T1が示す範囲R1を不揮発性メモリ41に一括でコピーし、ポストトリガー時間T2が経過した時点において、被保存範囲400の残りの範囲R2に記録された車両情報を不揮発性メモリ41に一括してコピーするようにしてもよい。
【0057】
さらに、車両情報保存手段11は、トリガー時点において、プレトリガー時間T1が示す範囲R1を不揮発性メモリ41に一括してコピーした上で、ポストトリガー時間T2が示す範囲R2に記録される車両情報を時間経過と共に順番に不揮発性メモリ41にコピーしていくようにしてもよい。
【0058】
図4は、不揮発性メモリ41における車両情報の保存方法を説明するための図であり、図3と同様、上段にリングバッファメモリ40、下段に不揮発性メモリ41を示し、リングバッファメモリ40では、図の左側から右側に向かって時間経過と共に車両情報が順番に記録されていくものとする。
【0059】
最初に、車両情報保存手段11は、保存範囲選択手段14により選択された被保存範囲400に記録されている車両情報を不揮発性メモリ41における保存範囲410にコピーして保存する。
【0060】
その後、車両情報保存手段11は、所定の異常状態が検出される度に、保存範囲選択手段14によって選択される被保存範囲401、402、403の車両情報を保存範囲411、412、413に順番にコピーして保存する。
【0061】
また、車両情報保存手段11は、保存範囲410乃至413をそれぞれ隣接させながら各保存範囲に属する車両情報を保存する。不揮発性メモリ41の記憶領域を有効に利用するためである。
【0062】
次に、図5を参照しながら、ドライブレコーダ100が車両情報を保存する処理(以下、「車両情報保存処理」とする。)の流れについて説明する。なお、図5は、車両情報保存処理の流れを示すフローチャートである。
【0063】
最初に、ドライブレコーダ100は、車両情報取得手段10により各種車載機器30乃至36が出力する車両情報を継続的に取得し(ステップS1)、取得した車両情報をリングバッファメモリ40に順番に記録する。
【0064】
その後、ドライブレコーダ100は、異常状態検出手段12により、取得した車両情報に基づいて所定の異常状態が発生するのを監視し(ステップS2)、所定の異常状態が発生しない限り(ステップS2のNO)、車両情報の取得及び所定の異常状態の監視を継続させる。
【0065】
所定の異常状態が発生したことを検知した場合(ステップS2のYES)、ドライブレコーダ100は、保存範囲選択手段14によりROM2に格納された保存パラメータテーブル20を参照し、発生した所定の異常状態に対応するプレトリガー時間T1及びポストトリガー時間T2に基づいて、リングバッファメモリ40に記録された車両情報のうち不揮発性メモリ41に保存する車両情報の被保存範囲を選択する(ステップS3)。
【0066】
その後、ドライブレコーダ100は、保存範囲選択手段14によって選択されたリングバッファメモリ40上の記憶領域(被保存範囲)が誤って上書きされないよう、その記憶領域の上書きを禁止する(ステップS4)。
【0067】
その後、ドライブレコーダ100は、保存範囲選択手段14によって選択された記憶領域に記録されている車両情報を不揮発性メモリ41にコピーし、発生した所定の異常状態に関する車両情報を不揮発性メモリ41に退避させる(ステップS5)。
【0068】
その後、ドライブレコーダ100は、保存範囲選択手段14によって選択されたリングバッファメモリ40上の記憶領域(被保存範囲)における上書き禁止を解除し(ステップS6)、車両情報取得手段10がリングバッファメモリ40の記憶領域全体を利用して新たな車両情報を記録できるようにした上で、車両情報保存処理を終了させる。
【0069】
なお、ドライブレコーダ100は、保存範囲選択手段14により、リングバッファメモリ40に記録された車両情報のうち不揮発性メモリ41に保存する車両情報の被保存範囲を選択するが、保存内容選択手段13により、リングバッファメモリ40に記録された車両情報のうち不揮発性メモリ41に保存する車両情報の種類を選択するようにしてもよく、保存内容選択手段13及び保存範囲選択手段14により、保存する車両情報の時期的範囲及び種類を選択するようにしてもよい。
【0070】
以上の構成により、ドライブレコーダ100は、各種車載機器30乃至36が出力する車両情報を一時的にリングバッファメモリ40に記録しておき、エアバッグが作動する等の所定の異常状態が発生した場合に、発生時以前に遡って、リングバッファメモリ40に一時的に記録されている車両情報を不揮発性メモリ41にコピーするので、発生した所定の異常状態に関する車両情報を確実に保存することができる。
【0071】
また、ドライブレコーダ100は、各種車載機器30乃至36が出力する車両情報を低コストのリングバッファメモリ40に一時的に記録しながら、所定の異常状態が発生した場合に、発生した所定の異常状態に関する車両情報だけを不揮発性メモリ41にコピーするので、高コストとなる不揮発性メモリ41の記憶容量を低減させることができ、ドライブレコーダ100全体としての製造コストを低減させることができる。
【0072】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0073】
例えば、上述の実施例において、ドライブレコーダ100は、不揮発性メモリ41に保存された車両情報の上書きを禁止するが、保存パラメータテーブル20において各異常状態の優先順位を登録しておき、不揮発性メモリ41の空き容量が不足する場合であっても、優先順位のより低い異常状態に関する車両情報が保存された記憶領域に、優先順位のより高い異常状態に関する車両情報を上書きするようにしてもよい。優先順位のより高い異常状態に関する車両情報を確実に保存できるようにするためである。
