説明

超電導電力機器用冷却システム

【課題】加圧に用いた液化ガスより沸点の低いガスが液化ガス中に溶解して、液化ガスの循環の不安定性要因や、電気機器の絶縁に関するトラブルを起こさず、液化ガスをサブクール状態で長期間循環を行うことのできる、超電導電力機器の冷却システムを提供する。
【解決手段】液体ガスを貯溜するリザーバータンク、循環ポンプ、液体ガスを冷却する熱交換器、および、液化ガスが循環する循環ループを備え、前記液化ガスを、循環ポンプを用いてサブクール状態で循環して超電導電力機器を冷却する超電導電力機器の冷却システムであって、リザーバータンクを前記液化ガスと同種のガスで加圧する加圧手段をさらに備え、前記液化ガスを加圧状態で貯溜するリザーバータンクの液面が、循環する液化ガスの戻りラインの出口よりも、少なくとも加圧ガスの溶け込み深さ+液面移動補正量だけ上部に位置していることを特徴とする超電導電力機器の冷却システム

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体窒素等の液化ガスによって冷却して超電導状態として産業利用することができる、超電導ケーブル、超電導バスライン、SMES、超電導変圧器等を冷却するための冷却システムに関するものであり、特に機器が高電圧状態で運転される超電導電力機器を冷却するための冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
超電導電力機器の一つとして、液体窒素等の液化ガスを冷却に用いる超電導ケーブルを例として、図6を参照して従来技術を説明する。超電導ケーブルの冷却システムとしては、特開平08−148044号公報に記載されたものが知られている。図6に示すように、従来の冷却システムは、リザーバータンク101からサブクール状態(液化ガスが液化ガスの飽和温度よりも低く冷却されている状態)の液化ガスをポンプ105によって加圧し、冷凍機108の熱交換器107で冷却した後にケーブル111に供給して、再度リザーバータンク101に戻す、という循環サイクルを繰り返すものである。
【0003】
超電導ケーブルの冷却の場合には、循環する液化ガスが気液混合状態になれば、圧力損失が増大して必要量の液化ガスを安定的に循環することができず、容量の大きな大型の循環ポンプを用意する必要がある。さらに、超電導ケーブルは、液化ガスを絶縁体中に含浸させて高い電気絶縁性能を維持する極低温電気絶縁方式を採用しているので、液化ガスの中にガスや気泡が混入していると、電気絶縁性能を著しく低下させるという問題があった。
【0004】
そのために、従来の冷却システムでは、常に液化ガスをサブクール状態に維持して、気化しない状態で循環を行うために、例えば、液化ガスとして液体窒素を使用する場合には、リザーバータンク101内を、液化ガスよりも三重点が十分に低いガスである水素(H2)やヘリウム(He)をボンベ123などから供給して加圧状態にして、液化ガスの沸点を高くし、循環中において液化ガスが沸騰しない(即ち、気液混合状態にならない)ようにしている。
【特許文献1】特開平08−148044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術のように、リザーバータンク内を、液化ガスよりも三重点が十分に低いガス、例えば、液化ガスとしての液体窒素をヘリウム(He)ガスで加圧した場合において、液体窒素の中に微量にHeガスが溶け込む現象が起きることが分かった。即ち、ヘリウム(He)は不活性ガスとして広く知られ、液体窒素中に溶け込まないと認識されていたが、現実には、液体窒素の中に微量にHeガスが溶け込むことが判明した。
【0006】
液体窒素の中に溶け込む量は非常に微量であるが、Heガスが溶け込んだ液化ガスを循環すると、例えば、配管が広がる比較的液化ガスの流速の遅くなる部分、または例えば、リザーバータンクよりバルブなどで絞られた後など液化ガスの圧力が急激に低くなる部分において、溶け込んだHeガスが液化ガス中に溶け込んだ状態を維持することができなくなって気泡となり、液体窒素中に混入して気液混合状態となる。
【0007】
また、超電導ケーブルや超電導電力機器が、その設置レイアウトの状態によって、冷却システムより高く位置する部分がある場合には、その部分において、発生した気泡が機器内の上部に溜り滞留して、最終的には液体窒素の冷却配管の中に充満して、液体窒素の循環ができなくなることが分かった。
