説明

超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物およびその製造方法

【課題】粘度の低減した超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、(a)一種もしくは二種以上の超過塩基性ポリアルケニルスルホネートと、(b)一種もしくは二種以上の超過塩基性アルキルアリールスルホネートとからなる超過塩基性ポリアルケニルスルホネート及びアルキルアリールスルホネート組成物であって、全塩基価(TBN)が400より大きいスルホネート組成物に関する。また、本発明は、そのような超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物の製造方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)一種もしくは二種以上の超過塩基性ポリアルケニルスルホネートと、(b)一種もしくは二種以上の超過塩基性アルキルアリールスルホネートとからなる超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物であって、全塩基価(TBN)が400より大きいスルホネート組成物に関するものである。また、本発明は、そのような超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
スルホネート類は、家庭、工場及び公共施設の清掃用途、生活介護及び農業製品、金属工作液、工業プロセス、乳化剤、腐食防止剤に、また潤滑油の添加剤として使用される化学薬品の一部類である。潤滑油用途に用いられるスルホネート類の望ましい性状の一部として、低価格、混合性、耐水性、腐食防止性、乳化性能、摩擦特性、高温安定性、さび性能、および淡色性が挙げられる。
【0003】
潤滑油用途に用いられるスルホネート類は、中性スルホネート、低過塩基性(LOB)スルホネート、または高過塩基性(HOB)スルホネートのいずれかに分類されている。
【0004】
TBNが400までの高過塩基性ポリアルケニルスルホネートは知られていて、従来の過塩基化法により製造することができる。だが、TBNが400より大きくて、粘度が許容可能な範囲にある超過塩基性ポリアルケニルスルホネートは知られていなく、その製造方法も知られていない。高過塩基性ポリアルケニルスルホネートおよび高過塩基性アルキルアリールスルホネートの製造方法は、数多くあり、よく知られている。多数の特許文献及び特許出願に、高過塩基性ポリアルケニルスルホネートおよび高過塩基性アルキルアリールスルホネートの製造方法が開示されている。
【0005】
特許文献1には、アルキルベンゼンスルホン酸の溶液を、水に対して中又は低活性度を有する過剰な酸化カルシウムおよび二酸化炭素と反応させることにより、過塩基性カルシウムスルホネートおよびその濃縮油溶液を製造することが開示されている。そのような酸化カルシウムから得られた過塩基性カルシウムスルホネートの油溶液は、全く透明であり、容易にろ過できる。
【0006】
特許文献2には、式R−SO3M(ただし、Rは炭化水素基であり、mはI族又はII族金属または鉛である)を有する金属スルホネートを、II族金属の炭酸塩、二炭酸塩、酸化物又は水酸化物で過塩基化することが開示されている。また、これらの過塩基性スルホネートを含む潤滑油組成物又は濃縮物も提示されている。
【0007】
特許文献3には、次のような工程からなる炭酸塩化過塩基性カルシウムスルホネートの製造方法が開示されている:(1)低分子量アルカノール、アルキル又はアルカリール置換スルホン酸又はスルホネート化合物、希釈剤および溶媒の初期混合物を形成する工程、(2)初期混合物に塩基性カルシウム化合物を添加して、添加カルシウムの量が中性カルシウムスルホネートを生成させるのに必要な量の少なくとも約10倍である第二混合物を形成する工程、(3)第二混合物を還流温度まで加熱する工程、(4)第二混合物を該還流温度で炭酸塩化して炭酸塩化生成物を生成させ、同時に炭酸塩化反応で生じた水を連続的に除去する工程、(5)炭酸塩化を止めた後、炭酸塩化生成物をアルカノールを除去するのに充分なほど高い温度に加熱する工程、そして(6)炭酸塩化生成物から固形物および溶媒を除去する工程。
【0008】
特許文献4には、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリールスルホネートのアルカリ土類金属塩、炭化水素希釈剤/溶媒、低級アルカノールおよびアルカリ金属酸化物を含む加熱した反応混合物に水を加え、そののち反応混合物に二酸化炭素を通すことにより製造された、過塩基性の油溶性組成物を含む潤滑油が開示されている。
【0009】
特許文献5には、(A)成分:カルシウム炭化水素置換スルホネート、(B)成分:反応の中間時点で一回の添加又は複数回の添加で添加したアルカリ土類金属塩基、(C)成分:(i)炭素原子数2〜4の多価アルコール、(ii)ジ(C3又はC4)グリコール、(iii)トリ(C2−C4)グリコール、(iv)モノ又はポリアルキレングリコールアルキルエーテルである少なくとも一種の化合物、(D)成分:潤滑油、(E)成分:(B)成分の添加又は各添加に続いて添加した二酸化炭素、(F)成分:規定したカルボン酸又はその誘導体、(G)成分:(i)無機ハロゲン化物または(ii)アンモニウムアルカノエートまたはモノ、トリ又はテトラアルキルアンモニウムホルメート又はアルカノエートである少なくとも一種の化合物、ただし(G)成分が(ii)であるときには(F)成分は酸塩化物ではない、を高温で反応させることからなる潤滑油添加剤濃縮物の製造方法が開示されている。
【0010】
特許文献6には、(a)50乃至85質量%の、C14−C40直鎖を持ち、1又は2位にあるフェニルスルホネート置換基のモル比が0から13%の間にあるモノアルキルフェニルスルホネート、および(b)15乃至50質量%の、重質アルキルアリールスルホネートであって、アリール基がフェニルであってもなくてもよく、アルキル鎖が総炭素原子数16〜40の2個の線状アルキル鎖か、または平均で総炭素原子数15〜48の1個又は複数個の分枝アルキル鎖である重質アルキルアリールスルホネートからなる、過アルカリ化アルカリ土類金属のアルキルアリールスルホネート混合物が開示されている。これらの混合物は、線状アルキル鎖の1又は2位で置換された線状モノアルキルフェニルスルホネートを10%未満で含む限りは、潤滑油に清浄/分散添加剤として使用するのに適した性状を示す。
【0011】
特許文献7には、スルホン酸を、塩化物の不在下、カルボン酸の追加無しで、高TBNの硫化カルシウムアルキルフェネートで中和することにより製造された、低過塩基性アルキルフェニルスルホネートが開示されている。
【0012】
特許文献8には、(a)20乃至70質量%の、線状モノアルキルフェニルスルホネートであって、線状モノアルキル置換基が炭素原子14〜40個、好ましくは炭素原子20〜24個を含み、線状アルキル鎖の1又は2位に固定されたフェニルスルホネート基のモル%が10%から25%の間、好ましくは13%から20%の間にある線状モノアルキルフェニルスルホネート、および(b)30乃至80質量%の、分枝モノアルキル置換基が炭素原子14〜18個を含む分枝モノアルキルフェニルスルホネートを有する、アルカリ土類金属のアルキルフェニルスルホネート混合物が開示されている。
【0013】
特許文献9には、アルキルアリール組成物であって、アリール基がフェノール以外のものであり、アルキル基が異性化C14−C40ノルマルアルファオレフィンから誘導され、かつ(1)線状アルキル鎖の1又は2位に固定されたアリール基の質量%が約23未満であるか、あるいは(2)少なくとも28質量%のアルキル基が分枝鎖アルキル基であるか、あるいは(3)それら両方であるアルキルアリール組成物が開示されていて、潤滑油添加剤として使用することができるアルカリ土類アルキルアリールスルホネートを製造するのに有用である。
【0014】
特許文献10には、アルキルビニリデンと1,1−ジアルキルの異性体を20モル%より多く含むポリアルキレン混合物から誘導された、ポリアルケニルスルホン酸の混合物からなるポリアルキレンスルホン酸組成物、およびその組成物の製造方法が開示されている。また、ポリアルケニルスルホン酸の混合物から製造された低及び高過塩基性スルホネート、およびそれらスルホネートを含む潤滑油も提示されている。
【0015】
特許文献11には、BNが少なくとも250のアルカリ土類スルホネートであって、アリール基がフェノールではなく、アルキル鎖が炭素原子14から40個を含む直鎖であり、かつ線状アルキル鎖の1又は2位に固定されたアリールスルホネート基のモル%が13%から30%の間にある、アルカリ土類スルホネートが開示されている。そのようなアルカリ土類アルキルアリールスルホネートは、淡色で表皮形成も生じなく、同時に混合性能、溶解性能および泡立ち性能が改善されている。出発アルキレートは、ヨウ素価が低くてモノアルキレートを非常に高レベルで有し、結果としてスルホン化工程で高い収率を示す。
【0016】
