説明

超臨界水によるバイオマスガス化システム

【課題】バイオマスからメタンや水素などの燃料ガスをより効率的に生成することが可能な超臨界水ガス化技術を提供すること。
【解決手段】非金属系触媒の存在下において、バイオマスを所定の温度及び圧力の条件下で熱水処理する前処理装置と、熱水処理により得られた前記非金属系触媒を含む前記バイオマスのスラリー体を所定の温度及び圧力の条件下で水熱処理する反応器と、前処理装置から反応器に一定濃度のスラリー体を連続供給するスラリー供給装置と、前処理装置とスラリー供給装置との間に配置され、スラリー供給装置に受け入れられるスラリー体を蓄圧する第1の蓄圧器と、スラリー供給装置と反応器との間に配置され、スラリー供給装置から供給されるスラリー体を蓄圧する第2の蓄圧器と、を備える超臨界水によるバイオマスガス化システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超臨界水によりバイオマスをガス化するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、植物又はその廃材、家畜排泄物、生ゴミ、食品廃棄物、下水汚泥などのバイオマスを原料としたエネルギー変換技術の開発がなされている。バイオマスを原料としたエネルギー変換技術としては、例えば、微生物によりバイオマスを発酵させて燃料ガスを生成する方法、バイオマスに含まれる水を利用して加圧熱水処理を行い、燃料ガスを生成する方法などが知られており、後者の改良方法としては、触媒を用いてウェット・バイオマス(含水性バイオマス)を超臨界水でガス化し、水素やメタン等の燃料ガスを生成する方法が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【特許文献1】特表平11−502891号公報
【特許文献2】特開2002−105466号公報
【特許文献3】特開2002−105467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、これまでに知られている超臨界水ガス化技術は、燃料ガスの生成効率の面で必ずしも満足できるものではなく、バイオマスから燃料ガスをより効率的に生成することができる技術の開発が求められている。
【0004】
そこで、本発明は、バイオマスからメタンや水素などの燃料ガスをより効率的に生成することが可能な超臨界水ガス化技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る、超臨界水によるバイオマスガス化システムは、非金属系触媒の存在下において、バイオマスを100〜250℃の範囲内の温度、及び0.1〜4MPaの範囲内の圧力の条件下で熱水処理する前処理装置と、前記前処理装置において熱水処理することにより得られた、前記非金属系触媒を含む前記バイオマスのスラリー体を、374℃以上の温度、及び22.1MPa以上の圧力の条件下で水熱処理する反応器と、前記前処理装置から前記スラリー体を受け入れ、前記スラリー体を前記反応器に供給するスラリー供給装置と、前記前処理装置と前記スラリー供給装置との間に配置され、前記スラリー供給装置に受け入れられる前記スラリー体を蓄圧する第1の蓄圧器と、前記スラリー供給装置と前記反応器との間に配置され、前記スラリー供給装置から供給される前記スラリー体を蓄圧する第2の蓄圧器と、を備え、前記スラリー供給装置は、水を注入する注入口と、注入した前記水を排出する排出口と、前記前処理装置から前記スラリー体を受け入れる受入口と、受け入れた前記スラリー体を前記反応器に供給する供給口と、を備える2つのシリンダーと、各シリンダー内の前記水と前記スラリー体とを仕切るように配置されたピストンと、各ピストンを両端に備える軸と、各シリンダー内の前記スラリー体を攪拌する攪拌機と、第1の前記シリンダーに前記前処理装置から前記スラリー体を受け入れるとともに、前記前処理装置から第2の前記シリンダーに受け入れた前記スラリー体を前記反応器に供給するように、前記第2のシリンダーに前記水を注入する第1の工程と、前記第1のシリンダーに受け入れた前記スラリー体を前記反応器に供給するとともに、前記第2のシリンダーに前記前処理装置から前記スラリー体を受け入れるように、前記第1のシリンダーに前記水を注入する第2の工程とを、交互に切り替えて行う水注入装置と、を備える。
【0006】
前記軸は、前記ピストンと前記攪拌機との接触を防止する接触防止手段をさらに備えることとしてもよい。また、前記水注入装置は、各シリンダーに対して一定流量で液体を注入することとしてもよい。
【0007】
前記反応器は、前記反応器内に前記スラリー体を下方から導入する導入口と、前記反応器において水熱処理することにより生成された生成ガス及び灰分、並びに、前記非金属系触媒及び水を上方から前記反応器外に排出する排出口と、前記スラリー体の導入により前記反応器内に流動層を形成する流動媒体と、前記導入口から導入した前記スラリー体を、前記流動層の下方で分散させる分散部と、を備え、前記流動媒体は、前記スラリー体の導入速度では排出されない形状で構成されていることとしてもよい。
【0008】
本発明に係るシステムは、前記反応器から排出された、前記生成ガス、前記灰分、前記非金属系触媒、及び前記水を、前記生成ガスと、前記灰分、前記非金属系触媒、及び水を含む混合液とに分離する気液分離装置をさらに備えることとしてもよい。また、本発明に係るシステムは、前記混合液中の前記非金属系触媒を回収する手段をさらに備えることとしてもよい。
【0009】
さらに、本発明に係るシステムは、前記反応器において水熱処理することにより生成された生成ガスの一部を利用して前記反応器を加熱する加熱装置をさらに備えることとしてもよい。また、本発明に係るシステムは、前記前処理装置で熱水処理する前記バイオマスをあらかじめ破砕する破砕機をさらに備えることとしてもよい。
【0010】
本発明に係るシステムは、前記反応器において水熱処理することにより生成された生成ガスの熱を利用して、前記スラリー供給装置から前記反応器に供給される前記スラリー体を予熱する熱交換器をさらに備えることとしてもよい。また、本発明に係るシステムは、前記前処理装置において熱水処理される前記バイオマスを前記前処理装置に供給する手段と、前記前処理装置から前記スラリー供給装置に受け入れられる前記スラリー体の熱を利用して、前記前処理装置に供給される前記バイオマスを予熱する熱交換器と、をさらに備えることとしてもよい。さらに、本発明に係るシステムは、前記前処理装置において熱水処理される前記バイオマスを前記前処理装置に供給する手段と、前記反応器において水熱処理することにより生成された生成ガスの熱を利用して、前記前処理装置に供給される前記バイオマスを予熱する熱交換器と、をさらに備えることとしてもよい。
