説明

超微粒マイクロカプセル及びその製造方法、並びにそれを用いた記録液

【目的】 内包物がポリウレアの薄膜で被覆されたマイクロカプセルであって、ナノオーダーの粒径を有する超微粒マイクロカプセル、及びその製造方法、並びにそれを用いた記録液を提供する。
【構成】 内包物がポリウレアの薄膜で被覆されたマイクロカプセルであって、50%累積頻度における粒径が10〜150nmである超微粒マイクロカプセル、及び、内包物又は/及びその原料、多価イソシアネート、及び25℃での水への溶解度が0.1g/100g以下の有機化合物を含有する油相を、臨界ミセル濃度未満の界面活性剤の存在下に水相中に微分散せしめた後、多価アミンを加えて、多価イソシアネートと多価アミンを界面重合させてポリウレアの薄膜を形成する前記超微粒マイクロカプセルの製造方法、並びに、前記超微粒マイクロカプセルを用いてなる記録液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超微粒マイクロカプセル、及びその製造方法、並びにそれを用いた記録液に関し、更に詳しくは、内包物がポリウレアの薄膜で被覆されたマイクロカプセルであって、ナノオーダーの粒径を有する超微粒マイクロカプセル、及びその製造方法、並びにそれを用いた記録液に関する。
する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内包物又は/及びその原料、多価イソシアネートを含有する油相を、界面活性剤の存在下に水相中に乳化分散せしめた後、ポリアミン又はポリオールを加えて、多価イソシアネートとポリアミン又はポリオールを界面重合させて、内包物又は/及びその原料がポリウレア又はポリウレタンの薄膜で被覆されたマイクロカプセルを製造する方法は公知であり、例えば、特許文献1には、保護コロイドとして変性ポリビニルアルコールを用いた平均粒径が0.1〜3μmのマイクロカプセルが、又、特許文献2には、保護コロイドとしてゼラチンを用いた平均粒径0.3〜12μmのマイクロカプセルが、それぞれ開示されている。しかしながら、従来のこれらマイクロカプセルの製造技術では、サブミクロンオーダーの超微粒マイクロカプセルを得るのは困難であり、近年のナノテクノロジー利用技術等におけるナノオーダーの微粒を必要とする分野への適用は困難であった。
【特許文献1】特開平6−312127号公報
【特許文献2】特開2003−275574号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前述の現状に鑑みてなされたものであり、内包物がポリウレアの薄膜で被覆されたマイクロカプセルであって、ナノオーダーの粒径を有する超微粒マイクロカプセル、及びその製造方法、並びにそれを用いた記録液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、マイクロカプセルの薄膜の界面重合法として、界面活性剤及び補助安定剤の併用による単量体の微分散エマルジョンを重合開始剤の存在下で重合する方法として知られている(例えば、P.L.Tang, E.D.Sudol, C.A.Silebi, M.S.EL-Aasser ;J.Appl.Polym.Sci.,第43巻, 1059-1066 頁(1991))、所謂”ミニエマルジョン重合”を適用することにより、前記目的を達成できることを見いだし、本発明に到達したものである。従来の乳化重合は、臨界ミセル濃度(CMC)以上の界面活性剤量の存在下で、数μ程度の粒径の単量体液滴の水性エマルジョンを水溶性重合開始剤を用い、界面活性剤ミセル内で重合が開始され、単量体液滴からの単量体の拡散による供給を受けて重合体微粒子が成長し形成されるものであった。これに対して、”ミニエマルジョン重合”では、微分散された単量体液滴内で単量体が重合し均一なナノオーダーの重合体微粒子が形成される。従って、本発明は、内包物がポリウレアの薄膜で被覆されたマイクロカプセルであって、50%累積頻度における粒径が10〜150nmである超微粒マイクロカプセル、及び、内包物又は/及びその原料、多価イソシアネート、及び25℃での水への溶解度が0.1g/100g以下の有機化合物を含有する油相を、界面活性剤の存在下に水相中に微分散せしめた後、多価アミンを加えて、多価イソシアネートと多価アミンを界面重合させてポリウレアの薄膜を形成する前記超微粒マイクロカプセルの製造方法、並びに、前記超微粒マイクロカプセルを用いてなる記録液、を要旨とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、内包物がポリウレアの薄膜で被覆されたマイクロカプセルであって、ナノオーダーの粒径を有する超微粒マイクロカプセル、及びその製造方法、並びにそれを用いた記録液を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の超微粒マイクロカプセルは、内包物がポリウレアの薄膜で被覆されたマイクロカプセルであって、50%累積頻度における粒径が10〜150nmのものであり、20〜100nmであるのが好ましい。