特許文献12には、アルキルビニリデンを約20モル%より多く含むポリアルキレン混合物と1,1−ジアルキルの異性体から誘導されたポリアルキレンスルホン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩である、ポリアルケニルスルホネートを摩擦緩和量で機能液に添加することからなる、機能液のブレーキ及びクラッチ能力を改善する方法が開示されている。
【0017】
特許文献13には、ポリアルケンと三酸化硫黄との反応の結果生じた生成物を、貯蔵または更なる処理に先立って中和剤で中和することで安定化することにより、安定化ポリアルケニルスルホン酸を製造する改良方法が開示されている。この方法のこの時点での中和が結果的に、安定でスルトン量の減少したポリアルケニルスルホン酸をもたらす。
【0018】
【特許文献1】米国特許第4086170号明細書
【特許文献2】米国特許第4137184号明細書
【特許文献3】米国特許第4880550号明細書
【特許文献4】米国特許第5132033号明細書
【特許文献5】米国特許第5384053号明細書
【特許文献6】米国特許第6054419号明細書
【特許文献7】米国特許第6159912号明細書
【特許文献8】米国特許第6204226号明細書
【特許文献9】米国特許第6337310B1号明細書
【特許文献10】米国特許第6410491号明細書
【特許文献11】米国特許第6479440号明細書
【特許文献12】米国特許出願第10/714469号(公開第US2004/0102339A1号)明細書
【特許文献13】米国特許出願第10/660948号(公開第US2005/0059560A1号)明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
超過塩基性ポリアルケニルスルホネートは、酸性物質を中和する能力を大いに必要とするディーゼルエンジン、特に舶用ディーゼルエンジンに用いられる潤滑油に使用するのに非常に望ましいものである。だが、非常に高過塩基性のポリアルケニルスルホネートを製造するための従来法は、生成物の粘度が非常に高くて許容できないことに関連した問題を抱えていて、それがスルホネートの取扱いを難しくしている。よって、TBNが400より高く、かつ粘度が100℃で20から1000cStの間にある過塩基性ポリアルケニルスルホネートを製造する方法が、大いに必要とされている。本願発明者は、TBNが400より大きいポリアルケニルスルホネートの新規な製造方法であって、過塩基化反応の前に、アルキルアリールスルホン酸または安定化アルキルアリールスルホン酸を、ポリアルキレンスルホン酸または安定化ポリアルケニルスルホン酸に添加することを利用する方法を発見した。
【0020】
驚くべきことには、過塩基性ポリアルケニルスルホネートを、超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物として製造すると、ポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの超過塩基性混合物の粘度を、対応する超過塩基性の100%ポリアルケニルスルホネートに比べて、10倍乃至100倍も低減できることが分かった。この超過塩基性のアルキルアリールスルホネートとポリアルケニルスルホネートとの組成物は、高いアルカリ度保有を要する潤滑油組成物に使用するのに適している。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、(a)一種もしくは二種以上の超過塩基性ポリアルケニルスルホネートと、(b)一種もしくは二種以上の超過塩基性アルキルアリールスルホネートとからなる、超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物であって、全塩基価(TBN)が400より大きいスルホネート組成物に関する。本発明はまた、そのような超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物の製造方法にもある。また、本発明は、(a)一種もしくは二種以上の超過塩基性ポリアルケニルスルホネートと、(b)一種もしくは二種以上の超過塩基性アルキルアリールスルホネートとからなる、超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物であって、全塩基価(TBN)が400より大きいスルホネート組成物を含む、潤滑油組成物及び濃縮物にも関する。
【0022】
つまり、本発明は、下記の成分からなる超過塩基性のポリアルケニルとアルキルアリールスルホネートとの組成物であって、全塩基価(TBN)が400より大きいスルホネート組成物に関する:
(a)一種もしくは二種以上の超過塩基性ポリアルケニルスルホネート、および
(b)一種もしくは二種以上の超過塩基性アルキルアリールスルホネート。
【0023】
本発明の超過塩基性のポリアルケニルとアルキルアリールスルホネートとの組成物のTBNは、425より大きいことが好ましく、超過塩基性のポリアルケニルとアルキルアリールスルホネートとの組成物のTBNは450より大きいことが更に好ましい。
【0024】
本発明の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物は、粘度が100℃で約20乃至約1000cStの範囲にあり、TBNが425であることが好ましい(粘度を測定する前に混合物のTBNを425に調整した)。より好ましくは、超過塩基性のポリアルケニルとアルキルアリールスルホネートとの組成物は、粘度が100℃で約40乃至約750cStの範囲にあり、TBNが425である。最も好ましくは、超過塩基性のポリアルケニルとアルキルアリールスルホネートとの組成物は、粘度が100℃で約60乃至約500cStの範囲にあり、TBNが425である。
【0025】
本発明の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩またはそれらの混合物である。好ましくは、超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物はアルカリ土類金属塩であり、より好ましくは、超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物はカルシウム塩である。
【0026】
ポリアルケニルスルホネートは、アルキルビニリデンを約20モル%より多く含むポリアルケン混合物と1,1−ジアルキルの異性体とから誘導された、ポリアルケニルスルホン酸の塩であることが好ましい。
【0027】
より好ましくは、アルキルビニリデン異性体はメチルビニリデン異性体であり、そして1,1−ジアルキル異性体は1,1−ジメチル異性体である。
【0028】
本発明のポリアルケニルスルホネートを製造するのに用いられるポリアルケンは、数平均分子量が約168乃至約5000である。好ましくは、ポリアルケンの数平均分子量は約350乃至約1000である。より好ましくは、ポリアルケンの数平均分子量は約400乃至約600である。
【0029】
ポリアルケンはポリイソブテンであることが好ましい。
【0030】
アルキルアリールスルホネートのアルキルアリール部のアリール基は、非フェノール系芳香環であり、そしてアルキル鎖は、炭素原子約4〜約40個を含む線状アルキル鎖又は分枝アルキル鎖である。好ましくは、アルキル鎖は炭素原子約12〜約32個を含み、より好ましくは、アルキル鎖は炭素原子約20〜約24個を含む。最も好ましくは、アルキル鎖は炭素原子約20〜約24個を含む線状アルキル鎖である。
【0031】
アリール基はフェニルまたはトリルであることが好ましく、より好ましくは、アリール基はフェニルである。
【0032】
本発明のまた別の態様は、(a)一種もしくは二種以上の超過塩基性ポリアルケニルスルホネートと(b)一種もしくは二種以上の超過塩基性アルキルアリールスルホネートとからなり、全塩基価(TBN)が400より大きい超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物を製造する方法であって、下記の工程からなる方法に関する:
(a)(i)一種もしくは二種以上のポリアルケニルスルホン酸、安定化ポリアルケニルスルホン酸またはそれらの混合物と、(ii)一種もしくは二種以上のアルキルアリールスルホン酸、安定化アルキルアリールスルホン酸またはそれらの混合物との混合物を調製する工程、そして
(b)混合物を溶媒の存在下で、アルカリ金属又はアルカリ土類金属源、C1−C5アルカノールおよび二酸化炭素と反応させる工程。
【0033】
本発明の方法により製造された超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物のTBNは、425より大きいことが好ましく、超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物のTBNは450より大きいことが更に好ましい。
【0034】
