説明

超電導ケーブルの中間接続構造

【課題】接続時の作業性に優れ、通電に伴う損失を低減することができる超電導ケーブルの中間接続構造を提供する。
【解決手段】中間接続構造1Aは、超電導導体202の外周に順に電気絶縁層203、超電導シールド層204、常電導層205を具える一対の超電導ケーブル同士を接続する。この中間接続構造1Aは、超電導線材から構成されて、超電導シールド層204同士を接続する超電導接続部20と、超電導接続部20が接合され、常電導層205に接合されない銅製の支持部材21Aと、銅から構成されて常電導層205同士を接続する常電導接続部3とを具える。超電導シールド層204同士の接続部材と、常電導層205同士の接続部材とを別個に具えることで、接続作業が行い易い。支持部材21Aの内周側に超電導接続部20を具えることで、大電流を流しても、銅からなる支持部材21Aに分流が生じ難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超電導導体及び超電導シールド層を具える超電導ケーブル同士を接続する超電導ケーブルの中間接続構造に関するものである。特に、接続作業が行い易く、接続箇所の通電損失を低減し易い超電導ケーブルの中間接続構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超電導材料、特に冷媒に液体窒素を利用する高温超電導材料からなる超電導導体を具える超電導ケーブルが開発されつつある。超電導ケーブルは、代表的には、内側から順に超電導導体、電気絶縁層、超電導シールド層を有するケーブルコアと、このケーブルコアを収納すると共に、上記冷媒が満たされる断熱管とを具える。超電導シールド層には、通常運転時、超電導導体に流れる電流(導体電流)と逆向きでほぼ同じ大きさの電流が誘起され、この誘導電流(シールド電流)による磁場で導体電流による磁場を打ち消し、超電導ケーブルの外部への漏れ磁場をほぼゼロにすることができる。上記超電導シールド層の外周に更に銅からなる常電導層を具え、この常電導層を短絡などの事故時に事故電流を流すための流路に利用する超電導ケーブルもある(特許文献1)。
【0003】
長距離に亘る超電導ケーブル線路を構築する場合、線路途中で異なる超電導ケーブル同士を接続する中間接続が必要となる。上記常電導層を具える超電導ケーブルの中間接続構造として、特許文献1は、銅からなる筒状部材の表面に超電導線材が半田により接合された接続用シールド部材を具える構造を開示している。より具体的には、上記筒状部材の両端が、接続する一対の超電導ケーブルの常電導層にそれぞれ接続され、上記超電導線材の両端が、接続する一対の超電導ケーブルの超電導シールド層にそれぞれ接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-353379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示される接続用シールド部材では、筒状部材と超電導線材とが一体であるため、超電導ケーブルに具える常電導層と上記筒状部材とを接続する際に接続し難いことがある。
【0006】
例えば、上記常電導層が銅テープを巻回して形成されている場合、銅テープに巻き癖がつき、巻き癖の状態によっては上記筒状部材との接合が行い難いことがある。従って、超電導シールド層の外周に常電導層を具える超電導ケーブル同士を接続するにあたり、接続時の作業性を向上することが望まれている。
【0007】
また、超電導ケーブルの送電容量を更に増大することが望まれており、3000A級といった大容量の電流が流されることが予想される。このような大電流が流された場合であっても、通電に伴う損失(代表的には、ジュール損)を低減することができる中間接続構造の開発が望まれている。
【0008】
そこで、本発明の目的の一つは、接続時の作業性に優れる超電導ケーブルの中間接続構造を提供することにある。また、本発明の他の目的は、大電流が流された場合であっても通電に伴う損失を低減することができる超電導ケーブルの中間接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、超電導シールド層同士を接続する部材と、超電導シールド層の外周に具える常電導層同士を接続する部材とを機械的な接続がなされていない別部材とすることで上記目的を達成する。
【0010】
本発明は、超電導導体の外周に順に電気絶縁層、超電導シールド層、常電導層を具える一対の超電導ケーブル同士を接続する超電導ケーブルの中間接続構造に係るものである。この中間接続構造は、超電導材料から構成されて、上記各超電導ケーブルの超電導シールド層同士を接続する超電導接続部と、常電導材料から構成されて、上記各超電導ケーブルの常電導層同士を接続する常電導接続部と、上記常電導層に接続されず、上記超電導接続部が接合された支持部材とを具える。