該粒径が前記範囲未満であると、比表面積が大きくなって超微粒マイクロカプセルの安定性が低下することとなり、一方、前記範囲超過では、光の散乱により透明性が低下することとなる。
【0007】
ここで、50%累積頻度における粒径は、例えば、大塚電子社製「Photal PAR−III S」等の一般的な動的光散乱装置を用いて測定することができ、所謂「メジアン径」と称されているものである。
【0008】
又、本発明の超微粒マイクロカプセルは、前記の如き動的光散乱装置を用いて動的光散乱法により測定された数平均粒径Dnに対する重量平均粒径Dwの比(Dw/Dn)で表される粒径分布が、2未満であるのが好ましく、1.8以下であるのが更に好ましく、1.5以下であるのが特に好ましい。該粒径分布が前記範囲以上では、大粒径粒子の混在によって透明性が低下する傾向となる。
【0009】
本発明の超微粒マイクロカプセルにおいて、内包物を被覆する薄膜を構成するポリウレアは、多価イソシアナートと多価アミンとの反応により得られるポリマーである。その多価イソシアナートとしては、特に限定されるものではないが、マイクロカプセル薄膜形成時の相互の凝集を避けるべく反応性が高すぎない脂肪族或いは脂環式イソシアネートが好ましく、具体的には、例えば、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、及び、これらの3量体(イソシアヌレート又はビューレット)、プレポリマー等が挙げられる。又、その多価アミンとしても、特に限定されるものではないが、マイクロカプセル薄膜形成時の相互の凝集を避けるべく反応性が高すぎない脂肪族或いは脂環式アミンが好ましく、具体的には、例えば、エチレンジアミン、2−メチルペンタジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0010】
又、本発明の超微粒マイクロカプセルにおいて、内包物としては、マイクロカプセルの使用目的に応じて選択されるものであり、固体状でも液体状でもよい。具体的には、例えば、スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリル系樹脂等の親水性のラジカル重合性モノマーによるポリマー類、及び、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂等の疎水性の非ラジカル重合モノマーによるポリマー類等のポリマー類、並びに、コーン油、ナタネ油、大豆油、パーム油等の植物性油類、スクワラン等の動物性油類、灯油、石油留分物等の鉱物油類、染料、顔料、蛍光染料等の着色剤類、紫外線吸収剤、酸化防止剤、重合開始剤、離型剤、香料、薬剤等の添加剤類、及び、アルキルベンゼン系、アルキルナフタレン系、塩化メチレン、n−ヘキサン等の疎水性有機溶媒類等が挙げられ、これらは複数種が併用されていてもよく、又、例えば前記溶媒類等による溶液状で用いられていてもよい。これらの中で、本発明における内包物としては、ポリマー類と着色剤類とを含むのが好ましく、親水性のラジカル重合性モノマーによるポリマー類と着色剤類とを含むのが特に好ましい。尚、ポリマー類としては、その単量体を内包させた後、重合させることによって重合体としてもよいし、前記疎水性の非ラジカル重合性モノマーによるポリマー類等においては、前記疎水性有機溶媒類等に溶解させた溶液として内包させてもよい。
【0011】
そのラジカル重合性モノマーとしては、後述する重合によって重合体とされて着色剤等の結着材としての機能を有することとなるものであれば特に限定されるものではなく、従来より、例えば着色剤含有重合体のエマルジョン重合等に用いられている各種のモノマーを用いることができる。そのモノマーとしては、ビニル系モノマーが好ましく、具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のα−置換スチレン、m−メチルスチレン等の核置換スチレン、p−クロロスチレン等の核置換ハロゲン化スチレン等のビニル芳香族類、メチル(メタ)アクリレート等の不飽和カルボン酸エステル類、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等の不飽和カルボン酸誘導体類、N−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル化合物類、ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルシクロヘキサン等の多官能ビニル化合物類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート類等が挙げられる。
