説明

走行車

【課題】複数のコントローラのそれぞれから制御可能な走行車であって、安全性がより向上された走行車を提供すること。
【解決手段】地上コントローラ100および手動コントローラ140のそれぞれからの指示信号に従って動作することのできるスタッカクレーン12であって、地上コントローラ100からの指示信号を受信する受信機152と、所定の操作がされることにより、スタッカクレーン12を手動コントローラ140からの指示信号に応じた動作が可能な状態にさせるキースイッチ154と、当該所定の操作がされた場合のキースイッチ154の機構的な変化に連動して、受信機152による地上コントローラ100からの指示信号の受信を機械的に遮断する遮断機構部156とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物の搬送を行う走行車に関し、特に、複数のコントローラのそれぞれから制御可能な走行車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の荷物を収納可能なラックと、荷物の搬送および荷物のラックに対する出し入れを行う走行車とを備える自動倉庫が存在する。このような走行車としては、例えばスタッカクレーンがある。
【0003】
スタッカクレーンは、例えば、自動倉庫内の所定の位置に固定された地上操作盤(地上コントローラ)、および、スタッカクレーンの台車上の制御盤に接続された操作端末(手動コントローラ)の双方から制御可能である。
【0004】
このようなスタッカクレーンの制御において、安全性の観点から、地上コントローラおよび手動コントローラのいずれか一方のみからの制御を有効とするように、インターロックが採用されている。
【0005】
具体的には、地上コントローラは、地上コントローラおよび手動コントローラ(“地上”および“機体”)の一方から他方への切り換えのための切換スイッチを有している。また、スタッカクレーンに配置された制御盤は、手動コントローラを有効にするためのキースイッチを有している。さらに、地上コントローラの切換スイッチのキーと、スタッカクレーンのキースイッチのキーとが共通化されている。
【0006】
また、地上コントローラの切換スイッチにキーが差し込まれて“地上”が選択されている場合、当該キーは切換スイッチから抜き取ることができず、“機体”が選択されることにより当該キーは切換スイッチから抜き取ることができる。
【0007】
つまり、地上コントローラの切換スイッチを“地上”から“機体”に切り換えることで当該キーを切換スイッチから抜き取ることができ、かつ、手動コントローラを有効にすることができる。
【0008】
このような、2つのコントローラのそれぞれから制御可能なスタッカクレーンの安全性を確保するための技術も開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平6−24529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで、上記従来の自動倉庫のように、地上コントローラの切換スイッチのキーと、手動コントローラを有効にするためのキーとを共通化することで、原則としては、地上コントローラと手動コントローラとは排他的な関係となる。つまり、スタッカクレーンの制御について地上コントローラと手動コントローラとの双方が有効とはならない。
【0011】
しかしながら、このような重要なキーは、紛失または破損等に備えて、予備のキーが用意されていることが一般的である。
【0012】
そのため、地上コントローラと手動コントローラの双方がともに有効である状態が発生する可能性がある。
【0013】
例えば、主たるキーを用いて、地上コントローラの切換スイッチを“機体”が選択された状態にし、当該キーを切換スイッチから抜き取って、スタッカクレーンのキースイッチに差し込んで回すことで手動コントローラを有効にした場合を想定する。
【0014】
この場合、予備のキーを用いて、地上コントローラの切換スイッチを“機体”から“地上”に切り換えることで、地上コントローラと手動コントローラの双方が、スタッカクレーンに対して有効な状態となる。
【0015】
もちろん、このような場合に備えて、例えばソフトウェアにより、地上コントローラと手動コントローラとのインターロックを図ることが一般に行われる。
【0016】
しかしながら、ソフトウェアによるインターロックが採用される場合、例えば予期せぬバグにより誤動作する可能性が存在する場合は、誤動作を防ぐような更なる対策が施されていた。
