説明

起泡性水中油型乳化物

【課題】 ホイップクリームに求められる必要特性のほとんどを備えており、特に起泡化した際の経時変化(モドリ・保型性・離水)、冷凍保存性を改良したコンパウンドクリームを提供すること。
【解決手段】 起泡性水中油型乳化物として、植物脂と乳脂の混合物、又は、植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物と、乳脂を油相中の主成分とするメジアン径が0.5μm〜2.9μmである水中油型乳化油脂組成物とを混合してなる起泡性水中油型乳化物を用いること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物脂と乳脂の混合物、又は、植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物と乳脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物とを混合してなる起泡性水中油型乳化油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、起泡性水中油型乳化油脂組成物であるフレッシュクリームは口あたり、口どけが良く、風味も非常に良好であるため、ホイップクリームなどに使用されている。しかし、フレッシュクリームは高価で年間を通じて品質の安定したものが得難く、起泡化するのに高度な技術を要し、更に起泡化した後も非常に不安定で造花性、作業性、冷凍保存性が悪いといった欠点がある。
【0003】
上記の欠点を改良したものとして、油相に植物脂及びバター、調整乳脂等を混合したもの、又は、乳脂の一部又は全量をフレッシュクリームで補った、いわゆるコンパウンドクリームや、油相中に植物脂以外の油脂を含まない水中油型乳化油脂組成物からなる純植物性のものがある。これらの物性を改良する方法として、乳化剤、有機酸塩、ガム類等の添加剤の使用が従来から実施されてきた。しかし、添加剤を使用することによって独特の異味が生じたり、フレッシュクリームを使用したコンパウンドクリームでは、コンパウンドクリーム中に異なる2種類の乳化物が存在することとなり、それぞれの乳化物の起泡化時間の違いや起泡化後の性質の違いにより、コンパウンドクリームとして起泡化した際に満足な物性を得られないといった問題があった。
【0004】
上記のようなコンパウンドクリームの欠点を改良するために、従来から製造プロセスや各種配合について様々な検討がなされてきた。例えば、混酸基トリグリセリドを主成分とする油脂を油相とする水中油型乳化油脂組成物を使用すること(特許文献1)、植物脂を油相中の主成分とした水中油型乳化油脂組成物とフレッシュクリーム又はフレッシュクリーム含有乳脂組成物の起泡化時間を同等にすることで改良しているものがある(特許文献2)が、コンパウンドクリーム中の、乳脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物のメジアン径のコントロールによって改良している例はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−276888号公報
【特許文献2】特開平11−56283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ホイップクリームに求められる必要特性のほとんどを備えており、特に起泡化した際の経時変化(モドリ・保型性・離水)、冷凍保存性を改良したコンパウンドクリームを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、フレッシュクリームを含むコンパウンドクリームにおいて、メジアン径を小さくしたフレッシュクリームを混合した場合、起泡化した際の経時変化(モドリ・保型性・離水)、冷凍保存性が改良されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の第一は、植物脂と乳脂の混合物、又は、植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物と、乳脂を油相中の主成分とするメジアン径が0.5μm〜2.9μmの水中油型乳化油脂組成物とを混合してなる起泡性水中油型乳化物に関する。好ましい実施態様は、乳脂を油相中の主成分とするメジアン径が0.5μm〜2.9μmの水中油型乳化油脂組成物がフレッシュクリーム由来である上記記載の起泡性水中油型乳化物に関する。