本発明の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物は、粘度が100℃で約20乃至約1000cStの範囲にあり、TBNが425であることが好ましい(粘度を測定する前に組成物のTBNを425に調整した)。超過塩基性のポリアルケニルとアルキルアリールスルホネートとの組成物は、粘度が100℃で約40乃至約750cStの範囲にあり、TBNが425であることが更に好ましい。超過塩基性のポリアルケニルとアルキルアリールスルホネートとの組成物は、粘度が100℃で約60乃至約500cStの範囲にあり、TBNが425であることが最も好ましい。
【0035】
工程(b)の金属はアルカリ土類金属であることが好ましく、より好ましくは、アルカリ土類金属はカルシウムである。
【0036】
本発明の別の態様は、下記の成分を含む潤滑油組成物に関する:
(a)主要量の潤滑粘度の油、および
(b)(i)一種もしくは二種以上の超過塩基性ポリアルケニルスルホネートと、(ii)一種もしくは二種以上の超過塩基性アルキルアリールスルホネートとからなる超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物であって、全塩基価(TBN)が400より大きいスルホネート組成物。
【0037】
本発明の潤滑油組成物に用いられる超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物のTBNは、425より大きいことが好ましく、超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物のTBNは450より大きいことが更に好ましい。
【0038】
本発明の潤滑油組成物に用いられる超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物は、粘度が100℃で約20乃至約1000cStの範囲にあり、TBNが425であることが好ましい。超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物は、粘度が100℃で約40乃至約750cStの範囲にあり、TBNが425であることが更に好ましい。超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物は、粘度が100℃で約60乃至約500cStの範囲にあり、TBNが425であることが最も好ましい。
【0039】
また、本発明の潤滑油組成物は、一種もしくは二種以上の清浄剤、分散剤、粘度指数向上剤、無灰硫黄極圧剤、アルカリ土類金属及びアルカリ金属ホウ酸塩化極圧剤、モリブデン含有極圧剤、流動点降下剤、さび止め添加剤、腐食防止剤、灰分含有摩擦緩和剤、無灰摩擦緩和剤、モリブデン含有摩擦緩和剤、金属不活性化剤、シール膨潤剤、抗乳化剤および消泡剤から選ばれる一種もしくは二種以上の添加剤も含んでいてもよい。
【0040】
本発明のまた別の態様は、下記の成分を含む潤滑油濃縮物に関する:
(a)約10質量%乃至約90質量%の潤滑粘度の油、および
(b)(i)一種もしくは二種以上の超過塩基性ポリアルケニルスルホネートと、(ii)一種もしくは二種以上の超過塩基性アルキルアリールスルホネートとからなる超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物であって、全塩基価(TBN)が400より大きいスルホネート組成物。
【0041】
本発明の潤滑油濃縮物に用いられる超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物のTBNは、425より大きいことが好ましく、超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物のTBNは450より大きいことが更に好ましい。
【0042】
本発明の潤滑油濃縮物に用いられる超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物は、粘度が100℃で約20乃至約1000cStの範囲にあり、TBNが425であることが好ましい。超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物は、粘度が100℃で約40乃至約750cStの範囲にあり、TBNが425であることが更に好ましい。超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物は、粘度が100℃で約60乃至約500cStの範囲にあり、TBNが425であることが最も好ましい。
【0043】
また、本発明の潤滑油濃縮物は、清浄剤、分散剤、粘度指数向上剤、無灰硫黄極圧剤、アルカリ土類金属及びアルカリ金属ホウ酸塩化極圧剤、モリブデン含有極圧剤、流動点降下剤、さび止め添加剤、腐食防止剤、灰分含有摩擦緩和剤、無灰摩擦緩和剤、モリブデン含有摩擦緩和剤、金属不活性化剤、シール膨潤剤、抗乳化剤および消泡剤から選ばれる一種もしくは二種以上の添加剤も含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0044】
数ある要因のうちでも、本発明は、過塩基化工程で、少量のアルキルアリールスルホン酸または安定化アルキルアリールスルホン酸を、ポリアルケニルスルホン酸または安定化ポリアルケニルスルホン酸に添加することによって、超過塩基性ポリアルケニルスルホネートの粘度を低減できるという、驚くべき発見に基づいている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
[定義]
本明細書で使用するとき、以下の用語は、特に断わらない限り以下の意味を有する。
【0046】
「アルカリ金属」は、本明細書で使用するとき、周期表のI族金属を意味し、例えばナトリウム、カリウムおよびリチウムまたはそれらの混合物である。
【0047】
「アルカリ土類金属」は、本明細書で使用するとき、周期表のII族金属を意味し、例えばカルシウム、バリウム、マグネシウム、ストロンチウムまたはそれらの混合物である。
【0048】
「アルカリ土類アルキルアリールスルホネート」は、本明細書で使用するとき、アルキルアリールスルホン酸のアルカリ土類金属塩を意味する。言い換えれば、(1)アルキル基と(2)金属塩を形成することが可能なスルホン酸基とで置換されたアリールのアルカリ土類金属塩である。
【0049】
「アルキル」は、本明細書で使用するとき、直鎖と分枝鎖両方のアルキル基を意味する。
【0050】
「アルキレン」は、本明細書で使用するとき、炭素原子数が少なくとも2の直鎖及び分枝鎖アルキレン基を意味する。代表的なアルキレン基としては例えば、エチレン(−CH2CH2−)、プロピレン(−CH2CH2CH2−)、イソプロピレン(−CH(CH3)CH2−)、n−ブチレン(−CH2CH2CH2CH2−)、sec−ブチレン(−CH(CH2CH3)CH2−)、およびn−ペンチレン(−CH2CH2CH2CH2CH2−)等を挙げることができる。
【0051】
「ジアルキルアリール炭化水素含量」は、本明細書で使用するとき、モノアルキルアリール炭化水素ではないアルキルアリール炭化水素の質量%[100×ジアルキルアリール炭化水素/(モノアルキルアリール炭化水素+ジアルキルアリール炭化水素)]を意味する。
【0052】
「高過塩基性」又は「HOB」は、本明細書で使用するとき、TBNが約60より大きく約400までと大きい過塩基性ポリアルケニル又はアルキルアリールスルホネートを意味する。一般に、高TBNの過塩基性清浄剤組成物を得るには二酸化炭素処理が必要である。これにより、金属塩基のコロイド分散液が生成すると考えられる。
【0053】
「モノアルキルアリール炭化水素含量」は、本明細書で使用するとき、ジアルキルアリール炭化水素ではないアルキルアリール炭化水素の質量%[100×モノアルキルアリール炭化水素/(モノアルキルアリール炭化水素+ジアルキルアリール炭化水素)]を意味する。
【0054】
「低過塩基性」又は「LOB」は、本明細書で使用するとき、TBNが約0乃至約60と低い過塩基性ポリアルケニル又はアルキルアリールスルホネートを意味する。
【0055】
「ポリアルキル」又は「ポリアルケニル」は、本明細書で使用するとき、一般にモノオレフィン、特には1−モノオレフィン、例えばエチレン、プロピレンおよびブチレン等の重合体又は共重合体であるポリオレフィンから誘導されたアルキル又はアルケニル基を意味する。用いられるモノオレフィンは、炭素原子数約2〜約24であることが好ましく、より好ましくは炭素原子数約3〜約12である。より好ましいモノオレフィンとしては、プロピレン、ブチレン、特にはイソブテン、1−オクテンおよび1−デセンが挙げられる。そのようなモノオレフィンから製造されたポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリブテン、特にはポリイソブテン、および1−オクテンや1−デセンから生成したポリ−アルファ−オレフィンを挙げることができる。
【0056】
「アルカリ金属又はアルカリ土類金属源」は、本明細書で使用するとき、アルカリ金属の水酸化物、酸化物又はアルコキシド、およびアルカリ土類金属の水酸化物、酸化物又はアルコキシド、またはそれらの混合物を意味する。