【0008】
上述した現象は、数ヶ月という非常に長い時間により起こる現象であることが、発明者の実験により明らかになった。Heガスが液体窒素に含有され、さらに配管中で気液混合状態または冷却配管にガス相として充満すると、液体窒素の循環がスムーズにできない。更に、Heガスが他の液化ガスに比べて耐電圧特性が非常に小さいので、本来、液体窒素が高絶縁特性を有しているにもかかわらず、含有されたHeガスにより絶縁特性が低くなり、超電導電力機器の絶縁不良または絶縁破壊を起こす原因となる。
【0009】
この対策として、液化ガスと同じ種類のガスで、リザーバータンクを加圧することが考えられたが、リザーバータンクに貯溜される液体窒素は、沸点以下の温度の液体窒素であるために、加圧に用いられた窒素ガスがリザーバータンク内で沸点以下の液体窒素に触れると、加圧に用いた窒素ガスが冷却され液化する。そのために、加圧した圧力が減少し、常にボンベから窒素ガスを供給し続けなければ圧力を一定に保てないという問題点があり、その結果、大量の窒素ガスを消費し、その際に大量の液化熱を冷却システムに持ち込み熱負荷が増大するという問題があった。
【0010】
従って、この発明の目的は、加圧に用いた液化ガスより沸点の低いガスが液化ガス中に溶解して、液化ガスの循環の不安定性要因や、電気機器の絶縁に関するトラブルを起こさず、液化ガスをサブクール状態で長期間円滑に循環を行うことができる、超電導電力機器の冷却システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上述した従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、従来、加圧ガスとして使用していたヘリウム(He)ガスではなく、リザーバータンクを液化ガスと同種のガスで加圧することによって、液体窒素の中に微量のHeガスが溶け込むことを排除することができる。これによって、液化ガスの圧力が急激に低くなる部分において、Heガスが気泡となり、液体窒素中に混入して気液混合状態になり、液体窒素の循環がスムーズにできない、絶縁特性が劣化するという問題点を解決することができることが判明した。同様に、超電導電力機器の配置による高低差が所定値を超えると、発生した気泡が機器の上部に滞留し、更には冷却ループの中に充満して液体窒素が循環できなくなるという問題点も解決できることが判明した。
【0012】
更に、液化ガスを加圧状態で貯溜するリザーバータンクの液面が、循環する液化ガスの戻りラインの出口よりも、少なくとも加圧ガスの溶け込み深さ+液面移動補正量だけ上部に位置していることによって、加圧に用いられた窒素ガスが液化されて、加圧した圧力が減少し常にボンベから窒素ガスを供給し続けなければ圧力を一定に保てないという問題点を解決することができることが判明した。従って、大量の窒素ガスを消費し、その際に大量の液化熱を冷却システムに持ち込み熱負荷が増大するという問題点が解決される。
【0013】
この発明は、上記研究結果に基づいてなされたものであって、この発明の超電導電力機器用冷却システムの第1の態様は、液体ガスを貯溜するリザーバータンク、循環ポンプ、液体ガスを冷却する熱交換器、および、液化ガスが循環する循環ループを備え、前記液化ガスを、循環ポンプを用いてサブクール状態で循環して超電導電力機器を冷却する超電導電力機器の冷却システムであって、リザーバータンクを前記液化ガスと同種のガスで加圧する加圧手段をさらに備え、前記液化ガスを加圧状態で貯溜するリザーバータンクの液面が、循環する液化ガスの戻りラインの出口よりも、少なくとも加圧ガスの溶け込み深さ+液面移動補正量だけ上部に位置していることを特徴とする超電導電力機器の冷却システムである。
【0014】
この発明の超電導電力機器用冷却システムの第2の態様は、リザーバータンクを液化ガスと同種のガスで加圧する前記加圧手段は、前記液化ガスと同種のガスを高圧で貯めたガスボンベから、圧力調整弁を介して所定圧力で加圧することからなっていることを特徴とする、超電導電力機器の冷却システムである。
【0015】
この発明の超電導電力機器用冷却システムの第3の態様は、リザーバータンクを液化ガスと同種のガスで加圧する前記加圧手段は、リザーバータンクからサブクール状態の液化ガスを送出する循環ポンプの出口から、前記超電導電力機器に送る液化ガスの一部と分岐してリザーバータンクに戻る配管によって、循環ポンプの吐出圧力を用いてリザーバータンクを加圧することからなっていることを特徴とする、超電導電力機器の冷却システムである。