【0011】
上述した従来の接続用シールド部材では、筒状部材が超電導線材の支持機能と常電導層同士の電気的な接続機能とを兼ね備える構成であり、部品点数が少ないものの、上述のように常電導層同士の接続作業を行い難い場合がある。これに対して、本発明中間接続構造は、超電導接続部を支持する部材(支持部材)と、常電導層同士を接続する部材(常電導接続部)とを独立した部材とし、上記支持部材は、常電導層に機械的な接続がなされない構成とする。従って、本発明中間接続構造は、超電導シールド層同士を接続するための部材と、常電導層同士を接続する部材とを独立して扱えるため、超電導シールド層同士の接続作業、及び常電導層同士の接続作業を別々に行い易く、接続時の作業性に優れる。また、超電導材料、特に酸化物超電導材料は、引っ張りなどに弱い脆性材料が多いが、本発明中間接続構造では、超電導接続部が支持部材に接合されて一体物になっていることで、例えば、超電導ケーブルを冷却したときの熱収縮による応力を支持部材で受けられる。従って、本発明中間接続構造は、上記応力などによる上記超電導接続部の損傷(折損や破断など)を防止することができ、施工後、長期に亘り良好に使用することができる。即ち、本発明中間接続構造は、通常運転時、上記超電導接続部により、一方の超電導ケーブルの超電導シールド層から他方の超電導ケーブルの超電導シールド層に誘導電流(シールド電流)を十分に流すことができる。また、本発明中間接続構造は、事故時、上記常電導接続部により、一方の超電導ケーブルの常電導層から他方の超電導ケーブルの常電導層に事故電流を流すことができる。
【0012】
本発明の一形態として、上記支持部材が銅から構成され、上記超電導接続部が上記支持部材における超電導導体側に接合された形態が挙げられる。
【0013】
銅は、液体窒素といった冷媒の温度、及びその近傍の温度での使用実績が十分にあり、銅からなる構成部材を利用することで信頼性の高い中間接続構造を提供することができる。しかし、銅は、上記冷媒の温度などでも良導体であることから、特に、3000A級といった大電流を使用する場合、超電導材料からなる超電導接続部だけでなく、銅からなる支持部材にも誘導電流が分岐する(分流が生じる)ことがある。銅からなる支持部材にも僅かながら誘導電流が流れることで、ジュール損といった損失が生じる。また、ジュール熱により、接続箇所の温度が上昇する恐れがある。ここで、超電導ケーブル同士の接続箇所は、補強絶縁層などを設けたりするため、本線部分よりも熱が篭り易い傾向にある。そのため、ジュール熱による接続箇所の温度の上昇により、最悪の場合、クエンチ(超電導状態から常電導状態に移行すること)を生じる恐れがある。一方、誘導電流は、起磁力の発生源である導体に近い側(内周側)ほど、磁束密度が高くなるため、より大きく流れる傾向にある。従って、上記銅からなる支持部材における超電導導体側に超電導接続部を配置することで、超電導接続部に優先的に誘導電流が流れ、支持部材に分流する量を低減して、通電に伴う損失を効果的に低減することができる。
【0014】
本発明の一形態として、支持部材の少なくとも一部が、固有抵抗値(20℃)が1.0×10-6Ω・m以上の材料から構成された形態が挙げられる。
【0015】
上述のように良導体の銅ではなく、銅よりも電気抵抗(固有抵抗値(20℃):約1.7×10-8Ω・m)が高い材料を支持部材の構成材料に利用することで、支持部材への分流を効果的に低減することができる。また、支持部材の構成材料は、機械的強度が高いものが好ましい。上記固有抵抗値を満たし、かつ銅よりも高強度な材料として、例えば、Cu-Ni合金(キュプロニッケル)とった銅合金などの金属材料が挙げられる。或いは、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、エポキシ樹脂などの樹脂材料といった通常絶縁性材料として扱われる材料が挙げられる。上記高抵抗な材料により支持部材の全体が構成されている場合、分流を効果的に低減することができ、上記絶縁性材料により支持部材の全体が構成されている場合、実質的に分流を無くすことができる。そのため、上記高抵抗材料や絶縁性材料により支持部材の全体が構成されている場合、上記超電導接続部の配置位置は、支持部材の内周側(超電導導体側)でも外周側でもよい。
【0016】
本発明の一形態として、支持部材の一部に固有抵抗値(20℃)が1.0×10-6Ω・m以上の材料から構成された絶縁部を有する形態が挙げられる。
【0017】
例えば、支持部材の一部が銅で構成されていても、他部が上記固有抵抗値を満たす材料により構成されていれば、導体断面積を減らせるため、分流の量を低減することができる。特に、支持部材は、その一端側の領域と他端側の領域との間に上記絶縁部が介在されて、上記両領域が当該絶縁部により電気的に絶縁された構成とすると、上述のように支持部材の全体が絶縁性材料や高抵抗材料により構成された場合と同様に、実質的に分流を無くすことができる。
