説明

走行環境検出装置

【課題】走行環境を詳細に検出することができる走行環境検出装置を提供する。
【解決手段】車両1の走行する走行環境を検出する走行環境検出装置であって、道路に沿って存在する路側物R01〜R14、先行車両C1〜C3、対向車両C4〜C6を検出するセンサ30と、検出した路側物R01〜R14、先行車両C1〜C3及び対向車両C4〜C6に関する情報に基づいて走行環境として道路幅Wを推定する走行環境推定部23と、を備え、路側物R01〜R14に関する情報から推定した道路幅W1、先行車両C1〜C3に関する情報から推定した道路幅W2、及び対向車両C4〜C6に関する情報から推定した道路幅W3を用いて道路幅Wを推定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行環境検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行環境を検出する装置は、例えば、衝突の可能性を検知して警報装置、車両制御装置又は乗員保護装置を作動させるプリクラッシュセーフティシステムに採用されている(例えば、特許文献1参照)。この装置は、レーダ波を対象物に送出し、対象物に反射したレーダ波を受信して対象物までの距離を予測する装置である。
【特許文献1】特開2004−144665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の走行環境検出装置にあっては、例えばプリクラッシュセーフティシステムに採用した場合、プリクラッシュセーフティシステムが不要な動作を行うおそれがある。例えば、検出した対象物が、衝突することなくすれ違える対向車である場合や、カーブ地点に設置された路側物である場合には、警報装置や車両制御装置、乗員保護装置を作動させる必要は無いが、従来の走行環境検出装置は対象物までの距離しか検出できないため、プリクラッシュセーフティシステムは適切な判定を行うことができず、不要な動作をする場合がある。
【0004】
そこで、本発明はこのような技術課題を解決するためになされたものであって、走行環境を詳細に検出することができる走行環境検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、本発明に係る走行環境検出装置は、車両の走行する走行環境を検出する走行環境検出装置であって、道路に沿って存在する路側物を検出する路側物検出手段と、先行車両を検出する先行車両検出手段と、対向車両を検出する対向車両検出手段と、検出した前記路側物、前記先行車両及び前記対向車両に関する情報に基づいて前記走行環境として道路幅を推定する走行環境推定手段とを備えて構成される。
【0006】
この発明によれば、道路に沿って存在する路側物、先行車両及び対向車両をそれぞれ検出し、検出した情報に基づいて道路幅を推定することができる。これにより、例えば狭い道路において、すり抜けが可能か否かの判断を高精度で行うことができる。
【0007】
ここで、走行環境検出装置において、前記走行環境推定手段は、検出した前記路側物、前記先行車両、前記対向車両に関する情報の順に重くなるように重み付けを行い、重み付けに従って前記道路幅を推定することが好適である。
【0008】
このように構成することで、路側物に関する情報から推定した道路幅、先行車両に関する情報から推定した道路幅、及び対向車両に関する情報から推定した道路幅のうち、情報の信頼性が高い推定道路幅ほど重み付けを大きくし、複数の推定道路幅を統合して道路幅を推定することができるので、より正確に道路幅を推定することができる。
【0009】
また、本発明に係る走行環境検出装置は、車両の走行する走行環境を検出する走行環境検出装置であって、道路に沿って存在する路側物を検出する路側物検出手段と、先行車両を検出する先行車両検出手段と、対向車両を検出する対向車両検出手段と、検出した前記路側物、前記先行車両及び前記対向車両に関する情報に基づいて前記走行環境としてカーブ入り口までの距離を推定する走行環境推定手段とを備えて構成される。
【0010】
この発明によれば、道路に沿って存在する路側物、先行車両及び対向車両をそれぞれ検出し、検出した情報に基づいてカーブ入り口までの距離を推定することができる。これにより、カーブ入り口までの距離を高精度で推定することができる。従って、カーブ入り口に配置されているガードレールや看板等に基づいてプリクラッシュセーフティシステムが警報装置、車両制御装置又は乗員保護装置を作動させることを回避することができるため、不要な動作を低減させることができる。
【0011】
ここで、走行環境検出装置において、前記走行環境推定手段は、検出した前記先行車両、前記対向車両、前記路側物に関する情報の順に重くなるように重み付けを行い、重み付けに従って前記カーブ入口までの距離を推定することが好適である。
【0012】
