説明

走行車システム

【課題】安全かつ迅速に走行車のレイアウトデータの更新を行うことができる走行車システムを提供すること。
【解決手段】走行路140と、走行車200と、第一コントローラ121とを備える走行車システム100であって、第一コントローラ121は、レイアウトデータの送信要求を受信する要求受信部126と、走行車200に対して定期的にレイアウトデータのバージョンを示すバージョン情報を送信し、かつ、送信要求に応じたレイアウトデータを走行車に送信するレイアウト送信部127とを有し、走行車200は、レイアウト受信部210と、レイアウトデータ記憶部215と、バージョン情報に示されるバージョンとレイアウトデータ記憶部215に記憶されているレイアウトデータのバージョンとの比較を行う比較部220と、これらバージョンとが異なる場合に送信要求を送信する要求送信部205とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を搬送する複数の走行車を備える走行車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天井走行車等の走行車を用いて物品を搬送するシステムである走行車システムがある。
【0003】
例えば、半導体素子を製造する半導体工場内では、製造工程ごとにベイと呼ばれる領域に分けられ、各ベイには複数の天井走行車が一方向に周回する周回路が配置される。
【0004】
各周回路では、複数の走行車のそれぞれが半導体素子の材料であるウェハ等を当該ベイ内の製造装置間で搬送する。
【0005】
また、それぞれのベイの周回路間は接続路で接続されており、あるベイにおいて一つの工程を経た製造物は、当該ベイ内の天井走行車にピックアップされ接続路を経由して次工程のベイに搬送される。
【0006】
このような複数の周回路およびこれら複数の周回路を接続する接続路により形成される経路を走行車が移動する際、走行車は自身が記憶しているレイアウトデータを参照して移動する。
【0007】
レイアウトデータとは、経路のレイアウトを示すデータであり、マップデータ等とも呼ばれる。
【0008】
レイアウトデータには、各ベイにおける物品の載置および引き取り場所である移載ポートの位置を示す情報、および、各ベイへの進入ポイントおよび各ベイからの脱出ポイントを示す情報など、走行車が上位のコントローラから指示された場所まで移動する際に必要な情報が含まれている。
【0009】
また、工場内においてベイまたは移載ポートの増設または移設等が行われることにより、経路のレイアウトの変更が発生する。従って、各走行車はその変更の度に自機が記憶しているレイアウトデータを更新する必要がある。
【0010】
近年では、生産効率の向上のために、走行車による搬送を止めることなくレイアウトデータの更新を行うことが求められている。
【0011】
そこで、走行車システム内の複数の走行車のレイアウトデータの更新処理を効率化するための技術も開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0012】
特許文献1に記載の技術によれば、上位のコントローラは、レイアウトデータの更新の優先度の高い順に、各走行車にレイアウトデータを更新させる。具体的には、更新対象の走行車に最新のレイアウトデータを送信することで、当該走行車にレイアウトデータの更新を行わせる。これにより、走行車システム全体としての稼働効率を向上させている。
【特許文献1】特開2006−313462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来の技術のように、コントローラがレイアウトデータの送受信の主導権を有する場合、送信時点での走行車の位置または状態によっては、レイアウトデータの送受信を良好に行えない場合もある。
【0014】
また、コントローラが走行車にレイアウトデータを送信する際に、通信状況の悪化等により、レイアウトデータの受信の完了前に通信が途絶する場合がある。
【0015】
この場合、その後に通信状況が好転し、コントローラと走行車との間の通信が再開した場合であっても、通信の途絶の前後でのデータの連続性は保障されない。つまり、この場合、走行車は再度レイアウトデータを最初から受信する必要がある。
【0016】
また、通信状況の悪化のみならず、走行車の故障等によりレイアウトデータの受信が途中で途切れる場合もある。
【0017】
このように、何らかの要因によりレイアウトデータの送受信が途中で途切れた場合に備え、例えば、コントローラがどこまで送信したかを記憶しておくという対策が考えられる。これにより、コントローラと走行車との間の通信の再開後に、コントローラは残部データのみを送信することが可能である。
【0018】
しかし、このような対策を採用した場合、コントローラは複数の走行車のそれぞれについて送信履歴を記憶する必要がある。そのため、走行車の数およびレイアウトデータの更新の頻度に比例してコントローラの処理負荷が増大することになり、現実的な対策とは言えない。
【0019】
また、走行車システムにおいて、互いに異なるエリアを担当する複数のコントローラが配置されている場合がある。この場合、あるエリア内を移動中の走行車は、当該エリアを担当するコントローラからレイアウトデータを受信することになる。
【0020】
従って、この走行車はレイアウトデータの受信完了までは他のコントローラの管轄下へ移動できない。この場合この走行車は停止せざるを得ず、渋滞が引き起こされる可能性がある。また、走行車システム全体における搬送効率が低下する。
【0021】