【0012】
又、その着色剤類としては、特に限定されるものではなく、各種の有機及び無機顔料、染料等を用いることができる。顔料としては、例えば、カーボンブラック、マグネタイト、アニリンブラック、ピグメントイエロー、ピグメントオレンジ、ピグメントレッド、ピグメントブルー、ピグメントグリーン等が挙げられる。又、染料とては、その種類は特に限定されず、油溶性染料、直接染料、酸性染料、塩基性染料、アゾイック染料、水性染料、反応染料等の中から適宜選択される。中で、本発明においては、特に、油相成分より水に溶解し難い油溶性染料が好ましく、例えば、ソルベントブルー、ソルベントレッド、ソルベントオレンジ、ソルベントグリーン等が挙げられる。
【0013】
又、筆記記録液に通常使用されている染料、例えば、クマリン系、ペリレン系、ジシアノビニル系、アゾ系(例えば、ピリドンアゾ系、ジスアゾ系、トリスアゾ系、ベンゼンアゾ系、ヘテロ環アゾ系等)、スチリル系、キノフタロン系、アミノピラゾール系、メチン系、ジシアノイミダゾール系、インドアニリン系、フタロシアニン系、アントラキノン系等も好適に使用し得る。これらの中では、アゾ系、スチリル系、フタロシアニン系、アントラキノン系が好ましい。そのスチリル系染料としては、例えば、特開昭59−78895号公報、特開昭60−31563号公報、特公平4−61794号公報、特公平4−61797号公報、特公平4−66716号公報、特開2000−247942号公報等に記載の下記一般式で表されるスチリル系染料が挙げられる。
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、R1 は、水素原子、又はシアノ基を示し、R2 は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、又はハロゲン原子を示し、nは0〜2の整数であり、R2 が複数存在する場合、各々のR2 は、同一であっても異なっていてもよい。R3 、R4 は各々独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいシクロアルキル基、又は置換基を有していてもよいアリール基を示す。)
【0016】
これらの染顔料等は、2種以上を混合して使用してもよい。尚、当該染顔料が後述する補助安定剤としても機能する場合には、後述する補助安定剤の使用を省略することができる。
【0017】
又、本発明の超微粒マイクロカプセルにおいて、ポリウレア薄膜は、目的に応じて厚みを調節できるが、0.17Å〜40nmの範囲であるのが好ましく、0.8Å〜25nmの範囲であるのが更に好ましい。膜厚が前記範囲未満であると、内包物の被覆が不完全なカプセルとなる傾向となり、一方、前記範囲超過では、内包物の特性が十分に発現しない傾向となる。
【0018】
又、マイクロカプセル中におけるポリウレア薄膜の占める割合は、1〜90重量%であるのが好ましく、5〜70重量%であるのが更に好ましい。ポリウレア薄膜の占める割合が前記範囲未満であると、内包物の被覆が不完全なカプセルとなる傾向となり、一方、前記範囲超過では、内包物の含有割合が小さくなりカプセル化の効率が劣る傾向となる。
【0019】
本発明の前記超微粒マイクロカプセルは、前記内包物又は/及びその原料、前記多価イソシアネート、及び25℃での水への溶解度が0.1g/100g以下の有機化合物を含有する油相を、界面活性剤の存在下に水相中に微分散せしめた後、前記多価アミンを加えて、多価イソシアネートと多価アミンを界面重合させてポリウレアの薄膜を形成することにより、製造することができる。
【0020】
その際、前記内包物又は/及びその原料、前記多価イソシアネート、及び25℃での水への溶解度が0.1g/100g以下の有機化合物を含有する油相と、界面活性剤を含有する水相とを、高剪断混合装置を用いて混合することにより、前記油相が油滴として前記水相中に微分散したO/W型エマルジョンを調製した後、前記多価アミンを加えて水相側に該アミンを含有させ、油滴界面で多価イソシアネートと多価アミンとを界面重合させることにより、ポリウレアのマイクロカプセル薄膜を形成させるのが好ましい。