【0016】
この発明の超電導電力機器用冷却システムの第4の態様は、リザーバータンクを液化ガスと同種のガスで加圧する前記加圧手段は、リザーバータンクからサブクール状態の液化ガスを送出する前記循環ポンプの出口から、超電導電力機器に送る液化ガスの一部と分岐してリザーバータンクに戻る配管に設けられた、液化ガスを気化させる気化器と圧力調整用の圧力調整弁からなっていることを特徴とする、超電導電力機器の冷却システムである。
【0017】
この発明の超電導電力機器用冷却システムの第5の態様は、前記加圧手段の補助手段を更に備え、前記補助手段が、液化ガスと同種のガスをガスボンベから供給して加圧することからなっていることを特徴とする、超電導電力機器の冷却システムである。
【0018】
この発明の超電導電力機器用冷却システムの第6の態様は、前記加圧手段の補助手段を更に備え、前記補助手段が、リザーバータンクの気相部分に加温装置を配置して、リザーバータンク気相部のガスを過熱体積膨張させることからなっていることを特徴とする、超電導電力機器の冷却システムである。
【発明の効果】
【0019】
この発明によると、リザーバータンクを液化ガスと同種のガスで加圧するので、液体窒素中に気泡が混入することなく、液体窒素を円滑に循環し、絶縁特性にすぐれた超電導電力機器の冷却システムを提供することができる。更に、この発明によると、液化ガスを加圧状態で貯溜するリザーバータンクの液面が、循環する液化ガスの戻りラインの出口よりも、少なくとも加圧ガスの溶け込み深さ+液面移動補正量だけ上部に位置しているので、リザーバータンクの加圧に使用したガスが液化されることなく、加圧した圧力が減少することのない超電導電力機器の冷却システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明の超電導電力機器用冷却システムを、図面を参照しながら詳細に説明する。
この発明の超電導電力機器用冷却システムは、液体ガスを貯溜するリザーバータンク、循環ポンプ、液体ガスを冷却する熱交換器、および、液化ガスが循環する循環ループを備え、液化ガスを、循環ポンプを用いてサブクール状態で循環して超電導電力機器を冷却する超電導電力機器の冷却システムであって、リザーバータンクを液化ガスと同種のガスで加圧する加圧手段をさらに備え、液化ガスを加圧状態で貯溜するリザーバータンクの液面が、循環する液化ガスの戻りラインの出口よりも、少なくとも加圧ガスの溶け込み深さ+液面移動補正量だけ上部に位置していることを特徴とする超電導電力機器の冷却システムである。
【0021】
液化ガスを加圧状態で貯溜するリザーバータンクの液面が、循環する液化ガスの戻りラインの出口よりも、少なくとも加圧ガスの溶け込み深さ+液面移動補正量だけ上部に位置していることが必要であることを以下に説明する。
加圧ガスの溶け込み深さと、圧力減少率との間の関係を実験によって調べた。図5は、加圧ガス溶け込み深さ[m]と圧力減少率[%]との関係を示す図である。
【0022】
図5において、加圧ガスがリザーバータンクの液面から溶け込む深さ(即ち、加圧ガス溶け込み深さ)を横軸に、液化によるリザーバータンク内の圧力の1時間当たりの減少率を縦軸にそれぞれ示す。実験条件として、リザーバータンクの内容積として、直径1m、高さ1mの容器を用いて、圧力を0.3MPaとした。その結果、図5から明らかなように、溶け込み深さが10cmまでは、圧力の減少率が顕著に大きく、溶け込み深さが概ね20cmまでは、加圧に使用した気相の窒素ガスが液に凝縮して、加圧した圧力の減少が依然として早い。一方、溶け込み深さを20cm以上に保てば、圧力の減少量を1%以下の小さい値に維持することができることが分かった。実際には、加圧ガスの溶け込み深さの他に、液体窒素の温度、圧力などの影響で液面が変わるために液面移動補正量を考慮する必要がある。
【0023】
従って、液化ガスを加圧状態で貯溜するリザーバータンクの液面が、循環する液化ガスの戻りラインの出口よりも、少なくとも加圧ガスの溶け込み深さ+液面移動補正量だけ上部に位置していることが必要である。具体的には、加圧ガスの溶け込み深さ(20cm)+液面移動補正量(30cm)として50cm以上が好適である。上述したことは、リザーバータンクの容器形状への依存性は小さく、サイズが変わっても、必要深さは概ねこの通りとなる。従って、本願のシステムにおいては、リザーバータンクの容器高さとして、必要深さ(50cm以上が好ましい)が確保できる高さが必要となる。