本発明は上記従来の課題を考慮し、予め定められた経路と当該経路を走行する走行車とを備える走行車システムであって、安全かつ迅速に走行車のレイアウトデータの更新を行うことができる走行車システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記従来の課題を解決するため、本発明の走行車システムは、予め定められた経路と、前記経路のレイアウトを示すレイアウトデータを参照することで前記経路を移動する走行車と、前記走行車と通信可能なコントローラとを備える走行車システムであって、前記コントローラは、前記走行車から送信されるレイアウトデータの送信要求を受信する要求受信部と、前記走行車に対して定期的にレイアウトデータのバージョンを示すバージョン情報を送信し、かつ、前記要求受信部により受信された送信要求に応じたレイアウトデータを前記走行車に送信するレイアウト送信部とを有し、前記走行車は、前記コントローラから送信されるバージョン情報、および、前記コントローラから送信されるレイアウトデータを受信するレイアウト受信部と、前記レイアウト受信部により受信されたレイアウトデータを記憶するためのレイアウトデータ記憶部と、前記レイアウト受信部により受信されたバージョン情報に示されるバージョンと、前記レイアウトデータ記憶部に記憶されているレイアウトデータのバージョンとの比較を行う比較部と、前記比較部による比較の結果、前記バージョン情報に示されるバージョンと、前記レイアウトデータのバージョンとが異なる場合、前記バージョン情報に示されるバージョンのレイアウトデータの送信要求を前記コントローラに送信する要求送信部とを有する。
【0023】
この構成によれば、コントローラは、走行車に対して定期的にレイアウトデータのバージョンを通知する。走行車は、通知されたバージョンと自機が記憶しているレイアウトデータのバージョンとを比較し、これらが異なる場合にレイアウトデータを要求する。
【0024】
つまり、走行車はレイアウトデータの更新の必要があるか否かを判断し、必要がある場合にのみコントローラにレイアウトデータを要求することができ、かつ、コントローラは、走行車からの要求があって初めてレイアウトデータそのものを送信する。
【0025】
このように、本発明の走行車システムでは、走行車が要求することでレイアウトデータがコントローラから送信される。
【0026】
つまり、走行車は、例えば周辺に障害物がない領域を移動している期間など無線による通信状態が良好なときにレイアウトデータのダウンロードを行うことが可能となる。
【0027】
このように、本発明の走行車システムでは、走行車は迅速かつ安全にレイアウトデータの更新を行うことができる。
【0028】
また、前記レイアウト送信部が送信するレイアウトデータは複数の部分データから構成されており、前記要求送信部は、複数の部分データのそれぞれに対応する送信要求を前記コントローラに順次送信し、前記要求受信部は前記要求送信部から送信される送信要求を順次受信し、前記レイアウト送信部は、前記要求受信部が前記送信要求を受信するごとに、受信した送信要求に対応する部分データを前記走行車に送信し、前記レイアウト受信部は、前記レイアウト送信部により送信される複数の部分データを順次受信することで前記レイアウトデータを受信するとしてもよい。
【0029】
この構成により、走行車は、分割された単位ごとにレイアウトデータをダウンロードすることができる。
【0030】
従って、コントローラと走行車との間の通信状況が変化する場合などにおいても、走行車は、複数の部分データのそれぞれを受信可能なタイミングで受信することにより、受信すべきレイアウトデータの全てを受信することができる。
【0031】
また、コントローラは、走行車に送信すべきレイアウトデータのどこまでを送信したかを記憶しておく必要がなく、走行車からの要求に従って部分データを送信すればよい。
【0032】
また、前記走行車システムは、前記経路上の互いに異なるエリアを担当する少なくとも2つの前記コントローラを備え、少なくとも2つの前記コントローラの一方は第一エリアを担当する第一コントローラであり、他方は第二エリアを担当する第二コントローラであり、前記第一コントローラおよび前記第二コントローラのそれぞれは、同一のバージョンのレイアウトデータを保持しており、前記要求送信部は、前記走行車が前記第一エリアに存在する場合、前記第一コントローラに前記送信要求を送信し、前記走行車が前記第二エリアに存在する場合、前記第二コントローラに前記送信要求を送信し、前記第一コントローラのレイアウト送信部は、前記第一コントローラの要求受信部が受信した送信要求に対応する部分データを前記走行車に送信し、前記第二コントローラのレイアウト送信部は、前記第二コントローラの要求受信部が受信した送信要求に対応する部分データを前記走行車に送信するとしてもよい。
【0033】
この構成により、複数のコントローラがエリアごとに分担して走行車に対するレイアウトデータの供給を行なう場合であっても、走行車は、エリアをまたいで移動しながら受信すべきレイアウトデータの全てを受信することができる。
【0034】
また、前記走行車はさらに、前記走行車が移動する際に参照するレイアウトデータを前記レイアウト受信部により受信されたレイアウトデータを用いて更新する更新部を有し、前記レイアウト受信部は、前記走行車が前記経路を走行中に前記レイアウトデータを受信可能であり、前記更新部は、前記走行車が停止中に前記更新を行うとしてもよい。
【0035】
この構成により、走行車は停止して安定した状態でレイアウトデータの更新を行うことができる。これにより、移動に際して参照されるレイアウトデータが、走行車の移動中に変更されることによる走行車の不安定さが排除される。
【0036】
また、前記コントローラが前記走行車に送信するレイアウトデータは、当該レイアウトデータのバージョンよりも、バージョンアップにおける最小単位分だけ前のバージョンのレイアウトデータに対する差分のデータであり、前記経路には、前記走行車のメンテナンスを行うためのメンテナンスエリアに至る経路が接続されており、前記要求送信部は、前記比較部による比較の結果、前記バージョン情報に示されるバージョンと前記レイアウトデータ記憶部に記憶されているレイアウトデータのバージョンとの差が前記最小単位である場合にのみ前記送信要求を送信し、前記走行車は、前記比較部による比較の結果、前記バージョン情報に示されるバージョンと前記レイアウトデータのバージョンとの差が前記最小単位ではない場合、前記メンテナンスエリア内に移動するとしてもよい。
【0037】
この構成により、コントローラが保持するレイアウトデータを最小限にすることができる。また、通信時間を大量に必要とするバージョンアップを排除できる。
【0038】
また、コントローラは走行車に一つ前のバージョンに対する差分データであるレイアウトデータを送信するため、コントローラおよび走行車はレイアウトデータの送受信を短時間で済ませることができる。
【0039】
また、走行車が、何らかの理由により1以上の差分データを受信し損ねた場合、つまり、レイアウトデータの更新の機会を一回以上失った場合であっても、走行車は、メンテナンスエリアでレイアウトデータを最新のバージョンまで更新することが可能となる。