【0021】
尚、ここで、油相に含有させる、25℃での水への溶解度が0.1g/100g以下の有機化合物は、所謂ミニエマルジョン化のための補助安定剤として経時的な油滴径の増大を抑制する目的で用いられるものであり、水への溶解度が0.05g/100g以下のものであるのが好ましく、0.01g/100g以下のものであるのが更に好ましい。これらの有機化合物としては、具体的には、例えば、(a)ヘキサデカン、スクアラン、シクロオクタン等の炭素数8〜30の直鎖、分岐鎖、或いは環状アルカン類、(b)ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の炭素数8〜30のアルキル(メタ)アクリレート類、(c)ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の炭素数8〜30のアルキルアルコール類、(d)ラウリルメルカプタン、セチルメルカプタン、ステアリルメルカプタン等の炭素数8〜30のアルキルチオール類、(e)ポリウレタン、ポリエステル、ポリスチレン等のポリマー類、(f)その他、例えば、長鎖脂肪族又は芳香族カルボン酸類、長鎖脂肪族又は芳香族カルボン酸エステル類、長鎖脂肪族又は芳香族アミン類、ケトン類、ハロゲン化アルカン類、シラン類、シロキサン類、イソシアネート類、過酸化ラウロイル等の長鎖の油溶性重合開始剤等、が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。こられの中で、本発明においては、炭素数が12〜20のアルカン類が好ましい。
【0022】
本発明において、油相における前記多価イソシアネートの含有量は、油相に対して1〜70重量%とするのが好ましく、3〜40重量%とするのが更に好ましい。多価イソシアネートの含有量が前記範囲未満では、形成されるポリウレア薄膜による内包物の被覆が不完全なカプセルとなる傾向となり、一方、前記範囲超過では、内包物の含有割合が小さくなりカプセル化の効率が劣る傾向となる。
【0023】
又、油相における前記有機化合物の含有量は、油相に対して0.1〜50重量%とするのが好ましい。有機化合物の含有量が前記範囲未満では、油滴の安定化効果が不十分となって粒径の均一性が劣る傾向となり、一方、前記範囲超過では、得られるマイクロカプセル内での該有機化合物の残存量が多くなって物性に悪影響を及ぼす傾向となる。
【0024】
又、水相に含有させる界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、アニオン性界面活性剤、及びノニオン性界面活性剤が好適に用いられ、それらは併用されてもよい。具体的には、アニオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩類、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム等の高級アルコール硫酸エステル塩類、アセチルアルコール硫酸エステルナトリウム等の脂肪族アルコール硫酸エステル塩類、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、ラウリル燐酸ナトリウム等のアルキル燐酸エステル塩類、アルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、アルキルフェニルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、アルキルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、アルキルフェニルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類等が挙げられる。
【0025】