【0017】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、複数のコントローラのそれぞれから制御可能な走行車であって、安全性がより向上された走行車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る走行車は、第一コントローラおよび第二コントローラのそれぞれからの指示信号に従って動作することのできる走行車であって、前記第一コントローラからの指示信号を受信する受信機と、所定の操作がされることにより、前記走行車を、前記第二コントローラからの指示信号に応じた動作が可能な状態にさせる機械式スイッチと、前記所定の操作がされた場合の前記機械式スイッチの機構的な変化に連動して、前記受信機による前記第一コントローラからの指示信号の受信を機械的に遮断する遮断機構部とを備える。
【0019】
この構成によれば、機械式スイッチに対する所定の操作により、当該走行車の制御において第二コントローラが有効にされた場合、第一コントローラから送信される指示信号は機械的に遮断される。言い換えると、当該指示信号は、ソフトウェアに依存せずに物理的な構造の変化を利用して遮断される。
【0020】
つまり、第二コントローラが有効である期間では、第一コントローラからの指示信号を、当該走行車に確実に受信させないことができる。
【0021】
例えば、作業者が手動コントローラである第二コントローラで当該走行車を制御している場合における、地上側の第一コントローラによる当該走行車の自動運転の実行は確実に防止される。
【0022】
従って、本態様の走行車は、複数のコントローラのそれぞれから制御可能な走行車であって、安全性がより向上された走行車である。
【0023】
また、本発明の一態様に係る走行車において、前記機械式スイッチは、シリンダーを有し、前記所定の操作である、前記シリンダーにキーを差し込んで前記シリンダーを回転させる操作がされることにより、前記走行車を、前記第二コントローラからの指示信号に応じた動作が可能な状態にさせ、前記遮断機構部は、前記シリンダーが回転することにより、前記受信機による前記第一コントローラからの指示信号の受信を機械的に遮断し、前記キーは、前記第一コントローラが有する切換スイッチであって、前記走行車を、(a)前記第一コントローラからの指示信号に応じた動作が可能な状態、および(b)前記第二コントローラからの指示信号に応じた動作が可能な状態の一方から他方へ切り換える切換スイッチを操作するためのキーとしても用いられるとしてもよい。
【0024】
この構成によれば、2つのコントローラそれぞれのキーの共通化によるインターロックが実現されるとともに、キースイッチに対する一般的な操作により、受信機による第一コントローラからの指示信号の受信を、機械的に不可能とすることができる。つまり、容易な構成で、安全性がさらに向上された走行車を実現できる。
【0025】
また、本発明の一態様に係る走行車において、前記遮断機構部は、前記受信機への電力の供給を機械的に遮断することにより、前記受信機による前記第一コントローラからの指示信号の受信を機械的に遮断するとしてもよい。
【0026】
また、本発明の一態様に係る走行車において、前記遮断機構部は、前記第一コントローラから前記受信機への指示信号の伝送路を機械的に遮断することにより、前記受信機による前記第一コントローラからの指示信号の受信を機械的に遮断するとしてもよい。
【0027】
また、本発明の一態様に係る走行車において、前記受信機は、前記第一コントローラから無線による前記伝送路を介して送信される指示信号を受信し、前記遮断機構部は、前記機械式スイッチの機構的な変化に連動して移動または回動する遮蔽部材によって前記伝送路を遮断するとしてもよい。
【0028】
また、本発明の一態様に係る走行車において、前記受信機は、前記第一コントローラから無線による前記伝送路を介して送信される指示信号を受信し、前記遮断機構部は、前記機械式スイッチの機構的な変化に連動して、前記受信機を移動または回動させることで前記伝送路を遮断するとしてもよい。
【0029】
このように、受信機による第一コントローラからの指示信号の受信を機械的に遮断する手法としては、様々な手法が採用し得る。そのため、例えば走行車の構成および走行車の作業環境に応じて、最適な手法を採用することができる。
【0030】