【0040】
また、このように、通常の更新より時間が必要である複数の単位にまたがる更新を、走行車をメンテナンスエリアに移動させてから行うことができる。
【0041】
そのため、当該走行車が経路に渋滞を引き起こすようなことがなく、走行車システム全体の稼働効率への悪影響は最小限に留められる。
【0042】
さらに、本発明は、本発明の走行車システムにおける特徴的な動作ステップを含む、レイアウトデータの更新方法等して実現することもできる。また、それら各ステップをコントローラおよび走行車に実行させる制御プログラムとして実現することもできる。
【発明の効果】
【0043】
本発明の走行車システムによれば、コントローラは、レイアウトデータの送信に先立ってそのバージョンを走行車に通知する。そのため、走行車はコントローラから受信可能なレイアウトデータを要求すべきか否かをまず判断した上で、そのレイアウトデータの送信を要求することができる。
【0044】
さらに、コントローラは、走行車からの要求に応じてレイアウトデータの走行車への送信を行う。
【0045】
すなわち、本発明の走行車システムにおいては、走行車がレイアウトデータの送受信の主導権を有している。そのため、例えば走行車がレイアウトデータの受信を行いやすい状況または環境にあるときに、受信すべきレイアウトデータを受信することができる。
【0046】
従って、レイアウトデータの送受信の失敗により、何度もレイアウトデータの送受信が繰り返されるなどの、非効率的な処理の発生が抑制される。
【0047】
このように、本発明は、予め定められた経路と当該経路を走行する走行車とを備える走行車システムであって、安全かつ迅速に走行車のレイアウトデータの更新を行うことができる走行車システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0049】
まず、実施の形態の走行車システム100の構成について図1〜図3を用いて説明する。
【0050】
図1は、本発明の実施の形態の走行車システム100のハードウェア構成の概要を示す図である。
【0051】
図1に示すように、走行車システム100は、第一コントローラ121と、第二コントローラ122と、走行路140と、一括更新用サーバ170と、複数の走行車200とを備える。
【0052】
なお、本実施の形態において走行車200は天井に配置された走行路140に沿って移動する天井走行車である。また、図1に示す走行路140のレイアウトは、走行路140を上方から眺めた場合のレイアウトになっている。
【0053】
図1に示す走行車システム100は、例えば半導体素子を製造する工場に備えられている。また、本実施の形態においては、当該工場内に、製造工程によって区分された第一ベイと第二ベイとが存在する。
【0054】
各ベイには、半導体素子の材料の載置および引き取り場所である移載ポート150が複数設けられている。また、各ベイには、複数の走行車200が一方向に周回する周回路が配置されている。
【0055】
複数の走行車200のそれぞれは、各ベイの周回路およびこれら周回路を接続する接続路を走行することで、半導体素子の材料であるウェハ等を、ある移載ポート150から他の移載ポート150へ搬送する。
【0056】
なお、各ベイの周回路およびこれら周回路を接続する接続路のそれぞれにより走行路140が構成されている。走行路140は、本発明の走行車システムにおける、予め定められた経路の一例である。
【0057】
また、図1に示すように、当該工場内には、互いに隣接する第一エリアと第二エリアとが存在する。また、第一コントローラ121が第一エリアを担当するコントローラであり、第二コントローラ122が第二エリアを担当するコントローラである。
【0058】
つまり、第一エリア内の経路上に存在する走行車200は、第一コントローラ121と通信することで各種の情報のやり取りを行う。また、第二エリア内の経路上に存在する走行車200は、第二コントローラ122と通信することで各種の情報のやり取りを行う。
【0059】
なお、ある走行車200が第一エリアと第二エリアとの境界をまたいで移動する際に、その走行車200の通信相手である管轄コントローラは、第一コントローラ121から第二コントローラ122に、またはその逆に変更される。
【0060】
走行車システム100が備える複数の走行車200のそれぞれは、第一コントローラ121または第二コントローラ122から、その時点で受信可能なレイアウトデータのバージョンが通知される。
【0061】
通知を受けた走行車200は、必要に応じて第一コントローラ121または第二コントローラ122にレイアウトデータを要求する。これにより、第一コントローラ121または第二コントローラ122から通知されたバージョンのレイアウトデータを受信する。また、受信したレイアウトデータを用いて、自機に記憶されているレイアウトデータを更新する。
【0062】
なお、第一コントローラ121および第二コントローラ122が送信するレイアウトデータは、いずれも直前のバージョンのレイアウトデータに対する差分データである。
【0063】
第一コントローラ121または第二コントローラ122と走行車200との間のレイアウトデータの送受信については、図4等を用いて後述する。
【0064】
一括更新用サーバ170は、第一コントローラ121および第二コントローラ122が送信するバージョン情報に示されるバージョンまでのレイアウトデータの更新に必要な一括更新用データを走行車200に送信可能なサーバ装置である。
【0065】
なお、一括更新用サーバ170は、メンテナンスエリアに配置されている。メンテナンスエリアは、走行車200のメンテナンスのためのエリアである。走行車200が物品の搬送のために移動する走行路140には、メンテナンスエリアに至る経路が接続されている。
【0066】
走行車200は、何らかの理由によりレイアウトデータの更新が出来なかった場合、メンテナンスエリア内に移動し、一括更新用サーバ170から一括更新用データを受信する。
【0067】
これにより、当該走行車200は、その時点での最新バージョンまでレイアウトデータを更新できる。
【0068】
本実施の形態において、第一コントローラ121、第二コントローラ122および一括更新用サーバ170は、互いに通信回線で接続されている。
【0069】