【0074】
また、上述の実施例において、車両情報保存手段11は、リングバッファメモリ40に記録された画像データを不揮発性メモリ41に保存する場合に、画像データを圧縮したり、間引いたり、或いは、フレーム数を低減させたりするが、各種車載機器が出力した数値データを圧縮したり、間引いたりして保存する車両情報のデータサイズを低減させるようにしてもよい。
【0075】
また、上述の実施例において、ドライブレコーダ100は、所定の異常状態に関する車両情報を複数回分不揮発性メモリ41に保存できるよう、保存パラメータテーブル20に予め登録された保存パラメータによって、不揮発性メモリ41に保存される車両情報の一回当たりのデータサイズを異常状態毎に決定している。
【0076】
これに対し、ドライブレコーダ100は、異常状態毎に複数セットの保存パラメータを登録しておき、不揮発性メモリ41の空き容量に応じて、採用する保存パラメータを変更しながら不揮発性メモリ41に保存される車両情報の一回当たりのデータサイズを異常状態毎に決定するようにしてもよい。
【0077】
この場合、ドライブレコーダ100は、例えば、正面衝突や側面衝突等の車両が走行不能となるような状態が発生した場合には、保存パラメータテーブル20に予め登録されたプレトリガー時間T1及びポストトリガー時間T2のそれぞれより長い時期的範囲の車両情報を不揮発性メモリ41に保存するようにしてもよく、保存パラメータテーブル2に基づいて選択される種類以外の車両情報を所定の優先順位に従って追加的に保存するようにしてもよい。
【0078】
これにより、ドライブレコーダ100は、不揮発性メモリ41の空き容量を余すところなく有効に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】走行状況記録装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】保存パラメータテーブルの構成例を示す図である。
【図3】不揮発性メモリに保存する車両情報の被保存範囲を説明するための図である。
【図4】不揮発性メモリにおける車両情報の保存方法を説明するための図である。
【図5】車両情報保存処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
1 制御部
2 ROM
10 車両情報取得手段
11 車両情報保存手段
12 異常状態検出手段
13 保存内容選択手段
14 保存範囲選択手段
20 保存パラメータテーブル
30 車外モニターカメラ
31 ドライバモニターカメラ
32 ヨーレートセンサ
33 加速度センサ
34 ブレーキストロークセンサ
35 ABS−ECU
36 エアバッグECU
40 リングバッファメモリ
41 不揮発性メモリ
100 ドライブレコーダ
400〜403 被保存範囲
410〜413 保存範囲
T1 プレトリガー時間
T2 ポストトリガー時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載機器が出力する車両情報を取得する車両情報取得手段と、
前記車両情報取得手段が取得した車両情報を保存する車両情報保存手段と、
前記車両情報取得手段が取得した車両情報に基づいて所定の異常状態を検出する異常状態検出手段と、
前記異常状態検出手段が検出した異常状態に応じて前記車両情報取得手段が取得した車両情報のうち前記車両情報保存手段が保存する車両情報の種類を選択する保存内容選択手段と、
を備える走行状況記録装置。
【請求項2】
車載機器が出力する車両情報を取得する車両情報取得手段と、
前記車両情報取得手段が取得した車両情報を保存する車両情報保存手段と、
前記車両情報取得手段が取得した車両情報に基づいて所定の異常状態を検出する異常状態検出手段と、
前記異常状態検出手段が検出した異常状態に応じて前記車両情報取得手段が取得した車両情報のうち前記車両情報保存手段が保存する車両情報の範囲を選択する保存範囲選択手段と、
を備える記載の走行状況記録装置。
【請求項3】
車載機器が出力する車両情報を取得する車両情報取得手段と、
前記車両情報取得手段が取得した車両情報を保存する車両情報保存手段と、
前記車両情報取得手段が取得した車両情報に基づいて所定の異常状態を検出する異常状態検出手段と、
前記異常状態検出手段が検出した異常状態に応じて、前記車両情報取得手段が取得した車両情報のうち、前記車両情報保存手段が保存する車両情報の種類、及び、前記車両情報保存手段が保存する車両情報の範囲をそれぞれ選択する保存態様選択手段と、
を備える記載の走行状況記録装置。
【請求項4】
前記車両情報保存手段は、不揮発性記憶媒体に車両情報を保存し、
前記車両情報取得手段は、前記不揮発性記憶媒体より高速に情報を記録可能な揮発性記憶媒体に車両情報を一時的に記録する、
請求項1乃至3の何れか一項に記載の走行状況記録装置。
【請求項5】
前記車両情報保存手段は、前記不揮発性記憶媒体の空き容量に応じて、保存する車両情報の種類、又は、保存する車両情報の範囲をそれぞれ選択する、
請求項1乃至4の何れか一項に記載の走行状況記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−186174(P2008−186174A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18152(P2007−18152)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】