また、本発明は、上記いずれかの態様に係る走行車が実行する特徴的な処理を含む走行車の制御方法として実現することもできる。また、走行車の制御方法に含まれる各処理をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現すること、および、そのプログラムが記録された記録媒体として実現することもできる。そして、そのプログラムをインターネット等の伝送媒体またはDVD等の記録媒体を介して配信することもできる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、複数のコントローラのそれぞれから制御可能な走行車であって、安全性がより向上された走行車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、実施の形態における自動倉庫の構成概要を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施の形態のスタッカクレーンについての制御系統を示す模式図である。
【図3】図3は、実施の形態のスタッカクレーンが備える、指示信号の機械的な遮断のための構成を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態の遮断機構部における、指示信号の機械的な遮断のための仕組みの第1の例を示す模式図である。
【図5】図5は、実施の形態の遮断機構部における、指示信号の機械的な遮断のための仕組みの第2の例を示す模式図である。
【図6】図6は、実施の形態の遮断機構部における、指示信号の機械的な遮断のための仕組みの第3の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施の形態における自動倉庫について、図面を参照しながら説明する。
【0034】
図1は、実施の形態における自動倉庫10の構成概要を示す斜視図である。
【0035】
実施の形態における自動倉庫10は、図1に示すように、スタッカクレーン12と、ラック50と、地上コントローラ100とを備える。
【0036】
スタッカクレーン12は、走行車の一例であり、昇降台15と、移載装置20と、操作制御部150とを有する。また、本実施の形態では、操作制御部150に手動コントローラ140が有線接続されている。なお、操作制御部150と手動コントローラ140とは無線接続されていてもよい。
【0037】
また、地上コントローラ100は第一コントローラの一例であり、手動コントローラ140は第二コントローラの一例である。
【0038】
スタッカクレーン12は、例えば、地上コントローラ100からの指示に従って動作することで、複数の荷物のそれぞれをラック50に自動で収納し、また、収納された複数の荷物のそれぞれを自動でラック50から搬出する。
【0039】
具体的には、スタッカクレーン12は、走行レール16上を移動し、移載装置20が備えられた昇降台15を昇降させる。また、移載装置20は、ラック50の任意の棚の前方でフォークを出退させる。これにより、ラック50と移載装置20との間で荷物を移載することができる。
【0040】
また、移載装置20は、荷物の入出庫の際の一時的な載置場所であるステーション55との間でも荷物の移載を行うことができる。これにより、スタッカクレーン12は、例えば、ラック50から取り込んだ荷物を、ステーション55に載置することができ、かつ、ステーション55から取り込んだ荷物を、ラック50に載置することができる。
【0041】
また、スタッカクレーン12は、例えば上記各種動作を、手動コントローラ140からの指示に応じて実行することもできる。
【0042】
つまり、スタッカクレーン12は、地上コントローラ100と手動コントローラ140のそれぞれから制御可能である。
【0043】
従って、例えば安全性の確保の観点から、地上コントローラ100および手動コントローラ140のいずれか一方のみが、スタッカクレーン12の制御について有効となるように、これらコントローラの排他的な切換が必要である。
【0044】
そこで、本実施の形態のスタッカクレーン12は、手動コントローラ140が有効な場合に、地上コントローラ100からの制御を確実に不可能とするための構成を有している。
【0045】
図2は、実施の形態のスタッカクレーン12についての制御系統を示す模式図である。
【0046】
図2に示すように、地上コントローラ100は、切換スイッチ110を有する。作業者は、切換スイッチ110のシリンダー112にキー130を差し込んで回すことで、“地上”および“機体”の一方から他方へ切り換えられる。
【0047】
切換スイッチ110が“地上”を選択した状態である場合、地上コントローラ100からの指示信号は、送信機120を介してスタッカクレーン12に送信される。
【0048】
地上コントローラ100から送信された指示信号は、スタッカクレーン12の操作制御部150が有する受信機152によって受信される。スタッカクレーン12は、受信された当該指示信号に示される指示(X軸方向への移動指示および荷物の移載指示など)に従って動作する。