【0011】
なお、前記前処理装置での熱水処理は、所定の圧力及び当該圧力における水の飽和温度の条件下で行うことが好ましく、前記反応器での水熱処理は、600℃の温度、及び25MPaの圧力の条件下で行うことが好ましい。
【0012】
前記流動媒体は、例えば、アルミナボールなどである。前記分散部は、例えば、アルミナボールを積み重ねることによって形成した層などである。前記非金属系触媒としては、例えば、活性炭などを用いることができる。前記活性炭は、粉末状であって、その平均粒径が200μm以下であるものを用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バイオマスからメタンや水素などの燃料ガスをより効率的に生成することが可能な超臨界水ガス化技術を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を用いて詳細に説明する。
【0015】
==本発明の超臨界水によるバイオマスガス化システムの全体構成==
図1は、本発明の一実施形態として説明する超臨界水によるバイオマスガス化システムの概略構成を示す図である。図1に示すように、本発明に係る超臨界水によるバイオマスガス化システム(以下、単に「システム」と称する。)100は、破砕ポンプ10、水タンク11、モーノポンプ20、第一熱交換器30、第二熱交換器31、前処理装置40、スラリー供給装置50、反応器60、クーラー70、減圧器71、気液分離器80、ガスタンク81、固液分離器82、バーナー90などを備える。
【0016】
前処理装置40は、バイオマスのスラリー体を形成させる装置である。このバイオマスのスラリー体の形成は、非金属系触媒の存在下において、バイオマスを100〜250℃の範囲内の温度、及び0.1〜4MPaの範囲内の圧力の条件下で熱水処理することにより行われる。
【0017】
モーノポンプ20は、所定の含水率に調製された、非金属系触媒、バイオマス、及び水を含む混合液を前処理装置40に移送する装置である。
【0018】
破砕ポンプ10は、前処理装置40で熱水処理されるバイオマスをあらかじめ均一な大きさ(好ましくは平均粒径が500μm以下、より好ましくは平均粒径が300μm以下)に破砕しながら、モーノポンプ20へ移送する装置である。破砕ポンプ10によって破砕されたバイオマスは、非金属系触媒とともにモーノポンプ20に移送される。
【0019】
水タンク11は、破砕ポンプ10によって破砕されたバイオマスと非金属系触媒との混合物に混合させる水を貯水する容器である。この水タンク11から水が供給されて、破砕ポンプ10によって破砕されたバイオマスと非金属系触媒との混合物と混合することにより、所定の含水率に調製された混合液が作製される。
【0020】
反応器60は、超臨界水によりバイオマスをガス化する装置である。この超臨界水によるバイオマスのガス化は、前処理装置40において熱水処理された、非金属系触媒を含むバイオマスのスラリー体を、前記非金属系触媒を利用して、374℃以上の温度、及び22.1MPa以上の圧力の条件下で水熱処理することにより行われる。このようにスラリー体を超臨界水により処理することにより、バイオマスが分解して水素ガス、メタン、エタン、エチレン等の燃料ガスが生成される。反応器60は、上述の条件下で非金属系触媒を含むバイオマスのスラリー体を水熱処理することができる装置であれば特に制限されるものではないが、図2に示すような連続運転が可能な装置を用いることが好ましい。
【0021】
図2は本発明の一実施形態として説明する反応器60の概略構成を示す図である。図2に示すような反応器60は、装置60内に非金属系触媒を含むバイオマスのスラリー体を下方から導入する導入口210と、装置60内で前記スラリー体を、374℃以上の温度、及び22.1MPa以上の圧力の条件下で水熱処理することにより生成された燃料ガスを含む生成ガス及び灰分、並びに、非金属系触媒及び水(超臨界水)を上方から装置60外に排出する排出口220と、スラリー体の導入により装置60内に流動層を形成する流動媒体230と、導入口210から導入したスラリー体を流動層の下方で分散させる分散部240と、を備えている。
【0022】
前記流動媒体230は、スラリー体の導入速度では排出されない形状、例えば、導入口210からスラリー体を導入する速度では流動層を形成するが、排出口220から排出できない重さや、排出口220にメッシュ状のプレートが設置されている場合には、当該プレートの網目より大きさなどで構成されている。前記流動媒体230としては、超臨界状態でも粒径が壊れにくい媒体であれば特に制限されるものではないが、例えば、アルミナボール、ジルコニアボール、シリカボールなどの媒体を挙げることができる。
【0023】
分散部240としては、例えば、流動層反応器などで用いられる既知の分散板であってもよいが、スラリー体の目詰まりにより圧力が増加するのを防ぐために、スラリー体を導入する速度では流動しない形状で構成された球状媒体(例えば、アルミナボールなどの球状媒体)を積み重ねることにより形成した層であることが好ましい。
【0024】
以上のような反応器60を用いることにより、導入口210から導入したスラリー体を、それに含まれる非金属系触媒を利用して超臨界水によるガス化を行い、これにより生成された生成ガス(燃料ガスを含む)及び灰分、並びに、非金属系触媒及び水(超臨界水)などの流動媒体230より軽く、径が小さな物質を排出口220から排出することができるようになる。また、このような反応器60は、上述のような構成により、反応器内60に灰分や非金属系触媒などが堆積するのを抑制することができるようになり、非金属系触媒を含むバイオマスのスラリー体を連続的に超臨界水によりガス化する処理を行うことが可能となる。
【0025】
スラリー供給装置50は、前処理装置40において熱水処理を行うことにより得られた、非金属系触媒を含むバイオマスのスラリー体を前処理装置40から受け入れ、反応器60に供給する装置である。図3に本発明の一実施形態として説明するスラリー供給装置50の概略構成図を示す。図3に示すように、スラリー供給装置50は、2つのシリンダー310,320、軸330、2つのピストン331,332、2つの攪拌機340,350、水注入装置360、バルブ361,362,363,364,373,374,375,376、三方弁371,372、蓄圧器380,381などを備える。