又、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールステアリルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールデシルテトラデシルエーテル等のポリエチレングリコールポリプロピレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル類、モノステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸ポリエチレングリコール等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、モノミリスチン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル類、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノオレイン酸グリセリルのポリエチレンオキサイド付加物等のグリセリン脂肪酸エステルのポリエチレンオキサイド付加物類、モノパルミチン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物、トリオレイン酸ソルビタンのポリエチレンオキサイド付加物等のソルビタン脂肪酸エステルのポリエチレンオキサイド付加物類、モノラウリン酸ソルビットのポリエチレンオキサイド付加物等のソルビット脂肪酸エステルのポリエチレンオキサイド付加物類、ヒマシ油のポリエチレンオキサイド付加物類等が挙げられる。
【0026】
これらの中で、本発明においては、アニオン性界面活性剤が好ましく、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルベンゼンスルホン酸塩類が更に好ましく、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリルベンゼンスルホン酸ナトリウム等が特に好ましい。
【0027】
又、水相には更に、保護コロイド剤を併用してもよく、その保護コロイド剤としては、疎水コロイドの安定化に一般に用いられる水溶性高分子(親水コロイド)であれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ゼラチン等のタンパク質、等が挙げられる。
【0028】
水相における前記界面活性剤の含有量は、水相に対して0.001重量%以上とするのが好ましく、0.01重量%以上とするのが更に好ましく、又、50重量%以下とするのが好ましく、30重量%以下とするのが更に好ましい。又、保護コロイド剤を併用する場合の含有量は、水相に対して30重量%以下とするのが好ましく、10重量%以下とするのが更に好ましい。
【0029】
本発明の超微粒マイクロカプセルの製造方法において、前記油相と前記水相との混合割合は、水相と油相の合計重量に対して、油相を0.1重量%以上とするのが好ましく、5重量%以上とするのが更に好ましく、又、80重量%以下とするのが好ましく、50重量%以下とするのが更に好ましい。油相の割合が前記範囲未満では、両者の混合により得られるエマルジョン中の油滴濃度が低下してしまい製造効率に劣る傾向となり、一方、前記範囲超過では、エマルジョンとしての粘度が上昇し、油滴の微分散が困難になったり、マイクロカプセル形成時に凝集が起こり易い傾向となる。特に、超微粒マイクロカプセルを製造する場合には、水相に対して油相の混合割合を小さくすることで、生成するエマルジョン中の油滴の粒径を効果的に小さくすることができる。
【0030】
本発明の超微粒マイクロカプセルの製造方法において、前記油相と前記水相とを、高剪断混合装置を用いて混合して、前記油相が油滴として前記水相中に微分散したO/W型エマルジョンを調製するにおける高剪断混合装置としては、例えば、ピストンホモジナイザーやマイクロ流動化装置等の高圧ホモジナイザー、超音波分散装置等が用いられ、これらの2種以上を併用することもできる。これらの装置は、例えば、高圧ホモジナイザーとしては、A.P.V.ゴーリン社製「ゴーリンホモジナイザー」、マイクロフルーディックス社製「マイクロフルーダイザー」、ナノマイザー社製「ナノマイザー」等として、又、超音波分散装置としては、SMT社製「ウルトラソニックホモジナイザー UH−600」等として市販されている。
【0031】
尚、得られるO/W型エマルジョンの油滴径は、油相と水相の比率、使用する界面活性剤の量、並びに、高剪断混合装置としての高圧ホモジナイザーの圧力、超音波分散装置の出力、混合時間、等によって調節することができるが、エマルジョンの油滴径は最終的に得られるマイクロカプセルの粒径と直接関係するため、油滴径をマイクロカプセルとしての所望の粒径と同等のサイズにコントロールする必要があり、油滴径は10〜150nmとするのが好ましい。
【0032】
又、前記油相が油滴として前記水相中に微分散したO/W型エマルジョンを調製するにおける温度は、油相中の多価イソシアナートの反応を抑えるため、40℃以下とするのが好ましい。
【0033】