このように構成することで、先行車両に関する情報から推定したカーブ入口までの距離、対向車両に関する情報から推定したカーブ入口までの距離、及び路側物に関する情報から推定したカーブ入口までの距離のうち、情報の信頼性が高い推定距離ほど重み付けを大きくし、複数の推定距離を統合してカーブ入り口までの距離を推定することができるので、より正確にカーブ入口までの距離を推定することができる。
【0013】
また、走行環境検出装置は、検出した前記路側物、前記先行車両及び前記対向車両の個体数をカウントするカウント手段と、予め階層状に設定した走行環境から、カウントした値に基づいて該当する走行環境を選択し、選択した走行環境に基づいて、警報装置、車両制御装置又は乗員保護装置を作動させる作動閾値を設定する作動タイミング設定手段とを備えて構成されることが好適である。さらに、前記作動タイミング手段は、前記作動閾値として、検出した物体と衝突するか否かを判定するための衝突判定閾値を設定することが好適である。
【0014】
このように構成することで、走行している走行環境に応じて警報装置、車両制御装置又は乗員保護装置を作動させる作動閾値や、衝突判定閾値を設定することができるので、プリクラッシュセーフティシステムが不要な動作をすることを回避することや、必要な際により早く作動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、走行環境を詳細に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
本実施形態に係る走行環境検出装置は、車両の走行する走行環境を検出する装置であって、例えば、プリクラッシュセーフティシステムを搭載した車両に好適に採用されるものである。プリクラッシュセーフティシステムとは、安全性を向上させる運転者支援システムの1つであり、衝突の可能性や運転者では認識しづらい物体を検知して運転者に知らせ、判断の遅れ等を補い被害軽減を図るシステムである。
【0018】
最初に、本実施形態に係る走行環境検出装置の構成を説明する。図1は本発明の実施形態に係る走行環境検出装置を備えた車両の構成図である。
【0019】
車両1は、センサ(路側物検出手段、先行車両検出手段及び対向車両検出手段)30、ECU2及びプリクラッシュセーフティシステム31を備えている。ここで、ECU(Electronic Control Unit)とは、電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(CentralProcessing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。
【0020】
センサ30は、車両1の周辺情報を取得する機能を有している。例えば、車両1の進行方向に物体が存在する場合には、その物体の位置、距離及び大きさ等を検知する機能を有する。また、センサ30は、道路に沿って路側に配置された路側物や、車両1の先行車両及び対向車両の位置、距離及び大きさ等を検出し認識する機能を有している。センサ30として、例えば、ステレオカメラや単眼カメラ等の画像センサや、ミリ波レーダ、レーザレーダ、超音波センサ等、又はこれらの組み合わせが用いられる。センサ30は、車両の周辺情報を取得し、取得した情報をECU2へ出力する機能を有している。
【0021】
ECU2は、入力部21、カウント部(カウント手段)22、走行環境推定部(走行環境推定手段)23、作動タイミング制御部(作動タイミング制御手段)24及び障害物判定部25を備えており、走行環境検出装置20は、入力部21、カウント部22、走行環境推定部23、作動タイミング制御部24及びセンサ30を備えて構成される。
【0022】
入力部21は、センサ30から車両1の周辺情報を入力する機能を有している。また、入力部21は、入力した周辺情報をカウント部22及び走行環境推定部23へ出力する機能を有している。
【0023】
走行環境推定部23は、車両1の周辺情報に基づいて、車両1が走行する走行環境を推定する機能を有している。走行環境推定部23が推定する走行環境とは、例えば車両1が走行する道路幅やカーブ入り口までの距離である。走行環境推定部23は、入力部21から路側物、先行車両及び対向車両に関する情報を入力して走行環境を推定する。走行環境推定部23は、入力した路側物、先行車両及び対向車両に関する情報それぞれに対応して走行環境を推定する機能を有している。すなわち、路側物に関する情報から走行環境を推定する機能、先行車両に関する情報から走行環境を推定する機能、及び対向車両に関する情報から走行環境を推定する機能を有している。また、走行環境推定部23は、路側物、先行車両及び対向車両に関する情報から推定した3つの走行環境を用いて、さらに推定精度の良い走行環境を推定する機能を有している。例えば、推定した3つの走行環境に対して所定の順に重くなるように重み付けを行い、重み付けに従って3つの走行環境を統合し、より推定精度の良い走行環境とすることができる。重み付けの順序は、推定する走行環境の内容に基づいて決定され、例えば道路幅を推定する場合には、路側物、先行車両及び対向車両の順に重くなるように重み付けされ、カーブ入り口までの距離を推定する場合には、先行車両、対向車両及び路側物の付けされる。走行環境推定部23は、入力した周辺情報及び推定した走行環境を障害物判定部25へ出力する機能を有している。