より好ましくは、植物脂と乳脂の混合物、又は、植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物の起泡化時間と、乳脂を油相中の主成分とするメジアン径が0.5μm〜2.9μmの水中油型乳化油脂組成物の起泡化時間の差が60秒以内である、上記記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に従えば、ホイップクリームに求められる必要特性のほとんどを備えており、特にホイップした際の経時変化(モドリ・保型性・離水)、冷凍保存性を改良したコンパウンドクリームを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物とは、水中に油滴が分散したO/W型のエマルションであり、植物脂と乳脂の混合物、又は、植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物と、乳脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物とを混合してなるコンパウンドクリームであり、起泡性を有する。ここでコンパウンドクリームとは、油相に植物脂を含有する水中油型乳化油脂組成物と、油相に乳脂を含有する水中油型乳化油脂組成物又はフレッシュクリームを混合してなる水中油型乳化油脂組成物である。
【0011】
前記植物脂としては、食用の植物由来の油脂であれば特に限定されず、例えば、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ油種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、シア油、サル油、カカオ油、ヤシ油、パーム核油等が挙げられ、またそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂等も挙げられ、それらの内少なくとも1種以上使用できる。
【0012】
前記乳脂とは、バター、バターオイル、調整乳脂等が挙げられ、またそれらの硬化、分別、エステル交換等を施したもののことである。
【0013】
本発明における植物脂と乳脂の混合物は、前記植物脂と前記乳脂を溶解、混合して使用すればよい。
【0014】
本発明における植物脂と乳脂の混合物、又は、植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物は、該水中油型乳化油脂組成物の油相中に、植物脂と乳脂の混合物、又は、植物脂を50重量%以上含んでいればよい。
【0015】
前記油相中には、魚油、鯨油、牛脂、豚脂などの動物脂や、従来公知の、即ちグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤を含有することができる。
【0016】
一方、前記水相中には、必要に応じて水以外に乳成分、安定剤、有機酸塩、乳化剤などを含有することができる。油相と水相の重量比は、20/80〜60/40が好ましく、この範囲を外れると気泡性が低下する場合がある。
【0017】
前記乳成分は、特に限定されずに従来公知のものが使用でき、例えばチーズ、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、全脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、脱脂粉乳、全脂粉乳、バターミルクパウダー、クリームパウダー、ホエイパウダー、ミルクプロテインコンセントレート、乳脂肪球皮膜蛋白、乳糖、カゼインナトリウム等を目的に応じて選択し、少なくとも1種以上を使用することが出来る。
【0018】
前記安定剤は、特に限定されずに従来公知のものが使用でき、キサンタンガム、アラビアガム、カラギーナン、グアーガム、タマリンドガム、ローストビーンガム、ペクチン、澱粉、カルボキシメチルセルロース、結晶セルロース等を目的に応じて使用することが出来る。
【0019】
前記有機酸塩は、特に限定されずに従来公知のものが使用でき、メタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、クエン酸塩等を目的に応じて使用することが出来る。
【0020】
前記植物脂と乳脂の混合物、又は、前記植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物の量は、コンパウンドクリーム全体中10〜90重量%が好ましく、30〜70重量%がより好ましい。前記植物脂と乳脂の混合物、又は、前記植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物の量が10重量%よりも少なかったり、90重量%よりも多いと本発明の効果が得られない場合がある。
【0021】
本発明の乳脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物は、そのメジアン径が小さいほど本発明の効果を発揮するが、該メジアン径は0.5μm〜2.9μmが好ましく、2.0〜2.9μmがより好ましい。乳脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物の油相中には前記乳脂を50重量%以上含んでいればよく、乳脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物の量は、コンパウンドクリーム全体中10〜90重量%が好ましく、30〜70重量%がより好ましい。前記植物脂と乳脂の混合物、又は、前記植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物の量が10重量%よりも少なかったり、90重量%よりも多いと本発明の効果が得られない場合がある。