【0026】
水注入装置360は、シリンダー310とシリンダー320とを交互に切り替えて各シリンダー310,320に水を注入する装置である。水注入装置360は、例えば、ポンプ、高圧ポンプ、背圧ポンプなどである。
【0027】
シリンダー310,320には、水注入装置360から水を注入し、注入した水を排出する注入/排出口が設けられている。また、シリンダー310,320には、前処理装置40からスラリー体を受け入れ、受け入れたスラリー体を反応器60に供給する受入/供給口が設けられている。
【0028】
シリンダー310,320内には、水注入装置360から注入された水と、前処理装置40から受け入れたスラリー体とを仕切るようにピストン331,332が配置されている。
【0029】
軸330の両端にはピストン331,332が備えられている。ピストン331,332は、水注入装置360からシリンダー310,320内に水が注入されることによりシリンダー310,320内を移動し、シリンダー310,320内のスラリー体を押圧して反応器60にスラリー体を供給する。また、一方のピストン331,332の移動に伴い、他方のピストン332,331が一方のピストン331,332と同軸方向に移動し、前処理装置40からスラリー体を受け入れるとともに、シリンダー320,310内の水を排出する。
【0030】
なお、シリンダー310,320内の水とスラリー体が混ざらないようにするために、ピストン331,332にピストンリングを設け、ピストン331,332とシリンダー310,320との気密性を高めることとしてもよい。
【0031】
本実施の形態においては、軸330の中央部にストッパー333が設けられている。ストッパー333は、ピストン331,332と攪拌機340,350との接触を防止する装置であり、ストッパー333がシリンダー310,320に接触すると、ピストン331,332が攪拌機340,350の方へ移動できなくなるような仕組みとなっている。
【0032】
バルブ361,362,363,364は、水を水注入装置360からシリンダー310,320に流れるように切り替えたり、シリンダー310,320内の水を排出するように切り替えたりする装置である。バルブ361,362,363,364は、例えば、電磁バルブなどである。
【0033】
本実施の形態においては、バルブ361,362,363,364は、水注入装置360の注水により、水がシリンダー310,320に流れるように切り替える。また、バルブ361,362,363,364は、シリンダー310,320からの排水により、水が排出されるように切り替える。このような切り替えは、例えば、水注入装置360からの注水やシリンダー310,320からの排水に伴い、電気的に行うことができる。具体的には、軸330に設けられたストッパー333が一方のシリンダー310,320に接触したのを検知すると、水注入装置360は当該シリンダー310,320から他方のシリンダー320,310に水の注入を切り替え、バルブ363,361は水が水注入装置360からシリンダー320,310に流れるように切り替え、バルブ364,362は水注入装置360からシリンダー320,310に注入される水が排出されないように切り替え、バルブ362,364はシリンダー310,320から水が排出されるように切り替え、バルブ361,363はシリンダー310,320から排出される水が水注入装置360に流れないように切り替える制御を行えばよい。
【0034】
なお、本実施の形態においては、スラリー供給装置50にバルブ361,362,363,364を設けることとしているが、これらのバルブ361,362,363,364の代わりに2つの三方弁を設けて、水注入装置360の注水により水がシリンダー310,320に流れるように切り替えたり、シリンダー320,310からの排水により水が排出されるように切り替えたりしてもよい。このような切り替えは、例えば、逆流を防止する弁などによって機械的に行うこともできるが、水注入装置360からの注水やシリンダー310,320からの排水に伴い、電気的に行うこともできる。具体的には、軸330に設けられたストッパー333が一方のシリンダー310,320に接触したのを検知すると、水注入装置360は当該シリンダー310,320から他方のシリンダー320,310に水の注入を切り替え、一方の三方弁は水が水注入装置360からシリンダー320,310に流れるように切り替え、他方の三方弁はシリンダー310,320から水が排出されるように切り替える制御を行えばよい。
【0035】
三方弁371,372は、ピストン331,332の往復運動により、スラリー体を前処理装置40からシリンダー310,320に流れるように切り替えたり、スラリー体をシリンダー310,320から反応器60に流れるように切り替えたりする装置である。
【0036】
本実施の形態においては、三方弁371,372は、前処理装置40からスラリー体を受け入れる際に、スラリー体が前処理装置40からシリンダー310,320に流れるように切り替える。また、三方弁371,372は、シリンダー310,320からのスラリー体供給により、スラリー体がシリンダー310,320から反応器60に流れるように切り替える。このような切り替えは、例えば、逆流を防止する弁などによって機械的に行うこともできるが、シリンダー310,320からのスラリー体供給や前処理装置40からのスラリー体供給に伴い、電気的に行うこともできる。具体的には、軸330に設けられたストッパー333が一方のシリンダー310,320に接触したのを検知すると、三方弁371,372は、当該シリンダー310,320にスラリー体が前処理装置40から流れるように切り替え、三方弁372,371は、他方のシリンダー320,310からスラリー体が反応器60に流れるように切り替える制御を行えばよい。なお、上述のストッパー333とシリンダー310,320との接触の検知は、例えば、ストッパー333とシリンダー310,320とが接触する領域の一部にスイッチを設け、当該スイッチが押圧されたことにより行うことができる。
【0037】
