説明

超分子材料の合成方法

【課題】超分子材料の合成方法と、この方法で得られた材料と、その使用。
【解決手段】(1)と(2)の段階を含む超分子の合成方法:(1)少なくとも一種のジカルボン酸またはこの二酸のエステルまたは塩化物を、このカルボン酸、エステルまたは酸塩化物の官能基と反応可能な反応性官能基と水素結合を介して互いに会合可能な会合型基との両方を有する少なくとも一種の改質剤化合物および少なくとも一種のポリアミンと反応させ、上記のカルボン酸、エステルまたは酸塩化物の官能基に対する上記反応性官能基のモル比を0.10〜0.50にし、上記反応は順次に行うか、同時に行い、(2)(1)の段階で得られたポリアミドをウレアとを反応させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超分子 (supermolecular) 材料の新規な合成方法と、この方法で得られる材料と、その使用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
「超分子」といわれる材料は非共有結合で結合された化合物、例えば水素結合、イオン結合および/または疎水結合によって結合された化合物から成る材料である。この材料の利点は上記の物理的結合に可逆性、特に温度の影響または選択溶剤の作用で上記の物理的結合に可逆性がある点にある。従って、塗布分野、例えばコーティング材料(塗料、化粧品)、接着剤、ホットメルト接着剤、粉末塗料、または熱可塑性樹脂またはアスファルトの添加剤として使用できる。
【0003】
さらにエラストマー特性を有するものもあり、そうした材料は従来のエラストマーと違って、所定温度以上で流体になり、塗布が容易で、特に金型への充填が容易になり、再利用も容易になるという利点がある。この材料は架橋ポリマーから成るのではなく、小さな分子から成り、エラストマーのように長期間、寸法安定性を示し、大きく変形した後も初期形状を回復することができる。この材料は漏れ止めシール、断熱材、防音材、タイヤ、ケーブル、シース、靴底、包装材料、パッチ(化粧または皮膚医薬用)、創傷包帯、フレキシブルホースクリップ、真空管、流体輸送用パイプおよびフレキシブルホースの製造で使用できる。
【0004】
超分子材料に関しては本出願人の他の出願で説明がされている。すなわち、特許文献1(国際特許第03/059964号公報)には下記の反応のいずれかによって得られる超分子材料が記載されている:
(1)尿素(ウレア)を、3つ以上の第1級または第2級アミン官能基を含むポリアミン(特に、ジエチルトリアミン、DETA、トリエチレンテトラアミン、TETA、または、テトラエチレンペンタミン、TEPA)と反応させて、会合型基(group associatifs)例えばイミダゾリドン官能基)を有する化合物を作り、続いてハロゲン化アルキルまたはポリ酸と反応させる、
(2)ウレアをポリアミドと反応させる。ポリアミド自体はポリアミン(特にDETAまたはTETA)をポリ酸、例えば脂肪酸またはポリアクリル酸のダイマーおよびトリマーと反応させて得られる。
この材料はエラストマー特性を示さない。
【0005】
特許文献2(国際特許第2006/087475号公報)にも自己回復性の超分子エラストマー材料が開示されている。この超分子エラストマー材料は少なくとも3つの会合型官能基、例えばイミダゾリドン基を含む分子を有する。この官能基は複数の物理的結合を形成でき、ウレアをポリアミンと三酸 (triacid) の反応生成物と反応させて得ることができる。変形例では三酸をウレアとポリアミン、例えばジエチルトリアミン(DETA)との縮合生成物と反応させて上記生成物を得ている。
【0006】
特許文献1(国際特許第03/059964号公報)および特許文献2(国際特許出願第2006/087475号公報)に従って得られる材料は三酸を含む。この三酸はアミド官能基によって中間接合および/または末端に共有結合され、ポリアミンとウレアとの反応生成物で構成され、従って、多数の会合型基すなわち水素結合を介して互いに会合可能なN−HおよびC=O官能基を含む。特に、P.Cordier達の文献、Nature,451,977(2008)には、特許文献2(国際特許出願第2006/087475号公報)に記載の方法で合成したエラストマーはアミドエチルイミダゾリドン末端およびジ(アミドエチル)ウレアおよびジアミドテトラエチル トリウレア接合を含むことが記載されている。これらの材料の合成方法から、上記の接合および末端の化学的性質は相互に依存し、2つの接合の種類に影響を与えずにアミドエチルイミダゾリドンの種類を変えることはできない、ということは理解できよう。
【0007】