前述の如くして前記油相を前記水相中に微分散せしめた後、前記多価アミンを加えて、多価イソシアネートと多価アミンを界面重合させる。その際、多価アミンの添加は、全量を一括で添加するよりも、前記で得られたO/W型エマルジョンを攪拌しながら、連続的又は逐次的に添加して界面重合速度を制御するのが好ましい。その際の連続的又は逐次的添加の時間は、重合速度コントロールの面から、5分以上とするのが好ましく、10分以上とするのが更に好ましい。又、生産効率の面から、24時間以内とするのが好ましく、20時間以内とするのが更に好ましい。
【0034】
又、多価アミン添加時のO/W型エマルジョンの温度は、凝集を防ぐ上で、50℃以下とするのが好ましく、40℃以下とするのが更に好ましく、又、反応を円滑に進行させる上で、5℃以上とするのが好ましく、10℃以上とするのが更に好ましい。尚、多価アミンの添加を終えた後、界面重合反応の後半で反応温度を70℃程度まで上げてもよい。これらの反応は、通常、数時間をかけることで、目的のマイクロカプセルを得ることができる。
【0035】
本発明の超微粒マイクロカプセルの製造方法において、必要に応じて、内包物が、例えば、最終内包物としてのポリマーの単量体等の原料を含む場合には、引き続いて、例えば、O/W型エマルジョンの油滴中の単量体を、重合開始剤等の存在下に重合させて、最終内包物としてのポリマーとする。
【0036】
本発明の超微粒マイクロカプセルは、例えば、色素を内包させたマイクロカプセルに、記録液の媒体として、水や、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、N−メチル−ピロリドン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等の水溶性有機溶剤等を添加し、必要に応じて、更に、分散剤、帯電防止剤、消泡剤、酸化防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、界面活性剤、及び結着剤としての樹脂等を加え、記録液を調製するのに好適に用いられる。尚、その際、色素の堅牢性の改善等を目的として、紫外線吸収剤、酸化防止剤等の添加剤を色素と共にマイクロカプセル中に内包させてることもできる。
【実施例】
【0037】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。尚、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
実施例1
内包物原料としてのスチレン3.06gと油溶性重合開始剤アゾビスイソブチロニトリル0.1g、及び内包物としての染料(特公平4−61797号公報に記載の方法で合成された下記式で表されるスチリル系イエロー染料)0.34g、ヘキサメチレンジイソシアネート0.351g、並びに、25℃での水への溶解度が0.1g/100g以下の有機化合物としてのヘキサデカン(溶解度0.002g/100g未満)0.2gを、混合して均一溶液となし、該溶液を、脱塩水32gにドデシル硫酸ナトリウム0.416gを溶解させた水溶液中に攪拌しながら滴下し、滴下終了後、更に10分間スターラー攪拌した後、超音波分散装置(SMT社製「ウルトラソニックホモジナイザー UH−600」)にて、氷冷下、15分間分散処理することによりO/W型エマルジョンを作製した。
【0039】
【化2】

【0040】
得られたエマルジョンを、攪拌機、冷却器、及び温度計を備えた内容積100mLの4つ口フラスコに移し、40℃に昇温させて、脱塩水4gにイソホロンジアミン0.355gを溶解させた水溶液を20分かけて滴下し、前記ヘキサメチレンジイソシアネートとイソホロンジアミンを反応させることにより、スチレン、重合開始剤、及び染料がポリウレアの薄膜で被覆されたマイクロカプセルの水性分散体を製造した。その後、イソホロンジアミン滴下開始から1時間後、窒素気流下、80℃に昇温させてスチレンを重合させ、3時間後、染料を含有するポリスチレンを内包物とし、ポリウレアの薄膜で該内包物が被覆された超微粒マイクロカプセルの水性分散体を得た。得られたマイクロカプセルは、大塚電子社製動的光散乱装置「Photal PAR−III S」で測定した50%累積頻度における粒径(メジアン径)が53.3nmであり、粒径分布Dw/Dnが1.162のものであった。尚、スチレンの転化率は84%であった。
【0041】
又、得られたマイクロカプセルについて、以下に示す方法で、マイクロカプセル中における染料の保持安定性を評価したところ、染料残存率は98.4%であった。
<マイクロカプセル中の染料の保持安定性>