【0018】
本発明の一形態として、上記支持部材が一対の半割れ片を組み合わせて筒状体となる組物である形態が挙げられる。
【0019】
上記構成によれば、超電導導体同士を接続した箇所の外周に、超電導接続部が接合された支持部材を容易に配置することができ、中間接続構造を構築する際の作業性に優れる。また、上記支持部材が筒状であることで、上記接続した箇所の全周を覆うように支持部材を存在させることができる。従って、この支持部材は、超電導接続部を上記接続した箇所の全周に配置する場合でも、当該超電導接続部を十分に支持することができる。
【0020】
本発明の一形態として、上記支持部材が筒状体であって、その周方向に沿って設けられた弧状のスリットを具える形態が挙げられる。
【0021】
上述のように支持部材が筒状であることで、上記接続した箇所の全周を支持部材により覆うことができる上に、上記超電導接続部を十分に支持することができる。かつ、上記構成によれば、スリットを具えることで、支持部材の内側に液体窒素といった冷媒を浸入させ易く、支持部材の内側に存在する上記接続した箇所を効率よく冷却することができる。上記スリットを具える支持部材の構成材料は、上述した銅でもよいし、銅よりも固有抵抗値が高い材料でもよい。銅や銅合金などの金属材料により支持部材が構成されている場合、上記弧状のスリットを具えることで、断面積が小さい部分が存在するため、分流の量を低減することができる。従って、この構成によれば、上述した分流による損失を効果的に低減することができる。
【0022】
本発明の一形態として、上記支持部材の一部の厚さが他部の厚さよりも薄い薄肉部を有する形態が挙げられる。
【0023】
上記支持部材は、上記超電導接続部を支持することができれば、その厚さは適宜選択することができる。特に、支持部材が上記銅や銅合金といった金属材料から構成される場合、部分的に厚さを変える、即ち、上記薄肉部を具えることで、断面積が小さい部分が存在するため、分流の量を低減することができる。従って、この構成によれば、上述した分流による損失を効果的に低減することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明超電導ケーブルの中間接続構造は、接続時の作業性に優れる。特に、支持部材の構成材料や超電導接続部の配置位置を工夫することで、通電に伴う損失を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施形態1の超電導ケーブルの中間接続構造の概略構成を示す部分縦断面図である。
【図2】図2は、三心一括型の超電導ケーブルの概略構成を示す横断面図である。
【図3】図3は、複数の異なる材料で構成された支持部材の概略構成を示す正面図である。
【図4】図4は、実施形態2の超電導ケーブルの中間接続構造において、超電導ケーブルとシールド接続部との接続箇所の概略構成を拡大して示す部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図1,4の中間接続構造では、その中心線から上半分のみを示し、下半分を省略している。また、以下の図面において同一符号は同一名称物を示す。
【0027】
(実施形態1)
以下、図1,2を参照して、実施形態1の超電導ケーブルの中間接続構造を説明する。この中間接続構造1Aは、異なる一対の超電導ケーブル同士を接続するものであり、その特徴とするところは、各超電導ケーブルに具える超電導シールド層204同士、及びその外周に具える常電導層205同士を接続する構造にある。以下、各構成をより詳細に説明する。
【0028】
[超電導ケーブル]
まず、超電導ケーブルを説明する。ここでは、複数心のケーブルコアを一つの断熱管に収納した多心ケーブルを説明するが、一心のケーブルコアを一つの断熱管に収納した単心ケーブルでもよい。図2に示す超電導ケーブル100は、3心のケーブルコア101が撚り合わされて断熱管102に収納されている。各ケーブルコア101は、中心から順にフォーマ201、超電導導体202、電気絶縁層203、超電導シールド層204、常電導層205、保護層206を具える。
【0029】
断熱管102は、内管102iと外管102oとからなる二重構造管であり、内管102iと外管102oとの間が真空引きされた真空断熱構造である。内管102i内には、液体窒素といった冷媒103が充填され、この冷媒103によりケーブルコア101の超電導導体202及び超電導シールド層204が冷却されて、超電導状態に維持される。外管102oの外周には、ポリ塩化ビニルといった耐食性に優れる材料を押出して形成した防食層104を具える。
【0030】