しかし、これらの材料の機械特性範囲をより広くできるように、上記の末端および接合の数だけでなく、種類も変更できることが望ましい。
さらに、第1段階でポリアミンをポリ酸と反応させる上記の方法では、得られるポリアミドの重合度を調節するために過剰アミンを用いるが、過剰アミンはこの第1段階の最後に数回洗浄して除去する必要がある。さらに、この方法の第2段階で用いられる過剰ウレア、さらには、ウレアとポリアミドとの反応で出るアンモニアおよびウレアと残留ポリアミンとの二次反応で生じるイミダゾリドンを除去するための洗浄も必要になる。これらの洗浄はこの方法の経済性に悪影響を与え、望ましくないことは理解できよう。
【0008】
従って、従来法の欠点を持たない自己回復性のエラストマー材料を含めた、超分子材料の新規な合成方法を開発するのが有用である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際特許第03/059964号公報
【特許文献2】国際特許第2006/087475号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】P.Cordier達による文献、Nature,451,977(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者が多くの研究の結果、公知の方法の欠点がなく、特に洗浄段階がなく、溶剤を使用しない方法を開発した。さらに、本発明方法は純度が極めて高い反応物に頼る必要がない。従って、従来法より容易かつ安価に実施できる。
【0012】
さらに、本発明方法は用いる反応物の量および種類を変えることによって、得られる材料の構造、従って、その特性を容易に調節できる。
特に、熱可塑性エラストマーの特性を有する材料を得ることができる。例えば、自己回復(auto-cicatrisant)の熱可塑性エラストマーすなわち切断、破断または引掻き後に、破面を単に再度接触させるだけで自己修復でき、加熱や大きな圧力や化学反応を必要としないという特性を有するエラストマー材料を得ることができる。こうして修復された材料は依然としてエラストマー特性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の対象は、下記の(1)と(2)の段階を含む超分子の合成方法にある:
(1)少なくとも一種のジカルボン酸またはこの二酸のエステルまたは塩化物を、このカルボン酸、エステルまたは酸塩化物の官能基と反応可能な反応性官能基と水素結合を介して互いに会合可能な会合型基との両方を有する少なくとも一種の改質剤化合物および少なくとも一種のポリアミンと反応させ、上記のカルボン酸、エステルまたは酸塩化物の官能基に対する上記反応性官能基のモル比を0.10〜0.50にし、上記反応は順次に行うか、同時に行い、
(2)(1)の段階で得られたポリアミドをウレアとを反応させる。
【0014】
本発明の別の対象は本発明方法で得られる材料にある。
本明細書で「〜」は両限界値を含む。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明方法で用いる反応物を詳細に説明する。
ジカルボン酸
本発明方法の第1段階で用いるジカルボン酸は5〜100、好ましくは12〜100、さらに好ましくは24〜90の炭素原子を含むのが有利である。このジカルボン酸は直鎖アルキルジカルボン酸、例えばグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、ブラシル酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、タプス酸またはオクタデカンジオン酸、または分岐鎖のアルキルジカルボン酸、例えば3,3−ジメチル−グルタル酸にすることができる。
【0016】
さらに、二酸はモノカルボン酸またはトリカルボン酸のような他の化合物と混合されていてもよい。従って、脂肪酸のモノマー、ダイマーおよびトリマーとの混合物を使用できる。
【0017】
本発明では、ダイマー(互いに同一または異なる2つのモノマーのオリゴマー)および植物由来の脂肪酸のダイマーおよびトリマーの混合物を用いるのが好ましい。これらの化合物は下記のような不飽和脂肪酸のオリゴマー化によって得られる:ウンデシレン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、エイコセン酸、ドコセン酸〔これらはマツ油(トールオイル脂肪酸)、菜種油、コーン油、ヒマワリ油、大豆油、ブドウ種子油、アマニ油、ホホバ油で通常みられる〕および魚油でみられるエイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸。
【0018】