バルブ373,374は、一方のシリンダー310,320から他方のシリンダー320,310に切り替えてスラリー体を反応器60に供給する際、すなわち、水注入装置360が水を注入するシリンダー310,320を、一方のシリンダー310,320から他方のシリンダー320,310に切り替える際に、シリンダー310,320から反応器60へのスラリー体の流れ(供給)を一時的に遮断する装置である。バルブ375,376は、水注入装置360が水を注入するシリンダー310,320を、一方のシリンダー310,320から他方のシリンダー320,310に切り替える際に、前処理装置40からシリンダー310,320へのスラリー体の流れ(受入)を一時的に遮断する装置である。バルブ373,374,375,376は、例えば、電磁バルブなどである。
【0038】
なお、上述のような遮断は、例えば、水注入装置360からの注水やシリンダー310,320からの排水に伴い、電気的に行うことができる。具体的には、軸330に設けられたストッパー333が一方のシリンダー310,320に接触したのを検知すると、バルブ373,374はシリンダー310,320から反応器60へのスラリー体の流れ(供給)を遮断し、バルブ375,376は前処理装置40からシリンダー310,320へのスラリー体の流れ(受入)を遮断し、水注入装置360が当該シリンダー310,320から他方のシリンダー320,310に水の注入を切り替えた後に、バルブ373,374のうち1のバルブ374,373が三方弁372,371を介してスラリー体をシリンダー320,310から反応器60に流れるように開放し、バルブ375,376のうち1のバルブ375,376がスラリー体を前処理装置40からシリンダー310,320に流れるように開放する制御を行えばよい。
【0039】
攪拌機340,350は、三方弁371,372を介して前処理装置40からシリンダー310,320内に受け入れるスラリー体を攪拌する装置である。このように、シリンダー310,320内に攪拌機340,350を備えてスラリー体を攪拌することにより、スラリー体に含まれる非金属系触媒やバイオマスの粒子などの固形物の沈殿を防止することができるようになる。
【0040】
本実施の形態においては、スラリー供給装置50と反応器60との間に、スラリー供給装置50から供給されるスラリー体を蓄圧する蓄圧器380と、前処理装置40とスラリー供給装置50との間に、スラリー供給装置50に受け入れられるスラリー体を蓄圧する蓄圧器381と、を備えることとしている。これらを備えることにより、スラリー供給装置50と反応器60とを接続する配管内の圧力や、前処理装置40とスラリー供給装置50とを接続する配管内の圧力を一定に保つことができ、脈動やウォーターハンマー(水撃)などの発生を防止することが可能となる。
【0041】
なお、上述の水注入装置360が水を注入するシリンダー310,320の切り替えは、軸330に設けたストッパー333がシリンダー310,320に接触したタイミングで電気的に行うこととしてもよいし、各シリンダー310,320内の圧力が上昇したのを検知して行うこととしてもよい。また、水注入装置360がシリンダー310,320に注入する水は、シリンダー310,320に受け入れられるスラリー体の温度と同じ温度の水であることが好ましい。これにより、シリンダー310,320に受け入れられたスラリー体の温度低下を抑制することができるようになる。なお、水注入装置360によるシリンダー310,320への注水は、反応器60にスラリー体を一定流量で供給することができるように一定流量で行うことが好ましい。
【0042】
また、上述においては、スラリー供給装置50の軸330にストッパー333を設けてピストン331,332と攪拌機340,350との接触を防止することとしているが、シリンダー310,320の長手方向の長さと軸330との長さとを調節してピストン331,332と攪拌機340,350との接触を防止することとしてもよいし、ピストン331,332と攪拌機340,350とが接触しない量の水を、水注入装置360がシリンダー310,320に注入するようにしてピストン331,332と攪拌機340,350との接触を防止することとしてもよい。また、ピストン331,332と攪拌機340,350とが接触しないように、シリンダー310,320内にストッパーを設けることとしてもよい。
【0043】
さらに、上述においては、水注入装置360から水を注入し、注入した水を排出する注入/排出口をシリンダー310,320に設けることとしているが、水注入装置360から水を注入する注入口と、注入した水を排出する排出口とをシリンダー310,320にそれぞれ設けることとしてもよい。
【0044】
また、上述においては、前処理装置40からスラリー体を受け入れ、受け入れたスラリー体を反応器60に供給する受入/供給口をシリンダー310,320に設けることとしているが、前処理装置40からスラリー体を受け入れる受入口と、受け入れたスラリー体を反応器60に供給する供給口とをシリンダー310,320にそれぞれ設けることとしてもよい。
【0045】
クーラー70は、反応器60から排出される排出物を冷却する装置である。反応器60から排出される排出物には、爆発性の燃料ガス(例えば、水素、メタン、エタン、エチレンなど)や水蒸気(超臨界水)等が含まれているので、危険性を低減させたり、水蒸気を水に変換させたりする目的でクーラー70を本発明のシステム100に設けることとしている。なお、本実施の形態においては、反応器60から排出された排出物を冷却する装置としてクーラー70を例に挙げて説明したが、反応器60から排出された排出物を冷却することができる装置であればどのような装置を用いることとしてもよい。
【0046】
減圧器71は、反応器60から排出される排出物中の生成ガスなどの圧力を減圧する装置である。これにより、生成ガスの高圧による危険性を未然に防止することができるようになる。
【0047】
気液分離器80は、反応器60から排出された排出物を気体成分(生成ガス)と液体成分(水、あるいは、水、灰分、非金属系触媒などを含む混合液)とに分離する装置である。気液分離器80は、例えば、セパレーター等の既存の気液分離器を用いることができる。
【0048】
ガスタンク81は、気液分離器80によって分離された気体成分(生成ガス)を貯える容器(好ましくは耐圧容器)である。バーナー90は、ガスタンク81に貯えられた生成ガス(燃料ガス)の一部を利用して反応器60を加熱する装置である。なお、本実施の形態においては、反応器60を加熱する装置としてバーナー90を例に挙げて説明したが、反応器60を加熱することができる装置であればどのような装置を用いることとしてもよい。
【0049】