また、例えば第一コントローラ121に入力されたレイアウトデータを、第一コントローラ121が第二コントローラ122および一括更新用サーバ170に送信することにより、第一コントローラ121および第二コントローラ122が保持するレイアウトデータのバージョンの同期が図られる。
【0070】
また、一括更新用サーバ170は、第一コントローラ121から送信されるレイアウトデータをバージョンごとに保存し、これらから一括更新用データを生成することができる。
【0071】
図2は、実施の形態における走行車200の外観を示す斜視図である。
【0072】
図2に示すように、走行車200は、走行路140を形成するレールに沿って移動する天井走行車である。また、走行車200は、物品を保持する物品保持部240を有する。
【0073】
走行車200は、例えば第一コントローラ121からの指示に従い、第一ベイ内のある移載ポート150上まで移動し、所定の高さまで降下する。さらに、当該移載ポート150に置かれた物品を物品保持部240により保持した状態で上昇し、第一コントローラ121からの指示に従い、次の移載ポート150上まで移動する。走行車200は、当該次の移載ポート150上まで移動すると、降下し、物品保持部240が保持している物品を置いた後に上昇する。
【0074】
走行車200が、このような動作を繰り返すことにより、第一ベイ内の各製造装置間で材料等の移送が行われる。第二ベイ内においても同様に走行車200による各製造装置間での材料等の移送が行われる。
【0075】
また、第一ベイおよび第二ベイの間で走行車200が移動することにより、第一ベイおよび第二ベイの相互間で材料等の移送が行われる。
【0076】
また、走行路140には、載置ポート等の位置を走行車200が検知するためのバーコード160が貼付されている。
【0077】
走行車200は、バーコードスキャナ(図示せず)により、走行路140に貼られたバーコード160を読み取り、自機が記憶しているレイアウトデータを参照することで、自機が、走行路140上のどの地点を走行または停止しているかを検知することができる。
【0078】
また、走行路140には、走行車200に搬送される物品が一時的に載置される載置台300が複数備えられている。
【0079】
図3は、本発明の実施の形態の走行車システム100における機能的な構成を示す図である。
【0080】
なお、第二コントローラ122の機能構成は、第一コントローラ121と同様であるため、その図示および説明は省略する。また、複数の走行車200は、互いに共通する機能構成を有しているため、1台の走行車200についてのみ機能構成を図示する。
【0081】
図3に示すように、第一コントローラ121は、主要な機能構成として、レイアウトデータ保持部125と、要求受信部126と、レイアウト送信部127とを備える。
【0082】
レイアウトデータ保持部125は、レイアウトデータおよびそのバージョンを示すバージョン情報を保持する記憶装置である。
【0083】
レイアウトデータ保持部125に保持されているレイアウトデータは、例えば、経路のレイアウトが変更された場合などに、走行車システム100の管理者等により更新される。つまり、レイアウトデータ保持部125には、常に最新のバージョンのレイアウトデータおよびそのバージョンを示すバージョン情報が保持されている。
【0084】
また、第一コントローラ121が保持するレイアウトデータのバージョンと、第二コントローラ122が保持するレイアウトデータのバージョンとは、上述のように同期が取られている。そのため、第二コントローラ122が保持するレイアウトデータも、第一コントローラ121と同じく最新バージョンに維持される。
【0085】
要求受信部126は、走行車200から送信されるレイアウトデータの送信要求を受信する構成部である。
【0086】
レイアウト送信部127は、複数の走行車200それぞれに対して定期的にバージョン情報を送信し、かつ、要求受信部126により受信された送信要求に応じたレイアウトデータを送信する構成部である。
【0087】
また、図3に示すように、走行車200は、主要な機能構成として、要求送信部205と、レイアウト受信部210と、レイアウトデータ記憶部215と、比較部220と、更新部225とを備える。
【0088】
レイアウト受信部210は、当該走行車200の管轄コントローラである第一コントローラ121または第二コントローラ122から当該走行車200宛て送信されるバージョン情報、および、レイアウトデータを受信する構成部である。
【0089】
レイアウトデータ記憶部215は、レイアウト受信部210により受信されたレイアウトデータを記憶するための記憶装置である。
【0090】
比較部220は、レイアウト受信部210により受信されたバージョン情報に示されるバージョンと、レイアウトデータ記憶部215に記憶されているレイアウトデータのバージョンとの比較を行う構成部である。
【0091】
要求送信部205は、比較部220による比較の結果、バージョン情報に示されるバージョンと、レイアウトデータ記憶部215に記憶されているレイアウトデータのバージョンとが異なる場合、管轄コントローラである第一コントローラ121または第二コントローラ122に、そのバージョン情報に示されるバージョンのレイアウトデータの送信要求を送信する構成部である。
【0092】
更新部225は、レイアウト受信部210により受信されたレイアウトデータを用いて、レイアウトデータ記憶部215に記憶されているレイアウトデータを更新する構成部である。
【0093】
また、図3に示すように、一括更新用サーバ170は、主要な機能構成として、データ保持部171と、通信部172とを備える。
【0094】
データ保持部171は、レイアウトデータをバージョンごとに保持する記憶装置である。
【0095】
通信部172は、メンテナンスエリア内の走行車200と通信する処理部である。通信部172は、具体的には、メンテナンスエリア内の走行車200に当該走行車200が必要とする一括更新データを送信する。
【0096】
例えば、最新のレイアウトデータのバージョンが“3”である時点で、レイアウトデータのバージョンが“1”である走行車200がメンテナンスエリアに移動してきた場合を想定する。
【0097】
この場合、一括更新用サーバ170は、通信部172を介して当該走行車200と通信することにより、当該走行車200のレイアウトデータのバージョンが“1”であることを検知する。