【0022】
メジアン径の調整は以下のようにすればよい。メジアン径が、2.6μm〜2.9μmの場合は、天然のフレッシュクリームやそれに添加物を添加したものをそのまま用いても良く、それらのメジアン径を小さくする方法としては、特に限定されず、例えば、高圧ホモジナイザー、TKホモミキサー(特殊機化工業(株))、ウルトラディスパーサー(ヒスコトロン((株)日音医理科器械製作所))、クレアミックス(エム・テクニック(株))、フィルミックス(プライミクス(株))、インライン型ミキサー(Silverson Machines,Inc)等の乳化・微細化機で処理する方法、噴射による物理的作用による方法、超音波による乳化方法、断続振とう法、コロイドミルによる乳化方法が挙げられ、これらの方法を単独又は複数を組み合わせて、所望のメジアン径が得られるまで繰り返し処理して使用することができる。
【0023】
本発明で言うメジアン径とは、レーザー解析/散乱式粒度分布測定装置LA−920((株)堀場製作所)で測定した、体積基準での積算分布曲線の50%に相当する粒子径のことである。
【0024】
前記乳脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物は、フレッシュクリーム由来であることが好ましい、即ちフレッシュクリームそのもの、或いはフレッシュクリームに蛋白、乳化剤、安定剤、香料等を加えたものである。ここでフレッシュクリームとは、生乳、または牛乳等から遠心分離して得られる、乳脂肪が18%以上のいわゆる生クリームのことである。
【0025】
本発明の起泡性水中油型乳化油脂組成物の製造方法は、特に限定はないが、以下に例示する。
【0026】
<植物脂と乳脂の混合物の作製>
加温して融解させた所定量の植物脂と所定量の乳脂を撹拌・混合するだけでよい。また、乳化剤、香料等を添加する場合は、混合する際の温度が、植物脂、乳脂、乳化剤、香料等が完全に溶解する温度であれば特に問題なく、例えば50℃〜80℃で混合できる。
【0027】
<植物脂と乳脂の混合物、又は、植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物の作製>
加温して融解した所定量の植物脂と乳脂の混合物、又は、植物脂に、乳化剤、香料等を添加し、完全に溶解させ、油相を作製する。この時の温度は植物脂と乳脂の混合物、又は、植物脂、乳化剤等が完全に溶解する温度であれば特に問題なく、例えば50℃〜80℃で作製できる。
【0028】
加温した水に乳成分、乳化剤、安定剤、有機酸塩等を添加し、十分攪拌して溶解し、水相を作製する。この時の温度は、乳化剤、安定剤、有機酸塩等が溶解できる温度であるならば特に問題なく、例えば50℃〜80℃で作製できる。
【0029】
上記のようにして作製した水相と油相を、予備乳化、殺菌、均質化、冷却の各工程を経て植物脂と乳脂の混合物、又は、植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物を作製する。以下に、各工程について詳細に説明する。
【0030】
予備乳化は、上記のようにして作製した水相に上記のようにして作製した油相を添加し、攪拌しながら行う。また、必要に応じてホモジナイザー、TKホモミキサー、ウルトラディスパーサー、クレアミックス、フィルミックス、インライン型ミキサー等の乳化機で処理することもできる。乳化機による処理を行う場合、例えばクレアミックスでは、周速1.57m/s以上で行い、好ましくは、周速15.7m/s以上で乳化すると良い。周速1.57m/s以下では、クレアミックスによる乳化効果が小さい場合があり、周速の上限としては、処理することによって起こる温度上昇が、風味劣化に影響を与えない範囲であれば特に問題なく、処理した後の温度が好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下であると良い。
【0031】
殺菌工程は、均質化工程の少なくとも前後何れかに行うが、殺菌処理の方法としては、例えば直接加熱殺菌(インジェクション、インフージョン式)、間接加熱殺菌(プレート式、チューブラー式、シェル&チューブ式、表面掻き取り式)、内部加熱殺菌(通電式、マイクロ波式、高周波式、遠赤外線式)過熱水蒸気殺菌、レトルト殺菌、紫外線殺菌、高圧殺菌、電解磁場殺菌、放射線殺菌、化学的殺菌など、種々の方法で行うことができ、またそれらを組み合わせても良い。
【0032】