【0057】
「安定化ポリイソブテンスルホン酸」又は「安定化アルキルアリールスルホン酸」は、本明細書で使用するとき、アルカリ金属又はアルカリ土類金属による中和で安定化したポリイソブテンスルホン酸及びアルキルアリールスルホン酸を意味する。中和度は、65質量%の中性ポリイソブテンスルホン酸及びアルキルアリールスルホン酸から、100質量%のポリイソブテンスルホン酸及びアルキルアリールスルホン酸の間で変えることができる。好ましくは中和度は、80質量%の中性ポリイソブテンスルホン酸及びアルキルアリールスルホン酸から、100質量%のポリイソブテンスルホン酸及びアルキルアリールスルホン酸の間で変えることができる。
【0058】
「超過塩基性」は、本明細書で使用するとき、TBNが400より大きい過塩基性ポリアルケニルスルホネート又はアルキルアリールスルホネートを意味する。一般に、高TBNの過塩基性清浄剤組成物を得るには二酸化炭素処理が必要である。これにより、金属塩基のコロイド分散液が生成すると考えられる。
【0059】
「全塩基価」又は「TBN」は、本明細書で使用するとき、試料1グラムにおけるKOHのミリグラムと同等の塩基の量を意味する。従って、TBN値が大きいほど、生成物のアルカリ性が強いこと、よって保有するアルカリ度が大きいことを反映している。試料のTBNは、ASTM D2896試験または他の任意の同等な方法により決定することができる。大まかに言えば、TBNは、同等の中和をもたらす水酸化カリウムのmgに等しい値として表される、潤滑油組成物1グラムの中和能力である。よって、TBN10は、組成物1グラムが水酸化カリウム10mgに等しい中和能力を有することを意味する。
【0060】
特に断らない限り、パーセントは全て質量%であり、比は全てモル比であり、そして分子量は全て数平均分子量である。
【0061】
前述したように、本発明は、TBNが400より大きい新規なポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物に関する。また、本発明は、新規なポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物であって、TBNが400より大きい混合物の製造方法にも関する。このポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩であってもよいし、あるいはそれらの混合物であってもよい。
【0062】
[ポリアルケニルスルホン酸]
超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物を製造するための本発明の方法に用いられるポリアルケニルスルホン酸は、アルキルビニリデンを約20モル%より多く含むポリアルケンと1,1−ジアルキルの異性体との混合物を、三酸化硫黄−SO3−源と反応させることにより製造することができる。−SO3−源は、三酸化硫黄と空気の混合物、三酸化硫黄水和物、三酸化硫黄アミン錯体、三酸化硫黄エーテル錯体、三酸化硫黄リン酸エステル錯体、硫酸アセチル、三酸化硫黄と酢酸の混合物、スルファミド酸、硫酸アルキル、またはクロロスルホン酸であってよい。反応は、それだけで、あるいは任意の不活性な無水溶媒中で行うことができる。スルホン化の条件は決定的なものではない。反応温度は、約−30℃乃至約200℃の範囲にあってよく、用いる特定のスルホン化剤に依存する。例えば、硫酸アセチルでは反応に低温が必要であり、生成物の分解を防ぐためには高温を避けるべきである。反応時間は、反応温度など他の条件に応じて数分から数時間まで変えることができる。反応の程度は、全ての遊離硫酸も洗い流した後、スルホン化ポリアルケンの滴定により測定することができる。スルホン化剤とポリアルケンとの一般的なモル比は、約0.8:1.0乃至約2.0:1.0であろう。
【0063】
ポリアルケニルスルホン酸を製造するのに使用されるポリアルケンは、炭素原子数約12〜約350のポリアルケンの混合物である。混合物は、アルキルビニリデンを約20モル%より多く含み、好ましくは約50モル%より多く、より好ましくは約70モル%より多く含む、そして1,1−ジアルキルの異性体を含む。好ましいアルキルビニリデン異性体はメチルビニリデン異性体であり、また好ましい1,1−ジアルキル異性体は1,1−ジメチル異性体である。
【0064】
ポリアルケンの数平均分子量は、約168乃至約5000の範囲にある。好ましくは、ポリアルケンの数平均分子量は約350乃至約2300であり、より好ましくは約350乃至約1000、そして最も好ましくは約350乃至約750である。
【0065】
好ましいポリアルケンはポリイソブテンである。特に好ましいのは、触媒としてBF3を用いて製造されたポリイソブテンである。
【0066】
米国特許第5408018号明細書(ラス、1995年4月18日発行、その内容も全て参照内容として本明細書の記載とする)及びその引用文献には、アルキルビニリデンと1,1−ジアルキルの異性体を約20モル%より多く含むポリイソブテンの好適な製造方法が記載されている。
【0067】
一般に、ポリイソブテニルスルホン酸又はスルホネートを、アルキルビニリデンと1,1−ジアルキルの異性体のモル%が約20%より多いポリイソブテンから製造すると、得られた生成物の分子量分布は、分子量が約56ダルトンの偶数倍で分かれたポリイソブテニルスルホン酸又はスルホネートを少なくとも約80%含んでいる。言い換えれば、ポリイソブテニルスルホン酸又はスルホネートの分子量分布において約20%未満のスルホン酸又はスルホネートは、約4で均等に割り切れない総数の炭素原子を含んでいる。
【0068】
[ポリアルケニルスルホネート]
本発明の超過塩基性ポリアルケニルスルホネートは、以下に記載する本発明の方法を用いることにより、ポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの超過塩基性混合物として製造される。
【0069】
[アルキルアリールスルホン酸]
本発明に用いられるアルキルアリールスルホン酸は、前述したアルキルアリール炭化水素をスルホン化反応にかけることにより製造することができる。
【0070】
スルホン化は、当該分野の熟練者には知られている任意のスルホン化法により実施することができる。用いることができる一スルホン化法について以下に述べる。
【0071】
酸素と二酸化硫黄(SO2)の混合物を、酸化バナジウム(V25)を含む触媒炉に通すことにより生成させた三酸化硫黄(SO3)を用いて、前述したアルキルアリール炭化水素をスルホン化することができる。三酸化硫黄ガスをスルホン化反応器の頂部で、同時に発生させたアルキルアリール流に導入する。得られたスルホン酸を反応器の底部で回収する。スルホン化温度は50℃から60℃の間で維持する。スルホン化反応後に、10%の100ニュートラル油で希釈したのち熱処理することにより、残存する硫酸を取り除く。
【0072】
[アルキルアリール炭化水素]
本発明のアルキルアリールスルホネートを製造するのに用いることができるアルキルアリール炭化水素は、アリール基、フェニルまたは置換フェニル、例えばトリル、キシリル、エチルフェニルまたはクメニルのアルキル化により製造することができる。
【0073】
アルキル基は、炭素原子約4〜約40個を含む線状アルキル鎖又は分枝アルキル鎖であってよい。好ましくは、アルキル鎖は炭素原子約12〜約32個を含み、より好ましくは、アルキル鎖は炭素原子約20〜約24個を含む。最も好ましくは、アルキル鎖は炭素原子約20〜約24個を含む線状アルキル鎖である。
【0074】
アルキル基が線状長鎖アルキル基であると、線状アルキル鎖の1又は2位にアリールスルホネート基を高いモル%でもたらす。線状アルキル鎖は、炭素原子を14から40個の間で含み、好ましくは炭素原子20〜28個または20〜24個含む。C14−C40ノルマルアルファオレフィンから、アルカリ土類アルキルアリールスルホネートを誘導することが好ましく、より好ましくはC20−C28又はC20−C24ノルマルアルファオレフィンから誘導する。
【0075】
そのようなアルキルアリール炭化水素は、他の重質アルキルアリール炭化水素、例えば、両アルキル鎖の総炭素数がC14からC60の間、好ましくはC18からC40の間にあるジアルキルベンゼン;アリール基がフェニルであっても、トリル、キシリル、エチルフェニルまたはクメニルなどの置換フェニルであってもよく、アルキル基が総炭素数が少なくとも平均で15から48までの分枝鎖である、モノ又はポリアルキルアリールスルホネート;分子量が好ましくは400から2300の間にあるアルキルナフタレン、石油留分又はポリイソブテン、と混合してもよい。アルキルアリール炭化水素のアルキル鎖は、パラフィンの脱水素、あるいはエチレン、プロピレン、ブテン−1またはイソブテンの重合から生じることができる。
【0076】
[ポリアルキレンスルホン酸及びアルキルアリールスルホン酸の安定化]
上述したポリアルキレンスルホン酸およびアルキルアリールスルホン酸を、当該分野の熟練者には知られている任意の方法で、部分中和または全体中和により安定化することができる。以下に、一般に使用されている方法について述べる。
