説明

走行玩具

【課題】電気的なエネルギーを一切必要とせず、いつでも自力走行モードと手押し走行モードとの2種類の走行モードを自由に選択して走行玩具遊びを楽しむことができる走行玩具を提供すること。
【解決手段】上記走行玩具Aは、駆動輪4を駆動するプルバック式のゼンマイユニット5を備え、上記駆動輪4と上記ゼンマイユニット5とは中継歯車16で連係し、該中継歯車16は軸方向にスライド可能に配置され、上記中継歯車16を一方にスライド移動させた時には上記駆動輪4は上記ゼンマイユニット5に連係し、他方にスライド移動させた時には上記駆動輪4と上記ゼンマイユニット5との連係が解除されるようにし、切替え装置20の切換操作により上記中継歯車16をスライド移動させ上記駆動輪4とゼンマイユニット5との係脱を行なうようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行玩具、詳しくはゼンマイを駆動力として走行するゼンマイ駆動走行モードと、手押しで走行する手押し走行モードの2種類の走行モードを備えた走行玩具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行玩具は幼児が手押しで遊べる簡単な手押し走行をする走行玩具から、ゼンマイやモータなどの駆動力を備え、その駆動力で自力走行する走行玩具まで様々な走行玩具が提案されているが、単に走行させるだけでは飽きてしまうので、同一の走行玩具でありながら複数の走行形態を取れる走行玩具が提案されている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開平6−190151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする問題点は、上述の走行玩具は、電動走行モードと手動モードとを切替えできるようにしたものである。この走行玩具によれば、2種類の走行モードが選択できるが、電動走行モードは電源の電池を必要とするもので、電池が消耗していれば電動走行モードで走行させることができず、結局は手動モードのみで遊ぶことになり、いつでも2種類の走行モードを選択して遊ぶことができない点であった。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決し、電気的なエネルギーを一切必要とせず、いつでも自力走行モードと手押し走行モードとの2種類の走行モードを自由に選択して走行玩具遊びを楽しむことができる走行玩具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明に係る走行玩具は、以下の要件を備えることを特徴とする。
(イ)上記走行玩具は、駆動輪を駆動するプルバック式のゼンマイユニットを備え、上記駆動輪と上記ゼンマイユニットとは中継歯車で連係し、該中継歯車は軸方向にスライド可能に配置されていること
(ロ)上記中継歯車を一方にスライド移動させた時には上記駆動輪と上記ゼンマイユニットとは連係し、他方にスライド移動させた時には上記駆動輪と上記ゼンマイユニットとの連係は解除されること
(ハ)上記走行玩具は切換装置を備え、該切替え装置の切換操作により上記中継歯車をスライド移動させ上記駆動輪とゼンマイユニットとの係脱を行なうこと
なお、前記駆動輪の車軸には、該車軸に固定された駆動歯車と車軸にフリーな自由歯車とが並接して配置され、該自由歯車は前記ゼンマイユニットに常時連係し、前記中継歯車は一方にスライド移動したときには上記駆動歯車と自由歯車との両方の歯車に噛み合い、自由歯車の回転を駆動歯車に伝達するようにしてもよい。
【0006】
また、前記走行玩具は、以下の要件を備えることが好ましい。
(イ)前記走行玩具は前記駆動輪及びゼンマイユニットを備えた走行ユニットと、該走行ユニットに着脱可能な車体部とから構成したこと
(ロ)上記車体部は上記走行ユニットの上面及び周面を覆う縫いぐるみで構成されるとともに、該車体部を上記走行ユニットに固定する固定部材を備えたこと
そして、前記固定部材は、車体部の両側部及び、前部からそれぞれ突出形成された帯体で構成され、該帯体には面状ファスナーを設ければよい。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、切換スイッチの操作で簡単にゼンマイ駆動走行と手押し走行との2つの走行形態を選択することができ、年少者にも走行を楽しむことのできる走行玩具を提供することができる。