フォーマ201は、超電導導体202の支持体として機能する他、事故などでクエンチした場合、瞬間的に生じる大きな事故電流(短絡電流)の流路に利用されることから、銅やアルミニウムなどの導電性の常電導材料にて形成された中実状や中空状(管体)が挙げられる。ここでは、エナメルなどの絶縁被覆を具える銅線を複数本撚り合わせて構成された中実体としている。
【0031】
超電導導体202及び超電導シールド層204は、例えば、酸化物超電導体を具えるテープ状線材、代表的にはBi2223系超電導テープ線(Ag-Mnシース線)を単層又は多層に螺旋状に巻回することで構成することができる。ここでは、超電導導体202が四層構造、超電導シールド層204が内側層204i(図1)、外側層204o(図1)の二層構造である。各層の間には、クラフト紙などの絶縁紙を巻回した層間絶縁層を設けることができる。超電導導体202は、上記フォーマ201の上に、超電導シールド層204は、後述する電気絶縁層203の上に形成され、後述する常電導層205の内周側に位置することで、超電導状態が維持されている通常時、誘導電流(シールド電流)が流れ易い。
【0032】
電気絶縁層203は、クラフト紙といった絶縁紙や、クラフト紙とプラスチックとを複合した半合成絶縁紙からなるテープ状の絶縁性材料を巻回することで構成することができる。ここでは、半合成絶縁紙(住友電気工業株式会社製PPLP:登録商標)により構成されている。また、後述する常電導層205の外周に上記クラフト紙などを巻回することで、保護層206を構成することができる。
【0033】
常電導層205は、主として、事故などでクエンチした場合、瞬間的に生じる大きな事故電流の流路に利用されることから上記フォーマ201と同様に、上記常電導材料により構成する。ここでは、上記超電導シールド層204の上に、銅テープを螺旋状に多層に巻回することで構成されている。
【0034】
上記構成を具える超電導ケーブル100を一対用意し、各超電導ケーブル100の端部からそれぞれ、ケーブルコア101を引き出して図1に示すように段剥ぎし、フォーマ201、超電導導体202、電気絶縁層203、超電導シールド層204、常電導層205を露出させ、後述する手順により中間接続構造1Aを構築することができる。
【0035】
[中間接続構造]
次に、中間接続構造1Aを説明する。中間接続構造1Aは、上記構成を具える一対のケーブルコア101同士を接続する箇所に設けられる構造であり、特に、超電導シールド層204同士を接続する部材と、常電導層205同士を接続する部材とをそれぞれ別個に具える。具体的には、中間接続構造1Aは、各ケーブルコア101の超電導シールド層204同士を接続するシールド接続部2Aと、各ケーブルコア101の常電導層205同士を接続する常電導接続部3とを具える。
【0036】
《シールド接続部》
シールド接続部2Aは、超電導材料から構成されて、接続する一対のケーブルコア101の超電導シールド層204同士を接続する超電導接続部20と、超電導接続部20が接合された支持部材21Aとを具える。そして、支持部材21Aは、ケーブルコア101の常電導層205に機械的な接続がなされず、常電導接続部3とは独立した部材である。
【0037】
超電導接続部20は、超電導シールド層204を構成する超電導線材と同様の超電導線材から構成されている。支持部材21Aは、一対の半円筒状の分割片を組み合わせて円筒状となる組物である。より具体的には、支持部材21Aは、中央部分が円筒状で、その両端部が周縁に向かって先細る形状である。また、支持部材21Aを構成する各分割片の厚さは、一端側から他端側に向かって概ね均一的な厚さとしている。この支持部材21Aの表面に沿って超電導接続部20を構成する超電導線材が接合されることから、当該超電導線材が過度に折り曲げられないように上記先細り部分の傾斜を設けている。また、図1に示すように、支持部材21Aの外径は、後述する電界遮蔽層13の外周面との間に隙間が設けられる大きさであり、支持部材21Aの長手方向の長さは、接続する一対の超電導シールド層204間に渡される超電導接続部20を十分に支持可能な長さを有する。ここでは、支持部材21Aは、銅から構成されている。
【0038】
上記各分割片の表裏を貫通する孔やスリットを適宜設けたり、分割片間に若干の隙間を設けて両分割片を固定するなどして、支持部材21Aの内周側に液体窒素といった冷媒が浸入し易いようにしてもよい。スリットは、各分割片の長手方向に沿った線状でもよいし、各分割片の周方向に沿った弧状でもよい。弧状のスリットとすると、各分割片の一端側の領域と他端側の領域との間で断面積が低減されるため、超電導導体202に大電流が流れた場合でも、両領域間に生じる誘導電流の分流を低減することができる。上記孔の大きさ(直径など)やスリットの大きさ(幅、長さ)、個数などは適宜選択することができる。なお、スリットなどを設けなくても、超電導ケーブルのケーブルコア101に含浸された冷媒は、ケーブルコア101の構成要素を介して支持部材21A内に充填される。