【0024】
障害物判定部25は、センサ30で検出した物体が、走行環境推定部23から入力した走行環境に基づいて障害物であるか否かを判定する機能を有している。また、障害物判定部25は、判定結果をプリクラッシュセーフティシステム31へ出力する機能を有している。
【0025】
カウント部22は、入力部21から車両1の周辺情報を入力し、入力した周辺情報に含まれる路側物、車両1の先行車両及び対向車両の個体数をそれぞれカウントする機能を有している。また、カウント部22は、カウントした値を作動タイミング制御部24へ出力する機能を有している。
【0026】
作動タイミング制御部24は、カウント部22から入力したカウント値に基づいて走行環境ポイントを増加させる機能を有している。ここで、走行環境ポイントとは、作動タイミング制御部24が走行環境を選択する際に用いる指標である。走行環境ポイントに基づいて選択される走行環境とは、例えば道路の大きさや形状を含む種類等であり、具体的には、高速道路、バイパス、一般道、市街地の道路、住宅地の道路などが挙げられる。走行環境を道路の種類ごとに層別に区分けし、走行環境ポイントの大きさに対応させて予め設定することで、作動タイミング制御部24は、入力したカウント値に基づいて走行環境を選択することができる。例えば、走行環境ポイントが11以上の場合は高速道路やバイパス等の階層A、走行環境ポイントが6〜10の場合は一般道や市街地の道路等の階層B、走行環境ポイントが0〜5の場合は住宅街の道路等の階層Cと予め設定することによって、作動タイミング制御部24は、カウント部22から入力したカウント値を用いて走行環境ポイントを算出し、算出した走行環境ポイントに基づいて、走行環境の階層を識別することができる。作動タイミング制御部24は、識別した走行環境の階層に基づいて、後述するプリクラッシュセーフティシステム31の衝突判定閾値及び作動タイミングを含む動作閾値を設定する機能を有している。さらに、作動タイミング制御部24は、設定した衝突判定閾値及び作動タイミングをプリクラッシュセーフティシステム31へ出力する機能を有している。
【0027】
プリクラッシュセーフティシステム31は、安全性を向上させる運転者支援システムの1つであり、例えば警報装置、車両制御装置や乗員保護装置を備えている。プリクラッシュセーフティシステム31は、障害物判定部25の判定結果、及び作動タイミング制御部24で設定した閾値及び作動タイミングを入力し、入力した判定結果により検出物体が障害物である場合には、入力した閾値で衝突判定を実行し、衝突可能性がある場合には注意喚起、警告を行い、さらに衝突する可能性が高い場合には、入力した作動タイミングで警報装置、車両制御装置又は乗員保護装置を作動させる機能を有している。
【0028】
次に、本実施形態に係る走行環境検出装置の動作について説明する。図2は、本実施形態に係る走行環境検出装置の動作を示すフローチャートである。なお、説明理解の容易性を考慮して、走行環境検出装置の動作を図3〜8を用いて説明する。図3〜7は、本実施形態に係る走行環境検出装置を備えた車両の走行例を示す概要図である。また、図8は、走行環境によって変動する衝突判定閾値及び作動タイミングを示すグラフである。
【0029】
図2に示す制御処理は、例えばイグニッションオンされてから所定のタイミングで繰り返し実行される。図3に示す車両1が道路2を走行する場合、走行環境検出装置20は、図2に示す物体検知処理から開始する(S10)。S10の処理は、センサ30及びカウント部22で実行され、前方に存在する物体を検知する処理である。例えば、図3に示すように、センサ30の検知範囲K内に存在する路側物R01、R11〜R13の横位置(車両進行方向に直交する方向)、大きさ等を検知する。また、例えば、図5に示すように、センサ30の検知範囲K内に存在する先行車両C1〜C3を検知する。また、例えば、図6に示すように、センサ30の検知範囲K内に存在する対向車両C4を検知する。カウント部22は、検知した路側物の個体数や、先行車両及び対向車両の台数をそれぞれカウントする。S10の処理が終了すると、推定処理へ移行する(S12)。
【0030】