【0008】
請求項2の発明によれば、歯車群を立体的に配置することなく水平方向に配置することができるので、走行ユニットの製造、組み立てが容易になるとともに、走行ユニットの高さを低く抑えることができる。
【0009】
請求項3の発明によれば、走行ユニットに車体部が着脱可能に形成されているので、車体部を交換することにより走行玩具の形状を変えることができ、同一の走行ユニットでありながら様々な形状の車体部に取り替えて走行玩具の形状を楽しむことができる。しかも、車体部をクッション素材で形成したので年少者が遊びの最中に走行玩具で怪我をするようなトラブルの発生を防ぐことができる。
【0010】
請求項4の発明によれば、車体部を走行ユニットに固定する固定部材を先端に面状ファスナーを設けた帯体で構成したので、車体部の着脱を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
走行玩具は、内部に駆動輪を駆動するプルバック式のゼンマイユニットを備え、上記駆動輪と上記ゼンマイユニットとを中継歯車で連係させるとともに、中継歯車を軸方向にスライド可能に配置し、上記中継歯車を一方にスライド移動させたときには上記駆動輪を上記ゼンマイユニットに連係させ、他方にスライド移動させたときには上記駆動輪と上記ゼンマイユニットとの連係が解除されるようにし、上記中継歯車は走行玩具に設けた切換スイッチの切換操作によりスライド移動するようにした。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明に係る走行玩具Aの一例を示し、この走行玩具Aは簡単な操作でゼンマイを駆動源として走行する自力走行モードと、手押しで走行させる手押し走行モードとの2つの走行モードを楽しむことができるようにしたものである。
【0013】
この走行玩具Aは、走行ユニット1と車体部2とから構成され、走行ユニット1は前輪3が自由輪で、後輪4が駆動輪を構成し、この後輪(以下、駆動輪という)4は走行ユニット1の内部に配置されたゼンマイユニット5(図3参照)のゼンマイの巻き戻りを駆動力として回転するようになっているものである。
【0014】
上記ゼンマイユニット5は、車輪を走行面に押し付けて後退させ、駆動輪4を後転させるとゼンマイユニット5の内部に配置された図示しないゼンマイが巻き上げられ、押し付けを解除すると巻き上げたゼンマイの巻き戻り力で駆動輪4を前転させ前進走行することができるようになっている、所謂プルバック式ゼンマイユニット5で構成されているものである。
【0015】
上記走行ユニット1は下ケース6aと上ケース6bとからなるユニットケース6の内部に配置されたゼンマイユニット5と、ゼンマイユニット5の出力軸10に固定された出力歯車11と、この出力歯車11に常時噛み合っている中間歯車12と、中間歯車12に常時噛み合うとともに駆動輪4の車軸13にフリーな自由歯車14と、この自由歯車14に並接するとともに車軸13に固定された駆動歯車15と、この自由歯車14、駆動歯車15の両方の歯車に選択的に噛み合う中継歯車16とで構成されている。
【0016】
上記中継歯車16は、シャフト17にフリーに回転するとともに軸方向にスライド移動できるようになっており、この中継歯車16は切換装置20でシャフト17に対し、軸方向にスライド移動させられるようになっている。
【0017】
切換装置20はスライド部材で構成され、この切換装置(以下、スライド部材という)20は前部上面にシャフト17に係合するとともに、上記中継歯車16をガイドするガイド板21、22が形成され、後部裏面には下方に突出して操作軸23が形成され、操作軸23が下ケース6aに左右方向に形成された長孔24から下方に突出し、操作軸23を左右方向に移動操作すると、スライド部材20はシャフト17と長孔24にガイドされて左右にスライド移動できるようになっている。
【0018】