【0098】
一括更新用サーバ170はさらに、通信部172を介して、バージョン“2”とバージョン“3”とのデータを含むレイアウトデータをデータ保持部171から読み出し、一括更新用データとして送信する。
【0099】
これにより当該走行車200は、自機が記憶しているレイアウトデータを最新のバージョン“3”まで更新できる。
【0100】
以上のように構成された実施の形態の走行車システム100の処理の流れについて、図4〜図6を用いて説明する。
【0101】
図4は、実施の形態における第一コントローラ121と走行車200との間の通信シーケンスの一例を示す図である。
【0102】
なお、図4では、第一コントローラ121がバージョン“2”のレイアウトデータを保持しており、走行車200のレイアウトデータのバージョンが“1”である場合を想定している。
【0103】
また、レイアウトデータのバージョンアップにおける最小単位が1である場合を想定している。つまり、バージョンの増分が常に1である場合を想定している。
【0104】
ここで、バージョン“2”のレイアウトデータとは、図4に示すように、バージョンアップにおける最小単位である1だけ前のバージョンである、バージョン“1”のレイアウトデータに対する差分のデータである。
【0105】
つまり、バージョン“1”のレイアウトデータを記憶している走行車200であれば、バージョン“2”のレイアウトデータを受信することで、自機のレイアウトデータを最新のバージョンである“2”に更新することができる。
【0106】
また、第一コントローラ121が保持しているレイアウトデータは、図4に示すように、n個の部分データ([D1]〜[Dn])に分割されている。
【0107】
このような想定の下における第一コントローラ121と走行車200との間の通信シーケンスを説明する。
【0108】
第一コントローラ121のレイアウト送信部127は、バージョン“2”を示すバージョン情報を走行車200へ送信する(S10)。
【0109】
第一エリア内を移動中の走行車200では、レイアウト受信部210が当該バージョン情報を受信し、比較部220へ転送する。
【0110】
比較部220は、当該バージョン情報に示される“2”と、レイアウトデータ記憶部215に記憶されているレイアウトデータのバージョン“1”とを比較する(S11)。
【0111】
比較部220は、この比較の結果、当該バージョン情報に示されるバージョンと、レイアウトデータ記憶部215に記憶されているレイアウトデータのバージョンとが異なるため、要求送信部205にその旨を通知する。
【0112】
要求送信部205は、比較部220からの通知を受け、バージョン“2”のレイアウトデータの送信を要求する送信要求を第一コントローラ121に送信する(S12)。
【0113】
なお、この送信要求の第一コントローラ121への送信は、例えば、第一コントローラ121との通信状況が良好な場合、当該走行車200が搬送指示待ちの状態で停止している場合、または、当該走行車200が負荷の高い情報処理を行っていない場合などに行われる。
【0114】
例えば、当該走行車200は、第一コントローラ121からの電波の強度が所定の閾値以上である場合に送信要求を送信する。または、例えば、当該走行車200は、自機が記憶しているレイアウトデータを参照することで、第一コントローラ121との距離が所定の距離以内の経路を走行中である場合、もしくは第一コントローラ121が見通せる位置を走行中である場合などに送信要求を送信する。
【0115】
要求送信部205が、バージョン“2”のレイアウトデータについての送信要求を送信する場合、具体的にはまず、1個目の部分データ[D1]を送信するよう要求する内容の送信要求を第一コントローラ121に送信する(S12)。
【0116】
第一コントローラ121の要求受信部126は、その送信要求を受信すると、レイアウト送信部127に[D1]を当該走行車200へ送信するよう指示する。
【0117】
レイアウト送信部127は、レイアウトデータ保持部125から部分データ[D1]を読み出し、当該走行車200宛てに送信する(S13)。
【0118】
その後、同様に、2個目の部分データ[D2]の送信を要求する送信要求が走行車200から第一コントローラ121へ送信される(S14)。また、その送信要求への応答として、部分データ[D2]が第一コントローラ121から当該走行車200へ送信される(S15)。
【0119】
その後、当該走行車200による送信要求の送信、および第一コントローラ121による当該送信要求への応答としての部分データの送信が必要なだけ繰り返される。
【0120】
そして最後の部分データであるn個目の部分データ[Dn]の送信を要求する送信要求が走行車200から第一コントローラ121へ送信され(S20)、その送信要求への応答として、部分データ[Dn]が第一コントローラ121から当該走行車200へ送信される(S21)。
【0121】
また、このとき、部分データ[Dn]は、[Dn]が当該レイアウトデータにおける最終データであることを示す最終データフラグとともに送信される。
【0122】
このようにして順次送信された[D1]〜[Dn]のそれぞれは、レイアウト受信部210により受信され、例えば、レイアウトデータ記憶部215内の所定の領域に、更新用データとして記憶される。
【0123】
バージョン“2”のレイアウトデータを構成する全ての部分データを受信した走行車200は、例えば、その後に第一エリア内の所定の目的地に到着し停止する(S22)。
【0124】
走行車200が当該目的地で停止すると、更新部225は、バージョン“2”のレイアウトデータ、つまり、[D1]〜[Dn]からなるレイアウトデータを用いて、レイアウトデータ記憶部215に記憶されているレイアウトデータを更新する(S23)。
【0125】
これによりレイアウトデータ記憶部215に記憶されているレイアウトデータのバージョンは“2”となり、その後の移動の際に参照される。
【0126】
レイアウトデータの更新が完了した走行車200は、その後、第一コントローラ121または第二コントローラ122から、バージョン情報を受信すると、自身のレイアウトデータのバージョンと比較する。
【0127】
そして、これらが同じであれば、当該バージョン情報を無視する。また、受信したバージョン情報が自身のレイアウトデータのバージョンより上位の値を示す場合は、レイアウトデータの送信を要求する送信要求を第一コントローラ121または第二コントローラ122に送信する。