【0024】
上述したように、本発明は、超電導電力機器を液化ガスで冷却するシステムにおいて、加圧に用いた液化ガスより沸点の低いガスが液化ガス中に溶解して、液化ガスの循環の不安定性要因や、電気機器の絶縁に関するトラブルをおこさずに、液化ガスをサブクール状態で長期間循環を行うことのできる冷却システムを提供するものである。
【0025】
上述した状態で加圧する加圧手段は、リザーバータンクに貯溜する液化ガスと同種のガスで、リザーバータンクを所定の圧力に加圧することからなっている。加圧するガスが液化ガスで冷却されて液化することを防ぐために、リザーバータンク内にある循環ポンプの戻り配管の出口に対して、リザーバータンクの液面が少なくとも20cm以上、好ましくは50cm以上高い位置にある。
【0026】
さらに、加圧の手段として、高圧ガスボンベで加圧する手段に加えて、リザーバータンクの圧力より高い循環ポンプ出口圧力をリザーバータンクに戻すことで加圧する手段がある。循環ポンプ出口の圧力を用いる具体的な手段としては、リザーバータンクから液をくみ出し加圧して超電導電力機器に液送する循環ポンプの出口配管を分岐して、リザーバータンクの圧力より液化ガスの一部を取り出し、分岐した液化ガスを気化器を用いてガス化して、さらにリザーバータンクの圧力を所定の圧力に維持するための圧力に応じて開閉動作する圧力調整弁を介してリザーバータンクに戻す手段がある。
【0027】
本発明の作用を説明するために、液化ガスとして液体窒素を用いた場合を説明する。液体窒素の、大気圧(1.013MPa)における沸点は77Kである。この液体窒素を0.3MPaに加圧すると、液体窒素の沸点は90K以上となる。したがって、77Kの液体窒素を0.3MPaまで加圧すると、液体窒素は気泡の発生がないサブクール状態となる。循環ポンプの取液部は、リザーバータンクの底にあり、配管で循環ポンプに結ばれている。
【0028】
一方、循環の戻りの配管はリザーバータンクに接続されるが、その配管出口の位置は液面より低い位置にある。循環ポンプより送出された液化ガスは、超電導電力機器を冷却してリザーバータンクに戻る。その際、配管出口は、液面より低い位置にあるので、戻りの液化ガスは、リザーバータンクの加圧ガス相に触れないで、循環ポンプの液体窒素取液口に移動して、再度、循環する。
【0029】
本発明では、液面の位置を、配管出口や循環ポンプの取液口から所定高さ(20cm)以上に高くしている(即ち、所定の液化ガス層を設けている)ので、それぞれの配管口にあるサブクールの冷たい液体窒素に対して、その上にある液体窒素の温度が液面に向かって順に高くなり、液面部の液体窒素温度は0.3MPaの液化ガスの沸点温度とほぼ同一となっている。そのために、過去、同種のガスでリザーバータンク内を加圧した場合、ガスは液化して、ガス供給が間に合わずに圧力が低下する問題があったが、今回の液化ガス層を置くことで、ほとんどガスが液化されないことが分かった。
【0030】
本発明では、加圧の方法として新たに、ボンベで加圧する方法以外の方法についても考察した。本発明における自己の圧力で加圧する方法について図1を参照して説明する。最初、大気圧状態(a点)にあるリザーバー内部から液体窒素を汲み出して循環ポンプで液送する。循環ポンプの出口では、液体窒素が50L/minで流れ、入口に対して、液体窒素は0.2MPa加圧される(b点)。出口部の圧力を利用するにあたり、出口配管より分岐して加圧された液体窒素を、途中気化器でガスに気化してリザーバータンクに戻す事で、リザーバータンクの圧力を上昇させる。(矢印c)。
【0031】
それに応じて、循環ポンプの出口圧力も上昇(矢印d)し、リザーバータンクを常に加圧することができる。リザーバータンクの圧力が、上限設定圧力(P2)を越えると(e点)、配管につけたバルブが閉となり、リザーバータンクへのガスの供給が停止する。その後、リザーバー内部では、ガス相の窒素ガスが窒素ガスの三重点以下の液体窒素で冷やされて、ガス相の窒素ガスは液化して液体窒素になる。液化してガス体積が減少した分、リザーバータンクの圧力が減少する(矢印f)。下限設定圧力(P1)となると(g点)、バルブが開となり、再び循環ポンプ出口の圧力でリザーバータンク内部に窒素ガスが供給されリザーバータンクの圧力が加圧される。