固液分離器82は、気液分離器80によって分離された液体成分に、水以外の灰分や非金属系触媒などが含まれている場合に、灰分や非金属系触媒などの固形分と水とを分離する装置である。固液分離器82は、例えば、既存の固液分離装置であってもよいし、混合液中の灰分、非金属系触媒、及び水をそれぞれ分離する装置であってもよい。図4に、本発明の一実施形態として説明する、混合液中の灰分、非金属系触媒、及び水をそれぞれ分離する固液分離器82の概略構成図を示す。なお、本実施の形態においては、非金属系触媒が、灰より沈降速度(終端速度)が遅い活性炭である場合について説明する。
【0050】
図4に示すように、固液分離器82は、混合液注入部410、水槽420、循環ポンプ430、供給管440、灰受入部450、バルブ460,461,470などを備える。
【0051】
混合液注入部410は、気液分離器80から灰分、活性炭、及び水を含む混合液を注入する管である。水槽420は、混合液注入部410から注入した混合液中の灰分や活性炭をゆっくりと沈降させるための水を入れておく容器である。水槽420は、混合液注入部410から注入した混合液中の灰分を沈降させて水槽420から排出させる排出口421、混合液中の活性炭を受け入れる活性炭受部422,423、水槽420において浮遊した灰や活性炭などの浮遊物を水とともに排出する排水口424などを備える。
【0052】
灰受入部450は、排出口421から沈降した灰分を受け入れ容器である。循環ポンプ430は、水槽420中の水を循環させるポンプである。供給管440は、循環ポンプ430によって循環される水を排出口421を介して水槽420に導入する配管である。なお、循環ポンプ430によって循環される水は、活性炭の沈降速度より速く、灰の沈降速度より遅い流速で排出口421から水槽420に供給される。これにより、混合液注入部410から注入された混合液中の灰分は、排出口421を通って灰受入部450に沈降するが、混合液注入部410から注入された混合液中の活性炭は、排出口421を通過することなく活性炭受部422,423に移動する。
【0053】
なお、本実施の形態においては、活性炭受部422,423には、当該受部422,423に溜まった活性炭を回収できるように、活性炭の粒子より細かいメッシュで構成された籠425,426が設けられており、灰受入部450には、当該受入部450に溜まった灰を回収できるように、灰の粒子より細かいメッシュで構成された籠451が設けられている。
【0054】
バルブ460,461は、水槽420の水を排出する弁である。気液分離器80から注入された混合液中の灰分と活性炭とを分離した後に、当該バルブ460,461によって水槽420の水を排水することにより、籠425,426に溜まった活性炭を回収することができる。また、バルブ470は、灰受入部450の水を排水する弁である。気液分離器80から注入された混合液中の灰分と活性炭とを分離した後に、当該バルブ470によって灰受入部450の水を排水することにより、籠451に溜まった灰を回収することができる。
【0055】
以上のような固液分離器82を本発明のシステム100に備えることにより、混合液を固体成分と液体成分とに分離するだけでなく、固体成分である灰分と非金属系触媒とを分離することができ、非金属系触媒を回収することが可能となる。これにより、回収した非金属系触媒を再利用できる。
【0056】
なお、本発明に係るシステム100に、気液分離器80によって分離された、灰分、非金属系触媒、及び水を含む混合液を固体成分と液体成分とに分離する固液分離器82を備える場合には、分離した固体成分中の灰分と非金属系触媒とを分離する装置(例えば、篩分け装置など)を本発明に係るシステム100にさらに備えることとしてもよい。これにより、各反応に利用した非金属系触媒を回収して再利用することが可能となる。
【0057】
第一熱交換器30は、前処理装置40において熱水処理することにより得られた、非金属系触媒を含むバイオマスのスラリー体の熱を利用して、モーノポンプ20から前処理装置40に供給されるバイオマス等を予熱する装置である。
【0058】
第二熱交換器31は、反応器60において水熱処理することにより生成された生成ガスなどを含む、反応器60から排出される排出物の熱を利用して、スラリー供給装置50から反応器60に供給される、非金属系触媒を含むバイオマスのスラリー体を予熱する装置である。
【0059】
これらのように、本発明のシステム100に熱交換器30,31を設けることにより、エネルギーを有効に利用することができるので、低エネルギー・低コストでバイオマスから燃料ガスを生成することができるようになる。また、各装置40,60での加熱時間が短縮されるのでバイオマスから燃料ガスの生成を効率的に行うことができるようになる。従って、熱交換器30,31を備えたシステム100は、経済性に優れているといえる。
【0060】
なお、本実施の形態においては、反応器60から排出される排出物の熱を利用して上記スラリー体を予熱する第二熱交換器31を本発明のシステム100に備えることとしているが、反応器60から排出される排出物の熱を利用して、モーノポンプ20から前処理装置40に供給されるバイオマス等を予熱する熱交換器を本発明のシステム100に備えることとしてもよい。
【0061】
以上のように、本発明に係るシステム100に上述のようなスラリー供給装置50を備えることにより、固体成分と液体成分とに分離しやすい上述のスラリー体を一定濃度で反応器60に連続供給することができるので、超臨界水のガス化効率が最も高い濃度で非金属系触媒やバイオマスなどが含まれるスラリー体を反応器60に連続供給し、バイオマスから燃料ガスをより効率的に生成することが可能となる。
【0062】
また、本発明に係るシステム100にあらかじめバイオマスを熱水処理する前処理装置40を備えることにより、バイオマスを高分子から低分子に分解することができるので、反応器60において処理されるバイオマスと水や非金属系触媒との接触効率を高め、チャーやタールの発生を防止するとともにバイオマスから燃料ガスを効率よく生成することができるようになる。
【0063】
さらに、前処理装置40においてバイオマスを熱水処理することにより流動性に優れたバイオマスのスラリー体を形成させることができるので、反応器60への供給においてバイオマスによる機器や配管等の目詰まりを防止することが可能となる。
【0064】
また、本発明に係るシステム100により、前処理装置40での熱水処理において用いた非金属系触媒を、反応器60での水熱反応においても利用することができるので、触媒の消費を削減することが可能となる。