【0128】
なお、走行車200は、レイアウトデータの更新が完了した後に、図4に示すように、第一コントローラ121に、更新の完了、つまりバージョンアップの完了を報告してもよい(S24)。この報告は、例えば、要求送信部205を介して行われる。
【0129】
この報告を受けた第一コントローラ121は、例えば、当該走行車200宛てに、バージョン“2”を示すバージョン情報を送信しないなどの制御を行ってもよい。
【0130】
このように、走行車200の要求送信部205は、複数の部分データのそれぞれに対応する送信要求を第一コントローラ121に順次送信する。
【0131】
また、第一コントローラ121の要求受信部126はこれら送信要求を順次受信し、レイアウト送信部127は、要求受信部126が送信要求を受信するごとに、当該送信要求に対応する部分データを当該走行車200に送信する。
【0132】
走行車200のレイアウト受信部210は、このように送信される複数の部分データを順次受信することで当該バージョンのレイアウトデータを受信する。
【0133】
なお、走行車200は、いずれかの部分データを受信できなかった場合、再度、当該部分データについての送信要求を第一コントローラ121に送信する。
【0134】
例えば、要求送信部205が、部分データ[D2]についての送信要求を送信後、所定の期間が経過する前に、レイアウト受信部210が[D2]を受信しなかった場合、要求送信部205は、再度、[D2]についての送信要求を第一コントローラ121に送信する。
【0135】
つまり、第一コントローラ121は、受信した送信要求に対応する部分データを送信すればよい。
【0136】
そのため、第一コントローラ121は、例えば通信状況の悪化によりレイアウトデータの送受信が途中で途切れるような場合に備えて、レイアウトデータのどこまでを送信したかを記憶しておく必要はない。
【0137】
また、走行車200は、第一コントローラ121から送信される最終データフラグを受信することで、自機が必要とするバージョンのレイアウトデータの全てが受信できたか否かを確認できる。
【0138】
そのため、走行車200が、当該バージョンのレイアウトデータを構成する部分データがいくつ存在するかを予め知っておく必要がない。つまり、走行車200は、最終データフラグを受信するまで、次の部分データについての送信要求を繰り返し第一コントローラ121に送信すればよい。
【0139】
また、走行車200は、走行中にレイアウトデータを受信した場合であっても、停止して安定した状態で、受信したレイアウトデータを用いた更新処理を行う。そのため、移動に際して参照されるレイアウトデータが、走行車200の移動中に変更されることによる走行車の不安定さが排除される。
【0140】
なお、比較部220によるバージョンの比較(S11)において、例えば、第一コントローラ121から受信したバージョン情報に示されるバージョンが“3”であり、レイアウトデータ記憶部215に記憶されているレイアウトデータのバージョンが“1”である場合を想定する。
【0141】
この場合、これらバージョンの差は2であり、最小単位である1ではない。そのため、比較部220は、要求送信部205への通知は行わず、当該走行車200の走行動作を制御する制御部(図示せず)に、これらバージョンの差が最小単位ではない旨を通知する。
【0142】
通知を受けた制御部は、当該走行車200がメンテナンスエリアに移動するよう当該走行車200を制御する。
【0143】
当該走行車200は、メンテナンスエリアに移動し一括更新用サーバ170から一括更新用データを取得する。これにより、レイアウトデータ記憶部215に記憶されているレイアウトデータをバージョン“3”に更新することができる。
【0144】
このように、通常の更新より時間が必要である複数の単位にまたがる更新が行われる場合、走行車200をメンテナンスエリアに移動させることで、走行車システム100全体の稼働効率の低下を最小限に留めつつ、各走行車200のレイアウトデータの更新が適切に行われる。
【0145】
また、図4では、走行車200が、第一エリア内を走行中または第一エリア内で停止中であり、第一コントローラ121の管轄下にある場合の通信シーケンスを示している。しかし、走行車200が第二コントローラ122の管轄下にある場合も、当該走行車200と第二コントローラ122との間で同様の通信が行なわれる。
【0146】
また、図4を用いて、第一コントローラ121と、1台の走行車200との間の通信のシーケンスを説明したが、第一コントローラ121は、第一エリア内の複数の走行車200それぞれと図4に示す内容の通信を行なう。第二コントローラ122も同様に第二エリア内の複数の走行車200それぞれと図4に示す内容の通信を行なう。
【0147】
また、このようなレイアウトデータの更新のための通信の間に、走行車200が第一エリアと第二エリアとの境界を越える場合もある。
【0148】
このような場合であっても、当該走行車200は、必要なレイアウトデータの受信を完了させる必要がある。
【0149】
そのため、レイアウトデータの当該走行車200への送信を、第一コントローラ121と第二コントローラ122との間でどのように引き継ぐかが問題となる。
【0150】
そこで、レイアウトデータの更新のための通信の間に、走行車200が第一エリアと第二エリアとの境界を越える場合の通信シーケンスを、図5および図6を用いて説明する。
【0151】
図5は、走行車200が第一エリアと第二エリアとの境界を通過する際の管轄コントローラの変更を説明するための図である。
【0152】
図5に示すように、走行路140の第一エリアと第二エリアとの境界の近傍にバーコード160aとバーコード160bとが配置されている。なお、これらバーコード160aおよび160bは、実際には、走行車200が読み取れる位置に貼付されている。
【0153】
例えば、図5において、第一エリアから第二エリアに移動しようとしている走行車aは、まず、バーコード160aを読み取ると、第一コントローラ121に、第一コントローラ121の管轄から外れる旨の予告通知を行う。
【0154】
また、走行車aは、第二コントローラ122に、第二コントローラ122の管轄に入る旨の予告通知を行う。
【0155】