【0049】
なお、送信機120と受信機152のそれぞれは、例えば光伝送装置によって実現される。また、送信機120と受信機152との間の通信のための伝送媒体について特に限定はなく、電波によって指示信号が伝送されてもよく、有線通信によって指示信号が伝送されてもよい。
【0050】
また、スタッカクレーン12の操作制御部150は、キースイッチ154を有する。キースイッチ154は、スタッカクレーン12を、手動コントローラ140からの指示信号に応じた動作が可能な状態にさせる機械式スイッチの一例である。
【0051】
簡単に言うと、キースイッチ154の操作によって、手動コントローラ140の“ON”および“OFF”が切り換えられる。
【0052】
具体的には、作業者は、地上コントローラ100の切換スイッチ110の操作にも用いられるキー130を、キースイッチ154に差し込んで“ON”の方向に回す。これにより、スタッカクレーン12は手動コントローラ140からの指示信号に応じた動作が可能な状態となる。
【0053】
なお、キー130は、地上コントローラ100の切換スイッチ110が“地上”にされている場合は、切換スイッチ110から抜き取ることはできず、切換スイッチ110が“機体”にされている場合にのみ、切換スイッチ110から抜き取ることができる。
【0054】
つまり、原則的には、作業者は、切換スイッチ110が“機体”にされている場合、つまり、地上コントローラ100が、スタッカクレーン12を制御できない状態の場合にのみ、キー130を用いて手動コントローラ140を有効とすることができる。
【0055】
すなわち、地上コントローラ100および手動コントローラ140それぞれの操作に用いられるキー130を共通化することによりインターロックが図られている。
【0056】
ここで、上述のように、キー130と同一のキー(予備キー)の存在は現実的には避けられず、かつ、ソフトウェアによるインターロックについては、誤動作の可能性を完全に排除することは困難である。
【0057】
そこで、本実施の形態のスタッカクレーン12は、手動コントローラ140が有効とされた場合に、地上コントローラ100からの指示信号を機械的に遮断する遮断機構部を有している。
【0058】
図3は、実施の形態のスタッカクレーン12が備える、指示信号の機械的な遮断のための構成を示す図である。
【0059】
図3に示すように、スタッカクレーン12の操作制御部150は、キースイッチ154および受信機152に加え、遮断機構部156を有する。
【0060】
遮断機構部156は、キースイッチ154に所定の操作がされた場合のキースイッチ154の機構的な変化に連動して、受信機152による地上コントローラ100からの指示信号の受信を機械的に遮断する。
【0061】
言い換えると、遮断機構部156は、ソフトウェアに依存することなく、受信機152による地上コントローラ100からの指示信号の受信を遮断する。
【0062】
具体的には、作業者は、キースイッチ154のシリンダー155にキー130を差し込んで“OFF”から“ON”に切り替える。これにより、スタッカクレーン12は、手動コントローラ140からの指示信号に応じた動作が可能な状態となる。つまり、手動コントローラ140が有効となる。
【0063】
また、遮断機構部156は、このときのキースイッチ154の機構的な変化、つまり、本実施の形態では、シリンダー155の回転に連動し、受信機152による地上コントローラ100からの指示信号の受信を機械的に遮断する。
【0064】
以下、遮断機構部156による、指示信号の機械的な遮断のための仕組みの各種の例を説明する。
【0065】
図4は、実施の形態の遮断機構部156における、指示信号の機械的な遮断のための仕組みの第1の例を示す模式図である。
【0066】
図4に示すように、遮断機構部156は、電力源と受信機152との間に配置されたリレー157を有する。
【0067】
図4の(a)に示すように、キースイッチ154が“OFF”の場合、シリンダー155の回転に連動してリレー157のスイッチが端子に接続されることで、リレー157は導通状態となる。これにより、受信機152に動作に必要な電力が供給される。
【0068】
つまり、キースイッチ154が“OFF”の場合、手動コントローラ140は有効ではない。すなわち、スタッカクレーン12は、地上コントローラ100からの指示信号に従って動作することに何ら問題がないため、遮断機構部156は、受信機152による地上コントローラ100からの指示信号の受信を遮断しない。
【0069】