【0032】
配管の中を低温の窒素ガスが流れるために配管やバルブを凍らせる恐れがあり、気化器の役割として、それを防ぐために液体窒素をガス化して室温まで昇温する。気化器として、配管にヒータを巻いたり、配管を水などの中を通したり、また配管にフィンを取り付けて外気との熱交換で昇温する方法がある。また、バルブの役割としては、単にポンプから分岐した配管でガスを送り続けると、リザーバータンクの圧力は上昇し続け、リザーバータンクの設計圧力以上になる可能性があるために、リザーバータンクの圧力が所定の圧力以上になると閉の状態になりガスによる加圧を停止し、所定の圧力以下になると開の状態になり加圧して自動的に一定の圧力を保持する機能を持つ。
【0033】
なお、リザーバータンクの容量が大きい場合には、所定の圧力まで加圧するのに大量の窒素ガスを必要とするので、別に窒素ボンベを用意して、リザーバータンクの圧力を所定の圧力まで加圧することもできる。また、リザーバータンクの内部の気相部分にヒータなどの加温装置を配置して、リザーバータンク内のガスを加圧膨張させて加圧する方法も併用することが可能である。
以下に、実施例によって、この発明を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0034】
実施例1
図2は、この発明の超電導電力機器の冷却システムの1つの実施例を示す図である。液化ガスとしては、液体窒素を用いている。液体窒素は、リザーバータンク1に貯溜されている。リザーバータンク1は、2重の容器構造となっていて、2重容器の間は、断熱材が内側容器1bを取り囲むように施工され、さらに熱浸入を低減するために真空状態に維持されている。さらに、リザーバータンクは密封容器であり、内部を加圧することでできるようになっている。
【0035】
リザーバータンクの底には、循環ポンプへつながる液取口3があり、そこから直径3cmの口径の配管4で循環ポンプ5の入口までつながっている。循環ポンプ5は、渦流式の回転式のポンプである。フィン5cを回転させるためのモータ5aとフィンの間は、伝導による熱の流入を抑制するために、約50cmの長軸の軸5bでつながれている。
【0036】
また、フィン自身は、真空容器内部5eに配置して、外界からの熱侵入を抑制するようになっている。本発明の回転式のポンプは、50Hzの回転数で、液体窒素流量として、30L/minの流量を流すことができ、また入口と出口の圧力差として0.2MPaの吐出圧を得ることができる。ポンプ出口からは直径3cmの配管6で、その先冷凍機の熱交換器7につながっている。
【0037】
冷凍機8は、GM冷凍機またはスターリング冷凍機などからなり、寒冷を作る低温ヘッドに熱交換器がつながり、循環する液体窒素を低温に冷却している。本発明では、1kWの冷凍能力をもつスターリング冷凍機を用いており、30L/minの液体窒素が、冷凍機で冷却された熱交換器を通過することで、入口で77Kであったものを74Kまで冷却することができる。
【0038】
冷凍機で冷却された液体窒素は、直径3cmの配管9で超電導電力機器の入口10に水密につながれている。本実施例の超電導ケーブル11を冷却するための冷却システムにおいては、超電導ケーブル内を冷凍機で冷やされた液体窒素が流通することによって、超電導ケーブルを冷却する。超電導ケーブルを冷却した液体窒素は、温度が上昇するが、上昇した温度は沸点以下であるために液体窒素中に気泡の発生のないサブクール状態を維持している。そのため、500mの超電導ケーブルでも圧力損失は0.1MPa以下であり、十分小さく、安定して液体窒素を流すことができる。
【0039】
また、気泡の発生しない液体窒素が超電導ケーブルの電気絶縁層に滲みこんでいるために、良好な電気絶縁を保持することができる。超電導ケーブルの出口12を出た液体窒素は、配管13により、リザーバータンク1に戻ることによって、循環ループが形成される。リザーバータンク1、循環ポンプ2、冷凍機の熱交換器3、超電導ケーブル4、およびこれら機器を結ぶ窒素配管は全て外界からの侵入熱を低減するために、真空断熱を用いた2重容器構造となっている。
【0040】