その後、走行車aが第二エリアに進入し、バーコード160bを読み取ると、第一コントローラ121に、第二コントローラ122の管轄に移った(または、第一コントローラ121の管轄から外れた)旨の通知を行う。
【0156】
また、走行車aは、第二コントローラ122に、第二コントローラ122の管轄に入った旨の通知を行う。
【0157】
走行車aは、第一コントローラ121および第二コントローラ122へ、例えばこのような通知を行う。これにより、第一コントローラ121は、走行車aが第一コントローラ121の管轄に入った旨の通知を受けるまで、走行車aにバージョン情報およびレイアウトデータの送信を行う必要がないことが分かる。
【0158】
また、第二コントローラ122は、走行車aが第一コントローラ121の管轄に入った旨の通知、または、走行車aが第二コントローラ122の管轄から外れた旨の通知を受けるまで、走行車aにバージョン情報の送信、および走行車aからの送信要求に応じたレイアウトデータの送信を行う必要があることが分かる。
【0159】
なお、この後に、走行車aが第二エリアから第一エリアに移動した場合は、逆に、第一コントローラ121および第二コントローラ122に対して、走行車aが第一コントローラ121の管轄に入った旨の通知等がなされる。
【0160】
図6は、走行車200が第一エリアから第二エリアに移動する場合の、走行車200と第一コントローラ121および第二コントローラ122との情報のやり取りを示す図である。
【0161】
走行車200(走行車a)が第一エリア内を走行中に、第一コントローラ121からバージョン情報が走行車aに送信される(S50)。
【0162】
走行車aの比較部220は、上述のようにバージョンの比較を行う(S51)。この比較の結果、当該バージョン情報に示されるバージョンと、走行車aが記憶しているレイアウトデータのバージョンとが異なる場合、要求送信部205は、1個目の部分データについての送信要求を、第一コントローラ121に送信する(S52)。
【0163】
第一コントローラ121は、この送信要求への応答として1個目の部分データを走行車aに送信する(S53)。
【0164】
その後、図5を用いて説明したように、走行車aが第二エリアへ進入すると、走行車aの管轄コントローラが第一コントローラ121から第二コントローラ122に変更される(S54)。
【0165】
走行車aは、1個目の部分データは受信済みであるため、2個目の部分データについての送信要求を、新たな管轄コントローラである第二コントローラ122に送信する(S55)。
【0166】
第二コントローラ122は、この送信要求に示される要求が2個目の部分データについてのものであることを確認すると、この送信要求への応答として2個目の部分データを走行車aに送信する(S56)。
【0167】
以降、走行車aは、最終データフラグを受信するまで第二コントローラ122に順次、送信要求を送信する。
【0168】
また、走行車aは、最終データフラグを受信する前に、第一エリアに戻った場合は、管轄コントローラである第一コントローラ121に、最終データフラグを受信するまで、順次、送信要求を送信することで更新に必要な部分データの全てを受信できる。
【0169】
このように、本実施の形態の走行車システム100において、第一コントローラ121および第二コントローラ122のそれぞれは、同一かつ最新のバージョンのレイアウトデータを保持している。
【0170】
また、走行車200は、管轄コントローラ(第一コントローラ121および第二コントローラ122のいずれか一方)から受信したバージョン情報に基づき、レイアウトデータの更新の必要ありと判断した場合、レイアウトデータの送信を要求する旨の送信要求を送信する。具体的には、当該送信の時点での管轄コントローラ宛てに送信要求が送信される。
【0171】
さらに、送信要求は、レイアウトデータを構成する部分データのそれぞれについて管轄コントローラに送信される。管轄コントローラは、送信要求ごとに、これら送信要求に対応する部分データを当該走行車200に送信する。
【0172】
また、当該レイアウトデータを構成する全ての部分データの受信が完了する前に、管轄コントローラが変更になった場合であっても、当該走行車200は、これら全ての部分データの受信を完結させることができる。
【0173】
具体的には、当該走行車200は、変更後の管轄コントローラである第一コントローラ121または第二コントローラ122に対し、その時点で必要な部分データについての送信要求を送信する。
【0174】
また、管轄コントローラである第一コントローラ121または第二コントローラ122は、その送信要求に示される部分データを当該走行車200に送信する。
【0175】
このように、本実施の形態の走行車システム100は、予め定められた経路(走行路140)と当該経路を走行する走行車200とを備える走行車システム100であって、安全かつ迅速に走行車200のレイアウトデータの更新を行うことができる走行車システム100である。
【0176】
なお、本実施の形態では、メンテナンスエリアには一括更新用サーバ170が備えられているとした。しかし、メンテナンスエリアは、走行車200の物品の搬送のための経路外であって、第一コントローラ121および第二コントローラ122が送信するバージョン情報に示されるバージョンまでのレイアウトデータの更新に必要な一括更新用データを走行車200が取得可能なエリアであればよい。
【0177】
つまり、メンテナンスエリアに移動してきた走行車200に対し、例えばオペレータが、最新のバージョンまでの更新に必要な一括更新用データを入力してもよい。
【0178】
また、本実施の形態において、走行車システム100が備える複数の走行車200は、天井走行車であるとした。
【0179】
しかしながら、走行車システム100は、他の種類の走行車を複数備えこれら走行車に効率よくレイアウトデータを更新させるシステムとして実現することもできる。
【0180】
例えば、走行車システム100が、倉庫または工場等の内部で床上を走行し物品の搬送を行う無人搬送車を、第一コントローラ121および第二コントローラ122から送信されるレイアウトデータを受信する走行車として備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明の走行車システムでは、安全かつ迅速な走行車のレイアウトデータの更新が実現されるため、複数の走行車を用いて様々な物品を所定の領域内で搬送するシステムとして利用できる。特に、レイアウトデータの更新の頻度が高い工場内における走行車システム等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0182】