均質化工程での圧力は、増粘を起こさない範囲であれば特に問題ないが、2〜10MPaの範囲が好ましい。2MPaより小さいと均質化効果が十分に得られない場合があり、10MPaを超えると増粘する可能性が高くなる場合がある。また、均質化工程は、少なくとも殺菌工程の前及び/又は後に行えばよい。
【0033】
殺菌処理後に冷却を行うが、冷却の方法としては、蒸発冷却、間接冷却(チューブラー式、プレート式)等があり、これらを組み合わせて使用しても良い。冷却温度は水中油型乳化油脂組成物の状態が良好であれば特に限定せず、例えば0〜15℃で冷却できる。
【0034】
<乳脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物の作製>
天然のフレッシュクリームやそれに必要に応じて、乳化剤、安定剤、有機酸塩、香料等の添加物を添加したクリームのメジアン径を元のメジアン径よりも小さくする場合は、例えば以下のようにする。
【0035】
まず、加温したフレッシュクリームを乳化機、例えばクレアミックス(エム・テクニック(株)製)で処理し、その後、殺菌、均質化、冷却の各工程を経てメジアン径が0.5μm〜2.9μmである水中油型乳化油脂組成物を作製する。詳細は、以下の通りである。
【0036】
フレッシュクリームを加温する温度は、フレッシュクリーム中の油脂が融解する温度であれば特に問題なく、例えば40〜80℃で加温できる。
【0037】
クレアミックスの処理は周速1.57m/s以上で行い、周速15.7m/s以上であると好ましい。周速1.57m/s以下だと、クレアミックスによる乳化効果が小さく、後の均質化工程で増粘してしまう場合がある。周速の上限としては、処理することによって起こる温度上昇が、風味劣化に影響を与えない範囲であれば特に問題なく、処理した後の温度が好ましくは100℃以下、より好ましくは80℃以下である。また、クレアミックスによる処理を行わなくても、均質化工程で増粘が起こらないのであれば、クレアミックスによる処理は必ずしも必要ではない。
【0038】
殺菌工程は、均質化工程の少なくとも前後何れかに行うが、殺菌処理の方法としては、例えば直接加熱殺菌(インジェクション、インフージョン式)、間接加熱殺菌(プレート式、チューブラー式、シェル&チューブ式、表面掻き取り式)、内部加熱殺菌(通電式、マイクロ波式、高周波式、遠赤外線式)過熱水蒸気殺菌、レトルト殺菌、紫外線殺菌、高圧殺菌、電解磁場殺菌、放射線殺菌、化学的殺菌など、種々の方法で行うことができ、またそれらを組み合わせても良い。
【0039】
均質化工程での圧力は、増粘を起こさない範囲であれば特に問題ないが、2〜10MPaの範囲が好ましい。2MPaより小さいと均質化効果が十分に得られない場合があり、10MPaを超えると増粘する可能性が高くなる場合がある。また、均質化工程は、少なくとも殺菌工程の前後何れか又は両方に行えばよい。
【0040】
殺菌処理後に冷却を行うが、冷却の方法としては、蒸発冷却、間接冷却(チューブラー式、プレート式)などがあり、これらを組み合わせて使用しても良い。冷却温度は水中油型乳化油脂組成物の状態が良好であれば特に限定せず、例えば0〜15℃で冷却できる。
【0041】
<起泡性水中油型乳化物の作製>
前記で得られた植物脂と乳脂の混合物、或いは、前記で得られた植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物と、前記で得られたメジアン径が0.5μm〜2.9μmの乳脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物を撹拌混合すれば、起泡性水中油型乳化物が得られる。
【0042】
本発明の起泡性水中油型乳化物は、用いた植物脂と乳脂の混合物、或いは、植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物の起泡化時間と、用いたメジアン径が0.5μm〜2.9μmの乳脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物の起泡化時間の差が60秒以内であることが好ましく、30秒以内がより好ましい。前記起泡化時間の差が60秒を越えると、本発明の効果が十分に得られない場合がある。ここで起泡化時間は、起泡化開始から起泡化終了までの時間のことであり、得られた起泡化物の造花性、見た目が良好な状態を起泡化終了とした。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0044】
<起泡化時間の測定>
起泡化時間とは20Qミキサー(関東混合機株式会社製「CS型20」)に実施例・比較例で得られた水中油型乳化油脂組成物を4Kg入れ、452rpmで攪拌を開始した時点を起泡化開始とし、得られた起泡化物を絞り袋に詰め、絞り出した時の造花性、見た目が良好な状態となった時を起泡化終了とした場合の、起泡化開始から起泡化終了までに要した時間のことである。
【0045】
<保型性評価>