S12の処理は、走行環境推定部23及び作動タイミング制御部24で実行され、S10の処理で検知した路側物に関する情報に基づいて、走行環境を推定する処理である。S12の処理において、走行環境推定部23は、走行環境として道路幅とカーブ入り口までの距離を推定する。また、作動タイミング制御部24は、現状の走行環境の識別を行う。
【0031】
まず、路側物に関する情報を用いた道路幅の推定について説明する。走行環境推定部23は、図3に示すように、道路に沿って左側に配置された路側物R11〜R13と、道路に沿って右側に配置された路側物R01とを検知した場合に、道路幅を推定する。走行環境推定部23は、車両1を横位置の基準とすると、例えば、検出した左右の路側物における横位置の最小値を足し合わせることで道路幅を推定する。左側に配置された路側物の中で最も横位置が小さいものは路側物R12であり、右側に配置された路側物の中で最も横位置が小さいものは路側物R01である。走行環境推定部23は、路側物R12と路側物R01との間の距離W1を道路幅として推定する。
【0032】
次に、路側物に関する情報を用いたカーブ入り口までの距離の推定について説明する。走行環境推定部23は、検出した路側物に基づいて、カーブ入り口までの距離を推定する。最初に、走行環境推定部23は、路側物を検出した範囲を設定し、路側物エリアとする。設定する範囲の大きさは、検出した路側物の個体数で決定される。例えば、道路左側に路側物R11〜R13の3つが検出された場合には、横位置方向に3m〜5m程度の大きさの範囲のエリアを左路側物エリアH11とする。同様に、道路右側に路側物R01を検出した場合には、横位置方向に1m〜3m程度の大きさの範囲のエリアを右路側物エリアH12とする。このように、路側物が存在する場所を、検出誤差を考慮してある程度の幅を持たせて設定する。走行環境推定部23は、範囲を設定した後、範囲設定後に検出した路側物が、設定した左路側物エリアH11及び右路側物エリアH12内に存在するか否かに基づいて、カーブ入り口地点を推定する。例えば、図3に示す走行状態から図4に示す走行状態へ遷移した場合において、左側に新たな路側物R14を検出したとする。走行環境推定部23は、R14の横位置が左路側物エリアH11の範囲内で無く、車両1の位置を基準として最も縦位置(車両進行方向)が大きく、さらに左路側物エリアH11に比べて自車線側に存在していると判定した場合には、路側物R13と路側物R14との間に右カーブの入り口があると推定する。走行環境推定部23は、例えば、路側物R13と路側物R14との真ん中の地点をカーブ入り口地点と推定する。そして、走行環境推定部23は、車両1からカーブ入り口までの距離T1を推定する。左カーブの場合も同様の動作によってカーブ入り口地点を推定し、車両1からカーブ入り口までの距離を算出する。
【0033】
次に、路側物に関する情報を用いた走行環境の識別について説明する。走行環境は、例えば、高速道路やバイパス等の階層A、一般道や市街地の道路等の階層B、及び住宅街の道路等の階層Cが予め設定されている。例えば、走行環境ポイントが11以上の場合は階層A、6〜10の場合は階層B、0〜5の場合は階層Cとする。作動タイミング制御部24は、道路幅と路側物の個体数とに基づいて走行環境ポイントP1を増加させる。例えば、図3に示すように、道路幅W1と路側物R01、R11〜R13の個体数4個に基づいて、走行環境ポイントP1を所定数増加させる。このように、道路幅や路側物の数に基づいて走行環境ポイントP1を増加させることで、走行環境ポイントP1の大きさで道路の大きさや種類等の走行環境を表現することができる。作動タイミング制御部24は、走行環境ポイントP1を算出後、どの階層に属するかを判定して走行環境を識別する。
【0034】
道路幅W1、カーブ入り口までの距離T1及び走行環境の識別が完了すると、S12の処理が終了する。S12の処理が終了すると、先行車両情報に基づく推定処理へ移行する(S14)。
【0035】
S14の処理は、走行環境推定部23及び作動タイミング制御部24で実行され、S10の処理で検知した先行車両に関する情報に基づいて、走行環境を推定する処理である。S14の処理において、走行環境推定部23は、走行環境として道路幅とカーブ入り口までの距離を推定する。また、作動タイミング制御部24は、現状の走行環境の識別を行う。
【0036】
まず、先行車両に関する情報を用いた道路幅の推定について説明する。走行環境推定部23は、図5に示すように、車両1の先行車両C1〜C3を検知した場合に、道路幅を推定する。走行環境推定部23は、車両1を横位置の基準とすると、例えば、検出した左右の先行車両における横位置の最大値を足し合わせることで道路幅を推定する。走行環境推定部23は、左側に検出した先行車両C1の中で最も横位置が大きい箇所から、右側に検出した先行車両C2の中で最も横位置が大きい箇所までの間の距離W2を道路幅として推定する。
【0037】