【図1】本発明の実施の形態の走行車システムのハードウェア構成の概要を示す図である。
【図2】実施の形態における走行車の外観を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態の走行車システムの機能的な構成を示す図である。
【図4】実施の形態における第一コントローラと走行車との間の通信シーケンスの一例を示す図である。
【図5】実施の形態における走行車が第一エリアと第二エリアとの境界を通過する際の、管轄コントローラの変更を説明するための図である。
【図6】実施の形態における走行車が第一エリアから第二エリアに移動する場合の、走行車と第一コントローラおよび第二コントローラとの情報のやり取りを示す図である。
【符号の説明】
【0183】
100 走行車システム
121 第一コントローラ
122 第二コントローラ
125 レイアウトデータ保持部
126 要求受信部
127 レイアウト送信部
140 走行路
150 移載ポート
160、160a、160b バーコード
170 一括更新用サーバ
171 データ保持部
172 通信部
200 走行車
205 要求送信部
210 レイアウト受信部
215 レイアウトデータ記憶部
220 比較部
225 更新部
240 物品保持部
300 載置台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定められた経路と、前記経路のレイアウトを示すレイアウトデータを参照することで前記経路を移動する走行車と、前記走行車と通信可能なコントローラとを備える走行車システムであって、
前記コントローラは、
前記走行車から送信されるレイアウトデータの送信要求を受信する要求受信部と、
前記走行車に対して定期的にレイアウトデータのバージョンを示すバージョン情報を送信し、かつ、前記要求受信部により受信された送信要求に応じたレイアウトデータを前記走行車に送信するレイアウト送信部とを有し、
前記走行車は、
前記コントローラから送信されるバージョン情報、および、前記コントローラから送信されるレイアウトデータを受信するレイアウト受信部と、
前記レイアウト受信部により受信されたレイアウトデータを記憶するためのレイアウトデータ記憶部と、
前記レイアウト受信部により受信されたバージョン情報に示されるバージョンと、前記レイアウトデータ記憶部に記憶されているレイアウトデータのバージョンとの比較を行う比較部と、
前記比較部による比較の結果、前記バージョン情報に示されるバージョンと、前記レイアウトデータのバージョンとが異なる場合、前記バージョン情報に示されるバージョンのレイアウトデータの送信要求を前記コントローラに送信する要求送信部とを有する
走行車システム。
【請求項2】
前記レイアウト送信部が送信するレイアウトデータは複数の部分データから構成されており、
前記要求送信部は、複数の部分データのそれぞれに対応する送信要求を前記コントローラに順次送信し、
前記要求受信部は前記要求送信部から送信される送信要求を順次受信し、
前記レイアウト送信部は、前記要求受信部が前記送信要求を受信するごとに、受信した送信要求に対応する部分データを前記走行車に送信し、
前記レイアウト受信部は、前記レイアウト送信部により送信される複数の部分データを順次受信することで前記レイアウトデータを受信する
請求項1記載の走行車システム。
【請求項3】
前記走行車システムは、前記経路上の互いに異なるエリアを担当する少なくとも2つの前記コントローラを備え、少なくとも2つの前記コントローラの一方は第一エリアを担当する第一コントローラであり、他方は第二エリアを担当する第二コントローラであり、
前記第一コントローラおよび前記第二コントローラのそれぞれは、同一のバージョンのレイアウトデータを保持しており、
前記要求送信部は、前記走行車が前記第一エリアに存在する場合、前記第一コントローラに前記送信要求を送信し、前記走行車が前記第二エリアに存在する場合、前記第二コントローラに前記送信要求を送信し、
前記第一コントローラのレイアウト送信部は、前記第一コントローラの要求受信部が受信した送信要求に対応する部分データを前記走行車に送信し、
前記第二コントローラのレイアウト送信部は、前記第二コントローラの要求受信部が受信した送信要求に対応する部分データを前記走行車に送信する
請求項2記載の走行車システム。
【請求項4】
前記走行車はさらに、前記走行車が移動する際に参照するレイアウトデータを前記レイアウト受信部により受信されたレイアウトデータを用いて更新する更新部を有し、
前記レイアウト受信部は、前記走行車が前記経路を走行中に前記レイアウトデータを受信可能であり、
前記更新部は、前記走行車が停止中に前記更新を行う
請求項1〜3のいずれか1項に記載の走行車システム。
【請求項5】
前記コントローラが前記走行車に送信するレイアウトデータは、当該レイアウトデータのバージョンよりも、バージョンアップにおける最小単位分だけ前のバージョンのレイアウトデータに対する差分のデータであり、
前記経路には、前記走行車のメンテナンスを行うためのメンテナンスエリアに至る経路が接続されており、
前記要求送信部は、前記比較部による比較の結果、前記バージョン情報に示されるバージョンと前記レイアウトデータ記憶部に記憶されているレイアウトデータのバージョンとの差が前記最小単位である場合にのみ前記送信要求を送信し、
前記走行車は、前記比較部による比較の結果、前記バージョン情報に示されるバージョンと前記レイアウトデータのバージョンとの差が前記最小単位ではない場合、前記メンテナンスエリア内に移動する
請求項1〜4のいずれか1項に記載の走行車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−143665(P2010−143665A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320143(P2008−320143)
【出願日】平成20年12月16日(2008.12.16)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】