【0039】
上記支持部材21Aの内周面の周方向に沿って、上記超電導線材が並列に並べられ、半田(通常の半田でよい)により接合されて支持部材21Aと上記超電導線材とが一体化されている。即ち、シールド接続部2Aの横断面をとった場合、上記超電導線材は、その端面が円形状に並んで配置されている。上記超電導線材がこのように円形状に配置されることで、円筒状に配置された超電導シールド層204に沿って当該超電導線材を配置させることができ、当該超電導線材と超電導シールド層204とを接合し易い。支持部材21Aに接合されている上記超電導線材は、超電導シールド層204の内側層204iに接合される内側線材20iと、外側層204oに接合される外側線材20oとが積層されて支持部材21Aに接合されている。内側線材20i及び外側線材20oはそれぞれ、段剥ぎされた超電導シールド層204の内側層204i同士、外側層204o同士に渡して接合するために十分な長さとしており、内側線材20iの方が外側線材20oよりも短い。なお、図1では、各線材20i,20oが折り曲げられた角部が角ばって示されているが、実際には湾曲するように緩やかに曲げられている。
【0040】
《常電導接続部》
常電導接続部3は、上記超電導接続部20を構成する超電導線材よりも機械的強度に優れると共に、超電導ケーブルの使用温度(冷媒温度)において電気抵抗が小さい材料から構成されることが好ましい。例えば、銅やアルミニウム、及びこれらの合金などが挙げられる。ここでは、銅線からなる編組材であって、事故電流などの大電流を流すことができる程度の容量(導体断面積)を有するものを利用している。
【0041】
[中間接続構造の組立手順]
次に、上記中間接続構造1Aの組立手順を説明する。接続箱(図示せず)に、接続する一対の超電導ケーブル100の端部をそれぞれ導入し、各ケーブル100から引き出したケーブルコア101の端部を段剥ぎして、フォーマ201、超電導導体202、電気絶縁層203、超電導シールド層204、常電導層205を露出させる。そして、接続する一対のフォーマ201を銅製の接続スリーブ10の挿入孔に挿入して圧縮し、フォーマ201同士を接続する。
【0042】
次に、接続用超電導線材11により、接続する一対のケーブルコア101に具える超電導導体202同士を接続する。四層構造の超電導導体202に合わせて、接続用超電導線材11も積層構造である。各接続用超電導線材11は、一方の超電導導体202から他方の超電導導体202に渡すことが可能な十分な長さを有し、フォーマ201側から外周に向かうほど長さが長い。これらの接続用超電導線材11を外周側に向かって広がる階段状に積層し、各接続用超電導線材11の一端部を一方の超電導導体202を構成する超電導層に、他端部を他方の超電導導体202を構成する超電導層にそれぞれ半田などにより接合する。各接続用超電導線材11は、超電導導体202を構成する超電導線材と同様のものを利用することが好ましい。また、最外側の接続用超電導線材11の外周に補強材(図示せず)を配置すると、この補強材が上記接続スリーブ10に作用する張力を分担して、中間接続構造1Aをより強固にすることができる。補強材の構成材料は、接続スリーブ10と同じ材料(例えば、銅やアルミニウム)でも、別の材料(例えば、ステンレス鋼)でもよい。その他、接続スリーブの一部を圧縮してフォーマ同士を接続すると共に、接続スリーブの挿入孔に超電導導体202を構成する超電導線材を挿入して、半田により接続した形態としてもよい。
【0043】
上記接続用超電導線材11、超電導導体202、電気絶縁層203の外周を覆うように補強絶縁層12を形成する。補強絶縁層12は、その中央部が円筒状、超電導シールド層側の両端部が超電導シールド層204に向かって先細りするテーパ状となるように、クラフト紙やPPLP(登録商標)を巻回することで構成することができる。特に、円筒状部分からテーパ状部分に向かう角部、及びテーパ状部分の先端側の部分は、電界的なストレスを緩和できる角度としている。この補強絶縁層12の外周に電界遮蔽層13を形成する。電界遮蔽層13は、クレープカーボン紙を巻回してなるカーボン層13aと、このカーボン層13aの外周に設けた軟銅線からなる銅層13bとを具える。
【0044】
上記支持部材21Aの内周側に超電導接続部20が接合されたシールド接続部2Aを、上記電界遮蔽層13の外周を覆うように配置する。次に、内側線材20iの各端部及び外側線材20oの各端部を超電導シールド層204の内側層204i、外側層204oにそれぞれ半田にて接合する。この半田は、電気絶縁層203の熱劣化を低減するために融点が70℃以上170℃以下の低融点半田が好ましい。超電導接続部20を超電導シールド層204に接合することで、超電導接続部20が接合された支持部材21Aも、超電導シールド層204に固定される。