【0065】
さらに、本発明に係るシステム100に図2に示すような反応器60を備えることにより、バイオマスを超臨界水によってガス化することにより得られる灰分(残渣)が反応器60内に溜まることがなくなり、バイオマスの超臨界水によるガス化処理を連続的に行うことができ、バイオマスから燃料ガスをより効率的に生成することが可能となる。
【0066】
また、本発明に係るシステム100に、クーラー70、減圧器71、気液分離器80などを備えることにより、反応器60から排出される排出物から燃料ガスを含む生成ガスを安全に回収することができるようになる。
【0067】
さらに、本発明に係るシステム100にバイオマスを破砕する装置(破砕ポンプ10)を備えることによりバイオマスをあらかじめ破砕することができるので、バイオマスのスラリー化やガス化の効率を高めることができるようになる。
【0068】
また、本発明に係るシステム100により得られた燃料ガスを用いて、ガスエンジンによる発電を行うことで電力と排熱を得ることができるので、石炭、石油等の化石燃料の省資源化を図ることが可能になる。
【0069】
なお、本実施の形態においては、非金属系触媒とバイオマスとを最初から混合した混合物を破砕ポンプ10によって処理し、モーノポンプ20により前処理装置40に供給することとしているが、非金属系触媒はバイオマスとは別に前処理装置40に供給することとしてもよいが、破砕ポンプ10で処理した後から前処理装置40で処理する前の間において、バイオマスと混合して前処理装置40に供給することとしてもよい。
【0070】
また、本実施の形態においては、前処理装置40において熱水処理された、非金属系触媒を含むバイオマスのスラリー体を、スラリー供給装置50を用いて反応器60に直接供給することとしているが、反応器60に供給する前に前記スラリー体を加熱装置(例えば、ヒーター等)によって予熱することとしてもよい。
【0071】
==超臨界水によるバイオマスガス化方法==
次に、本実施の一形態として、バイオマスから燃料ガスを生成する方法について説明する。なお、本実施の形態においては、図2に示すような連続運転が可能な反応器60を備えたシステム100を用いた方法について説明する。
【0072】
まず、バイオマスと非金属系触媒とを混合した混合物中のバイオマスは、破砕ポンプ10により破砕されながら、非金属系触媒とともにモーノポンプ20に移送される。破砕ポンプ10により破砕されたバイオマスと非金属系触媒との混合物は、モーノポンプ20に移送される際に、水タンク11から供給される水と混合し、バイオマスの超臨界水によるガス化の効率を高めることができる所定の含水率(好ましくは70〜95wt%)に調製される。
【0073】
所定の含水率に調製された、非金属系触媒、バイオマス、及び水を含む混合液は、モーノポンプ20により第一熱交換器30を通って前処理装置40に移送される。前処理装置40に供給されたバイオマスは、バイオマスとともに供給された非金属系触媒の存在下で、所定の圧力及び所定の温度の条件下で熱水処理される。
【0074】
なお、熱水処理の条件としては、100〜250℃の範囲内の温度であって、0.1〜4MPaの範囲内の圧力下であれば特に制限されるものではないが、バイオマスを高分子から低分子へと分解する処理の効率の観点から、これらの範囲内の圧力下における水の飽和温度であることが好ましく、さらに省エネルギーの観点から、179.8℃の温度及び1.0MPaの圧力下であることが特に好ましい。ここで、熱水処理を100℃〜250℃の範囲内の温度で行うこととしたのは、100℃未満ではバイオマスの分解反応率が低く、250℃を超えるとタールやチャーの発生が懸念されるからである。また、熱水処理を0.1〜4MPaの範囲内の圧力で行うこととしたのは、0.1MPa未満ではバイオマスの分解反応率が低く、4MPaより高い圧力をかけても分解反応率に与える影響はそれ程ないのではないかと考えたためである。
【0075】
このようにバイオマスを非金属系触媒の存在下で熱水処理することにより、バイオマスを高分子から低分子に効率よく分解することができるようになる。
【0076】
上述のようにして得られた、非金属系触媒を含むバイオマスのスラリー体は、第一熱交換器30でモーノポンプ20から前処理装置40に供給される混合液に熱を提供し、スラリー供給装置50に受け入れられる。スラリー供給装置50に受け入れられた、非金属系触媒を含むバイオマスのスラリー体は、スラリー供給装置50により第二熱交換器31を通って反応器60に供給される。
【0077】
反応器60に供給されたバイオマスのスラリー体は、反応器60に導入され、バイオマスとともに供給された非金属系触媒の存在下で、所定の圧力及び所定の温度の条件下で水熱処理される。水熱処理の条件としては、374℃以上の温度で、かつ、22.1MPa以上の圧力下であれば特に制限されるものではないが、タールやチャーの発生を抑制するとともに反応効率を高めることができる温度(600℃)及び圧力(25〜35MPaの範囲内)下で行うことが好ましく、機器の負担や劣化防止、さらには省エネルギーの観点から、600℃,25MPaで行うことが特に好ましい。なお、バイオマスから変換された燃料ガス中の成分の比を制御したい場合には、これらの温度及び圧力の条件を調節するとともに、流体密度や反応時間(反応器60内でのバイオマスの滞留時間)を制御することにより可能となる。
【0078】
このようにバイオマスのスラリー体を超臨界水で反応させることにより、バイオマスのスラリー体から燃焼ガスを生成することが可能になる。また、バイオマスを予め高分子から低分子化させることにより、水や非金属系触媒との接触効率を高めることができ、さらには、バイオマスのガス化反応時間を短縮させることができるので、バイオマスのスラリー体から水素ガス、メタン、エタン、エチレン等の燃料ガスをより効率的に生成することができるようになる。
【0079】
反応器60内でバイオマスのスラリー体を水熱処理することにより生成された生成ガスなどは、反応器60から排出される。この排出物は、第二熱交換器31において、スラリー供給装置50から反応器60に供給される、非金属系触媒を含むバイオマスのスラリー体に熱を提供し、クーラー70及び減圧器71によって冷却・減圧され、気液分離器80に供給される。気液分離器80に供給された上記排出物は、燃料ガスを含む生成ガス(気体成分)と、水、あるいは、水、灰分、非金属系触媒等を含む混合液(液体成分)とに分離され、生成ガスはガスタンク81に貯えられる。なお、気液分離器80によって分離された液体成分に、水以外の灰分や非金属系触媒などが含まれ、非金属系触媒を回収したい場合には、混合液を固液分離器82によって灰分、非金属系触媒、及び水にそれぞれ分離する。