直鎖または環状のC18脂肪酸のダイマー、トリマーおよびモノマーを含む脂肪酸のオリゴマーの混合物を用いることができる。この混合物は主としてダイマーおよびトリマーから成り、数%(通常は5%以下)のモノマーを含む。この混合物は下記を含むのが好ましい:
【0019】
0.1〜40重量%、好ましくは0.1〜5重量%の互いに同一または異なる脂肪酸のモノマー、
0.1〜99重量%、好ましくは18〜85重量%の互いに同一または異なる脂肪酸のダイマー、
0.1〜90重量%、好ましくは5〜85重量%の互いに同一または異なる脂肪酸のトリマー。
【0020】
脂肪酸のダイマー/トリマー混合物の例としては下記のものが挙げられる(重量%):
Uniqema社の製品Pripol(登録商標)1017(75〜80%のダイマーと18〜22%のトリマーとの混合物、約1〜3%のモノマー脂肪酸を有する)、
Uniqema社の製品Pripol(登録商標)1013(95〜98%のダイマーと2〜4%のトリマーとの混合物、最大で0.2%のモノマー脂肪酸を有する)、
Uniqema社の製品Pripol(登録商標)1006(92〜98%のダイマーと最大で4%のトリマーとの混合物、最大で0.4%のモノマー脂肪酸を有する)、
Arizona Chemical社の製品Unidyme(登録商標)40(65%のダイマーと35%のトリマーとの混合物、1%以下のモノマー脂肪酸を有する)、
Arizona Chemical社の製品Unidyme(登録商標)14(94%のダイマーと、5%以下のトリマーと、その他の高級オリゴマーとの混合物、約1%のモノマー脂肪酸を有する)、
Cognis社の製品Empol(登録商標)1008(92%のダイマーと、3%の高級オリゴマー、主としてトリマーとの混合物、約5%のモノマー脂肪酸を有する)、
Cognis社の製品Empol(登録商標)1016(80%のダイマーと、4%のモノマーと、16%の脂肪酸のトリマーとの混合物、
Cognis社の製品Empol(登録商標)1018(81%のダイマーと、14%の高級オリゴマー、主としてトリマーとの混合物、約5%のモノマー脂肪酸を有する)
【0021】
製品Pripol(登録商標)、Unidyme(登録商標)、Empol(登録商標)およびRadiacid(登録商標)はC18脂肪酸のモノマーおよびC18の倍数に対応する脂肪酸のオリゴマーを含む。
本発明の一つの実施例では、ジカルボン酸の一部または全部を一つまたは複数の二酸の誘導体で置換できる。この二酸誘導体は酸エステルおよび酸塩化物の中から選択される。
エステルの例としては上記定義の脂肪酸のメチル、エチルまたはイソプロピルエステルが挙げられる。好ましい脂肪酸エステルは脂肪酸メチルエステル、特に上記定義の脂肪酸ダイマーまたは脂肪酸オリゴマーの混合物のメチルエステルである。脂肪酸塩化物の例としてはセバシン酸クロリドが挙げられる。
【0022】
改質剤化合物
本発明方法の第1段階では、ジカルボン酸またはその酸塩化物またはエステル誘導体を、会合型基と反応性官能基の両方を有する改質剤化合物と反応させる。この反応性官能基は、ジカルボン酸またはその誘導体のカルボン酸、エステルまたは酸塩化物官能基と反応可能で、カルボン酸(エステルまたは酸塩化物)官能基に対する反応性官能基のモル比は0.10〜0.50、好ましくは0.10〜030にする。
【0023】
「会合型基 (associative group)」とは水素結合、有利には1〜6個の水素結合を介して互いに会合できる基を意味する。本発明で使用可能な会合型基の例としてはイミダゾリドニル、トリアゾリル、トリアジニル、ビス−ウレイルおよびウレイド−ピリミジル基が挙げられる。イミダゾリドニル基が好ましい。
「反応性官能基」は特に第1級または第2級アミン官能基またはアルコール官能基の中から選択できる。本発明では、改質剤化合物は少なくとも一つの第1級アミン官能基を含むのが好ましい。
【0024】
改質剤化合物は下記式(B1)〜(B5)のいずれか一つに対応することができる:
【化1】

【0025】
(ここで、
Rは少なくとも一つの反応性官能基を表し、
R'は水素原子を表し、
R''、R1およびR2は任意の基を表し、
Aは酸素または硫黄原子または−NH基、好ましくは酸素原子を表す)
【0026】
改質剤化合物の好ましい例は2−アミノエチルイミダゾリドン(UDETA)、1−(2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル)イミダゾリドン(UTETA)、1−[(2−{2−[(2−アミノエチルアミノ)アミノ]エチル}アミノ)エチル]イミダゾリドン(UTEPA)、N−(6−アミノヘキシル)−N’−(6−メチル−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリミジン−2−イル)ウレア(UPy)、3−アミノ−1,2,4−トリアゾ−ルおよび4−アミノ−1,2,4−トリアゾ−ルである。本発明での使用にはUDETAが好ましい。