【0045】
上記シールド接続部2Aの装着が終わったら、ケーブルコア101の常電導層205に常電導接続部3を取り付けて、常電導層205同士を接続する。ここでは、常電導層205を構成する銅テープの端部に端子30を取り付けて、端子30を介して常電導接続部3を接続している。
【0046】
上記工程により、一対の超電導ケーブル100のケーブルコア101同士を接続する中間接続構造1Aを構築することができる。また、上記工程をケーブルコア101ごとに行い、3心のケーブルコア101を接続する三つの中間接続構造1Aの外周を接続箱(図示せず)に収納することで、多心のケーブルコア101を一つの接続箱に収納した中間接続構造を構築することができる。
【0047】
接続箱は、特許文献1に記載されるような長手方向に分割可能な半割れ片を組み合わせて一体化する構成のものを利用すると、組立作業が行い易い。また、円筒状の接続箱とすると、当該箱内部に流通される加圧冷媒による圧損を低減することができる。特に、ステンレス鋼といった強度に優れる材料から構成され、真空断熱構造である接続箱が好ましい。接続箱は、公知の構成のものが利用できる。また、接続箱内には、上記中間接続構造1Aを支持する支持部材を配置させることができる。
【0048】
[効果]
上記構成を具える中間接続構造1Aは、超電導シールド層204同士を接続する部材(シールド接続部2A)と、常電導層205同士を接続する部材(常電導接続部3)とが機械的に接続されていないことで、接続作業を行い易く、作業性に優れる。また、常電導接続部3を支持部材21Aと独立した別部材とすることで、超電導接続部20を支持するための剛性が求められないため、上述のような編組材といった可撓性に優れる部材を常電導接続部3に利用することができ、この点からも接続作業を行い易い。
【0049】
更に、中間接続構造1Aでは、シールド接続部2Aの支持部材21Aを銅で構成していることで、液体窒素などの冷媒による冷却下で利用された場合でも、信頼性が高い。かつ、中間接続構造1Aでは、銅からなる支持部材21Aよりも内周側(超電導導体側)に超電導接続部20を配置させたことで、超電導接続部20に誘導電流を流し易く、超電導導体202に大電流が流れた場合でも、支持部材21Aへの誘導電流の分流を低減することができる。従って、中間接続構造1Aでは、当該分流による損失(主としてジュール損)を低減することができ、十分な大きさの誘導電流(シールド電流)を確保することができる。そのため、中間接続構造1Aでは、上記シールド電流による磁場により、超電導導体202に流れる電流による磁場を打ち消すことができ、漏れ磁場も少ない。特に、上述したように支持部材21Aにスリットを具えた構成とすると、支持部材21Aの内側に存在する接続箇所の冷却効果を向上することができると共に、上記分流による損失を低減することができる。
【0050】
更に、中間接続構造1Aでは、超電導接続部20と支持部材21Aとが一体に接合されていることで、ケーブル冷却時の熱収縮による応力に十分に耐え得る。そのため、この応力により超電導接続部20が損傷することを低減することができる。また、このような一体物であることで、超電導接続部20と支持部材21Aとを同時に配置することができる。特に、支持部材21Aが一対の分割片から構成されることで、所定の位置に容易に配置することができる。更に、中間接続構造1Aは、常電導接続部3を具えることで、万が一事故などによりクエンチしても、常電導接続部3を利用して事故電流を流すことが可能である。加えて、中間接続構造1Aでは、支持部材21Aが常電導層205に接続されないことから、常電導層に接続される従来の筒状部材と比較して、支持部材21Aの長手方向の長さを短くすることができる。
【0051】
<変形例1>
実施形態1では、銅といった導電性材料からなる支持部材21Aを説明したが、導電性材料に代えて、強度に優れる絶縁性材料(固有抵抗値(20℃)が1.0×10-6Ω・m以上、好ましくは、2.0×10-6Ω・m以上)、例えば、エポキシ樹脂やガラス繊維強化プラスチック(GFRP)といった高強度な樹脂を利用することができる。或いは、銅(固有抵抗値(20℃)が1.7×10-8Ω・m)といった良導体に比較して電気抵抗が大きく、高強度な金属材料、例えば、Cu-Ni合金(銅に比較して103〜104倍程度の電気抵抗を有する)を利用することができる。支持部材が絶縁性材料や銅よりも高抵抗な材料から構成されることで、超電導導体202に大電流が流れた場合でも、当該支持部材に分流し難く、或いは実質的に分流せず、分流による損失を低減することができる、或いは実質的に損失を無くすことができる。
【0052】