【0077】
スルホン酸を、希釈剤および水の中で、アルカリ金属又はアルカリ土類金属、またはその酸化物又は水酸化物を用いて、アルコールの存在下で、好ましくは炭素原子1〜約4個を含むカルボン酸促進剤を用いて、部分的に中和する、あるいは全体的に中和することができる。アルコールと水を除去してろ過した後に、安定化スルホン酸が得られる。中和度は、65質量%の中性ポリイソブテンスルホン酸及びアルキルアリールスルホン酸から、100質量%のポリイソブテンスルホン酸及びアルキルアリールスルホン酸の間で変えることができる。好ましくは中和度は、80質量%の中性ポリイソブテンスルホン酸及びアルキルアリールスルホン酸から、100質量%のポリイソブテンスルホン酸及びアルキルアリールスルホン酸の間で変えることができる。
【0078】
[ポリアルキレンスルホン酸、安定化ポリアルケニルスルホン酸又はそれらの混合物と、アルキルアリールスルホン酸、安定化アルキルアリールスルホン酸又はそれらの混合物との混合物の炭酸塩化および過塩基化]
ポリアルキレン及びアルキルアリールスルホン酸および/または安定化ポリアルキレン及びアルキルアリールスルホン酸を、以下に記載するようにして超過塩基化することができる。
【0079】
ポリアルキレンスルホン酸、安定化ポリアルケニルスルホン酸又はそれらの混合物と、アルキルアリールスルホン酸、安定化アルキルアリールスルホン酸又はそれらの混合物との混合物の炭酸塩化及び過塩基化を、スルホン酸の量に比べて大過剰のアルカリ金属又はアルカリ土類金属源を用いて、アルコールと溶媒の存在下で実施できる。炭酸塩化は、二酸化炭素を用いて約30℃から40℃までの温度で行なうことができる。蒸留により溶媒を除去し、ろ過により沈降物を除去した。得られたポリアルケニル及びアルキルアリールスルホネートの超過塩基性混合物は、ASTM D2896で測定したところ、TBNが400より高く、好ましくは425より高く、より好ましくは450より高い。
【0080】
本発明のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートの超過塩基性混合物の特徴は、金属含量が、過塩基化対象の該スルホネート中に金属陽イオンの化学量論に従って存在するであろう金属含量よりも過剰であることにある。これら超過塩基性ポリアルケニルスルホネート及びアルキルアリールスルホネートは、金属をスルホン酸を中和するのに必要な量よりも過剰に含んでいる。
【0081】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属は、任意の適当な手段により反応混合物に導入することができる。一つの方法は、塩基的に反応する金属化合物、例えば水酸化物、酸化物またはアルコキシドを、ポリアルケニルスルホン酸、安定化ポリアルケニルスルホン酸又はそれらの混合物と、アルキルアリールスルホン酸、安定化アルキルアリールスルホン酸又はそれらの混合物との混合物と一緒にすることからなる。これは一般に、ヒドロキシル促進剤、例えば水、2−エチルヘキサノールまたはメタノールなどのC1−C5アルカノール、および不活性溶媒の存在下で、一般に加熱しながら行う。これらの条件下で、塩基的に反応する化合物により金属スルホネートが生じる。次いで、ヒドロキシル促進剤と溶媒を取り除いて、金属スルホネートを生成させることができる。好ましいスルホネートは、アルカリ土類金属スルホネート、特にはカルシウム、バリウム及びマグネシウムのスルホネートである。最も好ましいのは、カルシウム及びマグネシウムスルホネートである。
【0082】
本出願人は、TBNが400より大きいポリアルケニルスルホネートの新規な製造方法であって、過塩基化反応の前に、アルキルアリールスルホン酸または安定化アルキルアリールスルホン酸を、ポリアルケニルスルホン酸または安定化ポリアルケニルスルホン酸に添加することを用いる方法を発見した。驚くべきことには、ポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの超過塩基性の混合物の粘度を、対応する超過塩基性の100%ポリアルケニルスルホネートに比べて、10倍乃至100倍も低減できることが分かった。このポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの超過塩基性混合物は、高いアルカリ度保有を要する潤滑油組成物及び濃縮物に使用するのに適している。
【0083】
[潤滑油組成物]
本発明の潤滑油組成物は、以下に詳しく記載する化合物を単にブレンドしたり混合したりすることにより製造することができる。所望の濃度の添加剤を含有する潤滑油組成物のブレンドを容易にするために、これらの化合物は他の種々の添加剤と一緒に適当な比率で、濃縮物またはパッケージとして予備ブレンドすることもできる。
【0084】
(潤滑粘度の油)
潤滑粘度の油または基油は、本明細書で使用するとき、潤滑油を意味し、鉱油であっても潤滑粘度の合成油であってもよいが、好ましくは内燃機関のクランクケースに使用できるものである。クランクケース潤滑油の粘度は通常、−17.8℃で約1300センチストークス乃至98.9℃で22.7センチストークスである。潤滑油は合成原料からでも天然原料からでも誘導することができる。本発明に基油として使用される鉱油としては、パラフィン系、ナフテン系、および潤滑油組成物に通常使用されるその他の油を挙げることができる。合成油としては、炭化水素合成油および合成エステルが挙げられる。使用できる合成炭化水素油としては、適正な粘度を有するアルファ−オレフィンの液体重合体が挙げられる。特に有用なものはC6−C12アルファ−オレフィンの水素化液体オリゴマー、例えば1−デセン三量体である。同様に、適正な粘度のアルキルベンゼン、例えばジドデシルベンゼンを使用してもよい。使用できる合成エステルとしては、モノカルボン酸及びポリカルボン酸とモノヒドロキシアルカノール及びポリオールとのエステルが挙げられる。代表的な例としては、ジドデシルアジペート、ペンタエリトリトールテトラカプロエート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、およびジラウリルセバケート等がある。モノ及びジカルボン酸とモノ及びジヒドロキシアルカノールとの混合物から合成された複合エステルも使用することができる。炭化水素油と合成油のブレンドを使用してもよい。例えば、10質量%乃至25質量%の水素化1−デセン三量体と75質量%乃至90質量%の37.8℃で683センチストークスの鉱油とのブレンドは、非常に優れた油基材となる。また、フィッシャー・トロプシュ法誘導基油を本発明の潤滑油組成物に用いてもよい。
【0085】
[その他の添加剤成分]
以下の添加剤成分は、本発明に好ましく用いることができる成分の幾つかの例である。これら添加剤の例は、本発明を説明するために記されるのであって、本発明を限定しようとするものではない。
【0086】
(金属清浄剤)
本発明の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物に加えて、潤滑油は他の清浄剤、例えば硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルフェネート、カルボキシレート、サリチレート、フェノラート、多ヒドロキシアルキル又はアルケニル芳香族化合物の硫化又は未硫化金属塩、アルキル又はアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート、硫化又は未硫化アルキル又はアルケニルナフテネート、アルカノール酸の金属塩、アルキル又はアルケニル多酸の金属塩、およびそれらの化学的及び物理的混合物を含有していてもよい。
【0087】
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、鉱油がサービス中に劣化する傾向を低減するものであり、その劣化の証拠は、金属表面のスラッジ及びワニス状堆積物のような酸化生成物および粘度の増加である。酸化防止剤としては、これらに限定されるものではないが、フェノール型(フェノール系)酸化防止剤のような酸化防止剤、例えば4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−1−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジ−メチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルベンジル)−スルフィド、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)を挙げることができる。ジフェニルアミン型酸化防止剤としては、これらに限定されるものではないが、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、およびアルキル化−α−ナフチルアミンが挙げられる。別の型の酸化防止剤としては、金属ジチオカルバメート(例えば、亜鉛ジチオカルバメート)、およびメチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)が挙げられる。酸化防止剤は、一般にエンジン油の全量当り約0乃至約10質量%、好ましくは約0.05乃至約3.0質量%の量で油に混ぜ合わされる。