次に、先行車両に関する情報を用いたカーブ入り口までの距離の推定について説明する。走行環境推定部23は、検出した先行車両に基づいて、カーブ入り口までの距離を推定する。最初に、走行環境推定部23は、先行車両を検出した範囲を設定し、左車線エリア、自車線エリア及び右車線エリアとする。設定する範囲の大きさは、先行車両をトラッキングし、横変動の大きさに検出誤差を加えて決定する。例えば、道路左側に先行車両C1が検出された場合には、先行車両C1をトラッキングして所定の範囲を左車線エリアH21と設定する。同様に、先行車両C2をトラッキングして自車線エリアH22を設定し、先行車両C3をトラッキングして右車線エリアH23を設定する。走行環境推定部23は、範囲を設定した後、範囲設定後に検出した先行車両が、設定した左車線エリアH21、自車線エリアH22及び右車線エリアH23内に存在するか否かに基づいて、カーブ入り口地点を推定する。例えば、左側を走行する先行車両C1の横位置が左車線エリアH21の範囲内を外れた回数がN回以上であれば、車両1から先行車両C1までの距離T2を、車両1からカーブ入り口までの距離として推定する。
【0038】
次に、先行車両に関する情報を用いた走行環境の識別について説明する。走行環境は、S12の処理で用いた階層別の走行環境と同一の設定で定義されている。作動タイミング制御部24は、道路幅と先行車両の台数とに基づいて走行環境ポイントP2を増加させる。例えば、図5に示すように、道路幅W2と先行車両C1〜C3の台数3台に基づいて、走行環境ポイントP2を所定数増加させる。このように、道路幅W2や先行車両の台数に応じて走行環境ポイントP2を増加させることで、走行環境ポイントP2の大きさで道路の大きさや種類等の走行環境を表現することができる。作動タイミング制御部24は、走行環境ポイントP2を算出後、どの階層に属するかを判定して走行環境を識別する。
【0039】
道路幅W2、カーブ入り口までの距離T2及び走行環境の識別が完了すると、S14の処理が終了する。S14の処理が終了すると、対向車両情報に基づく推定処理へ移行する(S16)。
【0040】
S16の処理は、走行環境推定部23及び作動タイミング制御部24で実行され、S10の処理で検知した対向車両に関する情報に基づいて、走行環境を推定する処理である。S16の処理において、走行環境推定部23は、走行環境として道路幅とカーブ入り口までの距離を推定する。また、作動タイミング制御部24は、現状の走行環境の識別を行う。
【0041】
まず、対向車両に関する情報を用いた道路幅の推定について説明する。走行環境推定部23は、図6に示すように、車両1の対向車両C4を検知した場合に、道路幅を推定する。走行環境推定部23は、車両1を横位置の基準とすると、例えば、検出した対向車両における横位置の最大値と、車両1の幅の半分の大きさを足し合わせることで道路幅を推定する。図6においては、対向車両C4における横位置の最大値と、車両1の幅の半分の大きさを足し合わせた道路幅W3を道路幅として推定する。また、図7に示すように、対向車線が2車線ある場合には、最大の横位置を有する対向車両はC6であるので、対向車両C6における横位置の最大値と、車両1の幅の半分の大きさを足し合わせた道路幅W3を道路幅として推定する。このように、対向車線が複数車線である場合には、自車線から最も離れた車線を走行する対向車両が道路幅を決定するための基準の車両となる。なお、対向車線が複数車線である場合には、検出した対向車線間に静止物が無いことを判定することで、誤検出を回避することができる。
【0042】
次に、対向車両に関する情報を用いたカーブ入り口までの距離の推定について説明する。走行環境推定部23は、検出した対向車両に基づいて、カーブ入り口までの距離を推定する。最初に、走行環境推定部23は、対向車両を検出した範囲を設定し、対向車線エリアとする。設定する範囲の大きさは、対向車両をトラッキングし、横変動の大きさに検出誤差を加えて決定される。例えば、図6に示すように対向車両C4が検出された場合には、対向車両C4をトラッキングして所定の範囲を対向車線エリアH31と設定する。また、例えば、図7に示すように、複数の対向車両を検出した場合には、それぞれの対向車両ごとに範囲を指定する。具体的には、C5の動作に基づいて対向車線エリアH32、対向車両C6の動作に基づいて対向車線エリアH33を設定する。走行環境推定部23は、範囲を設定した後、範囲設定後に検出した対向車両が、設定した対向車線エリア内に存在するか否かに基づいて、カーブ入り口地点を推定する。例えば、別の対向車両によって事前に対向車線エリアH31が決定されていた場合において、検出した対向車両C4の横位置が対向車線エリアH31から外れているが、所定時刻後において、対向車線エリアH31の範囲内となる回数がN回以上であれば、車両1から対向車両C4までの距離T3を、車両1からカーブ入り口までの距離として推定する。
【0043】