支持部材が絶縁性材料や高抵抗材料から構成される場合、誘導電流が実質的に流れない(分流が実質的に生じない)、或いは分流が非常に少ないため、超電導接続部は、支持部材の内周側でも外周側でもいずれに配置されていてもよい。
【0053】
なお、超電導接続部を支持部材に接合する場合、上記エポキシ樹脂やGFRPなどからなる支持部材の表面には、半田を付着し易くするために金属層(例えば、銀)を蒸着や塗布などにより形成しておくことが好ましい。
【0054】
<変形例2>
実施形態1では、銅といった導電性材料のみからなる支持部材21Aを説明したが、導電性材料と、上記変形例1で説明したエポキシ樹脂やGFRPなどの絶縁性材料、銅合金といった高抵抗材料とを組み合わせて支持部材を構成してもよい。例えば、図3に示す支持部材21Bは、一対の半円筒状の分割片210を組み合わせて円筒状となる組物であり、各分割片210を銅とエポキシ樹脂とで構成している。より具体的には、各分割片210は、短い半円筒状の銅片からなる一対の筒状片211をエポキシ樹脂からなる連結部212(絶縁部)により接合して、一体の分割片210としている。つまり、各分割片210は、実施形態1の支持部材を構成する分割片をその長手方向に二分割して、連結部212により接合した形状である。
【0055】
上記構成を具える支持部材21Bは、絶縁性材料からなる連結部212が介在することで、銅から構成される一方の筒状片211(支持部材21Bの一端側の領域)と他方の筒状片211(同他端側の領域)との間が電気的に絶縁されて、両筒状片211間に誘導電流が実質的に流れない(分流が実質的に生じない)。そのため、超電導接続部は、上記支持部材21Bの内周側でも外周側でもいずれに配置されていても、上記分流による損失が生じ得ない。
【0056】
なお、支持部材21Bでは、両分割片210の大部分を銅製とすることで、信頼性の高い中間接続構造とすることができる上に、超電導接続部を半田により容易に接合することができる。また、支持部材21Bでは、連結部212を構成する樹脂により、一対の筒状片211を簡単に一体化することができる。分割片に占める連結部の割合(長手方向の長さ)は、適宜選択することができる。両筒状片211間を絶縁できれば、連結部の長手方向の長さが短くても構わない。また、支持部材21Bでは、各分割片210に連結部212を一つ具える構成としたが、複数としてもよい。更に、連結部212を上述した銅合金により構成してもよく、この場合、分割片を銅のみとする場合に比較して、分流を低減できる。
【0057】
<変形例3>
実施形態1では、一端側から他端側に向かって厚さが一様である支持部材21Aを説明したが、部分的に厚さを変えることができる。即ち、支持部材は、薄肉部を具えた形態とすることができる。例えば、支持部材を構成する各分割片の一端側の領域と他端側の領域との間に、支持部材の周方向に沿って環状に設けられた薄肉部を具えていてもよいし、弧状に設けられた薄肉部を具えていてもよい。或いは、支持部材の長手方向に沿って帯状に設けられた薄肉部を具えていてもよい。支持部材21Aのように特に銅といった良導体で支持部材が構成される場合、このような薄肉部を具えることで、断面積が小さい部分を有することができるため、上記分流を低減して、当該分流による損失を低減することができる。
【0058】
(実施形態2)
以下、図4を参照して、実施形態2の超電導ケーブルの中間接続構造を説明する。この中間接続構造1Cの基本的構成は、実施形態1の中間接続構造1Aと同様であり、相違点は、シールド接続部2Cの構成にある。以下、この相違点を説明し、その他の構成の説明は省略する。
【0059】
シールド接続部2Cは、実施形態1のシールド接続部2Aと同様に、超電導線材から構成される超電導接続部20と、銅から構成される支持部材21Cとを具える。特に、シールド接続部2Cでは、支持部材21Cの外周面に上記超電導線材が半田により接合されている。
【0060】
支持部材21Cは、実施形態1のシールド接続部2Aと概ね同様の形状であり、一対の半円筒状の分割片を組み合わせて円筒状となる組物である。そして、各分割片の外周面に、内側線材20i及び外側線材20oが積層されて接合されている。更に、外側線材20oの外周面の一部、具体的には、支持部材21Cのテーパ状部分に沿って配置された部分からケーブルコアの超電導シールド層204までの範囲に補強材22を半田により接合して、一体化させている。補強材22の構成材料は、例えば、Cu-Ni合金やステンレス鋼などの強度に優れる材料が挙げられる。
【0061】
上記超電導接続部20の内側線材20iが超電導シールド層204の内側層204iに接合され、外側線材20oが外側層204oに接合される。超電導接続部20が超電導シールド層204に接合されることで、支持部材21Cも超電導シールド層204に固定される。
【0062】
