説明

超微粒子強磁性体フェライトを担持した微生物防除用の和紙および微生物防除用の和紙布地

【課題】和紙に対する微生物の付着増殖を防ぎ保存性を高めることによりかびない壁紙などにも利用可能とし、さらにこの和紙を糸状に加工し防菌性を持った織物にすることで新しい用途を開発しようとするものである。
【解決手段】和紙または和紙を0.5〜5mm幅に切断し糸化した後織物としたものに超微粒子強磁性体フェライトを担持させることにより、和紙またはわしを原料とした布地に微生物が付着しても、電磁界の作用により微生物に電流が流れ、微生物の生育を抑制し増殖を阻止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は超微粒子強磁性体フェライトを担持した微生物防除用の和紙および微生物防除用の和紙布地に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り 一般家庭、病院、美術館の壁紙のほか、人形、美術品、和服の包装等長時間保存使用される和紙の場合、付着するカビ菌等の微生物による変色や孔等による被害が繰返されている。これに対し微生物を防止するために、虫干し、紫外線などの対応のほか、スプレー状の薬品や抗菌剤等が盛んに提案、使用されているが。環境、皮膚への影響や永続性などに問題がある。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
和紙に微生物の栄養素を含むホコリや汚れが付着し、さらに適度な湿度が加わることで微生物の増殖が起こり易くなる。このようなホコリや汚れを完全に抑制することはむずかしいので、和紙に付着する微生物を防除することは通常困難である。
【0004】
このように和紙に付着する微生物を防除することはむずかしいので、スプレー式の殺虫剤などが用いられているがスプレー式殺虫剤等により和紙にシミなどが発生する恐れがあることも事実である。
【0005】
そこで本発明の目的は、無公害な超微粒子強磁比体フェライトを用い発防止し、微生物が発生しない和紙により、快適な一般家庭、病院、美術館などの壁紙や人形、和服、美術品の包装及び上記和紙を細く切断し、糸状にして織った布地を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために本発明は、微生物の増殖防除剤として、無害で副作用の無い超微粒子強磁性体フェライトを採用した。上記フェライトは粒度が5mm〜30mmの超微粒で、しかも各々が磁化の大きいNとSの永久磁石で、これを和紙を抄く工程の貯槽に適量入れて和紙を抄くと、上記フェライトを担持した和紙となり、和紙に強力な磁場を形成し、この磁場から磁力線が発生する。
この磁力線を発生する和紙に微生物が付着し、微生物が動くと、磁力線を切るので、ファラデーの電磁誘導の法則から電圧が発生し、微生物に電流が流れ、微生物の動きを阻止し、微生物の害を防除することになる。
【0007】
超微粒子強磁性体フェライトは、化学的に安定で使用しても、周囲への汚染の原因とならないので、公害や環境への問題は生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
初めに、超微粒子強磁性体フェライトの磁化の強さについて説明する。
図1はカルシューム亜鉛フェライトの磁化測定図を示す。磁化の強さは26emu/g となっている。
ガウスに換算すると約1700ガウスとなる。このCa−Znフェライトを適量担持した和紙には、強力な磁場を発生する。
【0009】
このように強力な磁場を形成する和紙から磁力線を発生する。この和紙にカビ菌等の微生物が付着して動くと、磁力線を切るので、ファラデーの電磁誘導の法則から電圧が発生し、微生物に電流が流れて、微生物の動きを抑制し生育を阻止するので、微生物による害を減少させる。
【0010】
上記超微粒子強磁性体フェライトを担持した和紙から強力な磁場を形成し、磁力線を発生し、微生物が近づいて磁力線を切り、ファラデーの電磁誘導の法則から微生物に電流が流れる様子を示したのが図2である。上記電流が微生物に流れると、微生物の生育を抑制し、増殖を阻止し、和紙に対するシミ、変色、虫食い状態のような孔等の害を防除することができる。
【0011】
上記強力な磁場を発生させるCa−Znフェライトを担持した和紙の実施例を図3に示す。図3でAはCa−Znフェライトを担持していない通常の和紙、図3でBはCa−Znフェライトを担持した微生物防除用の和紙を示す。この和紙のCa−Znフェライト担持量はm当たり10gである。
【0012】
上記図3Aと図3Bの超微粒子強磁性体フェライトの担持している様子を走査型電子顕微鏡を用いて写したのが、図4Aと図4Bである。図4Aは上記Ca−Znフェライトが和紙に担持されていないので倍率は50倍である。写真には和紙の繊維が写っている。図4Bは倍率を1000倍にしたもので、Ca−Znフェライトが黒い球状に写っている。この黒い球状体のほかは図4Aと同じように繊維となっている。この黒い球状のものが繊維の上に担持されているのがわかる。
【0013】
上記図4Bのように球状のCa−Znフェライトからは磁力線が発生しているので、微生物が付着して磁力線を切ると、ファラデーの電磁誘導の法則から、微生物に電流が流れて、微生物の動きを抑制し、生育を阻止し、微生物を防除する。