測定対象の試料の水性分散体を25℃で4週間静置した後、0.2μmの開き目径のフィルターで濾過し、乾燥させた粒子に、テトラヒドロフランを加えて所定濃度の染料含有溶液を調製し、該溶液について、分光光度計(日立社製「スペクトロホトメーター U−3500」によって吸収スペクトルを測定し、調製直後の試料の吸収極大波長における吸光度の値を100としたときの染料の残存率を測定した。
【0042】
実施例2
ヘキサメチレンジイソシアネート0.351gに代えてイソホロンジイソシアネート0.464gを用いてエマルジョンを作製したこと、及び、イソホロンジアミン0.355gに代えてヘキサメチレンジアミン0.289gを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてエマルジョンを作製し、ポリウレアの薄膜を形成し、更にポリスチレンを重合させて、染料を含有するポリスチレンを内包物とし、ポリウレアの薄膜で該内包物が被覆された超微粒マイクロカプセルの水性分散体を得た。得られたマイクロカプセルは、前記と同様にして測定した50%累積頻度における粒径(メジアン径)が52.6nmであり、粒径分布Dw/Dnが1.216のものであった。尚、スチレンの転化率は92%であった。又、前記と同様にして評価した染料の残存率は99.2%であった。
【0043】
比較例1
ヘキサメチレンジイソシアネートを用いなかったこと、及び、イソホロンジアミン水溶液の滴下を行わなかったこと以外は、実施例1と同様にしてエマルジョンを作製し、更にポリスチレンを重合させて、染料を含有するポリスチレン粒子の水性分散体を得た。得られたポリスチレン粒子は、ポリエレア薄膜を有さず、前記と同様にして測定した50%累積頻度における粒径(メジアン径)が77.5nmであり、粒径分布Dw/Dnが1.239のものであった。尚、スチレンの転化率は93%であった。又、前記と同様にして評価した染料の残存率は67.3%であった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の超微粒マイクロカプセルは、内包物がポリウレアの薄膜で被覆された、ナノオーダーの粒径を有する超微粒マイクロカプセルであって、ナノテクノロジー利用技術等のナノオーダーのマイクロカプセルを必要とする分野への適用が可能であり、例えば、色素を内包するマイクロカプセルの塗料、インク、静電トナーのような記録材料への応用、又、薬剤、香料、その他内包物によって、化粧品用、医薬製剤用、繊維着色剤用等、広範な分野における応用が期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内包物がポリウレアの薄膜で被覆されたマイクロカプセルであって、50%累積頻度における粒径が10〜150nmであることを特徴とする超微粒マイクロカプセル。
【請求項2】
内包物又は/及びその原料、多価イソシアネート、及び25℃での水への溶解度が0.1g/100g以下の有機化合物を含有する油相を、界面活性剤の存在下に水相中に微分散せしめた後、多価アミンを加えて、多価イソシアネートと多価アミンを界面重合させてポリウレアの薄膜を形成することを特徴とする請求項1に記載の超微粒マイクロカプセルの製造方法。
【請求項3】
多価イソシアネートが脂肪族或いは脂環式多価イソシアナートであり、多価アミンが脂肪族或いは脂環式多価アミンである請求項2に記載の超微粒マイクロカプセルの製造方法。
【請求項4】
油相の水相中への微分散を、超音波分散装置又は高圧ホモジナイザーを用いて行う請求項2又は3に記載の超微粒マイクロカプセルの製造方法。
【請求項5】
多価アミンを連続的又は逐次的に加える請求項2乃至4のいずれかに記載の超微粒マイクロカプセルの製造方法。
【請求項6】
多価アミンを加える際の微分散物の温度を5〜50℃とする請求項2乃至5のいずれかに記載の超微粒マイクロカプセルの製造方法。
【請求項7】
内包物又は/及びその原料が、ラジカル重合性モノマー、及び着色剤を含む請求項2乃至6のいずれかに記載の超微粒マイクロカプセルの製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の超微粒マイクロカプセルを用いてなることを特徴とする記録液。

【公開番号】特開2006−21164(P2006−21164A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203483(P2004−203483)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】