【0027】
これらの化合物は尿素(ウレア)をポリアミンと反応させて得られる。例えば、UDETA、UTETAおよびUTEPAはそれぞれウレアとジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラアミン(TETA)およびテトラエチレンペンタアミン(TEPA)を反応させて調製できる。
改質剤化合物とジカルボン酸との反応は例えば20〜200℃、好ましくは130〜170℃の温度で、1〜15時間、例えば3〜9時間、有利には撹拌下且つ不活性雰囲気下で行うことができる。
【0028】
ポリアミン
本発明方法の第1段階では、ジカルボン酸またはその酸塩化物またはエステル誘導体を少なくとも一種のポリアミンと反応させる。ジカルボン酸の酸官能基に対するアミン官能基とのモル比は例えば0.90〜0.50、特に0.90〜0.70にする。
ポリアミンは少なくとも2つのアミン官能基、好ましくは第1級アミン官能基を含む任意の化合物、好ましくは式(I)の化合物にすることができる:
【化2】

【0029】
(ここで、
1、R2、R3およびR4は独立して水素原子またはC1−C6アルキル基、例えばメチル基を表し、
m、n、pおよびqは独立して1〜3の整数を表し、
xは1〜6の整数を表し、
yは0〜2の整数を表す)
【0030】
式(I)では下記の少なくとも一つ、好ましくは全ての条件を満たすのが好ましい:
1、R2、R3およびR4が水素原子を表す、
m+nが2、3または6、好ましくは2である、
p+qが2、3または6、好ましくは2である、
xが2〜4の整数である、
yが0または1、好ましくは0である。
【0031】
式(I)のポリアミンの好ましい例はDETA(ジエチレントリアミン)、TETA(トリエチレンテトラアミン)、TEPA(テトラエチレンペンタミン)である。
【0032】
変形例では、本発明ポリアミンは3〜20の炭素原子を含む直鎖アルキレンジアミン、例えばカダベリン、プトレシン、ヘキサメチレンジアミンまたは1,12−ジアミノドデカンまたは環状アルキレンジアミン、例えばイソホロンジアミンにすることができる。
【0033】
ポリアミンとジカルボン酸またはその酸塩化物またはエステル誘導体との反応は例えば20〜200℃、好ましくは140〜180℃の温度で、1〜24時間、例えば6〜8時間、有利には撹拌下且つ不活性雰囲気下で行うことができる。
【0034】
本発明方法の第1段階では、ジカルボン酸またはその酸塩化物またはエステル誘導体を、改質剤化合物および上記ポリアミンの両方と反応させる。これらの2つの反応は同時にまたは順次に行うことができる。反応を順次に行う場合には最初に改質剤化合物との反応を行うのが好ましいが、逆の順序も可能である。さらに、これらの2つの反応は別々の反応器または同じ反応器で行うことができ、これらの反応の最初の反応の後に洗浄または精製段階を行う必要はない。
【0035】
第1段階の最後に得られた重縮合物は、融点(Mp)が大抵の場合30〜150℃で、ガラス転移温度(Tg)が大抵の場合−50℃〜20℃である半結晶である。
次いで、この第1段階で得られた生成物を第2段階でウレアと反応させる。上記生成物を事前に洗浄または精製する必要はない。反応は例えば30分間〜8時間、好ましくは1〜6時間で温度を130〜170℃、好ましくは130〜160℃の温度勾配を付けて不活性雰囲気下に有利には撹拌しながら行うことができる。ここでも反応は第1段階で用いた反応器(一つまたは複数)とは別の反応器でまたは同じ反応器で行うことができる。従って、本発明方法の全ての段階は反応物の逐次的添加によって同じ反応器で実施できるので、本発明方法は特に単純且つ経済的になるということは理解できよう。
【0036】
この段階でのウレアの役目は例えば下記の反応方法に従って追加の会合型基を作ることにある:
【化3】

【0037】
本発明方法では、上記反応物(ジカルボン酸またはその誘導体、改質剤化合物、ポリアミンおよびウレア)を溶融状態、粉砕状態または溶剤を用いて例えば水溶液の形で導入できるが、後で除去する必要のある溶剤に頼らなくてすむように、粉砕状態または溶融状態で導入するのが好ましい。
【0038】
本発明で得られる材料の機械特性はこれらの反応物の種類および比率手決まる。
本発明材料は種々の長さの分子の集合体から成り、アルコール可溶画分と不溶分とを含む。不溶分は材料の重量の0.1〜90%を占め、どんな溶媒にも溶けない。可溶分の数平均分子量は300〜300,000g/モル(GCで測定)であるのが好ましい。