【0088】
(耐摩耗及び極圧剤)
その名称が意味するように、これらの添加剤は可動金属部分の摩耗を低減する。そのような添加剤の例としては、これらに限定されるものでないが、リン酸エステル、亜リン酸エステル、カルバメート、エステル、硫黄含有化合物、モリブデン錯体、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(第一級アルキル、第二級アルキルおよびアリール型)、硫化油、硫化イソブテン、硫化ポリブテン、硫化ジフェニル、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、フルオロアルキルポリシロキサン、およびナフテン酸鉛を挙げることができる。
【0089】
(さび止め添加剤(さび止め剤))
非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート。
【0090】
その他の化合物:ステアリン酸および他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分カルボン酸エステル、およびリン酸エステル。
【0091】
(抗乳化剤)
アルキルフェノールと酸化エチレンの付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0092】
(摩擦緩和剤)
脂肪アルコール、1,2−ジオール、ホウ酸塩化1,2−ジオール、脂肪酸、アミン、脂肪酸アミド、ホウ酸塩化エステル、および他のエステル。
【0093】
(多機能添加剤)
硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデンオルガノリンジチオエート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン−モリブデン錯化合物、および硫黄含有モリブデン錯化合物。
【0094】
(粘度指数向上剤)
ポリメタクリレート型重合体、エチレン−プロピレン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、水和スチレン−イソプレン共重合体、ポリイソブテン、および分散型粘度指数向上剤。
【0095】
(流動点降下剤)
ポリメチルメタクリレート。
【0096】
(消泡剤)
アルキルメタクリレート重合体、およびジメチルシリコーン重合体。
【実施例】
【0097】
下記の実施例に記載するようにして、本発明のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートの超過塩基性混合物を製造した。
【0098】
[実施例1] 安定化ポリイソブテンスルホン酸の製造
ポリイソブテンスルホン酸試料を、米国特許出願第2005/059560号明細書の実施例3に記された方法に従って、中和により安定化した。数平均分子量(Mn)が450のポリイソブテン(PIB)供給物(テキサス・ペトロケミカルLP(Texas Petrochemical LP)社よりTPC545として入手)を、下記の条件にて空気中、落下膜式反応器内でSO3(三酸化硫黄)でスルホン化した。
【0099】
SO3は、酸化バナジウム触媒を含む反応器にSO2と空気の混合物を通すことにより製造した。
SO3/PIBモル比=1.01、供給温度75℃、反応器温度=55℃、SO3/空気温度=50℃、空気中のSO3濃度=4.1容量%、SO3充填量=0.9キログラム/時間/センチメートル、PIB供給速度24キログラム/時間、およびSO3流速4.31キログラム/時間。スルホン化器から流出した生成物のスルホン酸含量は、HSO3-(スルホン酸)に基づき13.2質量%であった。落下膜式反応器から流出した生成物流全体を即座に、5.95キログラム/時間の速度で流れる石灰(水酸化カルシウム(Ca(OH)2))の25質量%溶媒(100ニュートラル油)スラリーで中和した。カルシウムによる全スルホン酸中和度はおよそ85質量%であった。
【0100】
同様に、Mn550PIBをまず2種100N油で77.1質量%に希釈したという注目すべきこと以外は上記の方法を用いて、数平均分子量(Mn)が550の安定化PIBを製造した。Mn550PIBは、テキサス・ペトロケミカルLP社よりTPC535及びTPC575として入手したMn350とMn750のPIBを、適当な量でブレンドして製造した。Mn550PIBのスルホン化反応条件は下記の通りである。
【0101】
SO3/PIBモル比=0.84、供給温度90℃、反応器温度=78℃、SO3/空気温度=50℃、空気中のSO3濃度=3.6容量%、SO3充填量=0.8キログラム/時間/センチメートル、PIB供給速度31.3キログラム/時間、およびSO3流速3.83キログラム/時間。落下膜式反応器から流出した生成物のスルホン酸含量は、HSO3-に基づき7.5質量%であった。落下膜式反応器から流出した生成物流全体を即座に、5.33キログラム/時間の速度で流れる石灰(水酸化カルシウム(Ca(OH)2))の25質量%溶媒(100ニュートラル油)スラリーで中和した。また、カルシウムによる全スルホン酸中和度はおよそ85質量%であった。
【0102】
[比較例A]
実施例1で製造したMn450安定化ポリブテンスルホン酸を用いて、比較例Aを製造した。次に、まず、キシレン643グラム、メタノール81グラムおよび石灰98グラムを前もって充填しておいた3.5リットル反応器に、Mn450安定化ポリブテンスルホン酸310グラムを15分かけて加えることにより、Mn450安定化ポリブテンスルホン酸を過塩基化した。反応器へのスルホン酸添加を開始する前に、原料は全て室温であった。安定化ポリブテンスルホン酸添加の最後には、反応器温度はおよそ33℃まで上昇した。次いで、反応器温度を27℃まで冷却して戻す前に、混合物をもう15分間かき混ぜた。
【0103】
反応器温度が27℃に達したら、反応混合物に、その液体表面より下に置いた浸漬管からCO2を吹き込んだ。40分かけてCO2全部で22グラムを供給した。CO2を充填した後、キシレン198グラムとメタノール81グラムと石灰98グラムとからなるスラリーを、反応器に迅速に加えた。次いで、CO2供給速度を0.87グラム/分に上げ、そして反応混合物を更に66分間炭酸塩化した。この炭酸塩化時間の最後に、別のキシレン139グラムと石灰49グラムのスラリーを反応器に迅速に加えた。次いで、反応器内容物の炭酸塩化を0.82グラム/分の速度で27分間続けた。その後、CO2流速を0.31グラム/分の速度に下げて37分間続けた。全炭酸塩化時間は170分であり、その間中CO2全部で113グラムを反応器に充填した。炭酸塩化工程で、反応の発熱により反応器温度を40℃に上昇したままにした。温度が40℃を越えるのを防いで維持するために、必要なら冷却を行った。40℃に達した後は、反応温度を38℃から40℃の間に維持した。
【0104】
温度を2.5時間かけて132℃まで上げることにより、メタノールと水を留去した。132℃に達した後、溶媒(100ニュートラル油)151グラムを加えた。反応混合物を放冷した後ろ過した。ろ過後、反応混合物を反応器に戻し、次いで2時間かけて205℃まで上げてキシレンを取り除いた。205℃への上昇中に、圧力を徐々に50ミリメートルHgまで下げた。次いで、反応混合物を205℃、50ミリメートルHgで5分間保持した。超過塩基性ポリブテンスルホン酸は下記の性状を示した。
【0105】
TBN(mgKOH/gm) 452
Ca 16.5質量%
スルホン酸 0.96質量%(カルシウム基準)
100℃粘度(TBN425で*) 8496cSt
*:超過塩基性ポリブテンスルホン酸のTBNを425に調整した。
【0106】
[比較例B]
比較例Aの超過塩基性Mn450ポリイソブテンスルホン酸について上述したようにして、比較例Bを製造した。比較例Aで使用した安定化ポリブテンスルホン酸の代わりに、アルキル基が炭素原子約20〜約24個を含む直鎖アルキル基であるアルキルベンゼンスルホン酸を用いたこと以外は、その過塩基化法を使用した。アルキルベンゼンスルホン酸のHSO3-は13.8質量%であった。その方法の変更は、アルキルベンゼンスルホン酸の充填量を206グラムに減らしたこと、および溶媒(100ニュートラル油)の充填量を255グラムに増やしたことだけであった。超過塩基性アルキルベンゼンスルホン酸は下記の性状を示した。
【0107】
TBN(mgKOH/gm) 434
Ca 16.6質量%
スルホン酸 0.92質量%(カルシウムに基づき)
100℃粘度(TBN425で*) 82cSt
*:超過塩基性ポリブテンスルホン酸のTBNを425に調整した。
【0108】
[試験例1−10] ポリイソブテンスルホネートとアルキルベンゼンスルホネートの超過塩基性混合物の製造