また、図4の(b)に示すように、キースイッチ154が“ON”の場合、シリンダー155の回転に連動してリレー157のスイッチが端子から外れることで、リレー157は非導通状態となる。これにより、受信機152への電力の供給は停止される。つまり、受信機152は指示信号の受信が不可能な状態となる。
【0070】
このように、遮断機構部156は、キースイッチ154の機構的な変化に連動してスイッチを開閉するリレー157を利用して、受信機152による地上コントローラ100からの指示信号の受信を機械的に遮断することができる。
【0071】
また、遮断機構部156は、地上コントローラ100から受信機152への指示信号の伝送路を機械的に遮断することで、受信機152による指示信号の受信を機械的に遮断することもできる。
【0072】
図5は、実施の形態の遮断機構部156における、指示信号の機械的な遮断のための仕組みの第2の例を示す図である。
【0073】
図5に示すように、遮断機構部156は遮蔽部材158と連結部材159とを有する。遮蔽部材158は、地上コントローラ100からの指示信号を遮蔽することのできる部材である。指示信号が光によって伝送される場合、遮蔽部材158は例えば光透過性のない金属または樹脂で構成される。
【0074】
また、遮蔽部材158は、例えばシリンダー155の周縁部と連結部材159により連結されており、シリンダー155の回転に連動して移動する。なお、連結部材159は、例えば金属製または樹脂製のワイヤである。
【0075】
このような構成の遮断機構部156において、図5の(a)に示すように、キースイッチ154が“OFF”の場合、遮蔽部材158は、地上コントローラ100からの指示信号に干渉しない位置に存在する。これにより、受信機152は地上コントローラ100からの指示信号を受信することができる。
【0076】
また、図5の(b)に示すように、キースイッチ154が“ON”の場合、遮蔽部材158は、受信機152の信号受信部の前方の位置であって、地上コントローラ100からの指示信号を遮蔽する位置まで移動する。
【0077】
つまり、地上コントローラ100から受信機152への指示信号の伝送路が機械的に遮断される。その結果、受信機152による地上コントローラ100からの指示信号の受信は不可能となる。
【0078】
このように、遮断機構部156は、キースイッチ154の機構的な変化に連動して移動する遮蔽部材158を利用して、受信機152による地上コントローラ100からの指示信号の受信を機械的に遮断することができる。
【0079】
なお、同様の効果は、キースイッチ154の機構的な変化に連動して遮蔽部材158を回動させることでも得ることができる。
【0080】
図6は、実施の形態の遮断機構部156における、指示信号の機械的な遮断のための仕組みの第3の例を示す図である。
【0081】
図6に示すように、遮断機構部156は、キースイッチ154と受信機152とを連結する連結部材160を有する。連結部材160は、例えば金属製または樹脂製のワイヤである。
【0082】
また、連結部材160により、例えばシリンダー155の周縁部と、受信機152の端部とが連結されている。さらに、受信機152の連結部材160とは反対側の端部は、受信機152が回動可能なように軸支されている。
【0083】
このような構成の遮断機構部156において、図6の(a)に示すように、キースイッチ154が“OFF”の場合、受信機152は、地上コントローラ100からの指示信号を受信可能な角度に保持される。これにより、受信機152は地上コントローラ100からの指示信号を受信することができる。
【0084】
また、図6の(b)に示すように、キースイッチ154が“ON”の場合、受信機152は、地上コントローラ100からの指示信号を受信不可能な方向に向けられる。
【0085】
つまり、地上コントローラ100から受信機152への指示信号の伝送路が機械的に遮断される。その結果、受信機152による地上コントローラ100からの指示信号の受信は不可能となる。
【0086】
このような仕組みは、例えば、光学式無線などの、指示信号の伝送に用いられる伝送媒体の指向性が高い場合に採用される。
【0087】
このように、遮断機構部156は、キースイッチ154の機構的な変化に連動して受信機152を回動させることで、受信機152による地上コントローラ100からの指示信号の受信を機械的に遮断することができる。
【0088】
なお、同様の効果は、キースイッチ154の機構的な変化に連動して受信機152を移動させることでも得ることができる。
【0089】
以上、図4〜図6を用いて、遮断機構部156が採用し得る、指示信号の受信の機械的な遮断のための各種の仕組みを説明した。
【0090】