次に、対向車両に関する情報を用いた走行環境の識別について説明する。走行環境は、S12の処理で用いた階層別の走行環境と同一の設定で定義されている。作動タイミング制御部24は、道路幅と対向車両の台数とに基づいて走行環境ポイントP3を増加させる。例えば、図6に示すように、道路幅W3と対向車両C4の台数1台に基づいて、走行環境ポイントP3を所定数増加させる。また、例えば、図7に示すように、道路幅W3と対向車両C5及びC6の台数2台に基づいて、走行環境ポイントP3を所定数増加させる。このように、道路幅W3や対向車両の台数に応じて走行環境ポイントP3を増加させることで、走行環境ポイントP3の大きさで道路の大きさや種類等の走行環境を表現することができる。特に、2台以上の対向車両を検出した場合に、より多く走行環境ポイントを増加することによって、大きな道路であることを走行環境ポイントに反映させることができる。また、作動タイミング制御部24は、走行環境ポイントP3を算出後、どの階層に属するかを判定して走行環境を識別する。
【0044】
道路幅W3、カーブ入り口までの距離T3及び走行環境の識別が完了すると、S16の処理が終了する。S16の処理が終了すると、道路幅推定処理へ移行する(S18)。
【0045】
S18の処理は、走行環境推定部23で実行され、S12〜S16の処理で推定した道路幅を統合して、道路幅を推定する処理である。走行環境推定部23は、道路幅を推定する場合には、路側物、先行車両、対向車両の順に重くなるように重み付けを行う。例えば、重み付けの係数をk、k、kとすると(但しk>k>k,k+k+k=1)、道路幅Wは、推定した道路幅W1〜W3を用いて以下式で表すことができる。
【0046】
W=(1/3)・(k・W1+k・W2+k・W3) …(1)
【0047】
式1を用いることで、重み付けに従って道路幅を算出することができる。S18の処理が終了すると、カーブ入り口までの距離を推定する処理へ移行する(S20)。
【0048】
S20の処理は、走行環境推定部23で実行され、S12〜S16の処理で推定したカーブ入り口までの距離を統合して、カーブ入り口までの距離を推定する処理である。走行環境推定部23は、カーブ入り口までの距離を推定する場合には、先行車両、対向車、両路側物の順に重くなるように重み付けを行う。例えば、重み付けの係数をk、k、kとすると(但しk>k>k,k+k+k=1)、カーブ入り口までの距離Tは、推定したカーブ入り口までの距離T1〜T3を用いて以下式で表すことができる。
【0049】
T=(1/3)・(k・T1+k・T2+k・T3) …(2)
【0050】
式2を用いることで、重み付けに従ってカーブ入り口までの距離を算出することができる。S20の処理が終了すると、障害物判定処理へ移行する(S22)。
【0051】
S22の処理は、障害物判定部25で実行され、S10の処理で入力した車両周辺情報に含まれる物体が障害物か否かを判定する処理である。障害物判定部25は、S18の処理で推定した道路幅Wとカーブ入り口までの距離Tとを用いて、検出した物体が障害物か否かを判定する。これにより、カーブ入り口直後の路側物等を障害物と判定することなく、路側物であると判定することができる。S22の処理において、検出した物体が障害物でないと判定した場合には、物体検知処理へ移行する(S10)。一方、S22の処理において、検出した物体が障害物であると判定した場合には、設定変更処理へ移行する(S24)。
【0052】
S24の処理は、作動タイミング制御部24で実行され、プリクラッシュセーフティシステム31が衝突判定をする際に用いる衝突判定閾値と、プリクラッシュセーフティシステム31の作動タイミングとを設定する処理である。作動タイミング制御部24は、S12〜S16の処理で設定した走行環境ポイントP1、P2、P3を用いて、現在走行している走行環境が、予め設定された階層状に定義された走行環境のどこに該当するかを判定し、該当する走行環境に基づいて、衝突判定閾値及び作動タイミングを設定する。統合する走行環境ポイントの個数をm、P1+P2+P3=P4とすると、走行環境ポイントは以下式で表すことができる。
【0053】
P=(1/m)・((P1/P4)・P1+(P2/P4)・P2+(P3/P4)・P3) …(3)
【0054】