安定化ポリイソブテンスルホン酸(Mn450とMn550)を含む混合物を、下記第1表に記載した要求量で各々混合することにより製造した。下記第1表に列挙した混合物全てにおいて、基準TBNが425の最終超過塩基性生成物で全スルホン酸含量0.9質量%(カルシウムに基づき)を目標に定めて、安定化PIBスルホン酸とアルキルベンゼンスルホン酸の充填量を調整した。第1表に報告したパーセントは、最終超過塩基性生成物において、安定化PIBスルホン酸またはアルキルベンゼンスルホン酸のいずれかから寄与した、HSO3-(スルホン酸)に基づく全スルホン酸のパーセントを表す。
【0109】
第 1 表
───────────────────────────────────
実施例 混合物中のスルホネート*
450mw** 550mw** アルキルアリール
ポリイソブテン ポリイソブテン スルホネート
スルホネート スルホネート (質量%)
(質量%) (質量%)
───────────────────────────────────
比較例A 100 0.0 0.0
比較例B 0.0 100 0.0
───────────────────────────────────
試験例1 20 0.0 80
試験例2 20 0.0 80
試験例3 40 0.0 60
試験例4 80 0.0 20
試験例5 80 0.0 20
試験例6 90 0.0 10
試験例7 0.0 10 90
試験例8 0.0 20 80
試験例9 0.0 30 70
試験例10 0.0 50 50
───────────────────────────────────
*:HSO3-(スルホン酸)に基づく。
**:前記実施例1に記載したようにして、Mn450及びMn550
安定化ポリイソブテンスルホン酸を製造した。
【0110】
比較例A及びBおよび試験例1−6で得られた超過塩基性のポリアルケニルスルホネート(Mn450)とアルキルベンゼンスルホネートとの混合物のTBNおよび粘度を、下記第2表にまとめて示す。超過塩基性のポリイソブテンスルホネートとアルキルベンゼンスルホネートとの混合物のTBNを425に調整した後に、混合物の粘度を測定した。
【0111】
第 2 表
─────────────────────────────
実施例 TBN 粘度* 粘度の減少
(倍)
─────────────────────────────
比較例A 452 8504 NA
比較例B 434** 99** NA
─────────────────────────────
試験例1 430 96 89
試験例2 430 82 104
試験例3 437 86 99
試験例4 453 144 59
試験例5 446 119 72
試験例6 448 490 17
─────────────────────────────
*:比較例A及びBおよび試験例1−6のTBNをTBN
425に調整して、ポリイソブテンスルホネート及び
アルキルアリールスルホネート混合物の粘度を比較した。
**:4回の別々の実験のデータの平均を取ることにより、
TBNおよび粘度データを得た。
NA:該当なし
【0112】
上記第2表にまとめて示したデータは、本発明の方法が、TBNが非常に高くて400より高く、粘度が非常に低いポリイソブテンスルホネートとアルキルアリールスルホネートの超過塩基性混合物をもたらすことを明らかにしている。
【0113】
100質量%の超過塩基性ポリイソブテンスルホネート(Mn450)を含む比較例Aは、粘度が極めて高くて商業的に実用性に欠ける。第2表にまとめて示したデータは、過塩基化工程でポリイソブテンスルホネートにアルキルベンゼンスルホネートの量を増やして添加すると、結果として超過塩基性のポリイソブテンとアルキルベンゼンスルホネートとの混合物の粘度に大きな減少が生じることを明らかにしている。
【0114】
試験例1−6における粘度の減少は、比較例Aの超過塩基性ポリイソブテンスルホネートの粘度を、試験例1−6の各々で観察された粘度で割算することにより算出した。
【0115】
分子量450ポリイソブテンから製造した超過塩基性ポリイソブテンスルホネートの粘度の減少は、17倍から104倍の粘度減少となった。
【0116】
上述したように、100質量%の超過塩基性ポリイソブテンスルホネートを含む比較例Aは、粘度が極めて高くて商業的に実用性に欠ける。データは、過塩基化工程でポリイソブテンスルホネートにアルキルベンゼンスルホネートの量を増やして添加すると、結果として超過塩基性のポリイソブテンとアルキルベンゼンスルホネートとの混合物の粘度に大きな減少が生じることを明らかにしている。この粘度減少は、第2表のデータをグラフで表した第1図に最もよく示されている。
【0117】
試験例7−10の超過塩基性のポリアルケニルスルホネート(Mn550)とアルキルベンゼンスルホネートとの混合物のTBNおよび粘度を得たので、下記第3表にまとめて示す。
【0118】
第 3 表
──────────────────────
実施例 TBN 粘度*
──────────────────────
試験例7 416 127
試験例8 440 162
試験例9 459** 178**
試験例10 446** 344**
──────────────────────
*:試験例6−10のTBNをTBN425に
調整して、ポリイソブテンスルホネート及び
アルキルアリールスルホネート混合物の粘度
を比較した。
**:2回の別々の実験のデータの平均を取る
ことにより、TBNおよび粘度データを得た。
【0119】
試験例7−10の超過塩基性のポリイソブテンスルホネートとアルキルベンゼンスルホネートとの混合物について得られた粘度データを、上記第3表にまとめて示す。混合物のTBNを425に調整した後に、混合物の粘度を測定した。データは、超過塩基性のポリイソブテンスルホネートとアルキルベンゼンスルホネートとの混合物中の安定化ポリイソブテンスルホン酸の量が増えるにつれて、混合物の粘度も増加したことを明らかにしている。試験例7は、100℃粘度が127cStで最も低く、安定化ポリイソブテンスルホン酸を10質量%しか含まなかったが、一方試験例10は、安定化ポリイソブテンスルホン酸を80質量%も含み、100℃粘度が325cStであった。
【0120】
100質量%の超過塩基性Mn550ポリイソブテンスルホネートと比較した試験例7−10の粘度減少は求めなかった。
【0121】
超過塩基性のポリイソブテン(Mn450とMn550)とアルキルベンゼンスルホネートとの混合物で観察された粘度減少は、第2表及び第3表のデータをグラフで表した第1図に最もよく示されている。
【0122】
驚くべきことには、比較的少量のアルキルベンゼンスルホン酸によって、PIBスルホン酸のみから生じた超過塩基性スルホネートの粘度が猛烈に減少する。Mn450安定化PIBスルホン酸の場合には、アルキルアリールスルホン酸が全スルホン酸含量のうちのたった10%を占めただけで、粘度が17倍も減少した。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】第1図は、超過塩基性の数平均分子量(Mn)450及び550のポリイソブテンスルホネートおよびアルキルベンゼンスルホネートの粘度を示す。第1図にプロットしたデータを第2表及び第3表にもまとめて示す。データは、過塩基化工程で安定化ポリイソブテンスルホン酸にアルキルベンゼンスルホン酸を量を増やして添加すると、結果として、過塩基性スルホネート混合物の粘度の減少量も増大することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分を含む超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物であって、全塩基価(TBN)が400より大きいスルホネート組成物:
(a)一種もしくは二種以上の超過塩基性のポリアルケニルスルホネート混合物、および
(b)一種もしくは二種以上の超過塩基性のアルキルアリールスルホネート混合物。
【請求項2】
組成物のTBNが425より大きい請求項1に記載の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物。
【請求項3】
組成物のTBNが450より大きい請求項2に記載の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物。
【請求項4】
組成物の粘度が100℃で約20乃至約1000cStの範囲にあり、そしてTBNが425である請求項1に記載の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物。
【請求項5】
組成物の粘度が100℃で約40乃至約750cStの範囲にあり、そしてTBNが425である請求項4に記載の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物。
【請求項6】
組成物の粘度が100℃で約60乃至約500cStの範囲にあり、そしてTBNが425である請求項5に記載の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物。
【請求項7】