このように、遮断機構部156は、キースイッチ154が“ON”の場合、つまり、手動コントローラ140が有効である場合、受信機152による地上コントローラ100からの指示信号の受信を機械的に遮断する。
【0091】
これにより、仮に、予備キーで地上コントローラ100の切換スイッチ110が“地上”に切り替えられ、その結果、地上コントローラ100から何らかの指示信号が送信された場合であっても、スタッカクレーン12は当該指示信号を受信することができない。そのため、スタッカクレーン12が、地上コントローラ100と手動コントローラ140の双方から同時期に制御されることが防止される。
【0092】
なお、図4〜図6に示される各種の仕組みは例示であり、遮断機構部156は、他の仕組みを利用して、受信機152による指示信号の受信の機械的な遮断を実現することもできる。
【0093】
例えば、図5に示すような連結部材159を利用して、受信機152への電力供給線の接続部分の物理的な分離、および、再接続を行ってもよい。
【0094】
また、地上コントローラ100とスタッカクレーン12とが通信ケーブルを介した有線通信を行う場合を想定する。
【0095】
この場合、遮断機構部156は、例えば連結部材159を利用することで、キースイッチ154の機構的な変化に連動して通信ケーブルの接続部分の分離および再接続を行ってもよい。つまり、遮断機構部156は、通信ケーブルによって形成される指示信号の伝送路を機械的に遮断してもよい。
【0096】
また、図5および図6に示すような、遮蔽部材158および受信機152の移動または回動は、例えば、モータの駆動力によって実現されてもよい。
【0097】
例えば、遮蔽部材158にバネによる付勢力を与えることで、キースイッチ154が“OFF”の場合には、遮蔽部材158を、地上コントローラ100からの指示信号に干渉しない位置(図5の(a)参照)に維持させておく。
【0098】
さらに、キースイッチ154が“ON”にされた場合に、キースイッチ154のシリンダー155に接続された連結部材159によってモータのスイッチを“ON”にする。これにより、遮蔽部材158を図5の(b)に示す位置まで引き出す。その結果、受信機152による指示信号の受信は不可能となる。また、その後、キースイッチ154が“OFF”にされた場合、連結部材159によって当該モータのスイッチを“OFFにする。その結果、遮蔽部材158は付勢力によって図5の(a)に示す位置まで戻る。
【0099】
このような仕組みによっても、受信機152による指示信号の受信の機械的な遮断を実現することもできる。
【0100】
また、例えば、連結部材159および160は、金属製または樹脂製のワイヤでなくてもよい。連結部材159は、例えば、1以上のギアまたはローラで実現されてもよく、リンク機構を構成するアームおよびピン等で実現されてもよい。
【0101】
つまり、遮蔽部材158等の、受信機152による指示信号の受信の機械的な遮断を行うための要素を、キースイッチ154の機構的な変化に連動して移動または回動等させることができるのであれば、連結部材159の構造および素材等に限定はない。
【0102】
さらに、連結部材159は、スタッカクレーン12にとって必須ではない。例えば、遮蔽部材158がキースイッチ154のシリンダー155に直接連結されていてもよい。この場合であっても、キースイッチ154の機構的な変化に連動した、受信機152による指示信号の受信の遮断は可能である。
【0103】
以上説明したように、本実施の形態のスタッカクレーン12によれば、地上コントローラ100と手動コントローラ140のそれぞれから制御されることが可能である。また、手動コントローラ140から制御される場合には、地上コントローラ100からの指示信号の受信は機械的に遮断される。
【0104】
言い換えると、スタッカクレーン12は、手動コントローラ140が有効な期間は、ソフトウェアに依存することなく、地上コントローラ100からの指示信号の受信を遮断することができる。
【0105】
その結果、例えば、作業者が手動コントローラ140でスタッカクレーン12を制御している場合における、地上コントローラ100によるスタッカクレーン12の自動運転の実行は確実に防止される。
【0106】
このように、本実施の形態のスタッカクレーン12は、複数のコントローラのそれぞれから制御可能な走行車の一例であって、安全性がより向上された走行車の一例である。
【0107】
以上、本発明の走行車について、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0108】