上記構成を具える中間接続構造1Cは、実施形態1の中間接続構造1Aと同様に、シールド接続部2Cと常電導接続部3とが物理的に接続されていない別部材であることで、接続時の作業性に優れる。また、超電導接続部20と支持部材21Cとが一体化されていることで、ケーブルコアの熱収縮時の応力により超電導接続部20が損傷することを低減できる。特に、中間接続構造1Cでは、補強材22を具えることで、超電導接続部20の折損などを効果的に防止することができる。
【0063】
但し、中間接続部1Cでは、支持部材21Cが導電性材料により構成されることで、大電流を使用した場合、分流による損失が生じ得る。そこで、大電流の用途では、実施形態1で説明したように、超電導接続部20を内周側、支持部材を外周側に配置させたり、変形例1,2で説明したように支持部材の少なくとも一部を高抵抗材料、特に絶縁性材料により構成することが好ましい。
【0064】
上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、上述した構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明超電導ケーブルの中間接続構造は、超電導ケーブル同士の接続部分に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1A,1C 中間接続構造 2A,2C シールド接続部 3 常電導接続部
10 接続スリーブ 11 接続用超電導線材 12 補強絶縁層 13 電界遮蔽層
13a カーボン層 13b 銅層
20 超電導接続部 20i 内側線材 20o 外側線材 21A,21B,21C 支持部材
22 補強材
30 端子
100 超電導ケーブル 101 ケーブルコア 102 断熱管 102i 内管
102o 外管 103 冷媒 104 防食層
201 フォーマ 202 超電導導体 203 電気絶縁層 204 超電導シールド層
204i 内側層 204o 外側層 205 常電導層 206 保護層
210 分割片 211 筒状片 212 連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超電導導体の外周に順に電気絶縁層、超電導シールド層、常電導層を具える一対の超電導ケーブル同士を接続する超電導ケーブルの中間接続構造であって、
超電導材料から構成されて、前記各超電導ケーブルの超電導シールド層同士を接続する超電導接続部と、
常電導材料から構成されて、前記各超電導ケーブルの常電導層同士を接続する常電導接続部と、
前記常電導層に接続されず、前記超電導接続部が接合された支持部材とを具えることを特徴とする超電導ケーブルの中間接続構造。
【請求項2】
前記支持部材は、銅から構成されており、
前記超電導接続部は、前記支持部材における超電導導体側に接合されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルの中間接続構造。
【請求項3】
前記支持部材の少なくとも一部は、固有抵抗値(20℃)が1.0×10-6Ω・m以上の材料から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導ケーブルの中間接続構造。
【請求項4】
前記支持部材は、その一端側の領域と他端側の領域との間に、固有抵抗値(20℃)が1.0×10-6Ω・m以上の材料から構成された絶縁部が介在されており、前記両領域が前記絶縁部により電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項3に記載の超電導ケーブルの中間接続構造。
【請求項5】
前記支持部材は、一対の半割れ片を組み合わせて筒状体となる組物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの中間接続構造。
【請求項6】
前記支持部材は、筒状体であって、その周方向に沿って設けられた弧状のスリットを具えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの中間接続構造。
【請求項7】
前記支持部材は、長手方向の一部の厚さが他部の厚さよりも薄い薄肉部を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の超電導ケーブルの中間接続構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−45169(P2011−45169A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190536(P2009−190536)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】