リザーバータンクへ戻った配管13は、リザーバータンクの上部から底部まで届く配管14であって、リザーバータンクの底部に出口15から、液をリザーバータンクに戻す。また、循環ポンプに結ばれる液取口3も、リザーバータンクの底部に位置する。循環中において、リザーバータンクの液体窒素は、出口15の位置に対して少なくとも20cm以上高い位置に液面2があるように窒素が溜められている。
【0041】
本発明の循環ポンプの出口圧力によってリザーバータンクを加圧する方法は、ポンプ出口の配管6から、直径6mmのステンレス製の配管16が分岐されて取り出されている。配管16の内部を通る液体窒素は、循環ポンプの真空容器から出た後に、気化器17を通り、全てが液体窒素から常温の窒素ガスに変わる。
【0042】
気化器としては、本実施例では、温水容器の内部に銅製の6mm配管が、6mコイル形状に巻かれたものを使用しており、温水に浸されて内部の液体窒素を昇温している。気化器としては、本実施例以外でも、たとえばコイルの外側にヒータが巻きつけられて、通電によるヒータ発熱で昇温する方法や、配管にフィンが取り付けられて、大気との熱交換で暖める方式など、内部の液体窒素を室温のガスにできるものであれば良い。気化器17を出た配管18には、出口圧力が所定の圧力以下になるとガスを流し、所定の圧力以上になるとガスを止める圧力制御機能を持つバルブ19が取り付けられている。バルブ19を出た配管20は、リザーバータンクの上部に取り付けられて、リザーバータンクを加圧できるようになっている。
【0043】
なお、気化器17を通過した以降の配管18、20は室温であるので特に断熱構造にする必要はないが、循環ポンプ出口から気化器までの配管16は、発泡ウレタンなどの断熱材で囲われているほうが、配管16に霜がつくことが無く、美観上好適である。なお、バルブ19は、低温で動作するバルブを用いれば、バルブ19と気化器17の位置を逆にすることもできるが、低温用のバルブは常温用に比べて高価であり、経済的には適当な配置とはならない。なお、本実施例としては、圧力取り出しの配管16をポンプ出口の配管6より取り出したが、冷凍機の熱交換器の出口の配管9でも、超電導機器の入口部10からでもリザーバータンクの圧力より高い部分であれば、どこから取り出しても本発明の目的を達成できるもので、その意味でポンプ出口を単にポンプの出口直近を示すのではなく、ポンプの出口より下流のすべてを総称している。
【0044】
実施例2
実施例1では、循環ポンプがリザーバータンクの外にある場合について説明したが、循環ポンプがリザーバータンクの内部にある場合においても本発明を実施することができる。図3は、この発明の超電導電力機器の冷却システムの他の1つの態様の1つの部分を示す図である。即ち、図3に、冷却システムのうち、本実施例を説明するために、リザーバータンク部の抽出図を示す。循環ポンプ5のうち、液を送るフィン部5cがリザーバータンクの液中にあり、モータ5aの回転を長軸5bで伝えている。液体窒素は、リザーバータンクから汲み出され、配管6を通り、リザーバータンクを出て、液体窒素を冷却する冷凍機につながっている。
加圧用の配管は、この場合、リザーバータンクから出た配管6の部分に付けられ、その後は実施例1と同じく、気化器17、バルブ19を通して、リザーバータンクに戻る。
【0045】
実施例3
実施例1では、リザーバータンクの加圧手段としては、ポンプ出口からのガスによるものだけである。この場合、配管が6mmと細いうえに、圧力もポンプの吐出圧力分しかないために、ガス供給も少なく、所定の圧力になるのに非常に長い時間がかかる。特にリザーバータンクが大型になると、数十時間かかる。そこで、図4に示すように、補助手段として、リザーバータンクに外部配管21をつけて高圧の窒素ボンベ22や窒素カードルからガスを供給する。また、リザーバータンク内部の気相部分が低温に冷えると、液化が促進してしまうので、気相部分にヒータ23を配置して液化を抑制してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明によると、加圧に用いた液化ガスより沸点の低いガスが液化ガス中に溶解して、液化ガスの循環の不安定性要因や、電気機器の絶縁に関するトラブルを起こさず、液化ガスをサブクール状態で長期間循環を行うことのできる、超電導電力機器の冷却システムを提供することができ、産業上利用価値が高い。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、本発明の、循環ポンプ出口圧力でリザーバータンクを加圧する方法を説明する図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1を説明するための冷却システム構成図である。