【0014】
上記Ca−Znフェライトを担持しない和紙の試験片とCa−Znフェライトを担持したCa−Znフェライトの試験片の各々を平板培地の中央に貼り付け、試験片の上にカビ菌胞子の懸濁液1mlを均等に撒きかけ28±2℃で2週間培養してカビ菌に対する影響を測定したのが、図5Aと図5Bである。図6AはCa−Znフェライトが担持していない和紙、図5BはCa−Znフェライトが担持している和紙
【0015】
上記図5Aと図5Bで黒色の半球状体がカビ菌を示す。図5Aと図5Bと比較すると、図5Aの方が黒色の半球状体の数が多くなっているので、超微粒子強磁性体フェライトの担持した和紙の方が電磁界の作用によりカビ菌の生育を阻止し、カビ菌を防除していることがわかる。
【0016】
上記図5Bのように超微粒子強磁性体フェライトを担持した微生物防除用和紙を一般家庭、病院、美術館の壁紙、人形、和服、美術品の包装に用いると、微生物の害を防除できる和紙として使用できる。
【0017】
上記の超微粒子強磁性体フェライトのCa−Znフェライトを担持した和紙を幅0,5mm〜5mmに切断し、糸状にし、これを用いて織物にしたのが図6である。この織物を用いた衣類、敷布、サポータ、靴下等に使用すると、微生物の害のない快適な環境の下で使用が可能となる。
【0018】
上記微生物にはカビ菌、大腸菌、水カビ菌、水虫菌、黄色ブドウ球菌、レジオネラを含むものとする。
【0019】
和紙の作製方法として手抄き、機械抄きを含むものとする。
【0020】
和紙の原料として、コウゾ、三椏、麻のほか必要に応じ木材パルプ、レーヨン、竹、バガス、ケナフ等の非木材繊維、その他の草木、笹などを含むものとする。
【0021】
和紙の作製に当たっては通常用いられる粘剤、サイズ剤、紙力増強剤、染料等の副資材を超微粒子強磁性体フェライトの分散を妨げない範囲で使用できる。
【0022】
担持には内添のほか散布、塗布、含浸、印刷、織物に併用する熱可塑繊維への練込みなどを含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、超微粒子強磁性体フェライトを担持した和紙を、一般家庭、病院、美術館などの壁紙及び人形、和服、美術品の包装等に用いて、和紙に微生物が付着しても、電磁界の作用により、微生物に電流が流れるので、微生物の生育を抑制し、増殖を阻止するので、微生物による和紙のシミ、虫食い状の孔等が防除できるので、快適な生活環境を創出できる。
【0024】
上記微生物を防除できる和紙を幅0,5mm〜5mmに切断し、糸状にしたものを織物にし、衣類、敷布、サポータ、靴下などに用いれば、微生物によるニオイ、床ずれ、シミ、虫食い上の孔などが発生せず、快適な社会生活を送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】カルシュウム亜鉛フェライトの磁化j曲線である。
【図2】A フェライトの拡大正面図である。B 電磁界の拡大図である。
【図3】A フェライトを担持しない和紙の写真である。B フェライトを担持した和紙の写真である。
【図4】A フェライトを担持しない和紙の50倍顕微鏡写真である。B フェライトを担持した和紙の1000倍顕微鏡写真である。
【図5】A フェライトを担持しない和紙のカビ菌比較試験である。B フェライトを担持した和紙のカビ菌比較試験である。
【図6】フェライトを担持した和紙を糸状にして織った布地である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒度が5nm〜30nmの超微粒子で、磁化の大きな超微粒子強磁性体フェライトを和紙を抄く工程の貯槽に適量入れて攪拌し、懸濁状態にして和紙を抄くことにより、微生物の発生を防止可能であることを特徴とする超微粒子強磁性体フェライトを担持した微生物防除用の和紙
【請求項2】
請求項1において超微粒子強磁性体フェライトを担持した和紙に微生物が付着し、微生物が動くと和紙に担持した上記フェライト粒子から発生する磁力線を切り、ファラデーの電磁誘導の法則から電圧が誘起され、電流が微生物に流れ微生物の成育を抑制し、増殖を防止することを特徴とする超微粒子強磁性体フェライトを担持した微生物防除用和紙
【請求項3】
請求項1または2において、超微粒子強磁性体フェライトを担持した和紙を幅0.5mm〜5mmに切断し、これを紙縒りにして糸状にし、この糸状の和紙を用いて織物にし、この織物を用いて衣類を作製し、微生物の発生を防除することを特徴とする超微粒子強磁性体フェライトを担持した微生物防除用和紙の布地
【請求項4】
請求項1,2,3において超微粒子強磁性体フェライトの担持を和紙、またはその糸、布地の段階で行うことを特徴とする微生物防除用和紙および布地

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−303051(P2007−303051A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−156624(P2006−156624)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(591120295)
【出願人】(506191208)
【Fターム(参考)】