一種もしくは二種以上の超過塩基性ポリアルケニルスルホネートと一種もしくは二種以上の超過塩基性アルキルアリールスルホネートとが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の塩またはそれらの混合物である請求項1に記載の超過塩基性組成物。
【請求項8】
超過塩基性ポリアルケニルスルホネートと超過塩基性アルキルアリールスルホネートとの一種または二種以上の混合物が、アルカリ土類金属塩である請求項7に記載の超過塩基性組成物。
【請求項9】
一種もしくは二種以上の超過塩基性ポリアルケニルスルホネートと一種もしくは二種以上の超過塩基性アルキルアリールスルホネートとが、カルシウム塩である請求項8に記載の超過塩基性組成物。
【請求項10】
(a)成分の一種もしくは二種以上の超過塩基性ポリアルケニルスルホネートが、アルキルビニリデンを約20モル%より多く含む一種もしくは二種以上のポリアルケンと1,1−ジアルキルの異性体とから誘導された、ポリアルケニルスルホン酸又は安定化ポリアルケニルスルホン酸の塩である請求項1に記載の超過塩基性組成物。
【請求項11】
アルキルビニリデン異性体がメチルビニリデン異性体であり、そして1,1−ジアルキル異性体が1,1−ジメチル異性体である請求項10に記載の超過塩基性組成物。
【請求項12】
ポリアルケンの数平均分子量が約168乃至約5000の範囲にある請求項11に記載の超過塩基性組成物。
【請求項13】
ポリアルケンの数平均分子量が約350乃至約1000の範囲にある請求項12に記載の超過塩基性組成物。
【請求項14】
ポリアルケンの数平均分子量が約400乃至約600の範囲にある請求項13に記載の超過塩基性組成物。
【請求項15】
ポリアルケンがポリイソブテンである請求項10に記載の超過塩基性組成物。
【請求項16】
(b)成分の一種もしくは二種以上の超過塩基性アルキルアリールスルホネートのアルキルアリール部のアリール基が非フェノール系芳香環であり、そしてアルキル鎖が炭素原子約4〜約40個を含む線状アルキル鎖又は分枝アルキル鎖である請求項1に記載の超過塩基性組成物。
【請求項17】
アリール基がフェニルまたはトリルである請求項16に記載の超過塩基性組成物。
【請求項18】
アリール基がフェニルである請求項17に記載の超過塩基性組成物。
【請求項19】
アルキル鎖が炭素原子約12〜約32個を含む請求項16に記載の超過塩基性組成物。
【請求項20】
アルキル鎖が炭素原子約20〜約24個を含む請求項19に記載の超過塩基性組成物。
【請求項21】
アルキル鎖が炭素原子約20〜約24個を含む線状アルキル鎖である請求項20に記載の超過塩基性組成物。
【請求項22】
(a)一種もしくは二種以上の超過塩基性ポリアルケニルスルホネートと(b)一種もしくは二種以上の超過塩基性アルキルアリールスルホネートとを含み、全塩基価(TBN)が400より大きい超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物を製造する方法であって、下記の工程からなる方法:
(a)(i)一種もしくは二種以上のポリアルケニルスルホン酸、安定化ポリアルケニルスルホン酸またはそれらの混合物と、(ii)一種もしくは二種以上のアルキルアリールスルホン酸、安定化アルキルアリールスルホン酸またはそれらの混合物との混合物を調製する工程、
(b)工程(a)の混合物を溶媒の存在下で、アルカリ金属又はアルカリ土類金属源、C1−C5アルカノールおよび二酸化炭素と反応させる工程。
【請求項23】
超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物のTBNが425より大きい請求項22に記載の方法。
【請求項24】
超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物のTBNが450より大きい請求項23に記載の方法。
【請求項25】
超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物の粘度が100℃で約20乃至約1000cStの範囲にあり、そしてTBNが425である請求項22に記載の方法。
【請求項26】
超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物の粘度が100℃で約40乃至約750cStの範囲にあり、そしてTBNが425である請求項25に記載の方法。
【請求項27】
超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物の粘度が100℃で約60乃至約500cStの範囲にあり、そしてTBNが425である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
工程(b)の金属がアルカリ土類金属である請求項22に記載の方法。
【請求項29】
アルカリ土類金属がカルシウムである請求項28に記載の方法。
【請求項30】
下記の成分を含む潤滑油組成物:
(a)主要量の潤滑粘度の油、および
(b)(i)一種もしくは二種以上の超過塩基性ポリアルケニルスルホネート混合物と、(ii)一種もしくは二種以上の超過塩基性アルキルアリールスルホネート混合物とからなる超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物であって、全塩基価(TBN)が400より大きいスルホネート組成物。
【請求項31】
(b)成分の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物のTBNが425より大きい請求項30に記載の潤滑油組成物。
【請求項32】
(b)成分の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物のTBNが450より大きい請求項31に記載の潤滑油組成物。
【請求項33】
(b)成分の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物の粘度が100℃で約20乃至約1000cStの範囲にあり、そしてTBNが425である請求項30に記載の潤滑油組成物。
【請求項34】
(b)成分の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物の粘度が100℃で約40乃至約750cStの範囲にあり、そしてTBNが425である請求項33に記載の潤滑油組成物。
【請求項35】
(b)成分の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物の粘度が100℃で約60乃至約500cStの範囲にあり、そしてTBNが425である請求項34に記載の潤滑油組成物。
【請求項36】
下記の成分を含む潤滑油濃縮物:
(a)約10質量%乃至約90質量%の潤滑粘度の油、および
(b)(i)一種もしくは二種以上の超過塩基性ポリアルケニルスルホネートと、(ii)一種もしくは二種以上の超過塩基性アルキルアリールスルホネートとからなる超過塩基性のポリアルケニル及びアルキルアリールスルホネート組成物であって、全塩基価(TBN)が400より大きいスルホネート組成物。
【請求項37】
(b)成分の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物のTBNが425より大きい請求項36に記載の潤滑油濃縮物。
【請求項38】
(b)成分の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物のTBNが450より大きい請求項37に記載の潤滑油濃縮物。
【請求項39】
(b)成分の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物の粘度が100℃で約20乃至約1000cStの範囲にあり、そしてTBNが425である請求項36に記載の潤滑油濃縮物。
【請求項40】
(b)成分の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物の粘度が100℃で約40乃至約750cStの範囲にあり、そしてTBNが425である請求項39に記載の潤滑油濃縮物。
【請求項41】
(b)成分の超過塩基性のポリアルケニルスルホネートとアルキルアリールスルホネートとの組成物の粘度が100℃で約60乃至約500cStの範囲にあり、そしてTBNが425である請求項40に記載の潤滑油濃縮物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−284678(P2007−284678A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−105103(P2007−105103)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(598037547)シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー (135)
【Fターム(参考)】