なお、符号25は中継歯車16とともにガイド板21、22の間に配置され、常に中継歯車16をガイド板21に押し付けるように作用するコイルスプリングを示し、このコイルスプリング25は、中継歯車16を自由歯車14及び駆動歯車15に噛み合わせるために、スライド部材20をスライド操作したときに中継歯車16の歯の側面が駆動歯車15又は自由歯車14の歯の側面に当接してスライドできない場合、このコイルスプリング25が圧縮されて逃げるようになっており、歯が当接し合っている歯車の何れか一方が少し回転し、当接状態が回避されるとすると、中継歯車16の移動が可能になりコイルスプリング25の復元力で中継歯車16がガイド板21に当接するまで移動して、駆動歯車15、自由歯車14に噛み合うことができるようにするためのものである。
【0019】
なお、図3において、符号4aは、駆動輪4の周面に設けられたゴム体で、駆動輪4と設置面とのスリップを防止するものであり、符合26a、26b、26c及び26dはそれぞれ、前輪3の車軸27、後輪(駆動輪)4の車軸13、中継歯車16のシャフト17及びゼンマイユニットの出力軸10を支持する軸受けで、これらの軸受け26a〜26dはそれぞれ、下ユニット6aと、上ユニット6bとの接合面に形成され、下ユニット6a上に各軸を置いて上から上ユニットを重ねることにより各軸を支持できるようになっている。
【0020】
玩具体2は外観が自動車を模して形成されるとともに綿やスポンジなどのクッション材を内包した縫いぐるみで構成され、上記走行ユニット2上からに被せることができるように底面が全面開口し、前部と両側部とには夫々玩具体2を走行ユニット1に固定する固定部材である帯体30、31、32が形成され、帯体30の表面には面ファスナー33、34が取り付けられ、帯体31の先端裏面には面ファスナー35、帯体32の先端表面には面ファスナー36が取り付けられている。そして、車体部2の後部下端には帯体30の先端を挿通させる開口部37が形成されている。
【0021】
上記玩具体を走行ユニットに取り付ける場合は、図4(a)に示すように、走行ユニットの上から玩具体を被せた後、図4(b)に示すように、帯体31、32を走行ユニット1の底に折り重ね、面ファスナー35、36同士を係止させた後、帯体30を走行ユニット1の底面を覆うように折り曲げ。先端を開口部37に挿通させた後、図4(c)に示すように、折り返して帯体31の面ファスナー33、34同士を係止させ、図4(d)に示すように、走行ユニット1に玩具体2を固定すればよい。
【0022】
次に、上述のように、走行ユニット1と玩具体2とを一体に結合した状態の走行玩具Aを2種類の走行モードで走行させる場合について説明する。
【0023】
先ず、手押しで走行させる手押し走行の場合は、図5(a)に示すように、スライド部材20を一方(矢印a方向)にスライドさせて、中継歯車16と駆動歯車15及び自由歯車14との噛み合いを解除すればよい。この状態では、駆動輪4の車軸17にフリーな自由歯車14がゼンマイユニット5に連係しているだけなので、ゼンマイユニット5と駆動輪4との連係は解除されているため、駆動輪4は前輪3と同様にフリーに回転し、図6に示すように、走行玩具Aを手押し走行モードで走行させることができる。
【0024】
手押し走行モードでは、走行玩具Aを前後何れの方向に動かしても、駆動輪4の回転はゼンマイユニット5には伝達されないので、ゼンマイユニット5に無理な力が及ぶことがなく、ゼンマイユニット5の破損などのトラブルが発生することはない。
【0025】
そして、走行玩具Aを自力走行モードで走行させる場合は、図5(b)に示すように、スライド部材20を他方(矢印b方向)にスライドさせて、中継歯車16と駆動歯車15及び自由歯車14とを噛み合わせればよい。
【0026】
この状態では、駆動輪4の車軸17に固定された駆動歯車15は、中継歯車16、自由歯車14、中間歯車12、出力歯車11を介してゼンマイユニット5に連係するので、図7(b)に示すように、走行玩具Aを走行面に押し付けた状態で後退させる所謂プルバック操作をすると、駆動輪4の後転は駆動歯車15、中継歯車16、自由歯車14、中間歯車12、出力歯車11を経由してゼンマイユニット5に伝達され、ゼンマイユニット5内に配置された図示しないゼンマイが巻き上げられるので、図7(b)に示すように、走行玩具Aから手を離すとゼンマイユニット5のゼンマイの巻き戻り力で出力歯車11が回転し、出力歯車11の回転は中間歯車12、自由歯車14、中継歯車16、駆動歯車15を経由して車軸17に伝達され、この車軸17に固定された駆動輪4が前転するので、ゼンマイが巻き戻るまで走行玩具Aを自力走行モードで前進走行させることができる。