本発明の一つの実施例では、一分子当たりの会合型末端基の平均数は少なくとも1.2、好ましくは少なくとも2、さらには少なくとも2.2である。
【0039】
本発明材料は、改質剤化合物の反応基(有利には第1級アミン基)と、ジカルボン酸の一部との反応およびポリアミンのアミン官能基とジカルボン酸の別の部分(好ましくは残部)との反応によって合成方法の第1段階で形成された架橋、好ましくはアミド架橋を含む分子を有するということは理解できよう。本発明材料はさらに、それを構成する分子に属する会合型基間の水素結合を含み、会合型基は改質剤化合物によって、また、ウレアとポリアミンとの反応によって供給される。温度上昇によって破壊されるこの可逆性水素結合の存在によって室温で再形成ができ、しかも、溶融状態で低粘度にすることができ、従って、本発明材料の塗布が容易になり、高分子量ではなくても室温での破断点伸びが高い材料にすることができる。
【0040】
さらに、本発明材料は分子間疎水性結合、有利にはジカルボン酸によって供給される側部アルキル基間の相互作用による分子間疎水性結合をさらに含むのが好ましい。このような基は特に脂肪酸ダイマーの形で存在する。
本発明材料は熱可塑性エラストマーの特性、すなわち、室温で単軸変形、例えば15分間で少なくとも20%変形でき、応力を除去したときにその初期寸法を回復でき、残留変形はその初期寸法の5%以下である、高温で変形、再変形ができる特性を有するのが有利である。
【0041】
さらに、本発明材料は切断後に自己回復でき、切断部の端部を再度接触させた後もエラストマー特性を有する。このエラストマー特性によって本発明材料は例えば破断前に少なくとも100%、さらには少なくとも200%引張変形することができ、応力を除去したときにその初期寸法を回復でき、残留変形はその初期寸法の10%以下である。
【0042】
本発明方法の最後には一般に軟らかい固体の形の材料が得られる。この材料を、例えばハンマーミル、ビードミル、ボールミル、粉砕ミルまたはナイフミル内で低温押出または粉砕し、次いで、例えば水で洗浄し、最後にホットプレス、カレンダー仕上げ、熱成形またはその他任意の方法で成形できる。
【0043】
本発明材料は漏れ止めシール、断熱材、防音材、タイヤ、ケーブル、シース、靴底、包装材料、コーティング材(塗料、フィルム、化粧品)、パッチ(化粧または皮膚医薬用)、活性物を捕捉および放出する他のシステム、創傷包帯、フレキシブルホースクリップ、真空管、流体輸送用パイプおよびフレキシブルホース、一般に、良好な耐破断性および/または耐疲労性を示す必要のある物品、レオロジー添加剤、アスファルト用添加剤またはホットメルト接着剤および接着剤用添加剤の製造で特に使用できる。
【0044】
本発明の別の対象は本発明材料の上記目的での使用にある。
これらの用途では、本発明材料をそのまますなわち単相で使用するか、一種以上の化合物、例えば石油画分、溶剤、無機および有機充填剤、可塑剤、粘着付与樹脂、酸化防止剤、顔料および/または着色剤と例えばエマルション、懸濁状態または溶液状態で多相混合物として使用できる。
【0045】
変形例では本発明材料は、通常生理学的に許容される(すなわち角質物質と相溶性のある)媒体を含む化粧組成物の製造で使用でき、化粧組成物は少なくとも一つのオイルおよび/または水および/またはアルコールを含む。
【0046】
上記化粧組成物は皮膚および/または皮膚付属器(例えばまつげ、爪)および/または唇の手入れおよび/またはメーキャップまたは髪の洗浄、調整および/または整髪で使用できる。
本発明は以下の実施例からより良く理解できよう。下記実施例は単に説明のためであり、本発明は下記実施例に限定されるものではなく、請求の範囲によって限定されるものである。
【実施例】
【0047】
実施例1
本発明材料の製造
第1段階:
下位段階(a)
底部弁、熱伝導流体式温度調節装置、磁気攪拌器、滴下漏斗、Dean-Stark装置およびガス入口を備えた40℃に予備加熱された直径60mm、体積500mlの反応器中に、76gのEmpol(登録商標)1016(酸価=194、モノマー率4%、ダイマー率80%、トリマー率16%)と、6.7gの精製したUDETA(52mmol)([HN2]/[COOH]比は0.2)とを導入する。浴の温度を500ml/分の窒素流下に280回転/分で撹拌しながら8時間かけて150℃に上げる。赤外線分光法によってこの段階ではδNH2信号の減少(1505cm-1)、Vc=o信号の増加(1648cm-1)、水蒸気の放出がわかる。水蒸気を全く放出しなくなったときに反応を停止する(この実施例では8時間後)。
この下位段階の後、反応生成物を50℃の反応器内で保存する。
【0048】