式3を用いることで、より適切な走行環境ポイントを推定することができる。作動タイミング制御部24は、算出した走行環境ポイントを用いて、現在の走行環境を選択する。S12の処理で説明したように、走行環境が、高速道路やバイパス等の階層A、一般道や市街地等の階層B、及び住宅街等の階層Cと定義され、走行環境ポイントが11以上の場合は階層A、6〜10の場合は階層B、0〜5の場合は階層Cと定義されている場合において、式3で算出した走行環境ポイントが例えば7である場合には、階層Bとなる。階層が確定すると、作動タイミング制御部24は、衝突判定閾値及び作動タイミングを設定する。例えば、図8に示すグラフのように、横軸が作動タイミング設定値で、縦軸が衝突判定閾値を示すグラフにおいて、走行環境の階層別に適切な値が設定できるように事前にグラフを定義する。階層Aに係る走行環境は、高速道路やバイパス等、比較的大規模の道路であるので、作動率を向上させる選択肢を増やすために、衝突判定閾値をより低く、又、作動タイミングをより早く設定することが可能となるように図8に示すグラフを定義する。一方、階層Cに係る走行環境は、密集した住宅地等であって道路幅が狭いため、衝突判定閾値を厳しく設定するように図8に示すグラフを定義する。反対に、階層Cにおいては、走行スピードが階層Aの場合に比べて小さいので、作動タイミングを早く設定する必要性に乏しく、階層Aや階層Bに比べて早いタイミングで作動できないように図8に示すグラフを予め定義する。S28の処理において、作動タイミング制御部24は、図8に示すグラフを用いることで、走行環境に応じて、最適な衝突判定閾値及び作動タイミング設定値を適切に変更する。S28の処理が終了すると、PCS制御実行処理へ移行する(S26)。
【0055】
S26の処理は、プリクラッシュセーフティシステム31で実行され、S24の処理で設定した衝突判定閾値を用いて、S22の処理で判定した障害物と衝突するか否かを判定し、衝突すると判定した場合には、S24の処理で設定した作動タイミングを用いて作動する。例えば、衝突可能性がある場合には注意喚起、警告を行い、さらに衝突する可能性が高い場合には、入力した作動タイミングで警報装置、車両制御装置又は乗員保護装置を作動させる。S26の処理が終了すると、図2に示す制御処理が終了する。
【0056】
上述した図2に示す制御処理を実施することで、道路幅及びカーブ入り口までの距離を用いてプリクラッシュセーフティシステム31の不要動作を回避できると共に、走行環境ごとに予め起きやすいシーンを想定して定義し、走行環境に適した衝突判定やプリクラッシュセーフティシステム31の作動タイミングを設定することができる。
【0057】
なお、図2に示す制御処理は、所定のタイミングで繰り返し実行されるが、S12〜S16及びS18の処理で推定した道路幅、S12〜S16及びS20の処理で推定したカーブ入り口までの距離、及び、S12〜S16及びS24の処理で推定した走行環境ポイントは、それぞれ所定の条件下でリセットされる。例えば、道路幅は、道路幅を演算する際に規定外の値となった場合や、車速の拘束条件を外れた場合や、右左折する場合には、推定した道路幅をリセットする。また、カーブ入り口までの距離は、検出した物体情報が検知角度内でロストした場合や、車速の拘束条件を外れた場合や、右左折する場合、演算した距離を既に走行してしまった場合には、推定したカーブ入り口までの距離をリセットする。また、走行環境ポイントは、車速の拘束条件を外れた場合や、右左折する場合には、走行環境ポイントをリセットする。
【0058】
以上、本実施形態に係る走行環境検出装置20によれば、道路に沿って存在する路側物R01〜R14、先行車両C1〜C3及び対向車両C4〜C6をそれぞれ検出し、検出した情報に基づいて道路幅Wを推定することができる。これにより、例えば狭い道路において、すり抜けが可能か否かの判断を高精度で行うことができる。
【0059】
また、本実施形態に係る走行環境検出装置20によれば、路側物R01〜R14に関する情報から推定した道路幅W1、先行車両C1〜C3に関する情報から推定した道路幅W2、及び対向車両C4〜C6に関する情報から推定した道路幅W3のうち、情報の信頼性が高い道路幅W1、道路幅W2、道路幅W3の順に重くなるように重み付けを行い統合して道路幅Wを推定することができるので、より正確に道路幅を推定することができる。
【0060】
また、本実施形態に係る走行環境検出装置20によれば、道路に沿って存在する路側物R01〜R14、先行車両C1〜C3及び対向車両C4〜C6をそれぞれ検出し、検出した情報に基づいてカーブ入り口までの距離Tを推定することができる。これにより、カーブ入り口までの距離を高精度で推定することができる。従って、カーブ入り口に配置されているガードレールや看板等に基づいてプリクラッシュセーフティシステム31が警報装置、車両制御装置又は乗員保護装置を作動させることを回避することができるため、不要な動作を低減させることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る走行環境検出装置20によれば、路側物R01〜R14に関する情報から推定したカーブ入口までの距離T1、先行車両C1〜C3に関する情報から推定したカーブ入口までの距離T2、及び対向車両C4〜C6に関する情報から推定したカーブ入口までの距離T3のうち、距離T2、距離T3、距離T1の順に重くなるように重み付けを行い統合してカーブ入口までの距離Tを推定することができるので、より正確にカーブ入口までの距離を推定することができる。