【0080】
なお、本実施の形態において用いられる非金属系触媒としては、例えば、活性炭、ゼオライトなどを挙げることができる。このように、アルカリ金属系触媒ではなく、非金属系触媒を用いることにより、アルカリ金属系触媒が引き起こす機器や配管等の腐食による劣化を防止することができ、システム100の長期使用が実現可能となる。また、アルカリ金属系触媒を中和する処理工程も不要となり、作業性の効率を高めることができるようになる。上記非金属系触媒としては、平均粒径200μm以下の粉末を用いることが好ましく、多孔質であることがより好ましい。このような非金属系触媒を用いることにより、表面積を増やして反応効率を高めるとともに、非金属系触媒によるシステム100内の機器、配管等の目詰まりを防止することができる。なお、本実施の形態において用いられる非金属系触媒は、乾燥状態のバイオマスとの質量比(非金属系触媒:バイオマス)で1:5〜20:1の範囲内であることが好ましく、バイオマスのガス化効率が高い1:2〜20:1の範囲内であることが特に好ましい。
【0081】
また、本実施の形態において処理されるバイオマスが砂等の異物を含む排水汚泥や糞尿等である場合には、前処理装置40においてバイオマスを熱水処理する前後に、公知の分離技術(例えば、ストレイナーを用いた分離法、沈殿層を用いた分離法)によってバイオマスに含まれる砂等の異物を取り除くこととしてもよい。これにより、砂等の異物によって生じるトラブルを防止することができるようになる。
【実施例】
【0082】
以下に本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、これらの実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0083】
[実施例1]
含水率90%のジャガイモペースト100質量部に、粒径100μmの活性炭を30質量部、又は60質量部加えて撹拌混合し、高圧ポンプにより流動層反応器に圧入し、500℃,25MPaの条件下で1時間、超臨界水による反応を行った。また、対照実験として、活性炭を添加しないで同様に超臨界水によるガス化反応を行った。その結果、活性炭を添加しない場合には、二酸化炭素に換算してガス化率が20%以下であるのに対し、活性炭を30質量部添加した場合には、ガス化率が30%と上昇することが明らかになった。また、活性炭を60質量部と増量させた場合には、ガス化率が60%とさらに上昇することが明らかになった。
【0084】
[実施例2]
次に、水80質量部、セルロース粉末20質量部、及び平均粒径100μmの活性炭20質量部を撹拌混合してスラリーを調製した。その後、攪拌機を備えた167mlのオートクレーブにスラリー40mlを注入し、圧力25MPaで撹拌しながら400℃まで温度上昇させて1時間保持して超臨界水によるガス化反応を行った。反応後、室温まで冷却し、生成ガスを回収して炭素ガス化率を求めた。また、対照実験として、活性炭を添加せずに同様の処理を行った。その結果、活性炭を添加しない場合には炭素ガス化率が10%であるのに対し、活性炭を添加した場合には炭素ガス化率が30%と上昇することが明らかになった。
【0085】
以上のことから、非金属系触媒の添加によりガス化効率を高めるとともに、増量添加によってさらにガス化効率を高めることができることが明らかになった。また、活性炭を含むバイオマスのスラリー体を流動層反応器に供給しても、スラリー体に含まれる活性炭が触媒として作用し、バイオマスのガス化を効率よく行うことができることが示された。
【0086】
[実施例3]
図2に示すように、導入口210及び排出口220を設けた流動層反応器60(φ12.3mm×2400mm)の下方に分散板(網)を備え、平均粒径が1mmのアルミナボールを流動媒体として設置した。この流動層反応器60に、バイオマス(灰)や非金属系触媒の代わりにアルミナ粒子(平均粒径が180〜250μm、あるいは、平均粒径が250〜300μm)を水に混合した混合液を、アルミナ粒子が飛び出し、流動媒体であるアルミナボールが飛び出さない流量(0.19m/s〜0.60m/s)で導入口210から導入し、排出口220から排出されたアルミナ粒子を回収した。
【0087】
その結果、平均粒径が180〜250μmのアルミナ粒子を流動層反応器60に導入した場合には97.5%のアルミナ粒子を回収することができ、平均粒径が250〜300μmのアルミナ粒子を流動層反応器60に導入した場合には98.9%のアルミナ粒子を回収することができることがわかった。このことから、上述のような流動層反応器60に、非金属系触媒を含むバイオマスのスラリー体(平均粒径が300μm以下)を所定の流量(例えば、流動媒体が排出口から飛び出さない最大流量)で導入口210から導入しながら、所定の温度及び所定の圧力下で水熱反応を行うことにより、生成された生成ガスや灰分、並びに、非金属系触媒や水(超臨界水)を排出口220から排出できることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の一実施形態として説明する超臨界水によるバイオマスガス化システムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態として説明する反応器の概略構成を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態として説明するスラリー供給装置の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態として説明する固液分離器の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0089】
10 破砕ポンプ 11 水タンク
20 モーノポンプ 30 第一熱交換器
31 第二熱交換器 40 前処理装置
50 スラリー供給装置 60 反応器
70 クーラー 71 減圧器
80 気液分離器 81 ガスタンク
82 固液分離器 90 バーナー
100 超臨界水によるバイオマスガス化システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非金属系触媒の存在下において、バイオマスを100〜250℃の範囲内の温度、及び0.1〜4MPaの範囲内の圧力の条件下で熱水処理する前処理装置と、