下位段階(b)
上記と同じ組合せおよび同じ条件(窒素、撹拌)を用いる。10.7g(104mmol)のジエチレントリアミン(純度98%)を滴下漏斗に入れる。
反応器本体を160℃に加熱し、アミンを合計3時間で徐々に、一滴ずつ断続的に添加する。160℃でさらに4時間反応を続ける。この第2段階では第1段階と同じタイプの変化が赤外線分光法で観測される。ここでも観測される水蒸気の放出の終了を反応停止の基準として用いる。
この段階の後に、底部弁を介して生成物を回収(86g回収)し、室温で保存する。多くの基材、特にガラス、金属、紙に対して強い接着性を有する粘弾性液体の形をしている。DSC(示差走査熱量測定)で測定したガラス転移温度は−11℃である。1%の変形を加える平行板式レオロジー測定によって1rad/秒の応力周期で下記の結果が得られた:
【表1】

【0049】
第2段階:
熱伝導流体による温度調節装置、磁気攪拌器およびガス入口を備え、80℃に予備加熱された、体積500mlの大きな反応器(直径100nm)中に、67gの上記生成物と、6.1gのウレアとを導入する。撹拌を50回転/分に調節し、温度を135℃にする。この温度で30分置いた後に、残りのプロセスを通じて、相当のアンモニアの放出がpH試験紙によって観測される。この段階を通じて赤外線分光法で反応をモニターすることによって、ウレア信号Vc=oの減少(1675cm-1)が見られる。
135℃の温度を2時間維持し、140℃で1時間、次いで、145℃で1時間維持する。この段階では、初期に濁っていた反応混合物が透明になることが注目される。1gの水を添加すると、溶液は再び濁る。この混合物をさらに約1時間かけて150℃にし、その間に、アンモニアの放出が減少することが注目される。
反応の停止の基準は生成物が硬化して撹拌器の軸に付着する時点である。このようになった時に、生成物を撹拌ロッドで回収する。
【0050】
成形:
得られたピースをビニール袋に入れてハンマーで低温粉砕する。1〜2mm寸法の断片を水に72時間浸漬して洗浄する。水中で洗浄される断片は互いに接着する傾向がある。予め水分を浸出させたサンプルを再び約5mm寸法のピースに細かく切断し、このピースを長方形の孔を開けた厚さ1.6mmの真ちゅう板から成る金型に入れ、粘着しない2枚の紙の間に入れる。第1プレスを120℃で10分間(10MPa加圧)行った後に、得られたフィルムは厚さの不規則性を示す。満足のいく外観が得られるまで材料を添加して再プレスすることによって、この厚さの不規則性を補正する。
【0051】
実施例2:
引張試験
3×1.2×60mmの寸法を有する長方形サンプルを真ん中で2つに切断し、5分間放置し、切断部の表面をもう一度接触させ、再び2時間放置した。
回復させたストリップの切断跡のそれぞれの側に4cm間隔で2つの印を付けて引張試験を行う。このストリップを破断させずに350%の変形まで伸ばす。
次いで、ストリップを室温で放置する。40分後、その初期寸法に戻ることが確認される。
この実施例から、本発明方法によってゴム弾性の特性を有し且つ切断された時に自己修復できる材料が単純かつ経済的条件で得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(1)と(2)の段階を含む超分子の合成方法:
(1)少なくとも一種のジカルボン酸またはこの二酸のエステルまたは塩化物を、このカルボン酸、エステルまたは酸塩化物の官能基と反応可能な反応性官能基と水素結合を介して互いに会合可能な会合型基との両方を有する少なくとも一種の改質剤化合物および少なくとも一種のポリアミンと反応させ、上記のカルボン酸、エステルまたは酸塩化物の官能基に対する上記反応性官能基のモル比を0.10〜0.50にし、上記反応は順次に行うか、同時に行い、
(2)(1)の段階で得られたポリアミドをウレアとを反応させる。
【請求項2】
上記ジカルボン酸の炭素原子数が5〜100、好ましくは12〜100、さらに好ましくは24〜90である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記ジカルボン酸が植物由来の脂肪酸のダイマーである請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ジカルボン酸がウンデシレン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、リシノール酸、エイコセン酸、ドコセン酸、エイコサペンタエン酸およびドコサヘキサエン酸の少なくとも一つの酸のダイマーである請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記ジカルボン酸が直鎖アルキルジカルボン酸、例えばグルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、ブラシル酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸、タプス酸またはオクタデカンジオン酸、または分岐鎖のアルキルジカルボン酸、例えば3,3−ジメチル−グルタル酸の中から選択される請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