【0062】
さらに、本実施形態に係る走行環境検出装置20によれば、走行している走行環境に応じて警報装置、車両制御装置又は乗員保護装置を作動させる作動閾値を設定することができるので、プリクラッシュセーフティシステム31が不要な動作をすることを回避することや、必要な際により早く作動させることが可能となる。
【0063】
なお、上述した実施形態は本発明に係る走行環境検出装置の一例を示すものである。本発明に係る走行環境検出装置は、この実施形態に係る走行環境検出装置に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る走行環境検出装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0064】
例えば、上記実施形態において、S24に示す衝突判定閾値及び作動タイミングの設定処理を、S22に示す障害物判定処理の後に実施しているが、S24に示す設定処理は、S26に示すPCS制御実行処理よりも前に実施していれば足りるため、例えばS22に示す処理の直前に実行してもよい。
【0065】
また、上記実施形態においては、走行環境の階層を3つとして説明しているが、走行環境を2つ又は4以上の階層に定義してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施形態に係る走行環境検出装置を備える車両の構成概要を示すブロック図である。
【図2】図1の走行環境検出装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図1の車両が走行する走行環境の一例を示す概要図である。
【図4】図1の車両が走行する走行環境の一例を示す概要図である。
【図5】図1の車両が走行する走行環境の一例を示す概要図である。
【図6】図1の車両が走行する走行環境の一例を示す概要図である。
【図7】図1の車両が走行する走行環境の一例を示す概要図である。
【図8】階層別走行環境における衝突判定閾値と作動タイミングを定義したグラフである。
【符号の説明】
【0067】
1…車両、2…ECU、20…走行環境検出装置、22…カウント部(カウント手段)、23…走行環境推定部(走行環境推定手段)、24…作動タイミング制御部(作動タイミング設定手段)、30…センサ(路側物検出手段、先行車両検出手段、対向車両検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行する走行環境を検出する走行環境検出装置であって、
道路に沿って存在する路側物を検出する路側物検出手段と、
先行車両を検出する先行車両検出手段と、
対向車両を検出する対向車両検出手段と、
検出した前記路側物、前記先行車両及び前記対向車両に関する情報に基づいて前記走行環境として道路幅を推定する走行環境推定手段と、
を備えたことを特徴とする走行環境検出装置。
【請求項2】
前記走行環境推定手段は、検出した前記路側物、前記先行車両、前記対向車両に関する情報の順に重くなるように重み付けを行い、重み付けに従って前記道路幅を推定すること、
を特徴とする請求項1に記載の走行環境検出装置。
【請求項3】
車両の走行する走行環境を検出する走行環境検出装置であって、
道路に沿って存在する路側物を検出する路側物検出手段と、
先行車両を検出する先行車両検出手段と、
対向車両を検出する対向車両検出手段と、
検出した前記路側物、前記先行車両及び前記対向車両に関する情報に基づいて前記走行環境としてカーブ入り口までの距離を推定する走行環境推定手段と、
を備えたことを特徴とする走行環境検出装置。
【請求項4】
前記走行環境推定手段は、検出した前記先行車両、前記対向車両、前記路側物に関する情報の順に重くなるように重み付けを行い、重み付けに従って前記カーブ入口までの距離を推定すること、
を特徴とする請求項3に記載の走行環境検出装置。
【請求項5】
検出した前記路側物、前記先行車両及び前記対向車両の個体数をカウントするカウント手段と、
予め階層状に設定した走行環境から、カウントした値に基づいて該当する走行環境を選択し、選択した走行環境に基づいて、警報装置、車両制御装置又は乗員保護装置を作動させる作動閾値を設定する作動タイミング設定手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の走行環境検出装置。
【請求項6】
前記作動タイミング手段は、前記作動閾値として、検出した物体と衝突するか否かを判定するための衝突判定閾値を設定することを特徴とする請求項5に記載の走行環境検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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