【図3】図3は、本発明の実施例2を説明するためのリザーバータンク近傍の構成図である。
【図4】図4は、本発明の実施例3を説明するためのリザーバータンク近傍の構成図である。
【図5】図5は、加圧ガス溶け込み深さ[m]と圧力減少率[%]との関係を示す図である。
【図6】図6は、従来の超電導ケーブルの冷却システムを説明する図である。
【符号の説明】
【0048】
1 リザーバータンク
1b リザーバータンク内側容器
2 リザーバータンク内 液体窒素液面
3 液取口
4、6、9 送り側液体窒素循環配管
5 循環ポンプ
5a 循環ポンプモーター
5b 循環ポンプ長軸
5c フィン
5e 真空容器
7 冷凍機熱交換器
8 冷凍機
10 超電導電力機器の入口
11 超電導ケーブル
12 超電導ケーブルの出口
13 戻り側液体窒素循環配管
14 リザーバータンク内の窒素戻り配管
15 窒素戻り配管出口
16、18、20 加圧用分岐配管
17 気化器
19 バルブ
21 加圧用外部配管
22 高圧の窒素ボンベ
23 リザーバータンク内部のヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体ガスを貯溜するリザーバータンク、循環ポンプ、液体ガスを冷却する熱交換器、および、液化ガスが循環する循環ループを備え、前記液化ガスを、循環ポンプを用いてサブクール状態で循環して超電導電力機器を冷却する超電導電力機器の冷却システムであって、リザーバータンクを前記液化ガスと同種のガスで加圧する加圧手段をさらに備え、前記液化ガスを加圧状態で貯溜するリザーバータンクの液面が、循環する液化ガスの戻りラインの出口よりも、少なくとも加圧ガスの溶け込み深さ+液面移動補正量だけ上部に位置していることを特徴とする超電導電力機器の冷却システム。
【請求項2】
リザーバータンクを液化ガスと同種のガスで加圧する前記加圧手段は、前記液化ガスと同種のガスを高圧で貯めたガスボンベから、圧力調整弁を介して所定圧力で加圧することからなっていることを特徴とする、請求項1に記載の超電導電力機器の冷却システム。
【請求項3】
リザーバータンクを液化ガスと同種のガスで加圧する前記加圧手段は、リザーバータンクからサブクール状態の液化ガスを送出する循環ポンプの出口から、前記超電導電力機器に送る液化ガスの一部と分岐してリザーバータンクに戻る配管によって、循環ポンプの吐出圧力を用いてリザーバータンクを加圧することからなっていることを特徴とする、請求項1に記載の超電導電力機器の冷却システム。
【請求項4】
リザーバータンクを液化ガスと同種のガスで加圧する前記加圧手段は、リザーバータンクからサブクール状態の液化ガスを送出する前記循環ポンプの出口から、超電導電力機器に送る液化ガスの一部と分岐してリザーバータンクに戻る配管に設けられた、液化ガスを気化させる気化器と圧力調整用の圧力調整弁からなっていることを特徴とする、請求項3に記載の超電導電力機器の冷却システム。
【請求項5】
前記加圧手段の補助手段を更に備え、前記補助手段が、液化ガスと同種のガスをガスボンベから供給して加圧することからなっていることを特徴とする、請求項3または請求項4に記載の超電導電力機器の冷却システム。
【請求項6】
前記加圧手段の補助手段を更に備え、前記補助手段が、リザーバータンクの気相部分に加温装置を配置して、リザーバータンク気相部のガスを過熱体積膨張させることからなっていることを特徴とする、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の超電導電力機器の冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−12654(P2006−12654A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189117(P2004−189117)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成16年度新エネルギー・産業技術総合開発機構の交流超電導電力機器基盤技術研究開発に係る委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】