前記前処理装置において熱水処理することにより得られた、前記非金属系触媒を含む前記バイオマスのスラリー体を、374℃以上の温度、及び22.1MPa以上の圧力の条件下で水熱処理する反応器と、
前記前処理装置から前記スラリー体を受け入れ、前記スラリー体を前記反応器に供給するスラリー供給装置と、
前記前処理装置と前記スラリー供給装置との間に配置され、前記スラリー供給装置に受け入れられる前記スラリー体を蓄圧する第1の蓄圧器と、
前記スラリー供給装置と前記反応器との間に配置され、前記スラリー供給装置から供給される前記スラリー体を蓄圧する第2の蓄圧器と、
を備え、
前記スラリー供給装置は、
水を注入する注入口と、注入した前記水を排出する排出口と、前記前処理装置から前記スラリー体を受け入れる受入口と、受け入れた前記スラリー体を前記反応器に供給する供給口と、を備える2つのシリンダーと、
各シリンダー内の前記水と前記スラリー体とを仕切るように配置されたピストンと、
各ピストンを両端に備える軸と、
各シリンダー内の前記スラリー体を攪拌する攪拌機と、
第1の前記シリンダーに前記前処理装置から前記スラリー体を受け入れるとともに、前記前処理装置から第2の前記シリンダーに受け入れた前記スラリー体を前記反応器に供給するように、前記第2のシリンダーに前記水を注入する第1の工程と、前記第1のシリンダーに受け入れた前記スラリー体を前記反応器に供給するとともに、前記第2のシリンダーに前記前処理装置から前記スラリー体を受け入れるように、前記第1のシリンダーに前記水を注入する第2の工程とを、交互に切り替えて行う水注入装置と、
を備えることを特徴とする超臨界水によるバイオマスガス化システム。
【請求項2】
前記軸は、前記ピストンと前記攪拌機との接触を防止する接触防止手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記水注入装置は、各シリンダーに対して一定流量で水を注入することを特徴とする請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記反応器は、
前記反応器内に前記スラリー体を下方から導入する導入口と、
前記反応器において水熱処理することにより生成された生成ガス及び灰分、並びに、前記非金属系触媒及び水を上方から前記反応器外に排出する排出口と、
前記スラリー体の導入により前記反応器内に流動層を形成する流動媒体と、
前記導入口から導入した前記スラリー体を、前記流動層の下方で分散させる分散部と、
を備え、
前記流動媒体は、前記スラリー体の導入速度では排出されない形状で構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記反応器から排出された、前記生成ガス、前記灰分、前記非金属系触媒、及び前記水を、前記生成ガスと、前記灰分、前記非金属系触媒、及び水を含む混合液とに分離する気液分離装置をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記混合液中の前記非金属系触媒を回収する手段をさらに備えることを特徴とする請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記流動媒体が、アルミナボールであることを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
前記分散部を、アルミナボールを積み重ねることにより形成することを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
前記反応器において水熱処理することにより生成された生成ガスの一部を利用して前記反応器を加熱する加熱装置をさらに備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のシステム。
【請求項10】
前記前処理装置で熱水処理する前記バイオマスをあらかじめ破砕する破砕機をさらに備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載のシステム。
【請求項11】
前記反応器において水熱処理することにより生成された生成ガスの熱を利用して、前記スラリー供給装置から前記反応器に供給される前記スラリー体を予熱する熱交換器をさらに備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のシステム。
【請求項12】
前記前処理装置において熱水処理される前記バイオマスを前記前処理装置に供給する手段と、
前記前処理装置から前記スラリー供給装置に受け入れられる前記スラリー体の熱を利用して、前記前処理装置に供給される前記バイオマスを予熱する熱交換器と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のシステム。
【請求項13】
前記前処理装置において熱水処理される前記バイオマスを前記前処理装置に供給する手段と、
前記反応器において水熱処理することにより生成された生成ガスの熱を利用して、前記前処理装置に供給される前記バイオマスを予熱する熱交換器と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
前記前処理装置での熱水処理を、所定の圧力及び当該圧力における水の飽和温度の条件下で行うことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
前記非金属系触媒が、活性炭であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のシステム。
【請求項16】
前記活性炭が、平均粒径200μm以下の粉末であることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記反応器での水熱処理を、600℃の温度、及び25MPaの圧力の条件下で行うことを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−269946(P2007−269946A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96470(P2006−96470)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(592148878)株式会社東洋高圧 (49)
【Fターム(参考)】