実施例・比較例で得られた起泡性水中油型乳化物4Kgを、20Qミキサーで起泡化して起泡化物を得、該起泡化物を絞り袋に詰めて造花したものを、15℃で24時間放置し、目視でその形態の変化を評価した。その際の評価基準は、以下の通りであった。◎:全く型崩れがない、○:ほとんど型崩れがない、△:型崩れしている、×:原型を留めず大きく型崩れしている。
【0046】
<離水評価>
実施例・比較例で得られた起泡性水中油型乳化物4Kgを、20Qミキサーで起泡化して起泡化物を得、該起泡化物を絞り袋に詰めて造花したものを、15℃で24時間放置し、目視で離水の度合いを評価した。その際の評価基準は、以下の通りであった。◎:全く離水が見られない、○:ほとんど離水が見られない、△:離水している、×:かなり離水している。
【0047】
<モドリ評価>
実施例・比較例で得られた起泡性水中油型乳化物4Kgを、20Qミキサーで起泡化して起泡化物を得、該起泡化物をボールに入れ、5℃で24時間放置し、目視でそのモドリ具合を評価した。その際の評価基準は、以下の通りであった。◎:全くモドリがない、○:ほとんどモドリがない、△:モドリが見られ、ヘラで均一に混ぜるとやや液状になっていた、×:かなりモドリが見られ、ヘラで均一に混ぜるとほとんど液状になっていた。
【0048】
<冷凍保存性評価>
実施例・比較例で得られた起泡性水中油型乳化物4Kgを、20Qミキサーで起泡化して起泡化物を得、スポンジケーキの片面に5mm厚程度塗布し、スポンジケーキの気泡化物を塗布した面に、新たな同じサイズのスポンジケーキを乗せ、側面と上面に気泡化物を5mm厚程度塗布し、更に気泡化物を絞り袋に詰め、スポンジケーキ上面に造花した。該ケーキをデコ箱に入れ、ビニール袋で密閉した後に、−20℃の冷凍庫で17日間保存した。冷凍保存後、15℃で一晩かけて解凍し、クリームの状態を目視にて評価した。その際の評価基準は、以下の通りであった。◎:全くヒビ割れがない、○:ほとんどヒビ割れがない、△:ヒビ割れがある、×:かなりヒビ割れがある。
【0049】
(実施例1)
パーム核油20.5重量部、よつ葉無塩バター(乳脂肪)5重量部、硬化パーム核油(上昇融点36℃)4.5重量部、ヤシ油3重量部、菜種油2重量部の混合油にレシチン0.18重量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB9)0.11重量部を添加し、65℃で溶解し油相部を作製した。一方、バターミルクパウダー6.25重量部、澱粉分解物2重量部、ホエー蛋白0.35重量部、結晶セルロース0.35重量部、乳清ミネラル0.1重量部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB12)0.12重量部を60℃の水55.5重量部に溶解して水相部を作製した。
【0050】
この油相部と水相部を20分間予備乳化後、クレアミックス(エム・テクニック(株)製)を用いて周速27.5m/sで処理してから、高圧ホモジナイザーを用いて2Mpaの圧力で処理した後に、UHT殺菌機を用いて142℃で4秒間殺菌処理し、その後、再び高圧ホモジナイザーを用いて6Mpaの圧力で処理し、その後冷却機で10℃まで冷却したものを容器に充填し、植物脂と乳脂の混合脂を油相中の主成分とする油滴を含む水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた水中油型乳化油脂組成物の気泡化時間は、4分19秒であった。
【0051】
メジアン径が3.5μmであるフレッシュクリームを60℃に加温し、クレアミックスを用いて周速31.4m/s、高圧ホモジナイザーを用いて4Mpaの圧力で処理した後に、UHT殺菌機を用いて142℃で4秒間殺菌処理後、再び高圧ホモジナイザー6Mpaの圧力で処理し、その後冷却機で5℃まで冷却したものを容器に充填し、メジアン径が2.1μmのフレッシュクリーム由来の乳脂を主成分とする水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた水中油型乳化油脂組成物の気泡化時間は、4分23秒であった。
【0052】
上記のようにして作製した、植物脂と乳脂の混合脂を油相中の主成分とする油滴を含む水中油型乳化油脂組成物とメジアン径が2.1μmのフレッシュクリーム由来の乳脂を主成分とする水中油型乳化油脂組成物を1:1(重量比)の割合で混合し、起泡性水中油型乳化物1を得た。
【0053】
起泡性水中油型乳化物1を起泡化し、起泡化物を得た。この起泡化物を造花したものを15℃で24時間放置したが、形崩れが少なく、離水もない良好な保型性を示した。また、この起泡化物を5℃で24時間放置したが、モドリが少なく、良好な状態を維持していた。該気泡化物を17日間冷凍保存し、15℃で一晩かけて解凍したが、ヒビ割れはほとんどなく良好な外観を維持していた。また、植物脂を油相中の主成分とする油滴を含む水中油型乳化油脂組成物とメジアン径が2.1μmのフレッシュクリーム由来の乳脂を主成分とする水中油型乳化油脂組成物を起泡化した際の両者の気泡化時間の差は上記のように4秒であった。それらの結果は、表1にまとめた。