【0027】
上述のように、スライド部材20のスライド操作のみで走行玩具Aを自力走行、手押し走行の何れかを選択できる。しかも、ゼンマイユニット5を自力走行の駆動力にしているので、電池を動力源としていないため電池の交換の必要もないし、電池が消耗して自力走行ができなくなる等のトラブルも回避することができ、いつでも走行玩具の2つの走行モードを自由に選択して楽しむことができる。
【0028】
そして、駆動輪4の車軸17に自由歯車14を設けることにより、ゼンマイユニット5の出力は、出力歯車11→中間歯車12→自由歯車14→中継歯車16→駆動歯車15の順に伝達され、自由歯車14を設けることにより、ゼンマイユニット5の出力は中継歯車16で折り返すように駆動歯車15に伝達することができ、歯車群を水平方向に並べて配置することができるので、各歯車の軸も水平方向に配置することになり、軸受け26a〜26dを下ケース6aと上ケース6bとの接合面に形成することができ、製造上及び組み立て作業上の効率を上げるとともに、走行ユニット1の高さを抑えることができ、車体部2の形状の自由度が高くなり、様々な形状の走行玩具Aを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る走行玩具の斜視図
【図2】上記走行玩具の構成を示す斜視図
【図3】走行ユニットの構成を説明する分解斜視図
【図4】(a)〜(d)は走行ユニットに車体部を取り付ける説明図
【図5】(a)(b)は下ケースを外した状態の走行ユニットの底面図
【図6】上記走行玩具の手押し走行モードを説明する斜視図
【図7】(a)(b)は上記走行玩具の自力走行モードを説明する斜視図
【符号の説明】
【0030】
1 走行ユニット
2 車体部
3 前輪(自由輪)
4 後輪(駆動輪)
5 ゼンマイユニット
6 ユニットケース
16 中継歯車
20 切換装置(スライド部材)
A 走行玩具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の要件を備えることを特徴とする走行玩具。
(イ)上記走行玩具は、駆動輪を駆動するプルバック式のゼンマイユニットを備え、上記駆動輪と上記ゼンマイユニットとは中継歯車で連係し、該中継歯車は軸方向にスライド可能に配置されていること
(ロ)上記中継歯車を一方にスライド移動させた時には上記駆動輪と上記ゼンマイユニットとは連係し、他方にスライド移動させた時には上記駆動輪と上記ゼンマイユニットとの連係は解除されること
(ハ)上記走行玩具は切換装置を備え、該切替え装置の切換操作により上記中継歯車をスライド移動させ上記駆動輪とゼンマイユニットとの係脱を行なうこと
【請求項2】
前記駆動輪の車軸には、該車軸に固定された駆動歯車と車軸にフリーな自由歯車とが並接して配置され、該自由歯車は前記ゼンマイユニットに常時連係し、前記中継歯車は一方にスライド移動したときには上記駆動歯車と自由歯車との両方の歯車に噛み合い、自由歯車の回転を駆動歯車に伝達する、請求項1記載の走行玩具
【請求項3】
以下の要件を備える、請求項1又は2記載の走行玩具。
(イ)前記走行玩具は前記駆動輪及びゼンマイユニットを備えた走行ユニットと、該走行ユニットに着脱可能な車体部とから構成したこと
(ロ)上記車体部は上記走行ユニットの上面及び周面を覆う縫いぐるみで構成されるとともに、該車体部を上記走行ユニットに固定する固定部材を備えたこと
【請求項4】
前記固定部材は、車体部の両側部及び、前部からそれぞれ突出形成された帯体で構成され、該帯体には面状ファスナーを設けた、請求項3記載の走行玩具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−230723(P2006−230723A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−50112(P2005−50112)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【Fターム(参考)】