例えば、図5に示す構成と図6に示す構成とを組み合わせてもよい。例えば、操作制御部150において遮蔽部材158を固定しておき、受信機152をキースイッチ154の機構的な変化に連動して移動させる。つまり、受信機152を遮蔽部材158に対して出退させることで、受信機152による指示信号の受信の可否を切り換える。
【0109】
こうすることでも、受信機152による指示信号の受信の機械的な遮断は実現される。
【0110】
また、地上コントローラ100からの指示信号の受信の機械的な遮断を実行する走行車は、スタッカクレーン12以外の種類の走行車であってもよい。例えば、ラック50の複数の段ごとに配置され、互いに独立して走行が可能な複数の搬送車のそれぞれが、遮断機構部156を有してもよい。
【0111】
また、例えば、倉庫の床面を無人で走行する無人搬送車(Automatic Guided Vehicle)が遮断機構部156を有してもよい。
【0112】
また、スタッカクレーン12が有する機械式スイッチは、キースイッチ154以外の種類であってもよい。例えば、遮断機構部156は、トグルスイッチの機構的な変化(レバーの角度の変化)に連動して、受信機152による地上コントローラ100からの指示信号の受信を機械的に遮断してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の走行車は、複数のコントローラのそれぞれから制御可能な走行車であって、安全性がより向上された走行車である。従って、工場および物流倉庫等で荷物の搬送を行う走行車等として有用である。
【符号の説明】
【0114】
10 自動倉庫
12 スタッカクレーン
15 昇降台
16 走行レール
20 移載装置
50 ラック
55 ステーション
100 地上コントローラ
110 切換スイッチ
112、155 シリンダー
120 送信機
130 キー
140 手動コントローラ
150 操作制御部
152 受信機
154 キースイッチ
156 遮断機構部
157 リレー
158 遮蔽部材
159、160 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一コントローラおよび第二コントローラのそれぞれからの指示信号に従って動作することのできる走行車であって、
前記第一コントローラからの指示信号を受信する受信機と、
所定の操作がされることにより、前記走行車を、前記第二コントローラからの指示信号に応じた動作が可能な状態にさせる機械式スイッチと、
前記所定の操作がされた場合の前記機械式スイッチの機構的な変化に連動して、前記受信機による前記第一コントローラからの指示信号の受信を機械的に遮断する遮断機構部と
を備える走行車。
【請求項2】
前記機械式スイッチは、シリンダーを有し、前記所定の操作である、前記シリンダーにキーを差し込んで前記シリンダーを回転させる操作がされることにより、前記走行車を、前記第二コントローラからの指示信号に応じた動作が可能な状態にさせ、
前記遮断機構部は、前記シリンダーが回転することにより、前記受信機による前記第一コントローラからの指示信号の受信を機械的に遮断し、
前記キーは、前記第一コントローラが有する切換スイッチであって、前記走行車を、(a)前記第一コントローラからの指示信号に応じた動作が可能な状態、および(b)前記第二コントローラからの指示信号に応じた動作が可能な状態の一方から他方へ切り換える切換スイッチを操作するためのキーとしても用いられる
請求項1記載の走行車。
【請求項3】
前記遮断機構部は、前記受信機への電力の供給を機械的に遮断することにより、前記受信機による前記第一コントローラからの指示信号の受信を機械的に遮断する
請求項1または2に記載の走行車。
【請求項4】
前記遮断機構部は、前記第一コントローラから前記受信機への指示信号の伝送路を機械的に遮断することにより、前記受信機による前記第一コントローラからの指示信号の受信を機械的に遮断する
請求項1または2に記載の走行車。
【請求項5】
前記受信機は、前記第一コントローラから無線による前記伝送路を介して送信される指示信号を受信し、
前記遮断機構部は、前記機械式スイッチの機構的な変化に連動して移動または回動する遮蔽部材によって前記伝送路を遮断する
請求項4記載の走行車。
【請求項6】
前記受信機は、前記第一コントローラから無線による前記伝送路を介して送信される指示信号を受信し、
前記遮断機構部は、前記機械式スイッチの機構的な変化に連動して、前記受信機を移動または回動させることで前記伝送路を遮断する
請求項4記載の走行車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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