【0054】
【表1】

【0055】
(実施例2)
メジアン径が3.5μmであるフレッシュクリームの高圧ホモジナイザーの圧力を0Mpaにした以外は、実施例1と同様にして、植物脂と乳脂の混合脂を油相中の主成分とする油滴を含む水中油型乳化油脂組成物と、メジアン径が2.9μmのフレッシュクリーム由来の乳脂を主成分とする水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた植物脂と乳脂の混合脂を油相中の主成分とする油滴を含む水中油型乳化油脂組成物と、メジアン径が2.9μmのフレッシュクリーム由来の乳脂を主成分とする水中油型乳化油脂組成物の起泡化時間はそれぞれ、4分19秒と4分3秒であった。
【0056】
上記のようにして作製した、植物脂と乳脂の混合脂を油相中の主成分とする油滴を含む水中油型乳化油脂組成物とメジアン径が2.9μmのフレッシュクリーム由来の乳脂を主成分とする水中油型乳化油脂組成物を1:1(重量比)の割合で混合し、起泡性水中油型乳化物2を得た。
【0057】
起泡性水中油型乳化物2を起泡化し、起泡化物を得た。この起泡化物を造花したものを15℃で24時間放置したが、起泡性水中油型乳化物1を起泡化した物には劣るけれども、形崩れが少なく、離水もない良好な保型性を示した。また、この起泡化物を5℃で24時間放置したが、モドリが少なく、良好な状態を維持していた。該気泡化物を17日間冷凍保存し、15℃で一晩かけて解凍すると、ややヒビ割れが発生し、さほど良好な外観を維持していなかった。また、植物脂を油相中の主成分とする油滴を含む水中油型乳化油脂組成物とメジアン径が2.9μmのフレッシュクリーム由来の乳脂を主成分とする水中油型乳化油脂組成物を気泡化した際の両者の起泡化時間の差は上記のように16秒であった。それらの結果は、表1にまとめた。
【0058】
(比較例1)
メジアン径が3.5μmであるフレッシュクリームのクレアミックスの処理を周速0m/s、高圧ホモジナイザーの圧力を0Mpaにした以外は、実施例1と同様にして、植物脂と乳脂の混合脂を油相中の主成分とする油滴を含む水中油型乳化油脂組成物と、メジアン径が3.5μmのフレッシュクリーム由来の乳脂を主成分とする水中油型乳化油脂組成物を得た。得られた植物脂と乳脂の混合脂を油相中の主成分とする油滴を含む水中油型乳化油脂組成物と、メジアン径が3.5μmのフレッシュクリーム由来の乳脂を主成分とする水中油型乳化油脂組成物の起泡化時間はそれぞれ、4分19秒と2分59秒であった。
【0059】
上記のようにして作製した、植物脂と乳脂の混合脂を油相中の主成分とする油滴を含む水中油型乳化物とメジアン径が3.5μmのフレッシュクリーム由来の乳脂を主成分とする水中油型乳化物を1:1(重量比)の割合で混合し、起泡性水中油型乳化物3を得た。
【0060】
起泡性水中油型乳化物3を起泡化し、起泡化物を得た。この起泡化物を造花したものを15℃で24時間放置すると、形崩れを起こし、離水が見られた。また、この起泡化物を5℃で24時間放置すると、激しいモドリが起き、ヘラで均一に混ぜるとほとんど液状になっていた。該気泡化物を17日間冷凍保存し、15℃で一晩かけて解凍すると、ヒビ割れが多く見られ、良好な外観を維持していなかった。また、植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物とメジアン径が3.5μmのフレッシュクリーム由来の乳脂を主成分とする水中油型乳化油脂組成物物を起泡化した際の両者の気泡化時間の差は上記のように1分20秒であった。それらの結果は、表1にまとめた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物脂と乳脂の混合物、又は、植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物と、乳脂を油相中の主成分とするメジアン径が0.5μm〜2.9μmの水中油型乳化油脂組成物とを混合してなる起泡性水中油型乳化物。
【請求項2】
乳脂を油相中の主成分とするメジアン径が0.5μm〜2.9μmの水中油型乳化油脂組成物がフレッシュクリーム由来である請求項1記載の起泡性水中油型乳化物。
【請求項3】
植物脂と乳脂の混合物、又は、植物脂を油相中の主成分とする水中油型乳化油脂組成物の起泡化時間と、乳脂を油相中の主成分とするメジアン径が0.5μm〜2.9μmの水中油型乳化油脂組成物の起泡化時間の差が60秒以内である請求項1又は2記載の起泡性水中油型乳化油脂組成物。

【公開番号】特開2009−278969(P2009−278969A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103056(P2009−103056)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】