上記エステルが請求項3〜5のいずれか一項に酸のメチルエステルである請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
上記改質剤化合物が下記の式(B1)〜(B5)のいずれか一つに対応する請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法:
【化1】

(ここで、
Rは少なくとも一つの反応性官能基を含む単位を表し、
R'は水素原子を表し、
R''、R1およびR2は任意の基を表し、
Aは酸素または硫黄原子または−NH基、好ましくは酸素原子を表す)
【請求項8】
上記改質剤化合物が2−アミノエチルイミダゾリドン(UDETA)、1−(2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル)イミダゾリドン(UTETA)、1−(2−[{2−[(2−アミノエチル)アミノ]エチル}アミノ)エチル]イミダゾリドン(UTEPA)、N−(6−アミノヘキシル)−N’−(6−メチル−4−オキソ−1,4−ジヒドロピリミジン−2−イル)ウレア(UPy)、3−アミノ−1,2,4−トリアゾ−ルおよび4−アミノ−1,2,4−トリアゾ−ルの中から選択される請求項7に記載の方法。
【請求項9】
カルボン酸、エステルまたは酸塩化物の官能基に対する上記反応性官能基のモル比が0.10〜0.30である請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
ポリアミンが下記の式(I)対応する請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法:
【化2】

(ここで、
1、R2、R3およびR4は独立して水素原子またはC1−C6アルキル基、例えばメチル基を表し、
m、n、pおよびqは独立して1〜3の整数を表し、
xは1〜6の整数を表し、
yは0〜2の整数を表す)
【請求項11】
式(I)において下記の条件の少なくとも一つ、好ましくは全てを満たす請求項10に記載の方法:
1、R2、R3およびR4が水素原子を表す、
m+nが2、3または6、好ましくは2である、
p+qが2、3または6、好ましくは2である、
xが2〜4の整数である、
yが0または1、好ましくは0である。
【請求項12】
ポリアミンがDETA(ジエチレントリアミン)、TETA(トリエチレンテトラミン)およびTEPA(テトラエチレンペンタミン)およびジヘキシレントリアミン、カダベリン、プトレシン、ヘキサメチレンジアミンまたは1,12−ジアミノドデカンまたは環状アルキレンジアミン、例えばイソホロンジアミンの中から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法で得られる材料。
【請求項14】
請求項13に記載の材料の、漏れ止めシール、断熱材、防音材、タイヤ、ケーブル、シース、靴底、包装材料、コーティング材、パッチ、創傷包帯、フレキシブルホースクリップ、真空管、流体輸送用パイプおよびフレキシブルホース、レオロジー添加剤、アスファルト用添加剤またはホットメルト接着剤および接着剤用添加剤の製造での使用。

【公表番号】特表2011−522909(P2011−522909A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507972(P2011−507972)
【出願日】平成21年5月5日(2009.5.5)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050825
【国際公開番号】WO2009/141558
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(505005522)アルケマ フランス (335)
【出願人】(595040744)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・シャンティフィク (88)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
【Fターム(参考)】